はじめに 比較過失(comparative negligence)とは、過失による不法行為事案におい て、各々の当事者の過失割合により損害賠償額を配分する不法行為法理で ある。これが適用される場面は、原告と被告の当事者双方に過失がある場 合である。過失の割合にかかわらず、原則的に当事者双方に損害賠償を認 めるものである。一方で、コモン・ロー上では当事者双方に注意義務を負 わせ、双方に過失がある場合に損害賠償を認めない寄与過失(contributory negligence)がある。寄与過失は、いずれの当事者にわずかでも過失があ れば賠償を否定し、過失の少ない当事者に過酷な結果をもたらす。このよ うな寄与過失に対して、比較過失は否定的である。 比較過失は、過失の多少にかかわらずいずれの当事者も損害賠償を負担 すべきであるとする考えに立脚している(1)。しかし、比較過失は広範な法 理であり、単純に過失割合に応じて当事者双方の賠償額を決定するものか ら、過失内容によっては過失割合を鑑みた結果賠償を否定するものまであ る。本稿では、この比較過失に焦点を当て、当該法理が出現した理由、さ らに法理の詳細を考察することを試みる。そして比較過失がいかなる点で アメリカ不法行為法の基本的な考え方を実現しているのかを併せて検討す る。
(1) See, e.g., Yount v. Deibert, 147 P.3d 1065 (Kan. 2006); Miller v. LAMMICO, 973 So.2d 693 (La. 2008).
アメリカにおける比較過失
一 比較過失の出現背景-寄与過失を巡る問題への対応- 寄与過失は、1809年にイングランドのButterfield v. Forrester(2)で示され た法理である。原告の注意義務と被告の注意義務を同様に重要視したこと がその根拠であった。当該法理はイギリスのみならずアメリカにおいても 継承され、とりわけアメリカにおいては19世紀のアンテベラムの時代に 鉄道の踏切事故が多発したため、まだ経営基盤が弱かった鉄道会社を被害 者による損害賠償請求から保護するための法理として機能した(3)。 一方、イギリスでは後年の1940年頃から制定法により寄与過失を廃止 する動きが現れるようになったが(4)、アメリカでは根強く寄与過失の存続 が主張された。反復的に主張される理由は以下の5点である。第1に、自 らの安全を保護できなかった者は、その注意不足を原因とする法的効果が 発生することを暗黙のうちに合意していること。第2に、当事者双方とも に過失があれば過失の効果を受容すべきであること。第3に、寄与過失は 陪審員に被害者へ同情に満ちた救済を認めていないこと。第4に、唯一の 損害原因は法的に見て原告の行為によるものであったこと。そして第5 に、寄与過失により救済が否定されることで自らの行為によって不利益を 得たことを認識し、さらに注意をするはずであるということであった(5)。 以上の寄与過失を支持する主張に対して、損害を過失のある当事者双方 に負担させる比較過失を支持する論者は、以下のように反論した。第1 に、全ての損害を過失割合の少ない一方当事者のみに負わせ、過失割合の 多い他方当事者が責任を免れることは不正義であること(6)。第2に、最後 の明白な損害回避機会(last clear chance)が存在するため、過失があるにも
(2) 103 Eng. Rep. 926, 927 (1809).
(3) 楪博行「アメリカにおける寄与過失を巡る問題」白鷗法学第26巻1号450-51頁 (2019) を参照。
(4) English Law Reform (Contributory Negligence) Act, 8 & 9 Geo 6, c 28 (1945). (5) See, e.g., Hall v. CNN America Inc., 1996 WL 653839, *3 (D.C. 1996). (6) William L. Prosser, Comparative Negligence, 51 MICH. L. REV. 465, 469 (1953).
かかわらず賠償を得ることができること(7)。第3に、寄与過失を疑問に感 ずる陪審が裁判官の説示を無視することになれば法制度の軽視につながる ため(8)、この状況を公にするとともにこれに対する裁判所の抑制を強化す べきであること(9)。第4に、被害者の過失を損害発生の原因とするには、 寄与過失である必要はないこと。被害者の過失行為が加害者の過失行為に 介在して損害を発生させる介入原因(intervening cause)と位置づけられる からである(10)。そして第5に、寄与過失がいわば罰であり過失ある原告に 救済を与える必要がないとするのは理由がないことである(11)。 以上の寄与過失法理そのものについての賛否両論からの主張に加えて、 寄与過失と比較過失が与える効果から分析する説も存在する。比較過失を 採用すれば損害賠償額が明確になり、その一方で和解を促進させるとする 主張がある(12)。寄与過失であれば被告の損害賠償を免責する判決を得やす くなるが、比較過失であればその逆である。その結果、被告に和解を促進 させる効果が発生するともいえるのである(13)。また比較過失を採用しても 訴訟提起数が増加しておらず、損害保険加入率も同じく増加していない という報告もある(14)。寄与過失と比較過失とを巡る議論から示されること は、寄与過失を支持する主張の中心には、過失ある当事者に自己責任があ り、そのためわずかな過失でも損害賠償が否定されるという論理である。 そして比較過失の主張における根拠は、寄与過失による過失割合の少ない
(7) 1 COMPARATIVE NEGLIGENCE MANUAL 3d ed. 1:27 (updated 2019).
(8) Frank E. Maloney, From Contributory to Comparative Negligence: A Need Law Reform, 11 U. FLA. L. REV. 135, 162 (1958).
(9) Legislation: Tort-Comparative Negligence Statute, 18 VAND. L. REV. 319, 328-29 (1964). (10) Prosser, supra note 6, at 468. なお、介入原因については、楪博行・アメリカ民事法
入門第2版・187頁 (勁草書房、2019)を参照。 (11) Id.
(12) John J. Haugh, Comparative Negligence: A Reform Long Overdue, 49 OR. L. REV. 38, 42 (1969).
(13) Legislation, supra note 9, at 330.
(14) William S. Pfankuch, Comparative Negligence v. Contributory Negligence, 1968 INs. L. J. 725, 731 (1968).
