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トロピカルカーブの幾何について (可積分数理の新潮流)

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(1)

トロピカルカーブの幾何について

西納

武男

NISHINOU, TAKEO*

東北大学大学院理学研究科数学専攻

DEPARTMENT OF MATHEMATICS, TOHOKU UNIVERSITY

1

はじめに

近年量子群の結晶基底や可積分系における超離散化の操作において現れているトロピカル代数の概念で

あるが、通常の可換環と同様にトロピカル代数上の幾何学を考えることができる。そうして定義される幾 何学的対象がトロピカル多様体であるが、これは通常の多様体の $\neg$ 結晶化’と呼べるだけの性質を有してお り、 代数のときと同様に (結晶化 していない) 通常の多様体の性質を調べるのに用いることができる。 特にトロピカル多様体は区分線形な構造を有し、組み合わせ論的な考察、及び代数幾何におけるトーリック 多様体の手法を組み合わせることが有効な研究手段をあたえる。 とりわけ興味深い問題はトロピカル多様体と通常の多様体がいつ関係づけられるか、というものである。

先に述べたようにトロピカル多様体は組み合わせ的に定義できるので単体のようなパーツを組み合わせて

大域的な多様体を作ることが比較的容易にできる。 このような操作を通常の多様体で具体的に行うことは ほとんどの場合きわめて困難である。このことから、 トロピカル多様体は通常の多様体に比べて豊富に’

存在するのではないかと予想されるが、実際そうであり、通常の多様体に対応しないトロピカル多様体が多

く存在する。 この報告では一次元の場合に non-superabundant と呼ばれるクラスのトロピカル多様体が通常の多様体 に対応するという結果について説明する。

-次元のトロピカル多様体は特にトロピカルカーブと呼ばれ、

Mikhalkin [6] によって研究が始められ た。 そこではpatchworking[13] という手法が用いられているが、 これはトロピカル幾何の基本的な考え方 を直接的に実現したものと言える (patchworking はトロピカル幾何が現れる20年ほど前に既に考えられ ていた)。 特に (複素または実) ベクトル空間の超曲面が $\sim$ 結晶 (幾何的な言葉で言えば退化)’していく 様子を多項式の係数の極限操作によって記述することができ、それによって超曲面はトロピカル多様体に Hausdorffの意味で収束することが示せる。 これは具体的であると言う利点があるが、超曲面しか扱えない こと、 また退化を望ましい形にコントロールするために解析的な評価が煩雑になると言う欠点がある。ま たpatchworking による議論はトロピカル多様体に近い通常の多様体を作れるために、実際は真に極限まで は移行せず、 トロピカル多様体を表に出さずに議論することも可能である。 一方 $[10$、$8]$ においてはトロピカル幾何とトーリック多様体の手法を結びつけて代数幾何的に議論した。 この手法は超曲面に限らない点、 また退化とその逆操作 (smoothing) を代数幾何の変形理論 $(\log$変形理 論$)$ の枠組みで統一的に扱えると言う利点がある。 この方法はトロピカル多様体に

Hausdorff

収束するよ うな多様体の退化族を実際に作ると言うわけではなく、 この点をpatchworking と比較して予想されるよう “[email protected]

(2)

に、 この場合はトロピカル多様体の概念無しには議論が完結できない形になっている。真の極限操作をしな いといけないと言う点でpatchworkingに比較して弱いと受け取られるかもしれないが、実際にはこの枠組 みがトロピカル多様体を扱うのにより適していると言うことの発現と考える方が適切であるように思われ る。 この報告では主にこの手法で得られた結果について概説する。 なお、代数幾何的手法の更なる適用例として、[2, 3] においてミラー対称性と関係した任意次元の

Calabi-Yau

型のトロピカル多様体の変形理論が構築されていることは注目される。

2

トロピカルカーブ

21

トロピカル多様体とアメーバ

トロピカル代数$\mathbb{R}_{tro\rho}=(\mathbb{R}, \oplus, ),$$a \oplus b=\max\{a, b\}$,

a

$b=a+b$

は実数上のsemiring構造の族の極

限として書くことができる [13]。実際 $(\mathbb{R}, \oplus_{h}, _{h}),$$h\in(O, \infty)$ $a\oplus_{h}b=h\log(e^{a}7i+e\#),$$a_{h}b=a+b$

