ii
〈論 説〉
地 球 温 暖 化 と 「く る ま社 会 」
白 石 忠 夫
は じ め に
気 象 庁 の 調 査 に よ る と1990,91年 の 地 球 の 気 温 は史 上 最 高 を 記 録 し た。 過 去100年 の 地 球 の 気 温 は約0.5度 上 昇 した が,1980年 代 以 降 の 上 昇 が 際 立 って い る(図1参 照)。1990,91年 の 気 温 の 上 昇 は そ う した 動 き の 延 長 線 上 に起 き た 現 象 と い え よ う。 地 球 の気 温 の 上 昇 を 促 す 要 因 と され る温 室 効 果 ガ ス ・CO2の 濃 度 は毎 年0.5%ず っ 増 加 して お り,年 間 の 濃 度 上 昇 は1.5な い し1.8PPMに 達 して い る。1960年 か ら1990年 ま で の30年 間 に CO2の 濃 度 は315PPMか ら350PPMへ と35PPM 増 加 し た が,こ れ は1760年 か ら1960年 ま で の 200年 間 の 増 加 量 と 同 じで あ っ た 。 現 状 の ま ま で 推 移 す れ ば そ れ は2030年 に は560PPMに 増 加 す る と予 測 さ れ て い る。近 年 のCO2の 増 加 は そ う し た予 測 に ほ ぼ 沿 って い る。1980年 代 か ら続 く地 球 の気 温 上 昇 は こ う した 温 室 効 果 ガ ス の増 加 に よ る
もの と す る の がIPCC(気 候 変 動 に 関 す る政 府 間 パ ネル)の 一 致 した 見 方 で あ る。今 後 の 長 期 間,こ の よ う なCO2の 濃 度 が 上 昇 し続 け ば,IPCCが 予 測 して い る よ う な地 球 の気 温 の 大 幅 な 上 昇 が い ず れ は避 け られ な い で あ ろ う。 だ が 地 球 の 気 温 の 上 昇 は遠 い 将 来 に 海 面 の 上 昇 を も た らす に 止 ま ら な い 。 も っ と身 近 い と こ ろ で そ の 影 響 は 出 始 め て い る との 説 が あ る。 近 年 の 世 界 各 地 に起 き て い る台 風 の 大 型 化 が そ れ で あ る。 米 国 の マ サ チ ュ ー セ ッ
ツ工 科 大 学 の エ マ ニ ュ エ ル教 授 の 理 論 に よ る と台 風 は そ れ が 発 生 す る熱 帯 海 域 の 表 面 温 度 が26.5 度 以 上 で あ る場 合 に 限 られ る,表 面 温 度 が 上 昇 す
れ ば す る ほ ど 大 型 化 す る と い う。 日 本 で も1991 年 以 来 台 風 は大 型 化 して い る し,米 国 カ リブ海 の ハ リケ ー ン,ベ ンガル湾 を襲 うサ イ ク ロー ンも大 型 化 した もの が 増 加 して い る。
海 上 保 安 庁 水 路 部 の 調 査 に よ れ ば 比 較 的 エ ル ニ ー ニ ョの 影 響 を うけ な い安 定 した 太 平 洋 の 中 緯 度 の海 域,東 経144度,北 緯18‑35度 の海 域 の 深 さ300メ ー トル ま で の 表 層 温 度 は1984年 か らの 8年 間 に 年0.085度 ず っ 上 昇 して お り,計0.7度 上 昇 した と い う(1991年9月16日 発 表)。 こ の 結 果 に つ い て 同 庁 は 「地 球 温 暖 化 が 海 水 温 の 変 化 か ら も立 証 さ れ た 」 と判 断 して い る。1991年9月 末 に 九 州,中 国 か ら北 陸,青 森 を襲 って 膨 大 な 数 の 樹 木 を 倒 し,空 前 の りん ご の 落 下 被 害 を も た ら した 台 風19号,今 年9月 は じめ の 台 風13号 は,そ の 勢 力 は異 常 に大 き く,そ れ ぞ れ2,30年 に1度 以 下 の頻 度 で 襲 来 す る大 型 台 風 で あ った 。1991年 の 台 風19号,1993年 の13号 の 上 陸 時 の 中 心 気 圧 は そ れ ぞ れ940ヘ ク トパ ス カ ル,930ヘ ク トパ ス カ ル で あ っ た。
1992年 米 国 を 襲 っ た ハ リ ケ ー ン ・ア ン ド リ ュ ー ス や1991年4月 バ ン グ ラ デ ィ シ ュ を 襲 っ て13万 人 以 上 の 死 者 を 出 した サ イ ク ロ ン も極 め て 大 き な勢 力 を 持 っ た 大 型 台 風 で あ っ た。 世 界 各 地 で 起 きて い る こ う し た 台 風 の 大 型 化,そ れ と関 連 した 異 常 気 象 は か っ て 例 を 見 な い ほ ど の 状 況 で あ る だ け に原 因 が 何 で あ る か 究 明 が 急 が れ る と こ ろ で あ る。 しか しs日 本 の 気 象 庁 は 台 風 発 生 の メ カ ニ ズ ム の 解 明 を 行 っ て い な い 。IPCCは 台 風 に 対 す る 影 響 を 否 定 も肯 定 もせ ず,分 か らな い,と
して い る。 だ が,気 象 庁 が 地 球 温 暖 化 問 題 に対 処
一i2 地 球 温 暖 化 と 「く るま 社 会 」
図1陸 上 気 温 と海 面 水 温 を 組 み 合 わ せ て 求 め た1861〜1991年 の 平 均 温 度 偏 差 (偏 差 は1951〜1980年 の 平 均 値 に 対 して 求 め ら れ た もの)
350
340
320
300
0.6
0.4
0.2
0
一 〇.2
一 〇.4
1880年1900 1920 1940 1960
!・
18701890191019301950
出 所:気 象 庁 編 『地 球 温 暖 化 監 視 レ ポ ー ト』1992年 。
大気中の二酸化炭素濃度の増加
19801990
1970 1990年
す る た め に 設 置 して い る気 候 問 題 懇 談 会 の 座 長 で あ り,そ の 温 室 効 果 検 討 部 会 の 部 会 長 で もあ る 山 元 龍 三 郎 氏(京 都 大 学 名 誉 教授)は 近 著 で あ い ま い な 形 で は あ る が,温 暖 化 と台 風 の 大 型 化 の 関 連 に つ い て エ マ ニ ュ エ ル 教 授 の 見 解 を 認 め る記 述 を 行 っ て い る(山 元 龍 三 郎著r地 球異 常 』集 英社,1993 年9月 刊,101ペ ー ジ)。
台 風 の常 襲 地 帯 で あ る 日本 は被 害 の 千 分 の一 の 資 金 を 投 じて も研 究 す る必 要 が あ ろ う。 い ず れ に せ よ,異 常 気 象 が 発 生 しそ の 影 響 が 極 め て 大 き く な って い る の に,そ の 原 因 が 解 明 さ れ て い な い 現 状 で は そ の 原 因 と の疑 い が 濃 い地 球 の 温 度 上 昇 の 防 止 が 緊 急 に 求 め られ よ う。IPCCの 勧 告 に よ る
温 暖化 防止策 の実 施が急務 とされ るゆえんで あ る。
1.温 室 効 果 ガ スCO2削 減 の 動 き
1992年6月 の ブ ラ ジ ル で の 国 連 環 境 開 発 会 議 で は 気 候 変 動 に 関 す る枠 組 み 条 約 が 成 立 した。 米 国 の 反 対 でCO2削 減 の 数 量 目標 が 設 定 で きず そ の 実 質 的 効 果 に は 疑 問 が あ る も の のCO2排 出 量 の抑 制 の方 向 へ 向 け て 世 界 各 国 は一 致 して 努 力 す る こ と を取 り決 め た 。 将 来 の排 出量 を 過 去 の 水 準 で 安 定 化 さ せ る 方 向 で 努 力 す る と い う。 米 国 を 除 く先 進 工 業 国 の 大 部 分 は 西 暦2000年 のCO2の 排
地 球 温 暖 化 と 「くる ま社 会 」
出 量 を1990年 の 排 出 量 に 据 え 置 く こ と を 決 め, そ れ ぞ れ 実 施 に む け て 進 ん で い る。 な か で も西 欧 諸 国 と りわ け 北 欧 諸 国 はCO2削 減 に む け て 環 境 税 の 賦 課 な ど に よ る具 体 策 を 取 る こ とを 決 め て, 実 施 に 移 して い る。 ス ウ ェ ー デ ン,デ ンマ ー ク, オ ラ ン ダ,フ ィ ン ラ ン ドな ど の 諸 国 が そ う で あ る。だ が そ れ ら の国 々 は い ず れ も僅 か しかCO2を 排 出 して お らず,世 界 全 体 の排 出 量 の な か で は ご
く一 部 を 占 め る に 過 ぎ な い。 周 知 の よ う に 国 に よ ってCO2の 排 出 量 に は大 き な差 が あ り,CO2排
1
一13一
出 大 国 が 削 減 し な い か ぎ り 世 界 全 体 のCOZの 排 出 削 減 に は ほ と ん ど 寄 与 し な い(国 別CO2排 出量, 参 照)。 具 体 的 に は世 界 のCO2の 総 排 出 量 の25%
近 くを 占 め る米 国 を は じめ ロ シ ア,ド イ ツ,日 本 な ど の 諸 国 がCO2削 減 しな け れ ば 世 界 のCO2の 排 出 量 は減 少 しな い。 そ の う え発 展 途 上 国 と先 進 工 業 国 と の あ い だ に は膨 大 な 格 差 が あ り,発 展 途 上 国 の 排 出 量 は 先 進 工 業 国 の10分 の1程 度 に 止 ま っ て い る。 しか も発 展 途 上 国 で は 国 民 生 活 の 水 準 が 上 昇 す る に っ れ て 化 石 燃 料 の 使 用 量 が 増 加 世 界 の 化 石 燃料 よ りのCO2排 出状 況(炭 素換 算)
