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<論文>数の表し方に対する児童の捉えに関する調査研究

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(1)数の表し方に対する児童の捉えに関する調査研究. 数の表し方に対する児童の捉えに関する調査研究 教育デザインコース 数学専門領域. 隠居 菜美 1.はじめに (1)研究の背景. (1)2通りの表し方 十進位取り記数法は位置の違いを利用した数表記であ. 子供の数の理解に関する発達研究は,Piaget が体系的. るが,数の表し方には,属性の違いを利用したものもあ. に行った研究をはじめとして, それ以降サビタイジング,. る.つまり,数の表し方として,(A)属性の違いを利用し. 数唱,継承,記数性,序数性,計算などに関して,主に. たものと,(B)位取りのように位置の違いを利用したもの. 乳児から児童を対象に多くの研究が行われている(古池,. が挙げられる.. 山形,栗山).中原(1995)は,十進位取り記数法の指導に. (A)物の属性の違いを利用した表記. ついて,「我が国における通常の指導では,具体物を 10. 大きさや色,形などの物の属性を用いて表現する.属. ずつ,さらにそれをまた 10 ずつまとめる等々の活動は. 性で数の大きさを表すため,位取りの必要はない.(図 1). なされるけれども,その後すぐに位取りの表記に移るこ. 例えば,ローマ数. とが多い」と述べている.また, 「タイル 100 枚や棒 100. 字やバビロニアの数. 本がいくつという絵についての思考では100 を1 つとみ. 字,エジプト数字な. る捉え方が弱く,位置の違いに意味があること,という. どがこの表記に当た. 『位取り』が意識されていない」ということを指摘して. る.例えばローマ数. いる.. 字では 10 を「X」,. 児童が「位取り」を意識できるような指導を考える必. 100 を「C」と表し,. 要があるが,その指導を考えるにあたってはまず児童の. それらを使って数を. 実態を捉える調査研究を行う必要がある.. 表す.つまり「120」. (2)研究の目的と方法. であれば「CXX」と. 本研究の目的は,位取り板を用いた十進位取り記数法. 加法的に表されるこ. 図1 属性の違いを利用した数表記. の学習が扱われる第 1 学年から第 4 学年の児童を対象に. ととなる.. 数の表し方に対する捉えを問う調査問題を実施し,数の. (B)位置の違いを利用した表記. 表し方に対する児童の認識の特徴を明らかにするととも. 単位を表す位を設. に,今後の指導への示唆を得ることする.研究の方法は. 定し,各位に同じ記. 以下のとおりである.. 号を用いて表現す. まず,現行の教科書における位取り板の取り扱いにつ. る.物の属性はすべ. いて分析し,位取り板の捉え方にはどのようなものがあ. て同じであるため,. るのかを明らかにする.. 位取りを行う必要が. 図2. 生じる.なお,現行の. 位置の違いを利用した数表記. 次に,児童の数の表し方や位取り板に対する認識を明 らかにするための調査問題を作成する.. 教科書においては(A)と(B)の表記が同時に用いられる表. そして,作成した調査問題を実施し,児童の数の表し. 記(図 3)がみられる.この表記の場合,例えば,図 3 は 10. 方や位取り板に対する認識の捉え方についての特徴や学. の束が 2 つとバラが 3 つで「23」という見方と,十の位. 年間の違いについて考察するとともに,今後の指導への. に 10 の束が 2 つで 20 と一の位にバラが 3 つで「203」. 示唆を得る.. という見方の 2 通りの捉え方が出てくる.現行の教科書 では,主に低学年の教科書において,位取り板の中に数. 2.数の表し方について. え棒やタイル等の属性の異なる記号が用いられるなどし 教育デザイン研究. 第 10 号(2019 年 3 月). 30.

