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SPGE(生徒参画型グループ・エンカウンター)プログラムが学級に及ぼす影響に関する一研究

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(1)1. SPGE(生徒参画型グループ・エンカウンター)プログラムが学級に及ぼす影響に関する一研究. SPGE(生徒参画型グループ・エンカウンター)プログラムが 学級に及ぼす影響に関する一研究. A study on the effect of class for student participation group encounter. 1. 箱根町教育支援室. 石井. ちかり. 横浜国立大学. 犬塚. 文. 雄. はじめに 平成 24 年のいじめ自殺事案の報道を機に,いじめ問題に対する学校や教育委員会の取. 組が大きく問い直され,平成 25 年6月にいじめ防止対策推進法が公布された。その 15 条 は学校におけるいじめの防止に関する法律で「学校の設置者及びその設置する学校は,児 童等の豊かな情操と道徳心を培い,心の通う対人交流の能力の素地を養うことがいじめの 防止に資することを踏まえ,全ての教育活動を通じた道徳教育及び体験活動等の充実を図 らなければならない。」と示された。また,同年 7 月に国立教育政策研究所生徒指導研究セ ンターから発表された「生徒指導支援資料4. いじめと向きあう」では,いじめの未然防. 止には, 「自己有用感」を獲得させることが有効であることが示されている。そして,子ど もたちに「自己有用感」を感じさせるためには,教師は安心して学校生活が送れると感じ られる「居場所づくり」を進め,その上で,子ども同士が互いに認め合ったり,心のつな がりを感じたりする「絆づくり」を促していくことが大切であることが述べられている。 し か し ,核家族化,少子化,情報化が進む社会を背景に,現代の子どもたちの集団体験 は不足し, 「心が通う対人関係能力」は,育ちにくくなっている。現代社会における青少年 の人間関係の特色として,青少年白書(総務省青少年対策本部編 1992)によれば,「人間 関係を大切にしているものの,現在の友人との狭いつきあいになるきらいが窺える。また, 人づきあいの葛藤を避け,新しい仲間とあまり自己犠牲を払わない範囲でのつきあいに終 始しがち」と,人間関係の希薄さが指摘されている。このような現状の中では,教師がか なり手を加えなければ,子ども同士の「絆づくり」を進めていくことは困難であると考え る。 このような状況のもとで,「心が通う対人関係能力」を育成し,「絆づくり」を進めて いくためには,意図的に集団体験をさせて,人との心のふれあいを回復させ,自己肯定感 を高め,人間関係能力を育成していくことが大切であると考えられる。グループ・アプロ ーチは,その援助的介入の一つの有効的な対応と言える。グループ・アプローチとは,自 己成長を目指す,あるいは問題・悩みをもつ複数のクライエントに対し,一人または複数 のグループ担当者が,言語的コミュニケーション活動,人間関係,集団内相互作用などを 通して心理的に援助していく営みである(野島,1999)。近年,教育現場では,このグル ー プ ・ ア プ ロ ー チ の 一 つ で あ る 構 成 的 グ ル ー プ ・ エ ン カ ウ ン タ ー ( Structured Group Encounter;以下SGE)が,導入されるようになってきた。これは,SGEが①短時間に リレーションを高められる。②メンバーのレディネスに応じてグループ体験のレベルを調.

(2) 2. 石井 ちかり・犬塚 文雄. 節するなどして,メンバーのダメージを予防できる。③エクササイズを定型化すれば,熟 練者ではなくても展開できる。(國分,1981)といった特徴を持ち,学校現場に馴染みや すいからである。 しかし,教師主導型のSGEでは,生徒の中には,やらされているという感情を持ち, 構成への抵抗を抱くものも少なくない。山本(2001)は,「既製のエクササイズやその構 成例が数多く活用されているとはいえ,特定エクササイズとの相性の問題がつきまとう」 とし,「既製エクササイズの選択・配列・アレンジによる対応のほかに,新しいエクササ イズを開発して豊かな対応を果たしたい」と述べている。また,犬塚(2000)は,いじめ 行為を予防するためには,学校生活の中に協創過程を推進することを提案し,その具体的 な方法として,Plan-Do-See(計画-実行-評価)のサイクルの運用をできるだけ子どもたち にゆだねるグループワークを示している。また,国立教育政策研究所生徒指導研究センタ ー(2004)は,『社会性の基礎を育む「交流活動」・「体験活動」-「人とかかわる喜び」 をもつ児童生徒に-』の中で,教師主体でなされる「居場所づくり」の手法を繰り返すだ けでは「絆づくり」や社会性の育成へは結びつかないことを指摘し,子ども自身の力を活 かすことの必要性を述べている。 山本(2001)は,大学生主体で,エクササイズ設計から参加し,試行を重ねていくプロ セスをたどる参画型グループ・エンカウンターは,SGEに比べ参画度が高いため,メン バーの抵抗や受け身感が和らぎ,エクササイズに対するモチベーションが高くなることを 報告している。参画型グループ・エンカウンターとは,参加者が,設計者,リーダー,メ ンバー,分析者という4者を体験し,主体的に関与する重層的参画構造をもつ構成法であ る(有沢,2000)。また,山本(2001)は,参画型グループ・エンカウンターを何度も体 験することで,いくつものリーダーシップの方法を学べる可能性を述べている。一方,カ ートライト(Cartwright,1975)は,高度な参加が肯定的人間関係,人間的資質の活用, 仕事の満足度,高水準の動機づけ,独創性の発揮,生産性の向上を導くと指摘している。 そこで,いじめなどの教育現場の様々な問題の未然防止のプログラムとして,熟練者で なくとも展開できるというSGEの特長と,生徒のもつ力を活かすことができる,生徒の 参画性を高めた生徒主体のエンカウンターを中学校において行うことに着目し,ここでは, 新たに生徒参画型グループ・エンカウンター(Student Participation Group Encounter; 以下SPGE)と規定して研究することにした。 SPGEの可能性と効果を探ることは,今日の教育現場におけるグループ・アプローチ の開発においての新たな可能性を見いだすことができると考えられる。 2. 研究の目的 本研究の目的は,中学校におけるSPGEのプログラムを作成し,それを試行して,S. PGEの効果と課題を探ることである。そして,以下の2点を研究目的とする。 研究1. 先行研究を参考に,中学校の教育課程,とりわけ特別活動領域で実施可能である SPGEのプログラムを作成し,それを試行して,その有効性と課題を検討する。. 研究2. 研究1で作成したSPGEプログラムが学級の「居場所づくり」・「絆づくり」 に及ぼした効果を明らかにし,その有効性と課題を検討する。.

