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171 ては書きようがないが 父の新しい妃の一人で 父が溺愛する藤壺女御に対する気持ちも 最初の 母に似ているらしい人への思慕 という意識から 愛しい人への恋慕 へと変わっているようである 父の妻 とは言え 光る君 とは四 五歳しか年の違わない 若い女性である 若紫 の話の中では 限りなく心を尽くし

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Academic year: 2021

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第六十二回・六十三回

 

物語

理解を深めるために

光る君の成長 番組では 『源氏物語』 のいくつかの帖の一部を学んでいく。選ばれた三つの帖は、 物語全体の中では前半に位置するものである。その意味では、五十四帖の中では まだ、つながりがあるほうだとも言えようが、それでも、おぎゃあと生まれたば かりの「光る君」が異性に興味を抱くようになり、結婚し、政治権力争いに巻き 込 ま れ て い く ま で に な る の だ か ら、 そ れ な り の 月 日 が 経 ち、 「 光 る 君 」 も 変 わ っ ていく。番組の中でも触れるが、ここでは少し、 「光る君」の歩いた人生を、 「若 紫」の話に至るまでの部分に限って、たどって整理してみよう。 ※【   】は、帖の名前である。 【 桐 きり 壺 つぼ 】  帝と 桐 きり 壺 つぼの 更 こう 衣 い の子として生まれる。      母(桐壺更衣)が世を去る。      帝のもとに、母に似ていると言われる 藤 ふじ 壺 つぼの 女 にょう 御 ご が入内してくる。      高 こ 麗 ま 人 びと によって数奇な将来を占われる。      帝により、臣籍に降り、 「 源 みなもと 」の姓を受ける。      左大臣家の娘(一般に「 葵 あおいの 上 うえ 」と呼ばれる)を妻とする。 【 帚 ははき 木 ぎ 】  五月雨の晩に妻の兄弟の 頭 とうの 中 ちゅう 将 じょう らと女性談義をする。      空 うつ 蝉 せみ という女性と関係を持つが、彼女は二度と逢ってくれない。 【 夕 ゆう 顔 がお 】  夕顔という女性と関係を持つが、彼女は女性の霊に取り殺される。 【 若 わか 紫 むらさき 】病気にかかり、平癒のために祈祷を受けようと 北 きた 山 やま を訪れる。 「 光 る 君 」 本 人 の 行 動 だ け を 見 る と、 気 ま ま な 暮 ら し を 謳 おう 歌 か し て い る よ う に 見 えるかもしれない。しかし、本人が意識しているかどうかはともかく、将来を案 じた父帝によって皇族の身分から臣下の身分に下されたり、大きな権力を持つ貴 族である左大臣家から、その将来性を見込まれて娘が妻として送り込まれたりと、 既に政治の世界に組み込まれていっているのがわかる。そしてまた、出来事とし 学習のポイント

源氏物語

  (全六回) 第4回・第5回  

若紫

      

①尼君と「女子」 ②面影に 惹 ひ かれる ③源氏と紫の上 第 5 回 ①その後の光る君 ②「女子」を垣間見る ③「女子」の様子 第 4 回

(2)

