細胞内1分子蛍光イメージング技術を用いた mRNA 分子の核内運動解析
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(2) 2003 年度. 【目. 博士論文. 多田隈. 尚史. 次】. 第 1 章 序論 1-1) 1-2). 1-3). はじめに ・・・・・ 研究の背景 1-2-1) 蛍光 1 分子イメージング ・・・・・ 1-2-2) 生 き て い る 細 胞 核 内 に お け る mRNA の 運 動 観 ・・・・・ 本論文の概要 ・・・・・. 3 4 察 5 7. 第 2 章 細胞内蛍光 1 分子観察装置の開発 2-1) 研究の背景 ・・・・・12 2-2) タンパク質の調製 2-2-1) 天然キネシン調製法 ・・・・・13 2-2-2) 微小管調製法 ・・・・・23 2-3) キネシンの 1 分子アッセイ ・・・・・30 2-4) キネシンのゲル中への固定 ・・・・・31 2-5) 細胞内蛍光 1 分子観察装置の開発 2-5-1) ニポウディスク型共焦点顕微鏡 ・・・・・32 2-5-2) 装置系の概要 ・・・・・34 2-5-3) 2 次元の蛍光 1 分子イメージング ・・・・・38 2-5-4) 3 次元に固定した蛍光 1 分子のイメージング ・・・・・40 2-5-5) 3 次元を拡散運動する蛍光分子のイメージング ・・・・・40 2-5-5-1) 3 次元の拡散運動の 1 分子イメージング・・・・・41 2-5-5-2) 高速カメラを用いた拡散測定の上限の決定 ・・・43 2-5-5-3) 2 次元投影観察法 ・・・・・44 2-5-5-4) 固 定 し た 蛍 光 分 子を 用い た 拡散測定 の下 限の 決 定 ・・・・46. 第3章 mRNA の蛍光標識 3-1) 序文 3-2) mRNA について 3-2-1) 転写とプロセシング 3-2-2) 核内運動と核外輸送. ・・・・・67 ・・・・・68 ・・・・・68 ・・・・・69 1.
(3) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. 3-2-3) 細胞質輸送と局在 ・・・・・70 3-2-4) 過程間の連携 ・・・・・71 3-3) 内在性 mRNA の蛍光標識 ・・・・・73 3-3-1) 背景 ・・・・・73 3-3-2) オリゴ dT を用いた内在性 mRNA の可視化 ・・・・・75 3-3-3) 特定の配列を用いた内在性 mRNA の可視化の試み・・・・・76 3-4) 外来性 mRNA の作成と蛍光標識 ・・・・・79 3-4-1) mRNA の作成 ・・・・・79 3-4-2) mRNA の蛍光標識 ・・・・・86 3-4-3) mRNA の翻訳 ・・・・・87. 第4章. 生きている細胞核内の mRNA の運動観察. 4-1) 背景 4-2) 実験方法 4-2-1) 試料 4-2-2) 顕微鏡観察 4-2-3) マイクロインジェクション 4-2-4) 解析 4-3) 実験結果 4-3-1) 核内における mRNA の 1 分子イメージング 4-3-2) mRNA の運動解析 4-4) 考察 4-4-1) mRNA は核内を拡散運動している 4-4-2) 今後の課題 4-5) 結論. 第5章. ・・・・・101 ・・・・・105 ・・・・・105 ・・・・・106 ・・・・・106 ・・・・・108 ・・・・・109 ・・・・・109 ・・・・・111 ・・・・・114 ・・・・・114 ・・・・・120. まとめ. 5-1) 本論文のまとめ 5-2) 将来の展望. ・・・・・132 ・・・・・133. 参考文献 研究業績. ・・・・・136 ・・・・・143. 第 6 章 謝辞. ・・・・・147. 2.
(4) 2003 年度. 第1章. 1-1). 博士論文. 多田隈. 尚史. 序論. はじめに DNA の構造解析から 50 年、ヒトゲノムプロジェクトが一応の完成をみた。. 生物の基本設計図が明らかになった今、現象を見つけ、それに関連する分子を同定 していくという従来の還元主義的な研究は大きな転機を迎えている。今後は、シス テムの構築原理を明らかにしていくボトムアップアプローチがより重要になってく ると考えられる。 生物システムは非常に多種の生体分子からなっている上に、それぞれの分子 は確率的に動作したり、ある確率分布に従った様々な状態で存在している。そのた め、生物システムは機械のような均一なシステムではなく、ヘテロで動的なシステ ムである。このような生物システムの原理を理解するためには、システム全体の入 出力を調べたり、素子の振る舞いの平均値を測定するだけでは不十分である。個々 の分子を観察する事で、元の確率分布を記述し、その原理を明らかにしていく必要 がある。すなわち、システム全体の機能を見ながら、さらに、その現象に寄与する 個々の分子の振る舞いを測定する必要がある。蛍光 1 分子イメージング法は、生体 分子に蛍光色素という目印をつけて、分子の振る舞いを観察する手法であり、現時 点では、生物システムの中で個々の分子の振る舞いを観察できる唯一の方法である。 しかし、従来は、単分子の機能の測定や、2 種類の分子間の相互作用といった素子 としての生体分子の測定にしか用いられておらず、システムの中での研究には応用 されていなかった。 生物の最小の自立的システムは細胞である。本研究ではこの細胞内での 1 分 子イメージングの技術を開発し、その応用として、遺伝情報を伝達する分子である mRNA のイメージングを行った。 3.
(5) 2003 年度. 1-2). 博士論文. 多田隈. 尚史. 研究の背景. 1-2)-1. 蛍光 1 分子イメージング. 近年、水溶液中での蛍光色素 1 分子イメージング技術が我国で開発された結 果(Funatsu et al., 1995; Sase et al., 1995)、1 分子生理学が大きく花開いた(Harada et al., 1998; Weiss, 1999)。阪大の柳田敏雄のグループと慶応大の木下一彦のグルー プでほぼ同時に開発された 1 分子イメージング技術はプリズム型エバネッセント照 明や落射照明を用いたものであった。これらの方法ではレーザーなどの光源からで た励起光を試料に照射し、蛍光分子から毎秒数千〜数万の光子を放出させ、これを 開口数の大きい対物レンズを使って集め、超高感度ビデオカメラで撮影するのが一 般的である。しかし、以前は、強力な励起光により様々な光学部品から発生する蛍 光が背景光となり、1分子の微弱な蛍光をイメージングすることは困難だった。そ こで彼らは、顕微鏡の光学部品の一つ一つを最適化し、1 分子イメージングを確立 した。2 つのグループによるほぼ同時の開発ではあったが、真に 1 分子生理学の幕 開けとなったのは船津らによって導入されたプリズム型エバネッセント照明であっ た。これは全反射を利用し、溶液界面にしみだすエバネッセント場(指数関数的に減 少し、ガラス表面近傍 150nm 程度を照らす)を用いて、ガラス近傍の分子のみを励 起する方法である。背景光との関係で蛍光色素濃度が 50nM までに限定されている が、この方法によってモータータンパク質の運動(Vale et al. 1996)や、酵素による化 学反応の観察(Funatsu et al. 1995)、あるいはモータータンパク質の化学力学変換過 程の同時計測がなされた(Ishijima et al. 1998)。続いて、対物エバネッセント型照明 法が開発された(Tokunaga et al. 1997)。この方法では強力な励起光が観察に用いる 対物レンズを透過するため、ノイズがプリズム型に比べて増加するが、プリズムが 4.
(6) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. ないため、溶液交換が容易で、細胞を対象として研究に適用できるという利点があ った。 最近、1 分子イメージングは生きた細胞にも適用され、膜レセプターや接着 タンパク質がイメージングされた(Sako et al. 2000; Iino et al. 2001)。これらの実験 では、主に対物エバネッセント照明法を利用した全反射顕微鏡を用いる事で、照射 範囲を狭め、背景光を減らして 1 分子イメージングを実現してきた。しかし、生き た細胞に適用する場合、全反射を用いるこの方法ではイメージングが膜表面付近に だけ制限されていた。 そこで筆者は細胞内における任意の高さの 3 次元 1 分子イメージングを目指 し て 、 共 焦 点 顕 微 鏡 を 用 い た蛍 光 色 素 の 1 分 子 イ メ ー ジ ン グ 法を 開 発 し た (Tadakuma et al., 2001)。. 1-2)-2. 生きている細胞核内における mRNA の運動観察. 真核生物では、遺伝情報を蓄えている DNA と、その遺伝情報を基に蛋白質を 作るリボソームが存在する細胞質が核膜により区画されている。そのため、真核生 物の遺伝情報の発現では、遺伝情報が核から細胞質へと伝えられる必要がある。こ の伝達を担う物質が mRNA である。mRNA は核で作られた後、核膜を通って細胞質 へと輸送されたのち、細胞質において輸送され、あるものは更に局在化する(図 1-1)。 mRNA はこれらの過程で様々な制御を受けており、それらが積み重なって細胞によ る遺伝子発現の制御へとつながっている。最近の研究からそれぞれの過程が密接に リンクしていることが示唆されてきた(Maniatis and Reed, 2002)。この節では本研 究に関連する部分のみを記述し、mRNA の詳細な説明は第 3 章のはじめに述べる。 mRNA は核で DNA から転写された後、様々なプロセシングを経て成熟し、 5.