(2) 数の表し方に対する児童の捉えに関する調査研究. てこのような表記が扱われている. (2)教科書における位取り板 佐々(2012)は,図 3 のように位取り板に大きさの異な るブロックを用いる表記を取り上げ,「このような位取 り表の表現方法は,数と量を結び付けて理解させようと する日本の教科書では一般的な表現方法である.」と述. 図 6 部屋考え方を. 図 5 位取り板に具体物 を用いた表記. 用いた表記. 第 2 学年においても,位取り板の中に,ブロックや数 え棒などの具体物や,数カードなどの半具体物を用いた 表記がなされている.「1000 より大きい数」の単元にな ると,位取り板の各位に属性の同じ記号を用いた表記(図 図3 教科書の表記. 7)が扱われ始める教科書がある.また,トピックとして 「同じ色のおはじき 3 枚でどのような数が作れるかを考. べている.一方で,長谷川(2002)が「タイルを半具体物. える」という内容が扱われている教科書もある.これら. としてのみ使用するのであれば問題はないが,位取り記. は,位取り板を「仲間分けのための部屋」ではなく「位. 数法の教具として用いる点が問題である.」と述べてい. 置の違い」として扱っている.. ることや,片桐(1991)が「(各位に同じ記号を用いた表記) が位置によるものである.位取り板に数え棒やブロック をおくのは問題である.これでは,十の位に 20 個入っ ているので,200 を表すようにとれる.」と述べている ように,位取り板の中にブロックなどを用いる表記につ. 図 7 位取り板に属性の同じ記号を用いた表記. いての批判もある.また,学習指導要領解説において, 「十進位取り記数法は,(中略),位ごとに異なる記号を用. 第 3 学年になると,単元の導入の際には,数カードな. いるのではないところにその特徴がある.」と述べられ. どの半具体物が用いられているが,その後はすべて属性. ている.. の同じ記号を用いた表記や数字のみの表記が用いられて. 上記のような指摘があるが,実際には,現行の教科書 (6 社)について,位取り板を用いた表記がどのように扱わ れているのかをまとめる.なお,分析の対象は位取り板 を用いた表記が扱われる第 1 学年から第 4 学年の記数法. いる. 第 4 学年では,半具体物も用いられず,位取り板には 数字のみの表記が扱われている. 以上から,教科書の表記に関しては第 2 学年の後半か. の学習単元や筆算の学習単元とする.. ら第 3 学年にかけて,「仲間分けのための部屋」という. ①記数法の学習における位取り板を用いた表記について. 扱いから「位置の違い」という扱いへと移行がされてい. 第 1 学年では,「20 より大きい数」において数の学習 で初めて位取り板が出てくる.この単元では,位取り板 の中にブロックや数え棒などの具体物が取り扱われてい. る. ②筆算の学習における位取り表を用いた表現 第 2 学年,第 3 学年の筆算の学習においても位取り板. る.(図 5)その際に,バラバラにおかれた数え棒を「10 の. を用いた表記が扱われている.その際の表記は,位取り. 束」と「バラ」に分けて位取り板の各位に整理するよう. 板に数字だけを入れるのではなく,具体物としてブロッ. な表記や十の位に当たる場所を「はこのへや」一の位に. クや数え棒,数カードが用いられた表記となっているも. 当たる場所を「ばらのへや」としてブロックをおく表記. のが多い.. (図 6)がみられた.これは,位取り板を「仲間分けのため の部屋」として取り扱っている.. 例えば,このような表記は,記数法の学習で位取り記 数法は位置の違いに意味があることを理解し,位取り板 の中に属性の同じ記号を用いた表記を理解した児童にと 教育デザイン研究. 第 10 号(2019 年 3 月). 31.

(3) 数の表し方に対する児童の捉えに関する調査研究. って,再び位取り板が「仲間分けのための部屋」として 扱われることになる.その結果,その児童にとって,本. (4)数の表し方に関する先行研究 佐々(2012)は,「おはじきと位取り表」を操作的証明. 来別々に使われるはずである属性の違いを利用した表現. の道具として利用す. と位置の違いを利用した表現の 2 つの表現が混在した表. るにあたって,その基. 記となってしまい,どちらで考えればよいのかと混乱し. 本的な操作について. てしまう可能性がある.. の学習者の実態を明. (3)児童にとっての位取り板の解釈とその指導. らかにすることを目. 教科書における位取り板の表記を見たところ,位取り. 的として,第 5 学年の. 板の捉え方として,(a)位置の違いという捉え方と(b)仲間. 児童を対象に位取り. 分けのための部屋という捉え方の少なくとも2つがある.. 表におはじきで示さ. 図8. (a)位置の違いという捉え方. れた数を読むことや. 佐々が調査で用いた位取り表. 十の位にある数字と一の位にある数字は,同じ数字で. 数をおはじきで表現. も数としては異なる.例えば,十の位にある 2 は 20 を. することに関する調査を行っている.結果としては,概. 表し,一の位にある 2 は 2 を表す.この捉えの場合,各. ね児童は表現のルールを理解し,おはじきで表された数. 位に同じ属性の記号が入ることとなり,十の位に 10 の. を読んだり数をおはじきで表現したりすることはできる. 束,一の位にバラといったように属性の異なる記号が用. としている.しかし,その調査においては教科書で扱わ. いられることはない.各位で 10 個集まると次の位へと. れている位取りの表現(図 3)は示さずおはじきと位取り. 