▼ ては書きようがないが、父の新しい妃の一人で、父が溺愛する藤壺女御に対する 気 持 ち も、 最 初 の「 母 に 似 て い る ら し い 人 へ の 思 慕 」 と い う 意 識 か ら、 「 愛 し い 人 へ の 恋 慕 」 へ と 変 わ っ て い る よ う で あ る。 父 の 妻、 と は 言 え、 「 光 る 君 」 と は 四、 五 歳 し か 年 の 違 わ な い、 若 い 女 性 で あ る。 「 若 紫 」 の 話 の 中 で は、 「 限 り な く 心を尽くし聞こゆる人」 、 つまり、 「この上なく恋慕の念を寄せ申し上げている方」 、 と呼ばれている。 こうした背景のもと、 「若紫」の話が始まる。 「若紫」の登場人物 前回にならい、登場人物を整理しておこう。 光る君…………『源氏物語』の主人公。この話では他の人物のやりとりをた またまのぞき見しているだけで、当人は活躍しない。読者に視 点を提供しているとも言える。 尼君………四十歳ぐらいに見える品のよい女性。北山の高僧の妹である。 年 か さ の 女 房 た ち … 複 数 が 尼 君 に 仕 え る 。 中 に 「 少 納 言 の 乳 母」と呼ばれる人もいる。 少女………尼君にかわいがられている十歳ぐらいの少女。この話で最も 重要な登場人物。 子どもたち……右の少女とだいたい同年代ぐらいの子どもたち。一緒に遊ん でいる。 藤壺女御………登場はしないが、前述の通り、「光る君」が「限りなく心を 尽くし聞こゆる人」として思い起こす。 少女の母……故人。尼君の娘にあたる。本文では「故姫君」と呼ばれる。 この「少女」が、言ってみれば「若紫」である。後には「紫の君」 、「紫上」と 呼 ば れ る よ う に な る。 「 光 る 君 」 は ふ と 垣 間 見 た こ の 少 女 に、 な ぜ か 心 惹 か れ る のだが、その理由に思い至る。その理由は、ぜひ番組を聞いてみてもらいたい。 『 源 氏 物 語 』 の 作 者 が「 紫 むらさき 式 しき 部 ぶ 」 と 呼 ば れ る の も、 こ の「 若 紫 」 の 少 女 の 名 に よるものであると言われることがよくある。ただし、この少女が「紫」という名 をつけられるのは、別の女性(こちらも重要な登場人物の一人である)の名に関 係があり、 その縁を一般に 「紫のゆかり」 と呼ぶが、 「紫式部」 はこの 「紫のゆかり」 全体によっての呼び名であると見ることもできる。 この「別の女性」とは、 「光る君」の父の妃である藤壺女御である。 藤壺女御との関係 番 組 で 扱 う「 若 紫 」 の 話 に は 直 接 は 出 て こ な い が、 「 若 紫 」 と い う 帖 の 中 に 描 かれていることで、 『源氏物語』全体を見るうえで、非常に重要な出来事がある。 それは、藤壺女御に思いを寄せ、 懊 おう 悩 のう していた「光る君」が、ついに一線を越 えて、女御と関係を持ってしまう、ということである。 し か も、 あ ろ う こ と か、 藤 壺 女 御 は、 「 光 る 君 」 の 子 を 身 ご も っ て し ま う。 や

(3)

▼ がてその子は、 帝と藤壺女御との間の子として生まれ、 何も知らぬ帝は、 子が「光 る君」 に似ているのを、 「美しい人というのは似るものなのだなあ」 と感嘆する。 「光 る君」も藤壺女御も強い罪の意識にさいなまれる。 この皇子はすくすくと育つが、他に頼る者の少ない藤壺女御は、一般の貴族に はない権力を持つ立場にある 「光る君」 に、 皇子の将来を託す。いやおうもない 「光 る君」は引き受けるが、 このことは、 次に番組で取り上げる、 「須磨の秋」の話に、 間接的に影響することになる。 時を経て、皇子は(前回「光る君誕生」に出てきた「一の皇子」が帝位に就い た後に)帝位に就くことになる。そのことは、皇子の後見役となり、そして実は 父親でもある「光る君」の権力をこの上ないものにすると同時に、いくつものし がらみを「光る君」にかけていくことになるのである。

(4)