(7) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. 最終的に核膜上にある核膜孔複合体(NPC: Nuclear Pore Complex) を通って細胞質 へと核外輸送される。転写された mRNA がどのような機構で核膜孔へと移動してい くかについては、主に 2 つの説があった。一つは、mRNA がクロマチンの隙間を拡 散で運動していくとする"拡散説"。もう一つは、何らかの機構により能動的に輸送 されているとする"能動説"である。電顕観察などの結果から、核内蛋白質や RNA が 核フィラメントと呼ばれる線路上を移動することが示唆されてきた(Blobel 1985)。 しかし、近年は様々な実験から、mRNA は拡散によって移動しているとする説が有 力になってきた(Pederson 1999)。1 つ目は mRNA に結合する蛍光標識オリゴヌク レオチドを介して核内の内在性 mRNA を間接的に蛍光標識し、蛍光相関分光法 (fluorescence correlation spectroscopy)という方法で微小な領域(レーザー光強度 が 1/e 2 となる範囲の直径が 0.2µm)で観察した結果、mRNA は核内で水溶液中とほ ぼ同じ拡散速度(10µm2/s)で拡散していたという報告である(Politz et al. 1998)。また、 核内の微小領域に紫外線を照射して caged fluorescein(紫外線照射により分解して 蛍光を発する物質)で標識したオリゴヌクレオチドを介して mRNA が蛍光を発する ようにし、この蛍光の広がりから広範囲な領域(5µm)では mRNA が 0.6µm2 /s の拡散 速度で移動していることが示された(Politz et al. 1999)。これらの結果は、mRNA は 多数分子の平均をとると拡散で移動していることを示唆するが、見かけの拡散速度 が、微小領域と広範囲の領域では 15 倍程度違う事から、単純な拡散ではない可能性 が示唆されていた。また、一時的な能動輸送の可能性が残されていた。さらに、mRNA はスプライシングなどの転写後修飾がスプライソソームと呼ばれる核内の特定の場 所で行われているとする仮説がある(mRNA factory 仮説)。mRNA 分子の平均的な振 る舞いを計測するだけでは、核内構造物との一時的な結合・解離を検出・測定する事 は難しい。そこで、筆者は蛍光 1 分子イメージング法を用いて個々の mRNA の核内 での運動を解析した。 6.
(8) 2003 年度. 1-3). 博士論文. 多田隈. 尚史. 本論文の概要. 本論文は、細胞内で蛍光標識した生体分子を 1 分子レベルで観察する技術 開発をまとめたものである。さらに、この技術を応用して、遺伝情報を伝達する 分子である mRNA の核内運動の 1 分子イメージングが行なわれた。その結果、 mRNA は核内構造物と結合解離を繰り返しながらブラウン運動によって核膜孔へ と到達することが報告されている。 第一章では、生細胞内で 1 分子観察することの意義や、生きている細胞の 核内において mRNA の運動を観察する意義が述べられるとともに本論文の概要が まとめられている。 第二章では、細胞内で蛍光 1 分子を観察する技術について詳述されている。 筆者はニポウディスク型の共焦点顕微鏡を改良して、細胞内で 2 ミリ秒の時間分 解能で蛍光 1 分子を観察することを可能にした。この装置では、ガラス表面上に 固定した 1 個の蛍光色素(オレンジ色の蛍光を発するテトラメチルローダミン (TMR)と赤色の蛍光を発する Cy5)をミリ秒から 10 秒程度の範囲で観察すること が可能であり、この時間領域で起こる様々な生命現象の観察に有効である。この 装置を用いて、微小管上を滑り運動するキネシン分子の様子を観察することに成 功した。さらに、3 次元を拡散運動するキネシン分子や mRNA 分子の観察に成功 した。これらの生体分子の拡散運動を解析することで、本共焦点顕微鏡(観察光学 断面が半値幅で 0.7µm)で計測できる拡散定数の上限を見積もることができた。こ の上限は、高速カメラ(1 秒間に 250 コマ)を用いた場合は 10µm2/s であり、通常 のビデオレートのカメラ(1 秒間に 30 コマ)を用いた場合は 1-2 µm2/s であった。 また、ガラスに固定した mRNA 分子の測定から、測定できる拡散定数の下限を見 積もることができ、0.003µm2 /s であった。すなわち本研究では 0.003 から 10µm2 /s 7.
(9) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. の範囲の 3 次元における生体分子の拡散運動を測定できることがわかった。 第三章では、mRNA の蛍光標識法が述べられている。mRNA はそれ自身で 蛍光を発することはないので、蛍光観察のためには何らかの方法で蛍光標識をす る必要がある。この標識方法は、大きく分けて mRNA に結合する物質を介して蛍 光標識する"間接法"と、mRNA に直接蛍光色素を共有結合させて蛍光標識する"直 接法"に分かれる。筆者は始め、細胞内に元々内在する mRNA の標識ができると いう利点を有する"間接法"を試み、mRNA をリアルタイムに観察できることを示 した。具体的には TMR 色素で蛍光標識したオリゴ dT(40 塩基)を細胞核内にマイ クロインジェクションし、mRNA の polyA 部分と結合させた。蛍光標識 oligo dT は分子量が小さい為、それ自身では拡散が速すぎてビデオカメラで輝点として観 察されることはないが、mRNA と結合すると輝点として観察できるまでに運動が 遅くなった。その結果、導入した蛍光オリゴヌクレオチドのうち 9.4±3.9%(n=18 細胞)が輝点として観察された。続いて、蛍光色素を mRNA に直接共有結合させて 可視化した。この方法では mRNA に多数あるグアニン塩基をランダムに共有結合 で蛍光修飾するので、多数の色素を 1 本の mRNA に容易に結合させることができ、 長時間観察することが可能である。また、観察している輝点が全て mRNA である という利点を有する。試験管内合成系で作成し蛍光標識した mRNA を、カエル A6 細胞の核にマイクロインジェクションすると約 40 分で核外輸送され、タンパ ク質に翻訳されることがわかった。すなわち、外来性の蛍光標識 mRNA は核外輸 送と翻訳という機能に関しては、内在性と同様な振る舞いをすることが示された。 第四章では、生きている細胞核内における mRNA の運動観察について述べ られている。細胞内では電子伝達系などに関与する生体分子などが蛍光を発する。 そのため、細胞の蛍光観察ではこの自家蛍光が問題となる。ところが、核内には それらの生体分子がないため、核内には自家蛍光がなく、蛍光観察に適していた。 8.
(10) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. 蛍光標識 mRNA をマイクロインジェクションで核内に導入すると輝点が現れた。 これらの輝点はその蛍光強度が蛍光標識率から期待された明るさと一致したこと、 またその明るさの分布がマイクロインジェクションしてから 5,30,60 分後の測定 で変化しなかったことから(コルモゴロフ・スルミノフ検定で確認)、輝点は 1 分子 の mRNA と結論された。観察された mRNA 分子が共焦点光学断面(0.7µm)に滞在 する時間を解析したところ、滞在時間の短い成分と長い成分がいることがわかっ た。滞在時間が短い分子の軌跡を解析し、x-y 平面内の見かけの拡散定数を算出し たところ、0.3µm2/s であり、滞在時間から見積もられた z 軸方向の拡散定数とほ ぼ一致した。この拡散定数は水中の場合の 1/100 程度であった。一方、核内の粘 性は水中の 3 倍程度しか増加していないことが知られているので、拡散定数が 1/100 になる原因は粘性の変化では説明がつかなかった。さらに、mRNA は水中 では拡散定数が(長さ)- 0.5 に比例し、ランダムな高分子鎖として振る舞う。しかし、 核内では見かけの拡散定数が mRNA の長さを 400-1700 塩基の範囲で変えても変 化しなかった。これらの結果は mRNA の核内での拡散運動が単純な自由拡散運動 ではないことを示唆している。 続いて、滞在時間が長い分子も含めてより詳細に mRNA の運動の軌跡を解 析したところ、mRNA には少なくとも 4 つの運動形態を示すことが明らかになっ た。一つは拡散定数 0.3µm2/s の自由拡散であり、この値は mRNA の長さによら ず一定だった。2 つ目は 0.1µm2/s の拡散定数での拡散であり、mRNA の長さが長 くなるにつれて、この運動を示す mRNA の観察頻度が上昇した。3 つめは、0.2µm の範囲に制限された運動をしていた。4 つ目は拡散定数が測定限界(0.003µm2 /s) 以下のもので、これは何らかの構造物と結合して、核内に止まっている mRNA 分 子だと思われる。ところで、蛍光相関分光法を用いた微小領域の測定では mRNA は水中とほぼ同じ拡散定数の 10µm2/s で拡散していることが報告されている。こ 9.
(11) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. の知見と本研究で得られた実験事実から、mRNA は非常に短い距離は速い拡散 (10µm2/s)をしているが、核内構造物と弱い相互作用をするために、マイクロメー トル程度の距離の拡散運動は mRNA の長さによらずに 0.3µm2/s になると思われ た。また、mRNA の長さが長くなるにつれて遅い拡散定数の成分の観察頻度が上 昇したことや、あるいは、拡散定数が途中で変化する分子が観察されたことなど から、長距離の拡散運動においては何らかの核内構造物と結合解離を繰り返しな がら核膜孔へと拡散していくことが示唆された。 第五章では、本論文の結果をまとめ、細胞内蛍光 1 分子観察、及び、mRNA の蛍光 1 分子イメージングの展望について述べられている。. 10.
(12) 2003 年度. 図 1-1. 博士論文. 多田隈. 尚史. mRNA の一生. 真核生物では、遺伝情報を蓄えている DNA と、その遺伝情報を基に蛋白質を作る リボソームが存在する細胞質が核膜により区分されている。そのため、真核生物の 遺伝情報の発現では、遺伝情報が核から細胞質へと伝えられる必要がある。この 伝達を担う物質が mRNA である。mRNA は核で作られたあと、核膜を通って細胞質 へと輸送されたのち、あるものは更に局在化する。 mRNA はこれらの過程で様々な制御を受けており、それらが積み重なって細胞に よる遺伝子発現の制御へとつながっている。最近の研究からそれぞれの過程が密接 にリンクしていることが示唆されてきた。. 11.