移行する必要がある.. 表による数の表現のみ(図 8)を扱ったため児童はその表. (b)仲間分けのための部屋という捉え方. 記の違いに混乱せずに理解ができた可能性もあるとして. 各位はそれぞれの大きさをもつものを整理するための. いる.この研究で対象とされた第 5 学年は第 4 学年にお. 部屋であり,例えば,十の位は十の束を入れる部屋で一. いて,十進位取り記数法のまとめまで学習済みである.. の位はバラを入れる部屋として扱われる.この場合,各. 記数法について学習中である第 1 学年から第 4 学年の児. 位には属性の異なる記号が入ることとなり,例えば,十. 童はどのようにとらえるのかを明らかにしていく.. の位の数が 2 であるとき,十の位の2は 10 の束が 2 つ あることを意味するため20 を表すことになる. つまり, 位置の違いを利用した表記ではなく,属性の違いを利用 した表記といえる.. 3.調査の枠組み 「2(2)教科書における位取り板」の中で現行の教科書 では本来別々に使われるはずである属性の違いを利用し. 上記の(a),(b)の捉え方に関して,片桐(1991)は,「表. た表現と位置の違いを利用した表現の 2 つの表現が混在. 記された数を見て,『左の十の位の 2 は,10 の束が 2 つ. した表記となっていると述べた.このような表記は具体. ということで 20 です.』といった数構成についてはよ. 物と結び付けて理解を促すことができるなど利点がある. くわかっていても,それは位取り記数法が分かっている. が,その反面,児童の中には児童はこのような表記がな. ということではない.」と述べている.位取り板を「仲. されることによって混乱をしてしまう児童や,その表記. 間分けのための部屋」という捉え方で考えているときに. が本来意図していることとは異なる捉えをしてしまう可. は,数構成についての理解がしやすい.しかし,それだ. 能性があるのではないか.そこで,実際に数の表し方や. けでは,位取り記数法の理解としては不十分であると指. 位取り板についてどのようにとらえているのかを明らか. 摘されており,片桐(1991)は「書く位置の違いによって,. にするために調査を行う.. 10ⁿや 10⁻ⁿの大きさを表すのだという十進位取り記数法. (1)調査目的. のアイデアの発見はなかなか難しいことである. しかし,. 調査の目的は,数の表し方や位取り板に対する児童の. 小学生のどこかの段階で明確に認識させたい.」と述べ. 捉えの特徴を明らかにすることである.. ている.それらを踏まえると,小学校のいずれかの学年. (2)調査対象. で「仲間分けのための部屋」という捉え方から「位置の 違い」 という捉え方へと移行することが求められている.. 調査対象は,神奈川県立小学校第1学年 101 名,第 2 学年 103 名,第 3 学年 122 名,第 4 学年 111 名の計 437 教育デザイン研究. 第 10 号(2019 年 3 月). 32.

(4) 数の表し方に対する児童の捉えに関する調査研究. 名である.調査時期は 2018 年 2 月上旬である.なお, 全学年とも各学年の数に関する学習内容は既習となって. ことができる. 問題 1(2)は,位の中に属性の異なる記号を入れて表現. いる.. した問題である.十の位には 10 を表す黒丸を,一の位. (3)調査問題と出題の意図. にはバラを表す白丸を入れている.予想される児童の回. 調査問題は,位取り板を用いて表された数を数字で答. 答としては,「45」「405」があげられる.「45」と回. える問題(図 9)を 3 問と,位取り板を用いた表記として. 答する児童は,位取り板は「仲間分けのための部屋」と. 正しいと思うものを選びその理由を記述する問題(図 10). いう捉え方をしているため, 十の位には10 を表す黒丸,. の計 4 つを行った.なお,各問題ともに,白丸が 10 個. 一の位にはバラを表す白丸が入っていることに疑問を感. 集まると黒丸になるという前提条件を言葉と図を用いて. じていない可能性がある.もしくは,位取りについては. 提示し,問題 1 については例題を提示している.問題 2. 考慮しておらず,属性のみに着目して見ている可能性も. については,会話の形式で問題を提示し,問いに流れが. ある.いずれの場合も,10 集まると繰り上がるという点. 見えるようにした.問題 1 では記号を用いて表された数. に関しては考慮していないといえる. 「405」と回答する. を読み取るときの子どもの捉えの特徴を,問題 2 におい. 児童は,位取り板は「仲間分けのための部屋」という捉. ては数を記号を用いて表すときの子どもの捉えの特徴を. え方をしておらず,十の位に 10 を表す黒丸が入るので. 明らかにすることができる.さらに,問題の与えられ方. はなく,十の位に 10 ができたら次の位に繰り上がると. や読み取るときと表すときとでは捉え方が異なっている. いう「位置の違い」という捉え方で考えていると捉える. 可能性があるため,それらについて 2 つの問題のクロス. ことができる.. 分析をすることにより児童の数の表し方の認識に関する. 問題 1(3)は,十の位にはバラを表す白丸,一の位には. 一貫性を明らかにしていく.以上のことから,問題 1 と. 10 を表す黒丸を用いて表現している.この問題では,十. 問題 2 を設定し,調査を行う.. の位に白丸があることから,位取り板を「仲間分けのた. それぞれの出題意図と予想される児童の回答について. めの部屋」として用いることは意図されておらず,一の. 述べる.. 