(3) SPGE(生徒参画型グループ・エンカウンター)プログラムが学級に及ぼす影響に関する一研究. 3. 研究1. 3-1. 3. 中学校におけるSPGEのプログラムの作成・試行. 方法. 本研究では,山本(1976)が,参画型グループ活動の活動原理としている①スモールグ ループ,②ステップとしての現実目標,③協働模索のプロセス重視,④体験の重視,⑤感 情の重視,⑥自分自身への取り組み,⑦カウンセリング関係の導入,という7つの基本的 性格と,山本(2001)が,主体化への動機づけの視点として示している,⑧納得しあって 進める。⑨思い切ってまかせる。⑩リーダー体験を加える。⑪創り出す方向に向かう。⑫ ステップをたどる。⑬活動をふり返ってみる,を念頭に置いて,SPGEプログラムを作 成し,それを試行し,特別活動としての有効性と課題を検討する。 (1)実施したSPGEプログラム 1)学年委員(各クラスの学級委員3名×6クラスの 18 名)からなるプロジェクトチーム を立ち上げる。第1回のプロジェクトチームの会議では,SGEのショートエクササイ ズを取り入れた自己紹介を行った後,どんな人間関係を「素晴らしい仲間」というのか を6人グループでブレーンストーミングし,全体でまとめる。そして,素晴らしい仲間 づくりの具体的な取り組みの方法として構成的グループ・エンカウンター(以下SGE と略記)を紹介した。そして,学年でSGEのような活動に取り組んでいくこと,その 活動の企画・運営をこのメンバーで進めること(プロジェクト)を提案する。チーム全 員の承認を得た後,生徒一人ひとりの思いを引き出して,このプロジェクトに名称をつ ける。 2)プロジェクトチームのメンバーがSGEを体験しながら,SGEの原理と進め方につ い て 学 習 す る 。 体 験 す る S G E の プ ロ グ ラ ム は , a .山 本 ( 2001) が分 類 し た エ ク サ サ イズの主な方式が経験できる,b.ルールが単純であるもの,c.アレンジしやすく,エ クササイズ創出の手がかりになるもの,という3つの観点から組み立てた。検討した結 果,次のエクササイズを体験学習のプログラムとした。①スタッフクイズミリオネア(ク イズ方式)②アウチ!でよろしく(挨拶方式)③探偵ごっこ(インタビュー方式)④バ ー ス デ ー ラ イ ン ( ジ ェス チ ャ ー 方 式 ) ⑤ お 絵か き し り と り ( ゲ ー ム方 式 ) ⑥ ○ ○ 商 店 街(情報ゲーム方式)⑦無人島SOS(合意方式)⑧二者択一(仮想方式)⑨共同絵画 (作業方式)⑩私の四面鏡(資料方式)⑪4つの窓(ランキングゲーム)⑫聖徳太子ゲ ーム(ゲーム方式)⑬アドジャン(インタビュー方式)⑭人間知恵の輪(ゲーム方式) 3)プロジェクトチームの生徒がリーダーとなって,SGEを各学級で実施する。エクサ サイズを選択する際には,プロジェクトチームのメンバーで学年・学級の雰囲気や課題 などを話し合い,学年・学級や個人の成長に役立ち,学級の状況にあったエクササイズ を選んだ。このことによって,チームのメンバーの学級で行うSGEに対する目的意識 を高めることができると考えた。また,メンバーにSGEのリーダーを体験させること によって,エクササイズへの創作意欲が高まることもねらいとした。さらに,実施後に チームでのシェアリングと反省会を設け,活動を振り返り,各学級での取り組みの情報 交換を行った。このことによって,リーダーとしてそれぞれが経験したことを共有化し, 経験が広がるとともに,リーダーシップのとり方を学んだり,チームの凝集性が高まっ たりすると考えた。.

(4) 4. 石井 ちかり・犬塚 文雄. 4)プロジェクトチームを4~5人ずつのグループに分け,それぞれのグループで,学年 の仲間を「すばらしい仲間」にするためのエクササイズを設計する。思考を促進するた めに,中学生が設計可能であると考えられるエクササイズを 13 の方式に分類してまと めた「エクササイズ開発資料シート」と,エクササイズの目的や方法,留意点を記入す ることができる基本の枠(エクササイズシート)を配布した。「エクササイズ開発資料 シート」には,オープニング・エクササイズから,クロージング・エクササイズに向か い,自己・他者理解の浅いものから深いものという順に,挨拶方式,クイズ方式,イン タビュー方式,ゲーム方式,情報ゲーム方式,体験方式,資料方式,測定方式,論理療 法方式,仮想方式,作業方式,合意方式,いいとこさがし方式のそれぞれの方式につい て,メンバーがすでに経験したことのあるエクササイズを中心に,41 のエクササイズを 掲載した。 5)各グループが設計したエクササイズを,設計したグループのメンバーがリーダーとな り,プロジェクトチーム内で試行する。試行後,チーム全体でエクササイズの内容や進 め方,留意点などについて意見交換し,エクササイズシートを修正する。 6)開発したエクササイズ(チーム内で検討して修正したエクササイズ)を,プロジェク トチームのメンバーがリーダーとなって各学級で実施する。実施後,各学級の振り返り 用紙の内容をまとめ,それを資料にしてシェアリングと反省会を行う。 チームでのSGE体験学習や,エクササイズのアレンジや設計および学級でのリーダー 体験後のシェアリングや反省会などの活動を「学習会」,3)と6)の学級での活動を 「学級におけるSPGE」と命名した。プロジェクトチームの生徒は,「学習会」と「学 級におけるSPGE」を交互に行い,それぞれの活動ごとにシェアリングを行った。 (2)調査方法並びに内容 ①. 作成したプログラムの実施. (1)に示すSPGEプログラムを,神奈川県内公立A中学校第1学年6学級 230 名(男 子 115 名,女子 115 名)を対象に,200X 年4月~同年9月に試行した。プロジェクトチー ムのメンバーは,各学級の学級委員と副委員で構成する学年委員会のメンバー18 名(男子 10 名,女子8名)とした。プロジェクトチームの学習会は9回,学級におけるSPGEは 4回,プログラムの追加として学年集会でのSPGEを2回行うことができた。 ②. 毎回の学級におけるSPGE実施後の調査 各学級の生徒には振り返り用紙を,担任教師にはアンケートを記入してもらった。使用. した振り返り用紙は,吉澤(1997)がSGEの研究で用いたもので,取り組みの様子や自 己表現や他者理解を4件法で聞く6つの質問と,感じたことを自由記述で表現する内容の ものである。また,担任教師用のアンケートは,ア.生徒は集中して取り組んでいたか,イ. 学年委員は役割を果していたか(リーダーの役割を果したか),ウ.楽しく取り組んでいた か,エ.意義のある活動であったか,の4つの項目を4件法で聞く質問と,オ.活動の良か ったことと問題点,カ.学年委員のリーダーの動きで気づいたこと,の2つの項目について 自由記述してもらった。また,プロジェクトチームの生徒には,活動の感想を書いてもら った。.

