博 士 ( 理 学 ) 原 賢 二
学位論文題名
Synthetic Studies toward Construction of Monolayer Catalysts on Solid Surfaces
(固体表面上での単分子層触媒の構築を指向した合成化学的研究)
学位論文内容の要旨
高効率かつ低環境負荷の物質変換プロセスの開発が希求される現在、触媒化学が果た すべき役割は大きい。従来の触媒化学は、触媒分子を設計・合成して溶液中で用いる均 一系の触媒と規整された固体表面の特性を利用する不均一系触媒に大きく二分されてそ れぞれが発展してきた。触媒化学が社会に対して決定的な貢献を行うためには、従来の 学 問 分 野 の 枠 組 み を 超 え た 新 し い 触 媒 設 計 の 概 念 が 必 要 で あ る 。
申請者は、規整された固体表面上に均一系で用いられる触媒分子を単分子層として精 密に組織化することにより触媒反応場を構築する手法に着目した。本手法は、従来の触 媒設計の概念から明らかに飛躍した設計が可能である。しかし、その有効性が一部の論 文で報告されながらも、触媒構築法としての汎用性に欠けており開発が立ち後れている。
本研究では、より汎用性のある固体表面上での単分子層触媒の構築手法を確立するこ とを目的として、含窒素ヘテロ環カルベン一金属錯体単分子層の金表面上における形成手 法の確立、エステルで官能基化された含窒素ヘテロ環カルベン錯体の合成手法の確立、
カチオン性ケイ素化学種の触媒反応への適用を行った。
Chap.Ler2.
Chapter3.
Chapter1
.本 論 文 は 、 以 下 の 緒 言 、 第 一 か ら 第 三 章 、 お よ び 結 言 か ら 構 成 さ れ る 。 緒言では、単分子層触媒の構築手法を開発する意義、現状での問題点を示すとともに、
本研究の目的を示した。
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254
―第 一 章 は 、 ジス ルフ ィド 部 位を 有す るア ルキ ル 鎖で 連結 され た含 窒 素ヘ テロ 環カ ル ベ ン ー ロ ジ ウ ム(I)錯 体 二 量 体 の 合 成 お よび これ を 用い た金 表面 上で の 単分 子層 形成 に つ い て 述 べ て い る。 入手 容易 な イミ ダゾ ール を出 発 原料 とし て、 ジス ル フィ ド部 位を 有 す る ア ル キ ル 鎖 で連 結さ れた イ ミダ ゾリ ウム 塩を 経 て、 含窒 素ヘ テロ 環 カル ベン ー口 ジ ウ ム(I)錯 体 二 量 体 を 合 成 す る 手 法 を 確 立し た。 合 成し た分 子を 用い て 金表 面の 修飾 を 行 い 、 錯 体 単 分 子 層 の 形 成 を 確 認 し た 。
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第 二 章は 、 エス テル 部位 を 環炭 素原 子上 に有 す る含 窒素 ヘテ ロ環 カ ルベ ンー パラ ジ ウ ム 錯 体 の合 成 とエ ステ ル部 位 が錯 体構 造に 与え る 影響 につ いて 述べ て いる 。入 手容 易 な イミ ダゾ ール を出 発 原料 とし て、4,5一 位に ェステル 基を有する含窒素ヘテ口環 カルベン
― パ ラ ジ ウ ム(n)錯 体 を 合 成 し た 。 工 ス テ ル 基 を 官 能 基 変 換 の 基 点 と し て 利 用 す る こ とに より 、含 窒素 ヘ テロ 環カ ルベ ン ―金 属錯 体単分子 層の形成手法の汎用化にっ ながる。
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第 三 章 は 、 非 配 位 性 の ケ イ 素 カ チ オ ン 種 を 触 媒 と す る 向 山 ア ル ド ー ル 反 応 お よ び Diels‑Alder反 応 に つ い て 述 べ て い る 。 ト ル エ ン が 配 位 し た ケ イ 素 カ チ オ ン 種 で あ る [Et3Siくtoluene)]B(C6F5)4が ケト ン を基 質と する 向山 アルドール反応およ びDiels‑Alder 反 応 に お い てMe3SiOTfやMe3SiNTf2を 凌 ぐ 高 い 触 媒 活 性 を 示 し た 。 こ の ケ イ 素 カ チ オ ン 種 を 金 属 を 含ま ない 触 媒活 性中 心と し て固 体表 面上 に単 分 子層 化す るこ との 有 効性 が
確認された。
結言 は、 本論 文 全体 の総 括と 単分 子 層触 媒の 展望について述べて いる。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Synthetic Studies toward Construction of IVIonolayer Catalysts on Solid SurfaCeS
( 固 体 表 面 上 で の 単 分 子 層 触 媒 の 構 築 を 指 向 し た 合 成 化 学 的 研 究 )
従来の触媒化学は、触媒分子を設計・合成して溶液中で用いる均一系の触媒と規整さ れた固体表面の特性を利用する不均一系触媒に大きく二分されてそれぞれが発展してき た。触媒化学が社会に対して決定的な貢献を行うためには、従来の学問分野の枠組みを 超えた新しい触媒設計の概念が必要である。
著者は、規整された固体表面上に均一系で用いられる触媒分子を単分子層として精密 に組織化することにより触媒反応場を構築する手法に着目した。本手法は、従来の触媒 設計の概念から明らかに飛躍した設計が可能である。
本論文は、より汎用性のある固体表面上での単分子層触媒の構築手法を確立すること を目的として行った研究の成果をまとめたものである。
第一章は、ジスルフィド部位を有するアルキル鎖で連結された含窒素ヘテロ環カルベ ンーロジウム(I)錯体二量体の合成およびこれを用いた金表面上での単分子層形成につ いて述べている。ジスルフィド部位を有するアルキル鎖で連結された含窒素ヘテロ環カ ルベンーロジウム(I)錯体二量体を合成する手法を確立し、合成した分子を用いて金表 面の修飾を行い、錯体単分子層の形成を確認している。金表面上に含窒素ヘテロ環カル ペン錯体の単分子層を形成させた最初の例である。有機合成化学と物理化学を融合させ た新領域の研究のさきがけとして高く評価される成果である。
第二章は、エステル部位を環炭素原子上に有する含窒素ヘテロ環カルベンーパラジウ ム錯体の合成とエステル部位が錯体構造に与える影響について述べている。工ステル基 を有する 含窒素 ヘテロ環カルベン―パラジウム(II)錯体の合成を達成し、含窒素ヘテ ロ環カルベンー金属錯体単分子層の形成手法の汎用化への端緒を築いた研究であると評 価される。
第三章は、非配位性のケイ素カチオン種を触媒とする有機化学反応について述べてい る。トルエンが配位したケイ素カチオン種が既存のケイ素型ルイス酸をはるかに凌ぐ高 い触媒活性を示すことを明らかにし、ケイ素カチオン種を触媒活性中心として固体表面 上に単分子層化することの有望性を示すことに成功している。
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也 秋
紀 平
正 英
孝 浩
村 川
木 崎
澤 及
鈴 魚
授 授
授 授
教 教
教 教
査 査
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主 副
副 副
これを要するに、著者は分子触媒と固体触媒を融合した新概念の触媒設計指針を提供 す る成果をあげたものであり、有機合成化学、有機金属化学のみならず錯体化学、物理 化 学 を 含 む 広 い 分 野 に 対 し 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。
よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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