子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成と実践分析(II) : 小学校4年「山地の人々のくらし-安曇野(穂高町,豊科町)に湧く良質で豊富な水を生かしたくらし-」を事例として
16
0
0
全文
(2) 68. どもの認識内容の構造を評価する。 ②小単元毎に,関心・意欲の評価を行う方法 を開発し,実施する。 ③子どもの評価内容を組み込みながら授業設 計を行い,実践を行う。 ④子どもの発言と問いの関係に視点を当て, 学習指導案および授業の分析を行う。 ⑤研究仮説の視点から,授業設計,授業実践, 知識理解および関心・意欲の整理を行い問題 点の明確化をする。 実験授業は, 4年の山地の人々のくらしの単 元を取り上げ,安曇野を事例としておこなった。 境在の子どもは,都会の文化や生活には関心を 向けても,農村や山地のくらしに関心を向ける ことは少ない。その原因の一つは,子どもの周 辺にある情報の大半が都会の文化や生活に関す るものであることにある。情報のないところに は関心はむかない。 本研究では,山地のくらしに関する情報を与 えたり,山地のくらしに関係する実物に触れさ せたりすることによって,子どもの関心がどの ように育っていくのかを明らかにしようとした ものである。 関心の育ちは,子どもの説明文と絵の分析を とおして,認識内容の広がりと深まりを把握す ることによって,評価した。意欲は,子どもが どのような新しい問題意識を持っているかによっ て把握することを試みた。また,授業分析の試 みによって,これらの関JL、・意欲の育成が授業 のどのような側面から育ったのかについて明ら かにした。また,関心・意欲を評価する問題の 開発を行い,その分析を行って,関心・意欲の 把握の新しい試みとした。 (岩田一彦) II授業構成の実際 「他地域のくらし」の学習の目的は,子ども がその地域の特色を理解し,広い視野から地域 社会の生活について学ぶことにある。つまり, その地域の人々が自然環境に適応しながら生活 したり,特徴ある産業を発達させたりしている のを学習するのである。 そこで,本学習で取り上げたのが,一般には. 安曇野と言われている「葡高町・豊科町」である。 (1)安曇野地域の様子 この地域は,槍ヶ岳,穂高連峰,常念岳,燕岳 など2000m級の山々が連なる北アルプスの梶に 広がり,豊富な湧き水に恵まれたところにある。 アルプスの雪解け水が山麓の扇状地を伏流して いるため,地下2メートルから5メートルも掘れ ば水が湧いてでてくる地域で, 1日の湧水量は 約70万トンを誇り,一年を通じて水量・水温と も変わりなく,水質も良質である。 (夏は30度 近く,冬はマイナス10度になる気候でも,水温 は13,4度と一定である。)この地域の人々はこ の豊かで良質な水を使って,わさび栽培やにじ ますの養殖を発展させてきた。さらに,最近で は,この良質の水を求めて,コンピュータなど の先端産業が進出してきている。 わさび栽培は,多くの河川が集まり,なだら かに傾斜している安曇野で一番低い地域で行わ れている。栽培面積は75ヘクタールにもわたり, その収穫量は1500トンで,全国の収量の44%に あたる。また,収穫されたわさびは,生わさび として販売されるだけでなく,わさび漬け・チョ コレートそしてアイスクリームなど様々のもの に加工されて販売されている。さらに,わさび からでる汁を利用して,タオルや-ンカチなど のわさび染めまで開発している。 にじますの養殖は,わさび田の周辺で行われ, 上流部でわさび栽培,下流部でにじますの養殖 という展開である。年間の生産量は3200トンで, 全国一位を誇り,生産量の70%は生物(なまも の),残りの30%は加工用・活魚として出荷さ れている。にじますの養殖には,水温が5度か ら20度の豊富な湧水が必要とされている。 また,豊科町に進出してきているコンピュー タ工場(セイコーエプソン)は,犀川近くに建 設され, 1カ月約15万枚から20万枚の液晶パネ ルを生産している。当工場でも,製品の洗浄な どのため,多量の良質の水を必要とし,現在の ところ,月平均4万トンの水を使用している。 そして,生産された製品は,関東・関西方面に 出荷されている。 このような産業が発達する中で,様々な問題.
(3) 子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成と実践分析(Ⅱ). を抱えているのも事実である。例えば,工場を 誘致したため,上流では水位が下がって,干し 上がってしまったわさび田もでてきている。穂 高町のある人は次のように語っている。 「一度 干し上がってしまえば,水は戻らない。水に頼 るわさび栽培業者としては,地下水を利用する 工場の誘致には敏感にならざるをえない。この 安曇野にも工場ができ始めているが,運動をし て地下水を汲み上げないことを承諾してもらっ た実績もある。企業を誘致し,地域の発展を図 ることも必要であるので,地域を特定し,企業 の誘致をしてほしい。」 セイコーエプソンは,信州わさび生産農業組 合,豊科町長との間で, 1983年2月に次のよう な覚書を結んでいる。 「エプソンは新たに井戸 を掘らないで,町営水道(井戸水)から工業用 水を取水し,わさび排水を再利用するよう研究 に努力する。」さらに, 「乙(豊科町)は排水は できる限り地下圧入するよう研究し,会社に指 定する。事情がゆるせば池により自然地下浸透 などさせるよう合わせ指示する」としている。 ここに,工場の進出による湧水量が減ること への不安,そして排水の問題が生じている。 また,にじます業者とわさび業者の間でも, 次のような問題がある。現在では,湧水のある 上流部でわさび栽培,下流部でにじますの養殖 という展開であるが,にじますも実際は湧水を そのまま使うことがよく,わさび田の微量な農 薬や薗り水はあまりよくないと言われる。わさ び栽培においては,にじますの餌やふんは汚染 源になる。このようなことから,どのように, 地下水を利用していけばよいかが,二つの業者 の問題点になっている。 (2)教材の設定理由と学習の流れ 良質で豊富な水により発展してきたこの安曇 野地域では,様々な問題を経過しながら,より よい水を守り続けている。そこで, 「安曇野地 域の人々が,どのように自分たちの水を守り続 けているか」について学習することを通して, 安曇野の人たちの苦労や工夫・社会のしくみを 理解できればと願って,この地域の教材化を試 みた。その際,水などの自然環境を守っていく. 69. ことの重要さを捉えてほしいと共に,自分たち の町を見つめる契機になることを期待している。 この学習が子どもの関心・意欲を高める理由 として次の3点をあげることができる。 まず第1点目は,認識の深まりが,子どもの 関心・意欲を高めるという点である。つまり, -学期にゴミの学習をしてきていたことから, 子どもにとっては,大きく環境という視点で学 習を深めていくことができる。この後の学習で, 今回は下水道の学習を扱わなかったが,地域の 下水道の学習をすることによって,この安曇野 の学習を契機として自分たちの地域の学習につ ながり,安曇野の学習が深化発展するものと思 う。. 第2点目は,現在の自分たちの生活に直接っ ながる教材であるという点から,子どもの関心 意欲を高めるものと思う。いまや,水が販売さ れている時代である。私たちの生活では,様々 な理由から水道の水をおいしく飲めないのが実 状である。家庭では,浄水器を取り付けて,お いしい水にしているが,この安曇野は違う。全 ての家庭が,豊富に湧く地下水を利用している。 子どもにとって,そのままの水を飲むというこ と自体が,大きな驚きにつながる。さらに,こ の地域の人たちが,祖先から受け継いできた豊 富な水を守るために努力しているという事実に ふれれば,自分たちの生活に照らして,学習が さらに深まっていくものと思う。 第3点目は,安曇野の人たちがいろいろ工夫 をして,わさびから様々な加工食品を作ってい るという点である。例えば,わさびを利用して 作られたチョコレートやアイスクリームなどは, 子どもにとって,想像もできないものである。 このことが,子どもの心に意外性を生み,学習 に対する関心・意欲となって表れてくるように 患う。. 学習の流れとしては,図1に示したように, 第1次において,長野県の安曇野地域がどんな ところかを捉えさせたいと考え, 「長野県の安 曇野は,どんなところだろう」という共通課題 を設定した。ここでは,安曇野地域が高い山で 囲まれ,豊かな自然にめぐまれ,特に水がきれ.
