研究論文
加工時間変動 に対 して頑健 な
ジョブショップ ・スケジュールの新 しいタイプ
松 浦 春 樹
要 旨
古典的 ジ ョブ シ ョップ ・モデル にお いて、総所 要時間が短 くかつ加 工時 間 変動 に対 して頑健 なスケジュール を生成す る方法論の基礎 として、 ノンデ ィ レ イ ・スケジュール の部分集合であ るスケジュール の新たな タイプを提案 した。
新 たな タイプは、 フ ロー シ ョップにお ける順列 スケジュール を、 ジ ョブ シ ョッ プ‑拡張 した もの となってい る。 セ ミア クテ ィブ、ア クテ ィブ、 ノンデ ィレイ、
お よび提案の各スケジュールの タイプ間 を、加 工時問が変動 した ときに個 々の スケジュール が どの よ うに推移す るか につ いて、スケジュール を総列挙す るこ とに よって調べ た。 これ に よって、新 たに提案 した タイプのスケジュールが、
他 の タイプのスケ ジュール と比較 して、実験 の範囲内において評価 尺度 に対 し て よ り効果的、かつ加 工時間の変動 に対 して よ り頑健 である ことを示 した。新 たな タイプは、変動す る環境 下で頑健 かつ有効 なスケジュール を提供す る基礎 となる。
キー ワー ド :スケジュールの タイプ、 ノンデ ィ レイ ・スケジュール 、加工時間 の変動 、スケジュールの頑健性、順列 スケジュール、FCFS
1
. は じめに本研 究の 目的は、一定のスケジュール性能 を もち、かつ生産環境 の変動 に対 して頑健 なスケ ジュール を生成す るための方法論 を提供す ることにある。古典
国際経 営フォーラムNo.19
的 ジ ョブ シ ョップ ・モデル において、総所要時間が十分 に短 く、かつ加 工時間 変動 に対 して頑健 なスケジュールの新 しい タイプを提案す る。 このタイプは、
ノンデ ィ レイ ・タイプ よ りも小 さなスケジュール集合 をなす。
スケジュー リングとは、広い意味で、生産計画の立案行為一般 を意味す るの に対 して、狭い意味では、所与の機械群 に対 して、その機械群 を利用す るジ ョ ブ群 を、与 え られた評価尺度 を満 たす よ うに順序付 けす る行為 の ことである。
本研 究では、狭 い意味でのスケジュー リングを取 り扱 う。広い意味で も、狭い 意味で も、スケジュー リングの巧み さは、オペ レー シ ョン レベルでの企業競争 力の要因 となってい る。 スケジュー リングが拙劣であれば、生産現場 は混乱 し、
納期遅れ が頻発 し、企業の競争力の低 下を招 き、最終的には利害関係者全体 に マイナ ス影響 を及ぼす。
この よ うに重要なスケ ジュー リング問題 であるが、静的な環境 を扱 うもの と 動的な環境 を前提 とす るものがある。静的な環境 を前提 とす る問題 で さえも、
理論的には、後述す る計算の複雑性 の観 点か ら、実務的 には、考慮すべ き要関 が多いために、状況 に最 も適合 した方策 を数学的に厳密 に導 くことは難 しい と されてい る。
生産 システ ムを取 り巻 く環境 には、計画 内外 の変動がつ きものである。 ある スケジュー リング問題 が前提 とす る環境 も、現実の生産 の場 では時々刻 々変化 す る と考 えるのが正 しい。 これ らの変動 には、加 工時間の変動 、加 工経路の変 更、納期 の変更、新 たなオペ レー シ ョンあるいはジ ョブの追加 な どがある。 そ の原因は、見積 も り誤差、機械や作業者 の状況、加工方法の変更、手直 しの発 生、仕様変更、社 内外か らのジ ョブ優先度 の変更な どである。 この よ うな環境 を前提 とす るのが動的なスケジュー リング問題 である。
本研 究は、加 工時間が変動す る動的な環境 下でのスケジュー リング問題 を対 象 とす る。 ここで、 「加 工時間の変動」 とは、実行時 に現 実に必要 となった加 工時間が、スケジュール作成時に使 った加 工時間 と、見積 も り誤差や機械 故障 が原 凶 となって、食い違 うことを想定 してい る。 ランダムシ ョップにおいて、
スケジュールの統計的性質が加 工時間の変動 に対 してば らつかないスケジュー ル のタイプを求 め、計画外の変動 に対 して柔軟 なスケジュールの生成手段 を提 供す るための基礎 を提供す る。
21 0
研 究論 文●加 工時間変動 に対して頑健なジョブショップ ・スケジュールの新 しいタイプ