地 域
CO2排 出 量 (百 万 ト ン)
CO2排 出 量 増 加 状 況 {73^87)
1人 当 りCO2排 出 量 (ト ン/人) 1973年 1987年 1973年 1987年
増加量
寄 与 率(%)
年 平 均
伸 率(%) 1973年 1987年
増 加 量
(73‑i87)
先 進 国
ア メ リ カ
日 本
西 独
イ ギ リ ス
カ ナ ダ
イ タ リ ア フ ラ ン ス オ ラ ン ダ
そ の 他
1.15 272 222 183 103 99 139 45 283
1,386 2sa 198 iso 123 1Q7 ia7 46 337
30.2 6.2 5.1 4.2 2.4 2.3 3.2 1.0 6.5
24.8 4.fi 3.5 2.9 2.2 1.9 1.9 0.8 6.0
71
‑12
‑‑24
‑24 20
S
‑31 1 54
5.7 1.0
‑2 .0
‑1 .9 1.6 0.7
‑2 .5 4.1 4.3
0.37
‑0 .33 1
‑0 .98 1.26 4.59
‑1 .82 0.13 1.25
fi.2 2.5 3.6 3.3 4.7 1.8 2.7 3.4 1.8
5.7 2.1 3.2 2.8 4.8 1.9 1.9 3.2 1.9
一 〇.5
1
‑0 .4
‑0 .5
0f O.1 1
‑0 .2
計
2,663 2,725 61.1 ,・ 62 5.0 0.16 3.6 3.3 一 〇.3発 展途 上 国
中 国
イ ン ド
メ キ シ コ ブ ラ ジ ル
韓 国
そ の 他
251 so 30 35 19 303
547 13p 79 63 50 607
5.8 1.4 0.7 0.s O.4 7.0
9.8 2.3 1.4 1.1 0.9 1Q.9
Zss 7a 49 28 31 304
23.9 5.7 4.0 2.2 2.5 24.5
5.73 5.72 7.22 4.21 1' 5.49
0.3 0.1 a.s O.3 a.s O.3
0.5 0.2 1.0 0.4 1.2 Q.4
0.2 0.i O.4 0.1 0.6 0.1
計
698 1,477 16.0 26.4 779 62.7 5.50 0.3 0.4 a.1ソ 連 東 欧
ソ 連
ポ ー ラ ン ド
東 独
チ ェ コ
そ の 他
683
$7 72 55 98
976 126 85 65 144
15.7 2.0 1.7 1.3 2.2
17.4 2.2 1.5 1.2 2.6
292 38 13 10 46
23.5 3.1 1.1 0.8 3.7
2.58 2.65 1.22 1.25 2.80
2.7 2.6 4.2 3.7 1.6
3.4 3.3 5.0 4.1 2.1
Q.7 0.7 0.s Q.4 0.5
計
995 1,396 22.8 24.9 401 32.3 2.45 2.fi 3.3 0.7世 界 計
4,356 5,597 100.0 ioa.o 1,241 100.0 L81 1.1 1.1 一(注)四 捨 五 入 に よ り合 計 と 一 致 し な い こ と が あ る 。
(資 料)EnergyBalancesofOECDCountriesよ り 開 銀 試 算 。 出 所:日 本 開 発 銀 行 『調 査 』,第144号 。
一14一 地 球 温 暖 化 と 「くる ま社 会 」
し,CO2の 排 出量 の 増 加 と な る こ と は,避 け られ な い 。先 進 工 業 国 が 世 界 の 人 口 の わ ず か13%程 度 で あ る の に化 石 燃 料 の 総 消 費 量 の50%ち か く を 使 い続 け る と い う差 別 の構 造 が 持 続 す る こ と は許 さ れ な い で あ ろ う。 ブ ラ ジ ル ・サ ミ ッ トで も発 展 途 上 国 の そ の よ う な趣 旨 の主 張 を 生 か して 発 展 途 上 国 の 開 発 の権 利 を尊 重 し,発 展 途 上 国 のCO2の 排 出 量 に つ い て は先 進 工 業 国 の そ れ と は 異 な る扱
い を す る こ とを 決 め た。 そ こで 採 択 さ れ た 気 候 変 動 枠 組 条 約 で は 前 文 で 「温 室 効 果 ガ ス の 多 く は先 進 国 が 排 出 して お り,発 展 途 上 国 の 排 出 量 は少 な い 」 と述 べ,第3条 で は 「温 室 効 果 ガ ス を 大 量 に 排 出 して い る先 進 国 は,率 先 して 気 候 変 動 防 止 に 取 組 ま な け れ ば な らな い 」 と規 定 して い る。
一 方 ,最 大 のCO2排 出 量 で あ る米 国 は依 然 と し てCO2の 排 出 量 は増 加 して お り,CO2排 出 量 の 据 え 置 き に は ほ ど遠 い 状 況 に あ る。 米 国 政 府 の 発 表 に よ れ ば ど の よ う な シ ナ リオ に よ って も,現 状 の ま ま で 推 移 す る 限 り,米 国 のCO2の 排 出 量 は 1990年 か ら2010年 ま で に2億1千 万 ト ン か ら3 億8千 万 ト ン増 加 す る と予 測 さ れ て い る(表2)。
米 国 で こ れ ほ ど の 増 加 す れ ば,欧 州 諸 国 で ど れ ほ ど努 力 してCO2の 排 出 量 を 削 減 した と して も,そ
れ は ほ とん ど実 効 は な い。 欧 州 で 削 減 され る量 は 米 国 に よ って 相 殺 さ れ,米 国 の膨 大 な排 出 量 に よ
りCO2は 増 加 し続 け る こ と とな る。
1980年 代 以 降,ア ジ アNIES,ASEAN諸 国 で は 急 激 な 工 業 化 が きわ め て 早 い テ ン ポで 進 行 して い る。 工 業 用 燃 料 需 要 や 都 市 化 に と も な う 自動 車 増 加 な ど化 石 燃 料 の 消 費 が 増 加 し,エ ネ ル ギ ー 消 費 量 全 体 が 急 増 して い る。 こ う した ア ジ ア諸 国 の エ ネ ル ギ ー 消 費 増 加 に よ り地 球 上 のCO2の 排 出 量 が 加 速 す れ ば,温 暖 化 は加 速 さ れ る 。 そ の よ う な発 展 途 上 国 の 増 加 要 因 を考 慮 す れ ば 地 球 温 暖 化 防 止 の た め に は 先 進 工 業 国 で の 化 石 燃 料 の 消 費 は さ らに 削 減 す る こ とが 求 め られ る こ と に な る。 発 展 途 上 国 の エ ネ ル ギ ー 消 費 量 に く らべ れ ば先 進 工 業 国 の そ れ は 依 然 と し て 過 大 で あ る か ら だ 。 IPCCで は温 室 効 果 ガ ス の 濃 度 を 現 在 の 水 準 に 維 持 す る た め に は,現 在 のCO2の 排 出 量 を60%
カ ッ トす る こ と が 必 要 で あ る と警 告 して い る。
地 球 温 暖 化 防 止 を実 現 す る た め に は,そ う した 複 雑 で 困 難 な 課 題 を克 服 して い か な け れ ば な らな い 。 現 代 の 地 球 温 暖 化 を 生 み 出 した 先 進 工 業 国 の 社 会 経 済 構 造 を解 明 す る手 掛 か り と して,ま ず エ ネ ル ギ ー 大 量 消 費 国 の モ デ ル ・米 国 の エ ネ ル ギ ー
表2米 国 の 部門 別,燃 料 別CO2排 出 量 (1990‑2010年)
(単 位:100万 ト ン)
1990年
2010年
レ フ ァ レ ン ス 高 成 長 ケ ー ス 低 成 長 ケ ー ス
部門別排出量 家庭用 業務用 工業部門 輸送部門 電力
排出合計
91.5
・!・
272.5 435.0 480.6 1,340.5
84.4 64.0 310.0 555.8 fi26.4 1,fi40.6
85.7 64.9 320.4 595.9 658.3 1,725.2
82.9 62.9 299.6 515.6 593.6 1,554.6
燃料別排出量 石油
天然 ガ ス
石炭
排出合計
581.6 272.6
.・
1,340.5
704.0 354.3 582.3 1,640.6
744.6 ass.1 614.5 1,725.2
660.5 337.8 556.2 1,554.6
出 所:EnergyInformationAdministrationAnnualEnergyOutlook1993・
地球温 暖化 と 「くるま社 会」
消費構造 を分析 し消費削減 の可能性を検討す る素 材 としたい。
2。 エネ ル ギ ー消 費 増加 の歴 史 分析,先 行 的 モデ ル米 国
今 日 で も世 界 最 大 の エ ネ ル ギ ー 消 費 国 で あ る 米 国 は す で に1920年 代 に エ ネ ル ギ ー 大 量 消 費 国 と して の 基 本 骨 格 を 作 り上 げ て い た。1929年 の 米 国
表3地 域 別 エ ネ ル ギ ー消 費 量
(百万 トン,石 炭 換算)
北 ア メ リカ 1929年 858.0
1957 i
1950 1,230.2
ヨ ー ロ ツ ノ¥° 1929 697.2
1937 704.2
1950 .1.