(4) 主なチビも清動 事実を知り問題をつかむ. e長野県について考える. 0山ばかりに囲まれている. 0寒いところかな。 ○木を切ったりする仕事が多いのかな. u甘M KXB& J識^gukSc」S3 0木がいっぱいあるところかな ○空気のきれいなところかな。 0水のきれいなところかな. ・高い山に囲まれているから (槍ヶ岳3180m) (常念岳2857m) ・雪解け水があるから ・自然がいっぱいあるから ○水は、軟めようだな.. WJ73SE3A巨u 冒 i. 安曇野地域を取り上げる齢にr長野県はどん なところか」と予憩させたり、地図を見たり して,おおまかな捉え方をさせたい. 安曇野の付近の地形図を見せて,安曇野とい うところを想像させていく. さらに、安曇野の状況をつかませるために、 写真などを提示したい. この安曇野地域では、特に水が良Blで豊富に あることを捉えさせておきたい.その筋、チ ビもたちの中から.水に関する思いが出てこ ない場合、水に関係する写真や央軌こ安曇野 で採れた水(スーパーで廟完されている)杏 子どもたちに捷示して、子どもたちの軌己・を おこさせたい. Ej串Eaai3割MS3JI田Ea53MEfJ』 :ロ ;2Jj]1日u問&2H由msm即man r川がたくさん集まっているから」という考 IXA日出由芦P35P vxm-3:uz3Li亘33Gil E]転[JB UIJvsEl!mMSSJS3Sa. M吉昭即fit ltS&t. ・凹ISE臼r y ftftef. EEELS田M5M=」iS!呂K3332H てこないと思われるので、ある程度子 の思いがでた段晴で,教師の方か. (湧水童は、 1日的70万トンである. ) ●安曇野(穂高町・立科町)の人々が、どのように生活し ているかを一人学習し、自分自身の学習聞耳を作る. 0どうして、安曇野では、わさびが有名なのだろうか. ・安曇野砲域は.水が良東で豊富にあり、しかも水温 が年間を通じて、 10-15度と-塵であるため、わさ びの生育条件にあっているから 閲ywaia学際Eaa眉Eassi鞄tss旧il/JJti誠ES ろうか. J EE的BMM5児tSmitJH箪笥包Eォa冒US よる液晶パネルの生虚.水の願完会社 ○わさびは、どの恥こして作られているのだろう. O rにじますの養鰍まーどの恥こしているのだろうか. ○どうして、コンピュータ会社は、水のきれいなところ ろに工場を作りたいのだろうか。 ○今,安曇野地域で、困っていることはどんなことだろ うか. ・コンピュータ工場の進出によって、地下水が稀少す ることへの不安と水が汚染きれることへの不安. 圃 S 3 2 E 国 [ 3 3 2. = d田迅W * tf*33回SSE3B喝g鷹MSE32E9K」」i る。 oコンピュータ工勤ま、どうすればよいだろうか. ・コンピュータ工場からでる排水をきれいな水に変 えている. ・コンピュータ工場で使う水を少なくしている. ・穂高町では,追出する企業に対して排水基準を扱 けている. ○生清排水は、どうしているだろうか. ・ミニ下水道事業を昭和50年に実施している. (各家腰に、家磨雑排水の浄化槽を枚蘚するよう jI務づけている. ) ・平成2年度より、公共下水道事業に取り組んでh. る。 ・ロ矧Lffciil 』ォォォ** <i-3fcサwii!!m* 放置している。. ら. e川がたくさん集まっているため ・梓川、高軌tL穂高川,万水川. 出たし らも示 かど捷. 司旧F332昌ELEzS眉L33日. ∴サ*]腰waiォ* esaが四E35E巳KMauira自 閉盛で話し合う. e周りに高い山があるため. 教師の手だて. SP. 分の考えたいことや璃べたいことに対して ssmEvm由 こE^x^^^KaJtLj誠Gsa 町で生産されているものや水に関わること以 外であれば、それに関わることをするように 揺助していきたい.材木など山仕事に関わる Ill ′J一.r ̄▼.T ′ヽ′ヽ- q ヽ- ち I Ir.一一′lb 1 ヽ'llヽt一▼l一°′,J ヽ.! ヽ. E3EKllE四m司鷹Eoa図i*サJ **,**;. せた後.安曇野砲城の生虚されているものを 稲介したい.しかしながら、できうる限り、 地図頓や国書童にある本などを巷考にさせな Sra撃mmm問巳田WEElREHォPa? IB rわさび作りjについては,実際のわさびを 見せ、わさび栽培に関心をもたせたい.さら に、 「わさびがどのように作られているか」 を学習した後、わさびから作られた加工食品 (お菓子・チョコレートなど)を見せ、鳩域 の人たちの販売への努力を感じとらせたい. rどうして、コンピュータ会社は.水のきれ いなところに工場を作りたいのか. jを予 憩した後、穂高町にコンピュータの工場がな WJJISiS3aB. きれいな水にするための方法について,十分 ?・呂feta&U'UfiのvEE*xsii*m 2回 試問L445I-MS? r工場がきたら、水が汚れるのではないのか という闘いから、工車の水を汚さない工夫へ と考えさせていきたい. 生活排水に関しては、家庭雑排水の浄化槽と いうものが、どういうものか、写真などを通 してみせてやりたい. 最後に、 rもし、自分が安曇野のわさび栽培 農奉だったら、コンピュータ会社やにじます 業都こ対して、どうするかjという点から宿 し合わせたい.. 図1 「安曇野のよさをみつけよう」の学習過程.