当事者へ賠償を否定することが過酷であるということに集約できるのであ る。
二 比較過失の発展過程
些細な過失の被害者に対して一切の救済を否定する寄与過失の過酷さ は、最後の明白な損害回避機会(last clear chance)の法理を生みだした(15)。 当該法理は、損害発生の直前に被告が損害を回避することができ、それを なさなければ被告の責任であると判定するものである(16)。これは、より非 難されるべき当事者に損害賠償責任をすべて移転させる効果をもつ。当該 法理は原告の利益に適うことを前提としており、わずかな過失でも原告の 損害賠償の受領を否定する寄与過失とは本来的に異なるのである(17)。しか し、被告の最後の明白な損害回避機会が原告の過失行為の直後に来るとは 限らない。当該機会が被告の過失行為の直後に到来することもある。した がって、当該法理は全てに適用可能かについては疑問が残るのである(18)。 当該法理の採用は寄与過失への嫌悪が背景にあり、寄与過失制度を存続さ せながら、過酷さを緩和することだけがその目的であったといえることに なる(19)。 ところで、当初から寄与過失を否定する法領域は存在する。それが海商 法(maritime law)である。17世紀のイギリスでは、船舶衝突事案では損害 賠償を折半する方法が採られていたが、当該領域で比較過失が不法行為責 任の基礎として現れてきた(20)。この段階では過失の割合に応じた損害賠償 責任を分配するものではなかった。しかし、時代が経過するにつれて、
(15) Davies v. Mann, 10 M. & W. 546 (1842). (16) Id. at 548.
(17) 最後の明白な損害回避機会については、前掲注(3)・楪博行・457頁、前掲注(10)・ 楪博行・195頁を参照。
(18) Ernest A. Turk, Comparative Negligence on the March, 28 CHI-KENT L. REV. 189, 205 (1950).
(19) Prosser, supra note 6, at 496. (20) Id. at 475-76.
徐々にこれが現れるようになった。そして、20世紀の後半になって後述 する純粋比較過失が海商法の領域で確立されたのである(21)。 ア メ リ カ に お い て も、 合 衆 国 最 高 裁 判 所 が1855年 のCatharine v. Dickinson(22)で、初めて当事者双方に過失がある場合には損害賠償責任を 平等に分配すべきとする判断を示している。本判決は、損害賠償を当事者 間で折半するイギリスの海商法で確立された法理が、最も妥当かつ衡平に 叶うと認めたのである(23)。また、1882年のThe North Star(24)で合衆国最高 裁判所は、海商法での船舶衝突の規準は、両船舶に過失があれば平等に損 害賠償責任を負わなければならないと述べて、損害賠償の平等分配が海商 法の領域における原則であると判断した(25)。本判決では他国の海商法にお いてこの平等分配が広く妥当する賠償方法であり、その中心には損害を分 配する発想があることを指摘し、アメリカ合衆国においても支配的な考え であることを示したのである(26)。
しかし、1975年に合衆国最高裁判所はUnited States v. Reliable Transfer Co., Inc.(27)において、船舶衝突における平等分配ルールを放棄して純粋比 較過失を採用した。本件の事実の概要は以下のとおりであった。ニュー・ ヨーク港外の砂洲に座礁したタンカーの所有者が、当該船舶の座礁の原因 は沿岸警備隊の管理下にある灯台が灯火されていなかったことであると 主張し、アメリカ合衆国に対して連邦海商上の訴えに関する法律(Suits in Admiralty Act)(28)ならびに連邦不法行為請求法(Federal Tort Claims Act)(29) を根拠に損害賠償請求をした。第1審は、座礁原因の25%は灯台が灯火 (21) Id. at 476. (22) 58 U.S. 170 (1855). (23) Id. at 178. (24) 106 U.S. 17 (1882). (25) Id. at 27-29. (26) Id. at 19. (27) 421 U.S. 397 (1975). (28) 46 U.S.C.A. 741 et seq. (29) 28 U.S.C.A. 2674.
されていなかった過失により、また残りの75%はタンカーの船長の過失 に拠るものであると判断した(30)。控訴審の第2巡回区連邦控訴裁判所は第 1審判断を認容した(31)。しかし、上告審の合衆国最高裁判所は原審判断を 破棄差戻しした(32)。合衆国最高裁判所は、海商法事案における平等に分配 された損害賠償方法が利点をもつというよりもむしろ惰性で行われてい るので(33)、妥当かつ衡平な損害賠償の配分の方法ではないと述べたのであ る(34)。そして、海商法事案においては当事者双方に過失があり、かつ過失 の程度を判定できない場合に限り、損害賠償を当事者双方に平等に負わせ るべきであると述べたのである(35)。責任程度に応じた損害賠償額の配分、 つまり比較過失が妥当であると結論づけたわけである。 三 比較過失制度の展開 アメリカにおける海商法事案での比較過失は、当事者間で平等に損害賠 償を分割することを目的として出現した。当事者双方に過失がある場合に、 一方のみに損害賠償責任を負わせる寄与過失の原則からの逸脱であった。ア メリカでは1975年に海商法事案における過失割合に応じた損害賠償額を決 定する純粋比較過失が採用されたが、当該事案で純粋比較過失が認められる に至るまで一世紀以上の時が経過していたのであった。その過程で、1908 年には連邦法である連邦雇用者責任法(Federal Employers Liability Act)(36)の (30) 421 U.S. at 399. (31) Id. at 400. (32) Id. at 411. (33) Id. at 410. (34) Id. at 411. (35) Id. (36) 連邦雇用者責任法は、雇用者に対する過失による不法行為の損害賠償の訴えにつ いて定めている(45 U.S.C.A. 51.)。1906年に鉄道事業における鉄道労働者の人身事 故に対応するために制定された。しかし、1908年に合衆国最高裁判所は、Howard v. Illinois Cent. R. Co. (207 U.S. 463, 504 (1908).) で、州内での合衆国憲法の通商条項に 違反する判断を下した。本法は、ワシントンD.C.およびその他の州と州との間で商 取引に従事するすべての公共交通機関の雇用者に、被雇用者が上司の過失を原因と
下で比較過失と類似する効果が見られた(37)。本法によれば、寄与過失は過 失ある当事者への損害賠償を完全に禁止するものではなく、それを減額す ることであった(38)。つまり、過失割合に応じた減額であり、比較過失と同 等な効果をもつものであったのである。1920年の公海上の死に関する法 律(Death on the High Seas Act)(39)においても比較過失が定められるに至っ た。そして1946年に制定された連邦不法行為請求法(Federal Tort Claims Act)(40)では、たとえ州実体法が不法行為訴訟で適用されたとしても、損 害が発生した州で比較過失が適用される旨が定められたのである。
ところで、いくつかの州では19世紀後半から当事者双方に過失がある 場合でも寄与過失を適用せず、損害賠償を完全に否定しない判例が見ら れてきた。1865年にイリノイ州最高裁判所はSt. Louis, A. & T.H.R. Co. v. Todd(41)で、当事者双方の過失の相対性を認め、原告が損害に対して過失 があるとしても、被告の方が過失の割合が多いのであれば、被告が責任を 負うことになると判断した。その理由として、原告のわずかな過失によ り、被告が損害回避のための適切な注意を払わなくてもよいわけではない して人身損害を負った場合に責任を負わせていたが、これを違反としたのである。 その後、合衆国議会により本法が改正され、コモン・ロー上の雇用者が同僚から受 けた被雇用者の人身損害の責任を負わないとする共同雇用の準則(Fellow-Servant Rule)の他、危険の引受け(assumption of risk)を廃止している。
(37) Kinsey B. Fearon, Comparative Negligence: Some New Problems for the Maine Courts, 18 ME. L. REV. 65, 68 (1966).
