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( 千葉大学審査学位論文 ) 着生シダ植物の定着に蘚苔類群落が与える影響 2016 年 6 月 千葉大学大学院園芸学研究科環境園芸学専攻緑地環境学コース水野大樹

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(千葉大学審査学位論文)

着生シダ植物の定着に蘚苔類群落が与える影響

2016 年 6 月

千葉大学大学院園芸学研究科

環境園芸学専攻緑地環境学コース

水野大樹

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目次

第 1 章 研究の背景と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1. 1 着 生 シダ 植 物 の定 着 環 境 調 査の 意義 1. 2 ウ ラ ボシ 科 の 着生 シ ダ 植 物の特 徴 1. 2. 1 ミ ツデ ウ ラ ボシの 分布 ・生態 1. 2. 2 ノ キシ ノ ブ の分布 ・生 態 1. 2. 3 ミ ツデ ウ ラ ボシお よび ノキシ ノ ブ を研 究対 象と する必 要 性 1. 3 着 生 シダ 植 物 の乾 燥 適 応 1. 4 着 生 シダ 植 物 の生 態 研 究 の 現状 1. 4. 1 胞 子体 と 前 葉体の 生態 1. 4. 2 前 葉体 の 生 育環境 と蘚 苔類 1. 4. 3 蘚 苔類 に よ る植物 の定 着促進 と 定 着阻 害 1. 5 本 研 究の 構 成 第 2 章 着生シダ植物の定着における蘚苔類群落の役割・・・・・・・・・ ・10 要旨 2. 1 は じ めに 2. 2 調査地 2.2.1 岩上着生シダ植物の生育割合調査 2.2.2 樹上着生シダ植物の生育割合調査 2. 3 方 形 区調 査 方 法 2. 3. 1 岩 上着 生 シ ダ植物 の分 布調査 2. 3. 2 樹 上着 生 シ ダ植物 の分 布調査 2. 4 結果 2. 4. 1 岩 上着 生 シ ダ植物 の生 育と蘚 苔 類 の被度 2. 4. 2 樹 上着 生 シ ダ植物 の生 育と蘚 苔 類 の被度 2. 5 考察 2.5.1 蘚苔類群落内で生育割合が高くなる要因 2.5.2 蘚苔類の物理的構造による定着促進 2.5.3 蘚苔類の無機的資源供給による定着促進 2.5.4 さまざまな要因の複合的作用

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第 3 章 蘚苔類の種の違いと着生シダ植物の定着の関係 ・・・・・・・・・26 要旨 3. 1 は じ めに 3. 2 調 査 地・ 方 法 3. 2. 1 岩 上着 生 シ ダ植物 3. 2. 2 樹 上着 生 シ ダ植物 3. 3 結果 3. 3. 1 岩 上着 生 シ ダ植物 の定 着と蘚 苔 類 の種 の関 係 3. 3. 2 樹 上着 生 シ ダ植物 の定 着と蘚 苔 類 の種 の関 係 3. 4 考察 3. 4. 1 蘚 苔類 群 落 の形態 の違 いが着 生 シ ダ植 物の 定着 に与え る 影響 3. 4. 2 群 落高 が 低 い苔類 群落 に前葉 体 が 多い 要因 3. 4. 3 群 落高 が 高 い蘚類 群落 に胞子 体 が 多い 要因 第 4 章 蘚苔類群落によるシダ植物の胞子保持 ・・・・・・・・・・・・・39 要旨 4. 1 は じ めに 4. 2 方法 4. 2. 1 実 験用 蘚 苔 類の採 取と 形態の 記 録 4. 2. 2 蘚 苔類 マ ッ トの整 形 4. 2. 3 シ ダ植 物 胞 子の懸 濁液 作成 4. 2. 4 蘚 苔類 の 胞 子保持 効果 の計測 4. 2. 5 統 計解 析 4. 3 結果 蘚 苔 類 群落 に よ る胞 子保 持効 果 4. 4 考察 蘚 苔 類 群落 の 形 態と 胞子 保持 効果 の 違 い 第 5 章 蘚苔類群落の種の違いと胞子体形成の関係 ・・・・・・・・・・・50 要旨 5. 1 はじめに 5. 2 調査地と 方 法 5. 3 結果 蘚 苔 類 の種 類 と 胞子 体形 成率 ・前 葉 体 枯死率の違 い 5. 4 考察 蘚 類 群 落で 胞 子 体形 成が しや すい 要 因

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第 6 章 総合考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57 6. 1 岩 上 着生 ・ 樹 上着 生 シ ダ 植 物の 定着 にお け る蘚 苔 類群落 の役割

引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61

Summary・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64

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第 1 章 研究の背景と目的

1. 1 着 生 シダ 植 物 の定着 環境調査の意義 シダ植物とは,維管束植物のうち種子を形成せず,胞子によって繁殖を行う植物 の総称である.胞子体と配偶体 (シダ植物の配偶体を特に前葉体と呼ぶ.本論文で は以下前葉体とする.)が独立して生活しており,生活環の中では胞子体が目立ち, 配偶体は胞子体に比べてはるかに小さい .定着初期に形成される前葉体はクチクラ 層を持たず細胞数層で形成されており非常に貧弱である ため,他の植物との競争の 影響を受けやすい.したがって,シダ植物の前葉体の多くは攪乱直後のむき出しの 地表面に定着する.斜面の下部などの湿潤な地 表面は前葉体の生育に好適であ り多 くの地上生シダ植物にとって好適な生育環境である .一方で,崖や樹幹などの切り 立った環境に特異的に生育する 着生シダ植物も存在する.これらのシダ植物の生育 環境は,地上生シダ植物とは極めて大きく異なる . 崖や樹幹などでは,生育場所に土壌が存在しないため ,水分の供給源は雲霧や降 雨時に発生する地表流や樹幹流である. しかし,岩上や樹幹上ではこれらの水分は 定着基盤の表面を流れてしまうため,効率的に利用する ことができない.また,頻 繁に攪乱が生じるような場所では,着生シダ植物が継続的に生育することが困難で ある.したがって,着生シダ植物が生育するためには,生育環境に存在する何らか の定着促進効果が重要である可能性がある. 着生シダ植物の定着を支える要因として 考えられるのが蘚苔類の存在である.蘚 苔類は着生シダ植物と同じハビタットを持つ.したがって,着生シダ植物の胞子が 蘚苔類群落内で発芽し,蘚苔類による何らかの定着促進の影響を受けながら ,前葉 体の形成や,受精,胞子体形成を行っている可能性がある. その一方で,蘚苔類群 落内で定着することで,蘚苔類との競争に伴う生育阻害が生じている可能性もある. 着生シダ植物の定着における蘚苔類の役割を明らかにすることは,崖や樹幹などの 切り立った環境におけるシダ植物の定着メカニズムを解明する上で極めて重要であ る.しかしながら,着生シダ植物の定着と蘚苔類群落の関係に着目した研究例はな い. シ ダ 植 物 を 含 む 着 生 植 物 群 は 森 林 生 態 系 に お け る 植 物 の 種 多 様 性 に 貢 献 し て お り(服部 2014),生物多様性維持の視点から重要な分類群である.定着基盤となる 樹木が小さいうちは,樹幹につく着生維管束植物のバイオマスは種子植物よりもシ ダ植物の方が多い(Tewari et al. 1985)ことからも,本研究は着生維管束植物の全 般の生態を解明するための基礎的知見を得る上で重要である.本研究では,着生シ

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ダ植物の定着における蘚苔類群落の役割を明らかにし,なぜ着生シダ植物が崖や樹 幹のように土壌もなく切り立った環境でも生育可 能なのかを明らかにした . なお,本研究では,科レベルで着生の特徴を示すシダ植物 の中で,日本列島に生 育する種数が最も多いウラボシ科 Polypodiaceae を研究の対象とした.ウラボシ科の シダ植物には,岩や崖に生育するものと樹幹に生育するものが存在する.本研究で は,主に岩や崖上に特異的にみられるものを岩上着生シダ植物,主に木の幹や枝の 表面にみられるものを樹上着生シダ植物 ,両者を総称して着生シダ植物 として扱っ た.本研究では日本列島全域に分布域をもつ種を研究対象とし,岩上着生シダ植物 のミツデウラボシ Crypsinus hastatus と,樹上着生シダ植物のノキシノブ Lepisorus

thunbergianus を 研究 の対 象 と し た . 1. 2 ウ ラ ボシ 科 の 着生シ ダ植 物の特 徴 ウラボシ科のシダ植物は日本列島に 12 属約 50 種が生育している(岩槻 1992). 地域別にみると,暖温帯の南部にのみ生育している種が多い(倉田・中池 1979,1981 ほか)が,暖温帯落葉広葉樹林帯や冷温帯落葉広葉樹林帯の中でも 雲霧が発生しや すい湿潤な場所に生育する種 も存在する.また,特定の地域に限らず日本列島に広 く分布する種も存在する(倉田・中池 1983,1985 ほか).本研究の調査対象とした, ミツデウラボシとノキシノブは日本列島のほぼ全域に生育している.そこで ,調査 対象のミツデウラボシとノキシノブの 2 種について,近縁種も含めて分布や生態の 特徴を既存研究からまとめた. 1. 2. 1 ミ ツデ ウ ラ ボシ の 分 布 ・ 生態 日本列島に生育するミツデウラボシ属 Crypsinus のシダ植物は,タカノハウラボ シ C. engleri,ヒメタカノハウラボシ C. yakushimensis,ミツデウラボシ,ヤクシマウ ラボシ C. yakuinsularis,ミヤマウラボシ C. veitchii の 5 種である(岩槻 1992).ミ ツデウラボシ属のシダ植物は樹上や岩上に着生し根茎は横走する(岩槻 1992).ミ ツデウラボシ属のうち,日本列島に最も広範囲にわたって分布しているのがミツデ ウラボシである.根茎は長く横走し,葉は単葉ないしは三出複葉でまれに五出複葉 となり硬い紙質である(岩槻 1992).胞子体は砂岩や泥岩などで形成された崖など に生育する岩上着生シダ植物で ,日の当たる乾燥した環境に適応して生育し,前葉 体は左右相称の心臓形を呈す(百瀬 1967). 1. 2. 2 ノキシノ ブ の分 布 ・ 生 態