(5) 子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成と実践分析(Ⅱ). 71. いであるという理解が増えればと原う。第2次 においては,水に焦点化し,豊富で良質の水が. ては,わさび田やにじますの養殖・コンビュ-. 豊科町・穂高町の人々の生活にどのように関わっ ているかを捉えさせていくために, 「豊かな水 と安曇野の人たち(穂高町・豊科町)は,どの ように関わっているのだろう」という共通課題. 良質な水を,どのように守っているかを把握さ. を設定した。ここでは,豊富で良質の水を利用 することにより発展してきた産業を中心にして 学習ができればと願う。そして,第3次におい. 出によって起こってきた問題点を中心にしなが ら,豊富で良質の水を守っている工夫や苦労を. 夕会社など様々なところで使われている豊富で せるために, 「良質で豊富な水を守るために, どのようにしているのだろう」という共通課題 を設定した。ここでは,コンピュータ会社の進. 学習できればと願う。く大前孝夫). Ⅲ授業分析 1第2次第2時の授業 (1)本時の指導案 第2次第2時の指導案 本時の目標・長野県安曇野地域(穂高町・豊科町)の人々の生活について,意欲的に学習に取 り組むことができる。 ・安曇野では,大量の水が涌いていることを理解し,そのわけを予想する。 本時の展開 学習 清 朝. 主な党閥 呼びかけ. 導 入. ひ と り学 習 を し、 自 分 の 練 磨 を考 える。. . 今 の 自分 の 錬感につい て も う一度 考 えて い こ う。. (自分 の 辞 い て、 予 て た り、 え た りす. 感 につ 想 をた 駅 を考 る。 ). . ひ と り学 習 の 過 ん で い な い子 に対 し て、 「ど ん な 学 習 を して い けば よい か J 対 話 し なが ら 援 助 す る。. 裸 梶 把 也. 「安 義 野 の 水 は、 ど こ か らきてい るか 」 を考 え る。. . 安義野 は、 ど と って の だろ. . 川 で とっ て い る その 訳 は、 写 真 を 見 た と き、 川 の水 が きれ いだ つ た か ら。 山 か らき て い る か ら、 き れ い な 水 で あ る.. . こ の 学 習 は、 N 君 の 「安 曇 野 の 水 は 川 か らき て い るの か、 山 か らき て い る の か 」 と い う疑 問 か ら進 め て い き た い。. の水 こで いる うか Q. 予 想 され る 先着 .思考. . 山で とっ て い る そ の 訳 は、 川 の 水 よ り山 の 水 の 方 が きれ い だ と 思 う か ら。 兵 庫 県 で も、 rLh で きれ い な 水 を と っ て い た か ら.. 指 導上 の 留 意 点. . も し、 安 曇 野 の 水 が地下水であ るこ と に 子 ど もた ち 自 身が気付かなけれ ば、 安 曇 野 の 水 が ど こか らき て い る か を考 え させ た後 地 下 水 であ る こ と を 知 らせ た いe そ し て、 安 曇 野 の 湧 水 圭 の真 書 き を 社町の水道の使用 量 と比 較 して気 付 か せ た い。. 資料等. 甫安義 郡 の鳩 固. 安曇野 の 1 カ 月の 湧 水量 と 社町 で 1 カ月 に使 う 水の量 を表 し たグラ フ.
(6) 72. 学習活動. 主な邦間 呼びかけ. 予想される 邦書 l 思考. 指輔上の留意点. = . 開. rどうして こんなにた くさんの水 が湧いて く るのか」を 予想する。. . どうして、 こんなに沢 山の水が柵 いてくるの だろう。. . FT解け水がある から0 . 川が沢山あるか ら。 . LL一 に木が沢山あ り、木に沢山の 水を含むからO. . も し、 展開の場面 で予想が出てこな い喝、 安森野の周 りの梯子か ら想起 させたい。. 柄 た な 練 盟. それぞれの 予想が本当 かどうか、 確かめてい く。. . みんなの予 想 したこと は、果して 正しいだろ うか。. . ぼくは、絶対に lZ しいと思 う。 j 地図でみると、 川が沢山あった から。 l. . 木崎では、解決さ せず予想のままに とどめてお く0 ここでは、子 ども たち自身に予想が たてられれぱよし とするe そして、 予想の確かめ を次 喝への緋感とした い。. . 山には、貢でも 雪があつたから. (2)学習指導案の分析 本時は,水と人々のくらしとの関わりを検証 していく第2時間日である。そして,次のよう な展開が計画されている。まず,授業の初めに 一人学習が設定されている。ここでは,安曇野 について各自の追求している問題について考え たり,子ども同士でたずね合う学習となってい る。次に, N児の問題「安曇野の水は,川から 来ているのか山から来ているのか」を学級全体 で考える場が設定されている。ここでいう安曇 野の水は,第1次で子どもが実際に飲んだペIy トボトル入りで市販されている水のことである。 このN児の問題を,各自の経験をもとにした予 想や調べたことなどから検討させている。その 後,おもに地下水であることや1日70万トンの 湧水量であることを知らせると共に,学校のあ る社町の1カ月間の水の使用量と比べるグラフ を提示し,その湧水量の豊富さに関心を向けさ せようとしている。さらに,授業の結末で, 「どうしてこんなたくさんの水が湧いて来るの か」という発問によって,一層子どもたちの関 心を安曇野の自然条件に目を向けさせようとし ている。そして,次時においても追求する態度 を育てようとしている。 したがって,以下では,子どもの関心・意欲. 溌料等. を育てるために,安曇野の水が山の水なのか川 の水なのかという問いについて予想し,検証し た後,新しく出てきた問いについて予想をもた せるという授業構成をなぜとったかについて授 業記録から分析・検討することとする。 (3)授業実践の分析 丁今からしてほしいことは,しばらくね一人 学習をしてはしいの。いい。自分の予想をた てたら必ずそのわけが言える。ねっ。それで も疑問が出てこなかったら新たな疑問を作る。 いい。 Cはい。 このように,教師はいきなり一人学習を始め させている。このとき子どもたちが学習を始め られるためには,どのような課題なのか,どん な資料がいるのか,どんな方法で学習したこと を表現すればいいのか等をはっきりわかってい なければならない。子どもたちが自由に動き始 めたことから考えると,これまでの指導によっ てそれらをわかっていると予想できる。 次に,一人学習での認識の深まりをまってか らN君の課題を出し,友達の考えていることへ の関心・意欲をうみ出そうとしている。以下に, N君の課題を提示した後の授業分析表を示す。 但し,発言番号は便宜上つけたものであり,逮.
