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見ることが出来ない水分を見ることが出来る 図 -1に示すように, 水素, リチウム, ホウ素など大きい減弱係数を持った元素は濃く映り, シリコン, カルシウム, 酸素, アルミニウムなど減弱係数の小さい元素は薄くなるか, もしくは見えなくなる 表 -2 TNRF のスペック Thermal neut

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Academic year: 2021

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(1)

1.諸言

近年,中性子を用いた材料ナノ解析やホウ素中性子捕 捉療法など,中性子の利用が拡大している。これらの施設 において,コンパクトな遮蔽壁を構築するため,近年中 性子遮蔽用コンクリートが開発された1)。このコンクリー トは普通コンクリートと同等の力学的強度,長期耐久性 を持つと共に,遮蔽に有効な成分として約 15wt% の結晶水 を含む水分と約 3wt% のホウ素成分を持つコンクリートで ある。このコンクリートを遮蔽壁に用いる際,遮蔽に有 効な成分が均一に混ざっているかどうかを確認すること は,遮蔽性能の品質保証の観点から非常に重要である。そ こで,中性子の透過画像を取得する手法である中性子ラ ジオグラフィを用いて中性子の透過率を求める事により, 遮蔽に有効な成分の均一性評価を試みると共に,コンク リートに含有されているホウ素成分の含有量の推定を試 みた。近年,中性子ラジオグラフィを用いたコンクリート の研究として,普通コンクリートのひび割れの可視化が 報告されている2)。この報告のように,中性子ラジオグラ フィを用いたコンクリートの研究の多くは,コンクリー ト中の水分の可視化に係るものが多く,コンクリート中 に含まれる元素の均一性に係る報告は非常に少ない。

2.中性子遮蔽コンクリート

中性子遮蔽コンクリートは,骨材に灰ほう石とかんら ん岩を用いたコンクリートである1)。灰ほう石はホウ素成 分を含む天然岩石で,かんらん岩は水素成分を多く含む 天然岩石である。両岩石とも多く安定的に生産されてい る。これら岩石と普通セメントを用いて中性子遮蔽コン クリートが作られる。中性子遮蔽コンクリートの密度は, 普通コンクリートと同等である。遮蔽のメカニズムは,水 素の弾性散乱で中性子を減速させ,ホウ素が持つ非常に 大きな捕獲断面積を利用して中性子を吸収すというメカ ニズムである。ホウ素の捕獲断面積は非常に大きいため, 灰ほう石の含有量は 10wt% もあれば十分であり,逆にこれ 以上含有しても遮蔽性能の大きな向上は望めない。さら に,中性子遮蔽コンクリートは普通コンクリートより多 くの鉄成分を持つ。そのため,高エネルギー領域の中性子 に対しても普通コンクリートより良い減速特性を持つと 考えられ,これらの事が合わさって遮蔽性能の向上が図 られている。表-1に中性子遮蔽コンクリートと普通コ ンクリートの組成を示す。

3.中性子ラジオグラフィ

中性子ラジオフィは,熱中性子を用いた非破壊の画像検 査法である。機械内部や物質・植物内部における水分状況 を調べるのに非常に有用であり,多くの研究が行われてい る。X線を用いた画像検査との違いは,X線の減弱は元素 の原子番号に依存するが,中性子の減弱は原子番号には依 存せず,元素毎に異なった振る舞いを示す。図-1は,熱 中性子に対する各元素の減弱係数を示したものである3) 中性子ビームをサンプルに照射し,サンプル後方に設 置されたカメラにより白黒画像が取得される。この時,サ ンプル内の各元素の減弱係数の大小が,白黒画像の濃淡 として反映される。水素やホウ素などの減弱係数の大き い元素は,画像内では濃く映る。そのため,X線画像では 論 文 *1 原子力部