本論文の構成 は、以下の とお りである。 スケ ジュー リング問題 と本研 究の位 置づ けを明示 した上で、有望 な新 しいスケジュールの タイプを提案す る。 この タイプのスケ ジュール が、評価 尺度 が良好 なスケ ジュール を効率良 く拾い出 し てお り、かつ加 工時間の変動 に対 して頑健 であることを、実験的に示 している。
2
.スケジュー リング問題 と本研究の位置づけスケジュー リング問題 を初 めて系統的に取 り扱 お うとしたのは、ガ ン トとさ れ る
[9
]。 ガン トは、機械 ごとの ジ ョブの進行状況 をひ と目で把握 で きる図を、科学的管理法な どによる米国の生産革新 の時代、1
91 0
年代 に開発 した。 これ は ガン トチ ャー ト (図1(b)、(C)) として、今 日も実務 に様 々な形 で活用 され て い る。 スケ ジ ュー リン グ問題 の理 論 的研 究 の 口火 を切 った の は 、1 954
年 のJ 。hns on
論文[ 5
]である。 1967
年 には、Conway
ら[3
]に よってそれ までの成果が ま とめ られ た。Johns on
以後 、膨 大 な量 の論 文が書かれ て今 日に至 ってい る。しか しなが ら、 これ らの理論的論 文に よる現実のスケ ジュー リング問題 に対す る貢献 は薄い と言われ てい る。理論的には、1
970
年代 に生 まれ た計算の複雑性 の理論 に よって、非常に簡単な場合 です ら、厳密解 を実際 ヒ有効な時間内に求 めることがで きない ことが明 らかになった。スケジュー リング問題 の理論的研 究は、主 として静的問題 に対 して、ある評 価尺度の下での最適解 を厳密あるいは近似的 に求 める方法論、す なわちアル ゴ リズムを提供 しよ うとす るアプ ローチ と、静的お よび動的問題 に対 して所与の 条件 の下で ヒュ‑ リステ ィクスの性能 をシ ミュ レー シ ョンで検証 しよ うとす る アプ ローチの2つ に大別 できる。 また、理論的基礎 的研 究に加 えて、人工知能 な どの コンピュー タ科学の成果 に基づいて、スケ ジュー リングシステムを構築
しよ うとす る応用的研 究 も、盛 んに行 われ てい る。
スケジュー リング問題 は、機械 とジ ョブの性格 か ら、フ ロー シ ョップ問題 と ジ ョブシ ョップ問題 に大別 され る。 フ ロー シ ョップ とは、個 々のジ ョブの機械 利用順序が、ジ ョブ群 で同一であるよ うな、機械 とジ ョブの職場 (シ ョップ) を 言 う。 また、 ランダムシ ョップ とは、機械利用順序がジ ョブ ごとに相異なる よ うな機械 とジ ョブの職場 を言 う。 ランダムシ ョップのスケ ジュー リング問題
国際経 営フォーラムN().19
は、最適解 を求 めよ うとす る とき とりわ け困難度が高い。
先に延べた よ うに、生産 システムを取 り巻 く環境 は時 々刻 々変化す る。 した が って、変動前 にある評価尺度 の下で最適 あるいは これ に準ず るスケジュール も変動後 に保証はな くな る。 この よ うな状況 に対す る考 え方 には、2とお りが ある。 第一は、変動が起 きるたびに再 スケジュール を行 うとの立場である。 こ の立場 の背景 には、現在 も進行 中の コン ピュー タのハー ドウェアお よび ソフ ト
ウェアの急速 な進 歩がある。 第 二は、変動 に対 して頑健 なスケジュール あるい はスケジュー リング方式 を用意 しよ うとす る立場 である。
第二の立場か らその利 点 を述べれ ば、 とくに人が介在す る生産 システムの、
現場 に与 える混乱が よ り少 ない ことにある。頻繁 に起 きる人 きなスケジュール 変更は、前提 である変更 を可能 にす る柔軟性 に富む機械設備 ‑の高額投資の必 要性 、結果 としての仕掛在庫 の増大、準備段取 り作業の新規発生 による効率の 低 下、作業担 当者 の見通 し ・心算 を破壊す ることによる計画‑の不信感 、 シス テムに使 われ てい る との疎外感 な どを生む。第二の立場 では、 この よ うな弊害 を避 けることがで きる。 第二の立場 か らのスケジュー リング研 究[
6
]、[7
]は、従来少 なか ったが、柔軟性 の研 究[
1 0
]が盛 んにな るの と連動 した ものか、近年 になって急速 に立ち上が って きた。 この分野 を詳細 にま とめたサーベイ論 文 としてAyt
