博士論文審査報告書
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(2) 本申請者は「抗悪性腫瘍剤の臨床試験における選択的安全性データ収集方法に 関する研究」を博士課程の研究として実施し,本博士論文を提出した.薬事承認 を目的とした抗悪性腫瘍剤の開発は,第Ⅰ相試験,第Ⅱ相試験,第Ⅲ相試験と段 階的に実施され,現状では全ての試験の全登録症例から全有害事象データが収集 されている.抗悪性腫瘍剤の薬事承認上の特徴として,初回の薬事承認の後に効 能追加承認を取得する事例が多いが,そこでも大規模な第Ⅲ相試験が要求され, 必要以上の安全性データが収集されており,多大な労力やコストが費やされてい ることを課題として,安全性データの選択的な収集方法について研究を行ってい る. 本論文 は 5 章で 構成さ れている .まず抗 悪性腫 瘍剤の安 全性デ ータ収集 に 関連 する規制やガイドライン,先行研究を調査して課題を明確にし,日米における承 認済み抗悪性腫瘍剤の事例調査及び初回承認時と効能追加承認時での安全性デー タの比較解析により,選択的な安全性データ収集法を適用する判断指標・範囲・ 収集方法について提言を行っている. 第 1 章では,研究の背景としてがんの疫学,医療費,抗悪性腫瘍剤の薬事承認 数の年次推移増加について述べ,抗悪性腫瘍剤の臨床試験の安全性データ収集法 に関する課題を調査して,その解決策としての選択的安全性データ収集法を検討 する意義と目的について明確に述べている. 第 2 章では,抗悪性腫瘍剤の臨床試験における安全性データの収集・評価に関 する現状を調査するために,抗悪性腫瘍剤の臨床試験の有害事象評価基準,日米 欧の添付文書の記載,日米欧のガイダンスなどの記載及び先行研究を調査して, 課 題 を 抽 出 し て い る . 有 害 事 象 評 価 基 準 と し て は , C T C A E ( C o m m o n To x i c i t y Crite ria for Adverse Events) が 日 米 欧 い ず れ で も 推 奨 さ れ て お り , 添 付 文 書 に 臨床試験での有害事象の発現率が記載されているが,本章の調査より抗悪性腫瘍 剤の臨床試験において過剰な安全性データが収集されている現状が浮き彫りにさ れ た .一 方 で ,F D A か ら 発 出 さ れ た ガ イ ダ ン ス ,C I M O S や J C O G か ら の 報 告 書 , 厚生労働省からの事務連絡,日本製薬工業協会からの提言などにより,臨床試験 における選択的安全性データ収集が推奨される傾向にあることも示している.し かしながら,その裏付けとなる実データなどが公開されておらず,根拠が不十分 である現状を明らかとした点は,現状の過剰な安全性データ収集の理由を示唆す る重要なポイントである. 第 3 章は 、米国及 び日本 での選択 的な安全 性デー タ収集を 採用し た臨床試 験 に より薬事承認を取得した事例の調査を行った章である.選択的安全性データ収集 に よ り 薬 事 承 認 を 取 得 し て い た の は 米 国 で 10 事 例 , 日 本 で は 4 事 例 と 少 数 で あ り,ガイダンスの適用可能な条件を満たさない事例も含まれていたが,選択的な 安全性データ収集法の採用自体は承認時に問題とならなかったことを明らかにし No. 1.
(3) ている.また,選択的安全性データ収集法を原因とした問題は市販後には発生し ていないことも明らかにし,本データ収集法の信頼性を示唆している. 第 4 章で は,米国 及び日 本におけ る承認済 み抗悪 性腫瘍剤 の初回 承認時と 効能 追加承認時における安全性データの比較解析を統計的手法を用いて実施して,選 択的安全性データ収集が適用可能となる対象患者,用法・用量に関する検討を行 っ て い る .初 回 承 認 ま た は 調 査 対 象 の 効 能 追 加 以 前 の 承 認 と 効 能 追 加 で の 承 認 が , 「同一癌腫,同一用法・用量」にて取得されている場合は,米国での 7 事例中 6 例 ,日 本 で の 5 事 例 中 5 事 例 に お い て 発 現 す る 有 害 事 象 が 高 い 相 関 係 数 を 示 す こ と 明 ら か に し た . ま た ,初 回 承 認 と 効 能 追 加 で の 承 認 対 象 が 異 な る 癌 腫 で 同 一 用 法・用量の場合では,それぞれの臨床試験の間で発現率が大きく異なる有害事象 において,原疾患臓器由来の事象が散見されたことより,原疾患臓器由来の有害 事象を除くと有害事象の相関が高まることを示した.その一方で,単剤の試験と 多剤併用の試験を比較した場合は安全性プロファイルが大きく異なることを示し, 安全性データの選択的収集を採用する際の適応範囲について,科学的根拠を用い て言及している点は高く評価できる. 第 5 章では,第 4 章までの調査・解析に基づいて,抗悪性腫瘍剤の効能追加承 認を目的とした臨床試験の安全性データ収集法のあり方に関する提言を行ってい る.効能追加を目的とした第Ⅲ相試験では,承認を目指す癌腫や用法・用量,今 までの臨床試験で得られた安全性プロファイルを確認の上,データ収集の範囲を 適 切 に 決 定 す る こ と が 重 要 で あ る こ と を 述 べ , 特 に 「 同 一 癌 腫 ,同 一 用 法 ・ 用 量 」 を対象とした効能追加時の第Ⅲ相試験では選択的安全性データ収集法の適用を積 極的に検討すべきであることを提言した.また,効能追加時が「他癌腫,同一用 法・用量」である場合には,原疾患臓器由来の有害事象について注意した上で選 択的収集の検討が可能であることを示した.効能追加時が「異なる用法・用量」 である場合には,初回承認時と安全性プロファイルが異なる場合が多く,原則と し て 全 事 象 を 収 集 す べ き こ と , Grade 3 以 上 の 有 害 事 象 は 常 に 収 集 さ れ る べ き で あることを述べた.このように,申請者は具体的に選択的安全性データ収集法の 適用の仕方を臨床試験の特徴を区別して明確に提言しており,これが適用されれ ば今後の抗悪性腫瘍剤の臨床試験の負担を大幅に軽減する意義のある成果である. 本博士学位論文審査の公聴会では,有害事象データの相関解析においてアーク サイン変換を用いている内容について質疑があったが本論文記載内容で間違いな いことが確認された.類似性チェックにおいても規制や資料は適正に引用されて おり,問題となる剽窃,盗用は認められなかった. 本論文は臨床試験における安全性データ収集法に関する調査,分析により課題 を明確にし,実際のデータを使用した解析を行って選択的な安全性データ収集が 適切な臨床試験について明らかにした重要な研究と考える.特に初回承認時と効 No. 2.
(4) 能追加承認時でのデータを比較して検討した初めての研究であることが意義深い. 以上より,本論文は,抗悪性腫瘍剤の安全性データ収集法の適正化に大きく貢 献することが期待され,博士(生命医科学)の学位論文として価値のあるものと 認める. 2017 年 1 月. 審査員 主査. 早稲田大学客員教授,東京女子医科大学教授. 有賀. 淳. 武岡. 真司. 笠貫. 宏. 博 士 ( 医 学 ) (東 京 女 子 医 科 大 学 ). 早稲田大学教授 工学博士(早稲田大学). 早稲田大学特命教授 医学博士(東京女子医科大学). No. 3.
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