中性子遮蔽用コンクリートの成分均一性評価に係る一考察

奥野功一

*1 近年,中性子を用いたナノ材料解析やホウ素中性子捕捉療法,非破壊検査など,中性子の利用が拡大し ている。これらの施設においてコンパクトな遮蔽壁を構築するため,中性子遮蔽用コンクリートが開発さ れた。同コンクリートを遮蔽壁に用いる際,遮蔽に有効な成分が均一に混ざっているかどうかを確認する ことは非常に重要である。 本研究では,中性子ラジオグラフィを用いた熱中性子の透過画像を得ることにより,遮蔽に有効な成分 が均一に混ざっているかどうかを確認する試みを行った。その結果,熱中性子の透過率は各深さでほぼ同 一である事が確認でき,また遮蔽に有効な成分の混練量の推定ができる可能性も見出された。 キーワード:中性子,コンクリート,遮蔽,中性子ラジオグラフィ

(2)

見ることが出来ない水分を見ることが出来る。図-1に 示すように,水素,リチウム,ホウ素など大きい減弱係 数を持った元素は濃く映り,シリコン,カルシウム,酸 素,アルミニウムなど減弱係数の小さい元素は薄くなる か,もしくは見えなくなる。 中性子ラジオグラフィで用いる熱中性子ビームは,原 子炉や加速器中性子源で得られる。日本原子力研究開発 機構の JRR-3M 研究用原子炉に設置されている熱中性子ラ ジオグラフィ装置 (TNRF) のスペックを表-2に,実験体 系を図-2に示す。 図 - 2 に お い て,JRR-3M か ら の 中 性 子 ビ ー ム が 試 験 体 に 照 射 さ れ る。 蛍 光 コ ン バ ー タ ー(Fluorescent converter) は,シンチレータに Gd もしくは6Li を含有し たものである。シンチレータからの光はミラーで反射さ せ,C-CCD カメラにより画像を取得する。

4.実験

試験体に普通コンクリートと中性子遮蔽コンクリート を用い,中性子ラジオグラフィ画像を取得した。使用した 中性子遮蔽コンクリートは,大強度陽子加速器施設(J- PARC)のビームラインに使用したものと同一のもの である。試料は,100mmφのコンクリートコアを1枚当た り 20mm 厚づつ切り出し,コンクリートコア表面から 80mm 深さまでを実験に供した(図-3)。均一性評価において 各試料は,図-2に示す TNRF の蛍光コンバーターの前に セットして撮影を行った。実験風景を図-4に示す。 なお,遮蔽に有効な成分量の推定のために使用した中 性子ラジオグラフィ装置は,TNRF ではなく加速器中性子 源を利用した中性子ラジオグラフィ装置を使用した。 とが出来ない水分を見ることが出来る。図1に示すように、 水素、リチウム、ホウ素など大きい減弱係数を持った元素 は濃く映り、シリコン、カルシウム、酸素、アルミニウム など減弱係数の小さい元素は薄くなるか、もしくは見えな くなる。 表1 元素組成分析結果 中性子遮蔽コンクリート(wt%) 普通コンクリート(wt%) 図1 熱中性子に対する各元素の減弱係数(3) 中性子ラジオグラフィで用いる熱中性子ビームは、原子 炉や加速器中性子源で得られる。日本原子力研究開発機構 の JRR-3M 研究用原子炉に設置されている熱中性子ラジオ グラフィ装置 (TNRF)のスペックを表2に、実験体系を図2に示す。 図2において、JRR-3M からの中性子ビームが試験体に照射 される。蛍光コンバーター(Fluorescent converter)は、シン チレータに Gd もしくは6Li を含有したものである。シン チレータからの光はミラーで反射させ、C-CCD カメラによ り画像を取得する。 表2 TNRF のスペック 図2 TNRF の実験体系(2)