ug
ら[1
]がある。本研 究は、第二の立場 を背景 とす る0生産現場 の環境が常に変動す ることを考 えると 「最適 な」単一のスケジュー ル を生成す る能力 を見 るよ りも、頑健性 を重視す る必要がある。頑健性 はアル ゴ リズムの生み出す スケジュールの統計的性質がば らつかない ことにかな りの 程度還元で きる。 この意味で、生み出す スケジュールの タイプの統計的性質 を 巨視的 に研 究す る必要がある。換 言すれ ば、詳細 に規定 され た環境 での最適 ス ケジュールではな く、変動す る環境 の中での良好なスケジュール は統計的 に頑 健 な性格 を もつ必要がある。 た とえば、本研 究で対象 とす るよ うに、加 工時間 が 当初の計画時 よ りも大 きく変動 して も、 当初 スケジュール を維持 で きる可能 性 が よ り高い。
21 2
研 究 論 文 ● 加 工 時 間 変 動 に対 して頑 健 なジョブ ショップ ・スケジュー ル の新 しい タイプ
3.
スケジュールのタイプBa ke r [2
]はスケジュール の タイプ として、セ ミア クテ ィブ( sem卜ac t i ve)
、 ア クテ ィブ( Ac t i ve)
、 ノンデ ィ レイ( Nondel a y)
の3
つの タイプを定義 してい る。 これ らの タイ プのスケジュール例 をガン トチ ャー トにて図1 ( b) ( C)
に示す。図 1
( a )
に示す とお り、 この例題 では、職場 はM lか らM 3までの 3種類 の機 械 か らなる。 スケジュール の対象 とな るのはJlか らJ3までの 3つの ジ ョブで ある。いずれのジ ョブ も3
つのオペ レー シ ョンか らなってお り、各オペ レーシ ョ ンの完了に必要な加工時間は加工時間表に与え られた とお りである。各オペ レー シ ョンに必要 な機械 は、加 工経路表 に示 され た とお りである。セ ミア クテ ィブ ・スケジュール は、時間原点 を左端 とす るガ ン トチ ャー ト上 で、割 り当て られ てい る任意のオペ レー シ ョンにつ き、他 のオペ レー シ ョンを 右 か ら左 に飛 び越す よ うな移動
( Gl obalLef Ls hi f t)
を禁止す るが、他 のオペ レー シ ョンを飛 び越 さない限 り全 てのオペ レー シ ョンを左 に詰 め る( Local Le氏‑s hi
ft) よ うな実行 可能 なスケジュール であ る。 図1(b
)は、セ ミア クテ ィ(a)ジョブショップのデータ
時間 ‑
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
一軒 「
(b)セミアクティブ・スケジュールの例 (総所要時間・9)
時間 ‑
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
123MMM機械
(C)アクティブかつノンディレイ・スケジュールの例 (総所要時間:7)
6 7 8 91011121314 総所要時間 一
匹 ;≡ヨァクテイブかつノンディレイ・スケジュール
(d)総所要時間の頻度分布
図1 ガン トチャー トによるスケジュール例 と総所要時間の分布
国際経営フォーラムNo.19
ブ・スケジュールの例で、ある。図
l(b
)において、たとえば、 ]2
の第1
オベレー ションは、M 2
に割り当てられたJ1
の第2
オベレーションを飛び越して右に 移動可能なのである。アクティブ・スケジュールは、ガントチャート上で左へのオベレーション飛 び越しの余地を残さないスケジュールである(図
1( c
))。ノンディレイ・ス ケジュールは、加工可能なオベレーションがある場合、必ず加工に着手し、機 械を空けない実行可能なスケジュールで、ある。アクティブタイプのスケジュール集合もノンディレイタイプのスケジュール 集合も、セミアクティブタイプのスケジュールの部分集合をなす。アクティブ タイプのスケジュール集合は、意味のない遊休時間を含まない全てのスケジュー ルの集まりであり、必ず最適スケジュールを含む。ノンディレイタイプのスケ ジュールの集合は、必ずしも最適スケジュールを含まない。
アクティブタイプのスケジュール集合は、必ず最適スケジュールを含む集合 であるが、総数があまりにも大きく、総列挙によりこの中から最適スケジュー ルを探すことは実際問題として不可能である。ジョブ、数を