(38) 45 U.S.C.A. 53.
(39) 46 U.S.C.A. 30301-30308. 本法は1920年に成立し、沿岸から 3海里以上離れた 海上での不法行為による死亡(wrongful death)に対する救済を定めている(46 U.S.C.
30302.)。損害賠償の受領者は配偶者、死亡者の両親、子供、そして扶養親族 に限定されている(Id.)。さらに判例は州法に専占することを認めている。See, 2 COMPARATIVE NEGLIGENCE MANUAL 3d ed. 17:9 (updated 2019).
(40) 28 U.S.C.A. 2671-2680. 本法は過失責任の分配を定めておらず、損害が発生した 州法上のルールに従うことになっている(See, e.g., Harbeson v. Parke Davis, Inc., 746 F. 2d 517 (9th Cir. 1984).)。つまり、寄与過失州では寄与過失が、そして比較過失州 では当該州法に定められた比較過失が適用される。
と述べたのである(42)。1885年までにイリノイ州では被告の過失程度が斟酌 されるようになり、被告の過失が大きければ原告に過失があろうとも救済 がなされるようになってきた(43)。 寄与過失制度は、他国とりわけ大陸法系国で否定されていることを踏ま えて、アメリカの多くの州においても廃止されるようになった(44)。1910年 にはミシシッピ州で、不法行為事案に一般的に適用される比較過失が制 定法により定められた。その後、1931年にはウィスコンシン州、そして 1955年にはアーカンソー州と続いた。1960年代および70年代を通じて多 くの州で制定法による比較過失が確立したのである(45)。そして、1973年に フロリダ州最高裁判所が比較過失を認めたため(46)、立法ではなく司法によ る比較過失制度が導入される契機となった。さらに寄与過失制度の完全な 廃止には至らないものの、州鉄道法や州労働法などの個別立法により比 較過失が導入されてきた(47)。現在では寄与過失を存続させているのは、ワ シントンD.C.に加えて全50州のうちアラバマ州、メリーランド州、ノー ス・カロライナ州、そしてバージニア州だけである。アメリカの大多数の 州は比較過失を採用しているのが現状であり(48)、アメリカにおいては当事 者双方の過失を比較して、その割合に応じた損害賠償額を決定する手法が 主に行われていることになる。また原告に過失があれば受ける損害賠償が (42) Id. at 414-15.
(43) Chicago, B. & Q.R. Co. v. Payne, 59 Ill. 534, 541 (1871).
(44) A. Chalmers Mole & Lyman P. Wilson, Study of Comparative Negligence, 17 CORNELL L. Q. 333, 338 (1932).
(45) D. B. Dobbs, 1 THE LAWOF TORTS 2d ed. 220, at 771 (2011). (46) Hoffman v. Jones, 280 So.2d 431, 434 (1973).
(47) COMPARATIVE NEGLIGENCE MANUAL, supra note 7, at 2:6. 例えば比較過失を導入し ないワシントンD.C.は、当事者双方に過失が認められかつ係属数が多いと推定され る事案では、制定法が比較過失を定めている。例えば、2016年11月26日以降、通行 人や自転車に乗る者が自動車と交通事故になった場合に限定して比較過失を定めて いる。D.C. ST. 50-2204.52(a).
(48) Dobbs, supra note 45, 220, at 772. また、これらの寄与過失を採用する州の状況 については、前掲注(3)・楪博行・461頁を参照。
減額されるが、その過失が損害発生と事実的因果関係になければ減額対象 とはならないことに留意する必要がある(49)。過失が損害発生の危険性を促 す要素でない場合も同様である(50)。
四 比較過失の類型
比較過失は大別すると、純粋比較過失(pure comparative fault)と修正比 較過失(modified comparative fault)に分類される(51)。
第1の純粋比較過失とは、過失がある場合でも原告が損害賠償を受領す ることができる制度であり、過失の割合で賠償額が減額されるものであ る。例えば、原告が被った損害額が1万ドルで、加害者である被告の過失 が40%、原告の過失が60%の割合であった場合には、過失割合に対応す る6,000ドルの損害額が総賠償額から減額される。その結果、原告は4,000 ドルを被告から受領することができるわけである。
(49) RESTATEMENT (THIRD) OF TORTS (LIABILITYFOR PHYSICALAND EMOTIONAL HARM) 26 comment m (2010). (50) Id. at 29 comment m. (51) 2019年現在、寄与過失、純粋比較過失、そして修正比較過失を各々採用する州は 以下のとおりである。まず寄与過失を採用する州は、ワシントンD.C.に加えてアラ バマ州、メリーランド州、ノース・カロライナ州、バージニア州の4州である。次 に純粋比較過失を採用する州は、アラスカ州、アリゾナ州、カリフォルニア州、フ ロリダ州、ケンタッキー州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、ミズーリ州、ニュー・ メキシコ州、ニュー・ヨーク州、ロード・アイランド州、そしてワシントン州の12州 である。修正比較過失のうち原告に50%以上の過失がある場合に損害賠償を否定す ることを認める州が、アーカンソー州、コロラド州、ジョージア州、アイダホ州、 カンザス州、メイン州、ネブラスカ州、ノース・ダコタ州、テネシー州、そしてユ タ州の10州である。原告の過失が51%以上の場合に原告への損害賠償を否定する 修正比較過失の州が、最も多い23州である。コネチカット州、デラウエア州、ハワ イ州、イリノイ州、インディアナ州、アイオワ州、マサチューセッツ州、ミシガン 州、ミネソタ州、モンタナ州、ネバダ州、ニュー・ハンプシャー州、ニュー・ジャー ジー州、オハイオ州、オクラホマ州、オレゴン州、ペンシルバニア州、サウス・カ ロライナ州、テキサス州、バーモント州、ウェスト・バージニア州、ウィスコンシ ン州、そしてワイオミング州である。そして、サウス・ダコタ州は原告がわずかの過 失である場合を除いて損害賠償は否定される(S.D.C.L. 20-9-2.)。See, RESTATEMENT (THIRD) OF TORTS (APPORTIONMENTOF LIABILITY) 17 PURE JOINTAND SEVERAL LIABILITY JURISDICTIONS (updated 2019).