(13) 2003 年度. 第2章. 博士論文. 多田隈. 尚史. 細胞内蛍光 1 分子観察装置の開発. 本章では、本研究で用いた細胞内蛍光 1 分子観察装置の開発とそのスペック について述べる。. 2-1). 研究の背景. 1995 年に船津らによって開発された 1 分子イメージング技術(Funatsu et al. 1995)は試験管内(in vitro)で、1 分子の生体分子の活性や相互作用を観察するもので あった。近年 1 分子イメージングは生きた細胞にも適用され、膜レセプターや接着 タンパク質がイメージングされた(Sako et al. 2000; Iino et al. 2001)。これらの実験 では、主に対物エバネッセント照明法を利用した全反射顕微鏡を用いる事で、照射 範囲を狭め、背景光を減らして 1 分子イメージングを実現してきた。しかし、生き た細胞に適用する場合、全反射を用いるこの方法ではイメージングが膜表面付近に だけ制限されていた。 そこで本研究では細胞内における任意の高さの 3 次元 1 分子イメージングを 目指して、共焦点顕微鏡を用いた蛍光色素の 1 分子イメージング法を開発した (Tadakuma et al., 2001)。. 12.
(14) 2003 年度. 2-2). 博士論文. 多田隈. 尚史. タンパク質の調製. 本研究で用いたキネシンは、小嶋らの手法 (Kojima et al. 1997) によって牛 脳から精製した。微小管は、Hyman らの手法 (Hyman et al. 1991) によって豚脳か ら精製した。. 2-2-1) 天然キネシン調製法. 天然キネシンは2つの牛脳神経細胞から調製する。調製過程の大まかな流れを以 下に示す。豊島陽子研究室 (東大・院・総合文化)のプロトコルを船津研 1 期生の山 口純一君が精製途中で蛍光標識するように変更したものを多田隈がまとめたもので あ る 。 価 格 な ど は 2000 年 4 月 の も の で あ る 。 色 素 は (TMR)-5-maleimide (MolecularProbes, U.S.A.) IC5-maleimide (Dojindo, Japan)を用いた。. 13.
(15) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. 流れ ①脳を細切れにする. 工程 2. ②遠心で余分なものを落とす. 工程 3&4. ③微小管(MT)を重合させた後、AMP-PNP を加えることで、kinesin-MT 重合体として回収 → 工程 5〜7 ④重合した MT を 100mM NaCl の入った溶液で suspend した後、遠心して回収 → 工程 8&9 ⑤重合した MT を ATP 入りの溶液で suspend し、遠心で上澄みを回収. 工程 11&12. ⑥DEAE カラムに通す. 工程 13〜17. ⑦ショ糖密度勾配遠心. 工程 18〜22. ⑧回収し、ゲル電気泳動& gliding assay& 濃度決定を行った後、液体窒素で保存 → 工程 23&24. 試薬 Leupeptin. ペプチド研究所. code#4041. 100mg ¥13,200 約 2 回分. Trypsin Inhibitor. Sigma. code#T-9253. 250mg ¥3,330. Aprotinin. Sigma. code#A-1153. 10mg. ¥7,700 約 2 回分. Pepstatin. Sigma. code#P-4265. 5mg. ¥3,600 約 2 回分. TAME. Sigma. code#T-4626. 1g. ¥1,000. TPCK. Sigma. code#T-4376. 100mg ¥2,200 約 6 回分. PMSF. Sigma. code#P-7626. 5g. ¥6,000. Taxol. Sigma. code#T-1912. 5mg. ¥11,800 約 2 回分. AMP-PNP. Sigma. code#A-2647. 25mg. ¥20,000 約 2 回分. GTP. Sigma. code#G-8877. 1g. ¥29,460. Apyrase. Sigma. code#A-6132. 14.
(16) 2003 年度. 博士論文. 前日準備 予約. 芝浦臓器. 03-3471-3371 (牛脳 2 個, 税込み¥2,100). 溶液の確認 Leupeptin. 10mg/ml. 4ml. Trypsin Inhibitor. 10mg/ml. 1.8ml. Aprotinin. 10mg/ml. 0.4ml. Pepstatin. 2mg/ml (MetOH). 1ml. TAME. 10mg/ml (DMSO). 0.4ml. TPCK. 15mg/ml (100mg に MetOH を 6.7ml). 1ml. PMSF. 200mM (P mg に MetOH を 0.0287×Pml). 1.8ml. Taxol. 10mM (5mg に DMSO を 0.6ml ). 0.3ml. AMP-PNP. 0.1M(25mg に 0.1M HEPES, pH7.4 を 0.5ml) 0.2ml. GTP. 0.1M(1g に MQ19.1ml? pH adjust). 2.5ml. 溶液作成 HB Buffer 1.5L 100mM. MES (pH6.7, KOH). 1M. 150ml. 2mM. MgCl2. 1M. 3ml. 2mM. EGTA. 0.1M. 30ml. 0.1mM. EDTA. 0.2M. 0.75ml. KB Buffer 200ml 100mM. PIPES (pH6.8, KOH). 0.5M. 40ml. 2mM. MgCl2. 1M. 0.4ml. 2mM. EGTA. 0.1M. 4ml. 0.1mM. EDTA. 0.2M. 0.1ml. 15. 多田隈. 尚史.
(17) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. 10GlyKB-ATP 50ml + Inhibitors Glycerol. 5ml. KB Buffer. 39ml. 12.5mM MgCl2. 1M. 0.625ml. 10mM. ATP(当日). 0.1M. 5ml. 20µM. Taxol(当日). 10mM. 100µl. 注: ラベルする時は DTT を絶対に入れない(通常は f.4mM ? 1M を 0.2ml 加える). 30Gly-KB 100ml + Inhibitors Glycerol. 33ml. 100mM. PIPES (pH6.8, KOH). 0.5M. 20ml. 2mM. MgCl2. 1M. 0.2ml. 2mM. EGTA. 0.1M. 2ml. 0.1mM. EDTA. 0.2M. 50µl. 0.1M. NaCl. 1M. 10ml. 20µM. Taxol(当日). 10mM. 200µl. 4mM. DTT(当日). 1M. 0.4ml. 50Gly-KB 100ml + Inhibitors Glycerol. 50ml. 100mM. PIPES (pH6.8, KOH). 0.5M. 20ml. 2mM. MgCl2. 1M. 0.2ml. 2mM. EGTA. 0.1M. 2ml. 0.1mM. EDTA. 0.2M. 50µl. 4mM. DTT(当日). 1M. 0.4ml. [カラム関係] X2 Stock Solution 200ml 40mM. HEPES (pH7.5). 0.6M. 13.3ml(3.325mlX4 回). 4mM. MgCl2. 1M. 0.8ml. 4mM. EGTA. 0.1M. 8ml. 0.2mM. EDTA. 0.2M. 0.2ml. 16.
(18) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. Column Buffer Buffer. A. B. C. Vol NaCl conc.. 80ml 50mM. 40ml 100mM. 40ml 250mM. 1M NaCl X2 Stock MQ Leupeptin. 4ml 40ml 36ml 160µl. 4ml 20ml 16ml. 10ml 20ml 10ml 80µl. 注) Leupeptin(10mg/ml)は当日. DEAE column (Merck Fractgel EMD DEAE-650(M) ) (a) column を良く撹拌した後、1ml を 10ml プラスチック試験管にとる (b) MQ をいっぱいまで入れ、沈殿後上澄みを捨てる→X2 回 (c) 1M NaCl sonic 3min. X2. (d) MQ. X2. (e) 0.5M HEPES pH7.5. X2. (f) 50mM NaCl, 20mM HEPES pH7.5. X1. (f.50ml. 1M NaCl 2.5ml, 0.6M HEPES 1.7ml). (g) store In cold-room until use. [ショ糖密度勾配遠心] Sucrose gradient solution (5 - 20%) f.100ml X2 Sucrose. 5g. 80mM PIPES (pH6.8, KOH). 0.5M. 16ml. 2mM MgCl2. 1M. 0.2ml. 2mM EGTA. 0.1M. 2ml. 0.1mM EDTA. 0.2M. 50µl. (直前) 1M DTT 0.1ml. or. 10mg/ml Leupeptin 0.1ml. 17. 20g. 10mg/ml TAME 0.1ml. 尚史.
(19) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. 作業 0)Protease Inhibitor を室温に戻す(特に TAME が解凍しにくい)。遠心チューブ 500ml×4 本 を冷やす。ミキサー&包丁を低温室に入れる。遠心機(低速遠心機)の switch on。 1)牛脳を芝浦臓器に取りに行く。. →Ice box(氷はむこうでもらえる). 品川駅→港南口(2 つあるうちの右の方)→新幹線ホームそばのビル(品川インターシテ ィ)の入り口でコンコースから下の道路に降りる→目の前に市場がある→奥の方のピンク 色の建物の 3F. 2)HB buffer に Protease Inhibitor を混ぜる。 Leupeptin. 10mg/ml. 3ml. Trypsin Inhibitor. 10mg/ml. 1.5 ml. Aprotinin. 10mg/ml. 0.3 ml. Pepstatin. 2mg/ml. 0.75ml. TAME. 10mg/ml. 0.15ml. TPCK. 15mg/ml. 0.75ml. PMSF. 200mM. 1.5 ml. DTT. 1M. 6 ml. HB buffer を 1L と 500ml に分ける。 10,30&50 Gly-KB 溶液にも Protease Inhibitor を混ぜる 30&50 Gly-KB. 10 Gly-KB. Leupeptin. 10mg/ml. 200µl. 100µl. Trypsin Inhitor. 10mg/ml. 100µl. 50µl. Aprotinin. 10mg/ml. 20µl. 10µl. Pepstatin. 2mg/ml. 100µl. 50µl. TAME. 10mg/ml. 10µl. 5µl. TPCK. 15mg/ml. 50µl. 25µl. PMSF. 200mM. 100µl. 50µl. 冷やしながら皮剥ぎをする為に作業台を作る。 →ラーメン容器にかき氷を入れ、サランラップでおおう。 脳を cold MQ で洗う。 洗った脳を 3 分割し、1 塊以外はラップにくるんでアイス box に保存しておく。 18.