(5) SPGE(生徒参画型グループ・エンカウンター)プログラムが学級に及ぼす影響に関する一研究. ③. 5. 全プログラム終了後の調査 プロジェクトチームの生徒に対してアンケートと半構造化面接を,担任教師に対して半. 構造化面接を実施した。生徒へのアンケートは,アンケート1と2からなり,アンケート 1は,5件法でSPGEの活動の取り組みの様子やSPGEの活動を通して自己理解や他 者理解が深まる場面があったかを振り返る質問が6問と,リーダーとしての行動を振り返 る 質 問 が 4 問 ( P 機 能 ( Performance function: 課 題 遂 行 機 能 ) と M 機 能 ( Maintenance function:集団維持機能)についての質問2問ずつ)と学級の様子を聞く質問を2問の全 12 問の質問である。アンケート2は,SPGEの活動について,ア.感じたこと・気づい たこと,イ.頑張ったこと・工夫したこと,ウ.リーダーとして変わったと思うところ,エ. クラスのためになったか,また,その理由,オ.活動で良かったこと,カ.こうしたらもっ と良い活動になると思うこと,の6項目について自由記述してもらう内容である。半構造 化面接では,このアンケートの回答内容について,詳しく聞き取った。担任教師への半構 造 化 面 接 の 内 容 は , ア .学 年 委 員 の 様 子 , イ .学級 に お け る S P G E のク ラ ス の 様 子 , ウ . SPGEでの学年委員の様子,エ.SPGEの良かったこと・困ったこと,オ.生徒がエン カウンターのリーダーをやることについての良い点・問題点,カ.教師が行うときとの違い, キ.学年委員のリーダーとしての変容について,ク.SPGEの改善点,ケ.SPGEの感想, である。 3-2. 結果と考察. (1)SPGEプログラムについて プロジェクトチームの生徒のアンケートや感想文,半構造化面接の結果から,次のこと が明らかになった。 ①すべての生徒が活動に積極的に取り組め,活動は有意義であり,取り組んで良かったと 感じていた。このことからSPGEは生徒の取り組みへの抵抗が低いグループ・アプロー チであると考えられる。 ②SPGEの活動の中で自己理解や他者理解が深まっていた。特に,エクササイズをアレ ンジ・設計するときには,その過程を楽しみながら,お互いに刺激し合って,自分の持ち 味や創造性を引き出し合う絶好の機会となった。このことから,エクササイズをアレンジ したり設計したりする行為自体がリレーションをつくり,「絆づくり」にも発展する可能 性をもつグループ・アプローチになっていると考えられる。 ③生徒はエクササイズをアレンジしたり,設計したりする際には,常に学級の状況を想定 し,その状況に適したエクササイズをつくろうと努めていた。このことから,生徒がアレ ンジ,設計するエクササイズは,生徒にぺーシング(子どものペースに寄り添う)され, 子どもの実態にあった活動になると考えられる。 ④エクササイズを自分自身が体験することで,自信を持ってそのエクササイズのリーダー を務めることができた。さらに,リーダーを経験することで一層自信を深めて,次のステ ップへ向かうことができた。このことから,SPGEプログラムでは,このような自己推 進的な体験学習を取り入れることが望ましいと思われる。 ⑤学級でリーダー体験した後に生徒は,「次はもっとこうして成功させたい」という気持 ちを抱き,次の学級での活動の目標を立てていた。このことから,学習会とリーダー体験.