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日本列島に生育するノキシノブ属 Lepisorus のシダ植物は,トヨグチウラボシ L.

clathratus,コ ウ ラ ボ シ L. uchiyamae,ホ テ イ シダ L. annuifrons,ミヤ マ ノキシ ノ ブ L. ussuriensis,ヒ メ ノ キ シ ノ ブ L. onoei,ウ ロコ ノキ シ ノ ブ L. oligolepidus,ツク シノ キ

シノブ L. tosaensis,ホソバクリハラン L. boninensis,ノキシノブの 9 種である(岩 槻 1992).ノキシノブ属のシダ植物は,ミツデウラボシ属と同様に樹上や岩上に着 生して生育し,根茎は横走するがミツデウラボシ属に比べて短いものが多い(岩槻 1992).ノキシノブ属のシダ植物のうち,日本列島に最も広範囲にわたって分布して いるのがノキシノブである.根茎は横走し葉は単葉で革質である(岩槻 1992).胞 子体は,空中湿度の高い渓流沿いの森林内をはじめ,都市公園内に植栽された樹木 の幹上などの乾燥した環境まで幅広く生育している. 前葉体はミツデウラボシと同 様に,左右相称の心臓形を呈している(百瀬 1967). 1. 2. 3 ミ ツデ ウ ラ ボシ お よ び ノ キシノ ブを研 究対 象 とする 必要性 ミツデウラボシは岩上に特異的に着生するのに対して,ノキシノブは岩上もしく は樹上に着生するといった特徴の違いはあるものの,これらの 2 種は日本列島の全 域わたって分布し,乾燥した環境にも生育している. 地域や場所によって異なる多 様な環境に適応して生育している だけでなく,シダ植物生育に不適な乾燥環境にも 適応して生育している .ミツデウラボシやノキシノブの定着環境を調査することは, 水分環境に乏しい環境でなぜ着生植物が定着し群落を形成できるかを解明する上で 極めて重要である.さらに,全国的に分布しているため,多くの個体を調査する上 で適したシダ植物である. そこで本研究では,岩上および樹上に生育する着生シダ 植物のうち,乾燥した環境でも生育が可能であり, かつ亜高山帯や高山帯を除く日 本列島のほぼ全域に分布域をもつミツデウラボシとノキシノブを研究の対象とした. なお本研究では,ミツデウラボシは砂岩斜面上に生育している個体を調査対象と し,ノキシノブについては樹上に生育するもの調査対象とした.これらの 2 種は, 本論文ではまとめて着生シダ植物として扱ったが,岩上と樹上では定着基盤の形状 やそこに生育する蘚苔類の種 が異なる可能性が高い .さらには,これらの 2 種では 根茎の走り方など,成熟した胞子体の生育様式にも違いがある可能性がある. そこ で本論文では岩上と樹上に生育する蘚苔類の種や形態の違い や,成熟した胞子体の 生育様式の違いにも着目した. 1. 3 着生 シダ植 物 の乾燥適応 研究対象のミツデウラボシとノキシノブは, ともに乾燥した環境に生育可能な着

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生シダ植物である.ここでは,岩上着生および樹上着生シダ植物の乾燥に対する生 理的・生態的な適応ついての既存研究を整理した. シダ植物は胞子発芽や前葉体形 成,受精までの配偶体の生長の過程で多くの水分を必要とする.そのためシダ植物 の多くは年間を 通して 湿潤環境が維持 される 熱帯雨林に多い ( Page 1979).特に, 岩上着生および樹上着生シダ植物は岩や崖,樹幹上など, 水分を保持する土壌がほ とんど存在しない場所に生育しているため,生育場所 での水分の確保は地上生シダ 植物に比べて重要である.日本列島においてもシダ植物を含む樹上着生植物は,気 候が温暖で空中湿度の高い照葉樹林で多様性が高い傾向がある(服部 2014)が,岩 上着生・樹上着生シダ植物は乾燥にさらされた場合でも生育可能にするための様々 な特徴を持っている場合が多い. 岩上着生・樹上着生シダ植物は, 地上生シダ植物よりも乾燥に対する適応性が高 い.例えば,小型の単葉をもつ 着生シダ植物は小葉の面積が少ないため, 葉の表面 からの水分の蒸発が少ない.また,根茎を生育基盤に張り巡らせることで広範囲の 水分を吸収可能にしていることも多い( Hietz 2010).さらに,種によっては葉表面 の微細構造によって水分の蒸発を防ぐ機構も存在する.乾燥環境に生育するシダ植 物では,葉の表面が細かな毛状突起に覆われている場合があり,密生した毛が太陽 光を反射させて葉の温度上昇を抑え蒸散を防いでいる( Nobel 1991).また,乾燥し やすい環境に生育するシダ植物には,乾燥に適応するための生理的特徴を有するこ とが知られている.例えば,ヒトツバ属 Pyrrosia はクチクラ層を厚くして水分の蒸 散を防ぐとともに葉に貯水細胞を持つことで乾燥に適応している( Pandé 1935).多 肉植物のように葉に水を保持すること で乾燥に適応するシダ植物がある一方で,ク チクラ層が発達させず蘚苔類と同じように葉の 表面から水分の出し入れを行う種も 存 在 す る . こ れ ら の 特 徴 は 可 変 水 性 ( poikilohydry ) と 呼 ば れ , コ ケ シ ノ ブ 科 Hymenophyllaceae など,比較的薄い葉をもつ分類群に多く見られる.このような特 徴を持つシダ植物は乾燥時には水分が急速に蒸発するが,再び水分の供給があると 急速に水分を吸収して急速に元の状態に戻ることが可能である( Hietz 2010). 1. 4 着 生 シダ 植 物の生態 研 究 の 現状 上記で述べた着生シダ植物の乾燥適応機構 の存在が,土壌の存在しない厳しい水 分環境の場所での生存を可能にしていると予想される.しかしながら,岩上着生・ 樹上着生シダ植物がどのような微環境を選択して 定着しているかといった,生態学 的な研究はあまり進んでいない.これは,シダ植物の定着・生育環境を明らかにす るためには胞子体の生育環境だけでなく,胞子が散布された後に最初に形成される

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前葉体の生育環境を合わせて明らかにする必要があるためである.岩上着生・樹上 着生シダ植物の定着メカニズムを解明するためには,胞子体と前葉体のそれぞ れの 生態的特徴を把握しておく必要がある.そこで,次節では胞子体や前葉体の生態や 生育環境に関する既存研究を整理し,これらのシダ植物の定着メカニズムを解明す る上での問題点を提起した. 1. 4. 1 胞 子体 と 前 葉体 の 生 態 シダ植物の胞子体が,種ごとにどのような環境に生育するのかについてはよく知 られており,分類群によって生育環境が異なることがわかっている.例えば,同じ 樹上着生シダ植物でも, 1 層の細胞層から構成される葉をもつコケシノブ科のシダ 植物は,ウラボシ科のシダ植物に比べて空中湿度が高い環境に多い.シダ植物の胞 子体は生活環のうち大部分を占め,形態から容易に種同定ができる.したがって, 胞子体がどのような環境に生育するかを調査することは比較的容易なことが多い. しかし前葉体は胞子体に比べて極めて小さく,分類群を識別する形質に乏しいた め,(百瀬 1967),様々な分類群のシダ植物が混在して生育する場所では目視による 前葉体の種同定は極めて困難である. 特定の種の前葉体がどのような環境に生育し ているか明らかにすることは困難な課題であった .したがって,あるシダ植物の胞 子体が分布する場所で,その環境に適した前葉体だけが発芽して定着するのか,最 初は様々な種の前葉体が発生するが生長の過程でその環境に適した種だけが淘汰さ れるのか,といったシダ植物の定着過程は詳細には明らかになっていない.前葉体 がどのような環境に定着し,どのようにして胞子体を形成し,群落を形成している かを明らかにすることは,岩上着生・樹上着生シダ植物の定着メカニズムを解明す る上で極めて重要である.本研究では, できるだけ単一の着生のシダ植物が生育し ている場所の中で,他に生育する岩上着生・樹上着生シダ植物の種数が少ない場所 を選ぶことで観察対象とするシダの種類を限定し,岩上着生や樹上着生の前葉体や 胞子体の生育環境を調査した. 1. 4. 2 前 葉体 の 生 育環 境 と 蘚 苔 類 シダ植物の前葉体は,他の植物に比べてきわめて小さく 生長が遅いため,周囲の 植物による被陰による影響を受けやすいと考えられる.多くの地上生シダ植物の前 葉体は,他の植物との競争を避けるため攪乱が生じた直後の地 表面に定着すること が知られている(Peck et al. 1990).一方,樹上着生シダ植物の前葉体は,樹幹 表面 の中でもむしろ攪乱頻度が少なく,蘚苔類が群落を形成している場所に多く定着す