第2の修正比較過失とは、原告の過失の割合が一定限度を超過すると損 害賠償が完全に否定されるものである。これは州により二つに分類され る。①原告が被告の過失割合よりも多い場合(52)、そして②原告が少なくと も被告と同割合の過失である場合には(53)、それぞれ損害賠償を否定する州 である。前述の損害額が1万ドルである例を用いれば、原告が30%の過 失で被告が70%の過失の場合、原告は自らの過失分の3,000ドルが減額さ れて7,000ドルを受領できる。そして原告の過失が50%の場合には、①の ルールを採用する州では5,000ドルを受領できるが、②の州では受領でき ないことになる。純粋比較過失よりも原告が損害賠償を受領し難い修正比 較過失を採用する州では、原告の負担に対して軽減措置を行っている。裁 判所は過失割合の算定で原告の過失をすべて算入しないとともに(54)、共同 不法行為など複数の被告がかかわる事案では、すべての被告の過失を総計 して割合を決定する立場を採るのである。 修正比較過失の場合、なかでも原告が被告と同割合以上の過失であれば 損害賠償が否定されるものについては、原告の過失が49%である場合と 50%である場合との結果は大きく異なる。前者は損害賠償を得られるが 後者は全く得られないからである。この相違については州により異なる判 断が示されている(55)。過失割合が50%以上になると全く損害賠償を受領で きないと結論づける比較過失は、わずかな過失により損害賠償を否定され る寄与過失と比べ、原告が損害賠償を得やすいように見える(56)。ただし、 (52) See, e.g., N.H. Stats. Ann. 507:7-d.
(53) See, e.g., Ark. Code Ann. 16-64-122(b)(2).
(54) See, e.g., Stehlik v. Rhoads, 645 N.W.2d 889 (2002). 本判決では、原告が交通事故に 遭遇した際にヘルメットを装着していなかった過失は、加害者である被告の過失と 比べて多いか否かを判定する際に考慮されていない。Id. at 903.
(55) 陪審に原告の過失割合が50%以上になると、原告が損害賠償を得られなくなる旨 を陪審に説示するのを、裁判所の裁量で行うべきであるとするのがマサチューセッ ツ州(Baudanza v. Comcast of Mass.Ⅰ, Inc., 912 N.E.2d 458 (2009).)である。一方、説 示すべきであると判断しているのがノース・ダコタ州(Solin v. Wangler, 627 N.W.2d 159 (N.D. 2001).)である
わずかな過失であっても虚偽によって過失割合が変われば結果が大きく異 なることになるため、これに対応すべき措置が必要となることに留意すべ きである。プロッサー(William L. Prosser)教授は、修正比較過失には以上 の問題があるために、純粋比較過失の方が制度として妥当であると述べて いる(57)。しかし、多くの州は修正比較過失、とりわけ原告が51%以上の過 失の場合に損害賠償を否定する制度を導入しているのである(58)。 五 当事者双方の過失割合の決定 1.当事者双方の過失寄与程度の比較 当事者双方の過失割合を決定する方法として、当事者双方が因果関係に 寄与した過失を比較することが行われている。被告による正当化できない 危険行為と原告の当該行為の比較である(59)。そして事実認定者である陪審 が、被告の過失が原告の過失よりも大きいと評価した場合、被告の過失が 原告の過失を超越することになる。例えば、被告が時速100マイルで自動 車を運転し、原告が時速70マイルで運転していたところ二台の車が衝突 した。制限速度は55マイルであったため当事者双方とも速度超過の過失 があるが、被告の時速100マイルでの運転の方が原告より過失が大きいと 判定されると次の段階に入る(60)。 当事者双方のおおまかな過失割合が評価されると、正当化される抗弁お よび直接因果関係のない過失が考慮される。制限速度が時速55マイルの ところ、急病人を病院に運ぶために70マイルで走行した場合である。し
(57) William L. Prosser, Comparative Negligence, 41 CAL. L. REV. 1, 25 (1953). (58) 前掲注(51)を参照。
(59) 本稿での当事者双方の過失の検討過程については、Dobbs教授の説明に拠ってい る。Dobbs, supra note 45, 221, at 775-77.
(60) Dobbs教授は過失割合の判定を以下のように示している。陪審が、被告の時速100 マイルでの自動車運転について原告の時速70マイルと比べて三倍の危険を発生して いると評価すれば、被告の過失割合が25%から75%に上がると判定する。これはお おまかなものである。Id. しかし、寄与過失と比べるとより詳細になっていると判断 する判例が存在している。See, Kaaz v. State, 540 P.2d 1037, 1048 (Alaska 1975).