位の 10 を十の位へと繰上りできるかどうかが問われる. ①位取り板を用いて表された数を数字で答える問題. ことになる. 予想される児童の回答としては, 「70」 「52」. 問題 1 は位取り板を用いて表された数を数字で答える. 「25」があげられる.「70」と回答する児童は,一の位 の黒丸が 10 であり,繰り上げる必要性を理解している. 問題 3 問である. 問題 1(1)は,十の位にも一の位にも同じ属性の記号(白 丸)を用いて表現した問題である.. と捉えることができる.「52」と回答する児童は,属性 については考慮しておらず,それぞれの位にある記号の 数を見ていると捉えることができる.「25」と回答する 児童は,位取り板を考慮せず,黒丸が 10 であり白丸が バラであるという属性のみに着目して見ていると捉える ことができる. ②位取り板を用いた表記として正しいと思うものを選び その理由を記述する問題 問題2は「32」という数の位取り板を用いた表し方を 2 種類(あすかさんの考え,けんとさんの考え)提示し,そ のどちらの考えに賛成するか,もしくはどちらにも賛成. 図 9 問題1. するか,及び,その理由を問う問題である.. 予想される児童の回答としては,「64」「10」があげ られる.「64」と回答する児童は,位置に着目してみて いると捉えることができる.「10」と回答する児童は, 位取り板があるにもかかわらず,バラを表す白丸の個数 を回答しており,属性のみに着目してみていると捉える 教育デザイン研究. 第 10 号(2019 年 3 月). 33.

(5) 数の表し方に対する児童の捉えに関する調査研究. るときと表すときに一貫して属性に着目して見ているの か,位置に着目して見ているのか,問題の提示のされ方 によって見方が変化するのか,について児童の認識の特 徴を明らかにする.また,学年間での差異を比率の差の 検定をもとに明らかにする. なお,本調査は紙面での調査問題となっており,イン タビュー等の実施はしていないため,以下のような児童 がいた可能性があるがその特定まではできていない.こ れらを特定することは今後の課題である. a:白丸が 10 個集まると黒丸になるという前提条件につ いて理解ができず答えることができなかった児童や誤っ た解釈の下で回答した児童 なお,これらの児童の中には,問題文の意味が理解で 図 10 問題2. あすかさんの考えは,十の位に 10 を表す黒丸を,一. きなかった児童や,タイルや数え棒ではなく白丸や黒丸 という記号を用いたことで理解が難しかった児童が含ま. の位にバラを表す白丸を入れて表現している.この表現. れると考えられる.. は,位取り板を仲間分けのための部屋として認識してい. b:問題 1(1)~(3)は同じに見えるがわざわざ異なる表記. る児童にとっては自然なものであり,教科書で扱われて. をしているから答えも違うだろうなどのように,並べて. いる,位取り板の中に属性の異なる記号を用いた表記に. 提示したことに影響を受けた児童. 近いものとなっている.この考えを選択する児童は,数. c:問題 2 の記述において,自分の考えはあったが,記述. を属性に着目してみている,もしくは,位取り板を「仲. としてうまく表現できなかった児童. 間分けのための部屋」と認識していると捉えることがで きる. けんとさんの考えは,十の位にも一の位にもバラを表 す白丸を用いて表現している.この表現は,位ごとに異. また,本調査に際して前学年までの指導について把握 できていないためこれまでの指導による影響は測れてお らず,1 校のみを対象としているため,使用している教 科書の違いによる影響は明らかになっていない.. なる記号を用いるのではなく位置の違いを利用するとい う十進位取り記数法の特徴を用いている.この考えを選 択する児童は,位取り板による表現を「位置が違うこと. 4.調査の結果・分析 (1)各問題の結果と分析. に意味がある」と認識していると捉えることができる.. それぞれの問題について,位置の違いに着目して回答. どちらにも賛成を選択する児童は,黒丸が 10 を表し. する児童,属性に着目して回答する児童,位取り板を「仲. ているという属性について無視し,あすかさんの考えも. 間分けのための部屋」と認識していると考えられる児童. けんとさんの考えも十の位に 3 つの丸と一の位に 2 つの. がいた.位取り板を用いた同じ表記についても見方によ. 丸があるとみていると捉えることができる.. って児童の回答は異なっていることがわかった.. (4)分析の方法. ①問題 1(1). 調査結果の分析は,各問題の分析と問題 1 と問題 2 の クロス分析の 2 通りで行う.. 約半数(266 名,61%)が「64」と回答しており,位置 の違いに着目していると捉えることができる.ただし,. 各問題の分析ではそれぞれの回答率から, 数表記につい. 位取り板は位置の違いに意味があると理解していない児. て属性に着目して見るのか位置に着目して見るのか,ま. 童も含まれていることが考えられる.また,「10」と回. た位取り板をどのようにとらえているのか,について児. 答している児童は 145 名(33%)いることから,学年を問. 童の認識の特徴を明らかにする.また,学年間での差異. わず位置については無視しており,属性のみに着目して. を比率の差の検定により明らかにする.. 数表記を見ている児童がいることがわかった.. また,問題 1 と問題 2 のクロス分析より,数を読み取. 学年間での差を見ると,「64」と「10」ともに,3年 教育デザイン研究. 第 10 号(2019 年 3 月). 34.

