PBRの絶対的水準を基軸とした投資戦略による対イ ンデックス・リターン
著者 桜井 貴憲
雑誌名 同志社商学
巻 69
号 2
ページ 237‑257
発行年 2017‑09‑30
権利 同志社大学商学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000016804
PBR の絶対的水準を基軸とした
投資戦略による対インデックス・リターン
桜 井 貴 憲
Ⅰ はじめに
Ⅱ 仮説
Ⅲ 分析方法と分析対象企業
Ⅳ PBRの絶対的水準別ポートフォリオの対インデックス・リターン
Ⅴ 結論
Ⅰ は じ め に
桜井(2010, 2014, 2016)では,PBRの絶対的水準を基軸とした投資戦略が実現リタ ーンを獲得するうえで有効であることを確認し
1
た。本論文では,その補足的な調査とし て,同戦略がベンチマークと比較してどのような投資成果を獲得してきたのかを検証す る。PBRの絶対的水準に基づいて識別される低
PBR
銘柄からなるポートフォリオに投 資するとベンチマークを超えるリターンを獲得できるのだろうか。高PBR
銘柄からな るポートフォリオを空売りするとベンチマークを空売りした場合を超えるリターンを獲 得することができるのだろうか。本論文では,桜井(2016)で用いたものと同一の企業・期間を対象にして,それらの 実現リターンと,ベンチマークとなるインデックスのリターンとの差として計算される 対インデックス・リターンの分布をポートフォリオごとに調査する。ポートフォリオご とに分布を見ていくという地味だが実際の投資に有効な方法で調査し,当該戦略を基本 に忠実に運用すれば,十分にインデックスに打ち勝てる可能性があることを証拠づけて いる。PBRの絶対的水準を基軸とした投資戦略が,インデックスを上回るリターンを 目指したアクティブな投資戦略にも十分に応用可能であることが示されている。
Ⅱ 仮 説
本論文では
PBR
の絶対的水準別ポートフォリオの実現リターンを,インデックスの リターンと比較することで,当該投資戦略がインデックスに打ち勝てる可能性をもって────────────
1 この投資戦略が他の戦略に対して優れたものであるということを主張しているのではない。
(237)61
いるのかどうかを調査する。ベンチマークとしてのインデックスには日経総合株価指 数,日経平均株価,ならびに東証株価指数を用いる。これらのインデックスは,計算の 対象範囲や方法は異なるものの,マーケットを代表するインデックスであると考えられ るからである。
上述のように,桜井(2010, 2014, 2016)では
PBR
の絶対的水準をもとに区分された 低PBR
ポートフォリオが高い実現リターンをもたらすことが示されている。逆に高PBR
ポートフォリオが低い実現リターン(マイナスの実現リターン)をもたらすこと も示されている。インデックスは低PBR
銘柄から高PBR
銘柄までを含んだマーケッ トの代表的な姿なので,低PBR
ポートフォリオの実現リターンはインデックスの実現 リターンを上回っているはずである。よって低PBR
ポートフォリオの対インデック ス・リターンはプラスの数値をとるはずである。逆に高PBR
ポートフォリオの実現リ ターンはインデックスを下回っているはずなので,高PBR
ポートフォリオの対インデ ックス・リターンはマイナスの数値をとるはずである。仮説
1:PBR
の絶対的水準が低いポートフォリオの対インデックス・リターンはプラスである。
仮説
2:PBR
の絶対的水準が高いポートフォリオの対インデックス・リターンはマイナスである。
Ⅲ 分析方法と分析対象企業
投資開始直前の
PBR
の水準と対インデックス・リターンの関係を分析するにあた り,まずは投資開始直前のPBR
を計算する。PBRは各銘柄につき毎月末の最終営業日 の終値とその時点で公表済みの自己資本および自己株式数控除後の発行済株式総数の数 値をもとに計算する。各銘柄につき,毎月末に計算されるものを投資1
件としてカウン トする。次にPBR
の絶対的水準にしたがってポートフォリオを作成する。相対的な位 置づけで作成する分位ポートフォリオではなく,絶対的水準を用いるのは桜井(2010,2014, 2016)でも採用してきた区分方法であ
る。2そして各ポートフォリオに含まれる投資
1
件ごとに,翌月の最初の営業日から投資を 開始し,36ヵ月間にわたり累積月次投資収益率を毎月計算する。各銘柄の月次投資収 益率には配当金が考慮されたものを用いる。────────────
2 相対的な位置づけで5分割したり10分割したりする分位ポートフォリオを作成すると,PBRとリター ンの関係を見誤る可能性があるためである。詳しくは桜井(2010)を参照のこと。
同志社商学 第69巻 第2号(2017年9月)
62(238)
インデックスのリターンについても累積月次投資収益率を毎月計算する。そして投資
1
件ごとにその累積月次投資収益率からインデックスの累積月次投資収益率を差し引く ことによって対インデックス・リターンを計算する。たとえば,ある投資1
件の36
ヵ 月累積月次投資収益率が10% であり,その同一期間のインデックスの累積月次投資収
益率が
8% であるとすれば,その投資の対インデックス・リターンは 2% として計算さ
れる。
このようにして分析対象に含まれる投資
1
件ごとに毎月末に36
ヵ月間にわたって計 算していく。そしてポートフォリオごとに対インデックス・リターンがどのように分布 しているかを調べ,仮説で示されたような関係が実際に見られるのかどうかを明らかに する。インデックスのリターンとしては,日経総合株価指数の月次投資収益率を用い る。日経総合株価指数を用いるのは,日経平均株価,日経300,東証株価指数,JPX 400
などと比較して対象範囲が広いからである。なお,日経総合株価指数は配当金も考 慮して計算されている。補足的に,日経平均株価および東証株価指数の月次投資収益率 も用いるが,日経総合株価指数に比べて対象範囲が狭く,本論文では配当も考慮してい ない。本論文では
2000
年5
月から2015
年6
月までの,各銘柄の月次投資収益率,月次イン デックス,自己資本,発行済株式数等の分析上必要なデータを日経Financial Quest 2.0
からダウンロードして利用している。本論文は桜井(2016)の補足的な分析として位置 づけられているので,分析対象期間も分析対象企業も桜井(2016)と同様である。Ⅳ PBR の絶対的水準別ポートフォリオの対インデックス・リターン
4.1
区分A
によるPBR
の絶対的水準別ポートフォリオの対インデックス・リターン(1)対日経総合株価指数累積月次投資収益率
図表
41
は,桜井(2016)における区分A
にしたがって作成したポートフォリオの 対日経総合株価指数累積月次投資収益率の第1
四分位数,中央値,第3
四分位数が示さ れている。またそこには,中央値がゼロであるという帰無仮説について,符号検定とWilcoxon
符号順位検定を行った結果も併せて示されている。区分
A
ではPBR
をプラスの領域とマイナスの領域に分け,プラスの領域をPBR
の 絶対的水準にしたがって3
分割して全部で4
つのポートフォリオが作成されている。まずは
PBR
がプラスの各ポートフォリオから数値を確認する。PBRの水準が0.0
以 上1.0
未満と低いポートフォリオであるPBR
0.0−1.0には,186,555件の投資が含まれてい る。これは総投資件数341,868
件の54.57% を占めている。その 12
ヵ月後の対インデ ックス・リターン,すなわち対日経総合株価指数累積月次投資収益率(ER12と表記)PBRの絶対的水準を基軸とした投資戦略による対インデックス・リターン(桜井) (239)63
の中央値は
5.80%,24
ヵ月後の対日経総合株価指数累積月次投資収益率(ER24と表記)は
9.37%,36
ヵ月後の対日経総合株価指数累積月次投資収益率(ER36と表記)は11.01
%である。図表
42
には,ER36の四分位範囲が示されている。それに対して,PBRの 水準が1.0
以上10.0
未満と高いポートフォリオであるPBR
1.0−10.0の投資件数は151,179
図表41 対日経総合株価指数累積月次投資収益率(区分A)