(20) 2003 年度. 博士論文. 膜と血管をはぐ(ヒダヒダの間に指を突っ込み、皮を引っ張る). 多田隈. 尚史. 温まらないよう注意. 終わったら HB buffer 1L で洗う(Protease Inhibitor は体に毒→手袋を必ず着用) 細切れしてミキサーに入れ、HB buffer 400ml を足した後 low 25 秒 3)ゴミ落とし遠心. 500ml × 4 (7K rpm 4℃ 75 分). 500ml ビーカー、75ml の遠心チューブを 6 本冷やす 4)sup を 500ml ビーカーにいったんあけた後、75ml チューブに移す。 →ゴミ落とし遠心. 75ml × 6 (35K rpm 4℃ 80 分). インキュベーター33℃ ON。GTP を解かす。500ml コニカルビーカーの準備 5)sup + 1/2 vol glycerol (上澄み 300ml + Glycerol 150ml) → f. 450ml + 0.1M GTP. 2.5 ml (f. 0.5mM). + 1 M MgCl2. 1 ml (f. 2 mM). →33℃. 30 分. インキュベート (たまに撹拌). 洗面器にお湯を張って、遠心ローターを暖める. 6)Apyrase. 100U/ml. 2.5ml (1/200 v/v). 0.1M AMP-PNP →33℃. 20 分. 200µl (1/2500 v/v) インキュベート. 遠心ローターを遠心機に移し、真空を引いておく 7)Kinesin 付き MT 落とし. 75ml × 6 (40K rpm 25℃ 50 分). 500ml のビーカー(上澄み廃棄用)、2ml のこまごめピペット、短いパスツールの用意 50 gly のベッド(35ml) ×2 本 の用意 KB を室温に戻す. 8)ppt.を洗う (a)少量の KB buffer で管壁を洗う (b)30Gly-KB (各 10ml/チューブ)で suspend (始めこまごめピペットを使用、細かくなったらパスツール) (c) 50Gly-KB のベッド(35ml)の上に半分づつのせる(秤にのせながらやると楽) 9)遠心. 75ml × 2 (40K rpm 25℃ 50 分). DEAE カラムの組み立て a)Leupeptin(以下 LP)を buffer に加える 19.
(21) 2003 年度 A に LP(10mg/ml). 博士論文. 多田隈. 尚史. 120µl (60ml に対して) 80µl (40ml に対して). C. b)カラムを、フラクションコレクターの UV モニターの box(管が出入りしている奴)の 高さに固定する c) カラムに buffer A をのせて、うまく液体が流れることを確認する。確認したら、コ ックを閉じる (泡を入れないようにする為、コックを閉じる時は右斜め 45 度の角度で止める) ついでにフラクションコレクターの動作確認。 指定 drop に達したら ①流出口の位置が移動すること ②それに応じて、記録紙の方にマークが記録されること d)洗ったカラムの粉を全量カラムにのせる e)自然落下で上澄みを流出させ、カラムを固める。この時流速を確認する(13drop/分 〜 0.5ml/分)。流速はカラムを棒に固定する高さを調節することで変える f) bufffer A 数 ml で洗う 10) sup を捨てる 11) ペレットを KB で 2 回洗った後、10Gly-KB-ATP を(各 5ml/チューブ)で suspend(液はほ んのり黒い← apyrase のため) →室温放置 20 分 12) a)微小管落とし遠心 75ml × 2 (35K rpm 20℃ 65 分) b)Bradford 法でタンパク質定量後(BIORAD Protein Assay Dye Reagent Concentrate code# 500-0006; 以下 BIORAD 溶液)、蛍光標識 MQ. 795µl. Sample. 5µl. BIORAD 溶液. 200µl. →混ぜた後 10 分後に ABS595 を測る(base は MQ 800µl + BIORAD 200µl で引く) →値 × 3.55 =タンパク濃度(mg/ml) = C (通常は Abs595 ~ 0.2 → 約 0.7mg/ml) 100KDa と仮定して 3 倍量の色素(濃度 F[mM])を入れる (約 13ml のタンパク溶液(1mg/ml) に対して f.390nmol) 入れる色素の量 = (390×C) / F [µl] →氷上で 1 時間放置 →DTT 52µl (f. 4mM) を加える 20.
(22) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. 13) DEAE カラムを A-Buffer (+LP) 1ml で洗う 14) ATP-release の sup を約 13drops/分の速さで 30 分かけて load ふたを切ったサンプルチューブを 50 個用意し、load が終わったら set する (サンプルチューブのふたは捨てない) 15) B-Buffer (LP なしで OK)で base ラインに落ちるまで洗う(5〜10ml ぐらい) B-Buffer を載せたらサンプルを採り始める (15drop(=約 600µl) / サンプルチューブ) 。レンジ 0.5, 記録 10mV, 速度 15cm/h 16) C-Buffer でゆっくり(5〜6 drops/分) elute する 使い終わった後、チューブをまず 1M KCl(7.26g/100ml)で洗った後、MQ で洗う。 17) タンパク定量 ( 12)に同じ) ピーク 2〜3 本を混ぜ合わせる ピーク濃度は ABS595=0.13 ⇔ 約 450µg/ml 18) sucrose gradient bed を作る(DTT/ LP/ TAME を忘れずに) 出口がついているほうに 20%ショ糖溶液とスターラーを入れ、もう一方に 5%を入れる。 出口にはチューブを介してペリスタポンプをつけて、ゆっくりと引く 19) sucrose bed の上にサンプルをのせる 20) スイングローター(日立 P28S2)で遠心. (28K rpm 4℃ 19.5 時間). 21) 翌日、遠心機を停止させる ふたを切ったサンプルチューブを 60 個用意し set する 22) フラクションコレクターで遠心チューブの底から吸引(勾配を乱さぬよう注意(15drop/ サンプルチューブ) ). レンジ 0.5, 記録 10mV, 速度 15cm/h. 23) a)SDS ポリアクリルアミド電気泳動(ATTO パジェル NPG520L (5-20%の gradient gel) )後、Coomassie Brilliant Blue(CBB)染色(和光 QUICK CBB code#299-50101) マイナス sample sample 5µl + マイナス sample 10µl 21.
(23) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. → 熱湯 3 分後、全量をゲルに apply →(20mA / ゲル 1 枚) で 70 分泳動 →CBB 染色 (固定: MQ80ml + メタノール 100ml + 酢酸 20ml)→10 分×2 回 (染色液: A&B 各 30ml). →30 分. (脱色: MQ) →遠心チューブの下の方から ダイニン→キネシン→変なタンパク質. b)タンパク質定量 MQ. 750µl. Sample. 50µl. BIORAD 溶液. 200µl. ピーク濃度は ABS595 ~ 0.27 → 約 100µg/ml 山が 2 つでるが前の方のものを使用する c)gliding assay (5 倍希釈) ①MT(微小管)を重合させる a) MA = 50µl Assembly buffer + 0.5µl GTP b) 5µlMA. +. 5µl labeled-MT. c) Incubate 30min @37°C d) Stock MT = 190µl A-buffer. +. 2µl taxol (4mM) + 8µl MT (f. 1/25). ②a-casein を casein buffer で 10mg/ml にする ③ATC = casein 50µl. +. A-buffer 450µl + taxol 5µl. ⇒apply 15µl Into a flow chamber ④KC = 18µl ATC + 2µl kinesin ⇒ apply 15µl Into a flow chamber ⑤MO = 43µl ATC + 0.5µll each 酸素除去酵素系&ATP ⇒apply 15µl Into a flow chamber 24) 液体窒素で瞬間凍結(30µl づつ凍らせる). 22. +. 5µl stock MT.
(24) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. 2-1-1) 微小管調製法 微小管は、球状タンパク質であるチューブリンへテロダイマーが基本ユニットと なり、直径 25nm の管状重合体を形成したものである。チューブリンは3つの豚脳 から精製する。神谷律研究室の八木俊樹博士(東京大学理学部生物)のプロトコルに、 精製後に蛍光標識する方法を足したものである。蛍光標識法は(Hyman et al. 1991) を参考にした。色素は Cy5 (Amarsham)を用いた。. 溶液の準備 Leupeptin. 10mg/ml 1ml. GTP. 0.1M 5ml. DTT. 1M 1ml. TMR-SE 0.5N HCl. 100mM (DMSO) 10ul (21.5ml). PMSF. 200mM (MetOH). ATP. 2ml. 0.1M. 10ml. L-Glutamic Acid (Sigma G1501)2M. 100µl. 0.5N NaOH (10g). 500ml. 500ml. 溶液組成 Washing Buffer 500 ml 0.24 M 10 mM 10 mM RB. (注:. 1000ml のビーカーに入れる). Sucrose MgCl2 Na-Pi buffer (pH 6.8) 500 ml. 10 mM 0.5 mM 100 mM 1 mM 2 mg/ml 0.4 mM 1 mM うち 300ml は. 1M. 41g 5ml 0.78g. (脳みそ 4 個の時は 700ml). Mes - NaOH (pH6.8) 1M 5ml MgSO4 1M 0.5ml KCl 3.73g EGTA 0.1M 5ml leupeptin 10mg/ml 0.28ml PefaBloc 0.2M 1ml DTT +ATP, 200ml は +GTP をそれそれ1mMとする。 23.
