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住宅地の土地利用変化を考慮した高齢者と子育て世代の親和性を高める持続的安全交通施策に関する研究 平成28年度(中間報告)タカタ財団助成研究論文 ISSN 2185

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住宅地の土地利用変化を考慮した高齢者と

子育て世代の親和性を高める持続的安全交通施策に

関する研究

― 平成 28 年度(中間報告) タカタ財団助成研究論文 ―

ISSN 2185-8950

研究代表者

鈴木 美緒

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研究実施メンバー

研究代表者

東京工業大学

環境・社会理工学院

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報告書概要

住宅地の⼟地利⽤が変化して保育園が建設され,⼤量の⼦供載せ⾃転⾞が発⽣する ことにより,地域に住まう⾼齢者の⾃動⾞との共存が必要となる. そこで本研究では,都市部の住宅地にある細街路において今後増加することが予想さ れる特徴的な主体−つまり⼦供載せ⾃転⾞と⾼齢運転者−に着⽬し,それらが限られた 空間を安全・安⼼に共存できる道路空間の構築のために必要なハード施策とそれを補う ソフト施策やツールを提案することを⽬的とし,保育園開園によって増加すると予想さ れる⼦供と保育園利⽤者の交通特性の把握,保育園開園予定のある住宅地において,保 育園開園に伴う交通問題およびその他問題への意識と,⾃らの⾃動⾞運転と地域の交通 安全に対する意識の把握を試みた. その結果,  保育園への送迎による断⾯交通量はさほど多くない.  ⼦供載せ⾃転⾞は⼩回りが利かないため,⼀旦停⽌をしないほか,逆⾛等,通⾏ル ールの遵守もなされていない.  ⽇常的に利⽤する交通⼿段に対する抑制が具体的に提⽰されると,共存に対して抵 抗感を持つのに対し,あまり使わない交通⼿段に対してはより理性的に判断する傾 向にある.  特に事業⾃体がスムーズに進んでいない場合には,⼀般論に対しての話し合いはあ まりうまくいかないため,具体的な交通対策に対して議論を進めるのが有効である.  不満が事業者と⾏政に向かう傾向にある.この 2 者の⽴ち位置を明確にし,リーダ ーシップを⽰させることで,他の当事者への安⼼感が⽣まれると予想される. といったことが明らかになった.

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住宅地の土地利用変化を考慮した高齢者と子育て世代の親和

性を高める持続的安全交通施策に関する研究

1. 本研究の背景と⽬的 ... 2 1.1. ⾼齢者の⾃動⾞運転 ... 2 1.2. ⽣活道路を有する住宅地における⼟地利⽤の変化 ... 4 1.3. ⼦供乗せ⾃転⾞,幼児,⾼齢歩⾏者の交通上の安全性 ... 5 1.4. ⽣活道路のまちづくりの観点での位置付け ... 7 1.5. 本研究の⽬的 ... 8 2. ⽣活道路の安全対策の⽅向性の提案 ... 9 2.1. ⽣活道路の交通事故の現況 ... 9 2.2. 従前の⽣活道路における安全対策 ... 10 2.3. 本研究において提案する⽣活道路の安全対策 ... 10 3. 本研究のケーススタディ対象地域の概要 ... 12 3.1. 対象地域 ... 12 3.2. まちづくりに関しての特徴 ... 14 3.3. 対象地域での保育園の概要 ... 14 3.4. 対象地域での保育園建設にかかわる報道と研究開始前までの経緯 ... 16 3.5. 対象地域での保育園建設にかかわる論点整理 ... 17 4. 保育園通園者の交通特性と⼦供載せ⾃転⾞の挙動 ... 19 4.1. 観測対象の保育園の概要 ... 19 4.2. 観測対象の保育園での交通に関するルールおよびその経緯 ... 20 4.3. ⼣⽅の保育園送迎時の交通量調査 ... 20 5. 保育園建設に関する各ステークホルダーの対⽴構造と交通問題の抽出 ... 25 5.1. 当初の開園予定期間までの議論による構造の抽出 ... 25 5.2. ⾃転⾞禁⽌ゾーン導⼊可能性の検討段階での構造の抽出 ... 27 5.3. ⾃転⾞禁⽌ゾーン導⼊可能性以外の交通ルールの検討を含めたワークショップ実施段 階での構造の抽出 ... 31 5.4. ⾃転⾞の地域ルール導⼊可能性と道路全体のイメージ像形成段階での構造の抽出 .. 33 5.5. 地域ルール⼀般化段階での構造の抽出 ... 35 5.6. 地域住⺠への制約を具体的に提⽰する段階での構造の抽出 ... 36 6. 結論 ... 39

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1. 本研究の背景と⽬的

1.1. ⾼齢者の⾃動⾞運転 わが国では近年,⾃動⾞事故件数が減少し続けており,交通事故死亡者も減少傾向にあ る.しかし,世界でも例をみないほどの⾼齢社会に突⼊し,今後ますます⾼齢者⼈⼝が増 加し(図- 1),その⼀⽅で⾼齢者の交通事故死亡率は他の年齢層に⽐べて⾼く,⾼齢者の交 通事故件数の増加が死亡事故の増加につながると予想される(図- 2).さらに,⾼齢者の⾝ 図- 1 わが国における⾼齢者の⼈⼝推移と⼈⼝推計 図- 2 ⾃動⾞乗⽤中の交通事故件数の推移 体的・精神的衰えからくる運転能⼒の低下は避けられず,事故発⽣確率も増加すると考え

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- 3 - られることなどから,⾼齢者による交通事故はわが国において⾮常に深刻な問題であると いえる.実際,平成 27 年中の交通事故死亡者(4,117 ⼈)は,ピーク時の昭和 45 年の死 亡者数の 4 分の 1 以下となっているのに対し,図- 2 に⽰すように,⾼齢者が運転する⾃動 ⾞がかかわる事故件数は,この 10 年ほぼ横ばいとなっており,平成 27 年中に発⽣した死 亡事故の半数以上が 65 歳以上の⾼齢者となっている.⾼齢者の⼈⼝⾃体が増加している こともあり,⾼齢者の運転免許保持者は約 1,640 万⼈(免許保有者全体の 5 ⼈に 1 ⼈程度) と増加している. そこで,⾼齢者の交通事故抑制策として,75 歳以上の運転者に対し運転免許更新時に講 習予備検査を課したり,運転免許返納を促したりする取り組みが進んでいる.返納した運 転免許の代わりに「運転経歴証明書」(過去 5 年分の運転に関する経歴を証明するもの)を 申請することができ,⾼齢者運転免許⾃主返納サポート協議会の加盟店や美術館などでさ まざまな特典を受けることができる制度となっている.この他にも,⾼齢者には公共交通 の運賃が割り引かれる制度もあり,特に都⼼部では⾃動⾞運転からの転換がしやすい環境 が整っているといえる.しかし,公共交通網が発達している東京都ですら,返納率は 1.7% 程度しかない.免許返納意識に⼤きく影響する要因のひとつに,⾃⾝の体の衰えに対する 認識があると⾔われている.すなわち,⾃⾝の体の衰えを感じている⼈ほど運転免許を返 納しやすいということである.しかしその⼀⽅で,⾼齢になるほど⾃⾝の運転に対する評 価と他者からの評価の乖離が⼤きくなるという指摘もある. ⼀⽅,75 歳あたりまではいわゆる優良ドライバーが運転をやめ,後期⾼齢者になると事 故経験が運転をやめるきっかけになるのではないかと考えられ,違反歴があるドライバー は全体的に運転を継続する傾向にあることがわかる.このことは,現状では違反⾏為が事 図- 3 ⾼齢者の運転免許更新と⾃主返納の割合

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- 4 - 故につながっていなくとも,運転能⼒の衰えによってこれまでどおりの運転が難しくなる ことで事故に⾄ってしまう危険性があるドライバーが運転を続けることを⽰唆している. このように,⾼齢者が免許を返納しようとしない要因のひとつに,⾼齢者⾃⾝が「運転 経験の⻑さから機能低下を認めようとしない」ことがあると指摘されており,実際に近隣を 運転する頻度や運転歴の⻑さから,「機能低下レベルによっては,慣れている近距離に限定 して運転を継続するのは問題ないのでは」とも⾔われている. 1.2. ⽣活道路を有する住宅地における⼟地利⽤の変化 上記のようにこれまで“⾼齢者にとって運転に慣れていて⽐較的安全”とされてきた住宅 地も,近年では都市部において,保育園や⾼齢者向けデイサービスが建設されるケースが 増えている.特に,都市部における保育園の不⾜は深刻な問題としてメディアにもたびた び取り上げられているが,保育所の定員数を増加させても,待機児童の数は減少していな いのが現状である(図- 4).この要因には,保育⼠の待遇が悪いこともあるとされるが,そ もそも,認可,不認可を問わず,保育園の数そのものが少ないことも指摘されている.そ のため,特に居住者数が増えている⾸都圏では,住宅地に保育園を建設する事例が増えつ つある(図- 5).同様に,⾼齢化社会の進展に伴って必要性が増しているデイサービスなど も,その需要に応えるため,住宅地で開業するケースが増えている. しかし,特に保育園建設に対しては,その近隣住⺠からの反対が起こることが多く,実 図- 4 待機児童と保育所定員数の推移(A)