オ セ ア ニ ア 1929 15.2
1937 19.6
1950 32.0
ソ連 1929 ?3.2
1937 ..
1950 356.1
ア フ リ カ 1929 17.1
1937 22.0
is5a 39.7
南 ア メ リカ 1929 ..
1937 34.1
1950 65.5
ア ジ ア 1929 111.1
1937 145.5
1950 172.4
先進国
1929 1,599.81537 1,687.9 1950 2,349.8
発展途上国
1929 198.81937 239.7
1950 326.9
世界平均
1929 1,798.61937 1,927.6 1950 2,676.7 出 所:国 連 エ ネ ル ギ ー統 計 。
一15一
を 含 む 北 米 の エ ネ ル ギ0消 費 総 量 は 石 炭 換 算 8.58億 ト ン で 世 界 の エ ネ ル ギ ー 消 費 総 量 の 4s.2%を 占 め,人 口 ・1人 当 り 消 費 量 で は 年 間 6.48ト ン(石 炭 換 算)と い う水 準 に 到 達 して い た。
そ の 年 の 西 欧 諸 国 の1人 当 り エ ネ ル ギ ー 消 費 量 は L9ト ン で 米 国 は そ の3.4倍 に も 達 し て い た 。 1991年 の 先 進 工 業 国ECの1人 当 り エ ネ ル ギ ー 消 費 量 は約7ト ン(石 炭 換算)で,現 在 のECの エ ネ ル ギ ー 消 費 水 準 に 近 い と こ ろ に 米 国 は60年 前 に 到 達 して い た 。1955年,1965年 に お い て も米 国
衰4世 界 エネ ル ギ ー地 域 別 消 費 比 率 1929年 1937年 1950年 北 ア メ リカ
ヨ ー ロ ツ ノ¥°
オ セ ア ニ ア ソ 連
46.2%
37.6 0.a 3.9
40.6%
35.2 1.0 9.4
44.6%
.,
1.2 12.9 ア フ リ カ
南 ア メ リ カ ア ジ ア
0.9 1.4 6.0
1.1 1.7 7.3
1.4 2.4 6.3
バ ン カ ー 3.2 3.7 2.8
先進国 発展途上国
.・
XO.7
.,
12.0
85.3 11.9
表51人 当 リ エ ネ ル ギ ー 消 費 量
(ト ン,石 炭 換 算) 1929年 1937年 1950年 北 ア メ リカ
ヨ ー ロ ツ ノ¥°
オ セ ア ニ ア
6.48 L90 1.75
5.81 1.84 2.11
7.42 1.99 2.86 ソ連
ア フ リ カ 南 ア メ リカ
0.42
0.02 0.23
1.07 0.15 0.27
1.78 0.20 0.41 ア ジ ア
先進 国
0.11 2.87
0.14
2.85
a.i4 3.66
発展途上国 世界平均
0.14
1・
0.17 0.95
Q.19
1.12 出 所:国 連 ヱ ネ ル ギ ー統 計 。
一16一 地 球 温 暖 化 と 「く るま 社 会 」
表6国 別 エ ネ ル ギ ー 消 費 量(1955年,65年)
(単 位:石 炭 換 算 百 万 ト ン)
1955年 1965年
合 計
% 1人 当 り(kg)合 計
% 1人 当 り(kg)世 界
3220.1 100 1201 5219.8 ioa 1583カ ナ ダ ・ 2.6 5279 149.0 2.9 7598
ア メ リ カ 1285 39.9 7768 1790.7 34.3 9202
フ ラ ン ス a・ 3.9 2166 144.8 2.8 2968
西 ドイ ツ 1fi9.2 5.2 3257 250.4 4.8 4240
イ タ リ ア 34.7 1.1 721 92.0 1.8 1783
イ ギ リ ス 254.5 7.9 4993 279.4 5.4 5121
EEC 一 一 575.8 11.0 3172
日 本 65.9 2.1 740 174.6 3.3 1782
出所:国 連 エ ネ ル ギ ー 統 計 。
表70ECD各 国 の 部 門 別 エ ネ ル ギ ー 最 終 消 費 の 推 移
(単 位:石 油 換 算100万 ト ン)
1971年 1979年 1980年 1981年
ア メ リ カ
工 業 部 門
378.47 397.96 373.60 3so.is運 輸 部 門
367.29 465.36 444.09 432.59民 生 部 門
434.2fi 441.11 440.43 434.72非 エ ネ ル ギ ー 46.14 74.03 44.78 39.04
合 計
1,226.16 1,378.46 1,302.90 1,266.36日 本
工 業 部 門
125.29 152.38 139.42 132.36運 輸 部 門
36.21 55.13 48.64 48.05民 生 部 門
43.55 59.79 64.23 65.00非 エ ネ ル ギ ー 6.62 25.74 ・ ・ 9.09
合 計
211.67 293.04 261.25 254.50EC
工 業 部 門
275.90 290.62 267.05 X47.sa運 輸 部 門
116.35 155.58 156.33 154.31民 生 部 門
233.32 285.06 267.94 260.03非 エ ネ ル ギ ー 24.54 25.46 20.35 19.56
合 計
s50.i2 756.71 711.68 681.79OECD合 計
工 業 部 門
892.77 988.29 .. 889.88運 輸 部 門
594.02 783.24 757.89 740.04民 生 部 門
809.84 914.01 905.83 889.93非 エ ネ ル ギ ー 89.69 140.65 .. 82.23
合 計1 2,38fi.33 2,826.16 2,084.78 2,602.09
出 所:OECD,EnergyBalancesofOECDCountries.