若紫

清げなる大人二人ばかり、さては童べぞ、出で入り遊ぶ。中に、十ば

かりにやあらむと見えて、白き

きぬ

やま

ぶき

などのなえたる着て、走り来た

をんな

、あまた見えつる子どもに似るべうもあらず、いみじく生ひ先見

えて、うつくしげなるかたちなり。髪は、扇を広げたるやうにゆらゆら

として、顔は、いと赤くすりなして立てり。

「何事ぞや。童べと腹立ち給へるか。

」とて、尼君の見上げたるに、少

ば、

ふ。

を、

いぬ

る。

ふせ

を。

て、

り。

人、

の、

の、

るるこそ、いと心づきなけれ。いづ

かた

へかまかりぬる。いとをかしう、

を。

れ。

て、

く。

髪ゆるるかにいと長く、めやすき人なめり。少納言の

め の と

とぞ人言ふめ

るは、この子の

うしろ

なるべし。

君、

で、

や。

な。

が、

かく今日明日におぼゆる命をば、何ともおぼしたらで、雀慕ひ給ふほど

よ。

と、

を、

く。

て、

や。

言へば、ついゐたり。つらつきいとらうたげにて、まゆのわたりうちけ

源氏物語

  講師・内田   洋   紫式部 光る君は、三歳の夏に母更衣と死別する。帝は 高 こ ま う ど 麗人 の予言なども参考にし て、 光る君を臣籍に下し、 源氏とした。元服した光源氏は 葵 あおい の 上 うえ (左大臣の娘) と結婚したが、亡き母に生きうつしだと言われる藤壺の宮をひそかに思慕し続 ける。 桐壺に続く三巻 (帚 木 ははき ─ 夕顔) は、 源氏十七歳の物語である。 五月雨の夜、 頭中将(葵の上の兄弟)たちの語る女性論(品定め)を聞いた後、源氏は、さ まざまな恋愛を体験するようになる。次の若紫の巻は源氏十八歳の春である。

(5)

ぶり、いはけなくかいやりたる額つき、

かん

ざし、いみじううつくし。ね

びゆかむさまゆかしき人かなと、目とまり給ふ。さるは、限りなう心を

尽くし聞こゆる人に、いとよう似奉れるが、まもらるるなりけりと、思

ふにも涙ぞ落つる。

君、

つ、

ど、

ぐし

や。いとはかなうものし給ふこそ、あはれにうしろめたけれ。か

ばかりになれば、いとかからぬ人もあるものを。故姫君は、十ばかりに

て殿におくれ給ひしほど、いみじうものは思ひ知り給へりしぞかし。た

今、

ば、

む。

て、

みじく泣くを見給ふも、すずろに悲し。をさな心地にも、さすがにうち

まもりて、伏し目になりてうつぶしたるに、こぼれかかりたる髪、つや

つやとめでたう見ゆ。

 

生ひ立たむありかも知らぬ若草をおくらす露ぞ消えむそらなき

またゐたる大人、「げに。」とうち泣きて、

 

はつ草の生ひゆく末も知らぬまにいかでか露の消えむとすらむ

(若柴) 【口語訳】 若紫 こ ぎ れ い な 感 じ の 年 か さ の 女 房 が 二 人 ほ ど ( い て )、 そ の ほ か に 童 女 た ち が 、 出 た り 入 っ た り し て 遊 ん で い る 。 そ の 中 で 、 十 歳 く ら い で あ ろ う か と 見 え て 、 白 い 下 着 の 上 に 、 山 吹 襲 の 着 物 な ど で の り が 落 ち た ふ だ ん 着 を 着 て 、 走 っ て 来 た 女 の 子 は 、( 近 く に ) た く さ ん 見 え て い た 子 供 た ち と 似 て も 似 つ か ず 、 た い そ う 成 人 し た と き の 美 し さ が 今 か ら 想 像 さ れ て 、 か わ い ら し い 容 貌 で あ る 。 髪 は 、 扇 を 広 げ た よ う に ゆ ら ゆ ら と し て 、 顔 は 、( 涙 を 手 で ) こ す っ て と て も 赤 く し て 立 っ て い る 。 「 何 事 か 。 子 供 た ち と け ん か を な さ っ た の か 」 と 言 っ て 、 尼 君 が 見 上 げ て い る 顔 に 、 少 し 似 て い る と こ ろ が あ る の で 、( 光 る 君 は ) 尼 君 の 子 で あ る よ う だ と 御 覧 に な る 。「 雀 の 子 を 、 犬 君 が 逃 が し て し ま っ た の 。 伏 籠 の 中 に 入 れ て お い た の 少女(若紫)は、実は 兵 ひょう 部 ぶ 卿 きょう の 宮 みや の姫君で、源氏の思慕する藤壺の宮の 姪 めい で あった。母と死別したのち、祖母尼君に養われていたのである。間もなく尼君 が世を去ると、源氏は少女を白邸に引き取り、理想的な女性に成長するよう心 を砕く。この少女が、のちに源氏の生涯の伴侶となる紫の上である。

(6)