PBR 経過月数
対日経総合株価指数
累積月次投資収益率 n 符号検定 Wilcoxon
符号 区分A Q1/4 median Q3/4 検定
− PBRMIN−0.0
12 24 36
−0.5367
−0.7592
−0.9471
−0.1752
−0.3039
−0.4160
0.2078 0.3559 0.3577
1,719 1,719 1,719
**
**
**
**
**
**
+
PBR0.0−1.0
12 24 36
−0.1043
−0.1450
−0.1956
0.0580 0.0937 0.1101
0.2401 0.3757 0.5010
186,555 186,555 186,555
**
**
**
**
**
**
PBR1.0−10.0
12 24 36
−0.2033
−0.2785
−0.3141
−0.0303
−0.0461
−0.0453
0.1578 0.2115 0.2473
151,179 151,179 151,179
**
**
**
**
**
**
PBR10.0−MAX
12 24 36
−0.4892
−0.7059
−0.8235
−0.2222
−0.3566
−0.4306
0.0437
−0.0118
−0.0528
2,415 2,415 2,415
**
**
**
**
**
**
Total
12 24 36
−0.1536
−0.2150
−0.2596
0.0188 0.0291 0.0312
0.2053 0.3047 0.3820
341,868 341,868 341,868
−−−
−−−
−−−
−−−
−−−
−−−
**1%,*5%
図表42 対日経総合株価指数累積月次投資収益率(ER36)の四分位範囲(区分A)
同志社商学 第69巻 第2号(2017年9月)
64(240)
件(全体の
44.22%)である。このポートフォリオの ER
12の中央値は−3.03%,ER24は−4.61%,ER36は−4.53% である。PBRの水準が
10.0
以上とさらに高いポートフォリオである
PBR
10.0−MAXの投資件数は2,415
件と少なく,そのER
12の中央値は−22.22%,ER
24は−35.66%,ER36は−43.06% である。これらの中央値がゼロであるという帰無仮 説は符号検定ならびにWilcoxon
符号順位検定でいずれも棄却されており統計的に有意 である。第
1
四分位数を見ると,すべてマイナスではあるものの,PBRの水準が低いポート フォリオほど対インデックス・リターンは高い数値を示し,PBRの水準が高いポート フォリオほど低い数値になることがわかる。第3
四分位数を見てもPBR
の水準が低い ポートフォリオほど対インデックス・リターンは高い数値を示し,PBR が高いポート フォリオほど低くなっていることがわかる。このようにいずれのポートフォリオにおい ても対インデックス・リターンは,プラスの領域とマイナスの領域にまたがって分布し ているのだが,PBRが低いポートフォリオのほうが高い位置に分布していることがわ かる。また
PBR
がマイナスのポートフォリオPBR
MIN−0.0についても確認しておく。このポ ートフォリオには自己資本がマイナス,すなわち債務超過の投資対象が含まれている。投資件数は
1,719
件と出現する頻度は少ない。債務超過は上場廃止基準に抵触するの で,一般的には中長期的な投資対象にすることは少ないと思われるが,ER12, ER
24, ER
36の中央値はいずれもマイナスとなっており,桜井(2010, 2014, 2016)で示した実現リ ターンと同様に,対インデックス・リターンもマイナスを中心に分布していることがわ かる。
(2)対日経平均株価累積月次投資収益率
つぎにベンチマークに日経平均株価を用いた対日経平均株価指数累積月次投資収益率 について,同様の計算を行ったものが図表
43
と図表44
である。PBR3 0.0−1.0をみると
ER
12の中央値は6.52%,ER
24は10.91%,ER
36は12.93% である。それに対して,割高
なポートフォリオであるPBR
1.0−10.0をみるとER
12の中央値は−2.48%,ER24は−3.74%,ER36は−3.65% である。さらに割高なポートフォリオである
PBR
10.0−MAXをみるとER
12の中央値は−21.89%,ER24は−33.54%,ER36は−41.84% である。これらも統計 的に有意である。第1
四分位数および第3
四分位数も,PBRの絶対的水準が低いポー トフォリオの対日経平均株価累積月次投資収益率は高く,PBRの絶対的水準が高いポ────────────
3 ただし,前述したように,個々の投資の累積月次投資収益率が配当込みで計算されているのに対して,
本節でインデックスとして採用した日経平均株価のリターン(および(3)の東証株価指数のリターン)
には配当が含まれていないので,インデックスに不利な比較になっている点があることを申し添えてお く。
PBRの絶対的水準を基軸とした投資戦略による対インデックス・リターン(桜井) (241)65
ートフォリオの対日経平均株価累積月次投資収益率は低い。このように(1)の対日経 総合株価指数の場合と同様の結果となっている。
また債務超過銘柄からなる
PBR
MIN−0.0をみると,これもやはり(1)での結果と同様 に著しいマイナスの数値を中心に分布していることがわかる。図表43 対日経平均株価累積月次投資収益率(区分A)
PBR 経過月数
対日経平均株価
累積月次投資収益率 n 符号検定 Wilcoxon
符号 区分A Q1/4 median Q3/4 検定
− PBRMIN−0.0
12 24 36
−0.5312
−0.7369
−0.9045
−0.1637
−0.2753
−0.3764
0.2317 0.3995 0.4186
1,719 1,719 1,719
**
**
**
**
**
**
+
PBR0.0−1.0
12 24 36
−0.1053
−0.1393
−0.1802
0.0652 0.1091 0.1293
0.2576 0.4032 0.5430
186,555 186,555 186,555
**
**
**
**
**
**
PBR1.0−10.0
12 24 36
−0.2039
−0.2747
−0.3032
−0.0248
−0.0374
−0.0365
0.1681 0.2236 0.2630
151,179 151,179 151,179
**
**
**
**
**
**
PBR10.0−MAX
12 24 36
−0.4802
−0.7159
−0.8105
−0.2189
−0.3354
−0.4184
0.0628
−0.0027
−0.0227
2,415 2,415 2,415
**
**
**
**
**
**
Total
12 24 36
−0.1550
−0.2105
−0.2464
0.0245 0.0403 0.0447
0.2203 0.3251 0.4112
341,868 341,868 341,868
−−−
−−−
−−−
−−−
−−−
−−−
**1%,*5%
図表44 対日経平均株価累積月次投資収益率(ER36)の四分位範囲(区分A)
同志社商学 第69巻 第2号(2017年9月)
66(242)
(3)対東証株価指数累積月次投資収益率
ベンチマークに東証株価指数を用いて同様の計算を行ったのが図表
45
と図表46
で ある。PBR0.0−1.0をみるとER
12の中央値は8.01%,ER
24は13.80%,ER
36は17.97% であ
る。それに対して,割高なポートフォリオであるPBR
1.0−10.0をみるとER
12の中央値は図表45 対東証株価指数累積月次投資収益率(区分A)
PBR 経過月数
対TOPIX
累積月次投資収益率 n 符号検定 Wilcoxon
符号 区分A Q1/4 median Q3/4 検定
− PBRMIN−0.0
12 24 36
−0.5183
−0.7081
−0.8775
−0.1628
−0.2605
−0.3507
0.2291 0.4049 0.4214
1,719 1,719 1,719
**
**
**
**
**
**
+
PBR0.0−1.0
12 24 36