n
、機械台数をm
と するときランダムショップの総列挙数は、最大(n ! )
m となる。古典的ジョブ ショップ問題では、機械1
台につきn!のジョブの順列組み合わせが発生するか らである。実際には、加工順序の制約が入るため実行可能なスケジュール総数 は、これより少なくなる。これに対して、ノンデ、イレイタイプのスケジュール 集合は、必ずしも最適スケジュールを含まないが、より小さな集合で、この中 には実際問題として良いスケジュールが含まれる。ノンディレイタイプのスケ ジュール集合を探索の対象にすることが実務的には合理的な選択肢のーっとさ れている(図1( d
))。図
2
に、スケジュールのタイプと最適解の集合関係を示す。ランダムショップの現実に意味をもっスケジュールのタイプは、以上のよう にアクティブもしくはノンディレイのスケジュールであるとして、セミアクティ ブタイプのスケジュール集合については、多くの場合実際的意味がないとされ、
従来はほとんど取り扱いの対象とされてこなかった。本研究では、加工時間の 変動に対するスケジュールの頑健性を調べるために、セミアクティブタイプの スケジュールも本格的に取り扱っている。
2 1 4
研 究論 文●加 工時 間変動 に対して頑健なジョブショップ ・スケジュールの新しいタイプ
図
2
スケジュールのタイプと最適解の集合関係3.N‑ FCFS
スケジュールの提案 とその意義スケジュール を決 め る際 の候 補の集合 として定評のあ るノンデ ィ レイ タイプ のスケ ジュール集合 であるが、集合要素数 が まだまだ大 きい点 に限界が ある。
た とえば、著者 が行 った
4
機械5
ジ ョブでのスケジュール総列挙実験 に よれ ば、セ ミア クテ ィブ ・スケ ジュール数 が約
1 0
万、ア クテ ィブ ・スケジュール数 が約1 000
、 ノンデ ィ レイ ・スケ ジ ュール が約200で あ った。 前述 の とお り、機械 台 数m、 ジ ョブ数nの ときの 可能 な順 列組 み合 わせ数 が( n
!) ∩‑で あ る こ とを考慮 に入れ る と、機械 台数 あるいは ジ ョブ数 が増 えるに従 って、総 スケジュール数 は指数 関数的 に増 えることか ら、 ノンデ ィ レイ タイプのスケジュール集合 よ りも、 よ り小 さい集合 を与 えるスケジュール の タイプが必要 とされ る。
一方 、 フ ロー シ ョップのスケ ジュール の タイ プ として、順列 スケ ジュールが あ る。順列 スケ ジュール は、第
1
機械 のスケ ジュール を第2
機械 以降で もその まま踏襲す るスケ ジュール の集合 であ る。 フ ロー シ ョップでは、 これ を探 索の 対象 にす る こ とが合 理 的 な選 択肢 とされ てい る (た とえば[4]参照)02
機械 問題 では、あ らゆる評価 尺度 の最適 スケ ジュール を含 み、3
機械 問題 では、総 所要時間の意味での最適 スケジュール を含 む ことが証 明 され てい る (た とえば[2
]参照)。国際経営フォーラムNo.19
フロー シ ョップは ランダムシ ョップの特殊 な場合であるので、フロー シ ョッ プの順列 スケジュール に相 当す るスケジュール は ランダムシ ョップで何か と考 える。 順列 スケジュール をランダムシ ョップに投影す る と、各 ジ ョブの第1オ ペ レー シ ョンだけにつ きノンデ ィ レイ総列挙 スケ ジュール を生成 し、第2オペ レー シ ョン以降は、デ ィスパ ッチ ング ・ルールの一つであるFCFS(
Fi r s tCome
Fi r s tSe r vi c e)限定のスケ ジュール を生成す ることに相 当す る。 この方法で生
成 され るスケジュール をノンデ ィ レイーFCFSスケ ジュール (以 下N‑FCFSスケ ジュール) と呼ぶ ことにす る。N‑FCFSタイプのスケジュール集合は、ノンデ ィ レイタイプのスケジュール集合の部分集合である。FCFS
で生成 され るスケジュー ル は、 ノンデ ィ レイだか らである。N‑FCFS
スケ ジュール での総列挙数 は、各 ジ ョブが第1
オペ レー シ ョンだ け か らなる としたジ ョブシ ョップでの総列挙数 とほぼ同等 になる。第1オペ レー シ ョンだけの順序付 けが決 まると、各機械‑の同時到着 (ジ ョブのオペ レー シ ョ ン加 工同時終 ア)の例外 を除けば、残 りの順序付 けが一意 に決 まるか らである。4.