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る(Dassler and Farrar 2001, Watkins et al. 2007a).これは,崖や樹幹などの切り立っ た生育環境では,攪乱が生じることで生育基盤が落下してしまうため着生植物が定 着することが困難である ことが原因であると考えられている.しかし, 攪乱が生じ にくい安定した崖や樹幹では 蘚苔類が群落形成している.したがって,岩上着生・ 樹上着生シダ植物の前葉体は胞子体を形成するまでの期間,蘚苔類からの影響を大 きく受けていると予想される.岩上着生・樹上着生シダ植物の定着にこれらの蘚苔 類がどのような影響を与えているかを調査することで,岩上着生・樹上着生シダ植 物がどのようにして岩上や樹幹上に定着し群落を形成しているかを明らかにするた めの基礎的な知見を得ることができる. 樹上着生シダ植物の生態に関する既往研究 では,前葉体が 2 年以上の長い寿命を もつことや(Watkins et al. 2007a),これらの前葉体は乾燥して水分が失われた後で も再び水分が 供給され ると急速に元 の状態に 戻ることがで きること ( Watkins et al. 2007b),乾燥にさらされた樹上着生シダ植物の前葉体は無性芽を形成すること( Ong and Ng 1998)と い っ た,着 生 シ ダ 植物の 前 葉体が 地上 生シダ植物 の前 葉体 とは 異な る特徴を持つことが明らかになっている.これらの特徴 をもつことで,蘚苔類群落 内でも定着が可能になっている可能性が あるが,その一方で蘚苔類群落の存在 が前 葉体の定着を促進している可能性もある. 1. 4. 3 蘚 苔類 に よ る植物の 定 着促進と 定着阻 害 蘚苔類が植物の定着を促進するはたらきは, 着生シダ植物においてはほとんど研 究例がない.しかし,蘚苔類と針葉樹の定着に関しては,倒木更新に関する 研究が 進んでいる(井上・飯島 2013).倒木上で定着する針葉樹の実生は,蘚苔類群落内 ほど定着率が高く,蘚苔類の保水効果が種子の発芽促進や実生を乾燥から守る はた らきをしていると考えられている(Cross 1981; Harmon 1989; Nakamura 1992).蘚苔 類は群落内に乾燥重量の 15 倍近くの水分を保持できる(Proctor 2009)ため,その 保水効果によって植物の実生の生長が促進されると考えられている.それに加え, 蘚 苔 類 群 落 に 植 物 の 種 子 の 流 出 を 防 ぐ 機 能 が あ る こ と も 知 ら れ て い る ( Harmon 1989). 以上のことから,シダ植物の定着においても蘚苔類群落は前葉体と競争関係にあ るだけではなく,前葉体の生長を促進する作用を持ち合わせており,蘚苔類群落の 存在が岩上着生・樹上着生シダ植物の生育に大きな役割を担っている可能性が も十 分に考えられる.しかしながら,蘚苔類群落と岩上着生・樹上着生シダ植物の生育 の関係に着目し,それらの環境を詳細に研究した例は存在しない.Dassler and Farrar

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(2001)や Watkins et al.(2007a)の研究では,樹上着生シダ植物の生育環境におけ る蘚苔類群落の存在は記しているものの,蘚苔類の種類や多様な蘚苔類の群落構造 がシダ植物の定着や生長にどのような影響を与えるかは述べていない.岩上着生や 樹上着生のシダ植物の前葉体が蘚苔類群落からどのような影響を受けているかを 明 らかにすることは,崖や樹幹に生育する植物の定着メカニズムを解明する ために必 要な知見を得る上で重要な課題である. 本論文では,岩上着生・樹上着生シダ植物の定着メカニズムを明らかにすること を目的として,特に,岩上や樹 幹上に存在する蘚苔類群落に着目した.前葉体の定 着や生存,胞子体形成の有無とそこに生育する蘚苔類の種類や群落形態を調査し, 蘚苔類群落が岩上着生・樹上着生シダ植物の定着にどのような影響を与えているか を明らかにした. 1. 5 本 研 究の 構 成 本研究の目的は,蘚苔類群落が着生シダ植物の定着に与える影響を明らかにする ことである.そのためには,蘚苔類の有無によって着生シダ植物の生育 にどのよう な違いがみられるかといった,蘚苔類の量的な違いや ,蘚苔類の種に起因する群落 構造の違い,あるいは蘚苔類から出される化学物質による影響など,さまざまな視 点から蘚苔類が着生シダ植物の定着に与えている影響を評価することが重要である. そこで本研究では,はじめに蘚苔類群落の存在と着生シダ植物の生育状況にどの ような関係があるのかを把握するために 野外調査を行った.次に,野外調査の結果 から推察された,蘚苔類 が着生シダ植物の定着に与えると考えられる要因について 仮説を立てそれらの検証を行った(図 1).野外調査と仮説の検証の 2 つの手法を用 いることで,着生シダ植物の定着に蘚苔類群落がどのような影響を与えているか明 らかにした. 第 2 章と第 3 章は野外調査の結果を示した.第 2 章では,岩上着生シダ植物のミ ツデウラボシと,樹上着生シダ植物の ノキシノブのそれぞれの種で,蘚苔類の被度 と着生シダ植物の生育割合を調査することで,蘚苔類の存在によって着生シダ植物 が定着しやすくなるかを明らかにした. その結果をもとに,第 3 章では,蘚苔類の 種による群落構造の違いが前葉体や胞子体の生育に どのような影響を与えているか を調査した. 第 4 章と第 5 章は,仮説検証の結果を示した.第 4 章では,崖や樹幹のように切 り立った環境でも,蘚苔類が存在することで多くの胞子を生育環境に保持できるた め,岩上着生・樹上着生シダ植物が蘚苔類群落に多く生育する のではないかという

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仮説を立て,蘚苔類の種類ごとに シダ植物の胞子の保持効果を検証した.第 5 章で は,苔類群落と蘚類群落で胞子体の生育量が異なることを明らかにするため,蘚類 が存在すると苔類が存在する場所のそれぞれで前葉体から胞子体を形成するまで継 続観察した. 最後に第 6 章で,野外調査および検証実験によって得られた結果をもとに,着生 シダ植物が定着するためにはどのような蘚苔類が必要か 総合的に考察した. なお,本論文における学名および和名は,シダ植物は岩槻 (1992)に,蘚苔類は 岩月(2001)に,顕花植物は佐竹ほか(1981,1982a,b,1989a,b)に従った.

(13)

図1

論文

構成

1

研究の背景と目的

る特徴を

もつ

生シ

の定

着に

は蘚

苔類

群落

必要

ある

可能性

存研究のレビュー

2

蘚苔類群落の存在

○ 岩上着生 ・ 樹 上 着 生 に 関 わ ら ず 幼 胞 子 体 は 蘚 苔 類 群 落に生育

3

蘚苔類の分類群の違い

○ 蘚 類 群 落 の 存 在 が 胞 子 体形成に重要な 可能性

6章

総合考察

育適所で

着で

きな

するのに

重要で

4・

5章

定着促進要因の検証

5

胞子体形成率の違い

○ 蘚苔類群落が存在す る こ とでシ ダの胞子が急傾 斜地 に とど まるこ とができる ○ 群落密度が高い蘚苔類 ほど たくさん の胞子 を保持す る

4章

胞子保持効果の違い

○ 群 落 高 が 高 い 蘚 類 群 落 が あ る 場 所 で 多 く の 胞 子 体 が 形成される ○苔類の存在に よ っ て胞子 体形 成率が 低くな る

2

3章

定着環境調査

蘚苔類

岩上着生 シダ 植物 樹上着生 シダ 植物

小型苔類

前葉体

大型蘚類

胞子体

(14)

第 2 章 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 に お け る 蘚 苔 類 群 落 の 役 割

要 旨 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 や 初 期 生 長 に 蘚 苔 類 群 落 が ど の よ う な 影 響 を 与 え て い る か 明 ら か に す る た め , 砂 岩 斜 面 上 お よ び 樹 幹 上 に お け る 蘚 苔 類 の 被 度 と 着 生 シ ダ 植 物 の 幼 胞 子 体 の 生 育 割 合 の 関 係 を 調 査 し た . 砂 岩 斜 面 上 ・ 樹 幹 上 と も に 幼 胞 子 体 は , 蘚 苔 類 の 被 度 が 高 い 場 所 ほ ど 高 い 割 合 で 生 育 し て い た . 蘚 苔 類 群 落 の 物 理 的 構 造 に よ っ て シ ダ 植 物 の 胞 子 が 急 傾 斜 地 に 保 持 さ れ る こ と で 定 着 が し や す く な っ て い る 可 能 性 や , 蘚 苔 類 群 落 の 保 水 効 果 に よ っ て 胞 子 の 発 芽 や 受 精 が し や す い 環 境 が 作 り 出 さ れ て い る 可 能 性 な ど が 示 唆 さ れ た . さ ら に , 砂 岩 斜 面 に 生 育 す る 蘚 苔 類 の 優 占 種 に よ っ て , 蘚 苔 類 の 被 覆 量 と 幼 胞 子 体 の 生 育 割 合 の 間 の 相 関 の 強 さ が 異 な っ た こ と か ら , 蘚 苔 類 の 種 の 違 い に よ っ て 岩 上 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 に 与 え る 影 響 が 異 な る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た . 2. 1 は じ め に 第 2 章 で は , 崖 や 樹 幹 上 に お け る 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 に 蘚 苔 類 群 落 の 有 無 や 被 度 の 違 い が ど の よ う な 影 響 を 与 え て い る か 明 ら か に す る . 着 生 植 物 相 の 大 部 分 は シ ダ 植 物 と 蘚 苔 類 が 占 め て い る ( Tewari et al. 1985). 着 生 シ ダ 植 物 の 生 育 環 境 を 観 察 す る と , 極 め て 高 確 率 で 蘚 苔 類 が 群 落 を 形 成 し て い る . 蘚 苔 類 は 着 生 植 物 相 の 中 で も 遷 移 の 初 期 に 出 現 す る 植 物 で あ る ( Mazimpaka et al. 2010). し た が っ て , 着 生 シ ダ 植 物 は 蘚 苔 類 が 群 落 形 成 し た 後 に 出 現 し て い る 可 能 性 が 高 い . 蘚 苔 類 群 落 が 存 在 す る 場 所 に 着 生 シ ダ 植 物 が 定 着 し た と 仮 定 す る と , 着 生 シ ダ 植 物 の 中 で も 定 着 し て 間 も な い 小 型 の 胞 子 体 や , 前 葉 体 が 蘚 苔 類 群 落 内 に 多 数 生 育 し て い る 可 能 性 が あ る . 蘚 苔 類 群 落 内 に 着 生 植 物 の 前 葉 体 が 生 育 す る こ と は , Dassler and Farrar( 2001) や , Watkins et al. ( 2007a) に よ っ て 確 認 さ れ て い る が , 蘚 苔 類 の 生 育 量 と 前 葉 体 や 胞 子 体 の 生 育 割 合 に ど の よ う な 関 係 が あ る か は 明 ら か に な っ て い な い . 本 章 で は , 岩 上 や 樹 幹 上 に 生 育 す る 蘚 苔 類 の 被 度 と , そ こ に 生 育 す る 着 生 シ ダ 植 物 の 生 育 割 合 の 関 係 に 着 目 し た . 岩 上 着 生 シ ダ 植 物 の ミ ツ デ ウ ラ ボ シ と , 樹 上 着 生 シ ダ 植 物 の ノ キ シ ノ ブ の 2 種 の 着 生 シ ダ 植 物 の 生 育 環 境 に つ い て 野 外 調 査 を 行 い , 蘚 苔 類 の 被 度 と 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 初 期 個 体 の 生 育 割 合 の 関 係 を 明 ら か に し た .

