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〈書評〉国際標準と戦略提携 : 新しい経営パラダイムを求めて 竹田志郎・内田康郎・梶浦雅己著 中央経済社, 東京, 2001年

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(1)Shiro TAJaDA,. 国際標準と戦略提携. UCHII)A. and. K41I tJRA,. 一新しい経常パラダイムを求めて一. ZntemaEional Standallds and Strategic Alliances. 竹田志郎・内由康郎・梶浦雅己書 中央樫済社,東京,◆2001年. -Towolld Neu) PpLladium-. 辻井洋行. Management. Chuokeizai-Sha. Tokyo, 2001 Hiroyuki. 本書は、現代の多国籍企業にとって重要な課題とな っている国際標準について、その構築メカニズムを組. Yasuro AIasami. Inc.,. TSUJII. 本書を通じて筆者らはどのような論点を提起してい るのであろうか。それは、次の1点に絞ることができ. 織間提携の観点から詳細に読み解くことを目指す研究. る。すなわち、国際標準を基盤とした「高次元での」. 書である。. 少品種大量生産により、新しい経営パラダイム(行動. 「新し■い経営パラダイムを求めて」という. 副題が添えられていることから、本書が、国際標準を. 規範)が創出する可能性があるということである。は. 巡る多国籍企業の経営現象の観察を通じて、新しい経. たして、この国際標準という時代の趨勢は、どのよう. 営戦略論・競争戦略論の論点を提案しようとする野心. な大変革を現代企業にもたらすというのであろうか。. 的な試みであるというメッセージが強く伝わってく. 筆者らは、この「高次元での少品種大量生産」が、今. る。. 日においては、特に「電子・電気機器、自動車、化学. まず,本書のアウトラインを紹介しておこう。本書. 製品の一部の部門」に見られる現象であり、すべての. は、大きくわけて5部構成をとっている。第1部におい. 産業に一般的な現象ではないと前置きしている。しか. ては、多国籍企業による国際的な市場支配の方法が変. し、ある一定の条件を満たす産業においても、広く普. 質しつつあることを指摘している。それは,すなわち,. 及する可能性があると筆者らは指摘する。その条件と. 製品生産・流通に関する国際標準の構築を前提とした. して、次の点を挙げている。すなわち,. 戦略提携が業界的・業際的に広まりつつあるというこ. 業の存立する産業部門の製品であること、. とである。. 間競争が厳しい産業部門であること、. 「連結の経済性」を得るためにグローバル. (1)巨大企 (2)寡占. (ラ)単品とし. 合理化を図り、多国籍企業は世界的な子会社網を展開. て大量生産の必要な製品・互換性の高い製品・規格化. してきた。. されやすく、さらに特許化されやすい製品であること,. 1990年代からは多くの多国籍企業の事業展. 開の方法として、同業種・異業種間での戦略提携が選. (4)製品の生産過程・部品の共通化が可能であるこ. 択されるという現象が見られるようになった。国際標. と、. 準を前提とする戦略提携から各企業にもたらされる利. くこと、以上5点である。これらの条件が当てはまる. 益は「標準化の経済性」と呼ばれている。この「標準. 産業においては、. 化の経済性」は、国際標準を様々な分野で構築しよう. た企業間の戦略提携が幅広く展開され,様々なデファ. と腐心する各企業にとって重要なコミットメントの動. クト標準・デジュリ標準が創出されることになるとい. 機となる。また,続く第2部と第う部では、国際標準と. うのである。. してのデファクト標準とデジュリ標準について,より. (5)淀通・消費過程、ネットワーク外部性が働. 「標準化の経済性」の獲得を目指し. 今日のように,各国における経済発展が加速化し,. 専門的な観点から議論がなされている。第2部では,. また情報技術の発展による経済活動のグローバル化が. デファクト標準の構築プロセスに焦点があてられ,特. 実現すると、高い水準の技術を備えた多くの企業が、. に、企業間の技術的な平準化という今日的な経営環境. 市場活動に参入することになる。グローバルな規模で、. を前提とした「協創優位」型標準という概念について. もしくはリージョナルな規模で顧客に提供される製. より詳しい説明と展望が述べられている。第う部では,. 品・サービスの多くは、そのような企業群がそれぞれ. デジュリ標準について,その概要と実態について詳し. に保有する特許技術の組み合わせによって構成され. く説明し,さらには、デジュリ標準が,国家戦略・産. る。国際標準の主眼は、技術間の互換性を確保するこ. 業界の戦略・個別企業の戦略を含めた戦略的な提携プ. とにある。技術と技術との組み合わせを容易にするた. ロセスを経て策定されているという今日的な現象につ. めの交通整理をしていると言い換えることもできるだ. いて述べている。. ろう。各企業にとっては,強みを発揮できる技術や製 40. 国際標準と戦略提携. 一新しい経営パラダイムを求めて-. (辻井).