(25) 2003 年度. <PC カラム用の溶液> 0.5 N NaOH 500 ml 0.5 N HCl 500 ml. 博士論文. (NaOH (HCL. 多田隈. 尚史. 10g) 25ml). Buffer A 500 ml 100 mM 0.5 mM 1 mM. MES - NaOH (pH6.8) MgCl2 EGTA. 1M 1M 0.1M. 50ml 0.25ml 5ml. MES - NaOH (pH6.8) MgCl2 EGTA. 1M 1M 0.1M. 20ml 0.5ml 5ml. 0.9 M 11 mM. MES(pH6.9) MgSO4. 1M 1M. 4.5ml 55 µl. 1 mM. EGTA. 0.1M. 50 µl. PC Buff 500 ml 20 mM 0.5 mM 1 mM Buffer B 10 ml. Phosphocellulose カラムの準備 1. 約 20ml のビーズ(粉; P11, Cellulose Phosphate 100g Whatman を 10g 取る; 以 下 PC)を 0.5N NaOH 500ml に加え、ガラス棒でやさしく混ぜる。5 分放置。 2.上澄みをすて、MQ で数回洗う(上澄みの pH が 11 以下になるまで)。 3.0.5N HCl 500 ml に加えて、ガラス棒でやさしく混ぜる。5 分放置。 4.上澄みをすて、MQ で数回洗う。(上澄みの. pH が 3 以上になるまで). 5.カラムの用意。 PC の洗いの間に、カラム(内径 40mm,高さ 130mm 程度の もの)を垂直に立てる。カラムの下部には長めのチューブをつけ、上から MQ を勢 い良く流して、カラムとチューブにトラップされた空気を抜く。MQ を少しだけ残 して待機。 6.. PC に BufferA を加え、NaOH で pH を 6.8 にあわせる。 24.
(26) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. 7. PC をカラムに詰める。4.の上澄みを除いた後、攪拌した PC を勢い良くカラム に流し込む。PC が沈殿するのを待ち、足りない場合は上から静かに PC 懸濁を加え る(微小管蛋白質の想定収量が A mg の時、カラムベッドボリュームは A/2 ml 以上に なるようにする(カラムベッドボリューム 1ml に対して微小管蛋白質 2mg 以下) ) 8.カラムの平衡化(ここから 4℃)。 カラムにビーズ体積の 2 倍量の PC 液を流 す。つづいて、ビーズ体積の 1 倍量の PC+GTP 液をカラムに流す。流速が速すぎる と、カラムがつまるので注意。 カラムの下部には長いチューブをつけ、チューブ の先端をカラム液面近くまで持ち上げ、流速を調節する。1 秒間に 1 滴程度の流速 がベター。 終ったら、そのまま冷やして待機する。. 作業 <前日まで> ・注文する(芝浦臓器 3471-3371)。 ・液体窒素を用意する。 ・溶液を作成し冷やす。 ・ローターとワーリングブレンダを冷やす。 ・PCの活性化とカラムの平衡化をする。 <当日> 1.冷却遠心機およびローター(500ml type)をよく冷やしておく。 2.3 個のブタ脳の血管・膜を取り除き、冷たい washing buffer で洗う。計量してか ら(約 300 g)、包丁で薄切りにする。 3.等量の冷たい RB(ATP)を加えホモジナイズ(low で約 30 秒。音が変わるまで) 4.粗いゴミ落とし。500 ml の遠心管 2 本につめ、遠心(8k rpm 20 min. at 2℃) 5.ゴミ落とし。. sup. をさらに超遠心する(40k rpm 40min.at 2℃). 6.sup.をビーカーに移し、スターラーで混ぜながらそこに glycerol(sup.の x1/3 vol.)と ATP(f. 1mM、0.1M ATP を 1/100vol.)を加え、 37℃ 20min. 放置し、 微小管を重合させる。この間にローターを 37℃に暖める(以下同じ)。 25.
(27) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. 7.微小管を集めるために、超遠心する(40k rpm 40min. at 37℃)。 8.ppt.を 約 50 ml の RB(GTP) に冷しながら、泡立てないように suspend (時間をかけて冷やすと良く溶ける。30 min くらい) ppt.は柔らかいので注意する。この間にローターを冷やす(以下同じ)。 9.ゴミ落とし。. 超遠心する(40k rpm. 40 min. at 2℃)。. 10.sup.に ATP(f. 1mM),glycerol(sup. の 放置し、微小管を重合させる。. x1/3 vol.)を加え、37℃. 20min.. 11.微小管を集めるため、超遠心する(40k rpm 40min. at 37℃)。 12.ppt.を 約 25 ml の RB(GTP) に冷やしながら、泡立てないように suspend(時 間をかけて冷やすと良く溶ける)。 13.ゴミ落とし。. 超遠心する(40k rpm 40 min. at 2℃)。. 14.sup.に ATP(f. 1mM),glycerol(sup. の 放置し、微小管を重合させる。. x1/3 vol.)を加え、37℃. 20min.. 15.微小管を集めるため、超遠心する(40k rpm 40min. at 37℃)。 16.続けてカラムにかけるときは ppt.を PC Buff + GTP(f. 1mM) (以下 PC(GTP) ) 約 10ml に溶かし(冷やして十分解かす)、チューブリン濃度を測る(ここで 100 -150mg 程度取れているはず)。 かけないときは、 ppt.を冷 RB(GTP) に溶かす。液体窒素で凍結させた後 -80 度で保存する。後日あらためて重合・脱重合サイクルの精製をおこなってから PC カラムにかける。 <ここからカラム> 17.サンプルロード。 カラムの上を開放し、残っている PC(GTP)を流しきった後、 チューブリン溶液をPCカラムの上にのせる。溶液がカラムの中に入ったら、カラ ムの上から PC(GTP)を流す。. 26.
(28) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. 18.チューブリンの分取。溶出される液の蛋白質濃度をモニターし、濃度があがり はじめたら下がりきるまで分取する。チューブリンは PC カラムを素通りする。カ ラムボリュームの 1/3 から半分の溶液が流れたところでチューブリンが溶出される。 溶出したチューブリンには x1/10 量の buffer B と x1/100 の 100 mM GTP を直ち に加える。 19.濃縮。チューブリン濃度を測定する。薄いときには濃縮する(ストックは 6mg/ml 以上あるのがベター)。濃縮はセントリプラス(10k)を用いて遠心濃縮する(5000rpm 約 30min-3h.)。 20.保存。サンプルチューブに 30µl づつ分注し,液体窒素で急速凍結後、-80℃で 保存する。 <以下蛍光チューブリンの調製> 溶液組成 x2 glycerol PB. 10 ml. 160 mM K-PIPES(pH6.8) 10 mM MgCl2 2 mM EGTA 2 mM GTP 66% glycerol. 1.6 ml (stock 1M) 0.1 ml (stock 1M) 0.2 ml (stock 0.1M) 0.2 ml (stock 0.1M) 6.6ml. 60 % glycerol H-pH buffer 20 ml 0.1 M NaHEPES (pH 8.6) 1 mM MgCl2 1 mM EGTA 60 % glycerol MQ. 2 ml (stock 1M) 0.02 ml (stock 1M) 0.2 ml (stock 0.1M) 12 ml 5.78 ml. 40 % glycerol H-pH buffer 20 ml 0.1 M NaHEPES (pH 8.6) 1 mM MgCl2 1 mM EGTA 40 % glycerol MQ. 2 ml (stock 1M) 0.02 ml (stock 1M) 0.2 ml (stock 0.1M) 8 ml 9.78 ml 27.
(29) 2003 年度. x4 BRB80. 多田隈. 尚史. 10 ml (BRB: Brinkley Reassembly Buffer). 320 mM K PIPES(pH 6.8) 4 mM MgCl2 4 mM EGTA 60% glycerol BRB80 4 ml X4 BRB80 glycerol MQ. 博士論文. 3.2 ml (stock 1M) 0.04 ml (stock 1M) 0.4 ml (stock 0.1M) 1.0 ml 2.4 ml 0.6 ml. 作業 1.チューブリンを重合させる。凍結しておいたチューブリン(60-80mg)を解かし、 x2 glycerolPB を 1:1 で加えて重合させる(37℃ 30 min.)。この間に 60% glycerol を含む H-pH buffe(100mM NaHEPES(pH8.6), 1 mM MgCl2, 1 mMEGTA)をポリカ ーボネート製の遠心管に半分満たし、あらかじめ 37℃に暖めておく。 2.微小管を沈殿させる。上の 60% glycerol BRB80 のクッションの上に重合した チューブリンを乗せ、遠心する(70k rpm, 30min.)。 3.pH を上げる。クッションの上にある上澄みをアスピレーターで取り去る。クッ ションの境界面を H-pHbuffer で丁寧に洗った後、クッションをアスピレーターで取 る。ppt. を 40 % glycerol を含む H-pH buffer(あらかじめ 37℃に暖めた物) 100-200µl に暖めながら懸濁する。 懸濁する際には、先を切ったピペットマンチッ プを用い、懸濁した後、さらに vortex をかける。この操作により白濁した微小管懸 濁液(チューブリン濃度約 50mg/ml)が得られる。 4.染色する。1/10 Vol の 100 mM NHS-fluorochrome ( in dry DMSO)を vortex しな がら素早く加え、37℃で 2 分おきに vortex をかけながら 10 分間まつ。 5.反応を停止する。100 mM potassium glutamate と 40 % glycerol を含む x2BRB80 溶液を 2 倍量加えてよく混ぜる。 6.フリーの色素の除去。ステップ1,2と同様の操作により微小管を沈殿させる。 BRB80 buffer 200µ l に懸濁して 0℃で 1 時間放置し、チューブリンを十分脱重合さ せる。その後、NAP5カラム(BRB80 で平衡化)によりフリーの色素を取り除 く。400µl を最終産物としてとり、液体窒素で急速凍結後、-80℃に保存する。 28.