(6) 6. 石井 ちかり・犬塚 文雄. を交互に行ったことによって,生徒の意欲が維持され,ステップを踏んで目標を高めるこ とができたと考えられる。SPGEプログラムでは,スモールステップで学習会とリーダ ー体験を交互に行っていくように進めた方が望ましいと推察される。 ⑥SPGEプログラムが進むにつれて「クラスの協力性をもっと高めたいと思うようにな った。」と多くのプロジェクトチームの生徒が述べていた。このことから,SPGEプロ グラムが進むにつれて,自分の学級への所属感が強くなり,集団として学級を向上させる ことに意識して取り組むようになったことが窺える。 担任教師のアンケートや半構造化面接の結果では,生徒がエンカウンターのリーダーを 務めることによって,「リーダーシップが育っている。」「リーダーとしての意識が高く なり,学年委員会の質が向上している。」「自主性・責任感・達成感が育つ。」などの効 果があることがあげられ,リーダーシップ育成に有効であることが推察された。また,一 般生徒の変容については,「学年委員をリーダーとして認める意識が高まっている。」「リ ーダーの説明を聞かないと,エクササイズに取り組めないので,友達の話をよく聞く習慣 が身についた。」など,学級におけるSPGEが生徒たちのフォロワーシップに良い影響 を及ぼしていることが述べられていた。さらに,教師がリーダーを行う場合との違いにつ いては,「教師が行うとやらされていると感じて『やりたくない』という生徒がでること があるが,生徒がリーダーの場合は,当日までのプロセス(リーダーの放課後の準備等)を 生徒なりに考えて,リーダーを認め,リーダーに協力的に参加していた。」「普段は水を 差すようなことばかり言う斜に構えている生徒が,この活動(学級におけるSPGE)の 時には文句を言わずに取り組んでいた。」「クラスで,はずされる子がいなかった。」「教 師が生徒の活動の様子をよく観察することができた。」などと述べられていた。 これらのことから,生徒が,学級におけるSPGEの活動計画を立てて,そのリーダー を務めることにより,周囲は学年委員を真のリーダーとして認め,望ましい集団活動を推 進することが可能になることが推察される。また,担任教師は自分自身がグループ・アプ ローチのリーダーをしている時より,学級全体の様子や個々の生徒の様子を把握しやすく, 活動への介入や気になる生徒へのフォローがしやすいことが窺われた。問題点としては, 学習会は放課後に行うことが多くなり,学年委員の負担が増えてしまう心配があることな どがあげられていた。 (2)特別活動としての有効性について 本研究でのSPGEのプログラムでは,教師(筆者)の指導の下で,生徒が活動の計画 を立て,担任教師の指導の下で生徒が実践する活動であった。したがって,中学校学習指 導要領(平成 20 年 3 月)解説特別活動編に示されている「特別活動においては,教師の適 切な指導の下に生徒による自主的,実践的な活動が助長され,そうした活動を通して特別 活動の目標の実現が目指される教育活動である。」という内容と一致している。 犬塚(2003)は,特別活動における人間教育で求められているものとして,「子どもた ち に 開 か れ た 実 践 」 と な る こ と を 示 し , 特 に 特 別 活 動 で は , T O S ( Teacher oriented system:教師主導システム)からCOS(Children oriented system:子どもたち主導シ ステム)へのパラダイムシフトが期待できることを強調している。さらに,犬塚(2003) は,「特別活動は教育課程の一領域を占めるものであり,その性格上,教師と子どもたち.

(7) SPGE(生徒参画型グループ・エンカウンター)プログラムが学級に及ぼす影響に関する一研究. 7. 双方のP-D-Sが促進し,かつ,相互作用を起こしている状態が望ましいと言えるであ ろう。」と述べている。本研究でのSPGEプログラムは,できるだけ生徒に Plan-Do- Check-Action をゆだね,COSへシフトされたものとなった。さらに,振り返り用紙や 感想文などから,教師は生徒の活動の様子を評価し,指導計画を見直して再度,生徒に活 動をゆだねるという形で進めた。やがて,活動が進行していくと,学年の教師から,「学 年集会や遠足の活動の中でもSPGEの活動を取り入れてほしい」というような声があが るようになり,生徒はプログラムに新たな活動を追加して教師の要望に応えていった。こ のことは,教師と子どもの双方のP-D-Sが促進されたことを示すものと思われる。 山口(1990)は,特別活動について「全職員の共通理解に基づく共同歩調が欠かせない。」 と述べている。しかし,現状では,SGEなどの学校グループ・アプローチ(以下,SG Aと略記)に全職員が共通理解のもと,共同歩調で継続的に取り組むことは困難である。 本研究のSPGEプログラムでは,一人の教師がアドバイザーとなり,生徒が計画・準備 し,リーダーを務め,担任教師は生徒の活動の観察と活動への介入という役割分担がされ ていたため,学年の全教師の共通理解に基づいて,共同歩調で継続的にSGAに取り組む ことが可能となった。 以上のことから,本研究で作成・試行したSPGEプログラムは,特別活動として適切 なプログラムであったと考えられる。 (3)開発されたエクササイズについて 生徒は,エクササイズのアレンジ・設計の際に,SGE体験学習の中で自ら経験したこと や,学級でリーダー体験したことを多く活かしていたことが,生徒のアンケートや半構造 化面接,活動の様相から窺えた。このことから,生徒にエクササイズを開発させるには, いろいろなエクササイズをメンバーとリーダーの両方の立場で体験させることが大切であ ると思われる。生徒が開発したエクササイズは次のとおりである。 ①IZUMIサプリ(クイズ方式)②6人と2つのパラシュート(ランキング方式)③友 達の輪(ゲーム方式)④アドジャン(インタビュー方式)⑤プチ発表会(作業方式)⑥プ チ合唱コンクール(作業方式)⑦新聞紙パズル(ゲーム方式)⑧お絵かきパズル(作業方 式+ゲーム方式)⑨無言伝言ゲーム(ゲーム方式) 4. 研究2. SPGEプログラムが学級の「居場所づくり」・「絆づくり」に及ぼした 効果の検討. 4-1. 方法. (1)被験者 神奈川県内公立A中学校第1学年6学級 230 名(男子 115 名,女子 115 名)と1学年の 各学級の学級委員と副委員で構成する学年委員会のメンバー18 名(男子 10 名,女子8名) を対象として実施した。(学年委員が,プロジェクトチームのメンバーとして,SPGE に取り組み,アレンジや開発したエクササイズを各学級で学年委員自らがリーダーとなり, 実践する。)学年委員の統制群として,ほぼ同じ環境と考えられる神奈川県内公立B中学 校とC中学校の第1学年の学年委員 32 名(男子 14 名,女子 18 名)を対象とした。.