と定義すると $h\neq 0$ のときは $\mathbb{R}_{>0}arrow \mathbb{R},$$a\mapsto h\log a$によって $(\mathbb{R}, \oplus_{h}, _{h})$は$\mathbb{R}_{>0}$ の通常の加法と乗法の 定める semiring と同型である。一方 $harrow 0$の極限を取ることができて、$(\mathbb{R},$$\oplus_{h}$,Oh$)$ は$\mathbb{R}_{t\text{。}op}$に収束する。

以上の代数操作を幾何的に実現することができる。可逆な複素数全体 $\mathbb{C}^{*}$

は$\mathbb{R}\cross S^{1}$ $re^{i\theta}\mapsto(\log r,\theta)$

によって等角同値であるが、さらに $\mathbb{R}$

部分をスケーリングする

:

$\mathbb{R}\cross S^{1}arrow \mathbb{R}\cross S^{1}$, (lOg

$r,$$\theta$)$\mapsto(\epsilon\log r, \theta)$

$\mathbb{R}_{>0}$ からスケールした$\mathbb{R}$に至る操作は前に$\mathbb{R}_{>.0}$ と $(\mathbb{R}, \oplus_{\epsilon}, _{e})$ の同型を与えた写像と同じものである。幾

何的な立場からは、次のようにとらえることができる。すなわち、$\partial_{x},\partial_{\theta}$ を$\mathbb{R}xS^{1}$ の点における単位接ベ

クトルとして、 標準的な複素構造が$J\partial_{\theta}=\partial_{x},$$J\partial_{x}=-\partial_{\theta}$で与えられるが、 スケーリングの効果は複素構

造を$J_{\epsilon}\partial_{\theta}=\epsilon\partial_{x},$ $J_{\epsilon} \partial_{x}=-\frac{1}{\epsilon}\partial_{\theta}$ とすることに等しい。

このような複素構造の族に関して正則な平面曲線の族を考えてみよう。一般に $(\mathbb{C}^{*})^{n}$ から $\mathbb{R}^{n}$

への写像

$\log$ : $(\mathbb{C}^{*})^{n}arrow \mathbb{R}^{n},$ $(z_{1}.\cdots, z_{n})\mapsto(\log|_{\sim 1}^{v}|, \cdots, \log|_{\tilde{*}n}|)$ による $(\mathbb{C}^{*})^{n}$

の複素部分多様体$V$ の像を$V$ のア

メーバと呼ぶ。 例として平面曲線$V_{f}=\{(x, y)\in \mathbb{C}^{2}|f(x, y)=x^{-1}y-1+2+x+y=0\}$ のアメーバを考

えてみる。$f$は (分母を払うと) 3 次式なので種数 1 の平面曲線である。そのアメーバは次の図のような形

をしている。

$V_{f}$ 上に一般の位置にある 3 点$p.q,$$r$ を固定し、$J_{\epsilon}$ に関して正則で、$p,$

$q,r$ と交わり、 さらに $f$ と同じ

(3)

あり、 それを$f_{\epsilon}$ と書くと、 V.,$0<\epsilon<<1$ のアメーバは次の図のようになる。 $V_{f_{r}}$ のアメーバは$\epsilonarrow 0$ とともに図の内部に描いた区分線形な図形に Hausdorff収束する。この図形はト ロピカルカーブの例になっている。 以上は1節に触れたpatchworking の考え方である。

22

トロピカルカーブ

このようにトロピカル多様体は通常の幾何的対象の極限に現れるが、 そう考えずに直接的にトロピカル 多様体を定義することができる。すなわち、 トロピカル多様体を$\mathbb{R}_{trop}$上の幾何と考えて、$\mathbb{R}_{trop}$上定義さ れた多項式 (又はイデアル) の共通零点と定義するのである。 ここでは簡単のため一次元の、 実ベクトル空 間に埋め込まれたトロピカル多様体に限って議論する。 この場合のトロピカルカーブの定義は次のように 与えられる。 $\overline{\Gamma}$ を各辺に正整数の重みがついた有限グラフで、2叉の頂点は無いとする。$\overline{\gamma_{0}}$ を1叉の頂点の全体の集

合、$\Gamma=\overline{\Gamma}\backslash \overline{\Gamma_{0}}$ とおく。$\Gamma^{0},$$\Gamma^{1}$