(6) 数の表し方に対する児童の捉えに関する調査研究. 生と4年生の間に有意な差がみられた.つまり,4 年生. 「70」と回答した児童は 104 名(24%)であり,この児. では,属性で見る児童が減り位置で見ている児童が増え. 童は「位置の違いに意味がある」ことを理解していると. ているといえる.教科書においても,属性の異なる記号. ともに,繰上りについても理解ができているといえる.. を用いた表記が減り,同じ記号で位置の違いを用いた表. 一方で「52」と回答した児童 112 名(26%)は,繰上りに. 記が増えていることで,位置の違いに意味があるという. ついて考えておらず,属性を無視して位置のみに着目し. ことへの意識が向きやすくなっている可能性がある.. て考えていると捉えることができる.また,「25」と回. 表 1 問題 1(1)の回答数と割合. 答した児童 161 名(37%)は,位取り板を用いているにも かかわらず位置については無視し,属性のみに着目して 考えていると捉えることができる. 表 3 問題 1(3)の回答数と割合. ②問題 1(2) 「405」 と回答した児童は 69 名(16%)のみであったが, この児童は,「位置の違いに意味がある」ことを理解し ており,繰上りについても理解ができていると捉えるこ とができる.「45」と回答した児童は 338 名(77%)と約. 学年間での差を見てみると,「70」「52」「25」すべ. 8 割に上る.この児童は,属性に着目して見ているもし. てにおいて, 1 年生と 2 年生の間に有意差がみられ, 「70」. くは,位取り表を「仲間分けのための部屋」と考えてい. と「25」は 3 年生と 4 年生の間,「52」は 2 年生と 3 年. ると捉えることができる.. 生の間に有意差がみられた.「70」について 1 年生と 3. 表 2 問題 1(2)の回答数と割合. 年生の間で差がみられるのは,筆算の学習で「一の位に 10 の束ができたら繰り上がる」ということを位取り板を 用いて学習したことが影響している可能性もある. ④問題2 あすかさんの考えに賛成,けんとさんの考えに賛成, どちらにも賛成,それぞれ選択した児童の人数と割合は 表 4 の通りである. 表 4 問題 2 の回答数と割合. 学年間での差を見ると,「405」に関しては1年生と 2 年生の間, 2 年生と 3 年生の間に有意な差がみられ, 「45」 に関しては 2 年生と 3 年生の間に有意な差がみられた. ただし,第 1 学年に関しては,百の位についての学習を 行っていないため, 「405」という回答をした児童が出て こなくても自然なことである.2 年生と 3 年生の間の差 については,教科書において,位取り板に属性の異なる 記号を用いた表記から同じ属性の記号を用いた表記へと 移行している時期であり,それが児童の認識に影響して いる可能性がある. ③問題 1(3). あすかさんの考えに賛成を選択した児童は 278 名 (64%)と 6 割以上である.あすかさんの考えを選んだ児. 教育デザイン研究. 第 10 号(2019 年 3 月). 35.