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- 5 - 図- 5 東京都⼤⽥区近辺の認可保育園(緑)および認証保育園(⻘)の分布 際に千葉県市川市や東京都武蔵野市では,保育園の建設が断念されている.近隣住⺠が保 育園の建設を反対する理由として挙げているのが,「騒⾳」と「交通事故」である.このと きの「交通事故」とは,保育園利⽤者による送迎によって⽣活道路の⾃転⾞・歩⾏者の交 通量が増えることによる交通事故,が想定されている. 1.3. ⼦供乗せ⾃転⾞,幼児,⾼齢歩⾏者の交通上の安全性 2013 年国⺠⽣活センターアンケート調査によると,⼦供乗せ⾃転⾞を使⽤している⺟親 の 7 割が,⾃転⾞に⼦供を乗せて転倒,あるいは転倒しそうになった経験を持つことや, ⼦どもを乗せながら⾼スピードで⾛⾏したり,⼦どもを乗せたまま⾃転⾞を⽌めて⺟親同 ⼠の話に夢中になり転倒しやすい状況をつくっていたり等の危険事象が報告されている. 実際に,  東京都国分寺市で,幼児をおぶって⾃転⾞に乗っていた⺟親が信号待ちの⾃動⾞の 間をすり抜けて横断しようとしてバランスを崩して転倒,幼児が頭を強打して死亡. (2016 年)  神奈川県川崎市で,狭い歩道で⼦供乗せ⾃転⾞と普通⾃転⾞がすれ違おうとした際 に,⼦供乗せ⾃転⾞が切り下げ部分でバランスを崩して⾞道側に転倒,投げ出され た幼児が信号待ちをしていた⾃動⾞の下に⼊り込み,それに気付かない⾃動⾞が発

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- 6 - 進して轢かれ,幼児が死亡.(2012 年)  ⼦供が幼児 2 ⼈乗せ⾃転⾞で踏み切りを横断中にタイヤが挟まり⽴ち往⽣し,幼児 1 ⼈は座席から外すことができたが,もう 1 ⼈の幼児を座席の固定から外すことが できないでいるうちに電⾞が接近,⾃転⾞と残された幼児が電⾞と衝突し,幼児が 死亡. といった事故が発⽣しており,これらはいずれも⼦供乗せ⾃転⾞が低速度で⾛⾏中にバラ ンスを崩す等の事象が発⽣したことが原因となっている. 特に幼児 2 ⼈を乗せられる⾃転⾞については,道路交通法ではもともと違法とされてお り,警察庁が 2009 年にその厳罰化を打ち出したが,その際に利⽤者から「⼦供 2 ⼈を乗せ られないと保育園に送迎できず,⽣活が成り⽴たない」「忙しい親をいじめるべきではない」 などの反対意⾒が多く出された結果,条件を満たした機種の⾃転⾞に限り,幼児 2 ⼈乗せ を容認する⽅向にシフトした経緯がある.その認可のための条件は「重⼼が⽐較的低くな るような位置に座席がある」「駐輪して⼦供を乗り降りさせる際に転倒しづらいようなスタ ンドが付いている」といったことであり,⾃転⾞の⾛⾏時に影響する重⼼について多少の 配慮はあるものの,基本的には⾼速でバランスを取りながら⾛⾏する必要がある状態で認 可されていることになる.つまり,特に保育園が建設されることにより,⼦供を載せた⽐ 較的⾼速の⾃転⾞の交通量が住宅地に激増することになる.また,⼦供載せ⾃転⾞⾃⾝も, 転倒等によって⼦供の頭部を損傷する事故を起こしているが,⼦供⾃⾝もまた,⽣活道路 において多くの事故に巻き込まれている.⾝⻑が低いためにカーブミラーに映りづらく, ドライバーの発⾒が遅れることも指摘されているが,⼦供の事故は事故全体の傾向と⽐較 して⾶び出しが多いことがわかっており(図- 6),交通ルールをよく知らないことも影響し ている.保育園を利⽤するような低年齢層の場合でも,⾃転⾞を押す親とともに近辺を歩 くことがあれば,このような⾶び出しや乱横断による事故の発⽣が起きることが懸念され る. 図- 6 歩⾏中の⾶び出し・乱横断事故の割合の⽐較(出典:警察庁資料,2008)

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- 7 - ⼀⽅,近隣に⽣活する⾼齢者の⾃動⾞運転に関しては前述のとおりだが,歩⾏中の⾼齢 者の事故にも特徴があり,⼦供と同様,急な⽅向転換である乱横断が多い傾向があるとさ れている(図- 6).また,既往研究から,⾼齢者は⾃転⾞乗⽤中も乱横断が多い傾向が明ら かになっている. このような⼦供乗せ⾃転⾞や⾼齢者の事故が起きた後の対応として特徴的なのは, ・⺟親は⼦育てしながら仕事もしているので,急いで乱横断しても仕⽅がない ・⾼齢者は横断歩道まで歩けないので乱横断をしても仕⽅がない といったような反応があることである.わが国の交通事故は⾃動⾞が第⼀当事者になるこ とが多いが,「他に適切な交通⼿段がない」「急いでいるから仕⽅ない」等の理由で,これ まで⼦供乗せ⾃転⾞や⾼齢者の乱横断に対しては特に寛容な対応がなされてきた.現に, ⾞道に⾶び出してきた⾃転⾞や⾼齢者と事故を起こした⾃動⾞は,第⼀当事者になること が多い.このような判断をされると,⾃動⾞は常に低速で⾛⾏する必要が⽣じ,交通の円 滑性にも影響を及ぼすばかりでなく,交通ルールや交通施設⾃体の意味も希薄になると考 えられる. 住宅地の⼟地利⽤が変化して,運転機能の落ちた⾼齢者が住み,⾃動⾞を運転する住宅 地の⽣活道路に⼤量の⾼速⾃転⾞が流れ込み,⼦供が⾃由に歩く環境が⽣まれたとき,そ れらの主体が起こす事故被害は甚⼤になることが容易に想像される. 1.4. ⽣活道路のまちづくりの観点での位置付け ⽣活道路は当然公共施設だが,まちづくりの観点では近隣住⺠に密着した共有空間とし ても扱われる.あくまでも道路であるため,誰が通ることも想定されるが,⽣活道路は近 隣住⺠の利⽤する道路で,通過交通は原則想定されないことから,近隣住⺠はその変化に 敏感で,近年の保育園建設反対運動のような「新たな利⽤者」に対する抵抗や,対⽴構造 を⽣む要因になっていると考えられる.なお,保育園建設ばかりでなく,認知症特化型デ イサービスの住宅街での開業に関しても,認知症⾼齢者が出歩くことをおそれての反対運 動の事例があり,今後,交通事故への懸念が争点になることが懸念される. しかしその⼀⽅で,⽣活道路は「⾃分たちの地域の道路」だからこそ,近隣住⺠が⽣活 道路の清掃や交通・防犯パトロールを積極的に⾏なってきた側⾯もある.新たな利⽤者を 阻害することはもちろん道理ではないが,⼀⽅でそのような近隣住⺠の貢献を無視し,た だ「我慢しろ」「気をつけろ」と犠牲を強いるのは,将来的に住⺠とインフラの関係を悪化 させるものであり,望ましいことではないといえる.

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- 8 - 1.5. 本研究の⽬的 上記の背景のとおり,住宅地の⼟地利⽤が変化して保育園が建設され,⼤量の⼦供載せ⾃ 転⾞が発⽣することにより,地域に住まう⾼齢者の⾃動⾞との共存が必要となる.このため, 1)⾼速度で不安定な⼦供載せ⾃転⾞の安全を保つ, 2)運転機能が低下し始めた⾼齢運転者にとって運転できる環境を保つ, 3)⾼齢者の運転機能低下により運転をやめ,徒歩や⾃転⾞に移⾏させるため, ⾃転⾞に乗る⾼齢者の安全を保つ 4)歩く⾼齢者と歩いて保育園に通園する親⼦の安全を保つ 5)近隣住⺠の⽣活道路への愛着をなくさず,まちづくりへの情熱を失わせない の全てを叶える空間を構築しなければならない. そこで本研究では,都市部の住宅地にある細街路において今後増加することが予想され る特徴的な主体−つまり⼦供載せ⾃転⾞と⾼齢運転者−に着⽬し,それらが限られた空間 を安全・安⼼に共存できる道路空間の構築のために必要なハード施策(道路標⽰や注意喚起 装置)とそれを補うソフト施策(ローカルルール,両者が参画する安全教育プログラム)やツ ールを提案することを⽬的とする.