(30) 2003 年度. <吸光係数> tubulin Abs278 = 1.33 TMR Abs 550 = 95,000 Cy5 Abs 649 = 250,000. M-1 cm-1 M-1 cm-1 M-1 cm-1. 29. 博士論文. 多田隈. 尚史.
(31) 2003 年度. 2-3). 博士論文. 多田隈. 尚史. キネシンの 1 分子アッセイ. キネシンの 1 分子アッセイは柳田プロジェクトの樋口秀男氏(現、東北大学・ 学際科学センター)のプロトコルを基に行った。また、taxol で安定化した微小管は 神谷律研究室(東京大学・理学部・生物)のプロトコルで行った(Kagami & Kamiya 1992)。. <casein の溶かし方> casein はナカライ cat#073-19 を用いた。作成した casein 溶液は氷上で1週間保存 できる 1. C−buffer(100mM NaCl, 10ml Tris, pH ~ 10,室温)に 粗 casein を 10mg/ml にな るようにいれる 2. 5 分間ボルテックスで Mix する : pH ~ 7.8 になる 3. 40k rpm, 2min at 4℃ で超遠心(日立 himac cs120)する. <キネシンの 1 分子アッセイ> 以下の方法でセルを作成し、蛍光観察を行った。カバーガラス(松浪 Micro Cover Glass Thickness No.1 0.12-0.17mm)は 0.1M KOH で一晩洗った後、エタノールで洗 浄し、クリーンユニット(日本医化器械製作所 FCB-850K、クラス 100)の中で乾 燥させた。taxol は Sigma Paclitaxel 5mg code#T-1912 、glucose-oxidaseo(type Ⅶ) は Sigma G-2133、catalase は Sigma C-40、DTT は和光 code#047-08973 を 用いた。 Assembly buffer (80mM PIPES, 1mM MgCl2, 1mM EGTA, 10%(v/v) DMSO, pH6.9) HMDE (30 mM HEPES, 5 mM MgSO4, 1 mM DTT, 1 mM EGTA, pH 7.4) A(ssay)-buffer (80mM K-PIPES, 2mM MgCl2, 1mM EGTA, pH 6.8) taxol は 5mg に 1.5ml の DMSO を加え-80℃で stock.(f. 4mM) 1. MT assembly 1) AG = 50µl X2 assembly buffer (In 4℃) + 0.5µl 0.1M GTP (In -30℃) 2) Mix 5µl AG + 5µl MT (In -80℃). Then Incubate 30 min @37℃ 30.
(32) 2003 年度. 3) 4) 5) 6) 7). 博士論文. 多田隈. 尚史. HT = 190µl HMDE + 2µl 4mM Taxol AT = 50µl A-buffer + 0.5µl 4mM Taxol Stock MT = HT + 8µl MT (f.1/25) M = AT + 50µl Stock MT (f.1/50) Check M by applying 10µl on slide glass. 2. Assay(~20nM kinesin) 1) casein stock = 10mg/ml a-casein by A-buffer 2) ACT = 50µl casein stock + 450µl A-buffer + 5µl 4mM Taxol 3) make flow chamber (use TORAY Lumiror as spacer) 4) Infuse 10µl of M into a flow chamber. Wait for 2min 5) O = (25-kinesin) µl ACT + 20µl Methyl Cellulose (1%) + 0.5µl G, O, C, T, ATP (0.1M), MgCl2 (0.1M) 6) wash 10µl X3 of ACT. Wait for 2min 7) KO = O + 2.5-10µl kinesin. Infuse 10µl of KO into a flow chamber.. 2-4). キネシンのゲル中への固定. 蛍光標識したキネシンを 3 次元に固定する為に、ポリアクリルアミドゲルの 中に以下のプロトコルで埋めこんだ。 アクリルアミド(stock)溶液の作成(ゲル濃度 T=45%, 架橋度 C=5%) アクリルアミド(和光 code#019-08011) 21.38 g N, N-ビスアクリルアミド(ナカライ code#224-02) 1.13 g MQ で f.50ml にあわせる 2) ゲルの作成(f. 75 or 150µl In サンプルチューブ) A-buffer 100 µl 50 µl Kinesin 2 µl (f.5nM) 1 µl アクリルアミド 50 µl (f.15%) 25 µl APS 1.5 µl 1 µl 3) ゲルを固まらせる TEMED を 0.5µl 加えた後、チップで数回撹拌。10µl とって、スライドガラス に apply し、カバーガラスをのせて、マニキュアでシールする。 4) 顕微鏡で観察 1). 31.
(33) 2003 年度. 2-5). 博士論文. 多田隈. 尚史. 細胞内蛍光 1 分子観察装置の開発. 本研究で開発した装置の概要を図 2-2 に示す。基本的には市販の共焦点ユ ニット(横河電機:CSU-10)を倒立型顕微鏡(オリンパス IX70)に組み込み、超高感度 カメラを接続したものである。工夫を加えることで、1 分子イメージングが可能と なった。. 2-5-1) ニポウディスク型共焦点顕微鏡. 共焦点顕微鏡では図 2-3 に示すように、試料の焦点と共役の位置にピンホー ルをおき、焦点のみを励起し、また、焦点から発した蛍光のみを集光することで共 焦点効果を得る照明法である。画像を得るためには、画面全体をピンホールで走査 する必要があるので、走査型(スキャニング)顕微鏡と呼ばれる顕微鏡の 1 種である。 通常の共焦点顕微鏡ではこのピンホールの数が 1 つである。画面全体を一つのピン ホールで走査するので、画像描画が遅いという欠点を有する。また、画像描画速度 を実際の生物現象の時間領域内にするために、通常は観察領域が小さい。この問題 を解決する為にまず実用化されたのが、スリット型共焦点顕微鏡である。米国 Bio-rad 社などから発売されたスリット型共焦点顕微鏡はピンホールの代わりにス リットを用いることが特徴である。走査方向が 2 次元から 1 次元になったので、走 査スピードは向上し、通常のビデオレート(秒 30 コマ)が実現された。しかし、ピン ホールの代わりにスリットを用いているため、共焦点効果が減少し、本格的な普及 には至らなかった。ピンホールを複数化することで高速化を目指して考案されたの 32.
(34) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. が、ニポウ(Nipkow)ディスク型の共焦点顕微鏡である(図 2-3b)。多数のピンホール が開いたニポウディスクが高速で回転する事で、画面取得時間を短縮している。た だし、十分な共焦点効果を得るためにはピンホールの間隔や大きさを最適化する必 要がある。また、通常のニポウディスク型共焦点ユニットは 1 枚のニポウディスク で構成されており、入射光の数%しか透過しない。このため、強力なレーザーが必 要となったり、反射した光によるノイズが問題であった。横河電機の田名網・市原 らはニポウディスクとマイクロレンズアレイを組み合わせる事でこれらの問題を解 決し、ニポウディスク型共焦点顕微鏡を実用化した(Ichihara et al. 1996)。市販され たニポウディスク型共焦点顕微鏡 CSU-10 は入射光から見て 2 枚目のディスク(図 2-4b では下側のディスク)は通常のニポウディスクで 2 万個のピンホールが開いて いる(直径は Airy disk の 2 倍の 100µm)。一方、1 枚目はマイクロレンズアレイとい って、ピンホールと同じ配置にピンホールより大口径のマイクロレンズを並べた構 造をしている。入射光はマイクロレンズで絞り込まれてピンホールへと導入される。 マイクロレンズが 1 枚目のディスクに占める面積は大きいので、入射光の透過率が 飛躍的に上昇し、50%程度に達した。その結果、ピンホールの部分で生じる反射光 によるノイズが大幅に削減され、画質が改善された。また、多数のピンホールに起 因する干渉によって引き起こされる照明ムラをなくすために、ピンホールの配置に 関しても最適化されている。このニポウディスクは 1 回転で 12 枚の画像が得られ る。通常の市販タイプでは、ニポウディスクが毎分 1800 回転(=毎秒 30 回転)するの で、1 秒間に 360 画面(1 画面あたり 2.8 ミリ秒)の速度で画像が得られる。本実験で は、さらに高速回転のタイプ(CSU10Z;最大毎分 5000 回転)を用いた。その結果、 最速で 1 画面を 1 ミリ秒で得ることが可能となった。ただし、本研究では、蛍光を 増幅するために用いたイメージ・インテンシファイアー(I.I.)の光電面に残像効果が 数ミリ秒程度あることから、実験は最速 4 ミリ秒までの画像取得速度で行った。 33.
(35) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. 横河電機の CSU10 は良く設計された共焦点ユニットである。しいて欠点を挙げる とすれば、ピンホールの大きさを変えられないため、設計が最適化されている高倍 率の対物を用いる実験では問題がないが、低倍率の対物を用いる場合に十分な共焦 点効果が得られないという欠点がある。. 2-5-2) 装置系の概要. 横河電機の共焦点ユニット CSU10 を倒立型顕微鏡(オリンパス IX70)に組 み込んで使用した。標準では共焦点ユニットに光ファイバー(N.A. 0.11)で入射光を 導入しているが、全ての入射光が用いられるわけではなく、実際には共焦点ユニッ トの中にあるスリットで必要部分のみが切り取られて使われている。また、光ファ イバーはマルチモード用の口径が大きいものでも元のレーザーの 50%程度、シング ルモードファイバーでは、数十%程度の光量しか光ファイバーの中に導入する事が できない。すなわち、実際に必要な強度よりも強いレーザーが必要となる。さらに、 出射光が N.A. 0.1 で広がって出て行くので、蛍光 1 分子を励起するのに必要なレー ザー強度を得ようとすると、強力なレーザー光を光ファイバーに導入する必要があ り、光ファイバーを損傷してしまう。そこで、光ファイバーで入射光を導入する代 わりにレ ー ザ ー光(YAG 第二高調波 :532nm( 〜300mW) ま た は He-Ne:633nm(〜 20mW))を N.A. 0.01 で直接共焦点ユニットに導入した。この事で、1 分子イメージ ングに必要な励起光強度を稼ぐと共に、途中の光学部品にけられて迷光となる入射 光の割合を少なくし、ノイズを低減した。緑色レーザーは 1)µ-Green Model 4601, Uniphase, U.S.A., 532nm 50 mW、あるいは 2) Compass 315M-100, Coherent, U.S.A., 532nm 100mW、あるいは 3) Ion Laer Stabilite 2018-RM Specra-physics, U.S.A., 514nm 750mW or 530nm 390mW を用いた。 赤色(633nm)レーザーは 1) 34.