(15)

2. 2 調 査 地 野 外 調 査 は , 岩 上 着 生 シ ダ 植 物 と 樹 上 着 生 シ ダ 植 物 の 2 つ の 異 な る 生 育 環 境 を 調 査 す る た め , 2 ヵ 所 で 行 っ た . 2. 2. 1 岩 上 着 生 シ ダ 植 物 の 生 育 割 合 調 査 岩 上 着 生 シ ダ 植 物 の 調 査 は , ミ ツ デ ウ ラ ボ シ が 高 頻 度 で 生 育 し て い た 千 葉 県 茂 原 市 桂 の 林 道 脇 斜 面( 35°29.683′ N,140°16 .667′ E)で 行 っ た( 図 2).調 査 地 は ス ギ Cryptomeria japonica の 植 林 内 を 通 る 林 道 脇 の 斜 面 で ,高 木 層 に は ,ス ダ ジ イ Castanopsis sieboldii, コ ナ ラ Quercus serrata, ア ラ カ シ Q. glauca, ウ ラ ジ ロ ガ シ Q. salicina が 生 育 し て い た .低 木 層 に は ,ヒ サ カ キ Eurya japonica,ム ラ サ キ シ キ ブ Callicarpa japonica,ア オ キ Aucuba japonica な ど が 生 育 し て い た . 草 本 層 に は ,ジ ャ ノ ヒ ゲ Ophiopogon japonicus や テ イ カ カ ズ ラ Trachelospermum

asiaticum , カ ヤ ツ リ グ サ 科 の 一 種 Cyperaceae sp . が 生 育 し て い た . 林 道 脇 の 斜

面 崖 は 乾 燥 し た 砂 岩 に よ っ て 構 成 さ れ て お り 8 種 類 の 蘚 苔 類 が 生 育 し て い た ( 表 1). 最 も 優 占 し て い た の は 苔 類 の チ ャ ボ マ ツ バ ウ ロ コ ゴ ケ Blepharostoma

minus で , 次 い で 蘚 類 の キ ャ ラ ハ ゴ ケ Taxiphyllum taxirameum が 優 占 し て い た .

胞 子 の 散 布 元 と し て 考 え ら れ る シ ダ 植 物 は , 調 査 地 の 周 辺 約 100m の 範 囲 に 22 種 類 生 育 し て い た ( 表 2). こ の う ち 斜 面 上 に 生 育 し て い た シ ダ 植 物 は 5 種 で , ホ ラ シ ノ ブ Sphenomeris chinensis, コ モ チ シ ダ Woodwardia orientalis, ミ ゾ シ ダ

Stegnogramma pozoi subsp. mollissima,ゲ ジ ゲ ジ シ ダ Thelypteris decursivepinnata ,

ミ ツ デ ウ ラ ボ シ の 5 種 で あ っ た .斜 面 上 に 生 育 し て い た シ ダ 植 物 の 幼 胞 子 体 は , ホ ラ シ ノ ブ , コ モ チ シ ダ , ミ ツ デ ウ ラ ボ シ の 3 種 で あ っ た が , 大 半 は ミ ツ デ ウ ラ ボ シ の 幼 胞 子 体 で あ っ た . 調 査 地 の 気 候 は , 調 査 地 に 最 も 近 い 気 象 庁 の 茂 原 観 測 所 の 2005 年 か ら 2014 年 の 10 年 間 の 観 測 デ ー タ の 平 均 ( 気 象 庁 2015.10 参 照 ) で は , 年 間 降 水 量 は 1723.2mm, 年 平 均 気 温 は 15.7℃ で あ っ た .

(16)

図2.調査地概要.図中のアルファベットは調査方形区を示す.

水野ほか(2012a)より引用.

(17)

科名

種名

分類群

シノブゴケ科

トヤマシノブゴケ Thuidium kanedae

蘚類

ハイゴケ科

キャラハゴケ Taxiphyllum taxirameum

蘚類

アオギヌゴケ科

ツクシナギゴケモドキ Eurhynchium hians

蘚類

ホウオウゴケ科

コホウオウゴケ Fissidens adelphinus

蘚類

センボンゴケ科

ツチノウエノコゴケ Weissia controversa

蘚類

ツキヌキゴケ科

トサホラゴケモドキ Calypogeia tosana

苔類

マツバウロコゴケ科

チャボマツバウロコゴケ Blepharostoma minus

苔類

マキノゴケ科

マキノゴケ Makinoa crispata

苔類

表1.調査地の斜面上に生育していた蘚苔類.

(18)

科名

種名

調査地における

生育環境

ホングウシダ科

ホラシノブ Sphenomeris chinensis

斜面上

シシガシラ科

コモチシダ Woodwardia orientalis

斜面上

ヒメシダ科

ミゾシダ Stegnogramma pozoi subsp. mollissima

斜面上

ゲジゲジシダ Thelypteris decursivepinnata

斜面上

ウラボシ科

ミツデウラボシ Crypsinus hastatus

斜面上

ゼンマイ科

ゼンマイ Osmunda japonica

地上

コバノイシカグマ科 フモトシダ Microlepia marginata

地上

チャセンシダ科

トラノオシダ Asplenium incisum

地上

オシダ科

リョウメンシダ Arachniodes standishii

地上

ナガバヤブソテツ Cyrtomium devexiscapulae

地上

ヤブソテツ Cyrtomium fortunei

地上

ヤマイタチシダ Dryopteris bissetiana

地上

ベニシダ Dryopteris erythrosora

地上

トウゴクシダ Dryopteris nipponensis

地上

オオイタチシダ Dryopteris pacifica

地上

オクマワラビ Dryopteris uniformis

地上

イノデ Polystichum polyblepharum

地上

アスカイノデ Polysticum fibrillosopaleaceum

地上

ヒメシダ科

ホシダ Thelypteris acuminata

地上

ハシゴシダ Thelypteris glanduligera

地上

メシダ科

イヌワラビ Athyrium niponicum

地上

シケシダ Deparia japonica

地上

表2.調査地の周囲約100mの範囲に生育していたシダ植物.

(19)

2. 2. 2 樹 上 着 生 シ ダ 植 物 の 生 育 割 合 調 査 樹 上 着 生 シ ダ 植 物 の 調 査 は , ノ キ シ ノ ブ が 高 頻 度 で 生 育 し て い た 戸 定 が 丘 歴 史 公 園 内( 千 葉 県 松 戸 市: 2.3 ha)で 行 っ た( 35°46.650′ N,139°53.950′ E, alt. 27 m).調 査 地 に 植 栽 さ れ た 樹 木 の う ち ,樹 皮 に ひ び 割 れ を も つ 樹 種 の 中 で 最 も ノ キ シ ノ ブ が 着 生 し て い る 個 体 数 の 割 合 が 多 か っ た ウ メ Prunus mume と , 樹 皮 が 平 滑 な 樹 種 の 中 で 最 も ノ キ シ ノ ブ が 着 生 し て い る 個 体 数 の 割 合 が 多 か っ た モ チ ノ キ Ilex integra の 2 種 を 調 査 対 象 と し た .調 査 対 象 の 樹 幹 に は 肉 眼 で 同 定 可 能 な 蘚 類 は 3 種 類 と 肉 眼 で は 同 定 不 可 能 な ウ ロ コ ゴ ケ 目 の 苔 類 が 数 種 類 生 育 し て い た . ウ メ , モ チ ノ キ の 樹 幹 と も に , 最 も 優 占 し て い た の は サ ヤ ゴ ケ

Glyphomitrium humillimum で あ っ た . コ モ チ イ ト ゴ ケ Pylaisiadelpha tenuirostris

と ヒ ロ ハ ツ ヤ ゴ ケ Entodon challengeri が 次 い で 多 く 生 育 し て い た . 調 査 地 に は 20 種 類 の シ ダ 植 物 が 生 育 し て い た が ,樹 上 着 生 シ ダ 植 物 は ノ キ シ ノ ブ の 1 種 類 だ け で あ っ た( 表 3).調 査 地 の 平 均 年 間 降 水 量 と 平 均 気 温 は ,気 象 庁 船 橋 気 象 台 の 2005 年 か ら 2014 年 の 平 均 値( 気 象 庁 2015.10 閲 覧 )で は ,そ れ ぞ れ 1497.4mm と 15.4°C で あ っ た .