を$\Gamma$ の頂点、 辺の全体の集合とする。重みは$w*:\Gamma^{1}arrow N\backslash \{0\}$ と与えられ

る。 $\Gamma$の flagを $F\Gamma=\{(V, E)\in\Gamma^{0}x\Gamma^{1}|V\in\partial E\}$ で定義する。$h$ : $\Gammaarrow \mathbb{R}^{n}$ は連続かつ properな写像で

任意の$E\in\Gamma^{1}$ に対し、 像$h(E)$ は有理数で表される傾きを持つアファイン直線に含まれるものとする。

の時、$u$ : $F\Gammaarrow \mathbb{Z}^{2}$を $(V, E)$ に $h(V)$ を始点とする $h(E)$ 方向のprimiti$\iota\prime e$ integral vectorを対応させるこ

とで定義する。 この時$(\Gamma, h)$ がトロピカルカーブとは、 各辺$E$について $h|_{E}$ は埋め込みであり、かつ各頂

点$V$ balancing condition $\sum_{E\in\Gamma^{I},V\in\partial E}w(E)u(V, E)=0$が成り立つ場合を言う。

トロピカルカーブの種数とは$\Gamma$の一次の整係数ホモロジーのランクと定義する。

トロピカルカーブの次

数を、 写像$\Delta$ : $\mathbb{Z}^{n}\backslash \{0\}arrow N_{\geq 0},$ $v\in \mathbb{Z}^{n}\backslash \{0\}$ に対して$\Delta(v)$ は $h(\gamma)$の有界でない辺$E$で、ただ一つの隣

接する頂点を $V$ と書く時$\Delta(v)=w(E)u(V, E)$ を満たすものの数、 と定義する。先の図のトロピカルカー ブは種数 $1$ 、 次数は (1,1),$(1, -2),$$(-2,1)\mapsto 1$、 他は$0$、 で与えられる。 トロピカルカーブの種数と次数を固定するとき、カーブの変形の仮想次元vdimが

$vdim=e+(n-1)(1-$

g$)$-2で与えられる。但し$e$ は非有界な辺の数である。 トロピカルカーブがsuperabundant とはカーブの実 際の変形次元がvdimよりも大きい場合を言う。典型的なsuperabundant カーブの例として、非自明なサイ クルで、$\mathbb{R}^{n}$ の真のアファイン部分空間に含まれるものがある様なトロピカルカーブは全てsuperabundant である。superabundantでないトロピカルカーブを non-superabundant という。なお、抽象的なトロピカ ル多様体の定義については [7] で行われているトロピカルカーブの抽象的な定義を高次元に拡張することが 可能であり、現在ある定義ではそれが最良のものと思う。

(4)

3

トロピカルカーブとトーリック多様体

この節ではトロピカルカーブとトーリック多様体の関連について記述する。

3.1

トロピカル多様体とトーリック退化

これを一次元扇とするような$\mathbb{R}^{n}$ の有理強凸多面錐による分割$\Sigma$ を取り、 それが定めるトーリック多様 体を $X_{\Sigma}$ と書く。

一方元のトロピカルカーブ$(\Gamma, h)$ を基にして$\mathbb{R}^{n}$ の有理凸多面体分割$\mathcal{P}$で次のような性質を持つものを

構成することができる。すなわち、$\mathcal{P}$の一次元スケルトン$\mathcal{P}^{[1|}$

の非有界な辺の方向ベクトルは $(\Gamma, h)$の次数

の定数倍に限る、かつ$h(\Gamma)$ $\subset \mathcal{P}$111。空間$\mathbb{R}^{n}\cross \mathbb{R}\geq 0$ においてこうして$\mathcal{P}$で分割した$\mathbb{R}^{n}$

を$\mathbb{R}^{n}\cross\{1\}$ に置

き、$(0,0)\in \mathbb{R}^{n}\cross \mathbb{R}_{\geq 0}$ を頂点とし、$\mathcal{P}$の各多面体で張られる錐の閉包の全体を取ると、

それらは$\mathbb{R}^{n_{X}}\mathbb{R}_{\geq 0}$

に扇の構造を入れる。この扇を $\Sigma_{P}$ と書き、 対応するトーリック多様体を$X_{Z_{\mathcal{P}}}$ と書く。

射影$\mathbb{R}^{n}\cross \mathbb{R}\geq 0arrow \mathbb{R}\geq 0$ によりトー$|)$ ック多様体の射$\pi$ : $X_{\Sigma_{\mathcal{P}}}arrow \mathbb{C}$ が与えられる。これは $\mathbb{C}$