(8) 8. 石井 ちかり・犬塚 文雄. (2)時期 ①事前調査. 200X 年 4 月中旬,②研究1で作成したSPGEプログラムを実施. ~同年9月,③事後調査及びアンケート 接. 同年 9 月. 同年4月. ④生徒及び担任教師への半構造化面. 同年 10 月 24 日~11 月 17 日. (3)調査方法並びに内容 ①. 学級雰囲気尺度(3 因子,20 項目,5 件法) 吉崎静夫と水越俊行(1979)の「児童による授業評価」と蘭千壽(1985)の「セルフエ. スティームの心理学」をもとに,大関建道ほか(1996)が作成したものを用いた。事前と 事後における尺度全体得点と,下位尺度である「協力と思いやり」「楽しさと安心感」「快 活さと明るさ」のそれぞれの得点について,対応のある t 検定を実施して,各学級におけ るSPGEプログラムによる各学級の雰囲気の変化について分析する。 ②. 自尊感情尺度(10 項目,5件法),人間関係尺度(6項目,5件法) 自 尊 感 情 尺 度 は , Rosenberg( 1965) が 作 成 し , 山 本 眞 理 子 ほ か ( 1982) が 邦 訳 し た 自. 尊感情尺度を,さらにゼミで検討して,中学生にも分かりやすい言葉に直して用いた。人 間関係尺度は,國分(1987)が作成した「人間関係チェックリスト」を吉澤(1996)が中 学生向けに一部変更したものを使用した。SPGEプログラムの中で,リーダーを務めた 学年委員(プロジェクトチームのメンバー)の 18 名の生徒と,その他の生徒では異なった 経験をするので,一般生徒群(一般群)と,プロジェクトチーム生徒群(リーダー群)に 分けて分析する。 ③. PM自己評価表(2 因子,20 項目,4 件法)と担任教師によるPM評価表 SPGEプログラムの事前・事後に,試行群と統制群の両群の生徒に対してPM自己評価表を用. いた調査と,試行群と統制群の両群の生徒のそれぞれの担任教師に対して,生徒に対するP M評価表とリーダー行動についての自由記述を用いた調査を行った。ここで使用したPM 評価表は,三隅(1984)のPM理論をもとに熊本大学教育学部附属中学校(1996)が作成 したPM自己評価表を,より行動の有無を明確に測るために,5件法を4件法に直したも のである。 先行研究からは,PM得点によるリーダーシップ行動の測定は,自己評価より も他者評価の方が妥当性があることが検証されている。また,他者評価であれば,上司評 価よりも部下評価の方が妥当性があることも見出されている。プログラムの効果の検証に は,生徒のリーダーシップ行動の「部下評価」にあたる,同じクラスの学年委員以外の生 徒からの評価を得ることが,より妥当であると考えられるが,そのような方法で他者評価 を得ることは,教育的な配慮を考えると. 望ましくない。そこで,自己PM評価表と担任. 教師から見た生徒のPM評価表を実施することにした。 ④. アンケートおよび半構造化面接 尺度の分析と重ね合わせて,プロジェクトメンバーの生徒へのアンケートおよび半構造. 化面接と,担任教師への半構造化面接の結果や,「学級におけるSGE」を実施したとき の全生徒の振り返り用紙の記述などから,質的にも検討を加える。.

(9) SPGE(生徒参画型グループ・エンカウンター)プログラムが学級に及ぼす影響に関する一研究. 4-2. 9. 結果と考察. (1)学級の変容 SPGEプログラムを試行したことが,学級にどんな影響を及ぼしたかを検討するため に,学級雰囲気尺度,自尊感情尺度,人間関係尺度を用いたが,4月から9月の6ヶ月の 間には,これらの尺度に影響を与える要素は4回のSPGEの取り組み以外にもたくさん あると考えられる。したがって,尺度の変化だけではSPGEの効果を測ることは難しい と思われる。そこで,プロジェクトチームの生徒や担任教師への半構造化面接の結果や, SPGEの取り組みの様相などを重ね合わせて考察した。各学級における学級雰囲気尺度 全体得点の事前事後の変化には有意差は見られなかったが,各学級における学級雰囲気尺 度全体得点の下位尺度である「快活さと明るさ」の事前と事後の平均得点を対応のある t 検定をした結果,A組とC組は,事前より事後の平均得点が有意に高く,( t(34)=2.799,. p <.01),( t(37)=3.957, p <.01)。B組は有意傾向に 高かった( t(33)=1.848,p <.10)。「快活さと明るさ」 の事前と事後の平均得点の推 移を Fig.1 に図示した。そし て,生徒や担任教師への半構 造化面接の結果から,この学 級の変化の要因として,「学 級におけるSPGE」が影響 していることが示唆された。 そして,このことは,クラスで実施するエクササイズが,ゲーム性が高いものが多く,「快 活さ」や「明るさ」を引き出すようなエクササイズであったことが起因しているものと考 えられる。 自尊感情尺度全体得点の事前と事後の変化を,対応のある t 検定を行った結果,尺度全 体得点は,一般群のみ,事前より事後の平均得点が有意に低かった( t (195)=2.842, p <.01)。 これは,被験者は入学したばかりの中学1年生であり,中学生の自尊感情は小学生時よ り大幅に低下するという先行研究から考察して,SPGEの影響以上に,他のことが影響 していると考えられる。 京都府総合教育センター が 2004 年に児童生徒の 傾向を捉えるために実施 したアンケートによる と,中学生の自尊感情は 小学生や高校生に比べて 約1割程度低いという結 果が報告されている。ま た,民間の教育研究団体.