−0.0838
−0.1008
−0.1218
0.0801 0.1380 0.1797
0.2617 0.4197 0.5730
186,555 186,555 186,555
**
**
**
**
**
**
PBR1.0−10.0
12 24 36
−0.1902
−0.2484
−0.2636
−0.0151
−0.0137 0.0034
0.1750 0.2456 0.3009
151,179 151,179 151,179
**
**
**
**
**
PBR10.0−MAX
12 24 36
−0.4752
−0.6840
−0.7631
−0.2112
−0.3279
−0.3966
0.0556 0.0195
−0.0020
2,415 2,415 2,415
**
**
**
**
**
**
Total
12 24 36
−0.1367
−0.1777
−0.1982
0.0380 0.0690 0.0914
0.2251 0.3446 0.4464
341,868 341,868 341,868
−−−
−−−
−−−
−−−
−−−
−−−
**1%,*5%
図表46 対東証株価指数累積月次投資収益率(ER36)の四分位範囲(区分A)
PBRの絶対的水準を基軸とした投資戦略による対インデックス・リターン(桜井) (243)67
−1.51%,ER24は−1.37%,ER36は
0.34% である。さらに割高なポートフォリオである
PBR
10.0−MAXをみるとER
12の中央値は−21.12%,ER24は−32.79%,ER36は−39.66% である。これらの数値も一部を除き統計的に有意であった。こうしてみると
PBR
1.0−10.0のER
36が僅かにプラスの数値を示しているものの,割安ポートフォリオの対インデック ス・リターンが高く,割高ポートフォリオの対インデックス・リターンが低いというこ とに変わりはなく,やはり(1)および(2)と同様の結果であったと考えることができ よう。また債務超過銘柄からなるPBR
MIN−0.0についても同様であった。このように区分
A
についての検討から,PBRの絶対的水準に基づいた投資戦略を基 軸に据えて,低PBR
銘柄が出現するつどロング・ポジションをとり中期的にポジショ ンを保持する,高PBR
銘柄が出現するつどショート・ポジションをとり中期的にポジ ションを保持することで,桜井(2016)等で示したように絶対リターンを獲得できるだ けでなく,インデックスにも打ち勝てる可能性が十分にあることがわかる。また本論文において
PBR
の計算に用いている自己資本の数値は,投資開始直前の営 業日の時点ですでに公表済みの実績値である。つまり上述の分析結果は,企業から開示 され十分に市場に行き渡った自己資本という最も基本的な会計情報をたった1
つ利用す るだけでも,インデックスに打ち勝てる可能性を示しているのである。4.2
区分B
によるPBR
の絶対的水準別ポートフォリオの対インデックス・リターン(1)対日経総合株価指数累積月次投資収益率
区分
B
では,PBRがプラスの投資対象をもう少し細分化して,PBR の数値について0.5
刻みでポートフォリオを作成した場合の対インデックス・リターンについて調査し た。まずは対日経総合株価指数の累積月次投資収益率についての結果が図表47
および 図表48
に示されている。PBR
の水準が最も低いポートフォリオであるPBR
0.0−0.5には57,182
件(16.77%)の 投資が含まれている。そのER
12の中央値は10.71%,ER
24は19.73%,ER
36は25.31%
である。2番目に
PBR
の水準が低いPBR
0.5−1.0(129,373件,37.84%)をみると,ER12の 中 央 値 は
3.68%,ER
24は5.44%,ER
36は6.44% で あ る。次 の PBR
1.0−1.5(69,380件,20.29%)をみると,ER
12の中央値 は−0.13%,ER24は0.26%,ER
36は0.94% で あ り,
ゼロ近傍まで低下していることがわかる。
続けて
PBR
1.5−2.0(33,398件,9.77%)のER
12の中 央 値 は−2.84%,ER24は−3.73%,ER
36は−3.18% とマイナスに転換している。これ以降PBR
が高くなるほど対インデッ クス・リターンはマイナスの度合いが大きくなっていく。区分B
において最もPBR
の 水 準 が 高 いPBR
9.5−10.0のER
12の 中 央 値 は−19.82%,ER24は−31.84%,ER36は−34.85%と大きなマイナスとなっている。なお,これらの中央値がゼロであるという帰無仮説
同志社商学 第69巻 第2号(2017年9月)
68(244)
図表47 対日経総合株価指数累積月次投資収益率(区分B)
PBR 経過
月数
対日経総合株価指数
累積月次投資収益率 n 符号検定 Wilcoxon
区分B Q1/4 median Q3/4 検定
PBR0.0−0.5
1224 36
−0.0568
−0.0658
−0.1262
0.1071 0.1973 0.2531
0.3077 0.5442 0.7836
57,182 57,182 57,182
****
**
****
**
PBR0.5−1.0
12 2436
−0.1225
−0.1733
−0.2203
0.0368 0.0544 0.0644
0.2110 0.3106 0.3954
129,373 129,373 129,373
****
**
****
**
PBR1.0−1.5
12 2436
−0.1589
−0.2212
−0.2495
−0.0013 0.0026 0.0094
0.1753 0.2462 0.2964
69,380 69,380
69,380 **
**
****
PBR1.5−2.0
12 2436
−0.1933
−0.2543
−0.2867
−0.0284
−0.0373
−0.0318
0.1538 0.2175 0.2527
33,398 33,398 33,398
**
****
**
****
PBR2.0−2.5
12 2436
−0.2320
−0.3078
−0.3382
−0.0567
−0.0863
−0.0860
0.1436 0.1671 0.1916
17,520 17,520 17,520
**
****
**
****
PBR2.5−3.0
12 24 36
−0.2593
−0.3504
−0.3803
−0.0741
−0.1199
−0.1279
0.1263 0.1404 0.1486
9,924 9,924 9,924
**
**
**
**
**
**
PBR3.0−3.5
12 24 36
−0.2768
−0.3634
−0.4020
−0.0766
−0.1242
−0.1313
0.1424 0.1605 0.1718
5,998 5,998 5,998
**
**
**
**
**
**
PBR3.5−4.0
12 24 36
−0.3023
−0.4144
−0.4527
−0.1041
−0.1663
−0.1747
0.1151 0.1114 0.1211
4,015 4,015 4,015
**
**
**
**
**
**
PBR4.0−4.5
12 24 36
−0.3354
−0.4599
−0.5148
−0.1389
−0.1937
−0.2090
0.0859 0.0712 0.0903
2,722 2,722 2,722
**
**
**
**
**
**
PBR4.5−5.0
12 24 36
−0.3619
−0.4693
−0.4957
−0.1513
−0.2018
−0.2253
0.0902 0.1038 0.0693
1,956 1,956 1,956
**
**
**
**
**
**
PBR5.0−5.5
12 24 36
−0.3673
−0.4825
−0.5162
−0.1367
−0.2179
−0.2308
0.1181 0.1130 0.0957
1,444 1,444 1,444
**
**
**
**
**
**
PBR5.5−6.0
12 24 36
−0.3514
−0.4882
−0.5186
−0.1456
−0.2122
−0.2467