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2. ⽣活道路の安全対策の⽅向性の提案

2.1. ⽣活道路の交通事故の現況 すでに述べたとおり,⾼齢者や⼦供乗せ⾃転⾞には,⾶び出しや乱横断による事故が多 く発⽣する傾向が指摘されているが,そもそも,⽣活道路での歩⾏者,⾃転⾞乗⽤中の事 故による死者数⾃体が,欧⽶諸国に⽐べて多く(図- 7),歩⾏中および⾃転⾞乗⽤中の事故 対策を⾏なうこと⾃体の意義が⾮常に⼤きい. 特に,⾃転⾞乗⽤中の事故による死傷者数はその分担率だけでなく,利⽤者数および⼈ ⼝あたりで⾒ても諸外国と⽐較して多いことが指摘されており,地区道路における⾃転⾞ や歩⾏者の安全対策は,わが国にとって⾮常に重要である(図- 8). 図- 7 交通事故死者数の交通⼿段種別の国際⽐較 図- 8 ⾃転⾞台数および⼈⼝あたりの⾃転⾞乗⽤中の死者数(2008 年)

Cycles per 1,000 inhab. Cycles per 1,000 inhab.

D ea th to ll p er 1,0 00, 000 in h ab . Netherlands Netherlands Great Britain Great Britain Japan Japan Korea Korea Germany Germany Italy Italy France France United States United States D ea th to ll p er 1,0 00, 000 cy cl es .

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- 10 - また,⾃転⾞事故に関していえば,特定の事故多発地帯があるというより“⾄るところで 事故が起こっている”と考えたほうがよい状況にあり,特に東京都 23 区においては⽣活道 路での事故が約 7 割を占めるというデータもあることから,⽣活道路における⾃転⾞事故 については特に留意する必要がある. 2.2. 従前の⽣活道路における安全対策 ⽣活道路の安全対策は従前からさまざまな⽅策で検討されてきた. ハンプは,⼩さな段差によって⾼速で通過する⾃動⾞に振動と不快感を与える装置で, ⾃動⾞は通過時に速度を下げるようになるが,設置の予算の問題と,通過するたびに発⽣ する騒⾳により近隣に不快感を⽣じる場合があることが指摘されており,近年ではイメー ジハンプのような視覚的な表現で対応することも多い.また,道路形状を湾曲させて⾃動 ⾞速度を下げるシケインや,道路幅員を狭めて⾃動⾞速度を下げる狭さく等もよく⽤いら れる⼿法である. 実際には,これらの⾃動⾞速度抑制施策ばかりでなく,通⾏禁⽌や⼀⽅通⾏規制等の地 区道路全体の⾃動⾞交通量抑制施策を組み合わせ,住宅地全体の交通静穏化を図るのが⼀ 般的である.さらに,⾯的に速度制限を設けるゾーン 30 も海外から取り⼊れられ,導⼊事 例が増えている. 2.3. 本研究において提案する⽣活道路の安全対策 このように,従来の施策は⾃動⾞交通を抑制し,⾃転⾞や歩⾏者の安全を向上させる ものであり,その安全対策に対して⾃転⾞はいつも歩⾏者側の⽴ち位置として扱われてき た.本研究で対象としているような施設が住宅地にできることによって⾃転⾞交通量が増 える事例は,近年増えているものの,それらの⾃転⾞が歩⾏者に対して及ぼす影響は考慮 されてこなかった.しかし,近年では歩⾏者の安全確保のため,「⾃転⾞の⾞道通⾏の強化」 だけでなく,「ルールの厳罰化」や「悪質な違反者への講習義務化」等,⾃転⾞を軽⾞両と して扱う機運が⾼まっている.しかも,前に述べたとおり,⼦供を乗せた⾃転⾞や荷物が 多い⾃転⾞は重⼼が⾼く,ある程度の速度が出ていないとふらつきやすいため,⽣活道路 においても⾼速⾛⾏しがちになり,⾒通しの悪い⽣活道路ではより危ない.このようなタ イプの⾃転⾞の場合,速度は⾼くても 25-26km/h 程度であり,ゾーン 30 では規制できな い. 上記のように,⽣活道路では,交通安全と住環境の維持のためゾーン 30 等の交通静穏化 施策によって⾃動⾞を抑制するのが⼀般的だが,従前から指摘されている「⾃転⾞や歩⾏

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- 11 - 者の事故が多いこと」に加え,  ⽣活道路における⾃転⾞事故は⾄るところで発⽣しており,特に⾃転⾞のルー ル遵守がなされていないことも寄与している  本研究で対象とする道路では,⼦供載せ⾃転⾞が増えることが予想され,⾼速 での⾛⾏を抑制しづらい  本研究で対象とする歩⾏者(特に⼦供と⾼齢者)には⾶び出し事故が多い  ⾃転⾞はそもそも軽⾞両である といったことをふまえ,本研究では「⾃動⾞と⾃転⾞に制約を与え,歩⾏者の安全を守る」 ことを交通安全施策の基本的な⽅向性として設定した. 図- 9 保育園がある住宅地の⽣活道路における交通安全に関する論点の整理

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3. 本研究のケーススタディ対象地域の概要

3.1. 対象地域 本研究は特定の地域に限定した施策を提案するものではないが,ケーススタディとして ある地域にて実装を進めながらその効果を分析する⼿法をとる.ここでは,その対象地域 の概要を説明する. 本研究では,東京都⼤⽥区⽟川⽥園調布 2 丁⽬に 2017 年 4 ⽉開業予定の保育園とその 周辺(⽟川⽥園調布 2 丁⽬)を対象地域として先⾏的に実験を⾏なう.⽟川⽥園調布 2 丁 ⽬は,環状 8 号線(都道 311 号線)と接し,奥沢に近接する住宅地であり,最寄り駅は九 品仏駅,⾃由が丘駅,奥沢駅,⽥園調布駅(いずれも東急電鉄)である. 当該地域では,昔から住んでいる⾼齢世帯やその⼦供世帯が多く,家屋のタイプも⼀軒 家がほとんどである.当該地域に保育園が建設される背景として,まず,東京都世⽥⾕区 は待機児童数全国 1 位であり,早急に保育園の数を増やす必要があることが挙げられる. もともとはある企業の経営者の住居(⼀軒家)だったが,退去に伴い⼟地を区が買い上げ, 保育園として事業者を募集した. 保育園建設予定地周辺,特に前⾯道路は幅員 5.4m で双⽅向通⾏をさせる⼤変狭い⾞道 であり,その周辺には⾒通しの悪い交差点が多数存在する.事故やヒヤリハットの発⽣箇 所にはカーブミラーが置かれているが,その数は限定されている.近隣住⺠が塀との衝突 対策として交差点部分に植栽を設けることが多くあり,より⾒通しを悪くしている.また, 当該道路は,環⼋から保育園側にかけて下りの傾斜があり,北側に⾏くにつれ,上りの傾 図- 10 ⽟川⽥園調布 2 丁⽬保育園(仮称)の建設場所

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- 13 - 図- 11 ⽟川⽥園調布 2 丁⽬保育園(仮称)の建設箇所と周辺の家屋の状況 図- 12 保育園(当時は建設予定地)の前⾯道路 斜となる.北側には幅員 3.5m 程度のクランクがあり,⾃動⾞は通⾏⽌めではないが,実質 通⾏することは難しい状態となっている.(住⺠の話によると,抜け道として近隣住⺠でな い⾃動⾞が通ろうと試みていることが時々ある.)このクランク部分も北側に向かって上り の傾斜になっている. このように,当該地域は,東京の古い住宅がとして典型的な,⼊り組んだ細い道路と勾 配を持つ地域である.図- 17 に,対象地域の⾃転⾞事故発⽣状況を⽰す.すでに⽣活道路での 事故の特徴として述べたように,当該地域においても⾃転⾞事故の多発地点が存在するわけで はなく,むしろほとんど⾃転⾞事故が発⽣していないような状況にある.しかし,ヒアリング 調査によると,「実際に出会い頭事故に遭いそうになって転倒する等の単独事故およびヒヤリ

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- 14 - 図- 13 保育園(当時は建設予定地)周辺の交差点 ハット事故は他頻度で発⽣しており,警察への届出をしないだけ」という実情があることが明 らかとなっている. 3.2. まちづくりに関しての特徴 ⽟川⽥園調布 2 丁⽬地区では,まちづくり協議会が発⾜しており,まちづくりに関する ルール変更や新規整備等については,まちづくり協議会での承認を得ないと進められない ことになっている.まちづくりにかんしては参加意欲の⾼い地域であるということができ る. 3.3. 対象地域での保育園の概要 世⽥⾕区の待機児童数を減少させるべく,対象とする⽟川⽥園調布 2 丁⽬保育園は 840m2 の敷地に対し,定員を区内最⾼の 161 名に設定された,これは,屋上と園庭を使⽤ する前提で算出された最⼤の定員である.そこで,近隣住⺠からは,交通量の増加と騒⾳ が問題として挙がり,反対運動へと発展した(後述).