地球温暖化 と 「くるま社会」
の 位 置 は 世 界 の な か で 圧 倒 的 な比 重 を 占 め ,そ れ ぞ れ 世 界 の エ ネ ル ギ ー 消 費 量 の39.9%,34 .2%を 占 め て い た 。 米 国 の1人 当 り エ ネ ル ギ ー消 費 量 は 1950年 に7.42ト ン,1955年 に7 .77ト ン,1960 年 に9ト ン,1965年 に9.2ト ン(石 炭 換 算)に の
ぼ りそ の 時 期 の 西 欧 諸 国 の そ れ の ほ ぼ 二 倍 に 達 し て い た 。
西 欧 諸 国,日 本 が 高 度 成 長 を 遂 げ た60年 代 を へ て 第 一 次 オ イ ル シ ョ ッ ク を 体 験 す る 前 の1971 年 に 米 国 の 総 エ ネ ル ギ ー 消 費 量 は 人 口数 で は ほ ぼ 接 近 して い たEC諸 国 合 計 の1.9倍 で あ っ た。 同 年 の 米 国 の 人 口 は2億1千 万 人,EC6か 国 の 人 口 は1億9千 万 人 で あ った 。
第 一 次 オ イ ル シ ョ ッ ク に 続 い て 第 二 次 オ イ ル シ ョ ッ ク を 体 験 し た 年 で あ る1981年 に お い て さ え 米 国 の 総 エ ネ ル ギ ー 消 費 量 はECのL86倍 に 達 して い た。 両 者 の 間 に は 国 民 所 得 で は そ れ ほ ど の 格 差 が な い に もか か わ らず,こ れ ほ ど の エ ネ ル ギ ー 消 費 量 で の 差 を 生 み 出 した の は 運 輸 部 門 の 消 費 量 の 際 立 っ た相 違 で あ っ た 。1971年 の 工 業 部 門 と民 生 部 門 の 米 国 の エ ネ ル ギ ー消 費 量 はEC諸 国 合 計 の そ れ ぞ れ1.4倍,1.9倍 で あ っ た の に対 し て 運 輸 部 門 の そ れ は3.2倍 に も上 っ て い た。1981 年 で も米 国 の 工 業 部 門,民 生 部 門 の そ れ は1.5倍
と1.7倍 で あ っ た が 運 輸 部 門 の そ れ は 依 然2.8倍 で あ っ た(表7)。
産 業 部 門 別 エ ネ ル ギ ー 消 費 量 で も1950年 に は 工 業 部 門 は 全 消 費 量 の47%,家 庭 ・業 務 部 門 が 27%,運 輸 部 門 は26%を 占 め て い た 。
米 国 の 輸 送 部 門 の エ ネ ル ギ ー 消 費 は,1960年 に 2億2千 万 ト ン(石 油 換 算)に 達 して い た 。1965年
の 米 国 の運 輸 部 門 の 消 費 量 だ け で2億6千 万 ト ン (石油換 算)欧 州 の 最 大 の エ ネ ル ギ ー 消 費 国 イ ギ リ ス の 全 消 費 量 の1.6倍 に 上 って い た。1971年 の 米 国 の エ ネ ル ギ ー 消 費 量 の な か で 運 輸 部 門 の比 率 は 30%,1981年 の そ れ は34%に も 上 っ て い た (OECDエ ネ ル ギ ー 統 計)。 こ の よ う に 米 国 の 運 輸 部 門 の エ ネ ル ギ ー 消 費 が 異 常 に増 大 し た の は,運 輸 産 業 の 構 造 が モ ー タ リゼ イ シ ョ ンに よ り変 化
し,貨 物 輸 送 に お い て は トラ ッ ク輸 送 を 中 軸 と し て,鉄 道,海 運 な ど の 大 量 輸 送 手 段 は付 随 的 位 置
一 一17一
を 占 め る こ と に な った 結 果 で あ る。 そ れ に よ っ て 生 じた 自動 車 燃 料 の消 費 増 加 が エ ネ ル ギ ー需 要 を 大 き く押 し上 げ た。 そ して 大 量 生 産 シ ス テ ム が 導 入 さ れ,大 量 生 産 の 製 品 と な っ た 自 動 車 は 資 材 と
して の鉄 鋼,自 動 車 生 産 工 場 建 設 資 材 と して の 鉄 鋼 製 品 の 消 費 を 急 増 さ せ,エ ネ ル ギ ー大 量 消 費 部 門 で あ る 鉄 鋼 産 業 の 肥 大 化 も ま た 米 国 の エ ネ ル ギ ー消 費 を 飛 躍 的 に増 加 さ せ た。
米 国 で は 第 一 次 世 界 大 戦 直 後 の1920年 代 に 自 動 車 生 産 は 急 増 し,1929年 の 自 動 車 保 有 台 数 が 2670万 台 に 達 し,普 及 率 は 人 口4 .5人 に1台 と な って い た 。 こ の た め 自動 車 用 ガ ソ リ ンの 消 費 量 を は じ め 石 油 製 品 の 消 費 量 が 急 増 して1929年 の 米 国 の 石 油 消 費 量 は 全 世 界 の67%を 占 め た の で
あ る。
こ の よ う な米 国 の エ ネ ル ギ ー大 量 消 費 国 と して の 特 質 を 第 二 次 大 戦 後 に 欧 州,日 本 な ど他 の 先 進 工 業 国 が 継 承 し,追 随 す る こ と と な り,西 欧,日 本 も ま た く る ま 社 会 と な っ て い く。 先 進 工 業 国 全 体 が く る ま 社 会 と な り,人 口1人 当 り の エ ネ ル ギ ー 消 費 量 は 増 大 す る。
こ れ ほ ど ま で の く る ま社 会 へ と転 換 して い く過 程 で は大 量 輸 送 手 段 と して の 鉄 道,バ ス な ど の よ う な 公 共 交 通 機 関 は っ ぎ つ ぎ に 衰 退 し て,マ イ カ ー に取 って 代 わ られ て い く。 そ れ は 経 済 的 要 因 に よ る 自 然 の 流 れ と して 進 行 して い った の で は な く,自 動 車 資 本 に よ る公 共 交 通 へ の す さ ま じ い支 配,介 入 が 行 わ れ,人 為 的 な 工 作 と して 進 め られ た 。 ゼ ネ ラ ル ・モ ー タ ー に よ る郊 外 鉄 道 資 本 に た い す る株 式 の 買 収,バ ス 会 社 に た い す る乗 っ取 り 工 作,そ の後 の 路 線 廃 止 に よ る マ イ カ ー の 販 売 工 作 な ど米 国 全 土 で 陰 惨 な 公 共 交 通 の 廃 止,縮 小 工 作 を 自動 車 メ ー カ ー は進 め た 。 後 に 触 れ る南 カ リ
フ ォ ル ニ ア地 域 で は地 下 鉄,路 面 電 車 ,郊 外鉄 道 な ど の 鉄 道1800キ ロ が 敷 設 さ れ て い た が ,自 動 車 資 本 な ど の買 収 に よ る経 営 支 配,そ の 後 の路 線 廃 止 に よ って ほ とん どが 消 滅 して い っ た 。 そ う し た 活 動 を 積 み 重 ね た う え で マ イ カ ー な し に は 日常 生 活 が 営 め な い 今 日 の 米 国 の く る ま社 会 が 作 られ
て い っ た 。
こ の 歴 史 に つ い て はSNELLのAMERICAN
is 地 球 温 暖 化 と 「く る ま社 会 」
GROUNDTRANSPORT,米 国 陸 上 交 通 が 詳 し い(邦 訳 は緑 風 出版 か ら近刊)。
他 方,発 展 途 上 国 は ブ ラ ジ ル ・サ ミ ッ トに 先 立 っ て い くっ か の 国 際 会 議 を 催 し,地 球 温 暖 化 問 題 に つ い て の 発 展 途 上 国 と して の 視 点 を 整 理 し深 化 した 。 そ う して 得 た 到 達 点 を 示 す も の が1991 年6月 の 北 京 宣 言 で あ っ た 。 そ の な か に は エ ネ ル ギ ー を 大 量 消 費 し地 球 を 温 暖 化 さ せ た 主 要 な 責 任 は先 進 国 の 産 業 革 命 以 来 の 経 済 活 動 に あ り,発 展 途 上 国 は そ の た め の 資 源 を 収 奪 さ れ た 被 害 者 で あ る。 む しろ そ の 被 害 を 償 う責 任 を 先 進 国 は有 す る と指 摘 した 。 エ ネ ル ギ ー 消 費 の 歴 史 的 事 実 は この こ と を如 実 に 実 証 す る。1929年 の 発 展 途 上 国 の エ ネ ル ギ ー 消 費 総 量 は わ ず か1億9880万 ト ンで 世 界 の11%に 過 ぎず,半 面 先 進 国 は世 界 の 消 費 量 の 86%を 占 め て い た 。世 界 人 口 の80%を 占 め る 発 展 途 上 国 は1人 当 り わ ず か0.14ト ン,こ れ に対 し て 先 進 国 は1人 当 り2.87ト ンで 発 展 途 上 国 の20 倍 に達 して い た(表4参 照)。 しか し1980年 代 に
は い っ て 西 太 平 洋 の 発 展 途 上 諸 国 を 中 心 に 工 業 化 が す す む に つ れ て そ れ らの 発 展 途 上 国 で も大 都 市 を 中心 に く る ま社 会 化 が 浸 透 して い く。
3.先 進 工 業 国 で の 膨 大 な エ ネ ル ギ ー 消 費,輸 送 部 門の肥 大化
米 国 で1920年 代 に 成 熟 し た モ ー タ リゼ イ シ ョ ン は第 二 次 大 戦 後 に は,欧 州,日 本 に 波 及 して い き,欧 州,日 本 の 社 会 経 済 構 造 は モ ー タ リゼ イ シ ョ ンを 軸 と して 転 換 して きた 。OECD諸 国 で の 部 門 別 エ ネ ル ギ ー 消 費 量 が も っ と も増 加 し た の は 輸 送 部 門 で あ る が,1960年 か ら1990年 ま で に そ れ は ほ と ん ど3倍 に増 加 し た。OECDの な か で も 欧 州 加 盟 国 の 合 計 で は1990年 ま で の30年 間 に輸 送 部 門 の エ ネ ル ギ ー 消 費 量 は5千 万 ト ン強 か ら2 億6千 万 ト ン以 上 に増 加 し,OECD加 盟 国 の な か で も太 平 洋 地 域 の 国 々 の そ れ も5倍 強 に増 加 した (図2参 照)。 各 国 の 交 通 運 輸 構 造 は そ れ ぞ れ か な り相 違 して い る。 公 共 交 通 機 関 の な か で も1人 当 り の 鉄 道,バ ス の利 用 率 が と くに 低 い米 国 は1人 当 り の 自動 車 走 行 距 離 で は他 の諸 国 の3倍 以 上 に も達 す る。1人 当 り 自動 車 走 行 距 離 が 少 な い フ ラ ン ス,ド イ ツ,イ ギ リ ス,イ タ リア は1人 当 りの 鉄 道,バ ス の 利 用 率 が 比 較 的 高 い 。1人 当 り鉄 道 利 用 率 が 群 を ぬ い て 高 い 日本 の 場 合 は1人 当 り 自 図2(a}OECD輸 送 部 門 の 地 域 別 石 油 消 費 量 推 移(1960年 一1990年)
(単 位:年 百 万 トン)
北 ア メ リ カ 太 平 洋
合 計 欧 州
鵠300§900
さ25。 竃8・・
豊2。。0700
婁 焦 一 一 一 一!難 一 一1975198019851990
出 所;IEAEnergyBalances.