(20)

科名

種名

地上生

/着生

イワヒバ科

クラマゴケ

Selaginella remotifolia

地上生

トクサ科

トクサ

Equisetum hyemale

地上生

ゼンマイ科

ゼンマイ

Osmunda japonica

地上生

フサシダ科

カニクサ

Lygodium japonicum

地上生

イノモトソウ科

イノモトソウ

Pteris multifida

地上生

チャセンシダ科

トラノオシダ

Asplenium incisum

地上生

オシダ科

ナガバヤブソテツ

Cyrtomium devexiscapulae

地上生

オニヤブソテツ

Cyrtomium falcatum

地上生

ヤブソテツ

Cyrtomium fortunei

地上生

ヤマチタイシダ

Dryopteris bissetiana

地上生

ベニシダ

Dryopteris erythrosora

地上生

オオベニシダ Dryopteris hondoensis

地上生

ヒメシダ科

ミゾシダ

Stegnogramma pozoi subsp. mollissima

地上生

ゲジゲジシダ Thelypteris decursive-pinnata

地上生

ハリガネワラビ

Thelypteris japonica

地上生

ミドリヒメワラビ Thelypteris viridifrons

地上生

メシダ科

イヌワラビ

Athyrium niponicum

地上生

ヘビノネゴザ

Athyrium yokoscense

地上生

セイタカシケシダ

Deparia dimorphophylla

地上生

ウラボシ科

ノキシノブ

Lepisorus thunbergianus

着生

表3.戸定が丘歴史公園内のシダ植物フロラ.Mizuno et al. (2015) を改変.

(21)

2. 3 方 形 区 調 査 方 法 2. 3. 1 岩 上 着 生 シ ダ 植 物 の 分 布 調 査 岩 上 着 生 シ ダ 植 物 の 調 査 で は , 砂 岩 斜 面 か ら ミ ツ デ ウ ラ ボ シ の 幼 胞 子 体 が 多 く 見 ら れ た 場 所 を 4 カ 所 選 び , そ れ ら が 均 等 に 含 ま れ る よ う に し て 1m×1m の 方 形 区 を 設 置 し た .方 形 区 に は A か ら D の 記 号 を 付 け た .そ れ ぞ れ の 方 形 区 の 斜 面 方 位 と 傾 斜 角 は , 方 形 区 A: S66°W 70°S, 方 形 区 B: S58°W 60°S, 方 形 区 C:S38°E 78°S,方 形 区 D:S45°E 74°S で あ る .次 に ,方 形 区 の 内 部 を 5cm×5cm の 小 方 形 区 に 区 切 り , 計 400 の 小 方 形 区 内 に 生 育 す る 蘚 苔 類 の 被 度 を 目 視 に よ っ て 記 録 し た . こ こ で は , 蘚 苔 類 群 落 の 被 度 は 種 ご と で は な く 全 て の 種 を ま と め て 計 測 し た . 被 度 の 区 分 は Braun-Blanquet ( 1964) を 参 考 に し て , 0: 0%, 1 : 0-10%, 2 : 10-25% , 3 : 25-50%, 4 : 50-7 5%, 5 : 75-100%と し て 記 録 し た . 蘚 苔 類 の 被 度 の 記 録 と 同 時 に , 小 方 形 区 内 に お け る ミ ツ デ ウ ラ ボ シ の 幼 胞 子 体 の 有 無 を そ れ ぞ れ 記 録 し た . 幼 胞 子 体 の 有 無 は , 小 方 形 区 内 に 葉 柄 と 根 茎 の 接 点 が あ る か を 基 準 と し た . 小 方 形 区 内 に 1 つ 以 上 , 葉 柄 と 根 茎 の 接 点 が あ る 場 合 に 「 有 」 と し て 記 録 し た . 本 来 シ ダ 植 物 の 定 着 初 期 個 体 の 生 育 環 境 を 調 査 す る た め に は , 前 葉 体 を 調 査 対 象 と す べ き で あ る が , 前 葉 体 は 蘚 苔 類 と 同 系 色 か つ 蘚 苔 類 群 落 内 に 埋 も れ て 生 育 し て い る た め , 前 葉 体 を 高 倍 率 の ル ー ペ で か つ 広 範 囲 に わ た っ て 野 外 で 調 査 す る こ と は 困 難 で あ る . こ こ で は , 蘚 苔 類 の 被 度 と 着 生 シ ダ 植 物 の 生 育 の 関 係 を 概 略 的 に 調 査 す る た め に , 前 葉 体 に ご く 近 い 生 育 段 階 で 種 同 定 が 可 能 な 幼 胞 子 体 を 使 用 し た . 本 研 究 に お け る 幼 胞 子 体 は , 葉 柄 と 羽 片 の 長 さ の 合 計 が 10mm 以 下 の も の と 定 義 し た . 幼 胞 子 体 で ソ ー ラ ス を つ け て い る も の は な か っ た . 蘚 苔 類 の 被 度 ク ラ ス と ミ ツ デ ウ ラ ボ シ の 幼 胞 子 体 の 出 現 と の 関 係 を 明 ら か に す る た め , 被 度 ク ラ ス を 独 立 変 数 と し , 幼 胞 子 体 を 含 む 小 方 形 区 の 割 合 を 従 属 変 数 と し て 直 線 回 帰 分 析 を 行 っ た . 従 属 変 数 は 比 率 で あ る た め 逆 正 弦 変 換 し 正 規 性 を 確 保 し た 上 で 直 線 回 帰 分 析 を 行 っ た .回 帰 分 析 に は 統 計 解 析 ソ フ ト R( バ ー ジ ョ ン 3.2.2) を 使 用 し た . 2. 3. 2 樹 上 着 生 シ ダ 植 物 の 分 布 調 査 樹 上 着 生 シ ダ 植 物 の 調 査 で は , 樹 幹 表 面 に 方 形 区 を 設 置 し て 調 査 を 行 っ た . 樹 幹 で は 方 位 に よ っ て 日 射 量 な ど の 環 境 が 変 化 す る た め , 東 西 南 北 そ れ ぞ れ の 方 位 に 方 形 区 を 設 置 し た .各 方 形 区 は 縦 6cm 横 12cm の 長 方 形 で 内 部 が 1cm×1cm

(22)

の 小 方 形 区 に 分 割 さ れ て お り ,各 方 形 区 に は 72 個 の 小 方 形 区 を 含 ん で い る .調 査 で は , 東 西 南 北 に 設 置 し た 4 つ の 方 形 区 の ま と ま り を 1 プ ロ ッ ト と し て 扱 っ た . 各 プ ロ ッ ト 内 の 方 形 区 は , す べ て 地 上 か ら の 高 さ が 同 じ に な る よ う に し て 設 置 し た . ウ メ と モ チ ノ キ の 2 種 の 樹 幹 上 に そ れ ぞ れ 6 プ ロ ッ ト , 計 12 の 調 査 プ ロ ッ ト を 設 置 し た . そ れ ぞ れ の 調 査 プ ロ ッ ト は , 樹 幹 上 で ノ キ シ ノ ブ の 幼 胞 子 体 が 最 も 多 く 分 布 し て い る 部 分 に 設 置 し た . 最 も ノ キ シ ノ ブ の よ う 胞 子 体 が 生 育 し て い た 樹 木 1 本 に は 計 4 個 の プ ロ ッ ト を , 次 に ノ キ シ ノ ブ が 生 育 し て い た 樹 木 に 2 本 に は 各 1 個 の プ ロ ッ ト を 設 置 し , そ れ ぞ れ の 樹 種 に 対 し て 各 6 個 の プ ロ ッ ト を 設 置 し た . 調 査 し た 小 方 形 区 の 個 数 は ,そ れ ぞ れ の 樹 種 に 対 し て 各 1,728 個 で あ る . 設 置 し た プ ロ ッ ト 底 辺 の 地 上 か ら の 高 さ は 57cm か ら 159cm の 範 囲 で あ る . 調 査 対 象 に し た 樹 木 の 幹 周 囲 長 は , ウ メ で 55-74cm, モ チ ノ キ で 56-62cm で あ る . 各 小 方 形 区 内 に 生 育 す る 蘚 苔 類 の 被 度 を 目 視 に よ っ て 記 録 し た . 調 査 地 に 生 育 し て い た 3 種 類 の 蘚 類 は 全 て 高 さ 5-10mm の 密 な 群 落 を 形 成 し て い た た め , 本 研 究 で は 3 種 の 蘚 類 を ま と め て “蘚 類 ”と し て 記 録 し た . 樹 幹 に は 何 種 類 か の ウ ロ コ ゴ ケ 目 の 苔 類 が 生 育 し て い た .こ れ ら の 苔 類 は 全 て 葉 幅 0.3mm 程 度 で 高 さ 0.5mm 程 度 の 低 い 群 落 を 形 成 し た .こ れ ら の 苔 類 は 非 常 に 小 さ く 野 外 調 査 で 種 の 同 定 を す る 事 が 困 難 で あ っ た た め , 本 研 究 で は ま と め“苔 類 ”と し て 記 録 し た . 蘚 苔 類 の 被 度 は 以 下 の 4 つ の ク ラ ス に 分 類 し て 記 録 し た : “0” ( 蘚 苔 類 な し ),低 被 度 “1”( 被 度 1~30%),中 被 度 “2”( 被 度 31~60%),高 被 度 “3”( 被 度 61~100%).同 一 方 形 区 内 に 蘚 類 と 苔 類 が 両 方 生 育 し て い た 場 合 ,そ れ ぞ れ の 被 度 を 分 け て 記 録 し た . 小 方 形 区 内 に 生 育 す る ノ キ シ ノ ブ の 前 葉 体 は ル ー ペ を 使 用 し て 探 し , 前 葉 体 の 中 心 が 小 方 形 区 内 に 位 置 し て い た 場 合 に 記 録 し た . 小 方 形 区 内 に 生 育 す る ノ キ シ ノ ブ の 幼 胞 子 体 は , 根 茎 と 葉 の 付 け 根 部 分 が 小 方 形 区 内 に 位 置 し て い た 場 合 に 記 録 し た . 調 査 地 に 生 育 す る シ ダ 植 物 の う ち 樹 幹 に 生 育 す る 着 生 シ ダ 植 物 は ノ キ シ ノ ブ 1 種 だ っ た た め , 本 研 究 で は 樹 幹 上 に 生 育 し て い た 前 葉 体 は す べ て ノ キ シ ノ ブ の も の と し て 扱 っ た . 幼 胞 子 体 は 単 葉 で 涙 型 を し た 特 徴 的 な 葉 形 態 か ら 容 易 に 同 定 が 可 能 で あ っ た . 幼 胞 子 体 は 葉 と 葉 柄 の 長 さ の 合 計 が 10mm 以 下 の も の と 定 義 し た . 幼 胞 子 体 で ソ ー ラ ス を 形 成 し て い る 個 体 は な か っ た . 2. 4 結 果 2. 4. 1 岩 上 着 生 シ ダ 植 物 の 生 育 と 蘚 苔 類 の 被 度