0.0868 0.1095 0.1092
1,190 1,190 1,190
**
**
**
**
**
**
PBR6.0−6.5
12 24 36
−0.3743
−0.5335
−0.5257
−0.1122
−0.1979
−0.2360
0.1386 0.1380 0.1649
897 897 897
**
**
**
**
**
**
PBR6.5−7.0
12 24 36
−0.3622
−0.5372
−0.5578
−0.1395
−0.2442
−0.2422
0.1083 0.1361 0.1016
662 662 662
**
**
**
**
**
**
PBR7.0−7.5
1224 36
−0.3754
−0.5035
−0.5460
−0.1490
−0.2044
−0.2642
0.1290 0.0999 0.0637
549 549 549
**
**
**
**
**
**
PBR7.5−8.0
1224 36
−0.3971
−0.5736
−0.7060
−0.1442
−0.2727
−0.3346
0.1232 0.0375 0.0258
411411 411
****
**
****
**
PBR8.0−8.5
1224 36
−0.4110
−0.5680
−0.5814
−0.1818
−0.2935
−0.3373
0.0579
−0.0362 0.0210
342342 342
****
**
****
**
PBR8.5−9.0
1224 36
−0.4007
−0.5215
−0.5662
−0.1380
−0.2768
−0.3278
0.0804
−0.0307
−0.0367
289289 289
****
**
****
**
PBR9.0−9.5
12 2436
−0.4060
−0.6219
−0.7606
−0.1677
−0.3312
−0.3392
0.0779
−0.0670
−0.0552
253 253253
**
****
**
****
PBR9.5−10.0
12 2436
−0.4179
−0.5274
−0.6739
−0.1982
−0.3184
−0.3485
0.0203 0.0049
−0.0430
229 229229
**
****
**
****
**1%,*5%
PBRの絶対的水準を基軸とした投資戦略による対インデックス・リターン(桜井) (245)69
は,ほぼすべてのポートフォリオについて棄却されており,統計的に有意であ
4
る。
このように区分
B
においても,低PBR
銘柄が出現するつどロング・ポジションをと ることでインデックスに打ち勝つことができ,また高PBR
銘柄が出現するつどショー ト・ポジションをとることでインデックスに打ち勝つことができる可能性があることが わかる。(2)対日経平均株価累積月次投資収益率
つぎに対日経平均株価の累積月次投資収益率についての結果が図表
49
と図表410
示されている。PBR0.0−0.5をみると,ER12の中央値は11.50%,ER
24は21.68%,ER
36は28.62% で あ る。PBR
0.5−1.0を み る と,ER12の 中 央 値 は4.37%,ER
24は6.86%,ER
36は8.03% である。次の PBR
1.0−1.5をみると,ER12の中央値は0.52%,ER
24は1.18%,ER
36は
1.96% である。このように,PBR
の絶対的水準が高くなるほど,対日経総合株価指数の累積月次投資収益率は低い位置を中心に分布していることがわかる。PBR1.5−2.0以降 はマイナスとなり,やはり
PBR
が高くなるほど数値が落ちていくことがわかる。また これらの中央値は図表410
に示されているように,ほぼすべてのポートフォリオにつ────────────
4 なおPBR1.0−1.5のER12とER24の符号検定において,帰無仮説が棄却されていない。このPBR1.0−1.5付近
は,対日経総合株価指数累積月次投資収益率がプラスからマイナスに転換する分水嶺に位置しておりそ の数値がゼロに近いからであると考えられる。
図表48 対日経総合株価指数累積月次投資収益率(ER36)の四分位範囲(区分B)
同志社商学 第69巻 第2号(2017年9月)
70(246)
図表49 対日経平均株価累積月次投資収益率(区分B)
PBR 経過
月数
対日経平均株価
累積月次投資収益率 n 符号検定 Wilcoxon
区分B Q1/4 median Q3/4 検定
PBR0.0−0.5
1224 36
−0.0574
−0.0577
−0.1021
0.1150 0.2168 0.2862
0.3290 0.5839 0.8435
57,182 57,182 57,182
****
**
****
**
PBR0.5−1.0
12 2436
−0.1233
−0.1681
−0.2069
0.0437 0.0686 0.0803
0.2276 0.3333 0.4267
129,373 129,373 129,373
****
**
****
**
PBR1.0−1.5
12 2436
−0.1601
−0.2170
−0.2400
0.0052 0.0118 0.0196
0.1875 0.2603 0.3175
69,380 69,380 69,380
**
****
**
****
PBR1.5−2.0
12 2436
−0.1938
−0.2510
−0.2781
−0.0232
−0.0313
−0.0245
0.1638 0.2271 0.2648
33,398 33,398 33,398
**
****
**
**
PBR2.0−2.5
12 2436
−0.2317
−0.3034
−0.3272
−0.0514
−0.0769
−0.0768
0.1518 0.1794 0.2034
17,520 17,520 17,520
**
****
**
****
PBR2.5−3.0
12 24 36
−0.2555
−0.3428
−0.3636
−0.0690
−0.1094
−0.1233
0.1348 0.1507 0.1621
9,924 9,924 9,924
**
**
**
**
**
**
PBR3.0−3.5
12 24 36
−0.2682
−0.3546
−0.3801
−0.0727
−0.1113
−0.1261
0.1525 0.1740 0.1848
5,998 5,998 5,998
**
**
**
**
**
**
PBR3.5−4.0
12 24 36
−0.2992
−0.4042
−0.4349
−0.0975
−0.1627
−0.1685
0.1190 0.1221 0.1336
4,015 4,015 4,015
**
**
**
**
**
**
PBR4.0−4.5
12 24 36
−0.3346
−0.4592
−0.4928
−0.1352
−0.1933
−0.2054
0.0987 0.0913 0.1031
2,722 2,722 2,722
**
**
**
**
**
**
PBR4.5−5.0
12 24 36
−0.3667
−0.4637
−0.4951
−0.1388
−0.1927
−0.2209
0.1071 0.1136 0.0859
1,956 1,956 1,956
**
**
**
**
**
**
PBR5.0−5.5
12 24 36
−0.3710
−0.4863
−0.5055
−0.1301
−0.2055
−0.2164
0.1317 0.1344 0.1146
1,444 1,444 1,444
**
**
**
**
**
**
PBR5.5−6.0
12 24 36
−0.3477
−0.4892
−0.5019
−0.1390
−0.2009
−0.2390
0.1067 0.1150 0.1092
1,190 1,190 1,190
**
**
**
**
**
**
PBR6.0−6.5
12 24 36
−0.3728
−0.5433
−0.5234
−0.1161
−0.1855
−0.2274
0.1521 0.1550 0.1632
897 897 897
**
**
**
**
**
**
PBR6.5−7.0
12 24 36
−0.3578
−0.5383