地 球 温 暖 化 と 「く るま 社 会 」
図2(b)OECD地 域 別 石 油 消 費 量 に お け る 輸 送 部 門 の 比 率(1960年 一1990年) 70
60
.̲c50
藷4・ ・ 〉 北ア メリカ
30
20
196019551970 出 所:IEAEnergyBalances.
動 車 走 行 距 離 は これ ら諸 国 の 間 で は最 低 と な って い る。 これ は公 共 交 通 機 関 の 整 備 が 年 間 の 利 用 状 況 を 左 右 す る こ と を 示 唆 す る もの と い え よ う(図 3,4参 照)。 しか し全 体 と して は 自動 車 走 行 が も っ
と も伸 び て お り,貨 物 輸 送 の道 路 へ の転 換 も これ に 加 わ り,交 通 手 段 の な か で の 自 動 車 の 位 置 は高
くな っ て い る。
この 結 果OECD全 体 の な か で の1990年 の 部 門 別CO2の 排 出 量 の な か で 輸 送 部 門 は 最 高 の 工 業 部 門 の947百 万 ト ンに 接 近 す る816百 万 トン に ま で 増 加 した 。OECD諸 国 のCO2の 排 出 量 は1973 年 か ら1989年 ま で に7%増 加 した が,同 じ期 間 の 輸 送 部 門 か らの 排 出 量 は34%も 増 加 した 。こ の た め1990年 の 輸 送 部 門 か ら のCOQの 排 出 量 は 排 出 量 全 体 の30%に 達 し た 。 こ の 輸 送 部 門 のCO2排
出 量 の う ち 自動 車 交 通 の 比 率 は75%で あ る。ち な み に航 空 機 は そ の12%,水 上 交 通 は9%,鉄 道 交 通 は3%で あ る(OECDsReport"CarsandClimate
Change",1993年 刊)。 そ して 重 要 な 点 は こ の よ う な 運 輸 部 門 の エ ネ ル ギ ー消 費 量 は現 状 の ま ま で 推 移 す る 限 り,今 後 も増 大 し続 け る と い う予 測 で あ る。 ブ ラ ジ ル で の 国 連 環 境 開 発 会 議 で は 西 欧 諸 国 政 府 はCO2の 排 出 量 を 削 減 す る か も し く は 安 定 化 す る こ と を 約 束 した 。 しか しそ れ ら の 国 々 が 構 成 す るOECDで は 運 輸 部 門 の エ ネ ル ギ ー 消 費 が 牽 引 して エ ネ ル ギ ー の 消 費 総 量 は 増 加 す る し, CO2の 排 出 量 も ま た 増 加 す る と予 測 して い る 。 今 後CO2の 排 出 抑 制 を 図 ろ う と す れ ば,運 輸 部 門 に
1975 ':1 1985 1990
一19一
対 す る何 らか の 対 策 を と る こ とが さ け られ な い 。 そ う した 視 点 に た っ てOECDは 自動 車 交 通 の 肥 大 化 と温 室 効 果 ガ ス の 排 出 量 の 増 大 の 歴 史 的 関 連 を 分 析 して230ペ ー ジ の報 告 書 に ま と め,打 開 策 に つ い て の 提 案 を 行 って い る。 こ れ は 日本 と米 国 政 府 が 自動 車 交 通 に 対 して ほ と ん ど 批 判 を せ ず 打 開 策 を 出 して い な い 現 状 で は き わ め て 有 意 義 で あ る と い え よ う("CarsandClimateChange")。
4.米 国 の 現 状
エ ネ ル ギ ー を 大 量 に 消 費 す る社 会 経 済 構 造 が 米 国 で 形 成 さ れ た の は第 二 次 大 戦 前 で あ った 。 そ の た あ 米 国 で は 第 二 次 人 戦 後 に は他 の 先 進 工 業 国 と 違 っ て 際 立 った 消 費 の増 加 を 示 して い な い 。 大 戦 直 後 の1950年 に 比 べ て1991年 の 消 費 量 の 伸 び は 2.45倍 に と ど ま り,西 欧,日 本 の5倍 以 上 の 伸 び 率 と対 照 的 で あ る。人 口1人 当 り の 消 費 量 は1973 年 に ピ ー ク に達 して そ れ 以 降 は 停 滞 し て お り, 1991年 の そ れ は1973年 の85%に 止 ま って い る。
これ は 第 一 次 オ イ ル シ ョ ッ クが 発 生 して 石 油 価 格 が 大 幅 に上 昇 し た後,そ れ 以 前 の 上 昇 傾 向 が 一 転 して 低 下 して き た こ と,そ の 根 源 は 米 国 の エ ネ ル ギ ー 消 費 量 が 飽 和 状 況 に あ る こ と を 示 す も の と言 え よ う。 た だ 自動 車 保 有 台 数 と 自 動 車 燃 料 の 消 費 量 は と も に 増 加 し 続 け,1991年 の 保 有 台 数 は 194.9百 万 台,同 年 の 自動 車 燃 料 の 消 費 量 は8736 千 バ レル/日 に 達 した 。 こ れ は1950年 の 自 動 車
Zo 地 球 温 暖 化 と 「く るま 社 会 」
図3公 共 交通 輸 送 機 関 別1人 当 り年 間輸 送 距 離
(km)
5.000
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出 所:OECD,"CarsandClimateChange"・
保 有 台 数 の49百 万 台,1960年 の 自 動 車 燃 料 の 消 費 量4112千 バ レル/日 に 比 べ て 大 幅 に 増 加 して
お り,モ ー タ リゼ イ シ ョ ンに と も な う エ ネ ル ギ ー 消 費 は 依 然 と して 上 昇 傾 向 に あ る こ と を 示 して い
地 球 温 暖 化 と 「くる ま社 会 」 一21一 図4年 次 別1人 当 り 自 動 車 走 行 距 離(1970年,..年)
km 20,QQO
年15,000 間 走 行10,000 距 離
5,000
しQゾ01
米 国 ンス
日 本
る。 自 動 車 保 有 台 数1950年 に は 人 口3.1人 に1 台 で あ っ た が1991年 に は 人 ロ1.3人 に1台,成 人1人 に1台 と い う保 有 状 況 と な っ た こ と を 示 す 。 ま た,輸 送 部 門 の年 間 石 油 消 費 量 は5億 キ ロ
リ ッ トル に の ぼ り,こ れ だ けでEC加 盟 国 全 体 の エ ネ ル ギ ー 消 費 量 の40%以 上 に 匹 敵 す る。
1971年 の 米 国 の 部 門 別 エ ネ ル ギ ー 消 費 は工 業 部 門30.9%,家 庭 ・業 務 部 門35.4%,運 輸 部 門 30.0%で あ っ た 。1991年 の工 業 部 門 の エ ネ ル ギ ー 消 費 は 同 じ く30.1%に 低 下 し,家 庭 ・業 務 部 門 は 30.5%,運 輸 部 門 は35.0%へ と増 加 した(OECD, ENERGYBALANCESOFOECDCOUNTRIES)o
米 国 の エ ネ ル ギ ー 消 費 構 造 は1991年 のECの 部 門 別 消 費 量 が 工 業 部 門32.5%,家 庭 ・業 務 部 門 が 36.8%,運 輸 部 門 が27.7%と な って い る の に 比 べ て も,著 し く運 輸 部 門 が 肥 大 化 して い る こ と が わ か る。 以 上 の よ うな 米 国 の エ ネ ル ギ ー 消 費 構 造 の も と で 実 効 あ るCO2の 削 減 政 策 を 採 る た め に は 運 輸 部 門 の エ ネ ル ギ ー 消 費 抑 制 が 必 要 と な り,そ の た め に は公 共 交 通 機 関 を 重 視 し,充 実 させ る こ と に よ り,マ イ カ ー 依 存 の 日常 生 活 を 転 換 を 図 る こ とが 必 要 と な る。
一 方 今 後 の エ ネ ル ギ ー 需 要 の 見 通 しで は か な り の 増 加 を 予 測 して い る。 米 国 の エ ネ ル ギ ー需 要 は
業3農4
図50ECD各 部 門 別CO2排 出 量 (単 位:百 万Mト ン) そ の 他
138
レ フ ァ レ ン ス ・ケ ー ス で1990年 に 比 べ 一 次 エ ネ ル ギ ー 消 費 量 で2010年 に は26%増 加 す る と 予 測 し て い る 。 ロ ー ・ケ ー ス の 経 済 成 長 で は19%の 増 加 を 見 込 む 。 こ の 結 果CO2の 排 出 量 は1990年 の 1340.5百 万 ト ン に 対 し て2010年 に は レ フ ァ レ ン ス ・ケ ー ス で1640.6百 万 ト ン,経 済 低 成 長 ケ ー ス で1554.6百 万 ト ン と な り,そ れ ぞ れ 増 加 率 は 22.4%,16.0%に も達 す る 。 そ れ ら の 場 合 のCO2
の 排 出 量 の 増 加 分 だ け で3億 ト ン,2億 ト ン に も
一22一 地 球 温 暖 化 と 「くる ま社 会 」
図60ECI)に お け る 一 次 エ ネ ル ギ ー 供 給 ・実 績 と見 通 し(1975年 一2010年) 5
¢εΣ℃口謂un=⇔瀦↑
4
3
2
1
0
1975198419851990 出 所:IEA,NationalForecasts,1991.