4.実験

試験体に普通コンクリートと中性子遮蔽コンクリート を用い、中性子ラジオグラフィ画像を取得した。使用した 中性子遮蔽コンクリートは、大強度陽子加速器施設(J- PARC)のビームラインに使用したものと同一のもので ある。試料は、100mmφのコンクリートコアを1枚当たり 20mm 厚づつ切り出し、コンクリートコア表面から 80mm 深 さまでを実験に供した(図3)。均一性評価において各試 料は、図2に示す TNRF の蛍光コンバーターの前にセット して撮影を行った。実験風景を図4に示す。 図3 コンクリート試料 なお、遮蔽に有効な成分量の推定のために使用した中性子ラ ジオグラフィ装置は、TNRF ではなく加速器中性子源を利用し た中性子ラジオグラフィ装置を使用した。 SiO2 H2O M gO M nO Al2O3 33.1 14.8 29.1 0.09 1.54 CaO SO3 Cl Cs Na2O 11 0.38 0.016 < 0.01 0.05 TiO2 B2O3 P2O5 Eu CoO 0.07 2.61 0.11 < 0.01 < 0.01 Fe2O3 K2O Ig-loss 6.23 0.06 13.6 Density 2.2 g/cm3 SiO2 H2O M gO M nO Al2O3 57.7 6.04 1.31 0.08 10.5 CaO Cs Na2O K2O TiO2 14.5 <0.01 2.29 0.86 0.39 Fe2O3 Eu Co 3.47 <0.01 <0.01 Density 2.2 g/cm3

Thermal neutron flux 1.2×108 (n/cm2 sec) Irradiation area 255mmW ×305 mmH Resolution of cold-CCD 100 µm/pixel

Fluorescent converter Li-loaded ZnS scintillator

表-1 元素組成分析結果 図-1 熱中性子に対する各元素の減弱係数3) 図-2 TNRF の実験体系2) 図-3 コンクリート試料 とが出来ない水分を見ることが出来る。図1に示すように、 水素、リチウム、ホウ素など大きい減弱係数を持った元素 は濃く映り、シリコン、カルシウム、酸素、アルミニウム など減弱係数の小さい元素は薄くなるか、もしくは見えな くなる。 表1 元素組成分析結果 中性子遮蔽コンクリート(wt%) 普通コンクリート(wt%) 図1 熱中性子に対する各元素の減弱係数(3) 中性子ラジオグラフィで用いる熱中性子ビームは、原子 炉や加速器中性子源で得られる。日本原子力研究開発機構 の JRR-3M 研究用原子炉に設置されている熱中性子ラジオ グラフィ装置 (TNRF)のスペックを表2に、実験体系を図2に示す。 図2において、JRR-3M からの中性子ビームが試験体に照射 される。蛍光コンバーター(Fluorescent converter)は、シン チレータに Gd もしくは 6Li を含有したものである。シン チレータからの光はミラーで反射させ、C-CCD カメラによ り画像を取得する。 表2 TNRF のスペック 図2 TNRF の実験体系(2)

4.実験

試験体に普通コンクリートと中性子遮蔽コンクリート を用い、中性子ラジオグラフィ画像を取得した。使用した 中性子遮蔽コンクリートは、大強度陽子加速器施設(J- PARC)のビームラインに使用したものと同一のもので ある。試料は、100mmφのコンクリートコアを1枚当たり 20mm 厚づつ切り出し、コンクリートコア表面から 80mm 深 さまでを実験に供した(図3)。均一性評価において各試 料は、図2に示す TNRF の蛍光コンバーターの前にセット して撮影を行った。実験風景を図4に示す。 図3 コンクリート試料 なお、遮蔽に有効な成分量の推定のために使用した中性子ラ ジオグラフィ装置は、TNRF ではなく加速器中性子源を利用し た中性子ラジオグラフィ装置を使用した。 SiO2 H2O M gO M nO Al2O3 33.1 14.8 29.1 0.09 1.54 CaO SO3 Cl Cs Na2O 11 0.38 0.016 < 0.01 0.05 TiO2 B2O3 P2O5 Eu CoO 0.07 2.61 0.11 < 0.01 < 0.01 Fe2O3 K2O Ig-loss 6.23 0.06 13.6 Density 2.2 g/cm3 SiO2 H2O M gO M nO Al2O3 57.7 6.04 1.31 0.08 10.5 CaO Cs Na2O K2O TiO2 14.5 <0.01 2.29 0.86 0.39 Fe2O3 Eu Co 3.47 <0.01 <0.01 Density 2.2 g/cm3