(7) 数の表し方に対する児童の捉えに関する調査研究. 童は,属性に着目して数の表し方を捉えており,けんと. 表現の移行が行われていると捉えたとき,3,4年生で. さんの考えを選んだ児童は,位置に着目して数の表し方. は児童の捉え方も移行していることが考えられるが,少. をとらえているとみると,6 割以上の児童が,属性に着. なくとも 51 名(22%)は,移行がなされていないというこ. 目してみているということがわかる.特に,第3,4 学. とになる.これは,低学年時から教科書等で位取り板の. 年の記数法の学習において,教科書の位取り板を用いた. 中に異なる属性の記号を用いた表記を見慣れており, 「仲. 表記は,各位に属性の同じ記号を用いる表記に移行して. 間分けのための部屋」という捉え方が自然なものになっ. いるが,属性で捉えている児童が 132 名(57%)いる.こ. ている可能性がある.. こから,10 がいくつとバラがいくつという数構成につい ては理解できていたとしても,位置の違いに意味がある という「位取り」を理解できているとは言えない児童が. けんとさんの考えを選択した児童の記述は 3 つに分類 しており,それぞれの割合は以下の通りである. 表 6 問題 2 けんとさんの考えを選んだ理由. おり,学年が上がるにつれて自然とそれを理解できるよ うになる児童が大半とは言えない可能性がある. カイ二乗検定を実施したところ,学年間での有意差が みられた(p<0.01).また,あすかさんの考えを選択した 児童とけんとさんに賛成した児童の割合について,2 年 生と 3 年生の間に有意な差が認められた(p<0.05).なお, 1 年生と 2 年生の間,3 年生と 4 年生の間については有 意な差は認められなかった. 次に,それぞれを選択した児童の理由の記述を見てい. アの記述は,「白丸が十こで十になるけど上に十の位. く.あすかさんの考えを選択した児童の記述は 3 つに分. とかいてあるので白丸でいいと思ったのでけんとさんに. 類しており,それぞれの割合は表 5 の通りである.. さんせいしました.」のように十の位にも一の位にもバ. 表 5 問題 2 あすかさんの考えを選んだ理由. ラを表す白丸を入れる,つまり,属性の同じ記号を用い るということが読み取れるものである.イの記述は, 「十 の位に分けて説明するとあすかさんは十の位が黒丸が 3 個入っています.これだと 10 が 10 個で 100 になって しまうのであすかさんは 302 になってしまいます.だか らけんとさんだとわかりました.」のように,十の位に 黒丸があると 10×10 になってしまうということが読み 取れるものである.ア,イともに「位置の違い」と認識 していると読み取ることができる記述である.つまり,. アの記述は,「黒丸が 30 で白丸が 2 で 32.けんとさ. 位置に着目しており,「位置の違い」と理解していると. んの考え方だったら十の位が黒丸じゃないからけんとさ. 考えられるのは,65 名(14%)であり,「仲間分けのため. んのかんがえだったら合わせて 5 になってしまうから. 」. の部屋」と捉えている児童と比べて少ないといえる.. のように,十の位は黒丸,一の位は白丸でなければなら ないということが読み取れるものである.イの記述は,. 両方の考えを選択した児童の記述は 3 つに分類してお り,それぞれの割合は表 7 の通りである.. 「あすかさんは黒丸 3 個で 30 個だから白丸を2こで2. アの記述は,「どちらも 32 であすかさんは十の位が. だから 32 といっているから賛成.」のように,あくまで. 黒丸になっているだけだからです.表し方が少しちがっ. 10 を表す黒丸が 3 つとバラを表す白丸が 2 つといった. ても書いてあることはだいたいおなじだからです.」の. 属性に着目してみていると読み取れるものである.. ように,属性について無視しており,位置によってのみ. アのように,位置に着目してはいるものの,位取り板. 考えていると読み取れるものである.イの記述は,「○. は「仲間分けのための部屋」と捉えている児童は 111 名. が 10 こで●なのであすかさんの考えも正しいと思いま. 25%と約 3 割に上る.2年生の後半から3年生にかけて. す.○であらわしていますが十の位と一の位で分けてい 教育デザイン研究. 第 10 号(2019 年 3 月). 36.