(10) 10. 石井 ちかり・犬塚 文雄. 「麻布台学校教育研究所」が 2005 年に行った調査では, 「自分が好きではない」と回答し たのは小学生が男子 23%,女子 31%であったのが,中学生は男子 50%,女子 63%となり, 小学生に比べて中学生の自己肯定感が大幅に減少していることが窺われる。京都府総合教 育 セン ター( 2004)は,「思 春期 のただ 中に ある 中学 生は, 自己 像が不 明確 で自分 に自 信 がもてないという特徴がある。また,中学校での学習内容や生活の大きな変化に適応でき ず,こんなはずではなかったという自信喪失や,他者との比較による自己卑下もおこって くる。」と述べている。このことが,中学生の自尊感情の低下を引き起こす原因になってい ると考えられる。本研究の被験者の事前調査は,入学してから1週間しか経っていない, まだオリエンテーション期間に行った。この時期はまだ,中学校の学習内容や生活の変化 の影響を受けていなかったと考えられる。それに比べて,事後調査を行った9月下旬は, 中学校での学習内容や生活の変化に大きく影響され,自尊感情が低下したものと考えられ る。この現象は,どこの中学校でも見られると推測される。したがって,SPGEの効果 を自尊感情尺度全体得点の変化からだけでは読みとることはできないと考えられる。しか し,各項目の得点を対応のある t 検定を行った結果,尺度の項目ごとの変容の検討から, 「だいたいにおいて自分はうまくいかない」や「自分は役に立たない」などの自己卑下の 気持ちが高まっているのに反して,「だいたいにおいて,自分に満足している」という気 持ちが,両群とも高まっている。このことから,「うまくいかない自分」「できない自分」 も受け入れることができるようになり,「できないこともあるけど,そんな自分でもいい」 「ありのままの自分でよいのだ」という気持ちが育ってきていると考えられる。そして, この変化はSPGEプログラムが一因となっていることが,多くのふり返り用紙の記述な どから窺われた。 人間関係尺度の事前と事後の変化を,対応のある t 検定を行った結果,総得点は,両群 ともに,事前と事後の平均得点には有意な差は見られなかったが,各項目別平均得点を対 応のある t 検定の結果,一般群の受容性は事前より事後の平均得点が有意に高かった( t (193)=2.628, p <.01)。この変容は学級におけるSPGEプログラムが影響したこと が,振り返り用紙の分析から推測される。各群の事前と事後の各項目別平均得点を,Fig.2 に図示した。 以上のことより,生徒がリーダーを行う「学級におけるSPGE」は,学級雰囲気や, 生徒の自尊感情,人間関係に影響を及ぼすことが示唆された。 (2)リーダーシップの変容 P得点とM得点の事前・事後における変容を見るために,PM自己評価表と担任による PM評価表の得点の結果を,P行動得点を縦軸,M行動得点を横軸にした分布グラフを作 成する。試行群の自己評価PM得点の事前と事後の分布を Fig.3に示す。なお,三隅(1989) の示す4類型(PM,Pm,pM,pm)に分けるために,群における事前のP得点の平 均点とM得点の平均点を示す軸を各グラフに加えた。 また,PM自己評価表と担任によるPM評価表の得点を群(試行群,統制群)×時期(事 前,事後)の2要因混合計画による分散分析を行う。また,事前P得点と事前M得点の高 群と低群の生徒のリーダーシップ行動の変容を見るため,試行群 18 名について,事前の 自己評価P得点が,群の平均得点よりも高い9名の群(自己P得点高群)と低い9名の群.

(11) SPGE(生徒参画型グループ・エンカウンター)プログラムが学級に及ぼす影響に関する一研究. 11. (自己P得点低群)に分けて,群(自己P得点高群,自己P得点低群)×時期(事前,事 後)の2要因混合計画による分散分析を実施した。同様に事前の自己評価のM得点が群の 平均得点よりも高い群(自己M得点高群)と低い群(自己M得点低群)に分けて,群(自 己M得点高群,自己M得点低群)×時期(事前,事後)の2要因混合計画による分散分析 を行う。また,教師評価についても同様の分析を行う。 Table 1は,試行群における事前と事後の自己評価P得点の平均と標準偏差と分散分析 表を示したものである。また,試行群の事前と事後の平均得点の推移を Fig.4に図示した。 分散分析の結果,交互作用が有意であった( F (1,48)=4.140, p <.05)。 Table 2は,試行群における事前,事後の自己評価M得点の平均と標準偏差と分散分析 表を示したものである。また,試行群の事前と事後の平均得点の推移を Fig.5に図示した。 分散分析の結果,時期の主効果が有意であった( F(1,48)=4.313, p <.05)。また,交 互作用が有意であった( F(1,48)=6.403,p <.05)。事前自己評価P得点の低群と高群, 各群における事前と事後の平均得点の推移に関して分散分析を行った結果,時期の主効果 が有意であった(F(1,16)=2.544,p<.05)。群の主効果が有意であった(F(1,16) =12.550,p<.01)。また,交互作用が有意であった(F(1,16)=2.216,p<.05)。事 前自己評価M得点の低群と高群,各群における事前と事後の平均得点の推移に関して分散 分析を行った結果,時期の主効果が有意であった(F(1,16)=7.921,p<.01)。また, 群の主効果が有意であった(F(1,16)=30.336,p<.01)。 教師評価のP得点とM得点は,試行群の方が統制群よりも両得点とも高まってはいるが, 有意な差は見られなかった。これは,試行群の事前教師評価P得点,M得点が非常に高く, 得点高群の生徒は,事前,事後において,ほとんど得点が変化していないことから,天井 効果のためと考えられる。 これらのことから,中学校におけるSPGEプログラムに取り組むことにより生徒のリ ーダーシップ行動特性はP機能もM機能も高まることが確認された。P行動特性は,それ までP行動特性が低かった生徒に,より効果があり,M行動特性は,それまでのM行動特 性に関係なく,高まることが窺われた。その結果,P行動得点の著しく低い生徒がいなく なり,三隅の4類型のPM型の生徒が増加することも確認できた(Fig.3)。SPGEプロ グラムによって,プロジェクトチームのメンバー(学年委員)のリーダーシップのP機能 もM機能も高まったことが確認された。また,担任教師への半構造化面接から,SPGE プログラムが進むにつれて,学年委員のリーダーシップ行動は,学級活動の様々な場面で も見られるようになり,リーダーシップが般化されたことが示唆された。 近年,異年齢集団とのつき合いが少なくなった現代の子どもを,そのまま放っておいた のでは,以前は自然に身についたリーダーシップや対人関係のスキルは育たない。こうし た状況に対処するためには,特別活動などの時間を利用して,生徒がコミュニケーション やふれあいを体験する場面を導入することは,時代の要請でもあり学校の重要な課題でも ある。SPGEプログラムはこの課題への対応となる取り組みの一つになると考える。 さらに,事後アンケートや生徒や教師への半構造化面接の結果では,プロジェクトチー ムの生徒は,エクササイズをアレンジ・設計するときから,すべての生徒が活躍できるこ とや,クラスの仲間にとって,有意義な活動になることを考えていたこと,学級でリーダ ーを務めるときには,M機能を発揮し,周りの生徒を思いやって,奉仕の精神で行動して.