1995200020052010
図70ECI)と 世 界 のCO2排 出 予 測 30,000
25.000
N
U
寓20・000 箆
U̲15・000
窪 至10・000 葺
5,000
0
1990 出 所:OECD,CarsandClimateChange.
1995 2000
上 り,他 の 諸 国 のCO2の 排 出 努 力 を 帳 消 しに して 余 り あ る(表8,9)。
っ ま り世 界 中 がCO2削 減 に 足 並 み を 揃 え た と して も,米 国 た だ 一 国 が 怠 れ ばCO2排 出 量 は依 然 と して 増 加 し続 け,大 気 中 の 濃 度 は 増 加 し続 け て い く。 米 国 で の 排 出 量 の 増 加 は現 在 の 全 世 界 の 排 出 量 の5な い し6%に 達 して い る。 日本 全 体 の 排 出 総 量 に匹 敵 す る ほ ど の 大 量 で あ る。 年 間 の 排 出 量5,6千 万 ト ン ・レベ ル の 国 が 懸 命 に努 力 して, 10%か ら20%の 排 出 量 削 減 を 実 現 し よ う と い う 時 期 に 米 国 は そ の 数 倍 に な る量 の 増 加 を 放 置 して
い こ う と い う の で あ る(表9参 照)。
5.龍 頭蛇 尾 の ク リン トンの地 球環 境 政策
ク リ ン トン大 統 領 は就 任 直 後,米 国 の 地 球 環 境 政 策 の 柱 と し て2000年 のCO2の 排 出 量 を1990 年 の水 準 に据 え 置 く こ と を 約 束 し,そ れ を 実 現 する た め に環 境 税 の 導 入,自 動 車 燃 料 の 効 率 化 の た め の法 的 規 制,そ の ほ か 多 角 的 な 化 石 燃 料 の 使 用 削 減 策 を 明 らか に した 。 こ れ は米 国 政 府 の 環 境 政 策 が 全 面 的 に転 換 す る こ と を 意 味 して い た 。
ク リ ン トン大 統 領 は93年4月21日 の ア ー ス ・ デ イ に 環 境 主 義 者 を含 む 集 会 に 参 加 して こ の 政 策
エ ネル ギ ー 消 費 量
001 908070605040302010 0
千兆BTU
地球温 暖化 と 「くるま社 会」
図8米 国 エ ネ ル ギ ー 消 費 量 お よ び1人 当 り消 費 量(1949年 一1991年) 1人 当 りエ ネ ルギ ー消 費量
一 次 エ ネ ル ギ ー
'
'\'
二 次 エ ネ ル ギ ー
400
350
soo
250 百 万
11T U
150
100
05 0
一23一
一 次 エ ネ ル ギ ー
〈 、!、!げ
/二 次 エ ネ ル ギ ーV>
U, 1950196019701980199019501960197019801990
出 所:EnergyInformationAdministration,AnnualEnergyReview1991.
表8米 国 部 門 別,種 類 別 エ ネ ル ギ ー 消 費 予 測(2010年)(単 位:千 兆BTU)
エ ネ ル ギ ー 消 費 量 1990年
2010年 レ フ ァ レ ン ス
ケ ー ス 高 成 長 ケ ー ス 低 成 長 ケ ー ス
部門別消費量 家庭部門 業務部門 工業部門 輸送部門
合計
発 電 部 門送 電 ロス
一 次 エ ネ ル ギ ー消 費 量計 … 種 類 別 消費 量
石 油 天然 ガ ス 石炭 そ の他
一 次 エ ネ ル ギ ー消 費 量 計 … 電 力(最 終 消費)
9.8 6.7 .・
22.5 ss.s 1 84.6
33.5 19.3 19.1 12.7 84.6 9.3
11.6 8.3 3Q.9 28.9 79.?
27.0 106.7
41.2 25.0 22.9 17.7 106.E 12.7
11.8 8.4 32.4 31.0 83.6 27.9 111.5
43.5 25.8 24.1 18.1 111.5 13.4
11.3 8.2 29.2 26.9 76.0 25.7 101.7
ハOQりO﹂00
000U‑二7曙00り自り白ーユ 7
●101 O
O21
出 所:EnergyInformationAdministrationAnnualEnergyOutlook .1993.
一24一 地 球温暖化 と 「くるま社 会」
表9米 国 部 門 別,燃 料 種 別CO2排 出 量2010年 予 測
(単 位:百 万Mト ン)
図9
部門別排出量 家庭
工業 輸送 発電
合計 燃料別排出量
石油 石炭
合計
1990年
91.5 .1' 272.5 435.0 480.6 1,340.5
581.6 272.6 486.3 1,340.5 出 所:
米 国 の 部 門 別,エ ネ ル ギ ー 別CO2排 出 予 測 (1990,2000,2010年)
住 宅
口 石油
團 天然ガス 圏 石炭
業 務 用
レ フ レ ン ス
ケ ー ス
84.4 64.0 310.0 555.8 626.4 1,640.6
704.0 354.3 582.3 1,640.6
2010年
高 成 長 ケ ー ス 低 成 長 ケ ー ス
85.7 64.9 320.4 595.9 658.3 1,725.2
744.6 366.1 fi14.5 1,725.2 EnergyinformationAdministration,AnnualEnergyOutlook1993.
000Qゾ01Q﹂(UO19白り自 0000ゾ01←QゾOAU19臼ワ臼 00(UOゾAU‑←Q﹂∩)O19白り白 000Qび01Qぱ∩り01り乙9乙 0000σ(U‑←0ゾQり01り自9身
工 業 部 門
輸送部 門
82.9 62.9 299.6 515.6 593.6 1,554.6
sso.s 337.8 556.2 1,554.6
図10米 国 のCO2排 出 量(1985‑2010)
:il
x,700
1VOO
cO
o1,500 ヨ
w
.°1,400 霞 Σ
1,300
高 成 長 ケ ー ス
レ フ ァ レ ン ス ケ ー ス
,'多7
/\
低 成 長 ケー ス
発電 部 門
0100200300400500600700
百 万Mト ン
出 所EnergylnformationAdministration, AnnualEnergyOutlook1993.
1.Zao
0
198519901995200020052010 出 所:EnergylnformationAdministration,
ノ1η7zz梶z̀EnergソOutlook1993.
