〈書評〉国際標準と戦略提携 : 新しい経営パラダイムを求めて 竹田志郎・内田康郎・梶浦雅己著 中央経済社, 東京, 2001年
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(2) 品生産に経営資源を傾斜配分し、大量生産による規模 の経済を獲得することが標準化の目的ということにな る。. う。 これらの側面だけをみれば,バラ色の将来が国際標 準の普及した企業社会に待っているかのようである。. ところで、やはり多くの読者の関心は、一連の国際. しかし、すべての企業がそのメリットばかりを享受す. 標準の進展により各企業にもたらされる「新しい経営. ることが果たして可能であろうか。この疑問について. パラダイム」とはいかな.i'ものかということに集まる. は,特に本書では触れられていないようである。例え. であろう。経営パラダイムの転換、すなわち、経営に. ば、オリジナルな競争的能力(コンビタンス)を定義. おける行動規範が変わるというのは、どういうことで. できず、また、事業展開に戦略性を発揮できない企業. あろうか。筆者らは,次のう点を指摘している。すな. (1)複数の企業の戦略的強調を主軸とした「高. わち、. 次元での」少品種大量生産、. (2)有力な部品メーカー. については、常に国際標準に追随的な対応のみを迫ら れることになるだろう。そのような類の企業にとって は,国際標準が様々なレベルで形成されることにより、. のコンポ-ネンツ製造の動きを反映しながら、完成品. かえって寿命を短縮し、市場から淘汰されてしまうと. メーカーが製品生産を進める、. いった結末が待ち構えているかもしれないのである。. (ラ)単に製品規格だけ. でなく、研究開発・生産方法・物的流通・会計処理・. さらにいえば、国際標準に則ったビジネスを展開す. 財務管理等のライン・スタッフ業務の経営方法に関す. ることばかりが、個別企業の生存の道ではない。標準. る国際標準の形成を促すという以上の5点を指摘して. 化がなされた技術に則った価値の提供が、即,顧客の. いる。. 満足になるとは必ずしも言えないのである。例えば市. 従来的に多国籍企業は,市場支配のために必要な経. 場範囲を特定の地域に積極的な意味で限定すること. 営資源を内部化してきた。 M&Aや合弁企業の設立はそ. や、標準を逸脱した価値生産の方法を発明するなど、. の具体的な方法である。しかし、グローバル化の進展、. 個別の企業が生き残る道は1つでは必ずしもないだろ. 競合企業の乱立など,今日の経営環境の変化を踏まえ. う。技術力やコンセプトメイクのセンス、生産・販売. ると,市場支配のためには他企業へのアウトソーシン. 力、組織間関係を構築し継続きせる交渉力など、但業. グに基づいた戟略提携を通じてスピーディに事業を展. の備える総合的な能力を駆使すれば、独自の顧客を獲. 開する方が競争上有利となる。これは、多国籍企業が,. 得し、価値ある企業として地位を確立することも可能. 経営資源の所有傾向を内部化から外部化へと積極的に. なはずである。. 転換させてきているということである。顧客が企業に. 本書は、今日の国際標準の進展により多国籍企業に. 要請するものが,企業の規模ではなく「顧客価値」で. 出現するであろう新しい経営パラダイムについての展. あることを再確認すれば,提携を積極的に進める企業. 望を明確に示している。その意味で、現状を的確に認. は、実を取るための戟略を展開しているということが. 知するための枠組みを与えていることは確かである。. できるだろうoこれは、自前主義による企業成長至上. しかし、ここでの議論がマネジリアルな意味でどのよ. 主義から,効率的な市場支配を目的とした組織編成の. うな含意を持つのであろうか。この研究は、各企業が、. 転換と言い換えることもできる。国際標準化の普及は、. 国際標準により規定される市場環境において、どのよ. この外部化によって各企業に課せられる様々な不確実. うにサーバイブしていけばよいのかという具体的な処. 性や取引上のコストを低減させるために必要とされ. 方葺を示すことを中心的な目的としてはいない。具体. る、つまりは,経営資源の外部化に伴う経営支配の欠. 的な処方葺をどう措くのかという課題の解決は,読者. 落を補完するという意味合いを備えているのである。. が企業実務において発揮する発想力・構想力に期待. さまざまな事業分野における国際標準の策定は,グロ. し、アウトソーシングするということになるのであろ. ーバルな経済発展と競合企業の乱立という経営環境の 変化から、必然的に要請されているともいえよう。. 際の企業実務において、この研究成果を積極的に活用. このようにみると、国際標準の策定にコミットする ことやそれに則った形でビジネスを展開することは,. 多くの多国籍企業やそれに関連する企業群にとって不 可避の課題であるように思える。国際標準に則った事 業の遂行は、それぞれの企業にとって、経営リスクや. コストの低減,製品の差別化など、様々な便益をもた らす。また、国際標準化の進展により実現すると予想 される国際的なまた業際的な企業間の相互理解は,新. しい事業や技術革新の機会を各企業にもたらすであろ. 昏評. 41. う。幅広い読者が本書から様々な含意を読みとり、実. なさることを大いに期待している。.
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