(23)

は じ め に ,岩 上 着 生 シ ダ 植 物 の 生 育 割 合 と 蘚 苔 類 の 被 度 の 関 係 に つ い て 示 す . 岩 上 着 生 シ ダ 植 物 の ミ ツ デ ウ ラ ボ シ の 幼 胞 子 体 は 1600 の 小 方 形 区 の う ち 23% に あ た る ,368 の 小 方 形 区 で 生 育 し て い た .一 方 ,蘚 苔 類 は 全 1600 の 小 方 形 区 の う ち 80% に あ た る ,1276 の 小 方 形 区 で 生 育 し て い た .ま た ,調 査 し た 全 4 方 形 区 の う ち , 方 形 区 A, B, C で は 蘚 苔 類 の 優 占 種 は チ ャ ボ マ ツ バ ウ ロ コ ゴ ケ で あ っ た の に 対 し て , 方 形 区 D の み キ ャ ラ ハ ゴ ケ が 優 占 し て い た . 蘚 苔 類 の 被 度 ク ラ ス と 幼 胞 子 体 の 生 育 が 認 め ら れ た 小 方 形 区 の 割 合 を 図 3 に 示 す . 全 て の 方 形 区 に お い て , 蘚 苔 類 の 被 度 ク ラ ス 0 で は 幼 胞 子 体 を 含 む 小 方 形 区 の 割 合 が 最 も 低 か っ た .チ ャ ボ マ ツ バ ウ ロ コ ゴ ケ が 優 占 し て い た 方 形 区 A, B,C で は ,蘚 苔 類 の 被 度 が 高 い ほ ど 幼 胞 子 体 が 生 育 し て い る 割 合 が 高 く ,被 度 ク ラ ス と 幼 胞 子 体 を 含 む 小 方 形 区 の 割 合 の 間 に は 有 意 な 関 係 が 認 め ら れ た ( R2 > 0.95, P < 0.01). 一 方 , 方 形 区 D で は , 蘚 苔 類 の 被 度 が 高 く な る ほ ど 幼 胞 子 体 を 含 む 小 方 形 区 の 割 合 が 高 く な る 傾 向 は 他 の 方 形 区 に 比 べ て 小 さ か っ た ( R2 = 0.47,P = 0.14).全 体 の 傾 向 と し て ,蘚 苔 類 の 被 度 が 高 い ほ ど ミ ツ デ ウ ラ ボ シ の 幼 胞 子 体 の 生 育 す る 割 合 が 高 く な る 傾 向 が 見 ら れ た .

(24)

蘚苔類の被度クラス

100

80

60

40

20

0

100

80

60

40

20

0

100

80

60

40

20

0

100

80

60

40

20

0

図3.小方形区内における蘚苔類の被度クラスとミツデウラボシの幼胞子体を

含む小方形区割合の関係.蘚苔類の被度クラスは,

0: 蘚苔類なし,1: -10%,2:

10-25%,3: 25-50%,4: 50-75%,5: 75-100%.水野ほか(2012a)を改変.

(25)

2. 4. 2 樹 上 着 生 シ ダ 植 物 の 生 育 と 蘚 苔 類 の 被 度 樹 上 着 生 シ ダ 植 物 の 生 育 割 合 と 蘚 苔 類 の 被 度 の 関 係 に つ い て 表 4 に 示 す . 各 方 形 区 の 方 位 ご と に , 小 方 形 区 内 に お け る ノ キ シ ノ ブ の 幼 胞 子 体 お よ び 前 葉 体 の 生 育 割 合 と 蘚 苔 類 の 被 度 ク ラ ス の 平 均 値 の 関 係 を み る と , 南 向 き の 方 形 区 で は 蘚 類 の 平 均 被 度 が 低 く , 前 葉 体 や 幼 胞 子 体 の 生 育 割 合 も 少 な か っ た . 特 に , モ チ ノ キ の 樹 幹 で は そ の 傾 向 が 顕 著 で , 南 向 き 方 形 区 で は 蘚 苔 類 と ノ キ シ ノ ブ は 生 育 し て い な か っ た .

(26)

樹種

ウメ

モチノキ

プロット方位

西

西

蘚類の平均被度クラス

1.5

1.5

0.4 1.0

1.1

1.5 0.5

0.0

0.6 0.7

苔類の平均被度クラス

0.1

0.4

0.3 0.4

0.3

0.6 0.4 0.0 0.6 0.4

前葉体の生育割合

(%)

6.0

5.8

2.1 3.2

4.3

1.6 0.2 0.0 2.3 1.0

幼胞子体の生育割合

(%)

35.9 11.1 1.6

15.3 15.6

6.5 0.7

0.0 1.4

2.1

表4.プロットの方位と蘚苔類の被度クラスおよびノキシノブの生育割合の関係.そ

れぞれの樹種について各1728小方形区を調査した.蘚苔類の被度クラスは,0: 蘚苔

類なし,1: 1-30%,2: 31-60%,3: 61-100%とした.Mizuno et al. (2015) を改変.

(27)

2. 5 考 察 2. 5. 1 蘚 苔 類 群 落 内 で 生 育 割 合 が 高 く な る 要 因 砂 岩 斜 面 上 で は , 蘚 苔 類 の 被 度 が 高 い 場 所 ほ ど ミ ツ デ ウ ラ ボ シ の 幼 胞 子 体 が 高 頻 度 で 生 育 し て い た . 砂 岩 斜 面 と 同 様 に 樹 幹 表 面 上 で も 蘚 苔 類 の 被 度 が 高 い 場 所 ほ ど , ノ キ シ ノ ブ の 生 育 割 合 が 高 か っ た . こ れ ら の こ と か ら , 蘚 苔 類 が 群 落 形 成 し て い る 場 所 は 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 に も 適 し て い る 可 能 性 が あ る . 蘚 苔 類 と シ ダ 植 物 は と も に 胞 子 で 発 芽 し 配 偶 体 で の 受 精 に 湿 潤 な 環 境 を 必 要 と す る た め , 生 育 環 境 が 類 似 し て い る . さ ら に , 前 葉 体 は ク チ ク ラ 層 を 持 た ず 細 胞 数 層 か ら な り , 表 面 か ら 水 分 の 吸 収 を 行 う な ど , 生 理 的 特 徴 が 蘚 苔 類 に 類 似 し て い る . し た が っ て , 蘚 苔 類 の 生 育 に 適 し た 環 境 と 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 に 適 し た 環 境 は 同 じ で あ る 可 能 性 が あ る . こ の 場 合 , 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 初 期 の 個 体 は 必 然 的 に 蘚 苔 類 群 落 内 に 生 育 す る こ と に な る . 着 生 シ ダ 植 物 は 蘚 苔 類 と の 資 源 を め ぐ っ た 競 争 に 打 ち 勝 つ こ と で 定 着 し て い る 可 能 性 が あ る 一 方 で , 蘚 苔 類 群 落 の 存 在 が 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 に 適 し た 環 境 を 作 り 出 し て い る 可 能 性 も あ る .