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図- 14 保育園(当時は建設予定地)北側にあるクランク

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- 16 - 3.4. 対象地域での保育園建設にかかわる報道と研究開始前までの経緯 ⽟川⽥園調布 2 丁⽬保育園は,当初 2016 年 4 ⽉開業予定であったが,2015 年度から開 始された住⺠説明会において反対意⾒が相次ぎ,開業が 1 年延期となった経緯がある.こ の際の反対理由として,「道路が狭く,交通安全上問題がある」,「⼦供が発する騒⾳の問題 が解決されない」といったものである. 2015 年度から数回開催されている説明会は,事業者主催ではなく,⽟川⽥園調布住環境 協議会が主催し,事業者と区の担当,建設会社,町会と近隣住⺠を呼び,保育園の整備計 画を話し合う趣旨で開催された.しかし, ・2014 年 12 ⽉頃に,事前の説明もなく「保育園が建設される計画がある」と住環境協議 会および近隣へ知らせが⼊り,2015 年 2 ⽉の説明会開催まで,ほとんど情報を知ること ができなかった. ・説明会が開催されたのは,「住環境協議会としては現状賛成・反対のどちらでもないが, 近隣住⺠で⼀定の意⾒要望がまとまってくれば,住環境問題として取り上げる」とのス タンスがあったため,近隣で住環境問題として整理したことが発端である. ・近隣の主張と住環境協議会のスタンスに相違が⽣じ,近隣住⺠が「近隣の会」を⽴ち上 げるなどして,住⺠側での調整が難しい時期があった. ・2015 年 3 ⽉には,「⽟川⽥園調布⼀,ニ丁⽬地区まちづくり協定」の趣旨に則った進め ⽅をするよう要望が出されるが,近隣住⺠の意⾒に反し,事業者は最初に決めたとおり の建設を進めると述べ,議論が平⾏線に終わることが以後続く. ・建設予定箇所でガス漏れが発⽣したのを事業者が隠蔽する,事業者側のスタッフが住⺠ になりすまして意⾒を述べる,近隣の会に対する誹謗中傷事案が発⽣する,など,近隣 住⺠と事業者,住環境協議会との間にトラブルが複数回発⽣した ・事業者は 2015 年時点,「外遊びは極⼒させない,窓は午睡時間以外閉め切る,出来るだ け散歩に連れ出す,園庭での⾏事はしない」といったルールを説明していたが,2016 年 の建設許可取得後に,「屋上にプールを設置する,園庭で遊ばせる」等のルール変更を⼀ ⽅的に⾏なうなど,感情的なわだかまりが⽣じるような出来事があった といった状況もあり,2015 年度に数ヶ⽉話し合いが途絶え,結果として開業が 1 年延びて いる.このように反対運動が活発であったことと,近隣住⺠の中に,⼤企業の経営者や元 ⻑官等が含まれていたことから,メディアでは「社⻑や元⻑官が保育園建設を反対してい る,保育園が建設できなくて⼦供を持つ親がかわいそう」という形で,近隣住⺠側に⾮が あるスタンスの報道が多くなされた.

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- 17 - 図- 16 対象地域での⾃転⾞事故発⽣状況(2017 年 2 ⽉現在) 3.5. 対象地域での保育園建設にかかわる論点整理 本研究では,交通問題に対し,図- 17 のような論点整理を⾏なった.つまり,昔からの 道路利⽤者(近隣住⺠)には⾼齢者が多く,道路環境の変化をあまり望まないことを差し 引いても,少なくとも近隣で運転したり,歩いたりする環境を保持したいと考えている. そのような状況に対し,⾶び出し等特有の交通挙動を持つ新しい道路利⽤者の増加や送迎 の⾃動⾞の増加が起こる.その双⽅が相⼿に対して危険な なお,すでに述べたとおり,保育園建設を反対する近隣住⺠の⾔い分として,「道路が狭 く,交通安全上問題がある」,「⼦供が発する騒⾳の問題が解決されない」の 2 つが⼤きく 挙げられている.この 2 つの元となるのは保育園の定員が多いという点である.現に,近 隣住⺠は定員数が過剰だとする根拠をいくつか提⽰し,説明会の議論の⼤半が定員数の削 減に費やされてきた.しかし,本研究ではあくまでも交通安全をターゲットとして諸問題 の解決を図るスタンスであることから,「道路は保育園の建設によらず,交通量が急激に増 加することがあり得る」との⾒解の下,定員数問題には抵触せずに,交通安全対策のみで 各ステークホルダーの意図の相違とその変容によって対⽴構造を緩和することを試みた.

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4. 保育園通園者の交通特性と⼦供載せ⾃転⾞の挙動

4.1. 観測対象の保育園の概要 定員数の多い保育園の開園により発⽣する交通量を把握するため,世⽥⾕区で定員数の 多い保育園にて,ヒアリング調査および観測調査を⾏なった. 調査対象であるナオミ保育園は,東急⼤井町線等々⼒駅と尾⼭台駅の中間の住宅街に 図- 18 ナオミ保育園(右)と調査対象道路 図- 19 ナオミ保育園の⼊⼝と園庭(奥) 存在する,定員 135 名の保育園である.建物は 3 階建て,駐⾞場と近接する側に園庭があ

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- 20 - り,道路を隔てた向かい側は住居である. 4.2. 観測対象の保育園での交通に関するルールおよびその経緯 ヒアリング調査によると,当初は⾃動⾞での送迎を認める形になっていたが,駐⾞によ り近隣住⺠が⾃動⾞を出し⼊れできなくなった経緯があり,⾃動⾞による送迎は禁⽌にな った.現在では,⾃動⾞を⼊⼝の⽬の前に駐⾞して送迎する姿は⾒なくなったが,近くの 駐⾞場に停めて,そこから歩いて送迎している保護者がおり,それは保育園側も把握して いる.また,園内に駐輪場がなく,⾨の前に停めることにしているため(図- 19),⾃転⾞ を道路の外に停めてしまう⼈もおり,近隣への迷惑となっていることが問題として存在し ている.開園当初は近隣住⺠から不安の声もあったが,現在は少なくなっているとのこと であった. 保育園側から挙げられた⾃転⾞交通に関する⾒解は以下のとおりである:  ⼦供が⾃分で⾃転⾞の座席によじ登ってしまい,転倒して危ないので,やらせないよ うに注意している.そのため,開園後,時間が経ってからではなく,開園時に「ルール を徹底する」のが⼤事であると考える.  保育園側の認識としては,朝の⾃転⾞は多くは感じないが,⼣⽅は⾃転⾞がかなり多 いと感じる.つまり,ピークは朝ではなくて⼣⽅にある.  交差点で⽌まらないのが危ない.住⺠からも「対向⽅向から接近してくる⼦供載せ⾃ 転⾞がこわい」との意⾒が出ている. このことから,⼀般的な⾃転⾞交通と同様,交差点での不停⽌が多発していることが確 認されたほか,特徴として停⾞時でも不安定で倒れやすいこと,また,ピーク特性が異な ることが明らかとなった. 4.3. ⼣⽅の保育園送迎時の交通量調査 そこで,ナオミ保育園にて⼣⽅の保育園送迎時の交通量調査を⾏なった.⼿法としては, 保育園の出⼊りの時間,⽅向,交通⼿段を記録し,同時に騒⾳の発⽣状況も記録した.な お,調査は 2016 年 1 ⽉の平⽇,17:00〜18:30 に実施したため,他の季節と⽐較して園庭 で遊ぶ時間が少ないとのことであった. まず,観測時間帯には⼦供を預ける保護者が 54 名観測され,その交通⼿段の内訳は図- 21 のとおりである.観測⽇に⾬あるいは雪の予報があったため,⾃転⾞を利⽤する保護者 が少なかったが,ナオミ保育園のスタッフによると,晴天あるいは曇天時の⾃転⾞分担率 は約 70%とのことであった.