(7) 子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成と実践分析(Ⅱ). 73. 続した発言ではない。 Qlの後,授業の後半まで,互いに質問や賛 成の理由を話合っている。話し合いがそれていっ たところでは,話し合いをストップさせ,意見 をまとめ,方向を修正している。最後に,意見 が出尽くしたところで地図の平地の部分で水を 採っていることを示し,どんな方法なのか改め て予想をさせた後, 「地下水」と板書している。 ここでの子どもの意見交換は,それぞれの立 場で意見を主張しあい,活発なものとなっている。 山の意見の子供は,川にゴミや下水道が流れ. ように作られているのかが議題になっている。 山に下水道はないだろうという意見と下水道は. 込むおそれを指摘し,ゆずろうとしないし,川 の意見の子どもたちは,山に採りにいく苦労を 指摘し,先生が飲んでいてわさびを作っている ような川の水は絶対きれいなんだと主張してい る。また,後半は,川を汚くする下水道がどの. 人学習で自分の課題について認識を深めさせる. Qlこの安曇野の水は,川 でとるんか山でとるん かどちらなのか, (地図 をさしながら)川でも この辺りの川なのか山 の中でとるのかN君が どうしても知りたいと 言っている。 みんなどちらだと思う。. Q2社町で1カ月間に使う 水の量はどれぐらいだ ろう。 Q3社町で1カ月に使う水 の量は17万トン。わい てくる水の量は何万ト ンだと思う。 Q4 (水の量を表す棒グラフ を一つ取ってきて)こ れだけで200万トン。. もっと下流に流しているという意見でそれぞれ の立場を主張している。 まず,子どもたちの立場をはっきりとさせ, それを基に討論を始めているので,子供がどっ しりと構えて話し合っている。何とか自分たち の方に有利な情報を持ってきて相手を納得させ ようと必死である。どちらも「きれいな水」を どの方法で手にいれているかということに興味・ 関心を持っているといえる。このことから,一 ことは子どもたちの関心・意欲を育てていると いえるだろう。 Q2は,授業の後半部分であるが,この後, グラフによって, 1カ月に2100万トンも湧水が. Cl山だと思います。 22人 川だと思います。 10人 C2 (口々に)山だと患います。 C3川でとるとしたら,川の下の方に 下りるまでに,ごみとか混ざって 汚くなるから,山で敬った方がき れいと思うから,山だと患う。 (次々と賛成意見が続く) C4山だったら,何か登ったときにで ないと取れないから取りに行くの に時間がかかる。 C5えっと,誰かが,士が水をきれい にしているって言ったから,山の 途中で取ったらまだ水がきれいに なりきってないし,それと,先生 が前に川で水を飲んどったから, べつに川にばい菌があるわけでも ないと患う。 C6わからん, 4トンか5トンぐらい C7えー。万トン. C8 58万トン C9えーoまだある。おそろしい。. あることを示し,何でこんな にたくさんの水が出て来るの かと課題を提示し,予想させ て終わった。ここでは,関心・ 意欲が育ってきた子どもたち に自分たちの生活している社 町で使われる100倍以上の水が 湧出して来る事実を認識させ ようとしているのだが,逐語 録に示されているように子ど もたちの驚きは非常に大きな ものとなっている。このこと は,いままで水の採り方につ いて話し合うことで水への関 JL、・意欲を育てていたからこ そ,地下水の湧出量の多さを 強く認識できたといえる。ま た,本時までに,写真を見た り水を飲んだり長野県や安曇 野について調べさせたりして 安曇野への関心・意欲を育て ていたからこそ安曇野の湧水 量の多さを「おそろしい」と 感動的に認識しているのであ る。く堂本大明).
(8) 74. 2第3次第3時の授業 (1)本時の指導案 第3次第3時の指導案 本時の目標・「自分がわさび農家だったら,きれいな水を守るためにどうするか」自分なりの 方法を意欲的に考えることができる。 ・きれいな水の大切さを知る。 本時の展開 学習活動. 主 な発 間 呼 びか け. 導 入. ひ と り学 習 を し、 自分 の 耕 虜 を考 え る。. l 自分 の株 題 についても う一度 考 え て い こ う。. (自分の 裸 い て、 予 て た り、 え た りす. 梯 也 把 掘. r自 さび つた うす につ え、 る。. . み ん な が、 わ さび農 家 だ っ た ら、 ど う します か。. . ぼ く だ っ た ら、 コ ン ピ ュ ー タの よ う な 会 社 を、 この地 域 に こ き せ な い よ うに す る。 他 の 地 域 に 作 れ ば よ い。. . ここで 限 り十 と り、 を出さ の 際、 を根 拠 発表 さ. . 私 だ っ た ら、 コ ン ビ ー タの 会 社 が、 き れ い な 水 に変 え る機 械 を 作 っ た らい い と 思 い ます. . す ぐ に、 考 え が ま と ま らな い 場 合、 し ば ら く時 間 を と り、 ノ ー ト に 書 か せ た い。. 分 がわ 農家だ ら、 ど るか 」 いて考 発 表す. 指 導 上 の留 意 点. 予想 され る 発音 . 思 考 題 に 想 を 訳 を る0. つ た 考 ). 展 開. 「コ ン ビ ユ - タ会 社 を この 安 曇 野 以 外 の地 域 に作 れ ば よ い」 とす る 考 えについ て、 さ ら に 話 し 合 う○. . コン ビ ユl タ 会 社 を、 この安 義 野 地 域以 外 に 作 れ ば、● そ れ でい いの か な。. 新 た な 秩 題. rど うす れ ば、 豊 富 で 良質 の 水 を 保 つ こ とが で き る か」 と い う点 に つ いて考え る。. . 豊 富 で 良其 . 町 に住 ん で い る の水 を保 ち 人 た ちみ ん な が 続 け るた め きれ いな 水 にす に は、 ど う る よ う努 力す る す れ ば いい . 汚 れ た水 は、 き の だ ろ うか ○ れ い な水 に して 川 に 流す。 . 油 な ど は、 流 さ な い。 .. . ひ と り学 習 の で い な い子 に て は 、 「自 分 さび 農 家 だ っ ど うす る か 」 う排 題 で考 え る。. 資料等. 進ん 対 し がわ た ら とい させ. は、 で き 分な時間 様 々な 希 せ た い。 自分 の 考 づ け る駅 せ た い。. る を え そ え も. . 他 の 地 域 で も、 . あ く ま で も、 コ ン ビ ュ ー タの会 社 を 汚れ た水 に な る 他 の 地 域 に作 れ ば と い っ て、 い や がるのではない よ い と す る考 え に か。 対 し て は 、 「ど の . や っ ぱ り、 コ ン 地 域 で も、 き れ い ビ ュ ー タ会 社 が な水 が ほ しい の で きれ い な 水 に変 は な い か 」 と問 い え る機 械 を作 っ 子 ども た ちの 考 え た ら い い と 思 う● を ゆ き ぶ りた い。 . 本 時 の 学 習 で、 こ の 単 元 の 学 習 が終 了 す る た め 、 「ど この 場 所 で も き れ い な水 は、 大 切 で あ る。 」 こ と を お さ え、 自 分 た ち の 地 域 の 水 に 目 を向 け さ せ てい き た い○. 南安 義 郡 の地 図.