−0.5416
−0.1356
−0.2325
−0.2253
0.1051 0.1460 0.1166
662 662 662
**
**
**
**
**
**
PBR7.0−7.5
1224 36
−0.3648
−0.5028
−0.5455
−0.1384
−0.1987
−0.2345
0.1451 0.1103 0.1007
549 549 549
**
**
**
**
**
**
PBR7.5−8.0
1224 36
−0.3912
−0.5899
−0.6698
−0.1383
−0.2624
−0.3172
0.1403 0.0393 0.0598
411411 411
****
**
****
**
PBR8.0−8.5
1224 36
−0.4049
−0.5822
−0.5525
−0.1656
−0.2757
−0.3223
0.0514
−0.0121 0.0372
342342 342
****
**
****
**
PBR8.5−9.0
1224 36
−0.3945
−0.5147
−0.5412
−0.1291
−0.2492
−0.3172
0.0869
−0.0261
−0.0351
289289 289
****
**
****
**
PBR9.0−9.5
12 2436
−0.4034
−0.6250
−0.7458
−0.1668
−0.3238
−0.3479
0.1098
−0.0352
−0.0195
253 253253
**
****
**
****
PBR9.5−10.0
12 2436
−0.4012
−0.5428
−0.6278
−0.1978
−0.2824
−0.3251
0.0130 0.0119
−0.0324
229 229229
**
****
**
****
**1%,*5%
PBRの絶対的水準を基軸とした投資戦略による対インデックス・リターン(桜井) (247)71
いて統計的に有意である。第
1
四分位数および第3
四分位数も,概してPBR
の絶対的 水準が低いポートフォリオの数値は高く,PBRの絶対的水準が高いポートフォリオは 低い数値を示している。このように対日経平均株価のリターンでみても,低
PBR
ポートフォリオはロング・ポジションをとることで中期的に日経平均株価を上回る成果を上げられる可能性があり そうである。また高
PBR
ポートフォリオについては,ショート・ポジションから日経 平均株価の下落を超える下落を享受できそうである。(3)対東証株価指数累積月次投資収益率
図表
411
と図表412
には,対東証株価指数の累積月次投資収益率についての結果が 示されている。PBR0.0−0.5をみると,ER12の中央値は13.04%,ER
24は24.41%,ER
36は33.12% で あ る。PBR
0.5−1.0を み る と,ER12の 中 央 値 は5.77%,ER
24は9.80%,ER
36は12.97% で あ る。PBR
1.0−1.5を み る と,ER12の 中 央 値 は1.58%,ER
24は3.78%,ER
36は6.48% である。PBR
1.5−2.0のER
12とER
24はマイナス転換し,PBR2.0−2.5ではER
36もマイ ナス転換している。そしてPBR
の水準が高くなるほどマイナス幅も大きくなってい く。これらの数値は統計的にも有意である。このようにやはり対日経総合株価指数や対日経平均株価のリターンと同様に,PBR の絶対的水準が高くなるほど,対東証株価指数のリターンは低い位置を中心に分布して
図表410 対日経平均株価累積月次投資収益率(ER36)の四分位範囲(区分B)
同志社商学 第69巻 第2号(2017年9月)
72(248)
図表411 対東証株価指数累積月次投資収益率(区分B)
PBR 経過
月数
対TOPIX
累積月次投資収益率 n 符号検定 Wilcoxon
区分B Q1/4 median Q3/4 検定
PBR0.0−0.5
1224 36
−0.0331
−0.0149
−0.0402
0.1304 0.2441 0.3312
0.3297 0.5947 0.8636
57,182 57,182 57,182
****
**
****
**
PBR0.5−1.0
12 2436
−0.1039
−0.1317
−0.1507
0.0577 0.0980 0.1297
0.2315 0.3532 0.4625
129,373 129,373 129,373
****
**
****
**
PBR1.0−1.5
12 2436
−0.1433
−0.1874
−0.1945
0.0158 0.0378 0.0648
0.1940 0.2835 0.3546
69,380 69,380 69,380
**
****
**
****
PBR1.5−2.0
12 2436
−0.1803
−0.2250
−0.2376
−0.0136
−0.0064 0.0150
0.1702 0.2508 0.3041
33,398 33,398 33,398
**
***
*
****
PBR2.0−2.5
12 2436
−0.2188
−0.2800
−0.2927
−0.0438
−0.0583
−0.0420
0.1572 0.1988 0.2379
17,520 17,520 17,520
**
****
**
****
PBR2.5−3.0
12 24 36
−0.2461
−0.3209
−0.3330
−0.0608
−0.0916
−0.0845
0.1401 0.1664 0.1940
9,924 9,924 9,924
**
**
**
**
**
**
PBR3.0−3.5
12 24 36
−0.2640
−0.3373
−0.3580
−0.0650
−0.0938
−0.0908
0.1564 0.1924 0.2185
5,998 5,998 5,998
**
**
**
**
**
**
PBR3.5−4.0
12 24 36
−0.2939
−0.3834
−0.4064
−0.0894
−0.1406
−0.1335
0.1277 0.1383 0.1674
4,015 4,015 4,015
**
**
**
**
**
**
PBR4.0−4.5
12 24 36
−0.3247
−0.4403
−0.4646
−0.1296
−0.1690
−0.1734
0.0994 0.0968 0.1387
2,722 2,722 2,722
**
**
**
**
**
**
PBR4.5−5.0
12 24 36
−0.3543
−0.4402
−0.4584
−0.1371
−0.1783
−0.1891
0.1047 0.1336 0.1113
1,956 1,956 1,956
**
**
**
**
**
**
PBR5.0−5.5
12 24 36
−0.3598
−0.4568
−0.4712
−0.1277
−0.1853
−0.1940
0.1371 0.1481 0.1470
1,444 1,444 1,444
**
**
**
**
**
**
PBR5.5−6.0
12 24 36
−0.3345
−0.4662
−0.4779
−0.1309
−0.1874
−0.2117
0.1056 0.1412 0.1658
1,190 1,190 1,190
**
**
**
**
**
**
PBR6.0−6.5
12 24 36
−0.3670
−0.5088
−0.4902
−0.1006
−0.1692
−0.2024
0.1549 0.1791 0.2100
897 897 897
**
**
**
**
**
**
PBR6.5−7.0
12 24 36
−0.3548
−0.5175
−0.5228
−0.1270
−0.2209
−0.1970
0.1203 0.1682 0.1707
662 662 662
**
**
**
**
**
**
PBR7.0−7.5
1224 36
−0.3705
−0.4847
−0.5045
−0.1405
−0.1898
−0.2133
0.1398 0.1223 0.1293
549 549 549
**
**
**
**
**
**
PBR7.5−8.0
1224 36
−0.3889
−0.5394
−0.6284