上のフア

イバー空間であって、次の性質を持つ。すなわち、$X_{t}:=\pi^{-1}(t),$ $t\neq 0$ は全て$X_{\Sigma}$ に同型、$X_{0}:=\pi^{-1}(0)$

はトーリック多様体の和集合で、多面体分割$\mathcal{P}$を

dual

intersection complex に持つ。特に $\mathcal{P}$ の頂点と $X_{0}$

の既約成分が対応する。族$\pi$ :$X_{\Sigma_{\mathcal{P}}}arrow \mathbb{C}$ をトーリック多様体$X_{\Sigma}$ のトーリック退化と呼ぶ。

32

$X_{0}$

の極大退化曲線

$(\Gamma, h)$ は $\mathcal{P}^{|1]}$ に含まれていたから、 特に $h(\Gamma)$の頂点は $X_{0}$ のある既約成分に、辺はその余次元 1 の部分 多様体に沿った交わりに対応する。$\Gamma$ の頂点は全て三叉であると仮定すると、頂点$v\in h(\Gamma)$を始点とする 3辺は同一平面$H$上にあり、 この平面によって$X_{D}$ に作用するトーラス $G$ の、 2次元部分トーラス $G_{H}$ が定まる。このトーラス作用は $v$ に対応する $X_{0}$ の成分$X_{0,v}$への作用に自然に拡張し、一般の点のこの作 用による軌道の閉包は重み付き射影平面になる。重み付き射影平面は通常の射影平面からの被覆写像を持

つが、それによる直線の像として表される重み付き射影平面の有理曲線のことも直線と呼ぷことにする。

こ のような直線は重み付き射影平面内で

2

次元の自由度を持つ。 これは$v\in h(\Gamma)$ がそこから発する3辺の定 める平面内で自由度 2 で動けることに対応する。さらに重み付き射影平面自体も $X_{0.v}$ の中で$G/G_{H}$ によ る $n-2$次元の自由度を持つ。 これは平面$H$$\mathbb{R}^{n}$ で$n-2$次元の平行移動自由度を持つことに対応する。 $X_{0}$ 上の曲線$C$が極大退化しているとは、(i) 射影$Cx_{X_{0}}X_{0,v}arrow X_{0.v}$ による像は直線で、 トーリック

因子との交わりはその極大軌道上に限る。(ii)$Cx_{X_{\text{。}}}X_{0,v}arrow X_{0,v}$ は高々 2 成分で、$n\geq 3$ならば高々 1

(5)

$X_{0.v}$ の内部の1点で正規交差する可能性以外の特異点は $X_{0}$ の特異点集合上に存在し、そこにおける$C$ の branch は2成分である。 $h(\Gamma)$ の各頂点と対応する $X_{0}$ の既約成分内でこのような重み付き射影平面とその上の直線を考える。上 に述べたことにより、 このような直線は$X_{0}$ 内で合計$n$次元の自由度で動くことができる。対応して、$h(\Gamma)$ の各頂点も $\mathbb{R}^{n}$ 内で$n$次元の自由度で動き回る。極大退化曲線を作るには、$X_{0,v}$ で重み付き射影平面とそ の上の直線をいま述べた自由度によって動かし、$h(\Gamma)$の隣り合う頂点$v,$ $v’$ に対して、 それを結ぶ辺$e$ に対 応するトーリック因子上で2本の直線が交わるようにすればよい。一方、 トロピカルカーブも3叉頂点$v$た ちを$\mathbb{R}^{n}$ 内で動かして、辺がつながるようにすることで構成することが出来る。 この観察をもとにして、 やや複雑な線形代数の議論により、$X_{0}$ の極大退化曲線と$\mathbb{R}^{n}$ のトロピカルカー ブの間の対応関係を示すことが出来る。 正確な主張を述べるにはいくっかの記号や概念を導入する必要が あるのでここでは省略する。 詳しくは [10] を参照していただきたい。最後に、 この構成は曲線の種数が$0$ であることを使っていないことに注意する。すなわち、 トロピカルカーブと極大退化曲線の対応は全ての次 元で全ての種数の曲線に対して成り立つ。