かし、陪審が時速70マイルでは高速過ぎ、65マイルを許容範囲であると 考えた場合には、原告によって衝突事故発生の危険性が増加したことにな り、この部分だけ原告の過失割合が増加することになる。 陪審が考慮すべき過失割合を構成する要因が説示されれば、過失割合は より容易に決定できる。そこで、1994年にテネシー州最高裁判所はEaton v. McLain(61)で、以下の比較過失の判定要因を示した。①被告の行為と原告 の損害との間に相対的な緊密さがある、②損害発生の危険に対峙する際に なされた当事者の行為に合理性がある、③被告がどの程度まで原告への損 害を回避する手段を行使したのか。④急な決定を要する緊急事態が存在し たのか。⑤他者の生命を保護するなど、当事者が達成しようとする行為の 重要性。⑥年齢、人格的成熟度、訓練度合、そして教育などである(62)。 これらの要因は過失の有無について判断する際に当然考慮するものであ り、損害発生の可能性、損害の程度および損害を回避するための労力と評 価される。これらは客観的評価が可能なものであるが、主観的評価となる 精神状態も関係する。例えば、人命救助を行うにあたりその動機となる精 神状態は行為の社会的有益さに影響を受けており、行った危険行為を正当 化できるか否かを判定する要素となる。精神状態を過失判定要因とするか について不法行為リステイトメント第三版は、行為者の行為により発生す る危険に対する実際の意識、意図、そして無関心を斟酌すべきであると述 べている(63)。過失割合の決定に際してこれらの主観的要素を明確に数値で 表すことはできない。しかし、少なくとも過失の有無を推定するための指 標となり得ると思われる(64)。これらの要素は行為者が未成年であれば過失 の判定基準となっているからである(65)。一方で、成年の場合には過失認定 (61) 891 S.W.2d 587 (Tenn. 1994). (62) Id. at 592.
(63) RESTATEMENT(THIRD)OF TORTS (APPORTIONMENT OF LIABILITY), supra note 51, at 8(d). (64) See, e.g., Eaton, 891 S.W.2d at 592.
(65) Hanson v. Binder, 50 N.W.2d 676, 678 (Wis. 1952). 未成年の年齢や経験などが考慮 されるとはいえ、これらの要素は過失責任そのものの成立に関わるもので、責任の 分配つまり損害賠償額の配分とは関係がないと述べている。Id.
には主観的要素は排除される。その理由は客観性を担保した過失の認定が 求められているためである(66)。また比較過失は、過失判定につきこの前提 に立って、当事者双方の正当化できない危険行為を発生させる過失を比較 することである。そのため、不法行為リステイトメント第三版が示す主観 的要素は過失判定を修正する重要な要素であるが、直ちに考慮できるもの とはいえないことになる。 2.比較される原因の異なる損害 損害の内容により、比較過失の対象となるか否かが区別される。そ の際に問題となるものが三点ある。まず第1が配偶者権の喪失(loss of consortium)である。一方配偶者の過失が他方配偶者の損害に寄与する場 合に、これを比較過失の対象とするかである。第2が医療過誤(medical malpractice)であり、医療行為以前の患者の過失による損害が比較され るかである。そして第3が重過失(gross negligence)および無謀な行為 (reckless conduct)、または未必の故意(Willful and wanton)による損害も比 較過失の対象とされるのかである。 第1については、配偶者権の法的位置づけによって異なる効果が発生す る。配偶者権の喪失とは、配偶者と同居して生活する権利を意味している。 多くの裁判所は配偶者権の喪失による損害については比較過失の対象とし ており、被害を受けた配偶者の受け取る賠償額を減額する立場を採ってい る(67)。これらの裁判所は配偶者権を、婚姻が継続的でなくても一定期間に金 銭的援助があり同居した生活が存在すれば認められるものと位置づける(68)。 そして、損害賠償請求の訴えにおいて、人身損害を負った配偶者にも過失が あり、その過失が損害に寄与していれば受ける賠償額を減額すべきであると
(66) Dobbs, supra note 45, 131, at 411-13.
(67) COMPARATIVE NEGLIGENCE MANUAL, supra note 7, at 1:9.
(68) See, e.g., Champagne v. Raybestos-Manhattan, Inc., 562 A.2d 1100, 1123 (Conn. 1989).
とらえるのである(69)。一方で、この立場を否定する裁判所も存在する(70)。配 偶者権の喪失による損害賠償請求は、人身損害を負った配偶者からのみでは なく、それから独立した配偶者としての地位から由来するため、過失により損 害を発生させた配偶者も過失を比較されることなく損害賠償請求ができるとと らえるのである(71)。 第2の医療過誤では(72)、多くの裁判所は患者が自らの過失により発生さ せた損害であっても、主たる損害発生要因でなければ医療過誤訴訟での損 害賠償請求に対する抗弁にならない(73)。患者の過失が医師の過失と比較さ れると医師の注意義務が免責されることになる。損害原因と結果を連結す る事実的因果関係が不明となるおそれがあるため、その回避を目的とし ているからである(74)。一部の裁判所は医療行為以前の患者の過失が自らの 損害の直接因果関係をもつ場合に限り、比較過失で考慮すべき要素とな ると述べている(75)。しかし、患者の過失は診療前だけに発生するのではな い(76)。診療中および診療後に発生するものもある。つまり、症状を正確に (69) Id. at 1118.
(70) Lantis v. Condon, 157 Cal. Rptr 22 (Cal. 1979). (71) Id. at 23.
(72) 医療過誤以外、つまり医師以外の専門家による過誤では、専門家が依頼人の過失 を比較過失の対象としてその証拠を提示することができ、損害賠償額の減額を求める ことができる。この専門家による過誤は、弁護過誤(legal malpractice)(See, e.g., First Bancorp Mortg. Corp. v. Giddens, 555 S.E.2d 53 (Ga. 2001).)、会計過誤(accountant malpractice)(See, e.g., Standard Chartered PLC v. Price Waterhouse, 945 P.2d 317 (Ariz. 1996).)などに見られる。いずれの過誤においても、依頼する以前の過失は比 較過失の対象とはならず(See, e.g., McLister v. Epstein & Lawrence, P.C., 934 P.2d 844 (Colo. 1996).)、依頼後の過失でなければならない(See, e.g., Whitney Group LL.C. v. Hunt-Scanlon Corp., 106 A.D.3d 671 (N.Y. 2013).)。
(73) See, e.g., Cavens v. Zaberdac, 849 N.E.2d 526, 531 (Ind. 2006). (74) See, e.g., DeMoss v. Hamilton, 644 N.W.2d 302, 306 (Iowa 1996). (75) Shinholster v. Annapolis Hosp., 685 N.W.2d 275, 296 (Mich. 2004).