数値実験モデル4‑ 1
ジ ョブシ ョップの条件古典的 ジ ョブシ ョップ ・モデル を実験対象 と した。古典的 ジ ョブ シ ョップ ・ モデルでは、全 てのジ ョブが職場 を構成す る全 ての機械 オペ レー シ ョンを一回 ずつ必要 とす る。 したが って、ジ ョブが必要 なオペ レー シ ョン数 は機械 台数 に 等 しい。職場 の型 は、ランダムシ ョップである。
前述の よ うに、機械 台数 、 ジ ョブ数が増 える とスケジュール総数 は、指数 関 数的に増 える。 したが って、実験 が意味 を もつ最小 の機械 台数 、 ジ ョブ数 とし た。 す なわ ち、機械 台数mを
3
、 ジ ョブ数n
を4
と した。 ジ ョブの加 工時間は 平均1の指数分布乱数 か ら発生 させ た数値 を切 り上げた整数値 に従 うもの とし た。古典的 ジ ョブ シ ョップ間是副こおいて、セ ミア クテ ィブ ・スケジュール の全体 集合は、与 え られ たジ ョブの加 工経路条件 によ り一意 に決 ま り、ジ ョブの加 工 時間に関係 しない[8]。ジ ョブの加工時間によって、セ ミアクティブ ・スケジュー 216
研 究論文●加工時間変動に対して頑健なジョブショップ・スケジュールの新しいタイプ ル の部分集合であるア クテ ィブ ・スケジュール集合、その部分集合 であるノン デ ィ レイ ・スケジュール集合 、 ノンデ ィ レイ ・スケジュールの部分集合 である
N‑FCFS
スケジュール集合の要素が変わる。ジ ョブシ ョップの条件 と、スケジュー ル集合、評価尺度 の関係概念 を図3に示す。
4‑2
数値実験 の 目的数値 実験 は、 2段階の解析 か らなってい る。 これ ら解析 の意図は、以下の と お りであ る。 解析 Ⅰでは、 ノンデ ィ レイ ・スケ ジュール あ るいは新提案 のN‑
FCFS
スケジュール の集 合 が、総所 要時間の意味で、最適値 あ るいはその周辺 のスケジュール を小 さく集 めた とて も良い集 合であることを実験的に示す。解 析 Ⅱでは、加 工時間が変動す る前の ノンデ ィ レイ ・スケジュール あるいは新提 案のN‑FCFSスケジュールは、加工時間が変動 した後 もノンデ ィレイ ・スケジュー ル あるいは新提案 のN‑FCFSスケジュール である 可能性 が高い ことを示す。解 析 Ⅰお よび Ⅱの結果 よ り、 ノンデ ィ レイ ・スケ ジュール あ るいは新提案 のN‑
FCFS
スケ ジュールは、総所 要時間の意味で良好 かつ加 工時間変動 に強 いスケ ジュール であることを示そ うと してい る。4‑3
解析 Ⅰ :総列挙 によるノンデ イ レイおよびN‑ FCFS
の優位性セ ミアクテ ィブ ・スケジュール を総列挙す ることによって、 ノンデ ィレイ ・ スケジュールお よびN‑FCFSスケジュール の優位性 を確認す る数値 実験 を行 っ た。筆者 の知 る限 り、従来の研 究による、 ノンデ ィ レイ ・スケジュール の有効 性 の指摘 は、ア クテ ィブ ・スケジュールか らのサ ンプ リング結果 に基づいてお り、本研究の よ うにセ ミア クテ ィブ ・スケジュール を総列挙す るものではない。
加 えて、本研究では、N‑FCFSスケジュール を提案 し、有効性 を検証 してい る。