−0.1371
−0.2464
−0.2968
0.1424 0.0558 0.0800
411411 411
****
**
****
**
PBR8.0−8.5
1224 36
−0.4017
−0.5574
−0.5267
−0.1687
−0.2685
−0.3039
0.0726 0.0038 0.0715
342342 342
****
**
****
**
PBR8.5−9.0
1224 36
−0.3893
−0.5155
−0.5230
−0.1244
−0.2369
−0.2736
0.0901
−0.0083
−0.0002
289289 289
****
**
****
**
PBR9.0−9.5
12 2436
−0.4014
−0.5925
−0.6862
−0.1593
−0.3173
−0.3171
0.1026
−0.0387
−0.0228
253 253253
**
****
**
****
PBR9.5−10.0
12 2436
−0.3985
−0.5066
−0.6038
−0.1812
−0.2759
−0.3012
0.0262 0.0221
−0.0121
229 229229
**
****
**
****
**1%,*5%
PBRの絶対的水準を基軸とした投資戦略による対インデックス・リターン(桜井) (249)73
いることがわかる。したがって対東証株価指数で見ても低
PBR
ポートフォリオはロン グ・ポジションを,高PBR
ポートフォリオはショート・ポジションをとることで,イ ンデックスのリターンを超える投資成果を得られる可能性があることが示されている。4.3
区分C
によるPBR
の絶対的水準別ポートフォリオの対インデックス・リターン(1)対日経総合株価指数累積月次投資収益率
対インデックス・リターンがプラスからマイナスに転換する分水嶺が,投資直前の
PBR
の水準のどの辺りにあるのかをもう少し詳しく調査するための区分が区分C
であ る。まず図表413
および図表414
には対日経総合株価指数の累積月次投資収益率が示 されている。PBR
0.0−0.2は総投資件数341,868
件のうち1,966
件(約0.58%)と出現機会が非常に限
定的ではあるが,その
ER
12の中央値は18.25%,ER
24は36.02%,ER
36は55.37% とと
ても高い数値を示している。ただしこのポートフォリオは経営上の問題を抱えている企 業が多く含まれており,その後に回復して株価が急騰する銘柄がある一方で,回復する ことなく経営破綻に至る割合もその他のポートフォリオに比べて高5
い。それゆえに中央 値は確かに高い位置にあるが,四分位範囲も広くなっており,第
1
四分位数は,ER12が−2.94%,ER24は−0.90%,ER36は−5.39% で あ る の に 対 し て,第
3
四 分 位 数 は,────────────
5 当該ポートフォリオと経営破綻の関係については桜井(2014)を参照されたい。
図表412 対東証株価指数累積月次投資収益率(ER36)の四分位範囲(区分B)
同志社商学 第69巻 第2号(2017年9月)
74(250)
図表413 対日経総合株価指数累積月次投資収益率(区分C)
PBR 経過
月数
対日経総合株価指数
累積月次投資収益率 n 符号検定 Wilcoxon
区分C Q1/4 median Q3/4 検定
PBR0.0−0.2
1224 36
−0.0294
−0.0090
−0.0539
0.1825 0.3602 0.5537
0.5428 1.1199 1.7912
1,966 1,966 1,966
****
**
****
**
PBR0.2−0.4
12 2436
−0.0443
−0.0381
−0.0832
0.1202 0.2353 0.3284
0.3271 0.6149 0.9221
29,159 29,159 29,159
****
**
****
**
PBR0.4−0.6
12 2436
−0.0858
−0.1163
−0.1892
0.0776 0.1218 0.1338
0.2601 0.4054 0.5408
54,241 54,241 54,241
**
****
**
****
PBR0.6−0.8
12 2436
−0.1181
−0.1678
−0.2113
0.0402 0.0600 0.0725
0.2108 0.3130 0.3996
55,744 55,744 55,744
**
****
**
****
PBR0.8−1.0
12 2436
−0.1421
−0.1981
−0.2386
0.0155 0.0230 0.0323
0.1883 0.2700 0.3395
45,445 45,445 45,445
**
****
**
****
PBR1.0−1.2
12 24 36
−0.1496
−0.2085
−0.2409
0.0068 0.0124 0.0223
0.1799 0.2578 0.3194
33,960 33,960 33,960
**
**
**
**
**
**
PBR1.2−1.4
12 24 36
−0.1651
−0.2299
−0.2520
−0.0069
−0.0052 0.0038
0.1740 0.2373 0.2807
25,311 25,311 25,311
** **
**
**
PBR1.4−1.6
12 24 36
−0.1790
−0.2414
−0.2766
−0.0168
−0.0218
−0.0176
0.1622 0.2254 0.2648
18,729 18,729 18,729
**
**
**
**
* PBR1.6−1.8
12 24 36
−0.1915
−0.2514
−0.2796
−0.0255
−0.0310
−0.0223
0.1528 0.2251 0.2584
14,225 14,225 14,225
**
**
**
**
**
PBR1.8−2.0
12 24 36
−0.2028
−0.2643
−0.2938
−0.0426
−0.0539
−0.0509
0.1481 0.1983 0.2374
10,553 10,553 10,553
**
**
**
**
**
**
PBR2.0−2.2
12 24 36
−0.2245
−0.3012
−0.3221
−0.0489
−0.0794
−0.0789
0.1428 0.1726 0.2049
8,269 8,269 8,269
**
**
**
**
**
**
PBR2.2−2.4
12 24 36
−0.2346
−0.3073
−0.3466
−0.0612
−0.0885
−0.0883
0.1430 0.1582 0.1740
6,524 6,524 6,524
**
**
**
**
**
**
PBR2.4−2.6
12 24 36
−0.2520
−0.3393
−0.3773
−0.0691
−0.1099
−0.1153
0.1408 0.1555 0.1616
5,151 5,151 5,151
**
**
**
**
**
**
PBR2.6−2.8
12 24 36
−0.2637
−0.3478
−0.3717
−0.0734
−0.1243
−0.1308
0.1241 0.1274 0.1400
4,103 4,103 4,103
**
**
**
**
**
**
PBR2.8−3.0
1224 36
−0.2565
−0.3538
−0.3920
−0.0753
−0.1181
−0.1237
0.1258 0.1542 0.1611
3,397 3,397 3,397
**
**
**
**
**
**
PBR3.0−3.2
1224 36
−0.2859
−0.3742
−0.4081
−0.0933
−0.1303
−0.1344
0.1286 0.1504 0.1747
2,745 2,745 2,745
****
**
****
**
PBR3.2−3.4
1224 36
−0.2607
−0.3567
−0.4035
−0.0699
−0.1273
−0.1395
0.1547 0.1571 0.1590
2,248 2,248 2,248
****
**
****
**
PBR3.4−3.6
1224 36
−0.2887
−0.3946