一 般 的 に , 地 上 生 シ ダ 植 物 の 前 葉 体 は 寿 命 が 短 く ( Watkins et al. 2007a), 蘚 苔 類 が 存 在 し な い 攪 乱 直 後 の 土 壌 に 定 着 し , 急 速 に 受 精 を 完 了 さ せ 胞 子 体 を 形 成 す る ( Peck et al. 1990). 蘚 苔 類 の 存 在 は 多 く の シ ダ 植 物 の 前 葉 体 に と っ て 生 育 を 阻 害 す る 要 因 で あ る と い え る . し か し , 地 上 生 シ ダ 植 物 の 前 葉 体 と は 異 な り , 着 生 シ ダ 植 物 の 前 葉 体 は 蘚 苔 類 の 群 落 内 に 生 育 可 能 で あ る ( Dassler and Farrar 2001, Watkins et al. 2007a). こ れ は , 蘚 苔 類 群 落 が 存 在 し な い 場 所 は 蘚 苔 類 が 生 育 す る こ と が 不 可 能 な ほ ど 水 分 環 境 が 乏 し い か , 頻 繁 な 攪 乱 に よ っ て 蘚 苔 類 が 継 続 的 に 群 落 を 維 持 で き な い 環 境 で あ り , 植 物 の 定 着 そ の も の が 困 難 な 環 境 な た め で あ る . 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 初 期 個 体 が 蘚 苔 類 群 落 内 に 多 く 見 ら れ た こ と は , 蘚 苔 類 が 群 落 形 成 し な い 場 所 で は 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 が で き な い こ と を 示 し て い る . ま た , 蘚 苔 類 の 生 育 適 地 と 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 環 境 が 同 じ で あ る だ け で な く , 蘚 苔 類 群 落 が 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 を 促 進 し て い る 可 能 性 も あ る . 蘚 苔 類 群 落 が 植 物 の 定 着 を 促 進 さ せ る 現 象 つ い て は 種 子 植 物 に お い て 研 究 さ れ て い る . 蘚 苔 類 群 落 に よ る 植 物 の 定 着 促 進 に つ い て は , 蘚 苔 類 群 落 が も つ 物 理 的 な 構 造 に よ っ て 植 物 の 生 長 が 促 進 さ れ る 場 合 と , 蘚 苔 類 群 落 が そ こ に 定 着 す る 植 物 に 対 し て 無 機 的 な 資 源 を 供 給 す る こ と で 定 着 が 促 進 さ れ る 場 合 な ど が 知 ら れ て い る ( 井 上 ・ 飯 島 2013). 着 生 シ ダ 植 物 に 対 し て も こ れ ら の 種 子 植 物

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同 様 に 蘚 苔 類 群 落 の 存 在 が 定 着 を 促 進 し て い る 可 能 性 が あ る . 特 に , 着 生 シ ダ 植 物 の 生 育 環 境 で あ る 崖 や 樹 幹 は , 水 分 の 供 給 源 で あ る 土 壌 が 存 在 し な い こ と や , 植 物 が 定 着 場 所 に と ど ま る こ と が 困 難 で あ る た め , 地 上 生 シ ダ 植 物 の 生 育 環 境 に 比 べ て 植 物 の 定 着 を 阻 害 す る 要 因 が 多 い . そ の た め , 蘚 苔 類 群 落 に よ る 定 着 促 進 の 影 響 が よ り 顕 著 に み ら れ る 可 能 性 が あ る . 2. 5. 2 蘚 苔 類 の 物 理 的 構 造 に よ る 定 着 促 進 は じ め に 蘚 苔 類 群 落 の 物 理 的 な 構 造 に よ っ て , 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 が 促 進 さ れ る 可 能 性 に つ い て 検 討 す る . 種 子 植 物 に お い て は , 蘚 苔 類 群 落 が 散 布 さ れ た 種 子 を 物 理 的 に 保 持 す る 作 用 を 持 つ た め , む き 出 し の 地 表 面 に 種 子 が 散 布 さ れ た 場 合 に 比 べ て , 雨 や 風 に よ る 脱 落 の 影 響 が 少 な く な る こ と が 明 ら か に な っ て い る( Cross 1981; Harmon 1989; Nakamura 1992).ま た ,Ingram and Nadkarni( 1993) は , 蘚 苔 類 群 落 が 種 子 を 保 持 す る 作 用 に よ っ て , 着 生 植 物 が 定 着 し や す い 環 境 が 作 り 出 さ れ て い る 可 能 性 を 示 し て い る . し た が っ て , 種 子 だ け で な く シ ダ 植 物 の 胞 子 も 同 様 に 蘚 苔 類 群 落 に 保 持 さ れ る こ と で 定 着 が 促 進 さ れ て い る 可 能 性 が あ る . 特 に , 崖 や 樹 幹 表 面 で は 地 表 流 や 樹 幹 流 の 影 響 が 生 じ や す い た め , 蘚 苔 類 群 落 に よ る シ ダ 植 物 胞 子 の 保 持 効 果 が 定 着 に 重 要 な 可 能 性 が あ る . 岩 上 着 生 シ ダ 植 物 の ミ ツ デ ウ ラ ボ シ が 生 育 場 所 し て い た 砂 岩 斜 面 は 全 て 傾 斜 角 60 度 以 上 の 崖 で あ っ た . ま た , 樹 上 着 生 シ ダ 植 物 の ノ キ シ ノ ブ が 生 育 し て い た 樹 幹 は ほ ぼ 垂 直 で あ っ た . 岩 上 ・ 樹 上 着 生 シ ダ 植 物 が 生 育 す る よ う な 急 傾 斜 の 場 所 で は , 崖 や 樹 幹 を 伝 っ て 流 れ 出 る 雨 水 に よ っ て 散 布 さ れ た シ ダ 植 物 の 胞 子 が 流 出 し て し ま う 可 能 性 が 高 い . 砂 岩 表 面 は 雨 水 に よ っ て 削 り 取 ら れ る 可 能 性 が あ り , 胞 子 が 斜 面 上 に と ど ま る こ と が 難 し い . 樹 幹 表 面 で は , モ チ ノ キ の よ う に ひ び 割 れ が な い 種 で は , 樹 幹 流 に よ っ て 散 布 さ れ た シ ダ 植 物 の 胞 子 は 容 易 に 流 出 し て し ま う . し か し , 崖 や 樹 幹 表 面 上 に 蘚 苔 類 群 落 が 存 在 す る 場 合 , そ こ に 散 布 さ れ た シ ダ 植 物 の 胞 子 が 蘚 苔 類 の 葉 と 葉 の 間 の 隙 間 に 入 り 込 み , 雨 水 に よ る 流 出 の 影 響 が 少 な く な る と 予 想 さ れ る . し た が っ て , 蘚 苔 類 群 落 内 に 散 布 さ れ た 胞 子 の み が 発 芽 し て 前 葉 体 が 定 着 で き た 結 果 , 幼 胞 子 体 が 蘚 苔 類 群 落 上 に 多 く 生 育 で き る よ う に な っ た 可 能 性 が あ る . 2. 5. 3 蘚 苔 類 の 無 機 的 資 源 供 給 に よ る 定 着 促 進 次 に , 蘚 苔 類 群 落 に よ る 無 機 的 資 源 の 供 給 に つ い て 考 察 す る . 蘚 苔 類 群 落 内 で 幼 胞 子 体 が 多 く 見 ら れ た 他 の 要 因 と し て , 蘚 苔 類 群 落 に よ る 保 水 効 果 が 影 響

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し て い る 可 能 性 が あ る . 崖 や 樹 幹 の よ う な 切 り 立 っ た 環 境 で は , 植 物 の 定 着 基 盤 と な る 土 壌 が 存 在 し な い . し た が っ て , そ こ に 定 着 す る 着 生 植 物 は 土 壌 か ら の 継 続 的 な 水 分 供 給 を 受 け る こ と が で き な い た め , 保 水 効 果 を 有 す る 蘚 苔 類 群 落 の 存 在 が 定 着 を 促 進 し て い る 可 能 性 が あ る . シ ダ 植 物 は 胞 子 の 発 芽 や 前 葉 体 で の 受 精 に 水 分 を 必 要 と す る( Hietz 2010)だ け で な く ,前 葉 体 は 体 表 面 か ら の 水 分 吸 収 に 依 存 し て い る た め ( Watkins et al. 2007a),定 着 環 境 が 湿 潤 で あ る こ と は 前 葉 体 の 生 存 に お い て 極 め て 重 要 で あ る . 切 り 立 っ た 環 境 で は , 雨 が 降 っ た 場 合 で も 水 は 地 表 流 や 樹 幹 流 と し て 崖 や 樹 幹 の 下 部 へ と 急 速 に 流 れ て し ま う た め , そ こ に 定 着 し た 着 生 シ ダ 植 物 の 前 葉 体 が こ れ ら の 水 分 を 効 率 的 に 利 用 す る こ と は 困 難 で あ る . し か し , 蘚 苔 類 群 落 が 存 在 す る こ と で , 地 表 流 や 樹 幹 流 が 流 出 す る 前 に 群 落 内 に 一 時 的 に 保 持 さ れ る た め , 前 葉 体 は こ れ ら の 水 分 を 利 用 し て 受 精 を 完 了 さ せ る こ と が で き る 可 能 性 が あ る . 2. 5. 4 さ ま ざ ま な 要 因 の 複 合 的 作 用 蘚 苔 類 群 落 の 物 理 的 な 機 能 や 無 機 的 資 源 の 供 給 に よ っ て , 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 が 促 進 さ れ て い る 可 能 性 は 十 分 に 考 え ら れ る が , こ れ ら の 要 因 が 複 合 的 に は た ら く こ と で , よ り 着 生 シ ダ 植 物 が 定 着 し や す い 環 境 が 作 り 出 さ れ る 可 能 性 が あ る . 蘚 苔 類 は 種 に よ っ て 群 落 の 形 態 が 大 き く 異 な る た め , 種 の 違 い は 物 理 的 作 用 や 無 機 的 作 用 に 大 き く 影 響 を 与 え て い る 可 能 性 が あ る . し た が っ て , 蘚 苔 類 の 種 ご と に 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 量 を 調 査 す る こ と で , 蘚 苔 類 の 存 在 が 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 に 与 え て い る 影 響 を よ り 詳 細 に 明 ら か に す る こ と が で き る .実 際 , 岩 上 生 シ ダ 植 物 の 調 査 で は 斜 面 に 優 占 す る 蘚 苔 類 の 種 に よ っ て , 蘚 苔 類 の 被 度 と ミ ツ デ ウ ラ ボ シ の 生 育 割 合 の 相 関 の 強 さ に 違 い が 見 ら れ た . そ こ で , 第 3 章 で は , 群 落 を 構 成 す る 蘚 苔 類 の 種 や 形 態 の 違 い に 着 目 し , そ れ ら が 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 に ど の よ う な 影 響 を 与 え て い る か を 明 ら か に し た .