(9) 子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成と実践分析cm. (2)学習指導案の分析 本時は,単元の最後の授業にあたる。本授業 のねらいは,これまで学習した,安曇野の自然 的条件やそれと関連したわさび栽培,にじます 養殖業,コンピュータ会社進出などの社会的背 景をふまえて, 「自分がわさび栽培農家だった らどうするか。」を自分なりに考えることである。 したがって,本時の展開案では学習課題「自 分がわさび農家だったらどうするのか」につい て,まずはじめに一人学習によって,自分の考 えをもたせている。その後,多様な各自の考え を全体の場で討論させることによって,わさび. (3)授業実践の分析. 75. 栽培農家とにじます業者やコンピュータ会社と の関係のありかたを考えさせている。 このような自分なりの解決方法をせまる授業 においては,安曇野地域の豊富な湧水量とわさ び栽培,にじます養殖,コンピュータ会社との 関係が重要な情報となるであろう。 そこで,授業実践分析の視点は,授業記録の 教師の問と子どもの発言から,きれいな水を必 要とする上記の三者の認識をもとに, 「わさひ 栽培農家の立場」になって「自分がわさび栽培 農家だったらどうするのか」を考えることが出 来ているかどうかを分析していきたい。. 授業分析表. 教師の問. 子どもの発言内容. Ql自分がわさび農家だっ. Clにじますやコンピュータ会社の汚れた水がはいらないところにた. たらどうすればよいか発 表してください。. ててもらう。 C2にじますのふんが流れないようにすごく細かい網をはってもらう0 C3他にもきれいな水の所があるから追い出す。 C4工場が次の所に移るのはいいけど,その次の所の水が汚くなる。 C5わさびの次ににじます,次にコンピュータの順で水を使ったらい い。 C6水を順に使わなくても,みんなきれいな水を使えばいい C7水が減ってしまうのでは。 C8わさびで使った水を中性にして,にじますやコンピュータに使え ばよい。 C9にじますのふんは,機械で丸くして取ればよい。 Cll工場なんかの汚い水は中性にしてもう一度工場で使えばよい。 C12にじますが住んでいる川ときれいな川と分けて使う。. Q2にじますやコンピュー タ会社を穂高や豊科に作 らせない人の意見を言っ て下さい。. C13水が汚れてしまう。 C14コンピュータを作ったら空気が汚れたりしてわさびの名物がつぶ れてしまうかもしれないから。 C15他にもきれいな水の所があるんだから,そっちに行ったらいい。 C16わさびが日本の国の中で一番取れるところで,コンピュータ会社 とかにじますとか入ってきたら,わさびが減ってきてしまう。. Q3豊科でにじますやコン ピュータ会社を作っても いい人。. C16穂高と豊科にはいっぱい川があるから他の所には行かなくていい。 C18下水処理場できれいにして工場の水を流す。.
(10) 76. 前項の授業分析表は,授業記録をもとに子ど もの発言を内容としてまとめたものである。同 じ意味内容の発言は省略しているので,発言番 号と発言者数は一致していない。 まず「自分がわさび農家だったらどうします か」 (Ql)という問いについては,わさび農 家,にじます養殖,コンピュータ会社の三者が 安曇野で共存していくための方法が多く出され ている。その共存のための解決策として,にじ ます養殖については, 「網でふんが流れるのを 防ぐこと」 (C2)や「機械でふんを丸めて取 り除くこと」(C9),さらに, 「にじます養殖 専用の川を使うこと」 (C12)などユニークな. 後者の意見は,工場が下水処理をして水を流す ことで三者の共存の道を考えている。 以上,教師の問いとそれに対する子どもの発 言内容を分析した結果,わさび栽培農家,にじ ます養殖,コンピュータ会社の三者の共存をさ ぐる立場であれ,それを否定する立場であれ, 両者に共通していえることは,安曇野のきれい な水を守ろうとしていることである。子どもた ちの解決方法は多様であり,実現困難なことも ある。しかし,これらは,本時までの安曇野 における自然的条件やそれを生かそうとする人々 の願いが認識されていたからこそ,意欲的に解 決方法を出せたと考えられるOく大西誠一). 意見が出されている。また,コンピュータ会社 については, 「汚い水を中性にして流せばよい」 CCll)という意見である。これらの意見の背. Ⅳ子どもの評価 1知識理解の評価. 景には,にじます養殖もコンピュータ会社も水. (1)絵の分析 子どもたちは学習を通して3回絵を措いてい る。 1回目が単元前, 2回日が第1次終了後, 3回目が単元終了後である。 各々の回の絵を比較し,そこから社会認識の 深まり具合を読むとともに,今回の実践の成果 と問題点を検討する材料としたい。 ア成果としてあげられること 1回目, 2回目では,山,川といった漠然と したイメージの絵が圧倒的に多い。しかも○○ 山, △△川といった固有名詞にまで絞れてもい. を排出する際は水が汚れるという認識があるの で,それに対応する解決策としてだされたもの と考えることができる。しかし,にじます養殖 とコンピュータ会社の両方に関わる立場の意見 として,両者の「汚れた水がはいらないところ にたててもらう」(CDや「ほかにもきれい な水の所があるのでおいだす」 (C3)などの 意見は,三者の共存を否定的に捉えている。 つぎに「にじますやコンピュータ会社を穂高 や豊科に作らせない人」 (Q2)については, 「水が汚れてしまう」 (C13) 「空気が汚れてわ さびがつぶれていまう」 (C14) 「他にもきれい な水の所があるのだから,そっちに行った方が よい」 (C15)と発言している。これらは,空 気や水の汚染がわさび栽培農家にとっては致命 的という認識があるので,きれいな水を守るた めには,にじます養殖やコンピュータ会社を作 らせないと判断したと考えられる。 最後に「豊科でにじますやコンピュータ会社 をっくらせる人」 (Q3)では「川がいっぱい あるから他の所に行かなくていい」 (C17) 「下 水処理場できれいにして」 (C13)などの意見 が出される。前者については現状の工場などに ついては存在を認めているが,今よりも多くの 工場進出に対しては否定的立場である。そして,. ないので,描かれているのは極めて概念的な山 川である。学習の中で各自のこだわりが強くなっ てくる以前であるせいか,隣の席の子と同じ絵 を描いているケースも見られる。 それが, 3回日になると具体物の描写が主流 を占めるようになる。即ち,わさび栽培・わさ び商品に関するものが79%,にじます養殖に関 するものが27%,工場(ェプソン)に関するも のが21%,汚水浄化センターに関するものが18 %である。 また, 1回目, 2回目で措かれているものは 多岐にわたる。即ち,山・川・木・魚(にじま すという限定はない) ・鳥・虫・牛・田畑・木 を切る人・製材所・家・集落・りんご・自動車 などである。各々ばらばらのイメージを持って.