(8) 数の表し方に対する児童の捉えに関する調査研究. るのでけんとさんの考えも正しいと思います.」のよう. A, B, C の児童は一貫性があると捉えられる. ただし,. に, 属性を中心としてみるとあすかさんの考えも正しく,. 位取りについて理解ができている児童は A の児童のみ. 位を用いて表すなら,けんとさんの考えでも問題ないと. であり,B の児童や C の児童は一貫性はあるが, 位取り 表 8 A~E の児童の人数と割合. いうように意味を理解した上でどちらもを認めていると. の理解ができているとは言えないと考えられる.なお,. 読み取れるものである.. それぞれの詳細は以下のとおりである.. 表 7 問題 2 両方の考えを選んだ理由. (2)問題 1 と問題 2 のクロス分析 問題 1 と問題 2 のクロス分析より,数表記の種類と一 貫性に着目して分析を行った.この分析より,一貫性の ない児童が約半数いるということが明らかになった. 児童の認識の分類は以下の五通りで行い,それぞれの 人数とその割合は表 8 のとおりである. A:属性と位置が混在しているときに属性のルールと位 置のルールを理解している. B:属性を無視して位置のみに着目して考えている. C:位置を無視して属性のみに着目して考えている. D:問題の与えられ方によってどちらで考えるかが変わ る. E:上記以外(問題 1(1)~(3),問題 2 のどれかに空欄があ る等). A の児童の回答は,問題 1(1)が「64」,問題 1(2)が 「405」,問題 1(3)が「70」,問題 2 が「けんとさんの 考え」である.B の児童の回答は,問題 1(1)が「64」, 問題 1(2)が「45」,問題 1(3)が「52」,問題 2 が「両方 の考え」である.C の児童の回答は,問題 1(1)が「10」, 問題 1(2)が「45」,問題 1(3)が「25」,問題 2 が「あす かさんの考え」である.D の児童の回答は,問題 1(1)が 「10」または「64」,問題 1(2)が「45」または「405」, 問題 1(3)が「25」「52」「70」のいずれか,問題 2 が「あ すかさんの考え」「けんとさんの考え」「両方の考え」 のいずれかである.それぞれの人数とその割合は表 8 の 通りである. ①一貫性のある児童. A の児童は 44 名(10%)のみである.この児童は,属性 の違いによる表記や位置の違いに意味があるということ, 繰上りについて,しっかりと理解できていると捉えるこ とができる.学年間の差を見たところ,2 年生と 3 年生 の間に有意な差が認められた.3,4 年生になると 2 割ほ どではあるが,位置に着目した見方ができるようになる 児童が増えていることがわかる.教科書において,表 記の移行が行われている時期であり,それが影響してい る可能性がある.これらの児童は十進位取り記数法の理 解ができていると捉えることができる.しかし,理解で きるようになってからも教科書における表記が属性の違 いを利用した表記と位置を利用した表記が同時に扱われ るとき,これらの児童にとっては,属性と位置とが混在 した表記となってしまい,どのように捉えたらよいのか という混乱につながってしまう可能性がある. B の児童は,13 名(3%)と少なく,学年間の差を見たと ころ, どの学年間でも特に有意な差は認められなかった. C の児童は 107 名(25%)であり,3 年生が 29%,4 年 生になっても 14%いる.位取り板が用いられているにも かかわらず属性のみに着目して捉えており,位取り記数 法についての理解はなされていないことが考えられる. 学年間の差を見たところ,3 年生と 4 年生の間に有意な 差が認められた(p<0.05). ②一貫性のない児童 D の児童は,例えば問題 1 では属性のみに着目して解 教育デザイン研究. 第 10 号(2019 年 3 月). 37.

(9) 数の表し方に対する児童の捉えに関する調査研究. 答しているが,問題 2 では位置に着目して解答している. してそのような表記を取り扱うことなどが考えられる.. など,問題の与えられ方によって見方が変わっている.. また,表の C の児童のうち 3,4 年生 51 名(22%)のよ. これらの児童は 180 名(41%)であり,4 年生になって. うに捉え方の移行ができておらず属性にのみ着目して見. も 4 割を超えている.なお,学年間の差を見たところ,. ている児童がいることから,表記の移行をする際には,. どの学年間でも特に有意な差は認められず,学年が進行. 児童の認識も変化するように移行を促す指導が必要であ. しても減少傾向にないことが指摘できる.これらの児童. ることが示唆される.さらに,表 9 の D の児童 180 名. は,授業の中でも,問題の与えられ方によって見方が変. (41%)のように問題の与えられ方によって,属性に着目. わることがあり,特に,記数法の学習では,位取り板の. して見るのか位置に着目して見るのか,見方が変わる児. 中に属性の同じ記号を用いる表現が扱われ,筆算の学習. 童がいたことから, 位取り板を用いた指導を行う際には,. では位取り板の中に属性の異なる記号を用いる表現が扱. 位取り板を「位置の違いに意味がある」,「仲間分けの. われる時期などに,その見方の違いが影響することで,. ための部屋」のどちらで捉えるのか,その捉え方につい. 