▼ に 」 と 言 っ て 、 た い そ う 残 念 に 思 っ て い る 。 先 ほ ど の 座 っ て い た 年 輩 の 女 房 が 、 「 い つ も の よ う に 、( あ の ) う っ か り 者 が 、 そ ん な 失 敗 を し で か し て 叱 ら れ る と は 本 当 に 気 に く わ な い わ 。( そ れ に し て も 、雀 の 子 は )ど こ へ 行 っ て し ま っ た の で し ょ う か 。 だ ん だ ん と て も か わ い ら し く な っ て き て い た の に 。 烏 な ど が 見 つ け た ら た い へ ん だ わ 」 と 言 っ て 、 立 っ て 行 く 。 髪 は ゆ っ た り と し て た い そ う 長 く 、 見 た 目 に 感 じ の い い 人 の よ う だ 。 少 納 言 の 乳 母 と 人 々 が 呼 ん で い る ら し い ( こ の 人 ) は こ の 子 の 世 話 役 な の だ ろ う 。 尼 君 が 、「 な ん と 、 ま あ 幼 い こ と で し ょ う 。 ど う し よ う も な く て い ら っ し ゃ る の ね え 。 私 の 、 こ の よ う に 今 日 明 日 に ( 迫 っ た と ) 思 わ れ る 余 命 な ど 、 何 と も 思 い な さ ら ず に 、 雀 な ど 追 い 求 め な さ っ て い る こ と よ 。( 生 き 物 を い じ め る の は ) 罪 作 り な こ と で す よ と 、 い つ も 申 し 上 げ て い る の に 、 困 っ た こ と で す ね え 」 と 言 っ て 、「 こ っ ち へ い ら っ し ゃ い 」 と 言 う と 、( 少 女 は ) ひ ざ を つ い て 座 っ た 。( 少 女 の ) 顔 の 様 子 は た い そ う か わ い ら し げ で 、( ま だ 剃 り 落 と し て い な い ) 眉 の あ た り は ほ ん の り と し て ( 美 し く )、 子 供 ら し く か き 上 げ て い る 額 ぎ わ や 、 髪 の 生 え 具 合 は た い そ う か わ い ら し い 。 成 長 し て い く ( 先 の ) 様 子 を 見 届 け た い 人 だ な あ と 思 っ て ( 光 る 君 は ) 目 が と ま り な さ る 。 そ れ は 実 は 、 こ の う え も な く お 慕 い 申 し 上 げ て い る 人 〔 藤 壺 女 御 〕 に 、 た い そ う よ く 似 申 し 上 げ て い る の が 、( 心 が ひ か れ 、) 視 線 も お の ず と と ま る の だ な あ と 、 思 う に つ け て も 涙 が 落 ち る の だ っ た 。 尼 君 は 、( 少 女 の ) 髪 を し き り に な で て は 、「 く し け ず る こ と を い や が り な さ る け れ ど も 、 美 し い 御 髪 で す こ と 。( あ な た が ) た い へ ん 頼 り な く て い ら っ し ゃ る の が 、 し み じ み と 心 配 な こ と で す 。 こ れ く ら い の 年 ご ろ に な る と 、 も う こ ん な に 子 供 じ み て い な い 人 も あ る も の で す の に 。 あ な た の 亡 く な っ た 母 上 は 、 十 歳 ぐ ら いでお父上に先立たれなさったときは 、たいそう物事を理解していらっしゃった の よ 。 た っ た 今 、 私 が ( あ な た を ) 見 捨 て 申 し 上 げ ( て 死 ん ) だ な ら 、 ど う や っ て 生 き て い ら っ し ゃ る お つ も り か 」 と 言 っ て 、 ひ ど く 泣 く の を ( 光 る 君 は ) 御 覧 に な る に つ け て も 、 わ け も な く 悲 し い 。( 少 女 は ) 幼 心 地 に も 、 や は り ( 尼 君 の 顔 を ) じ っ と 見 守 っ て 、 伏 し 目 に な っ て う つ む い た と こ ろ に 、 こ ぼ れ か か っ て い る 髪 は 、 つ や つ や と し て す ば ら し く 見 え る 。 ( こ れ か ら ) 生 い 育 っ て 後 の 境 遇 も わ か ら な い こ の 子 を 残 し て 、 は か な く 死 ぬ 私 は 、 死 ぬ に も 死 に き れ な い 気 持 ち で す 。 ( と 尼 君 が 歌 を よ む と 、 ) ま た ( そ こ に ) 座 っ て い た 年 か さ の 女 房 は 、 「 本 当 に 」 と も ら い 泣 き し て 、 幼 い こ の 姫 が 育 って い く 行 く 先 も 見 届 け な い 内 に 、 ど う し て あ な た は 先 立 っ て い こ う と す る の で し ょ う か ( そ ん な 弱 気 な こ と で は い け ま せ ん よ )。 (学習メモ執筆・内田   洋)

参照

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