地 球 温 暖 化 と 「くる ま社 会 」
を 発 表 して8月 ま で に具 体 策 を 提 出 す る と演 説 し た 。
ク リ ン ト ンの ア ー ス ・デ イ演 説 は化 石 燃 料 の 大 量 消 費 国 ・米 国 を ク リー ンな 燃 料 を 消 費 し,リ サ イ ク ル 燃 料 を 使 用 す る国 に変 え る一 大 転 換 を 意 味 して い た 。 ク リ ン ト ンは ア ー ス ・デ イ 演 説 の な か で 第 一 に 健 康 な環 境 な し に健 全 な 経 済 は有 り得 な い。 綺 麗 な 空 気 を 呼 吸 す る こ と と,安 定 した収 入 を 家 庭 に も た らす こ との ど ち らか を 選 択 す る こ と
は で き な い 。 第 二 に わ れ わ れ は 国 内 と海 外 と で と も環 境 を 守 ろ う と して い る。 現 代 の地 球 的 環 境 危 機 の 時 代 に お け る歴 史 的 挑 戦 は世 界 的 利 害 と の 関 連 の な か で 国 益 増 進 を 図 る こ と で あ る。 わ れ わ れ は人 間 と して の 運 命 を こ の 宇 宙,こ の 惑 星 と分 か ち 合 っ て い る。 今 日提 起 す る政 策 は わ れ わ れ の 誰 で も従 う こ と が で き る唯 一 の 方 法 で あ りsわ れ わ
一25一
れ の す べ て を 保 護 して くれ る 。 第 三 に わ れ わ れ は 企 業,政 府,個 人 と して の 市 民 と い う対 立 を超 え て 行 動 しな け れ ば な らな い 。 わ れ わ れ は最 悪 の 事 態 か ら逃 れ る だ けで な く,最 善 の もの を も た らす 政 府 を必 要 と して い る。 そ れ を 実 現 で き る と私 は 考 え る。 現 政 権 は 米 国 の 環 境 政 策 メ ー カ ー の 最 善 の チ ー ム を 持 っ て い る か らで あ る。 と述 べ て ゴ ァ 副 大 統 領 か ら始 め て 関 係 閣 僚 の 名 を 並 べ て ク リ ン
ト ン政 権 の 陣 容 を 自賛 し た(表10)。
そ の うえ で ク リ ン ト ン政 権 の 長 期 戦 略 は大 気 汚 染 防 止,エ ネ ル ギ ー 使 用 の 効 率 化,ソ ラ ー ・エ ネ ル ギ ー,リ ニ ュ ー ア ブ ル ・エ ネ ル ギ ー,環 境 保 全, 水 質 保 全 に 投 資 さ れ る 。 そ れ は議 会 に提 出 した5 年 間 予 算 案 の な か に 含 ま れ て い る。 しか も そ の 予 算 の 実 施 は 数 多 くの 就 労 機 会 を 創 出 す る こ と に も っ な が る。 わ れ わ れ の惑 星 を 損 な う地 球 温 暖 化 と
表10ク リン トン新 政 権 の 当初 の環 境 政策
ブ ッ シ ュ 前 政 権 ク リ ン ト ン新 政 権
環境 と経 済 のバ ラ ンス
・過 度 の環 境 保護 は 国 際 競 争 力 を弱 め
る
・失 業 対 策 を優 先
・適 切 な環境 政 策 は新 技 術 の 開 発 を促 進 し,米 国産 業 の国 際 競 争 力 強 化 と雇 用 増 を もた らす
・成 長 を確 保 しな が ら環 境保 護 を実 現 す る
CO2排 出量 の 安定 化 ・具 体 的 目標 の設 定 に消極 的
・CO2排 出 量 を1990年 水 準 で 安 定 化 さ せ る と い う 目 標 を 設 定
自動 車 の燃料 消費 効 率 (CAFE基 準)の 改善
・反 対(厳 しい基 準 を 満 た す 自動 車 を 製 造 で きな い工 場 で 働 く約30万 人 の職 が脅 か され る
・支持
・省 エ ネ技 術 の開 発 に伴 う雇 用 増 が 見 込 め る
・新 技 術 を盛 り込 ん だ 自動 車 の開 発 に よ り国 際 競 争 力 は強 ま る
絶滅生物保護法案
・雇用 優 先 条 項 が必 要・雇 用 優 先 条項 を追 加 す る こ とな く成 立 させ る
北極生物保護区の石油開
発
・推 進 ・反 対原子力発電所の新規建設
・推 進
・ 「包 括 エ ネル ギ ー 政 策 法 」 の 中 に原 子 力 開 発 手続 きの 緩 和 を盛 り込 む
・消 極 的
・今 後 の エ ネ ル ギ ー 需 要 の 増 加 に は, LPGや 再 生 可 能 な エ ネ ル ギ ー(太 陽 エ ネ ル ギ ー な ど)で 対 応 す べ き
出 所:日 本 開 発 銀 行 刊 『調 査 』,169号(1993年5月)。
一26一 地 球 温 暖 化 と 「く る ま社 会 」
い う挑 戦 を 克 服 す る うえ で 指 導 性 を 発 揮 しな け れ ば な らな い。2000年 のCO2排 出 量 を1990年 の 水 準 で 固 定 化 す る,と の べ た 。
そ の な か に は環 境 委 員 会 の 設 置,環 境 税,自 動 車 燃 料 の 規 制 と な るCAFEの 制 定 な ど ブ ッ シ ュ 政 権 が 強 く反 対 して い た 地 球 環 境 政 策 が 含 まれ て い た 。 と くに 注 目 され た の は環 境 税 で,CO2を 排 出 す る化 石 燃 料 に対 して だ け で な く,原 子 力 発 電 に対 して も課 税 す る こ と と して お り,ク リ ン トン 政 権 の 原 発 に 関 す る基 本 姿 勢 を象 徴 す る も の と し て 注 目 さ れ た(表1D。
こ の 演 説 で 環 境 政 策 が 明 ら か に な っ た 時, ニ ュ ー ヨ ー ク ・タ イ ム ス 紙 は ゴ ア副 大 統 領 の 勝 利 と報 じた が,そ れ は ク リ ン ト ン政 権 の 内 部 に 環 境 税 の 導 入 に 対 す る反 対 が あ り,ベ ン ッ エ ン財 務 長 官,オ レア リー ・エ ネ ル ギ ー長 官 の 反 対 を抑 え て
ゴ ア の 環 境 税 提 案 が 勝 利 し た こ と を 意 味 し て い た。 これ らの 閣 僚 は環 境 税 の導 入 は米 国 産 業 の発 展 を 損 な う も の と して 反 対 した の で あ る。
6.修 正 され た ク リン トン政権 の環 境政 策
ア ー ス ・デ イ 演 説 で8月 と約 束 して い た 具 体 的 な 環 境 政 策 の発 表 は遅 れ て,1993年10月19日 に 発 表 さ れ た。 全 体 は50項 目 に 及 ぶ が そ の 内 容 の 主 な も の は っ ぎ の 通 りで あ る。民 間 企 業 に 今 後7年 間 に 計608億 ドル余 り の 省 エ ネ ル ギ ー投 資 を して も ら い,CO2を は じめ と し た 温 室 効 果 ガ ス の排 出 量 を 削 減 す る と い う も の で あ る。
1)省 エ ネ ル ギ ー型 電 気 冷 蔵 庫 の 開 発,省 エ ネ ル ギ ー 型 照 明 器 具 へ の転 換,2)肥 料,殺 虫 剤 の 削
表11ク リン トン政 権 の 当初 の エネ ル ギ0新 税(案)の 概 要
税 率
基 本 税25.7セ ン ト/百 万BTU 石 油 付 加 税34.2セ ン ト/百 万BTU
課税対象
税 率(セ ン ト/百 万BTU)
各燃料単位変換後 の税率
原油
59.9 3.47ド ル/バ レ ル天 然 ガ ス 25.7 .26ド ル/ 百 万 立 方0フ ィ ー ト
石炭
25.7 5.57ド ル/t原子力
25.7 0.0027ド ル/kwh水力
25.7 0.0027ド ル/kwh(注)①BTU:熱 量 単 位
② 非 燃 料 用 途 の 化 石 燃 料,太 陽 エ ネ ル ギ ー ・地 熱 ・ 風 力 な ど再 生可 能 エ ネ ル ギ ー は課 税 対 象 外
導 入 時 期
94年7月1日 よ り 上 記 税 率 の3分 の1 95年7月1日 よ り 上 記 税 率 の3分 の2 96年7月1日 よ り 上 記 税 率 全 額税収見込み
97会 計 年 度220億 ドル(約2兆6,400億 円)出 所:(財)日 本 エ ネ ル ギ ー経 済 研 究 所 「米 国 ・エ ネ ル ギ ー 政 策 法 の 概 要 と そ の 評 価 」。
地球 温暖化 と 「くるま社 会」
減s3)自 動 車 タ イ ヤ に 対 す る省 エ ネ ル ギ ー 度 格 付 け ラ ベ ル の 張 付 け,新 規 計 画 の な か で 注 目 で き る の は 自 家 用 自 動 車 で 通 勤 す る社 員 に 対 して 企 業 が 駐 車 場 使 用 料 金 を 支 払 う代 わ りに 相 当 額 を 現 金 で 支 払 う制 度 の 導 入 で,社 員 が 公 共 交 通 機 関 で 通 勤 す れ ば,駐 車 代 金 と通 勤 費 の 差 額 が 社 員 の 収 入 に な る た め 公 共 交 通 機 関 利 用 の 奨 励 策 と して生 き る こ と と な る。 こ う したcotの 排 出 削 減 策 は企 業 や 個 人 の 自発 的 努 力 だ け に 依 存 して,当 初 の構 想 に あ っ た 炭 素 税 をCO2排 出 量 に 応 じ て 賦 課 す る と い う施 策 が 撤 回 され た た め,そ の 効 果 は ほ と ん ど 期 待 で き な い。 し た が っ て2000年 の 温 室 効 果 ガ ス の 排 出 量15億6800万 ト ン と 予 測 さ れ る 量 を 14億5900万 ト ンに 抑 え る こ とが で き る と い う ク リ ン ト ン政 権 の 主 張 に は ほ と ん ど 信 頼 性 が 乏 し
いo
強 制 力 の欠 け た 実 現 の 可 能 性 の な い 希 望 の 羅 列 に止 ま って い る し,経 済 成 長 へ の 刺 激 策 と して の 効 果 を 重 視 して,環 境 政 策 自体 と して の評 価 は低 くな って い る。 この ク リ ン トン の10月19日 の演 説 の 基 調 で は環 境 政 策 よ り も経 済 政 策 と して の意 義 が 重 視 さ れ て い る。
図11米 国 の1990年 と2010年 の 輸 送 部 門 エ ネ ル ギ ー 消 費
團 乗用 車 睡 トラック 團 航 空
%/海 運
圏 鉄道
27
7.地 球環境政策 を後退 させた諸要因
米 国 と して は 画 期 的 な ク リ ン ト ン政 権 の 環 境 保 護 の た め の 課 税 方 式 と,自 動 車 燃 料 効 率 につ い て の基 準 の導 入 案 を 挫 折 さ せ た の は何 で あ っ た か 。 そ れ は エ ネ ル ギ ー 消 費 に 関 連 す る分 野 に利 害 関 係 を もっ 企 業 と業 界 団 体 に よ る 環 境 政 策 の 成 立 を は ば も う と す る しつ よ う な 工 作 で あ っ た 。NAM (NationalAssociationofManufacturers)全 米 製 造 業 連 盟 が 中 心 と な ってAPI(AmericanPetrole‑
umInstitute,ア メ リカ石 油協 会)な ど,燃 料 生 産 ・ 消 費 企 業360社 以 上 を 組 織 し てAffordable EnergyAllianceを 作 り,ク リ ン トン政 権 の 化 石 燃 料 課 税 案 に 対 して 闘 う こ と を 目的 と した 活 動 を 行 って き た 。 こ の 組 織 は有 力 なPR企 業 の 力 を 用 い て 草 の 根 か らの 議 員 工 作 を展 開 して ク リ ン トン 政 権 と連 邦 議 会 に 働 き掛 け た(Nationalノ'ournal, Mayl,1993)。 こ の ほ か 大 統 領 府 の 環 境 委 員 会 に
も直 接 参 加 して,環 境 団 体 と共 に 論 争 して,内 部 か ら転 換 を 図 っ て き た 業 界 団 体 も あ っ た 。 石 油 や 自動 車 業 界 が 先 頭 に立 って 多 面 的 な 活 動 と政 界 工 作 に よ り課 税 案 を 潰 した の で あ る。
腰 砕 け と な っ た ゴ ア 副 大 統 領 と い う表 現 を ナ シ ョ ナ ル ジ ャ ー ナ ル 誌 が 表 現 す る ほ ど現 政 権 の 環 境 政 策 は後 退 した姿 勢 と な って い っ た(Nation‑
al/ourrcdl,July8,1993)o
&世 界 的課 題 とな った くる ま社会 の弊害
15%
6%
2%
23%
17%
7%
z%
24%
53%50%
19902010
(218千 兆Btu)(28。1千 兆Btu)
出 所:EnergyInformationAdministration,Annual EnergyOutlook1993.