4

極大退化曲線の変形と

superabundancy

前節でトロピカルカーブと $X_{0}$の極大退化曲線の間にはいつでも対応関係があることを述べたが、一方で 全てのトロピカルカーブがトーリック多様体$X_{t}$ の曲線に対応するわけではない。簡単な例がMikhalkin よって構成されている。

4. 1

Superabundant

カーブの例

辺があることを示している。左の図ではBalancing conditionにより、$A,$$B,$$C$ の左側は実際に紙面上にあ

り、$A,$$B,$$C$の右の unbounded3本の辺は紙面の斜め上向きである。$A,$$B,$$C$が無ければこれは平面トロ

ピカル3 次曲線で、 2 次元における Mikhalkinの対応定理により実際に $\mathbb{C}\mathbb{P}^{2}$

(6)

$A,$$B,$$C$がつくと今度は種数 1 の空間トロピカル3次曲線で、対応するのは $\mathbb{C}\mathbb{P}^{3}$ の種数 1 の 3 次曲線であ るはずである。 ところが$\mathbb{C}\mathbb{P}^{3}$ の種数

1

3

次曲線は必ずある超平面に含まれることが知られており、 このような曲線は

12 次元の自由度を持つ。一方で左の図のトロピカルカーブは 13 次元の自由度を持つ。従ってほとんど全

てのトロピカルカーブは正則曲線には対応しない。 他方、

右の図のトロピカルカーブも種数

1

の空間

3

次曲線であるが、

この場合は自由度は 12 次元で あって、 この形のトロピカルカー フは正則曲線に実際に対応する $[$9]。この違いは左のトロピカルカーブが superabundant であるのに対し、右のトロピカルカーブはそうではないことに起因する。このことは2節 の最後に記した仮想次元の公式によればこのタイプのトロピカルカーブの仮想次元は 12 であることから 直ちにわかる。幾何学的には、右側のカーブのサイクル部分は平面上に含まれず、相似拡大以外の変形が 出来ないことが確かめられるのに対し、 左側のカーブのサイクル部分は上に書いたように平面内に含まれ、 相似拡大以外の変形の自由度がある。 このことが余分な自由度を生んでいる。

4.2

極大退化曲線の変形

:

主定理

$=Non$

-superabundant

な場合の対応定理

先に述べたように、たとえsuperabundant なトロピカルカープであっても、$X_{0}$ の極大退化曲線とは対応 している。superabundancyが問題になるのは、この曲線をトーリック多様体$X_{t}$ の中に変形するときであ る。具体的には極大退化曲線 $C_{0}$ が与えられたとき、 その変形に対する障害が$C_{0}$ の (logarithmic)normal sheaf を係数とするコホモロジーによって与えられるが、superabundant の場合この部分の扱いが困難にな る。種数$0$ の場合はこの障害が常に消えており、 それを利用してトロピカルカーブと正則曲線の対応定理を 証明できた [10]。種数が正の場合は superabundant でなくても障害があるのだが、non-superabundant

場合は障害類をカーブ白身の変形のモジュライの自由度と相殺させることが出来てこの場合も対応定理が

示せる [9]。特に ambient spaceが2次元の場合はsuperabundant トロピカルカー

ブが存在しないので、 こ の手法を常に使える。Mikhalkinはこの場合に patchworkingの手法によって対応定理を示したのであるが、 [9]

は代数幾何の手法によるその統一的な一般化を与えている。

Superabundant

の場合はトロピカルカーブの組み合わせデータと障害類の関連を明らかにする必要があ

る。 これについては現在研究を進めている。

43

一般化

:

境界付き曲線

代数的な手法で対応定理を考えることのもう一つの利点は境界付き曲線の間の対応定理を扱える点にあ

る。

境界付き曲線を考えることは位相的場の理論の構成における重要な問題であり、

また Floer homology やopen

Gromov-Witten

不変量の立場からも最近研究されている[1, 4, 5, 12, 11]。[8, 9] ではトロピカル幾 何の立場からこのような曲線の研究にアプローチした。[8] ではディスクに対する対応定理を得た。 [9] では その手法を用いてsuperabundant でない境界付きトロピカルカーブを定義し、それに対する一般的な対応 定理を証明する。このような曲線を実際に数え上げるのは非常に困難に思われるが、 トロピカル幾何によ

るアプローチによってそれが可能になる場合があるのである。

また閉曲線と境界付き曲線の間の関係もこ の研究を通じて明らかになった。

(7)

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参照

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