学習が理解できない可能性ある.. ての共有を行うことで,児童の捉えと表記とにズレが生. (3)今後の指導への示唆. じたままの指導にならないようにしていく必要があると. 現行の教科書において,位取り板は「仲間分けのため. いえる.. の部屋」から「位置の違い」へと表現の移行がなされて いた.しかし,調査から,表 9 の C の児童のうち 3,4. 5.知見と今後の課題. 年生 51 名(22%)のように捉え方の移行ができておらず. 本研究では,数の表し方や位取り板に対する児童の捉. 属性にのみ着目して見ている児童や,表 9 の D の児童の. えの特徴を明らかにすることを目的とした調査を行った.. うち 3,4 年生 89 名(38%)ように位置の違いに意味があ. その結果,学年進行に伴い属性のみによる認識は減少傾. ることを理解ができていても移行が行われるがゆえに混. 向にあり,位置による認識は増加傾向にあるものの,場. 乱している可能性のある児童がいることが分かった.こ. 面によって属性と位置の認識に一貫性がない児童,すな. のように全体の 6 割を占める C,D の児童,特に 4 年生. わち位置による認識を確実に理解しているとは言えない. は学年の 4 割以上であるが,それらの児童にとって,属. 児童が各学年に一定の割合で存在していることを明らか. 性と位置の混合した図が位置で認識することへの弊害と. にすることができた.そのことから,属性から位置への. なっている可能性があることから,表記を移行するので. 認識の移行を促す指導について考える必要があるという. はなく,1 年生で初めて位取り板を用いた学習を行う時. ことがいえた.また,属性と位置の混合した図を使用す. から属性の同じ記号を用いた表記を用いて指導するとい. ることが 6 割以上の児童にとって,位置で捉えることへ. うことも検討する必要があるといえる.. の弊害となっていることから,混合の図を取り扱うこと. 次に,現行の教科書のように,表記を移行するという 立場に立った場合についてのべる. 教科書分析から,記数法の学習では表記が移行したに. 自体を検討すべきであることが分かった. 以上を踏まえて,今後の研究課題として以下の 2 つを 設定する.. も関わらず筆算の学習では再び 「仲間分けのための部屋」. ①混合の図を用いず,最初から位置のみでの指導を行う. として扱われていることが分かった.「位置の違い」と. ことの可能性と弊害を明らかにすること.. 理解した児童にとって,属性の違いを利用した表現と位. ②属性から位置への認識の移行を促す指導をどのように. 置の違いを利用した表現の 2 つの表現が混在した表記と. 行うか考えること.また,その指導の際に属性から位置. なってしまい,どちらで考えればよいのかと混乱してし. への移行を促す際に混合の図が弊害となってしまう児童. まう可能性が考えられることから,記数法や筆算など位. にとっての混合の図の有効性と弊害を明らかにすること.. 取り板を用いる指導全体の流れを踏まえてどのように扱 うのかを考える必要がある.例えば,繰り上りのある足. 参考・引用文献. し算の筆算の学習の前の段階で,各位に同じ記号を用い. 片桐重男.(1991).新・算数指導実例講座 第 2 巻 数. て表現するという位取りの原理についての学習を取り扱 ったうえで,その後の筆算の学習などにおいては,一貫. と計算[低学年].株式会社金子書房 栗山和広.(1998).子どもの数概念の発達について.宮 教育デザイン研究. 第 10 号(2019 年 3 月). 38.

(10) 数の表し方に対する児童の捉えに関する調査研究. 崎女子短期大学紀要,第 24 号,81-96. 古池若葉.(2016).数表記・数詞・具体物の三項関係に 関する論考.京都女子大学発達教育学部紀要,第 12 号, 99-106. 佐々祐之.(2012).数学教育における「操作的証明 (Operative proof)」に関する研究(Ⅱ)-おはじき と位取り表の操作に関するインタビュー調査を通し て-.全国数学教育学会誌,数学教育学研究,第 18 巻,第 2 号,77-89. 中原忠男.(1995).算数・数学教育における構成的アプ ローチの研究.聖文新社. 長谷川雅枝.(2002).小学校算数の教科書の現状と課題. 教育研究所紀要. 山形恭子.(2015).数の理解と産出における初期発達― 数表記・計数を中心とした研究の概観―.京都ノー トルダム女子大学研究紀要,第 45 号,71-83. 文部科学省.(2008).小学校学習指導要領解説 算数編. 東洋館出版社. 一松信ほか.(2014).みんなと学ぶ小学校算数(1~4 年). 学校図書. 坪田耕三ほか.(2014).小学算数(1~4 年).教育出版. 小山正孝ほか.(2014).小学算数(1~4 年).日本文教出 版 藤井斉亮ほか.(2014).新編新しい算数(1~4 年).東京 書籍 清水静海ほか.(2014).わくわく算数(1~4 年).啓林館 橋本吉彦ほか.(2014).新版たのしい算数(1~4 年).大 日本図書. 教育デザイン研究. 第 10 号(2019 年 3 月). 39.

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参照

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