(11) 子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成と実践分析(Ⅱ). いることが分かる。. 77. とを表している。. それが3回目になると,上記の具体的なもの. 仮に措かせる時間が少なかったことをその理由. (プラス「山」)に絞られてきている。学習の. に挙げるとしても,そこで表れてくるものは子. 結果,安曇野という地域のイメージが明確に浮. どもにとって最も印象強く獲得された内容であ. かんできたこと,および学習内容への関心が高. る。したがって,授業展開が「山地の人々のく. まったといえる。 とくに3回目では, 33名中31名(94%)が川. らし」という点からは弱かったと反省しなけれ ばならない。. (きれいな川)を措いており,安曇野の学習を通. 以上のことから,問題点として挙げるべきこ. して,川を中核とした認識内容の結合がみられた。. とは,そこで生活している人・働いている人の. 以上のことから,安曇野という地域について,. 工夫や努力にかかわる教材化が十分でなかった. まったくの拡散状態から,より集約された具体. ということであろう。. 的なイメージをもたせることに成功し,水と結. 今回,教師側はA図のごときイメージで教材化. びついた諸事象への関心を高めることができた. を図ったが,必要だったのはB図のイメージで. と言える。. あったと言えるだろう。く大橋尚人). イ問題点としてあげられること. 安曇野. 教師が獲得させたかった内容は大きく言って. 水. 次の2点に集約される。 <. (D安曇野が自分たちの地域と違った自然条 件下にあるということ。. 「-」「. わさびェプソンにじます. ②そこで生活し,働いている人々の工夫・ mtJo. そこで,教師の期待する内容の獲得という観点 から絵を見なおしてみる。 3回分の絵を並べてみて,全体的に「意外と 描かれていない」という印象が強い。 措かせる時間の確保の問題,一人ひとりの描 画能力の問題,教師の提示する(あるいは子ど もが自ら獲得した)情報の質・量の問題など, その原因はいくつか挙げられだろう。 その「意外と描かれていない」中で,絵に表 れているものを見てみると,山・川・田畑・生 物・森林など「自然」を追ったものが多いQそ して,これが最も問題とされるべきことだが, 「人」がほとんど出てこない。とくに, 1回, 2回の絵では人が登場したにもかかわらず, 3 回目の絵で人が消えているのが数例あった。 このことは,安曇野が自分たちの地域と違った 自然条件下にあるということは認識されたが, そこで生活している人々の工夫や努力に触れさ せるという点では十分到達できていなかったこ. 人. (2)説明文の分析 ここでは, (1)の絵の分析に続いて説明文を 分析し,子どもの認識内容の評価を行う。説明 文とは,子どもが自ら措いた絵について,文章 で説明を加えたものである。言うまでもなく, 絵でなければ表現しがたいことがあるのと同様 に,文章でなくては説明しえないこともある。 その意味で,絵の分析と並んで説明文を分析す ることは,より的確に子どもの評価を行うため に重要であろう。.
(12) 78. アプリ・テスト(10月29日実施)の分析と考察 まず,安曇野の人々のくらし(仕事,家での 生活)を予想して描いた絵の説明文を分析する。 これは,山地の人々のくらしに関する子どもの イメージを問うものである。分析の枠組として, ①風土・景観に関する記述, ②くらしの様子に 関する記述, ③仕事内容に関する記述の三点を 設定した。結果の概要を延べ人数で示すと,次 表のようになる。 風 土 .景 観. 仕 事 の 内容. く ら しの様 子. 山. : 2 2 一 生 懸 命働 く : 9. 山 仕事 (木 を切 る) : 16. 木. : 7. 畑 仕事 (野 菜 . 米 ) : ll. 田畑 : 7. 木やわらの家 : 3 機械がない. l 2. : 6. その他 (割箸作 り, 製 紙 , 魚 釣 り, 木 材 運 送 ) : 8. 子どものイメージを要約すれば, 「山に囲ま れた自然環境の中で,人々が山仕事や畑仕事に 一生懸命働いている。 」ということになる。定 型的な山地のくらし観と言えよう。 イ第1次終了後のテスト(11月4日)の分析 と考察 ここでの問いは,基本的にプリ・テストの時 と同様である。したがって,分析枠も同じもの を用いた。結果は次表の通りである。第1次の く ら しの様 子. 仕 事 の 内容. 高山に囲続 :29 自然の飲み水 !、!、 .′ 、 ノ 、 一 ′ 、 、 m 冷涼 な気候 : 16 (おい しい水) ‥7 !、 ー ′ 、 … きれいな水 : 15 一生懸命働く ‥2 !、 、 .′ 、 … 平地にEB畑 : 8. 風 土 .景 観. 熔仕革 (野菜作 り, りんご, わさび. くらしに生か した土地の様子. 人々の くらし わ さび の栽 培 と加 工 : 33. きれいな水 (と空 克). コ ンピュ ー タの製 作 : 21 豊富 な湧水 l 地下 水. ‥20 ‥16. 飲料 水 の ボ トル販 売 : 21 涼 しい夏 と一 定 の水 温 : 15 に じま す の養殖. : 17. になる。なお,学習内容の焦点化を受けて,分 析の枠組も二つにしぼった。 第2次の学習を踏まえ,子どものほぼ全員が 安曇野の人々のくらしについて正確な認識に到 達している。その理由としては,第一に安曇野 の人々のくらしを, 《高い山に囲まれた冷涼な 土地-→きれいで豊富な湧水-水を生かしたくら し-わさび栽培,コンビュ-夕工場の誘致,飲 料水販売,にじます養殖》というように,子ど もに理解しやすい自然条件でとらえた点が指摘 できる。第二に,自然的条件の中でも,とりわ け子どもの身近な「水」に着目させることによ り,拡散しがちな関心を焦点化させることに成 功した点が指摘できる。 エ第3次終了後のテスト(12月15日)の分析 と考察 ここでは二つの問いが提起される。第一は, クと同じく安曇野の人々のくらしが,どのよう な土地の様子を生かしたものかを問うもので_あ る。結果は次表の通りである。. : 18. くらしに生か した土地 の様子. 人々の くらし. 山仕事(木を切 る) :12. わ さ びの栽 培 と加 工 : 2 9 川 や水 を利 用. その他 (製紙, 木材. に じます の養 殖. ‥10 わさび佃の周 り に木. : 8. 運送, 掴. コ ンピュ ー タ製作. : 7. : 7. 頭) :5. 学習を通して, 「安曇野は高い山に囲まれてい るだけでなく,気候が冷涼できれいな水に恵ま れている」ことを学んだ子どもは,人々のくら しについても次第に水に着目し始めた(波線項 目に着目されたい) 。だが,仕事の内容につい ては,畑仕事と山仕事をあげており,プリ・テ ストのイメージと基本的に変わっていない。 り第2次終了後のテスト(12月4日)の分析 と考察 ここでは, ①安曇野では人々はどんなくらし をしていましたか, ②安曇野の人々は特にどん な土地の様子を生かしていますか,の二つを問 題にしている。それぞれの結果は,次表のよう. きれ いな水 を利 用. : 13. 川 の汚染 と浄 化努 力 : 7. これまでの学習を総合し,安曇野の人々のく らしの象徴として,わさびの栽培を取り上げた 子どもが圧倒的に多い。その中で,わさび栽培 の方法(石作り・砂作り,黒い紗のシート)に 着目した者が6名いた。他には, 「この太陽が わさびをあてているから,おじさんが黒いシー トをかぶせている。 - (中略) -わさびの人た ちは本当にくろうしているんだな。」 (Y女)と, おじさんの苦労・工夫に言及した者, 「わさび ができるからうれしいきもちがしている。おじ さんたちは川がよごれるかどうかみている。」 (S男)と,おじさんの気持ちに言及した者が.