Thermal neutron flux 1.2×108 (n/cm2 sec) Irradiation area 255mmW ×305 mmH Resolution of cold-CCD 100 µm/pixel

Fluorescent converter Li-loaded ZnS scintillator とが出来ない水分を見ることが出来る。図1に示すように、 水素、リチウム、ホウ素など大きい減弱係数を持った元素 は濃く映り、シリコン、カルシウム、酸素、アルミニウム など減弱係数の小さい元素は薄くなるか、もしくは見えな くなる。 表1 元素組成分析結果 中性子遮蔽コンクリート(wt%) 普通コンクリート(wt%) 図1 熱中性子に対する各元素の減弱係数(3) 中性子ラジオグラフィで用いる熱中性子ビームは、原子 炉や加速器中性子源で得られる。日本原子力研究開発機構 の JRR-3M 研究用原子炉に設置されている熱中性子ラジオ グラフィ装置 (TNRF)のスペックを表2に、実験体系を図2に示す。 図2において、JRR-3M からの中性子ビームが試験体に照射 される。蛍光コンバーター(Fluorescent converter)は、シン チレータに Gd もしくは6Li を含有したものである。シン チレータからの光はミラーで反射させ、C-CCD カメラによ り画像を取得する。 表2 TNRF のスペック 図2 TNRF の実験体系(2)

4.実験

試験体に普通コンクリートと中性子遮蔽コンクリート を用い、中性子ラジオグラフィ画像を取得した。使用した 中性子遮蔽コンクリートは、大強度陽子加速器施設(J- PARC)のビームラインに使用したものと同一のもので ある。試料は、100mmφのコンクリートコアを1枚当たり 20mm 厚づつ切り出し、コンクリートコア表面から 80mm 深 さまでを実験に供した(図3)。均一性評価において各試 料は、図2に示す TNRF の蛍光コンバーターの前にセット して撮影を行った。実験風景を図4に示す。 図3 コンクリート試料 なお、遮蔽に有効な成分量の推定のために使用した中性子ラ ジオグラフィ装置は、TNRF ではなく加速器中性子源を利用し た中性子ラジオグラフィ装置を使用した。 SiO2 H2O M gO M nO Al2O3 33.1 14.8 29.1 0.09 1.54 CaO SO3 Cl Cs Na2O 11 0.38 0.016 < 0.01 0.05 TiO2 B2O3 P2O5 Eu CoO 0.07 2.61 0.11 < 0.01 < 0.01 Fe2O3 K2O Ig-loss 6.23 0.06 13.6 Density 2.2 g/cm3 SiO2 H2O M gO M nO Al2O3 57.7 6.04 1.31 0.08 10.5 CaO Cs Na2O K2O TiO2 14.5 <0.01 2.29 0.86 0.39 Fe2O3 Eu Co 3.47 <0.01 <0.01 Density 2.2 g/cm3

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Fluorescent converter Li-loaded ZnS scintillator とが出来ない水分を見ることが出来る。図1に示すように、 水素、リチウム、ホウ素など大きい減弱係数を持った元素 は濃く映り、シリコン、カルシウム、酸素、アルミニウム など減弱係数の小さい元素は薄くなるか、もしくは見えな くなる。 表1 元素組成分析結果 中性子遮蔽コンクリート(wt%) 普通コンクリート(wt%) 図1 熱中性子に対する各元素の減弱係数(3) 中性子ラジオグラフィで用いる熱中性子ビームは、原子 炉や加速器中性子源で得られる。日本原子力研究開発機構 の JRR-3M 研究用原子炉に設置されている熱中性子ラジオ グラフィ装置 (TNRF)のスペックを表2に、実験体系を図2に示す。 図2において、JRR-3M からの中性子ビームが試験体に照射 される。蛍光コンバーター(Fluorescent converter)は、シン チレータに Gd もしくは 6Li を含有したものである。シン チレータからの光はミラーで反射させ、C-CCD カメラによ り画像を取得する。 表2 TNRF のスペック 図2 TNRF の実験体系(2)