(36) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. HeNe laser GLG5601, NEC, Japan, 20 mW、あるいは 2) HeNe laser GLG5240, NEC, Japan, 5mW を用いた。青色レーザーは 1) Saphier 20, Coherent, U.S.A., 488nm 20mW、あるいは 2) Ion Laer Stabilite 2018-RM specra-physics, U.S.A., 488nm 460mW / 476.5nm 280mW、あるいは 3) SOLID STATE 473 model:HK-5511, 島津製作所, 473nm 30mW。次に光学フィルターを標準のものから、より 1 分子イ メージングに適したものへと変更した。具体的には下記のとおりである。また、通 常のダイクロイックミラーの設計では、反射帯域の反射率を重視するが、今回朝日 分光に特注する際は、入射光の透過率を重視して設計を依頼した。 ・テトラメチルローダミン(TMR)や Cy3 色素 ダイクロイックミラー(DM1);DM560 (朝日分光) エミッションフィルター1(Em1):EM560 (朝日分光) エミッションフィルター2(Em2): 605DF80 (Omega Optical Inc., U.S.A.) DM と Em1 は共焦点ユニット内に、Em2 はカメラの直前のフィルターチェ ンジャー(Orial Inc., U.S.A.の Motorized Filter Wheel. codeNo:Z#74040) 内 に 設 置. した。本研究ではエミッションフィルターを 2 枚用いたが、ハードコート干渉フィ ルターの普及にともない、エミッションフィルターの性能が向上しているので、現 在は 1 枚で十分であると思われる。 ・Cy5 や IC5 色素 ダイクロイックミラー(DM2);DM650 (朝日分光) エミッションフィルター(Em3): 680DF55 (Omega Optical Inc., U.S.A.) DM2 は共焦点ユニット内に、Em3 はカメラ直前のフィルターチェンジャー 内に設置した 上記にいくつかの工夫を加え、1 分子イメージングが可能となった。 イメージングデバイスには超高感度カメラを用いた。筆者はイメージ・イン 35.
(37) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. テンシファイアー(I.I.)(VS4-1845, Video Scope)の後ろに ICCD(ICCD-350F, Video Scope)をつなげてイメージングした。船津研では I.I.の後ろに SIT(浜松フォトニク ス)をつないで、イメージングするのが一般的であったが、SIT は残像(5 ビデオフレ ーム=0.17 秒程度)があり、素早く動いている分子を観察するには、問題がある可能 性があったので、ICCD を用いた。用いた ICCD は I.I.部のゲインの他に CCD カメ ラ部にも電子回路を用いたゲインがあったが、black level と線形性に問題があった ので、カメラゲインは使用しなかった。代わりにイメージ・プロセッサ(Argus20, 浜 松フォトニクス)で蛍光強度を 4 倍増強した。イメージ・プロセッサの線形性は、ICCD が出力する Gray Scale を入力信号とし、出力をオシロスコープで測定することで確 認した。また、I.I.からイメージ・プロセッサまでの撮像系全体の線形性は、0.1µm の蛍光ビーズ(Molecular Probes , U.S.A. code#F-8887)をガラスに固定し、レーザー の励起光強度を変えてビーズの蛍光強度を測定することで確認した(データは示し てない)。 また、I.I.や ICCD の前に適当な倍率のカメラ用倍率コンバータレンズを入れ て、カメラに投影される輝点の蛍光像の最適化を行った(データは示してない)。I.I. は蜂の巣状に増倍ユニットが並んだマルチチャンネルプレート(MCP)と呼ばれる部 品によって、蛍光を増倍している。光が光電面に当たると光電子が発生し、この光 電子が MCP で増倍されるが、MCP の個々の増倍ユニットは常に増倍できるわけで はなく、増倍ができない暗状態がある。そのため、蛍光の輝点が小さく、その像の 大きさが非常に少数の増倍ユニットを占める程度の大きさしかない場合は、効率良 く増倍されない可能性がある。そこで、市販のテレコンバータ(酒井ガラス, テレコ ンバータ 1.5, 2, 3 倍)を用いて最適なものを選んだ。最終的には 640x480 画素の画 像を得、そのスケールは(1 画素(pixel)=0.066-0.08µm)であった。 高速カメラ(Redlake MotionScope PCI 1000S モノ)を用いた際は、蛍光の光 36.
(38) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. 量を稼ぐ為に、高速カメラの前に I.I.を 2 台カスケードに接続した。そのため、I.I. のショットノイズがかなりひどく画質が低下した。スケールは(1pixel=0.097µm)で あった。 本研究では、最終的に細胞内での蛍光 1 分子イメージングを目指した。そこ で、細胞の概形が蛍光像と同時に観察できるようにする為に、赤外光を用いた位相 差観察を導入した。明視野照明の上部コンデンサの位置に、赤外透過フィルター(朝 日分光特注 780-900nm)を入れ、結像系の光路の途中に赤外光反射のダイクロイッ クミラー(朝日 分光特注) を入れた。本 研 究では位相差 リングがない対 物レンズ Olympus PlanApo x100. N.A.1.4)を用いた。そこで、結像系の途中に対物の瞳と共. 役の位置に位相差リングを置いた(オリンパス特注)。赤外光の位相差像は 2 つにわ け、CCD(大沢商会 RX42, 1/2 インチ)、あるいは CCD(GKB CB-2801)で撮影した。 位相差像は実験に都合のよい拡大率になるように 2 枚組レンズで倍率を調節した。 最終的なスケールは弱拡大が(1pixel=0.22µm)、強拡大が(1pixel=0.089µm)であった。 蛍光像は最終的に S-VHS(松下電器 NV-SB900)に白黒画像で録画をし、解析 の際には DV-CAM デッキ(Sony DSR-30)で DV-CAM 形式にダビングした。S-VHS で録画をする際は余計な機能(カラー、3 次元 Y/C、3 次元 NR など)はオフにした。 解析は Scion Image(NIH Image の windows 版; Scion Corp. U.S.A.)、あるいは Halcon (画像処理関数のライブラリ; MVTec Software GmbH, Germany)を用いて行った。 Scion Image のマクロは公開されているものを参考に自作した。Halcon のライブラ リを用いた C++(Microsoft Visual C++ 6.0)のプログラムは船津高志氏によって書か れたものを改良するか、あるいはサンプルプログラムを参考に自作した。蛍光強度 を測定する際は 9x9 pixel の ROI を囲って行った。輝点の位置は目で輝点の中心を 決定するか(高速カメラの場合など)、あるいは輝度重心を用いて決定した。. 37.
(39) 2003 年度. 2-5-3). 博士論文. 多田隈. 尚史. 2 次元の蛍光 1 分子イメージング. この顕微鏡を評価するために、ガラス表面上に結合した蛍光色素標識キネシ ン分子を観察した。ニポウディスク型共焦点顕微鏡は多数のピンホールによる照明 方法であるため、干渉による励起むらが気になる所であるが、カバーガラス一面に テトラメチルローダミン(TMR)ラベルしたキネシン分子(分子当たりのラベル率 0.6) を結合させて観察したところ、むらは 10%以下であると見積もられた。次に、TMRキネシンの濃度を薄くしていった所、だんだんと観察される分子の数が減っていき、 個々の輝点を観察できるようになった(図 2-5 a; 励起光強度 1.9W/mm2)。これらの 輝点がそれぞれ 1 個 1 個の分子である事は以下の事から示唆された。まず、これら の輝点の蛍光強度の時間変化を観察すると、1 蛍光分子に特徴的な性質である階段 退色が観察された(図 2-5 b)。次に観察した輝点のうち、1 段階で退色したものと 2 段階で退色したものの分布を取ると、2 段階で退色した輝点の明るさの平均は 1 段 階のものの約 2 倍であった(図 2-5 c)。これらの結果は、我々の共焦点顕微鏡で 1 蛍 光色素のイメージングができていることを示唆している。 続いて、より詳細な評価を行った。良く知られている共焦点顕微鏡の問題と して、色素の蛍光強度の飽和がある(励起光を強くしても蛍光強度が上がらない)。 そこで、励起光強度を変えた時(0.65‐3W/mm2)の色素(TMR)の蛍光強度を測定した (図 2-5 d)。すると、事前の予想と違って、蛍光強度は励起光にほぼ比例して強くな った。我々の観察条件では、観察画面を 256 個のピンホールで同時にスキャンして おり、励起光強度 1.9W/ mm2 の時には、ピンホールあたりの励起光強度は 12µW で ある。1 本のビームで画面をスキャンするやり方では励起光がピンホールあたり約 38.