(12) 12. 石井 ちかり・犬塚 文雄. いたこと,そして,学級の生徒が「良かった」 「楽しかった」という感想に対して喜びを感 じ,その喜びが,次のより意欲的な活動への誘因となっていたことが示されていた。この 一連の行動は,サーバントリーダーシップであると考えられる。つまり,SPGEプログ ラムはサーバントリーダーシップを高める活動になったことが窺われる。. pM. 40. PM b c. 35. m. h. g j. M 行 動. a n. p. 30. i. e r. l f. d. o. 25. k. 20. q. 15 15. 20. 25. 30. pm. 35. 40. Pm. P行動. 試行群自己評価PM得点の分布(事前). pM. PM. 40. a' b' c' g' p'. n'. 35. h' i' m' d'. M 行 30 動. e' f' j'. l' r'. k' o'. q'. 25. 20. 15 15. 20. pm. 25. 30. P行動. 35. 40. Pm. 試行群自己評価PM得点の分布(事後). Fig.3. 試行群自己評価PM得点の分布の推移.

(13) SPGE(生徒参画型グループ・エンカウンター)プログラムが学級に及ぼす影響に関する一研究. 13.

(14) 14. 石井 ちかり・犬塚 文雄. (3)リーダーシップの変容が学級へ及ぼす影響 さらに,生徒と担任教師への半構造化面接やアンケートから,SPGEプログラムを実 施した学年では,1年生としては今までになく,合唱コンクールの取り組みで,教師の指 示がなくても自主的に練習を進めている姿が各学級で見られたり,例年より専門委員の活 動が活発になったりしたことが窺えた。この原因として,学年委員の高まったリーダーシ ップ行動の中での活動の経験を重ねることにより,他の生徒も学年委員の真似をしてリー ダーシップ行動ができるようになったことと,生徒たちのフォロワーシップが高まったこ とが考えられる。そして,その結果,各学級の自治的な集団活動が活性化していったと思 われる。このことから,中学校におけるリーダーシップの育成は,対象となる個人だけで なく,他の生徒にも好影響を及ぼし,集団全体のリーダーシップとフォロワーシップが向 上し,集団としての活動も活発になることが推察される。 5. 結論と課題. (1)特別活動としてのSPGEプログラム SPGEプログラムの内容は,TOSからCOSへとパラダイムシフトされたものとな った。さらに,教師と子どもたち双方のP-D-Sが促進され,かつ,相互作用を起こし ている状態も窺われた。このことから,犬塚(2003)が示す特別活動の望ましい状態を指 向していたことが推察される。また,SPGEプログラムは,リーダーシップ体験ができ る機会を与える活動であり,プロジェクトチームの生徒のリーダーシップを高めることが 確認され,そのリーダーの変容が,学級集団全体に好ましい影響を及ぼしたことが窺われ た。 さらに,SPGEは学級の実態に適した活動であることや,学年全体でSPGEが共同 歩調で進められたことなどから総合的に考察して,本研究で作成・試行したSPGEプロ グラムは,「集団活動を通して,集団の一員としてよりよい生活を築こうとする自主的, 実践的な態度を育てる」ために有効であり,特別活動として適切な活動であったと考えら れる。また,SPGEプログラムにおけるプロジェクトチームの生徒の行動は,サーバン ト リー ダーシ ップ である と考 えられ る。 高橋, 村上 (2004)は ,「サ ーバ ント型 のリ ーダ ーシップは,組織の各階層に数多くの次世代型のリーダーを創りやすい」と述べている。 これは,プロジェクトチーム以外の生徒のリーダーシップに影響を及ぼしたことと一致し ていると思われる。これらのことから,SPGEプログラムは集団全体のリーダーシップ を高めることができるプログラムであると考える。このような観点からも,今後の中学校 における特別活動に広い応用が期待できると思われる。 (2)問題発生の未然防止 い じ め や 不 登 校 な ど の問 題 発 生 の 未 然 防 止 のた め に ,「 心 が 通 う 対 人関 係 能 力 」 を 育 成 し,「絆づくり」を進めていく方法として,グループ・アプローチは有効な手段であるが, 学校現場で有効に行っていくには,多くの課題も指摘されている。滝(2002)は,ピアサ ポートは,学級担任の協力は不可欠であるが,一つの学校に数名の熟練者がいれば,取り 組みが可能であることを示し,広がる活動であるのに対して,SGEが学級の枠組みにこ だわるため広がっていかないと述べている。本研究で作成・試行したSPGEプログラム.