−0.4252
−0.0757
−0.1386
−0.1405
0.1331 0.1487 0.1624
1,975 1,975 1,975
****
**
****
**
PBR3.6−3.8
12 2436
−0.2881
−0.3840
−0.4392
−0.0962
−0.1557
−0.1663
0.1179 0.1125 0.1104
1,634 1,634 1,634
**
****
**
****
PBR3.8−4.0
12 2436
−0.3211
−0.4346
−0.4646
−0.1129
−0.1717
−0.1854
0.1050 0.1130 0.1298
1,411 1,411 1,411
**
****
**
****
**1%,*5%
PBRの絶対的水準を基軸とした投資戦略による対インデックス・リターン(桜井) (251)75
ER
12が54.28%,ER
24は111.99%,ER
36は179.12% となっている。リターンの不確実
性が一際高いポートフォリオと言えよう。ただし上述のように,出現機会が少ないの で,通常は投資対象となることは少ないものと考えられる。つぎに
PBR
0.2−0.4をみていく。このポートフォリオは29,159
件(約8.53%)とそれな
りの投資件数があり,主に不況時などに出現機会が多い。ER12の中央値は
12.02%,
ER
24は23.53%,ER
36は32.84% で あ る。PBR
0.4−0.6を み る とER
12の 中 央 値 は7.76%,
ER
24は12.18%,ER
36は13.38% である。
以降,PBRの水準が高くなるにつれて,対日経総合株価指数の累積月次投資収益率 は低い位置を中心に分布するようになり,PBR1.4−1.6では
ER
12もER
24もER
36もマイナ スに転じる。なおPBR
1.2−1.4からPBR
1.6−1.8では部分的に中央値がゼロという帰無仮説が 棄却されていないが,このPBR
の水準は対インデックス・リターンがプラスからマイ ナスに転じる分水嶺となっているからであろう。したがって,帰無仮説が棄却されない ことがあるのは不自然なことではない。PBR
の水準がさらに高くなると,対インデックス・リターンはますます低い位置で 分布するようになり,区分C
において最もPBR
が高水準なポートフォリオであるPBR
3.8−4.0ではER
12の中央値は−11.29%,ER24は−17.17%,ER36は−18.54% となっている。
また,第
1
四分位数も第3
四分位数を見ても,PBRが高くなるほど対インデック図表414 対日経総合株価指数累積月次投資収益率(ER36)の四分位範囲(区分C)
同志社商学 第69巻 第2号(2017年9月)
76(252)
図表415 対日経平均株価累積月次投資収益率(区分C)
PBR 経過
月数
対日経平均株価
累積月次投資収益率 n 符号検定 Wilcoxon
区分C Q1/4 median Q3/4 検定
PBR0.0−0.2
1224 36
−0.0441
−0.0070
−0.0446
0.1870 0.3780 0.5945
0.5354 1.1676 1.8273
1,966 1,966 1,966
****
**
****
**
PBR0.2−0.4
12 2436
−0.0450
−0.0302
−0.0581
0.1277 0.2583 0.3661
0.3491 0.6551 0.9873
29,159 29,159 29,159
****
**
****
**
PBR0.4−0.6
12 2436
−0.0860
−0.1085
−0.1690
0.0860 0.1380 0.1586
0.2805 0.4384 0.5867
54,241 54,241 54,241
**
****
**
****
PBR0.6−0.8
12 2436
−0.1184
−0.1620
−0.1980
0.0467 0.0748 0.0872
0.2287 0.3350 0.4314
55,744 55,744 55,744
**
****
**
****
PBR0.8−1.0
12 2436
−0.1434
−0.1956
−0.2261
0.0217 0.0349 0.0456
0.2034 0.2873 0.3649
45,445 45,445 45,445
**
****
**
****
PBR1.0−1.2
12 24 36
−0.1499
−0.2051
−0.2328
0.0144 0.0229 0.0321
0.1919 0.2772 0.3424
33,960 33,960 33,960
**
**
**
**
**
**
PBR1.2−1.4
12 24 36
−0.1663
−0.2261
−0.2431
−0.0008 0.0028 0.0127
0.1858 0.2490 0.2993
25,311 25,311 25,311
**
** **
**
PBR1.4−1.6
12 24 36
−0.1817
−0.2357
−0.2656
−0.0107
−0.0127
−0.0115
0.1730 0.2361 0.2807
18,729 18,729 18,729
**
**
** **
PBR1.6−1.8
12 24 36
−0.1927
−0.2492
−0.2697
−0.0195
−0.0237
−0.0142
0.1644 0.2355 0.2691
14,225 14,225 14,225
**
**
**
**
PBR1.8−2.0
12 24 36
−0.2024
−0.2639
−0.2856
−0.0397
−0.0493
−0.0431
0.1567 0.2084 0.2477
10,553 10,553 10,553
**
**
**
**
**
**
PBR2.0−2.2
12 24 36
−0.2241
−0.2925
−0.3114
−0.0457
−0.0702
−0.0669
0.1498 0.1840 0.2141
8,269 8,269 8,269
**
**
**
**
**
**
PBR2.2−2.4
12 24 36
−0.2356
−0.3058
−0.3385
−0.0544
−0.0791
−0.0796
0.1522 0.1707 0.1924
6,524 6,524 6,524
**
**
**
**
**
**
PBR2.4−2.6
12 24 36
−0.2489
−0.3373
−0.3669
−0.0663
−0.1024
−0.1086
0.1468 0.1658 0.1769
5,151 5,151 5,151
**
**
**
**
**
**
PBR2.6−2.8
12 24 36
−0.2613
−0.3408
−0.3514
−0.0703
−0.1125
−0.1244
0.1313 0.1429 0.1530
4,103 4,103 4,103
**
**
**
**
**
**
PBR2.8−3.0
1224 36
−0.2521
−0.3456
−0.3698
−0.0689
−0.1054
−0.1198
0.1344 0.1643 0.1761
3,397 3,397 3,397
**
**
**
**
**
**
PBR3.0−3.2
1224 36
−0.2829
−0.3618
−0.3830
−0.0835
−0.1172
−0.1305
0.1396 0.1757 0.1890
2,745 2,745 2,745
****
**
****
**
PBR3.2−3.4
1224 36
−0.2581
−0.3538
−0.3853
−0.0687
−0.1171
−0.1285
0.1663 0.1599 0.1797
2,248 2,248 2,248
****
**
****
**
PBR3.4−3.6
1224 36
−0.2873
−0.3827
−0.4038
−0.0718
−0.1305
−0.1373
0.1448 0.1508 0.1744
1,975 1,975 1,975
****
**
****
**
PBR3.6−3.8
12 2436
−0.2857
−0.3826
−0.4181
−0.0857
−0.1401
−0.1616