(40) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. 1mW の時に飽和(サチュレーション)が起こり始めると報告されており、我々の観察 条件ではサチュレーション強度の 1/100 で観察をしていることになる。 ニポウディスク型の方が弱い励起光で観察できる事を簡略に説明したのが 図 2-6 である。通常の共焦点顕微鏡では、ピンホールが一つしかない為、1 画面(こ こでは 16x16=256 画素)を取得するのに要する時間を 1 とすると、1 個の画素は 1/256 時間しか励起されていない。一方、ニポウディスク型では多数のピンホール(こ こでは 256 個)で同時に画面を走査するので、1 個の画素は全時間励起されており、 1 個のピンホールしか持たない共焦点顕微鏡の 1/256 の励起光強度で同じ蛍光強度 を得られる。すなわち、ニポウディスク型ではピンホールが一つしかない通常の共 焦点顕微鏡に比べて入射光強度を格段に弱くする事ができる。そのため、強い入射 光が光学系の部品にあたる事で生じる様々なノイズ、あるいは色素の早い退色など の問題が回避できる。 また、退色速度(退色せずに残っている分子数は指数関数的に減少する;図 2-7a)を各励起光強度で計測したところ、励起光強度にほぼ比例した(図 2-7 b)。その 結果、励起光強度 0.5W/ mm2 の時では TMR が〜10 秒、IC5(Cy5 とほぼ同じ波長特 性の色素)が〜2 秒程度観察できることがわかった。また、データは示していないが 上 記 の ビ デ オ レ ー ト 共 焦 点 顕 微 鏡 に 476.5nm の イ オ ン レ ー ザ ーを 入 射 し て GFP(S65T)を観察したところ、励起光強度 1.2W/ mm2 で〜1 秒程度観察できた。 次に、作成した顕微鏡でタンパク質間相互作用を実際に観察できる事を示す 為に、蛍光標識キネシンが微小管(マイクロチューブル:MT)の上を運動する様子を 1 分子イメージングした。Cy5 標識した微小管をガラスに結合させ、TMR 標識した 1nM のキネシンを ATP 存在下で加えると、微小管の上を運動する様子が観察された (図 2-8)。すべり速度は平均±標準偏差が 0.29±0.17µm/s であった(n=7)。この値は 報告されている値と良く一致した。 39.
(41) 2003 年度. 2-5-4). 博士論文. 多田隈. 尚史. 3 次元に固定した蛍光 1 分子のイメージング. 3 次元に固定した分子の観察を行った。キネシン分子をポリアクリルアミド ゲルの中に固定して観察したところ、分子がカバーガラス面から離れるほど、暗く 見える傾向があることがわかった(図 2-9 a)。大雑把に言えばガラス面から 10µm 離 れると、焦点の合っている分子の明るさは、カバーガラス面上の分子に比べて約半 分になっている。より詳細に観察するために、キネシン分子の代わりに 0.1µm の蛍 光ビーズをポリアクリルアミドゲルの中に固定して対物レンズをピエゾアクチュエ ーター(P.I.ポリテックス、E662)で z 軸方向に動かして、焦点面を 0.1µm 毎に変え ながら観察を行った(図 2-9 b)。するとカバーガラス面から遠ざかるにつれて、焦点 が合った時の蛍光強度が下がると共に、半値距離(蛍光強度が焦点面の半分の強度に なるまでの距離)が広がる事がわかった。例えば、カバーガラス上では半値距離は 0.53±0.1µm(平均±S.D.)であるが、10µm 上では 1.05±0.1µm になった。これは今 回の実験では油浸のレンズを用いているため、水と油の屈折率の違いが影響してい るものと考えられる。実際、水侵の対物レンズを使えばカバーガラス面からの距離 による影響は減少する(データは示していない)。. 2-5-5). 3 次元を拡散運動する蛍光分子のイメージング. この節では、共焦点顕微鏡による 3 次元を運動する分子のイメージングの例 40.
(42) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. として、拡散運動を取り上げる。共焦点顕微鏡ではある厚さの光学切片(本研究では 0.7-1µm の厚さ;図 2-9 b 参照)のみを観察する事により、z 軸方向の空間情報を得て いるわけであるが、逆にいえば、その光学切片に入っていない分子を観察する事は できない。つまり、3 次元を運動する分子は常に観察している光学切片に留まって いる訳ではなく、光学切片を横切る瞬間のみ観察する事ができる。そのため、光学 切片の滞在時間が短すぎると計測不能となる。まず、蛍光 1 分子の 3 次元拡散運動 を通常のビデオレートカメラ(秒 30 コマ)を用いて行った(2-5-5-1 節)。続いて、 2-5-5-2)節では高速カメラを用いてより詳細に拡散速度と分子の滞在時間の関係を 調べた。その結果、光学切片の z 軸位置を固定した場合に観察できる上限の拡散速 度を決定する事ができた。2-5-5-2) 節では分子の 3 次元の運動をより長時間追跡す る為に、対物レンズを z 軸方向に動かす事により、光学切片の z 軸位置を変動させ、 3 次元運動の 2 次元投影像を得る試みを紹介する。一方、蛍光のシグナルは揺らい でいる為、位置検出の精度には限界がある。2-5-5-3)節はガラス表面に固定した分子 を観察する事で本研究のシステムの位置検出精度を測定した。この位置検出精度は 測定できる拡散運動の下限を与えるものであり、測定結果から、その下限を決定し た。. 2-5-5-1). 3 次元の拡散運動の 1 分子イメージング. 蛍光標識したキネシン分子の 3 次元運動を、粘性が高い溶液中(60%ショ糖溶 液、粘度(粘性係数) 53.2mPa・s)で室温(23 度)にて観察した所、動く様子を観察で きた(図 2-10 a)。輝点の周囲 9x9pixel の輝度情報から輝度重心を用いて輝点の位置 を決定し、x-y 平面の軌跡から平均二乗変位を算出し、時間に対してプロットした所、 41.
(43) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. この運動は拡散運動であることがわかった(図 2-10 b)。2 次元の拡散運動は式 2-1 に 従う MSD = 4Dx-y dt. ( 2-1 ). ここで MSD:平均二乗変位(=dx2+dy2)、Mean Square Displacement そこで式 2-1 より拡散速度 Dx-y を求めた所 0.66µm2/s であった。この値から水中(粘 度 1mPa・s)での値を見積ると 40µm2 /s となり、報告されている値(30-40µm2/s(Bloom et al. 1988;Hackney et al. 1991) と良く一致した。 次にこの x-y 平面の 2 次元拡散を z 軸方向の拡散と比較した。z 軸方向の変位 を直接測定する事は難しいので、光学切片にとどまる時間から z 軸方向の拡散速度 を見積もった。"拡散運動する分子(拡散速度 D)がある厚さ dZ の光学切片にとどまる 時間 dt"は、光学切片の外にいた分子が時刻=0 に光学切片内の任意の場所に移動し、 そこからブラウン運動(拡散運動)を行い、厚さ dz の間隔を隔てて存在している 2 つ の壁のどちらかにたどり着くまでの時間 dt を求める事に等しい。その関係は以下の 式で現される(Berg 1993) dz2 = 12Dzdt. ( 2-2 ). 時刻=0 に両壁の中心にいた分子が 1 次元拡散運動を行い、dz/2 離れた壁に到 達するまでの時間を表す関係式(通常の 1 次元ブラウン運動の関係式)は (dz/2)2 = 2Dzdt. ( 2-3 ). であるから、任意の場所から運動をはじめる分、平均として早く壁に到達する事が わかる。滞在時間の分布から平均滞在時間 dt は 0.13 秒と見積もられた(図 2-10 c)。 dz として、光学切片の半値幅(全値半幅;Full width at Half Maximum(FWHM), 0.7µm) をとり、式 2-2 より z 軸方向の拡散定数 Dz を求めると 0.32µm2/s となり、x-y 方向 42.
(44) 2003 年度. 博士論文. 多田隈. 尚史. の 1/2 倍程度の範囲に収まっていた。ここでは光学切片の幅を半値幅の 2 倍の 0.7µm としたが、実際には画質によって、この幅は変動する可能性がある。というのは輝 点の追跡は機械的にではなく、人間の目で行ったため、画質によって、その追跡時 間の精度が変動する可能性があるからである(ここではこの画質と追跡時間の精度 に関する定量的な評価はしなかった)。この問題は、本研究で滞在時間を測定する際 に常に付きまとう問題である。そこで、本研究では、関連するデータは、極力同じ 条件の画質で撮るように留意した。具体的には、蛍光標識率や励起光強度、輝点密 度を極力同じにし、輝点や背景画面の蛍光強度、あるいは強度ゆらぎがほぼ同じに なるようにした。. 2-5-5-2). 高速カメラを用いた拡散測定の上限の決定. より詳細に拡散速度と光学切片の滞在時間を調べる為に高速カメラ(毎秒 250 コマ)を用いて蛍光標識した mRNA の拡散運動の観察を行った。 分子の拡散速度 D は式 2-4 のように粘性に反比例する。 D = kBT / 6 π η a. ( 2-4 ). ここでη:粘度(粘性率)、a:分子半径(ストークス半径) そこで、ショ糖濃度を変えることで溶液の粘性を変え、それらの溶液中での蛍光標 識β-globin mRNA(405 塩基、蛍光標識率は 800%(1 本の mRNA に平均 8 個の色素が 結合) )の拡散運動を観察した。結果を図 2-11 に示す。ショ糖濃度を 30%(3mPa・s)、 40%(5.9mPa・s)、50%(14.6mPa・s)、60%ショ糖濃度(53.2mPa・s)と変えていっ たところ、粘性をあげていくに連れ、x-y 平面における分子の動きは小さくなり(図. 43.
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しかしながら生細胞内ではDNAがたえず慢然と合成
再び心室筋の細胞内記録を行い,灌流液をテト
現行選挙制に内在する最大の欠陥は,最も深 刻な障害として,コミュニティ内の一分子だけ
たとえば、市町村の計画冊子に載せられているアンケート内容をみると、 「朝食を摂っています か 」 「睡眠時間は十分とっていますか」
核分裂あるいは崩壊熱により燃料棒内で発生した熱は、燃料棒内の熱
核分裂あるいは崩壊熱により燃料棒内で発生した熱は、燃料棒内の熱
核分裂あるいは崩壊熱により燃料棒内で発生した熱は、燃料棒内の熱
た意味内容を与えられている概念」とし,また,「他の法分野では用いられ