(13) 子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成と実践分析(Ⅱ). それぞれ1名いた。 また,第2次までは,安曇野の人々のくらし の内容が,それぞれきれいな水との関係で個別 的・並列的にとらえられていたが,第3次終了 後には相互に関連づけてとらえる者が出ている。 「わさび農家は農薬をまいてにじますに影響を 与え,にじますのふんがわさびに影響を与える。 エプソンのパネルを洗った後,汚い水が出てい る。」 (T男)というように,きれいな水を利用 したにじます養殖やコンピュータの液晶パネル. 79. 野の人々のくらしへの認識をさらに深めるとと もに,子どもの自然擁護への関心や意欲を育て たということができる。く原田智仁) 2関心・意欲の評価 ここでは,第2次終了後テスト(3)および第 3次終了後テスト(4)の記述内容を主に使用し て,本単元における子どもの関JL、・意欲の育ち を分析・評価する。それぞれのテストの問いは 以下の通りである。. の洗浄が,結果的に水を汚してわさび栽培に影 響を与えたり,わさび農家の使う農薬がにじま す養殖に害になることなどにも目が向けられて いる。さらに, 「エプソンとその後ろに常念岳. 第2次終了後テスト 間(3)今日までの学習で,安曇野の人々 のくらしについてだいたい理解す. があり,エプソンの汚水は山の槙の浄化センター. ることができましたか。それとも,. に下水道管を通って行き,きれいになったら川. まだここがわかならいとか,さら. へ行く。にじますの養殖できれいな水を使うか. に調べてみたいと思うことがあり. ら,わさび園にはにじますのふんがある。」 (N 男)として,水に依存した安曇野のくらしと, きれいな水を守るための工夫を関連づけてとら える者も見られる。. ますか。 第3次終了後テスト 問(4)今日までの学習をふりかえって, さらに調べてみたいと思うことが. 第二の問いは, 「安曇野の人々のくらしはこ. ありますか。また,どうしてその. れからどのようになっていくと思いますか。ま. ことについて調べてみたいと思い. たどのようになっていったらよいと思いますか。」. ますか。. であり,結果は次表のようになった。 これか らどうなるか (予測) [ 自然 ㈱. 頼. どうなった らよいか (期待). れる-: 8 もつときれいな水(自然)にする:ll. ′ ′ が汚れる わさび栽培が栄える. . 4 水を再利用する所(哉境)紺 る: 7 : 6 コンピュータ工場を作らない : 5. [ にじます養殖が栄える : 2 環状のまま水を守っていく. :2. 〃 菖る : Z わき瑚 培.加工を盛んにする : 4 [ コンピュータ工場増大 : 4 その他(コンピュータ工場をふや JJ. 阻止 : 3 しながらきれいな水も守るなど) : 3. 未来予測については,かなり意見の違いが見 られ,子どもによる予測の困難さを感じさせる が,未来への期待に関しては,自然(水)を擁 護する考えが多数を占めている。それも,ただ 観念的・感覚的な自然擁護ではなく,水の再生 利用技術への見通しに基づく現実的な期待となっ ている。 これらのことから,子どもの安曇野の自然に ついての認識の深まりがきれいな水への関心を 育て,水-の関心の育ちがそれを生かした安曇. (1)関心の育ち 第2次および第3次終了後に,子どもが「さ らに調べてみたい」と思った対象およびその人 数は表-1の通りである。なお,学級の児童数 は33人であるが,問いへ複数の回答をした子ど もがいるので,その合計は児童数と一致してい ない。 ア関心の対象の変化 まず,義-1から,子どもがどのような対象 に関心をもったか,また,それはどのように変 化したかをみていこう。 第2次終了後,ほとんどの子どもは,わさび 栽培やコンピューター製造といった安曇野の産 業およびそれらの産業を発達させる基盤となっ た安曇野のきれいな水について調べたいとして いる。それに対して,第3次終了後では,半数 以上の子どもが,それらの諸産業から排出され.
(14) 80. る汚れた水やその処理・再利用の方法について. る。このことは,知的な関心がさらに実践的な. 調べたいとしている。. 関心にまで育っていったことを示しているとい. このような子どもの調べたい内容の変化,つ. えよう。このような関心の育ちも前述したよう. まり関心の対象の変化は,第3次の学習内容が. な知識・理解の育ちによってえられたものであ. 主として「良質で豊かな水を守るための工夫」. るといえよう。また, 「水の再利用とか僕たち. であり,授業において諸産業から排出される汚. でも考えられるのに,なぜぜんぜん進められて. れた水が焦点化されたためであるといえよう。. いないのか」という同じ子どもの記述からすれ. また, 「安曇野にセイコーエプソンの他にコン. ば,解決法の存在を仮定する子どもの思考・判. ピューター会社ができるかどうか,それにわさ. 断が,そのような子どもの関心の育ちを促した. び農家の人たちは反対しないかどうか調べたい」. ともいえよう。. というある子どもの記述から判断すれば,第2 次終了後には個別的・並列的にとらえられてい た安曇野の諸産業が,第3次終了後には相互に. 義-1第2 ・ 3次終了後の子どもの関心の分析結果 さ ら に調 べ て み た い こと. 2 次後. 3 次後 2. 関連づけてとらえられるようになったという知. わ さ びの こ と. 7. 識・理解の育ちが,そのような関心の育ちをも. わ さ びづ くりの過 程. 3. たらしたといえよう。. わ さ びの生 育条 件 ( 日射 等). イ関心のもち方の変化. わ さ びの生 育条 件 (水 ). 1. 関心をもった対象ごとに表- 1を詳細にみる. わ さ びづ くり と汚 れ た水. 2 1 2. わ さ びの加 工 品. 1. と,第2次終了後では,わさびのこと,コンピュー ターのこと,水のこと,といったように調べた. 安 曇 野 の わ さび の全 国 的地位. 1. い内容を漠然と非限定的に記述している子ども. わ さ び栽培. 12. がかなりいるのに対して,第3次終了後では,. コ ンピ ュー ター の こ と. 4. そのような非限定的な記述をした子どもは1名. コ ンピ ュー タI の種類 , 性 質. 2. だけである。例えば,第2次終了後には「わさ. コ ンビユ I 夕I の製造 過 程. 3. びのことを調べたい」としていたある子どもは,. コ ンピュ ー ター製 造 と水. 1. コ ンビ ユl タ一製 造 と汚 れ た水. 2. 第3次終了後には「わさびの排水はどうして汚. 計. 8. 2. コ ンピ ュー タ一工 場 の立 地姦 件. 1. 安 曇 野 へ の コ ン ビユ. 夕 ー進 出. 2. 2. ような子どもの知識・理解の育ちが,子どもの. コ ンピ ュー ター製 造. 12. 7. 関心の対象を焦点化するだけでなく,そのもち. ニ ジマ スの生 育 条 件 (水). 1. -. 方も明確化したことを示しているといえよう。. ニ ジ マ ス養 殖 と汚 れ た水. いのか,農薬をいれなくてもよい方法はないか 調べたい」としている。このことは,前述した. また,子どもの記述を問いとしてみると,第 2次終了後,第3次終了後とも, 「どうして穂 高町のわさびは日本一なのか」, 「コンピュータ 工場をどうして穂高などにつくったか」, 「わさ び農家やコンピューター工場はどうして汚い水 を流すのか」といった因果関係を求める問いが 多い。このことは,子どもの知的な関心が高い. ニ ジ マス養 殖. 計. 計. 1 1. 1. 水 のこと. 3. 1. きれ い な水 の採 取 方 法. 3. きれ いな水 と水 道. 1. 汚 い水 の処 理 . 再 利 用. 2. 13. 安曇 野 の水. 9. 14. 計. ことを示しているといえよう。また,第3次終. 安曇 野 の 自然. l. 了後には,それらの因果関係を求める問いに加. 安曇 野 の 自然保 護. 1. 1. えて, 「汚い水をどう再利用すればよいか」と. 安曇 野 の人 々の く ら し. 1. 2. いった問題の解決法を求める問いも出てきてい. 安曇 野 の 温泉. 1. 1.