4.実験

試験体に普通コンクリートと中性子遮蔽コンクリート を用い、中性子ラジオグラフィ画像を取得した。使用した 中性子遮蔽コンクリートは、大強度陽子加速器施設(J- PARC)のビームラインに使用したものと同一のもので ある。試料は、100mmφのコンクリートコアを1枚当たり 20mm 厚づつ切り出し、コンクリートコア表面から 80mm 深 さまでを実験に供した(図3)。均一性評価において各試 料は、図2に示す TNRF の蛍光コンバーターの前にセット して撮影を行った。実験風景を図4に示す。 図3 コンクリート試料 なお、遮蔽に有効な成分量の推定のために使用した中性子ラ ジオグラフィ装置は、TNRF ではなく加速器中性子源を利用し た中性子ラジオグラフィ装置を使用した。 SiO2 H2O M gO M nO Al2O3 33.1 14.8 29.1 0.09 1.54 CaO SO3 Cl Cs Na2O 11 0.38 0.016 < 0.01 0.05 TiO2 B2O3 P2O5 Eu CoO 0.07 2.61 0.11 < 0.01 < 0.01 Fe2O3 K2O Ig-loss 6.23 0.06 13.6 Density 2.2 g/cm3 SiO2 H2O M gO M nO Al2O3 57.7 6.04 1.31 0.08 10.5 CaO Cs Na2O K2O TiO2 14.5 <0.01 2.29 0.86 0.39 Fe2O3 Eu Co 3.47 <0.01 <0.01 Density 2.2 g/cm3

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Fluorescent converter Li-loaded ZnS scintillator 表-2 TNRF のスペック とが出来ない水分を見ることが出来る。図1に示すように、 水素、リチウム、ホウ素など大きい減弱係数を持った元素 は濃く映り、シリコン、カルシウム、酸素、アルミニウム など減弱係数の小さい元素は薄くなるか、もしくは見えな くなる。 表1 元素組成分析結果 中性子遮蔽コンクリート(wt%) 普通コンクリート(wt%) 図1 熱中性子に対する各元素の減弱係数(3) 中性子ラジオグラフィで用いる熱中性子ビームは、原子 炉や加速器中性子源で得られる。日本原子力研究開発機構 の JRR-3M 研究用原子炉に設置されている熱中性子ラジオ グラフィ装置 (TNRF)のスペックを表2に、実験体系を図2に示す。 図2において、JRR-3M からの中性子ビームが試験体に照射 される。蛍光コンバーター(Fluorescent converter)は、シン チレータに Gd もしくは 6Li を含有したものである。シン チレータからの光はミラーで反射させ、C-CCD カメラによ り画像を取得する。 表2 TNRF のスペック 図2 TNRF の実験体系(2)

4.実験

試験体に普通コンクリートと中性子遮蔽コンクリート を用い、中性子ラジオグラフィ画像を取得した。使用した 中性子遮蔽コンクリートは、大強度陽子加速器施設(J- PARC)のビームラインに使用したものと同一のもので ある。試料は、100mmφのコンクリートコアを1枚当たり 20mm 厚づつ切り出し、コンクリートコア表面から 80mm 深 さまでを実験に供した(図3)。均一性評価において各試 料は、図2に示す TNRF の蛍光コンバーターの前にセット して撮影を行った。実験風景を図4に示す。 図3 コンクリート試料 なお、遮蔽に有効な成分量の推定のために使用した中性子ラ ジオグラフィ装置は、TNRF ではなく加速器中性子源を利用し た中性子ラジオグラフィ装置を使用した。 SiO2 H2O M gO M nO Al2O3 33.1 14.8 29.1 0.09 1.54 CaO SO3 Cl Cs Na2O 11 0.38 0.016 < 0.01 0.05 TiO2 B2O3 P2O5 Eu CoO 0.07 2.61 0.11 < 0.01 < 0.01 Fe2O3 K2O Ig-loss 6.23 0.06 13.6 Density 2.2 g/cm3 SiO2 H2O M gO M nO Al2O3 57.7 6.04 1.31 0.08 10.5 CaO Cs Na2O K2O TiO2 14.5 <0.01 2.29 0.86 0.39 Fe2O3 Eu Co 3.47 <0.01 <0.01 Density 2.2 g/cm3