(76) 医療機関で診察を受ける前に、自己治療を続けていた場合には、診療前の患者の 過失が比較過失で考慮される場合がある。Sales v. Bacigalupi, 117 P.2d 399, 402 (Ca. 1941).
医師へ伝えない場合(77)、治療中の医師の指示に従わない場合(78)、さらに患 者により治療が中断される場合が該当する(79)。これらいずれの場合にも患 者の過失と損害との間に因果関係が認められ、比較過失により患者と医師 それぞれの過失割合が導き出されるのである(80)。 第3の重過失(81)は、従前では故意による不法行為に分類されていた(82)。こ の影響を受けて、比較過失の対象から除外したのがウィスコンシン州であ る。重過失は過失を原因とする損害の平等な分配という目的をもつ比較過失 と合致しない法理とされ、比較過失の対象から除外されたわけである。重過 失が過失に分類されなければ、寄与過失の対象とはならない。つまり、寄与 過失を回避する目的があったといえよう(83)。一方、他の州では、重過失が過 失の範疇に入るものとして、比較過失の対象となる損害賠償責任を分配す る際に考慮対象となっている(84)。また、重過失の分類を廃止した州では、重 過失は通常の過失と同様に比較過失の対象とされている(85)。 ところで、重過失のみならず無謀な行為(reckless conduct)および未必
(77) See, e.g., Rochester v. Katalan, 320 A.2d 704, 707 (Del. 1974). (78) See, e.g., Musachia v. Rosman, 190 So.2d 47, 50 (Fla. 1966). (79) See, e.g., Wilson v. Lawless, 64 N.E.3d 838, 846 (Ind. 2016). (80) See, e.g., Rochester v. Katalan, 320 A.2d at 709.
(81) 最近の判例から重過失の定義を見ると、2018年のLake Ridge New Tech Schools v. Bank of New York Mellon, Trust Company, N.A.でインディアナ州北部地区連邦地方裁 判所は(353 F. Supp.3d 745, 757 (N.D. Ind. 2018).)、重過失を構成する要素を、①義務 の存在、②義務違反、②義務違反と損害との間に法的因果関係がるものと述べてい る。また、2019年のMedina v. Zuniga(2019 WL 1868012, *5 (Tex. 2019).)でテキサス州 最高裁判所は、重過失は客観的要素と主観的要素があり、①客観的に行為者の視点 から見て、他者に対する損害可能性が極めて高く、②行為者が現実に危険発生を認 識しているにも関わらず、意識的に他者への安全性に無関心であると述べている。 (82) Bielski v. Schulze, 114 N.W.2d 105, 112 (Wis. 1962).
(83) Id.
(84) See, e.g., Tampa Elec. Co. v. Stone & Webster Engineering Corp., 367 F. Supp. 27, 38 (M.D. Fla. 1973).
の故意による行為(wanton conduct)を(86)、比較過失の対象となる過失と位 置づけるのがカリフォルニア州である(87)。未必の故意による損害であって も損害賠償の分配の際に考慮するのである(88)。例えば未必の故意による損 害が80%であり、残りの20%が通常の過失による損害であれば、両者を 区別することなく損害の寄与度を構成するものとして、損害賠償額を決定 するわけである(89)。インディアナ州も、制定法によりカリフォルニア州と 同様に未必の故意を比較過失の中で過失割合の検討の際に用いている(90)。 ペンシルバニア州はカリフォルニア州とは異なり、無謀な行為のみなら ず(91)未必の故意による損害が比較過失の対象とはしていない(92)。ペンシル バニア州と同様なルールを採るのがマサチューセッツ州(93)、ネバダ州(94)、 オクラホマ州(95)、そしてオレゴン州(96)である。イリノイ州では無謀な行為 (86) 故意および未必の故意による行為(willful and wanton conduct)とは他者に重大な 損害を発生させる意図的な作為または意識的な不作為と定義されている。 65 C.J.S. Negligence 97 (updated 2019). また無謀な行為(reckless conduct)とは、他者の権利 や発生する可能性のある結果に無関心な状態を伴う行為である。当該行為は意識的に 適切な行為をとらないことであり、過失、さらには重過失よりも有責な行為である。 つまりこれらの過失による行為とは過失程度ではなく、内容的に異なるものとなる。
Id. at 100. また、故意および未必の故意による行為と無謀な行為は、故意の有無に より内容的に区別されることになる。Id. at 99.
(87) Sorensen v. Allred, 112 Cal. App.3d 717, 722-23 (1980).
(88) Zavala v. Regents of University of California, 125 Cal. App. 3d 646, 650 (1981). (89) Id. at 647, 651.
(90) Indiana Code 34-6-2-45. またノース・ダコタ州(N.D. Cent. Code 32-03.2-02.)も制 定法でこのルールを定めている。サウス・カロライナ州(Berberich v. Jack, 709 S.E.2d 607, 612 (2011).)も同様のルールを判例法で示している。モンタナ州もカリフォルニ ア州やサウス・カロライナ州と同様に判例法で未必の故意を比較過失の対象として いる。従前ではウィスコンシン州のルールに従い対象外としていたが(Derenberger v. Lutey, 674 P.2d 485, 488 (Mont. 1983).)、モンタナ州最高裁判所は後年になりこれを 破棄している(Martel v. Montana Power Co., 752 P.2d 140, 142-43 (Mont. 1988).)。 (91) Carter v. National R.R. Passenger Corp, 413 F. Supp. 2d 495, 501 (E.D. Pa. 2005). (92) Krivijanski v. Union R. Co., 515 A.2d 933, 936-37 (1986).
(93) Zeroulias v. Hamilton American Legion Associates, Inc., 705 N.E.2d 1164, 1166 (Mass. 1999).
(94) Davies v. Butler, 602 P.2d at 611.
(95) Stroud v. Arthur Anderson & Co., 37 P.3d 783, 793 (Okla. 2001). (96) Hampton Tree Farms, Inc. v. Jewett, 974 P.2d 738, 746 (Ore. 1999).