(15) 子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成と実践分析(Ⅱ). (2)意欲の育ち 実施したテストの性格上,子どもの意欲の育 ちを確定することは難しい。それを確定するた めには「どのようにして調べるか」といった調 査活動の方法に関する問いをさらに加える必要 があったといえよう。しかしながら授業記録や 子どもの記録から判断すれば,子どもは,安曇 野の水販売業者に手紙を出したり,安曇野の産 業やくらしについて記載したパンフレット等を 取り寄せたりしている。このように,本実践に おいて,子どもは情報収集をはじめとする調査 活動に意欲的に取り組んだといえる。 (尾原康光) Ⅴ結 本研究では, 「認識内容の深まりが関心・意 欲を育て,関心・意欲の育ちが認識内容の深ま りを進展させる」という研究仮説を設定した。 この仮説にもとづき,学習対象として「山地の 人々のくらし」を取り上げ,長野県の安曇野を 事例に, 〈良質で豊富な水に恵まれた安曇野の 自然》 《水を生かした安曇野の人々のくらし〉 〈安曇野の人々の願いと水を守るための工夫》 を段階的に追究する授業を開発した。 授業設計においては,以下の3点に留意した。 ①子どもにとって未知の地である安曇野への関 心・意欲を育てるために,その自然条件とりわ け良質で豊富な水に着目させ,水を生かした人々 のくらしについて認識させる。 (参認識を深める 手段として,教師による情報や実物の提供とと もに,子どもの一人学習を積極的に取り入れる。 ③さらに子どもの認識内容の深まりと広がりを 図るために,人々の水を守るための工夫や願い に着目させ,安曇野の未来について予測させる。 授業実践の分析・ 1からは,認識内容の深ま りと関心・意欲との相関が改めて明らかになっ た。すなわち,授業の後半において「安曇野の 水がどこからきているか」をめぐって活発な意 見がかわされた背景に,教師による情報の提供 と子どもの一人学習を通した認識の深まりが指 摘された。また分析・ 2からは,関心・意欲の 育ちと認識内容との相関が明らかとなった。す. 81. なわも, 「きれいな水を守るためにどうするか」 という課題について,深い認識に支えられたか なり具体的な提案がなされえた背景に,くらし における水への関心・意欲の育ちが見て取れた。 ここに,研究仮説の正しさははぼ検証された。 それはまた,子どもの絵や説明文の分析・評価 により確証された。 本研究のねらいの一つに,子どもを評価する 問題の開発があった。まず,単元を通した子ど もの変容を評価するために,プリテストを含め, 小単元毎に計4回のテストを実施した。次に, 認識内容の評価に関しては, 「今日の学習で∼ について理解できましたか」といった問いに文 章で答えさせる従来の方法をとらず,子どもた ちの認識を映像としてのイメージと言語による 説明の双方で把握するため,絵と説明文をかか せることにした。その結果,子どもの認識をよ り正確に評価することができた。絵の分析法お よび絵と説明文の整合性についての理論的考察 は,他日を期したい。また,関心・意欲の評価 に関しては, 「さらに調べてみたいことはあり ますか」という問いに,文章で答えさせる方法 をとった。ただし,この方法では関心は評価で きるものの,意欲面の評価が不十分に終わると いう問題点が指摘された。この点についても, 今後の検討課題としたい。 (原田智仁) 漢. 1)岩田一彦他「子どもの関心・意欲を育てる社会 科授業構成と実践分析- 3年『社町の桃づくり』 を事例として-」 『学校教育学研究』第5巻, 1993, pp.143-161. 参考文献 ・庄司他人男「授業成立のメカニズムと『関心・意 欲・態度』 」日本教育方法学会編『教育方法21 自己学習能力の育成と授業の創造』明治図書, 1992, pp.70-81. ・厚東洋輔『社会認識と想像力』 --ペスト社, 1991..
(16) 82. Development and Analysis of Social Studies Lesson for promoting Children's Interest and Volition (II) : In the Case of "the Life in Highlands (the Life in AZUMINO)" Kazuhiko Iwata, Tomohito Harada, Yasumitsu Obara, Seiichi Onishi, Naoto Ohashi, Daimei Doumoto, Takao Omae. This study is a continuation of Development and Analysis of Social Studies Lesson for promoting Children's Interest and Volition ( I ), which has been made clear that children's interest and volition can promote through enriching children's social cognition. The purpose of this article are also to develop and analyze social studies lesson for promoting children s interest and volition, and to develop a method that analyze and evaluate social studies lesson from a point of promoting interest and volition. The hypotheses in this study are children s interest and volition can promote through enriching children's social cognition, and promoted children s interest and volition can enrich children s social cognition. Based on these hypotheses, we developed a lesson of "the Life in Highlands (the Life in AZUMINO)" in the fourth grade, and then analyze this lesson and children s understandings, interests and volitions. As a result of this study, it has been made clear that these hypoteses are valid. But there is enough room to reexamme the method that analyze and evaluate volition Keywords: interest and volition, social cognition, social studies lesson, evaluation, the SHIDOUYOUROKU (the course of evaluation) in 1991.
(17)
関連したドキュメント
目標を、子どもと教師のオリエンテーションでいくつかの文節に分け」、学習課題としている。例
子どもたちは、全5回のプログラムで学習したこと を思い出しながら、 「昔の人は霧ヶ峰に何をしにきてい
海なし県なので海の仕事についてよく知らなかったけど、この体験を通して海で楽しむ人のかげで、海を
子どもたちが自由に遊ぶことのでき るエリア。UNOICHIを通して、大人 だけでなく子どもにも宇野港の魅力
兵庫県 篠山市 NPO 法人 いぬいふくし村 障害福祉サービス事業者であるものの、障害のある方と市民とが共生するまちづくりの推進及び社会教
を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に
を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に
・私は小さい頃は人見知りの激しい子どもでした。しかし、当時の担任の先生が遊びを