0.1217 0.1302 0.1219
1,634 1,634 1,634
**
****
**
****
PBR3.8−4.0
12 2436
−0.3177
−0.4240
−0.4492
−0.1159
−0.1730
−0.1838
0.1144 0.1221 0.1463
1,411 1,411 1,411
**
****
**
****
**1%,*5%
PBRの絶対的水準を基軸とした投資戦略による対インデックス・リターン(桜井) (253)77
ス・リターンは低い数値を示しており,単に中央値だけが低くなっていくのではなく,
対インデックス・リターンの分布全体が低い位置へと移動していっていることがわか る。
(2)対日経平均株価累積月次投資収益率
つぎに,対日経平均株価の累積月次投資収益率が示されているのが,図表
415
と図 表416
である。基本的に(1)と同様であり,PBR が高くなるにつれて,対日経総合 株価指数累積月次投資収益率は低い位置に分布するようになる。PBR1.2−1.4ではまだリタ ーンはプラスだが,PBR1.4−1.6やPBR
1.6−1.8ではマイナスに転換することから,その辺り が対日経平均株価で見た場合のリターンの分水嶺のようである。これも(1)の場合と 同様である。(3)対東証株価指数累積月次投資収益率
最後に,対東証株価指数の累積月次投資収益率を示しているのが図表
417
と図表4
18
である。PBRの水準が高くなるにつれて,対東証株価指数の累積月次投資収益率が 低い位置に分布している点は対日経総合株価指数や対日経平均株価の場合と同様であ る。ER12もER
24もER
36の い ず れ も が マ イ ナ ス に 転 換 す る 分 水 嶺 はPBR
1.4−1.6か らPBR
1.8−2.0付近であり,対日経総合株価指数や対日経平均株価の場合よりもPBR
が少し図表416 対日経平均株価累積月次投資収益率(ER36)の四分位範囲(区分C)
同志社商学 第69巻 第2号(2017年9月)
78(254)
図表417 対東証株価指数累積月次投資収益率(区分C)
PBR 経過
月数
対TOPIX
累積月次投資収益率 n 符号検定 Wilcoxon
区分C Q1/4 median Q3/4 検定
PBR0.0−0.2
1224 36
−0.0070 0.0312 0.0366
0.2081 0.4141 0.6299
0.5667 1.1798 1.8808
1,966 1,966 1,966
****
**
****
**
PBR0.2−0.4
12 2436
−0.0199 0.0156 0.0064
0.1432 0.2819 0.4079
0.3498 0.6665 1.0037
29,159 29,159 29,159
****
**
****
**
PBR0.4−0.6
12 2436
−0.0634
−0.0688
−0.1082
0.1004 0.1692 0.2085
0.2812 0.4522 0.6148
54,241 54,241 54,241
**
****
**
****
PBR0.6−0.8
12 2436
−0.0986
−0.1255
−0.1410
0.0616 0.1039 0.1392
0.2314 0.3548 0.4664
55,744 55,744 55,744
**
****
**
****
PBR0.8−1.0
12 2436
−0.1246
−0.1598
−0.1743
0.0341 0.0636 0.0922
0.2084 0.3102 0.4015
45,445 45,445 45,445
**
****
**
****
PBR1.0−1.2
12 24 36
−0.1332
−0.1744
−0.1839
0.0253 0.0514 0.0788
0.1997 0.2968 0.3782
33,960 33,960 33,960
**
**
**
**
**
**
PBR1.2−1.4
12 24 36
−0.1497
−0.1968
−0.1996
0.0098 0.0285 0.0578
0.1927 0.2735 0.3392
25,311 25,311 25,311
**
**
**
**
**
**
PBR1.4−1.6
12 24 36
−0.1659
−0.2110
−0.2242
−0.0024 0.0101 0.0302
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18,729 18,729
18,729 **
**
**
**
**
PBR1.6−1.8
12 24 36
−0.1797
−0.2245
−0.2296
−0.0109 0.0024 0.0270
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14,225 14,225 14,225
**
** **
**
PBR1.8−2.0
12 24 36
−0.1885
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−0.0257
−0.0050
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10,553 10,553 10,553
**
** **
**
PBR2.0−2.2
12 24 36
−0.2115
−0.2711
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8,269 8,269 8,269
**
**
**
**
**
**
PBR2.2−2.4
12 24 36
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6,524 6,524 6,524
**
**
**
**
**
**
PBR2.4−2.6
12 24 36
−0.2393
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5,151 5,151 5,151
**
**
**
**
**
**
PBR2.6−2.8
12 24 36
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−0.0600
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**
**
**
**
**
**
PBR2.8−3.0
1224 36
−0.2442
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**
**
**
**
**
**
PBR3.0−3.2
1224 36
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****
**
****
**
PBR3.2−3.4
1224 36
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2,248 2,248 2,248
****
**
****
**
PBR3.4−3.6
1224 36
−0.2760
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1,975 1,975 1,975
****
**
****
**
PBR3.6−3.8
12 2436
−0.2804
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−0.1297
0.1319 0.1430 0.1575
1,634 1,634 1,634
**
****
**
****
PBR3.8−4.0
12 2436
−0.3056
−0.4000
−0.4195
−0.1012
−0.1462
−0.1475
0.1231 0.1476 0.1745
1,411 1,411 1,411
**
****
**
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**1%,*5%
PBRの絶対的水準を基軸とした投資戦略による対インデックス・リターン(桜井) (255)79