による損害のみが比較過失の対象とされ、未必の故意については故意に分 類されるという理由から比較過失の対象より除外されている(97)。 以上のように、無謀な行為さらには未必の故意による損害をも比較過失 の対象とする州があるにも関わらず、多くの州では故意による損害はその 対象から除外されている(98)。過失と故意との間にある有責性の相違であり、 故意による不法行為者は原告の過失とは関わりなく損害賠償責任をもつと とらえられたためである(99)。また、故意と過失の行為が本質的に相違する ものであるため、単純に比較ができないと考慮されたからでもある(100)。 しかし、故意による損害も比較過失の対象とする州が多数を占めるよう
(97) Poole v. City of Rolling Meadows, 656 N.E.2d 768, 771 (Ill. 1995). コネチカット州 も同様に無謀な行為のみを比較過失の対象としている(Rubel v. Wainwright, 862 A.2d 863, 872-73 (Conn. 2005).)。
(98) See, Applicability of Comparative Negligence Principles to Intentional Torts, 18 A.L.R.5th 525 (Originally published in 1994). 以下の17州がこれに該当する。コネ チカット州(See, e.g., Kramer v. Petisi, 940 A.2d 800 (Conn. 2008).)、フロリダ州 (See, e.g., Schoeff v. R.J. Reynolds Tobacco Company, 232 So.3d 294 (Fla. 2017).)、 ジョージア州(See, e.g., Flanagan v. Riverside Military Academy, 460 S.E.2d 824 (Ga. 1995).)、アイダホ州(Burgess v. Salmon River Canal Co., Ltd., 805 P.2d 1223 (Idaho 1991).)、イリノイ州(See, e.g., Straits Financial LLC v. Ten Sleep Cattle Company, 900 F.3d 359 (7th Cir. 2018).)、カンザス州(See, e.g., Sieben v. Sieben, 646 P.2d 1036 (Kan. 1982).)、メイン州(McLain v. Training and Development Corp., 572 A.2d 494 (Me. 1990).)、ミシシッピ州(See, e.g., Graves v. Graves, 531 So.2d 817 (Miss. 1988).)、モンタナ州(Cartwright v. Equitable Life Assur. Soc. of U.S., 914 P.2d 976 (Mont. 1996).)、ネブラスカ州(See, e.g., Brandon ex rel. Estate of Brandon v. County of Richardson, 624 N.W.2d 604 (Neb. 2001).)、オハイオ州(See, e.g., Estate of Beavers v. Knapp, 889 N.E.2d 181 (Ohio 2008).)、ペンシルバニア州(See, e.g., Hairston v. Allen, 153 A.3d 999 (Pa. 2016).)、サウス・ダコタ州(Frey v. Kouf, 484 N.W.2d 864 (S.D. 1992).)、テネシー州(Turner v. Jordan, 957 S.W.2d 815 (Tenn. 1997).)、バーモント州(Stephan v. Lynch, 388 A.2d 376 (Vt. 1978).)、ワシントン州 (See, e.g., Welch v. Southland Corp., 952 P.2d 162 (Wash. 1998).)、ウィスコンシン州 (Schulze v. Kleeber, 103 N.W.2d 560 (Wis. 1960).)である。
(99) See, e.g., Birmingham Ry., Light & Power Co. v. Jones, 41 So. 146, 148 (Ala. 1906). (100) See, e.g., Frontier Motors, Inc. v. Horrall, 496 P.2d 624 (Ariz. 1972). 本判決では、
故意による不法行為と過失は全く異なる法的根拠をもつものであるため、故意によ る不法行為に対して寄与過失の抗弁をすることはできないと述べている。Id. at 627.
になってきた。故意または過失を問わず、不法行為を原因とする損害を単 純に比較するようになったのである。原告に対する損害賠償責任を、過失 および故意という区分よりもむしろ有責程度の視点から考慮したわけであ る。そのため、故意の不法行為者に帰する懈怠(fault)(101)に拠るものも含 み、当事者双方の有責程度によって分配すると考えられたのである(102)。こ の方向性に反対の州もある(103)。また、一部の州では比較過失の対象に故意 による損害も含み、かつ被告の故意による行為の責任が原告の過失行為で 減ぜられることはないと一定の制限を加えている(104)。したがって、懈怠 による責任を故意による行為と過失による行為との間で分配するとしてい るが、実際には故意による責任と過失による責任を単に比較するものには なっていないことになる。 (101) 懈怠は、中世イングランドでは犯罪と宗教上の罪(sin)を意味するものと考えら れていた(Andrew McCall, THE MEDIEVAL UNDERWORLD, 25-26 (1979).)。 18世紀にブ ラックストンが意味したのは手際の良い方法(in a workmanlike manner)で行為をな さないことであり(William Blackstone, 1 COMMENTARIES ON THE LAWS OF ENGLAND 164 (1765).)、換言すれば注意不足つまり過失を意味するものであった。現在の法 律用語辞典による定義は、判断や行為における誤認または瑕疵で、不注意や無能 力、強情、不誠実、そして誤った処理などであり、故意と過失を広く含むものであ る(BLACK S LAW DICTIONARY, 11th ed. 751 (2019).)。またアラスカ州法(Alaska Stat. 09.17.900.)とミシガン州法(Mich. Comp. Laws Ann. 600.6304(8).)では、懈怠を故意 による行為も含んでいる。
(102) Blazovic v. Andrich, 590 A.2d 222, 231 (N.J. 1991).