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- 21 - 図- 20 ナオミ保育園での滞留状況(1 分ごとの調査結果) 図- 21 交通⼿段の内訳(n=54) 次に,保護者の滞留時間についてまとめたものが図- 22 および図- 23 である.保護者が 54 名観測され,そのうち最⼤ 18 名が同時に滞在していた.「保護者により送迎の時間はまち まちなので,⾃転⾞が集中することはなく,多くて 5 台程度」との事業者の説明会での発 ⾔があったが,状況によっては交通が集中する可能性もあることが⽰唆される結果となっ た.また,平均滞在時間は 13.1 分で,⻑い⼈は 25 分程度滞在するため,駐輪場の容量と してもある程度余裕を持って設計しておかないと,路上に⻑時間駐輪がなされてしまうお それがあることがわかった. 図- 24は,保育園への出⼊り別の交通量を⽰したものである.それぞれ 1 分に 1 台から 2 台 程度しか観測されておらず,滞在時間は⻑いが,断⾯交通量としては少ないことが確認された. 17 18 56 78 9 1011 1213 14 1516 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 0 1 2 34 56 78 9 1011 1213 14 1516 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 1 L うばぐるま L 2 R クルマ L 3 歩き L 4 L 5 R L 6 L 7 L L 8 L L 10 L L 12 L L 14 わからない L 15 わからない L 17 L L 18 R R 19 R R 20 L L 21 R R 23 L L 24 L L 26 L L 27 Lちゃり L 30 L L 32 L R 33 L L 35 L L 37 L L 38 L L 41 L L 42 R R 45 L L 46 L R 47 L L 48 L L 49 R R 50 L R 54 L L 56 R L 57 L R 58 R L 59 L L 60 L L 62 R R 65 L L 68 L L 71 R 73 L R 75 R L 77 L L L L 78 R R 79 L R 81 L R 83 R R 84 R L

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- 22 - 図- 22 ナオミ保育園での保護者の滞在時間帯の分布 図- 23 ナオミ保育園での保護者の滞在時間の分布 なお,園庭で遊びやすい気候の季節には,数⼈の保育園児が遊んだ後に⼀緒に帰る事が増える ため,よりピークが出るとのことであった.この調査時には 2016 年 4 ⽉開業の前提で調 査が組まれていたため,他の季節での調査は計画されていなかったが,ピークが出る時期 の調査も検討する必要がある.なお,道路上で最も滞留が多かったのは,親⼦ 4 組が保育 園⼊⼝付近で会話している状態であった. また,調査時には⾃転⾞の観測数が少ない状況ではあったが,路側帯に 20 分近く駐輪さ れている⾃転⾞を最⼤ 3 台観測することができたほか,ヒアリング調査で得られた「⼦供 が⾃転⾞によじ登る」挙動を観測することもできた.

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- 23 - なお,参考までに,3 ⽉の平⽇朝にも調査を⾏なったが,交通量としてのピークはほぼな く,1 分間に 1-2 台が連続的に来るような状況であったが,それでも⼦供を預ける間の時 間帯の駐輪は 10 分程度観測され,時間帯によっては路側帯に 4 台の駐輪がある状況も観 測され,⼣⽅のみならず,朝のピークについても考慮する必要があることがわかった. また,朝⼣の両⽅の⾃転⾞交通に現れた特徴として,保育園のヒアリング調査で得られ た「⼀旦停⽌をしない」挙動のほか,交差点で⼤回りになり,逆⾛状態になることもしば しば観測されたこと,交差点に限らず速度を減速せずに⽅向転換することがわかった.⾃ 転⾞の重さが影響しているものと考えられるが,⼦供や⾼齢者の⾶び出しに対応すること は難しい⾛⾏挙動をとっていることが確認された. 図- 24 ナオミ保育園への出⼊り別時間別交通量

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図- 25 朝ピークの⾃転⾞駐輪状況

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5. 保育園建設に関する各ステークホルダーの対⽴構造と交通問題の抽出

5.1. 当初の開園予定期間までの議論による構造の抽出 表- 1 に,2015 年 10 ⽉〜2016 年 3 ⽉の議論内容を⽰す.事業者が参加しての打ち合わ せはほとんど⾏なわれず,住環境協議会と近隣の会,そして世⽥⾕区役所の担当者の間で 議論がなされていたことが⾒て取れる.この中で論点としてあがったのは,すでに述べた 定員の問題と交通対策であり,「交通量を下げて安全性を⾼めるために,定員数を減らすべ き」との論点に⽴つ主張が多かった.そのため,こちらから ①交通量の変化が及ぼす事故危険性に応じて保育園の定員数を決定すべきではないか,と の近隣住⺠の意⾒に対し,交通量の変化による事故危険性に対しては交通対策をもって 対応すると考えるべきであること ②当該地域の道路特性を鑑みて,保育園の⽬の前まで⾃転⾞で来ることを前提としない交 表- 1 2015 年 10 ⽉〜2016 年 3 ⽉の議論の経過

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- 26 - 通対策を提案すべきであること ③検討会における議論がかみ合っていない(「開業に合わせた建設計画を前提とした議論を 求める」側と,「開業そのものに対しての条件付け等の議論を求める」側に分かれており, お互いそれを崩さない)ことを指摘し,当事者の中にそれを解決できる存在がいない以 上,論点整理の調査が必要であること の 3 点を提⽰した. ここで,②の提案について詳述する. 対象保育園建設地周辺の道路環境についてはすでに述べたとおりで,  環⼋の歩道は狭く,⾞庫の切り下げが多く波打っている.速度を出した⼦供載せ⾃転 ⾞を⾛らせるには危険すぎる.(図- 15)  ルール通り環⼋の「⾞道⾛⾏」を薦めたいが,⼦供を載せた⾃転⾞が守ってくれるとは 思えない.  保育園前道路と環⼋の交差点は,⾃動⾞にとって,左側から出てくる⾃転⾞をただで さえ⾒落としやすい状況であるのに,壁があるため⾮常に⾒づらい.環⼋の歩道を奥 沢⽅向から⾛ってくる⾃転⾞を発⾒するのは⾄難の技になる.(図- 27)  保育園前の道路を⾃転⾞が通⾏する場合,⾃転⾞にとっても歩道の状況が把握できな いまま環⼋に出ることになるので,⾃転⾞同⼠の衝突や歩⾏者との衝突が起きるだろ う.さらに上り勾配があり,徐⾏や⼀旦停⽌も難しいのではないか.  周辺の交差点は典型的な出会い頭発⽣箇所である.スピードを落としたり⼀旦停⽌を したりしないと回避は難しいが,それを不安定な⼦供載せ⾃転⾞でやってもらえるだ ろうか. 図- 27 保育園前の道路から環⼋⽅向を望む

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- 27 -  ⼋幡⼩学校の通学路に重なる交差点もあり,歩⾏者の安全には特に配慮すべきである.  ⾃転⾞の乗り降りを園内でやる⽅針を事業者が⽰しているが,基本的には園から出る ときに⼀旦停⽌をする必要があるため,結局は道路上で不安定な状況が発⽣する.ま た,加速を園内でやらせるなら,出てくるタイミングを道路通⾏者にわかってもらえ るような⾒通しの良さが必要と思われるが,それは難しい. といった根拠から,2 章で⽰したような「⾃転⾞と⾃動⾞の抑制」として,以下の 4 案を 提⽰した: ①ゾーン 30 の導⼊による⾃動⾞速度規制+保育園利⽤者以外も対象とした⾃転⾞通⾏禁 ⽌ゾーンの導⼊ ②ゾーン 30 の導⼊による⾃動⾞速度規制+園バス導⼊,あるいは保育園ルールによる⼦ 供載せ⾃転⾞のみの通⾏規制. ③ゾーン 30 の導⼊による⾃動⾞速度規制+環⼋での⾞道⾛⾏の厳守+細街路におけるル ートの選定(かなり難しい) ④ゾーン 30 の導⼊による⾃動⾞速度規制+通⾏⽅向による時間帯別ルート選定 つまり,⾃動⾞交通量との関係で通⾏⽅向を限定する これらの案は, 近隣への抑制策:ゾーン 30 保育園利⽤者+近隣への抑制策:⾃転⾞交通の抑制 の両⽴と位置づけられるが,⾃転⾞が新規参⼊してくるという前提に⽴ちつつも,話し合 いにおいては,⾃転⾞を利⽤する近隣住⺠からも②よりも①に対しての賛同が得られた. つまり,近隣からは,⾃らの⾃転⾞利⽤を抑制してでも,⼦供載せ⾃転⾞の抑制を実現さ せたいとの意向が表明された.また,保育園事業者も,「安全のためなら⾃転⾞交通の抑制 も考えたい」との意向を⽰し,園外駐輪場選定作業を請け負うことを約束した. 5.2. ⾃転⾞禁⽌ゾーン導⼊可能性の検討段階での構造の抽出 検討会において「⾃転⾞禁⽌ゾーンの導⼊」とともに,「親⼦が⼿をつないで通う保育園」 のコンセプトを提案し,⽟川⽥園調布地域および奥沢地域に声掛けをして実施された説明 会およびワークショップを通して,駐輪場候補地の選定とともに,駐輪場までの通⾏推奨 ルートおよび詳細なルール設計を提案する段階に移⾏した. 園外駐輪場の制約条件として,「おとなが⾃転⾞を降りてから歩いてもいいと考える距 離」,シェアサイクル等の⽂献から 300m を最⼤とし,⼦供の⼿を引いて歩くことからこれ よりも短い歩⾏距離で住むことを条件として設定した.この状況で,事業者から環⼋沿い のガソリンスタンド跡地の地下駐⾞場を⼀部借り受けるとの提案が出された.環⼋沿いで