米 国 で は じま っ た モ ー タ リゼ イ シ ョ ン は ほ ぼ 半 世 紀 を 経 て 世 界 中 に波 及 した 。 今 日 ま で 先 進 工 業 国 は もち ろ ん,ア ジ ア,中 近 東,南 ア メ リカ か ら
ア フ リカ の主 要 都 市 に ま で モ ー タ リゼ イ シ ョ ンは 広 が り,世 界 中 の 大 都 市 に は 自動 車 が 氾 濫 して い る。 しか しそ の よ うな く る ま社 会 化 は交 通 問 題 を 解 決 す る もの で は な か っ た。 か え って 交 通 渋 滞 に よ り交 通 時 間 を 延 長 し,自 動 車 の 増 加 そ れ 自体 が 自 動 車 に よ る人 的,物 的 移 動 の 障 害 を 増 大 さ せ て い る。 そ れ に過 大 な 自動 車 交 通 に よ る排 気 ガ ス の 発 散 は道 路 周 辺 だ け で な く,大 都 市 の 大 気 そ の も
一28一 地 球 温 暖 化 と 「くる ま社 会 」
の を 悪 化 させ,大 都 市 住 民 の 健 康 を損 な う ほ ど に な っ て い る。 そ して 人 の 健 康 に 害 が な い 程 度 に ま で 大 気 汚 染 を 改 善 す る に は 自 動 車 交 通 量 を削 減 す る以 外 に方 法 が な い ほ ど に な っ て い る。 交 通 事 故 の増 加 も同 様 で あ る。 保 有 台 数 が2億 台 に な ろ う
とす る 米 国 で の 交 通 事 故 に よ る 負 傷 者 は 年 間 約 200万 人,死 者 は4〜5万 人 に の ぼ る が そ の う ち の 90%以 上 は 自動 車 事 故 に よ る(表12参 照)。
世 界 中 で の 自 動 車 事 故 に よ る死 亡 者 は 年 間25 万 人,負 傷 者 は1000万 人 に も の ぼ る と い う。そ れ
は際 限 な く増 加 す る傾 向 に あ る。 自動 車 交 通 の 利 便 性 は つ い に 便 利 で あ る ど こ ろ か 人 の 健 康 を 損 な い,人 を傷 付 け,膨 大 な 数 の死 者 を生 む とい う 自 己矛 盾 を示 す ほ ど に な っ て い る。 世 界 で もモ ー一タ リゼ イ シ ョ ン が 満 開 し た 地 域 で あ る 米 国 の カ リ フ ォ ル ニ ア州 で 近 年 起 き て い る事 態 は モ ー タ リゼ イ シ ョ ンを 克 服 し よ う と す る先 進 的 事 例 と して 注 目 に値 す る 。
モ ー タ リ ゼ イ シ ョ ン は 温 室 効 果 ガ スCO2を 排 出 す る だ け で な い 。 窒 素 酸 化 物 を始 め と した 大 気 汚 染 物 質 の 排 出 源 で もあ る。 日本 の 大 都 市,米 国 の 主 要 都 市 で も 自動 車 に よ る大 気 汚 染 は 深 刻 な 状 況 に あ る。 そ の よ う な大 気 汚 染 に よ る住 民 の 健 康 被 害 も即 時 対 応 策 が 必 要 な 段 階 に あ る。 そ れ に 自 動 車 道 路 は建 設 後,時 が た つ に つ れ て 維 持 補 修 費 が 増 大 す る。 あ と に の べ る よ うに 米 国 の 高 速 道 路 は 舗 装 が 劣 化 し,橋 梁 の 機 能 不 完 全 な もの が 増 加 し維 持 補 修 の た あ に 巨 額 の 支 出 を 要 す る ほ ど に な り,米 国 の ハ イ ウ ェ イ ・シ ス テ ム の 維 持 は危 機 に 陥 って い る 。
そ の よ う な モ ー タ リゼ イ シ ョ ンの 否 定 的 影 響 は 米 国 の 大 都 市 部 分 で 極 限 に達 して お り,地 方 自治 体 は 連 邦 政 府 と は 独 自 の 環 境 政 策 を 実 施 して い
る。 米 国 で も っ と も モ ー タ リゼ イ シ ョ ンが 進 め ら れ て きた カ リフ ォ ル ニ ア州 で は先 駆 的 な 環 境 政 策
と して モ ー タ リゼ イ シ ョ ン を抑 制 す る施 策 を し実 施 して い る。 交 通 体 系 で の 鉄 道 を 中 心 と した 公 共 交 通 の 重 視 で あ る。
ロ サ ンゼ ェ ル ス の バ ス待 合 所 の 棚 に 時 間 表 な ど と並 ん だ チ ラ シ に 「ロ ス を き れ い に!」 と い う の が あ っ た 。 中 身 は 「バ ス の 乗 客 が 増 え て い るの は
表12米 国 交 通 事 故 の う ち 自動 車 事 故 (単 位:1,000)
年次別事故
事 故 合 計(1,000)う ち 自 動 車 事 故 (1,000) 件 数
1970年 16,013
16,524 17,925 19,348 (NA)
.・
48.2 54.5 47.3 (NA) 2,a24
1,858 2,066 1,705 (NA}
16,000 i6,500 17,900 19,300 (NA)
52.6 44.5 51.1 43.8 45.5 2,000 i,sao 2,000 1,704 (NA)
1970年 1975
"1 1985 1989 死 亡 者
1975
"1 1985 1989 負 傷 者
1975 /1 1985 1989 1970年
出 所:STATISTICALABSTRACTOFU.S., U.S.DEPARTMENTOFCOMMERCE
安 い だ け で は な く大 気 の 清 浄 化 に 寄 与 す る か ら だ 。 ロ ス周 辺 の住 民 が マ イ カ ー を 止 め て 週 に一 度 バ ス 利 用 の 通 勤 に 替 え れ ば 大 気 汚 染 物 質 を 年 間 13万 ト ン減 ら し,渋 滞 を20%緩 和 で き る。大 気 汚 染 は南 カ リ フ ォル ニ ア の 住 民 に 健 康 維 持 の た め年 間93億 ドル,1人 当 り年 間770ド ル の 支 出 を 強 い て い る。 環 境 を 話 題 に す る だ け で な く行 動 を!
バ ス に乗 ろ う!』(ロ ス交 通 局)
筆 者 が1992年9月 南 カ リ フ ォ ル ニ ア の交 通 実 態 の調 査 の さ い に 見 付 け た もの だ が この チ ラ シ の な か に交 通 行 政 の 姿 勢 が よ く現 れ て い る。 大 気 汚 染,交 通 渋 滞 か ら の 脱 却 を 目 指 し て い る 南 カ リ
フ ォ ル ニ ア 地 方 で は各 自治 体 が マ イ カ ー の 削 減, 鉄 道 の大 増 強,バ ス事 業 の拡 充 を3本 柱 に 強 力 な 施 策 を始 め て い る。 そ こで は 自 動 車 交 通 を 中 心 と した 米 国 の 交 通 体 系 が 行 詰 ま り,打 開 策 と して は 鉄 道 の 復 権,公 共 交 通 の 拡 充 しか な い と い う こ と に つ い て の 住 民 全 体 の 合 意 が 形 成 さ れ て い るか ら