(103) ミシシッピ州法(Miss. Code Ann. 85-5-7.)は、「懈怠は特定の違法行為の意図を もって犯した不法行為を含むものではない」と規定し、懈怠の概念から故意による 行為および不作為を除外している。
(104) これを採るのがアリゾナ州とルイジアナ州である。アリゾナ州では、Strawberry Water Co. v. Paulsen, 207 P.3d 654 (Ariz. 2008). が、故意による不法行為の損害なら びに過失による不法行為の損害との比較を認めるが、故意によるものは特定の目的 で損害を発生させているので、損害賠償の減額が認められないと述べている。Id. at 663. ルイジアナ州では、例えばDileo v. Horn, 189 So.3d 1189 (La. 2016). で、比較過 失で動産侵害(conversion)のような故意による不法行為による損害を減額することは できないと述べている。Id. at 1198. なお、動産侵害については、前掲注(10)・楪博 行・168頁を参照。
3.法令違反と比較過失 それでは、原告の法令違反は比較過失の対象となる過失に該当するの であろうか。この争点につき1984年にニュー・ヨーク州最高裁判所は、 Barker v. Kallash(105)で、否定的に解している。本件は、原告が組み立てて いた鉄パイプ爆弾の爆発によりケガを負ったと主張して、彼に爆竹を販売 した者を相手取って損害賠償請求をした事案である。同裁判所は、原告は 爆発物製造販売を禁ずる法律に違反するとして損害賠償を認めない判断を 下した(106)。そして以下の理由を述べたのである。合法な行為と禁止される 違法な行為を区分しなければならず、規制法に違反する過失行為には比較 過失が適用される(107)。さらに、規制法で禁止される行為を行うことは重大 な違反となる(108)。かような場合には、原告が損害に寄与したことを根拠と するのではなく、公の秩序(public policy)の違反を理由として救済は否定 されると判断したのである(109)。本判決で示された法理が「違法行為ルール (wrongful conduct rule)」である(110)。
一部の州では、違法行為ルールの影響を受けて原告が一定の刑事法規違 反により損害を発生させていれば、損害賠償を否定する法律を制定してい る。フロリダ州では、強盗など暴力的重罪(forcible felony)未遂の原告が損 害を被った場合に損害賠償を否定する州法が制定されている(111)。 違法行為ルールを比較過失と併存可能な法理としてとらえるかについて は州により見解が分かれている。比較過失制度で違法行為ルールの適用を (105) 468 N.E.2d 39 (N.Y. 1984). (106) Id. at 41. (107) Id. (108) Id. (109) Id. at 42.
(110) COMPARATIVE NEGLIGENCE MANUAL, supra note 7, at 1:19.
(111) Fla. Stat. Ann. 776.085(1). なおアリゾナ州では原告が軽罪違反または軽罪未遂 の場合に被告の不法行為責任を免除する制定法が成立していたが (Ariz. Rev. Stat. 12-712(B).)、危険の引き受け(assumption of risk)を陪審に説示すべきとする州憲法 の規定に違反していると判断されている(Sonoran Desert Investigations, Inc. v. Miller, 141 P.3d 754, 761 (Ariz. 2006))。
認める州(112)と、当該ルールを適用すれば原告に救済を否定することにな るため適用を認めないとする州(113)である。また、併存可能とするが違法 行為ルールが適用されると当該ルールを緩和、別の不法行為理論に変換、 または陪審が原告の行為を評価する方法に修正した州がある。例えばテキ サス州では当該ルールを緩和して、原告への救済を完全には否定しない ルールを採用している(114)。サウス・カロライナ州では、原告の刑事法違反 を救済否定理論である「行為自体で成立する過失(negligence per se)」と とらえている(115)。そしてウエスト・バージニア州では、陪審が比較過失の 原則に従い原告の刑事法違反行為の性質とその損害への寄与を勘案して損 害賠償額を決定するのである(116)。
1984年 に カ ン ザ ス 州 最 高 裁 判 所 はEli v. Board of County Comr s of Sedgwick County(117)で、比較過失制度の下では制定法違反と損害との間の 因果関係の審理を陪審に委ねて、責任の分配を決定する要因となるか否か を陪審に評決させるべきであると判断している(118)。本件は、刑事法違反で はなく道路交通法規違反の事案であった。道路交通法規に違反した原告は 道路の瑕疵によりケガを負ったため、道路を管理する郡を相手取って損害 賠償請求をしたのである(119)。 違法行為ルールの適用を巡る見解の相違は、比較過失を前提にしていか なる内容で当該ルールを解釈するかであった。制定法違反を因果関係の問 題として陪審に処理を委ねているのは、違法行為ルールを法的問題ではな
(112) これに該当する州はコネチカット州である。 See, Greenwald v. Van Handel, 88 A.3d 467 (Conn. 2014).
(113) これに該当する州はミシシッピ州である。See, Cahn v. Copac, Inc., 198 So.3d 347 (Miss. 2015).
(114) Dugger v. Arredondo, 408 S.W.3d 825, 832 (Tex. 2013). (115) Ott v. Pittman, 463 S.E.2d 101, 106 (S.C. 1995).
(116) Tug Valley Pharmacy, LLC v. All Plaintiffs Below In Mingo County, 773 S.E.2d 627, 636 (W.Va. 2015).
(117) 681 P.2d 673 (1984). (118) Id. at 675.
く事実問題ととらえていると考えられるのである。それでは、違法行為 ルールの内容を広範にとらえ、事実問題として陪審に審理を委ねることに なっているのはいかなる理由からなのか。それは当該ルールを柔軟に解さ ざるを得ないからであると推定される。アメリカにおいては当事者双方を 対等と位置づけ、一方に不利益を与える制度を忌避する傾向にある。多く の州で比較過失が採用されているのは、まさにこの証左である。つまり、 比較過失制度を維持するために、当該制度を巡る問題を柔軟に処理してい るのである。 おわりに 比較過失は寄与過失のもつ過酷さに対応する法理として出現した。寄与 過失は、わずかでも過失のある原告に対して救済を否定する法理である が、アメリカにおいてはアンテベラムの時代における鉄道産業保護を目的 として発展し、自己の安全を保護できない者に対する法的効果とも位置づ けられた。 しかし、過失が大きい当事者の損害賠償責任を免除することの不合理性 が強く主張されたのであった。さらに、海商法の領域で比較過失が有効 とされるにつれ、アメリカの多くの州が比較過失を採用したのである。比 較過失は細かく分類できるが、そのいずれも過失割合に応じて損害賠償額を 決定する構造をもつ。ただし、修正比較過失は同等な効果をもつ寄与過失の 影響を受けたものとも推定できる。また、救済を得るために少なくとも相手 方よりも過失割合が少ないことを求めるのは、損害賠償を受けるための条件 として相手方と比較して有責性が弱いことを必要としているのである。この 考えは、比較過失の対象となる損害に未必の故意や故意による損害、つまり 過失とは原因の異なる損害をも含んでいることからも明らかである。比較過 失はもはや、すべての原因による損害の比較を行う制度となっているのであ る。したがって、アメリカにおける比較過失は、損害の比較という枠組みの
中で、当事者双方が一方当事者に与えた損害を平等に寄与割合に対応して分 配するものであり、不法行為法の前提となっているものといえるのである。
〈2019年度科学研究費基盤研究(C)「実体法を手段とした私人による法実現の比較 法的研究−証券関係法と信託法を素材に−」課題番号[18K01342]による研究〉