総列挙に際 しては、アクテ ィブ、 ノンデ ィレイの タイプのスケジュール につ いては、Ba
ke r [2
]によるアル ゴ リズムを使用 した。セ ミアクテ ィブ ・スケジュー ル については、著者 の調査の範囲において、重複 な く総列挙す るアル ゴ リズム は提案 されていない。 この理由は、従来の研究では、セ ミアクテ ィブ ・スケジュー ル を総列挙す ることに意義 を認 めなかった ことにある と考 え られ る。 本研 究で は、加工時間の変動によるタイプ間の移動 を問題 にす るので、セ ミアクテ ィブ ・国際 経 営 フォーラム Nn.19
スケジュール を総列挙す ることに意義 が ある。 したがって、十代 田[
11
]に よる 順列総列挙アル ゴ リズムで可能性 のある加 工順序 を発生 させ 、実行可能 な ものをセ ミア クテ ィブ ・スケジュール とした。
′ジョブショップの㌧
条件
ジョブの加工時間
ジョブの加工経路 r
嘩く優先順q),ili・読
アクティブ スケジュールの集合
ノ ンデルイ
\、\‑‑ろケジュールの集合‑‑
セミアクティブ スケジュールの集合
個 々の特定 やケジュール/
図
3
ジ ョブショップの条件、スケジュールのタイプ、特定スケジュールの関係 優位性 を示す評価尺度 としては、古典的 ジ ョブシ ョップ問題 で最 も一般的な 総所要時間 (着手か ら全てのジ ョブが完了す るまでの時間) と した。4‑4
解析Ⅱ :
加工時間変動 によるスケ ジュールのタイ プの安定性ノンデ ィ レイ と
N‑FCFS
タイプのスケジュール の加 工時間変動 に対す る頑健 性 を調べ ることを 目的 として、加工時間が変わ った場合 に、個 々のスケジュー ルが、セ ミアクテ ィブ、アクテ ィブ、 ノンデ ィレイ、N‑FCFSのスケジュール ・タイプ間を移動す る割合 を実験的に調べた。 この実験 の 目的は ノンデ ィ レイ、
N‑FCFS
のスケ ジュール が 一般的 に、加 工時間の変動 に頑健 で あることを示す ことにある。ジ ョブの加 工順序 はその ままに して、加 工時間だけを再設定 した。指数乱数 よ り発生 させ た最初の加 工時間を変動前 とし、次に同様 に発生 させ た加 工時間 を変動後 の加 工時間 とした。変動前 の加 工時間に基づいて、セ ミア クテ ィブ、
ア クテ ィブ、ノンデ ィ レイ、N‑
FCFS
のタイプ別 に列挙できる全てのスケジュー ル を発生 させ た。変動後の加 工時間について も同様 に全 てのスケジュール を発 218研究論文●加1'̲時間変動に対して頑健なジョブショップ・スケジュールの新しいタイプ
加工時間 : 変動前
セミアクティブ スケジュール アクティブ スケジュール
ノンディレイ スケジュール
N‑ F CF S
スケジュール加工時間 : 変動後
図4 加工時間変動後の集合 内特定スケジュールのスケジュール ・タイプ間推移 生 させ た。 その上で、変動前 の各 タイ プの スケジュール が変動後 には どの タイ プに移 ってい るか を実験 的 に調 べた。 図 4に この考 え方 を示す。
実験 回数 は、計算時 間 Lの制約 か ら、 ジ ョブの加 工順 序制約 につ いて2とお り、加 工時間は変動 もジ ョブの加 工順序制約 一つ につ き 2とお りと最小規模 の 実験 と した。
5.