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- 28 - あること,地下であることから,そのデザインや収容台数によっては不適格になる可能性 が⾼いと考えられたが,ひとまずガソリンスタンド跡地へ向かうルートを設計することと した.(実際,地下駐⾞場へのスロープの勾配や,視認性の悪さ等から,デザイン上⾃転⾞ 駐⾞場には不適格だった上,地権者に断られていたことが発覚し,2017 年 3 ⽉にガソリン スタンド跡を園外駐輪場にする案は消滅した.) 推奨ルート選定にあたっては,以下のルールを提案した.これらについて,⽟川⽥園調布 地域および奥沢地域に声掛けをして実施された説明会において,特に異論は出なかった.  理想はルールを遵守し歩⾏者と分離された空間を通⾏することである.つまり, 「環⼋の⾞道を⾛⾏する」あるいは,「歩道が分離されている道路の⾞道を⾛⾏する」 ことを理想とする.(運転能⼒があればこれが⼀番安全である.) 図- 28 保育園建設地から半径 300m の範囲 図- 29 事業者が提案した園外駐輪場

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図- 30 事業者が提案した園外駐輪場

図- 31 事業者が提案した園外駐輪場

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- 30 - ただし,⼦供載せ⾃転⾞で交通量の多い⾞道を通⾏するのはこわいという意⾒にも⼀定の理解 ができるため,以下を更なるルールとして設ける.  歩道と分離されていない⾞道で,左折で⽬的地に向かう  勾配はあっても,⾞道が⼀⽅通⾏であるか,ガードレールで歩⾏者と簡易な分離がさ れている道路を通⾏する  踏切の安全性は⾼くはないが,注意喚起をすることで通⾏も可能と考える  ⾃転⾞が無理な追い越しができない,道路幅員が⾮常に狭い箇所を活⽤し,互いに譲 りながら通⾏することで安全性を保つとする  ⾃転⾞側に⼀旦⽌まれ標⽰がある箇所も場合によってはルートに⼊れるが,注意喚起 は⾏なう  ⾒通しは悪い道路では,⾃転⾞を⼀⽅通⾏にすることで多少安全性が増すと考える  ⾃動⾞ドライバーにとって,左から⾃転⾞が来る形になるようルート設定をして,⾒ 落としを極⼒防ぐ  ⾃転⾞が右折する交差点は極⼒少なくするが,必要な場合はルール遵守を啓発する 上記のルールでルートを選定すると,⾃動⾞と⾃転⾞の通⾏⽅向の関係性を考慮する必要が あることから,保育園側に向かうルートと,鉄道駅⽅⾯に向かうルートの 2 パターンの推奨ル ートが,図- 33,図- 34 のように選定され,これを案として新たに提⽰した.この案を提⽰し た結果,以下のような意⾒の対⽴が抽出された. 近隣住⺠:⾃分たちの⾃転⾞利⽤が抑制されても良いのでこの推奨ルートを実現させ たいが,できれば園外駐輪場をより保育園から遠い場所に設置してほしい (⾃転⾞が近隣の街区に⼊るのを抑制したい) 図- 33 保育園側に向かう⽅向の推奨ルート

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- 31 - 図- 34 鉄道側に向かう⽅向の推奨ルート 近隣のアパート経営者:住⺠の⾃転⾞利⽤を抑制しろとは⾔えないため,保育園利⽤ 者のみの制約にしてほしい 事業者: 園外駐輪場を探すのは限界があるため,ガソリンスタンド跡地の地下駐⾞ 場に全ての⾃転⾞を収めたい 具体的なルート設計のタイミングになって,近隣のアパート経営者から「条件を呑めない」 との意⾒が初めて出された. 5.3. ⾃転⾞禁⽌ゾーン導⼊可能性以外の交通ルールの検討を含めたワークショップ実施 段階での構造の抽出 上記のような推奨ルート案の提⽰後,より広範囲の交通安全対策の中に,保育園開園に よる⾃転⾞交通量の増加への対策を位置付けるためのワークショップ(⽟川⽥園調布およ び奥沢地域が対象)を開催した. まず,説明会段階での参加者が毎回 40 名程度であったのに対し,保育園開園を前提とし て交通安全対策を考える本ワークショップ開催段階では参加者が 25 名ほどに減った.こ のことから,保育園の開業可否に意⾒を持つ住⺠が多かったことが窺える. 2016 年 11 ⽉に開催した第 1 回ワークショップにおいては,「⾃転⾞禁⽌ゾーン導⼊可 能性以外の,地域全体の交通安全対策の検討」と題し,地域の危険箇所を抽出することに 主眼を置いた.その結果,ワークショップ参加者からの交通安全対策に対する意⾒は以下 のとおりであった: ・⾃転⾞禁⽌ゾーンが確定できれば安⼼だと思うが,そこまで話が進まなかったのは残念. ・危険箇所が少なくなることを願う

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- 32 - ・街の交通安全を考えるのはよいことだと思うし,保育園のことがよいきっかけになったと思 うが,事業者が⼀⽅的に対策を決めてしまっていて,それがすでに確定してしまっていては 意味がないのではないか.通園路,園ルールの作りかたなどでまだフレキシブルに対応可で あると信じたい. ・⾃転⾞⾛⾏禁⽌ゾーンを作るという話し合いが今⽇はできなかった.また,保育園近くの 道のことは近隣の⽅が常識の範囲内で対応されたら良いと思う.いずれにしても道は”私” のものではなく公のものですがから皆がすごしやすくすることが⼤切だと思う. ・環⼋の信号設置はぜひ実現したい.これを機に皆で協⼒してよりよい安⼼・安全な施策の 具体化をしたい. 基本的には「保育園開業に向けた⾃転⾞交通対策」に対する意⾒が多く出され,⾃転⾞禁⽌ゾ ーンを設定したいとの意向が多く⾒られたが,保育園全⾯道路と交差する環⼋の交通対策とし て,「歩道橋を撤去して信号を設置することで,⾃動⾞速度を抑制したり,⾃転⾞の通⾏を促進 しやすくなったりするのではないか」との意⾒も出された. なお,ワークショップ参加者が保育園に対してどのような感情を持って参加しているの かを把握するため,保育園に期待することと不安なことを尋ねた.その結果,以下のとお りとなり,交通事故を⼼配する声とともに騒⾳問題への意識が依然として⾼いことが⾒て 取れる.また,事業者や,この事業の進め⽅⾃体に対して不安を持っている⼈もいること がわかり,今後,事業者の⽴ち位置や交通問題に対するスタンスが地域との共存に影響す ることが⽰唆される.⼀⽅,期待する⾯としては,地域との共存や公共施設的な役割を期 待する声が多く,単に待機児童の受け⼊れだけではない機能へのニーズが⾼いことが改め て⽰された.よって本研究では,交通安全という共通の話題を通じ,地域と保育園がいか に交流を持てるかを志向する. 【不安なこと】  3 名:定員が多いため,⾃転⾞交通量が急激に増えることが予想され,事故が起きるのが 不安.  3 名:保育園の屋上利⽤の合意形成が取れていないまま,屋上プールが設計されている.  2 名:狭幅員道路や環⼋の歩道での⾃転⾞事故が起きるのではないか.  2 名:⼦供の声による住宅街の静穏への阻害.騒⾳問題.  2 名:保育園の開園⾃体に合意形成が取れていない.  1 名:⼦供2⼈載せ⾃転⾞が⾼速で通⾏するのが危険.  1 名:事業者が信⽤できない.  1 名:モンスターペアレンツと問題が起きないかが⼼配.  1 名:近所に公園がないので,園児をどのように遊ばせるのか想像がつかない.  1 名:情報が先⾛り,まちのイメージが損なわれるのではないか.  1名:事業者との話し合いが⼀向に進まないこと. 【期待すること】