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第 3 章 蘚 苔 類 の 種 の 違 い と 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 の 関 係

要 旨 蘚 苔 類 群 落 の 種 の 違 い が 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 に ど の よ う な 影 響 を 与 え る か を 明 ら か に す る た め , 前 葉 体 や 胞 子 体 の 周 囲 に 生 育 す る 蘚 苔 類 の 種 と 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 量 の 関 係 を 調 査 し た .前 葉 体 は 小 型 の 苔 類 群 落 上 に 多 く 生 育 し て い た が , 胞 子 体 は 苔 類 に 比 べ て 群 落 高 が 高 い 蘚 類 群 落 に 多 く 生 育 し て い た . 小 型 苔 類 が 継 続 し て 群 落 を 形 成 す る 場 所 は 蘚 類 が 群 落 を 形 成 し て い る 場 所 に 比 べ て 水 分 環 境 に 乏 し い た め , 前 葉 体 で の 受 精 が 困 難 で あ る と 考 え ら れ た . 一 方 で 蘚 類 群 落 内 で は , 前 葉 体 が 被 陰 の 影 響 を 受 け る た め 定 着 量 は 少 な い が , 小 型 苔 類 が 生 育 す る 場 所 よ り も 湿 潤 な 環 境 が 保 持 さ れ る た め , 受 精 に 適 し た 環 境 が 作 り 出 さ れ て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た . 3. 1 は じ め に 第 3 章 で は , 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 と 蘚 苔 類 群 落 の 関 係 を よ り 詳 細 に 明 ら か に す る た め , 岩 上 や 樹 幹 上 に 群 落 形 成 し て い る 蘚 苔 類 の 種 に 着 目 し , 種 の 違 い に よ っ て 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着・生 育 に ど の よ う な 影 響 が 生 じ る か を 明 ら か に す る . 種 子 植 物 の 定 着 に 蘚 苔 類 群 落 が 及 ぼ す 影 響 は 種 に よ る 形 態 の 違 い な ど に よ っ て 異 な る こ と が 示 さ れ て い る ( 矢 頭 1963; Harmon 1989; Nakamura 1992). し た が っ て , 着 生 シ ダ 植 物 に 対 し て も , 蘚 苔 類 の 種 の 違 い が 定 着 の し や す さ に 何 ら か の 影 響 を 与 え て い る 可 能 性 が あ る . 特 に , シ ダ 植 物 の 定 着 初 期 で あ る 前 葉 体 は 大 き さ 数 ミ リ メ ー ト ル で 根 を 持 た ず 体 表 面 だ け か ら し か 水 分 を 吸 収 で き な い な ど , 種 子 植 物 の 定 着 初 期 個 体 に 比 べ て 貧 弱 で あ る . 地 上 生 の 多 く の シ ダ 植 物 の 前 葉 体 は 蘚 苔 類 と の 競 争 に 弱 い こ と( Peck et al. 1990)を 考 え る と ,蘚 苔 類 の 種 の 違 い に よ る 影 響 を 少 な か ら ず 受 け て い る 可 能 性 が あ る . 崖 や 樹 幹 に 生 育 す る 蘚 苔 類 の 群 落 形 態 は 種 に よ っ て 大 き く 異 な っ て お り , 特 に , 調 査 地 に 生 育 し て い た 蘚 苔 類 で は , 蘚 類 と ウ ロ コ ゴ ケ 目 の 苔 類 で は 群 落 高 が 大 き く 異 な っ て い た .し た が っ て ,群 落 を 構 成 す る 蘚 苔 類 の 種 や 形 態 ご と に , 着 生 シ ダ 植 物 の 生 育 割 合 を 比 較 す る こ と で , 着 生 シ ダ 植 物 の 定 着 に 蘚 苔 類 群 落 が ど の 程 度 影 響 を 与 え て い る か を 詳 細 に 明 ら か に す る こ と が で き る . 第 3 章 で は , は じ め に 岩 上 着 生 シ ダ 植 物 の 調 査 方 形 区 に 優 占 し て い た 群 落 形 態 の 異 な る 2 種 類 の 蘚 苔 類 の 群 落 内 に 生 育 す る 着 生 シ ダ 植 物 前 葉 体 の 密 度 を 比 較 す る こ と で , 蘚 苔 類 の 種 の 違 い に よ っ て 前 葉 体 の 定 着 率 が ど の 程 度 異 な る か

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を 明 ら か に し た . 次 に , 樹 上 着 生 シ ダ 植 物 の 幼 胞 子 体 や 前 葉 体 の 生 育 場 所 に 群 落 を 形 成 し て い る 蘚 苔 類 の 種 や 被 度 の 違 い を 解 析 す る こ と で , 着 生 シ ダ 植 物 の 生 育 段 階 ご と に 適 し た 蘚 苔 類 の 分 類 群 を 明 ら か に し た . 3. 2 調 査 地 ・ 方 法 3. 2. 1 岩 上 着 生 シ ダ 植 物 は じ め に 岩 上 着 生 シ ダ 植 物 の ミ ツ デ ウ ラ ボ シ の 前 葉 体 の 分 布 密 度 調 査 を 行 っ た . 第 2 章 の 調 査 地( 千 葉 県 茂 原 市 桂 )に 設 置 し た 方 形 区 に 大 き な 群 落 を 形 成 し て い た 2 種 類 の 蘚 苔 類 を 斜 面 か ら 採 取 し , 群 落 内 に 生 育 す る 前 葉 体 の 単 位 面 積 当 た り の 個 数 を 比 較 し た . 方 形 区 の 中 で も シ ダ 植 物 の 幼 胞 子 体 が 多 く 分 布 し て い る 部 分 に は 幼 胞 子 体 の 直 前 の 生 育 ス テ ー ジ で あ る 前 葉 体 も 多 く 分 布 し て い る 可 能 性 が あ る . 斜 面 上 に 生 育 す る シ ダ 植 物 の 幼 胞 子 体 は 大 半 が ミ ツ デ ウ ラ ボ シ の も の で あ っ た た め , 幼 胞 子 体 の 周 辺 の 蘚 苔 類 群 落 内 に は ミ ツ デ ウ ラ ボ シ の 前 葉 体 が 多 く 生 育 し て い る 可 能 性 が 高 い . そ こ で , 蘚 苔 類 が 緊 密 に 群 落 を 形 成 し て い る 場 所 の 中 か ら ミ ツ デ ウ ラ ボ シ の 幼 胞 子 体 が 多 く 生 育 し て い る 部 分 を 選 び , 金 属 製 の ヘ ラ を 使 用 し て 蘚 苔 類 群 落 を 崖 か ら は が し 取 っ た . 方 形 区 内 で 最 も 大 き な 群 落 を 形 成 し て い た チ ャ ボ マ ツ バ ウ ロ コ ゴ ケ 群 落 と 次 に 大 き な 群 落 を 形 成 し て い た キ ャ ラ ハ ゴ ケ 群 落 を そ れ ぞ れ 6サ ン プ ル ず つ 採 取 し た . 調 査 し た 4つ の 方 形 区 の う ち ,3方 形 区 に は チ ャ ボ マ ツ バ ウ ロ コ ゴ ケ が ,1方 形 区 に は キ ャ ラ ハ ゴ ケ が 優 占 し て い た . そ の た め , そ れ ぞ れ の 方 形 区 か ら 同 数 の サ ン プ ル を 採 取 す る こ と が で き な か っ た . そ こ で , チ ャ ボ マ ツ バ ウ ロ コ ゴ ケ 群 落 は 最 も 生 育 量 が 多 か っ た 方 形 区 と 2番 目 に 多 か っ た 方 形 区 か ら 3サ ン プ ル ず つ 計 6サ ン プ ル を 採 取 し た .キ ャ ラ ハ ゴ ケ 群 落 は ,最 も 生 育 量 が 多 か っ た 方 形 区 か ら 4サ ン プ ル ,そ の 次 に 生 育 量 が 多 か っ た 方 形 区 か ら 2サ ン プ ル ,計 6サ ン プ ル を 採 取 し た . 採 取 し た サ ン プ ル は 蘚 苔 類 群 落 の 構 造 が 変 化 し た り 前 葉 体 が 乾 燥 し た り す る の を 避 け る た め ビ ニ ー ル の 袋 に 入 れ て 千 葉 大 学 園 芸 学 部 緑 地 生 態 学 研 究 室 に 持 ち 帰 っ た .蘚 苔 類 群 落 を 1つ ず つ 袋 か ら 出 し ,画 用 紙 の 上 に 乗 せ て サ ン プ ル の 輪 郭 を ト レ ー ス し た . ト レ ー ス し た 線 を ス キ ャ ナ ー で パ ソ コ ン に 取 り 込 み , Photoshop( Ver.7.0.1) を 用 い て 輪 郭 内 部 の ピ ク セ ル 数 を 計 測 し た . 同 様 の 方 法 で 1cm×1cmの 方 眼 紙 を ス キ ャ ン し て 1cm2当 た り の ピ ク セ ル 数 を 計 測 し ,( 輪 郭 の 内 部 の ピ ク セ ル 数 )÷( 1cm2当 た り の ピ ク セ ル 数 )か ら サ ン プ ル の 面 積 を 求 め た .

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金沢大学学際科学実験センター アイソトープ総合研究施設 千葉大学大学院医学研究院

東京大学 大学院情報理工学系研究科 数理情報学専攻. [email protected]

東北大学大学院医学系研究科の運動学分野門間陽樹講師、早稲田大学の川上