実験結果5‑ 1
解析 Ⅰ :総列挙 によるノンデ イ レイ およびN‑ FCFS
の優位性表1に例題 につ いての各 タイプの スケ ジュール総数 と総所要時間の解析結果 を示す。総所要時間分布 については、最小値 、最 人値 、平均 と標 準偏差 をま と めてい る。 表
1よ り、 ノンデ ィ レイお よびN‑FCFS
タイ プの スケ ジ ュール集 合 とも、総所要時間の大 きな スケジュール を除外 した総所要時間最小 スケ ジュー ル を選ぶ のに適 した集合 となってお り、 しか も、 この例 では ノンデ ィ レイお よ びN‑FCFSタイ プのスケ ジュール集合 に総所 要時 間最小 の スケ ジュール が含 ま れ てい るこ とがわか る。 この事 実 は ノンデ ィ レイ 、 とくにN‑FCFSタイ プのス円際経営 フォー ラム \
( ) . 1 9
表1 タイプごとのスケジュール総数 と総所要時間分布 加工時間
A
による セミアクティブ アクティブ ノンデイレイN‑FCFS スケジュール総数1 860 49 8 3
総所要時間の最小値
9 9 9 9
総所要時間の最大値
25 1 9 1 0 9
総所要時間の平均1 8. 38 1 2. 90 9. 5 0 9. 00
総所要時間の標準偏差3. 08 2. 89 0. 5 0 0. 00
加工時間B
による セミアクティブ アクティブ ノンデイレイN‑FCFS スケジュール総数1 860 34 1 8 5
総所要時間の最小値
6 6 6 6
総所要時間の最大値
1 5 ll 7 6
総所要時間の平均
1 0. 88 7. 38 9. 36 6. 00
共通加工経路
1 2 3
J1 4 3 2 J2 2 1 1 J3 4 1 1 J4 2 1 3 1 2 3
J1 1 1 2 J2 1 1 1 J3 2 1 2 J4 1 1 1 1 2 3
J1 1 2 3 J2 2 1 3 J3 3 1 2 J4 2 3 1
ケジュー ル集 合は、 スケ ジュー ル を選 ぶ 際 に非 常 に効率 の良い集 合 で あ る こ と を示す。機械 台 数お よび ジ ョブ数 が も う少 し大 きい場 合 につ いて、追加 実験 を 行 って い るが 、 以 上の結 果 は変 わ らない。 また 、 表
( a)ら( b)
も同一加 工経 路 で 加 仁時間 だ けが異 な る場 合であ るた めに、先 に述 べ た よ うにセ ミア クテ ィブ ・ ス ケジュール集合 は共通 で あ り、 したが ってセ ミア クテ ィブ ・スケ ジ ュール総 数 は同一 にな ってい る。5‑2
解析Ⅱ :加 工 時間変動 によるスケ ジュール の タイ プの安定性表1
( a )
を変動 前 、 表1(b)を変動 後 とす る ときの 、 変更 前 の ス ケ ジ ュール ・ タイプか らの推移 数 を表2( a )
に、 これ の%表示 を表2(b)に示す。表3は、 ジ ョ ブの加 工順 序制約 につ いて2とお り、加 工時 間は変動 もジ ョブの加 工順 序制約一つ につ き2とお り、計4とお りに よる実験 に よる推 移数 (%) の平均値 で あ
220
研究論文●加 工時間変動 に対して頑健なジョブショップ・スケジュールの新しいタイプ 表2加工時間変動後のスケジュール ・タイプ間推移 ((a)実数、(b)%表示)
加工時間変動前 加工時間変動後
スケジュールクラス セミアクティブ アクティブ ノンデイレイ N‑FCFS
セミアクティブ 1860 34 18 5
アクティブ 49 ll 4 2
ノンデイレイ 8 5 4 2
N‑FCFS 3 2 2 2
加工時間変動前 加工時間変動後
スケジュールクラス セミアクティブ アクティブ ノンデイレイ N‑FCFS セミアクティブ 100.0 1.8 1.0 0.3 アクティブ 100.0 22.4 8.2 4.1 ノンデイレイ 100.0 62.5 50.0 25.0 N‑FCFS 100.0 66.7 66.7 66.7
表3 加工時間変動後のスケジュール ・タイプ間推移 (4実験による平均、%表示)
加工時間変動前 加工 時間 変動後
スケジュールクラス セミアクティブ アクティブ ノンデイレイ N‑FCFS セミアクティブ 100.0 2.8 1.2 0.3
アクティブ 100.0 34.1 20.5 8
. 4
ノンデイレイ 100.0 50.1 36.9 16.5 N‑FCFS 100.0 66.0 58.8 49.2る。
表 2と表 3では、縦 軸が変動前 の タイフ∴ 横軸 が変動後のス ケジュール ・タ イ プ を表す。 た とえば、表2(b)では、変動 前にN‑FCドSタイ プの スケジュール 集 合 内で あ った スケ ジュー ルが 、 変動後 にN‑FCFS集 合 内 に残 る割 合が66.7%
であ った こ とを示す。 変動 前 と変動後 のセ ミア クテ ィブ ・スケジュール集 合は 同一 であ るので、変動前の各 タイ プの スケジュール集 合か ら変動後のセ ミア ク テ ィブ タイ プ ・スケ ジュール集 合‑ の推 移 は、 100%とな る (表2(b)、表3)。
表2お よび表3よ り、 ノンデ ィレイ とN‑FCFSか らノンデ ィ レイ も しくは N‑FCFSタイプのスケ ジュール集合‑ の推移割 合 は相 対的 に高い ことがわか るU
国際経営フォーラムNo.19
これ は、実験 Ⅰに よる、 ノンデ ィ レイ も しくはN‑FCFSタイプのスケ ジュール 集 合が良いスケジュールの候補の小 さな集合 として有効である事実 と併せ ると、
総体的 に ノンデ ィ レイ と
N‑FCFS
タイプのスケジュール が総所要時間の意 味で 良好 かつ加 工時間変動 に対す る頑健性 を有す ることを示す ものである。6.