(15) SPGE(生徒参画型グループ・エンカウンター)プログラムが学級に及ぼす影響に関する一研究. 15. は,学級の枠組み以外の活動を取り入れ,一人の教師が中心となり,担任教師などの協力 を得ながら,学年全体で進めることができた。このことから,本研究で作成・試行したS PGEプログラムは,滝(2002)が示すピア・サポートプログラムの「広がり」の利点を 持つものと思われる。したがって,SPGEプログラムは,学校現場に,広げていくこと ができる可能性の高いものであると考えられる。また,国立教育政策研究所生徒指導研究 センターから発表された「生徒指導支援資料4. いじめと向きあう」 (2013)では,教師が. きちんと「居場所づくり」を進めていくのが前提で,その上で,子どもたちが主体的に取 り組む活動の中で,互いに認め合ったり,心のつながりを感じたりできるというのが「絆 づくり」になると述べ,子どもたちが主体的に活動することがいじめ予防に大切であるこ とを強調している。SPGEプログラムは,学級の人間関係の受容性を高め, 「居場所づく り」を進めることができる。そして,集団全体のリーダーシップを育てることにより,学 級活動を活発にさせ,子ども達の関わり合いを増やすことができるので, 「絆づくり」の可 能性も高まると考える。 つまり,SPGEプログラムは,学年全体で取り組むことができ,「心の通う対人関係 能力」を高め, 「居場所づくり」を進め,その上で「絆づくり」を可能にしていくグル ープ ・ アプローチであり,いじめや不登校などの問題発生の未然防止に有効であると考える。 (3)今後の課題 生徒は,エクササイズを選んだり,アレンジ・設計したりするときには,学習会の発言 や感想文の内容などから,「クラスが盛り上がるエクササイズ」ということを念頭に置い ていたことが窺われる。そして,クラスで試行したエクササイズは,ほとんどがゲーム性 の高いリレーションづくりを目指しているものとなった。犬塚(2003)は,個を生かす集 団活動を通して“We feeling”の育成を目指すことを,21 世紀の特別活動の大事な役割 であると考え,「まず,グループ・カウンセリング系のSGAでお互いのペースの分かち 合いを十分に行った上で,グループワーク系のSGAで合意形成を図っていくことが,即 ち,“癒し系から骨太系へ”が基本的流れであり,実践指標として3つのOK(I am OK・ You are OK・We are OK)の実感の回復にとっても効果的であると思われる。」と述べてい る。本研究で学級において試行したSPGEプログラムでは“癒し系”の段階に留まって しまったと思われる。学級におけるSPGEをさらに骨太系のSGAにするのが今後の課 題である。 また,「生徒指導支援資料4. いじめと向きあう」(2013)では,いじめの未然防止には. 子どもたちに自己有用感を感じさせることが大切であると述べている。今回の研究では, 自己有用感の変容を測定しなかったので,今後この変容を確かめ,SPGEの有用性をさ らに裏付けていきたい。.

(16) 16. 石井 ちかり・犬塚 文雄. 〈主な参考・引用文献〉 有沢孝治 果. 2000. 参画型グループ・エンカウンターの重層的参加体験にみる自己変容の効. 東海大学紀要. 池 田 守 男 2006. 教育研究所. №8 pp.45-73. 支 え る喜 び - サ ー バ ン ト リ ー ダ ー シ ッ プ 「 サ イ ン ズ ・ オ ブ ・ タ イ ム ズ 」. 福音社,pp.6-11 石井ちかり 2005. 参画型グループ・エンカウンターが生徒におよぼす影響に関する一研究. --生徒のリーダーシップ行動を中心に. 横浜国立大学大学院. 教育学研究科修士論文. 未刊行 石井ちかり, 犬塚 文雄. 2008. 参画型グループ・エンカウンターが生徒におよぼす影響. に関する一研究--生徒のリーダーシップ行動を中心として. 日本特別活動学会紀要. (16), pp.33-42 犬塚文雄. 2000. 教育カウンセリング. 犬塚文雄. 2003. 特 別 活 動 に お け る 人 間 教 育 を ど う 考 え 実 践 す る か -教 育 臨 床 の 視 点 か. ら-. 福音社. 日本特別活動学会紀要第 11 号. 大関健道. 1996. pp.5-13. 構成的グループ・エンカウンターが,中学生の自尊感情,学級適応感,. 社会的スキル,学級雰囲気に及ぼす効果 実践をめざして― Cartwright,D. 革とPM理論. p.169. ―中学校における予防的・開発的教育相談の. 日本教育心理学会総会発表論文集 38 号. 集団力学研究所編訳 ダイヤモンド社. 京都府総合教育センター. 2004. 1975. p.520. 参加とグループ・ダイナミックス. 組織改. pp.17-50 自己コントロール力と自己肯定感に関する子どもの現状. www1.kyoto-be.ne.jp/ed-center/ ed04/kyosi/h13/selfcontrol/02self-03.pdf 熊本大学教育学部附属中学校 國分康孝. 1981. 1996. エンカウンター. 國分康孝・片野智治. 2001. リーダーシップと自己教育力 心とこころのふれあい. 誠信書房. 明治図書 1981. 構成的グループ・エンカウンターの原理と進め方. 国立教育政策研究所生徒指導研究センター. 2004. 誠信書房. 社会性の基礎を育む「交流活動」・「体. 験活動」-「人とかかわる喜び」をもつ児童生徒に- 国立教育政策研究所生徒指導研究センター. 2013. 「生徒指導支援資料4. いじめと向き. あう」 総務省青少年対策本部編. 1992. 高橋佳哉・村上力. 2004. サーバントリーダーシップ論. 滝. ピア・サポートではじめる学校づくり中学校編. 充(編)2002. 野島一彦 リ 385」. 1999. 「青少年白書」 宝島社. グループ・アプローチへの招待「グループ・アプローチ. 至文堂 1984. リーダーシップ行動の科学. 有斐閣. 文部科学省. 2008. 中学校学習指導要領. 特別活動編. 文部科学省. 2013. 「いじめ防止対策推進法」. 解説. 満. 1990. 特別活動と人間形成. 山本銀次. 1976. 小集団活動の単位概念の考察. 山本銀次. 2001. エンカウンターによる心の教育. 山本眞理子(編)堀. 現代のエスプ. pp.5-13. 三隅二不二. 山口. 金子書房. 学文社. 洋道 (監修)2001. 日本教育学会大会発表要旨集録 35p.88 東海大学出版会. p.47, pp.63-66. 心理測定尺度集 I-人間の内面を探る〈自己・.

(17) SPGE(生徒参画型グループ・エンカウンター)プログラムが学級に及ぼす影響に関する一研究. 17. 個人内過程〉-サイエンス社 吉澤克彦. 1997. 構成的グループ・エンカウンターが学級の人間関係づくりに及ぼす効果. 日本カウンセリング学会第 30 号大会発表文集 吉澤克彦. 1996. 構成的グループ・エンカウンターが学級の人間関係づくりに及ぼす効果. 日本カウンセリング学会第 29 号大会発表文集 吉田道雄. 1989. 部研究紀要. pp.176-177 p.30. リーダーシップトレーニングにおける自己決定の分析 第 38 号. pp.295-302. 熊本大学教育学.

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参照

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