(2) 品生産に経営資源を傾斜配分し、大量生産による規模 の経済を獲得することが標準化の目的ということにな る。. う。 これらの側面だけをみれば,バラ色の将来が国際標 準の普及した企業社会に待っているかのようである。. ところで、やはり多くの読者の関心は、一連の国際. しかし、すべての企業がそのメリットばかりを享受す. 標準の進展により各企業にもたらされる「新しい経営. ることが果たして可能であろうか。この疑問について. パラダイム」とはいかな.i'ものかということに集まる. は,特に本書では触れられていないようである。例え. であろう。経営パラダイムの転換、すなわち、経営に. ば、オリジナルな競争的能力(コンビタンス)を定義. おける行動規範が変わるというのは、どういうことで. できず、また、事業展開に戦略性を発揮できない企業. あろうか。筆者らは,次のう点を指摘している。すな. (1)複数の企業の戦略的強調を主軸とした「高. わち、. 次元での」少品種大量生産、. (2)有力な部品メーカー. については、常に国際標準に追随的な対応のみを迫ら れることになるだろう。そのような類の企業にとって は,国際標準が様々なレベルで形成されることにより、. のコンポ-ネンツ製造の動きを反映しながら、完成品. かえって寿命を短縮し、市場から淘汰されてしまうと. メーカーが製品生産を進める、. いった結末が待ち構えているかもしれないのである。. (ラ)単に製品規格だけ. でなく、研究開発・生産方法・物的流通・会計処理・. さらにいえば、国際標準に則ったビジネスを展開す. 財務管理等のライン・スタッフ業務の経営方法に関す. ることばかりが、個別企業の生存の道ではない。標準. る国際標準の形成を促すという以上の5点を指摘して. 化がなされた技術に則った価値の提供が、即,顧客の. いる。. 満足になるとは必ずしも言えないのである。例えば市. 従来的に多国籍企業は,市場支配のために必要な経. 場範囲を特定の地域に積極的な意味で限定すること. 営資源を内部化してきた。 M&Aや合弁企業の設立はそ. や、標準を逸脱した価値生産の方法を発明するなど、. の具体的な方法である。しかし、グローバル化の進展、. 個別の企業が生き残る道は1つでは必ずしもないだろ. 競合企業の乱立など,今日の経営環境の変化を踏まえ. う。技術力やコンセプトメイクのセンス、生産・販売. ると,市場支配のためには他企業へのアウトソーシン. 力、組織間関係を構築し継続きせる交渉力など、但業. グに基づいた戟略提携を通じてスピーディに事業を展. の備える総合的な能力を駆使すれば、独自の顧客を獲. 開する方が競争上有利となる。これは、多国籍企業が,. 得し、価値ある企業として地位を確立することも可能. 経営資源の所有傾向を内部化から外部化へと積極的に. なはずである。. 転換させてきているということである。顧客が企業に. 本書は、今日の国際標準の進展により多国籍企業に. 要請するものが,企業の規模ではなく「顧客価値」で. 出現するであろう新しい経営パラダイムについての展. あることを再確認すれば,提携を積極的に進める企業. 望を明確に示している。その意味で、現状を的確に認. は、実を取るための戟略を展開しているということが. 知するための枠組みを与えていることは確かである。. できるだろうoこれは、自前主義による企業成長至上. しかし、ここでの議論がマネジリアルな意味でどのよ. 主義から,効率的な市場支配を目的とした組織編成の. うな含意を持つのであろうか。この研究は、各企業が、. 転換と言い換えることもできる。国際標準化の普及は、. 国際標準により規定される市場環境において、どのよ. この外部化によって各企業に課せられる様々な不確実. うにサーバイブしていけばよいのかという具体的な処. 性や取引上のコストを低減させるために必要とされ. 方葺を示すことを中心的な目的としてはいない。具体. る、つまりは,経営資源の外部化に伴う経営支配の欠. 的な処方葺をどう措くのかという課題の解決は,読者. 落を補完するという意味合いを備えているのである。. が企業実務において発揮する発想力・構想力に期待. さまざまな事業分野における国際標準の策定は,グロ. し、アウトソーシングするということになるのであろ. ーバルな経済発展と競合企業の乱立という経営環境の 変化から、必然的に要請されているともいえよう。. 際の企業実務において、この研究成果を積極的に活用. このようにみると、国際標準の策定にコミットする ことやそれに則った形でビジネスを展開することは,. 多くの多国籍企業やそれに関連する企業群にとって不 可避の課題であるように思える。国際標準に則った事 業の遂行は、それぞれの企業にとって、経営リスクや. コストの低減,製品の差別化など、様々な便益をもた らす。また、国際標準化の進展により実現すると予想 される国際的なまた業際的な企業間の相互理解は,新. しい事業や技術革新の機会を各企業にもたらすであろ. 昏評. 41. う。幅広い読者が本書から様々な含意を読みとり、実. なさることを大いに期待している。.

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