おわ りに本研 究では、環境変化 に対 して頑健性 の高いスケジュール生成方法 を、でき るだけ特定の評価尺度 に依存 しない形 で検討す ることを考 えた。対象 は、古典 的なランダムタイプのジ ョブ シ ョップ とした。環境 変化 として、加 工時間の変 動 を取 り上げた。加 工時間が変動す る後先に、セ ミア クテ ィブ、ア クテ ィブ、
ノンデ ィ レイ、新 た に提 案す る
N‑ドCFS
(ノンデ ィ レイーFl l CドS)
タイプの各 ス ケ ジュール集合か ら個 々のスケ ジュールが どの よ うに各集合 間を移動す るかを 総列挙法 に よ り実験的に調べた。その結果 、 ノンデ ィレイお よび新たに提案 し たN‑FCFSタイ プのスケジュール集合 が、加 工時間の変動 に対 して安定度 の高い集合 であることが明 らかになった。 両集合 は、た とえば総所要時間の小 さい スケジュール を コンパ ク トにま とめた集合 であるこ とも総列挙法 に よ り確認 し た。 これ らの結果 の意 味す る ところは、 ノンデ ィ レイお よび新 た に提案 した
N‑FCFS
内のスケ ジュール は、総所要時間の意 味で良好 かつ加 工時間変動 に対して頑健 である可能性 が高い ことである。
本研 究 に よ り得 られた成果 を要約すれ ば、以下の とお りである。
(1)評価尺度 として総所要時間 を例 に とり、セ ミア クテ ィブ、ア クテ ィブ、
ノンデ ィレイの各 スケジュール ・タイプについて、 タイプのスケジュール を総 列挙す ることによって ノンデ ィ レイ集合 が、評価 尺度が良好かつ よ り小 さな集 合であることを明確 に示 した。
(2
) ノンデ ィ レイ集合 よ りも小 さな、 フ ロー シ ョップ ・スケジュー リングに お ける順列 スケ ジュール に相 当す るN‑FCFS(ノンデ ィ レイ11 ' cFS)
タイプの スケジュール を提案 し、総所要時間の意味で良好な評価尺度の スケジュール集 合 であることを総列挙 によ り実験的に示 した。(3
)個 々のスケジュール について、環境変化 に対す る頑健性 を評価す るので2 2 2
研究論文●加工時間変動に対して頑健なジョブショップ・スケジュールの新しいタイプ はな く、スケジュール の タイプ全体 について環境変化 に対す る頑健性 を評価す ることを試みた。尺度 として、スケジュールの環境条件 に変化 が起 きた ときに 変化前のスケジュールのあるタイプ内のスケジュールが、変化後にどのスケジュー ルのタイプに遷移す るかを考 えた。具体的 には、加 工時間が変動す る ときに、
スケジュール の タイプ間の推移 を総列挙 に よって実験的に調べた。
(4)その結果、 ノンデ ィ レイ ・スケジュールが加 工時間の変動後 も、ノンデ ィ レイ ・スケ ジュール集 合 に とどま る割合 が よ り高い こ とを示 した。N‑FCFSス ケジュール について も同様 な結果 を得た。 これ は、計画時に予定 され た加 工時 間が実行時の加 工時間 と食 い違 う場合 に、 ノンデ ィ レイ あるいはN‑FCFSスケ ジュールであれ ば、評価尺度 の変動が小 さい頑健性 の高い スケジュールが得 ら れ る 可能性 が高い ことを示す。
今後の課題 として、実験規模 を大 きくす ることによる結果の信頼性 の向 Lと、
ジ ョブシ ョップの規模 が大 き くなった場合 に、本研 究に よ り得 られ た知見が ど の程度維持 できるかの検証 が必要である。 また、頑健性 が高 く、評価尺度の良 好 な部分 を拾い出せ 、 ノンデ ィ レイ タイプのスケジュール集合の部分集合 であ る、本研究で新 た に提案 したNJT
CFS
タイプのスケ ジュール集合 について、効 率の良い列挙方法 あるいは ヒュ‑ リステ ィクスの開発 が待 たれ る。参考文献
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