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- 33 -  7名:保育園と地域との共存.地域との交流.⾒守り. 特に災害時に公共施設として地域に寄与することを求める声もあった.  4 名:待機児童の削減.  2 名:地域にとって良い通園ルートや通園ルールができることによる安全性の向上.  2 名:⼦供連れ家族が増えることによる地域活性化,賑わい.  1 名:園⻑先⽣がすばらしいひとであってほしい. 5.4. ⾃転⾞の地域ルール導⼊可能性と道路全体のイメージ像形成段階での構造の抽出 第 1 回ワークショップが保育園の⾃転⾞ルールに特化していたため,2016 年 12 ⽉に開 催した第 2 回ワークショップは意識をより広く持たせるため,テーマを「⾃転⾞の地域ル ール」と「道路に対するイメージ付け」とした.第 2 回ワークショップでは,実際に参加 者と保育園建設地周辺道路を歩き,お互いに問題点を確認し合った後,改めて地図に問題 点を落とし込み,⾃らも当事者となる地域ルールにつなげるプログラムとした. 参加者は前回より減り,15 名程度であったが,その結果,参加者から以下の意⾒が出た: 【住⺠も含めた地域全体としての視点】  最終的に 100%安全という策はどこでもあり得ないので,互いに可能な限りの譲り合い, 助け合いの精神でいきたい.保育園利⽤希望者のことを想像しながら考えることも忘れて はならないと思う.  押し歩きを地域ルールとするのなら地域の⼈にも適⽤されることをもっと広報して⼤勢の ⽅と話さなくてはならない.広報するためにもアンケート調査は必要.どの範囲で⾏うの か,考えなくては.  専⾨家のアドバイス提案もいただきながらベストとはいかないまでも,極⼒リスク低減に 向けて検討が進めばと願う.  ⾃転⾞と⾞.⼈と⾞.それぞれの利害があるが,歩み寄り解決できたらと思う.  外部からの⾃動⾞が多いかどうかで,対策も変わるのではないかと思った.狭隘道路であ れば,歩⾏者のリスクも考える必要がある.踏切や狭隘道度の拡幅等,ハードの街づくり も重要と思った.ドライバーの安全教室もあると安⼼感が⽣まれるかもしれない.  危険な箇所が多いのと,⼀時停⽌等交通規制を守らない現実に驚いている.  アンケート調査をして情報提供を含めて広く⼈々の共有する認識を深めることが⼤切. 【保育園利⽤者に対してのみの視点】  現状でも交通環境の厳しいポイントが数か所あり,そこに加えて⼤きなストレスが加わる ことにより重⼤事故の発⽣の可能性が⾼まる認識を得た.ベストの案は⼈数の削減,セカ ンドベストは歩⾏通園とする.この地に保育園を設けるための必要充分案件は駐輪場の確 保が最低でも必要と感じた.現在でも時間帯によっては⼗分に危険度が⾼い.  ⼤変な場所に保育園を作ると改めて認識した.信号設置は急務と考える.全て安全第⼀.

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- 34 -  駐輪場の確保という問題は保育園単体での確保は⾮常に難しいのが現状であるが,地域の ⽅々も利⽤できるような仕組みをつくることで保育園利⽤⾞のみならず,周辺住⺠の利便 性につながるのではないか  東からの通園者(奥沢,⾃由が丘⽅⾯から)は環⼋と 2 本の細い道から,⻄からの通園者 (九品仏⽅⾯から)は環⼋からに集中する(通園者がどこの⼈が多いかに関わらず).この 2 ⽅向の⼈の流れを⼆分して,リスク分散させるべく東⻄に駐輪場 2 箇所は必要.ガソリ ンスタンド跡地はスロープが危なく,地理的にも意味がない.外の駐輪場を強く要望する. それに加えて環⼋の安全性向上(信号,歩道 or ⾞道を⾃転⾞で通りやすくする)は別途必 要と思う.  交通問題はどの場所でも潜在しており,環境の変化により顕著になると感じた.しかし, その変化を機会ととらえ,まちづくりに積極的になれればより良いまちができる.  まちの危険箇所を住んでいる⼈も通ってくる⼈も認識を共有した上で安全に気持ちよく⽣ 活できるようになればいい. 【保育園を建設することへの意⾒】  危険箇所を確認して改めて,⼤変危険でよくこんな危ない場所に保育園を作ろうと考え, また,認めたと思う.幼いお⼦さんを連れたお⺟様⽅には気の毒だが安全な場所に駐輪し 歩かねば事故は防げないと思う.このまま駐輪場⼀箇所で開園した場合,事故の可能性も ⾼く,⾏政の責任である.  せまい道路に囲まれた静かな住宅地に 150 名近い園児が毎⽇通うことの諸問題が段々理解 出来るようになって,思っていたよりも⼤事に思えるようになった. 前回のワークショップ開催時と⽐較して,「地域ルール」と位置付けたことと,実際に交通状況 を⾒てまわることによる体験を通し,当事者としての意⾒を出す参加者が半数以上であったが, 中には保育園利⽤者への要望に偏った意⾒や,そもそも保育園を建てるのが問題とする意⾒も 散⾒されるように,まだ参加者(昔からの道路利⽤者)の中で論点が統⼀していないことがわ かった. そのような観点があることも想定し,「地域ルールによってどのような道路をつくりたいか」 の理想イメージも問うたところ,以下のような意⾒が出された: 【地域ルールとして回答されたもの】  皆でルールを守って,お互いに安全への意識をもって通⾏する道路.  踏切が整備され,安全で⾒通しの良い空間.狭隘道路の後退.  既住⺠の道交環境が増幅しない,安全性,必要性の⾼い交通環境.  環⼋の歩道橋を廃⽌して代わりに横断歩道(信号付き)を設置してほしい.  出会い頭における衝突の解消,減少.交差点での⾞両(⾃転⾞含む)の⼀時停⽌を⼼がけ るような取り組み.  ・歩⾏者が安⼼して歩ける空間. 【特定の交通モードに対して回答されたもの】  安全第⼀,環境維持改善,事故をなくす,防ぐ事前対策.誰もが守れるルール,⾃転⾞通

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- 35 - ⾏者の責任認識をいかに持たせるか.  ⾃転⾞に乗る⼈,乗っている⼈.⾃転⾞は道交法によってルールが決められている.危険 な乗りものだという認識を喚起するようなしかけが欲しい.環⼋に信号が欲しい.ミラー も必要.  ⼀定時間の⾃転⾞,⾃動⾞通⾏禁⽌区域を定める.区域を定めた⾃動⾞⾛⾏スピード規制. 交差点付近の⾒通しを妨げる植栽の禁⽌等をイメージしている.その他に⾃転⾞⾛⾏レー ンの設定なども考えられる.  ⾃転⾞通⾏禁⽌.細街路通⾏禁⽌.住⺠のための通⾏許可証の配布.  ⾃転⾞,⾞での乗り⼊れ禁⽌ルールがどこまで徹底されるのか?⾃転⾞の左側通⾏の原則 を守らせる必要あり. 【保育園利⽤者に特化して回答されたもの】  保育園の出⼊り⼝から道へ出る所は,⾃転⾞をおりて歩いて⼊るルール(年少さん年⻑さ んの配慮も必要かなと思います).皆であいさつして登園,ご近所の⽅も笑顔で“おはよう” と⾔える,⾔いあえる道にしたい.  東⻄⼆箇所に駐輪場があり,必ずしも環⼋を通らずに通園できる状態(事業者も当初は合 意していた).⾃動⾞利⽤者が安⼼して運転できる.⾃転⾞利⽤者が安⼼して運転できる. 歩⾏者(⼦ども,お年寄り)が安⼼して歩ける道路.特に,電動⾃転⾞の特性(徐⾏でふ らつく,⼩回りできない)を考慮した対策.ガソリンスタンドの跡地はスロープが急,出 て直ぐ環⼋歩道でここのみに駐輪場では難しいのでは. 第 2 回ワークショップは,近隣住⺠が⼀旦停⽌をせずに通⾏する等の⽇常を⾒て回り,話し合 うことで,近隣住⺠や昔からの道路利⽤者にもルール遵守や交通安全への意識向上を狙ってお り,道路イメージに対しても当事者としての意識の変容に関する内容が期待された.「道路に対 するイメージ」については,特に指定をせずに⾃由に回答させたため,地域としての道路のイ メージだけでなく,⾃転⾞交通に対しての理想のイメージを回答することも想定されたが,中 には保育園利⽤者のルールについて記載する回答者もいた.さらに,道路イメージを回答して いるものの中にも,既住⺠の環境を阻害しないといった趣旨の回答があったことから,ワーク ショップを通してもやはり新たな道路利⽤者への対⽴意識をもつ住⺠がいることがわかり,譲 り合いや共存という単語を出す住⺠と,意識の差に⼤きな隔たりがあることが窺える結果とな った. 5.5. 地域ルール⼀般化段階での構造の抽出 前回までのワークショップによって,住⺠の中に当事者意識が芽⽣え,地域としての交 通安全対策を考える⼟台が形成されたと考え,2017 年 2 ⽉開催の第 3 回ワークショップで はあえて具体的なたたき台を⽰さず,⾃由に地域ルールを考えることを提案した.その結 果,意⾒として出されたのは以下のとおりである:

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- 36 -  4 ⽉開園が近づいている中,事業者が園外駐輪場も決まらず,近隣との覚書も結ばな い,その中でワークショップをやってもなかなか具体的な話ができないことに危機感 を持つ.最低限のルールを作り,カラーリングなどの物理的対応を間に合わせたい.  開園前までの駐輪場確保を⾏政の責任として施⾏されたい.信号,カーブミラー等の 話を混在し,話をすり替えてはいけない.⾏政として進めている内容の進捗状況を聞 きたいが,それがない.  交通安全対策に関する覚書についてはすでに近隣住⺠と合意しているので⼀旦締結し た上で,地域ルール等ワークショップで合意した事項を後⽇変更する形を提案したい. 駐輪場確保についてはリストアップの上,町会,住環境協議会及び区で進捗管理をし て頂きたい.特に,可能性のある物件については貸主に確認してほしいい.カーブミラ ー,標識,カラーリングについては 4 ⽉開園に間に合わせていただくよう調整してほ しい.  環⼋沿いの出⼊り⼝に近い歩道は⾃転⾞に乗らないルール徹底をお願いしたい.開園 前に駐輪場を必ず⽤意し,保育者にルールの徹底を開園前に⾏なってほしい.覚書は 近隣住⺠の理解を得て開園前に締結してほしい.  4〜5 丁⽬に渡る踏切を広くしていただきたい.電柱・ポール(進⼊禁⽌)があまりに 4 丁⽬に多すぎる.  ⼩学⽣の通学の⼦どもにも気をつけていただきたい.161 名募集を認可した責任者各 課の当時の事情説明をよく聞き,区がもっと積極的に動いてもらいたい.  都も交通課の責任者も必ず出席してほしい. 事業者が,当初約束していた通園ルールにかかわる覚書の締結を拒否した時期と重なって しまい,議題を⾃由にしたことによって通園ルールの曖昧さを指摘する声と⾏政や事業者 に対する要望が占める形となり,結果として議論は後退する状況となった. このことから,やはりある程度明確な⽬標設定をして議論をさせる必要性が⽰されると ともに,⾏政および事業者の⽴ち位置を明確にしておく必要性が⽰唆される結果となった. 5.6. 地域住⺠への制約を具体的に提⽰する段階での構造の抽出 前回のワークショップまでに,どうしても当事者意識を持って譲り合いを提案する⽅向 性が⽣まれなかったため,2017 年 3 ⽉開催の第 4 回ワークショップにおいて,具体的に近 隣住⺠が保育園利⽤者に対して道路を譲る⽅策を提案し,その反応を収集することとした. 具体的には,図- 35〜図- 37に⽰す,「保育園利⽤者を想定した歩⾏者専⽤時間帯の導⼊」, 「⾃転⾞推奨ルートに対する路⾯表⽰による通⾏位置明⽰」,「⾃動⾞の⼀⽅通⾏化」の 3 案である. その結果,以下のような意⾒が得られた:

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- 37 -

図- 35 近隣住⺠への制約を具体的に設定する地域ルールたたき台(1)

図- 36 近隣住⺠への制約を具体的に設定する地域ルールたたき台(2)

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- 38 - 【歩⾏者専⽤時間帯について】  3 名:導⼊後に,保育園の歩⾏者が多い時間帯を⾒極めて運⽤を適宜変更していけば, 良い⽅策になるのではないか.  3 名:時間は 30 分程度に抑えてほしい.住⺠の負担にならないようにしてほしい.  2 名:近隣の⼈に協⼒してもらうのは難しいのではないか.  2 名:近隣の⼈さえ了解してくれれば,良い提案ではないか.  2 名:⽣活するうえで不便.近隣住⺠の⽣活圏の侵害.  1 名:スクールゾーンのような位置付けで運⽤すれば,良い提案ではないか.  1 名:時間を限定せず,住⺠の⾞両を優先させる措置をとればいいのでは. 【⾃転⾞推奨ルートの路⾯表⽰】  3 名:妥当.わかりやすくつくるべき.  2 名:利⽤する⼈を含めて話し合いを持つべき.  2 名:ルールを守らせるべきだが,難しいのではないか.  1 名:⾃動⾞が通るのがやっとの狭い道路ではつくらないでほしい.  1 名:まずは実施してみて,様⼦を⾒るのでも良いのでは.  1 名:保育園や地域に関係ない⼈に守らせる⽅法があるのか.難しいのではないか.  1 名:最適なルートがあまりないので,押し歩きゾーンを作るべき.  1 名:駐輪場の確保が先決. 【⾃動⾞⼀⽅通⾏化】  11 名;近隣の賛同は得られないと思う.  1 名:現在安全なルートで運転しているので,⾃動⾞のルールは変更しなくて良い.  1 名:難しいと思うが,歩⾏者の安全には有効だと思う.  1 名:もう少しルートを⼯夫すれば理解を得やすくなるのではないか. 上記のように,⾃転⾞に対する意⾒は⽐較的「当事者ではない」⽴場から安全に対して述 べていることが⾒て取れるが,⾃動⾞が関係する歩⾏者専⽤時間帯と⾃動⾞⼀⽅通⾏化の 2 案については,歩⾏者の安全を第⼀に⽬指してスタートしているはずの交通安全対策ワ ークショップにも拘らず「⽣活圏の侵害なので反対」「⾃分は安全運転をしているのでルー ルは変えないで」等,抵抗する意⾒が多く出ることがわかった. このことから,⽣活道路の安全対策のためにまず抑制されるべき⾃動⾞を利⽤する⽬線 に⽴つ参加者が多いこと,その抑制に対する抵抗が根強く,⾃転⾞を抑制しようとする論 拠と整合が取れていないことに回答者⾃⾝が気付いていないこと,その点を指摘すると「そ れなら安全対策は何もしなくて良い」といった極端な主張をするケースもあることなどが わかり,今後,交通安全対策を通してお互いを思いやり,譲り合うために⽴場の転換の場 を⽤意する必要があることが明らかとなった.

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- 39 -

6. 結論

本研究では,住宅地の⼟地利⽤が変化して保育園が建設され,⼤量の⼦供載せ⾃転⾞が 発⽣することにより,地域に住まう⾼齢者の⾃動⾞との共存が必要となる場⾯において, それらが限られた空間を安全・安⼼に共存できる道路空間の構築のために必要なハード施 策(道路標⽰や注意喚起装置)とそれを補うソフト施策(ローカルルール,両者が参画する安 全教育プログラム)やツールを提案することを⽬的とし,保育園を利⽤する⾃転⾞の挙動特 性の把握と,保育園と近隣にかかわる各ステークホルダーの態度の構造と共存に向けた⽷ ⼝の把握を試みた. その結果,以下のことが分かった.  保育園に送迎で訪れる保護者は,10 分〜20 分程度保育園に滞在するため,集中する交 通量は多いことがあるが,路上の断⾯交通量はさほど多くない状態が継続する傾向に ある.また,朝より⼣⽅にピークが来る可能性が⾼い.  ⼦供載せ⾃転⾞は⼩回りが利かないため,⼀旦停⽌をしないほか,逆⾛等,通⾏ルール の遵守もなされていない.  ⽇常的に利⽤する交通⼿段に対する抑制が具体的に提⽰されると,共存に対して抵抗 感を持つのに対し,あまり使わない交通⼿段に対してはより理性的に判断する傾向に ある.  ただし,⾃転⾞のルール等に関してはあまり認知度⾼くないため,安全対策によらず, ルール遵守の活動は⾏なうべきである.  特に事業⾃体がスムーズに進んでいない場合には,⼀般論に対しての話し合いはあま りうまくいかないため,具体的な交通対策に対して議論を進めるのが有効である.  不満が事業者と⾏政に向かう傾向にある.この 2 者の⽴ち位置を明確にし,リーダー シップを⽰させることで,他の当事者への安⼼感が⽣まれると予想される.

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