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Fluorescent converter Li-loaded ZnS scintillator とが出来ない水分を見ることが出来る。図1に示すように、 水素、リチウム、ホウ素など大きい減弱係数を持った元素 は濃く映り、シリコン、カルシウム、酸素、アルミニウム など減弱係数の小さい元素は薄くなるか、もしくは見えな くなる。 表1 元素組成分析結果 中性子遮蔽コンクリート(wt%) 普通コンクリート(wt%) 図1 熱中性子に対する各元素の減弱係数(3) 中性子ラジオグラフィで用いる熱中性子ビームは、原子 炉や加速器中性子源で得られる。日本原子力研究開発機構 の JRR-3M 研究用原子炉に設置されている熱中性子ラジオ グラフィ装置 (TNRF)のスペックを表2に、実験体系を図2に示す。 図2において、JRR-3M からの中性子ビームが試験体に照射 される。蛍光コンバーター(Fluorescent converter)は、シン チレータに Gd もしくは6Li を含有したものである。シン チレータからの光はミラーで反射させ、C-CCD カメラによ り画像を取得する。 表2 TNRF のスペック 図2 TNRF の実験体系(2)

4.実験

試験体に普通コンクリートと中性子遮蔽コンクリート を用い、中性子ラジオグラフィ画像を取得した。使用した 中性子遮蔽コンクリートは、大強度陽子加速器施設(J- PARC)のビームラインに使用したものと同一のもので ある。試料は、100mmφのコンクリートコアを1枚当たり 20mm 厚づつ切り出し、コンクリートコア表面から 80mm 深 さまでを実験に供した(図3)。均一性評価において各試 料は、図2に示す TNRF の蛍光コンバーターの前にセット して撮影を行った。実験風景を図4に示す。 図3 コンクリート試料 なお、遮蔽に有効な成分量の推定のために使用した中性子ラ ジオグラフィ装置は、TNRF ではなく加速器中性子源を利用し た中性子ラジオグラフィ装置を使用した。 SiO2 H2O M gO M nO Al2O3 33.1 14.8 29.1 0.09 1.54 CaO SO3 Cl Cs Na2O 11 0.38 0.016 < 0.01 0.05 TiO2 B2O3 P2O5 Eu CoO 0.07 2.61 0.11 < 0.01 < 0.01 Fe2O3 K2O Ig-loss 6.23 0.06 13.6 Density 2.2 g/cm3 SiO2 H2O M gO M nO Al2O3 57.7 6.04 1.31 0.08 10.5 CaO Cs Na2O K2O TiO2 14.5 <0.01 2.29 0.86 0.39 Fe2O3 Eu Co 3.47 <0.01 <0.01 Density 2.2 g/cm3

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Fluorescent converter Li-loaded ZnS scintillator とが出来ない水分を見ることが出来る。図1に示すように、 水素、リチウム、ホウ素など大きい減弱係数を持った元素 は濃く映り、シリコン、カルシウム、酸素、アルミニウム など減弱係数の小さい元素は薄くなるか、もしくは見えな くなる。 表1 元素組成分析結果 中性子遮蔽コンクリート(wt%) 普通コンクリート(wt%) 図1 熱中性子に対する各元素の減弱係数(3) 中性子ラジオグラフィで用いる熱中性子ビームは、原子 炉や加速器中性子源で得られる。日本原子力研究開発機構 の JRR-3M 研究用原子炉に設置されている熱中性子ラジオ グラフィ装置 (TNRF)のスペックを表2に、実験体系を図2に示す。 図2において、JRR-3M からの中性子ビームが試験体に照射 される。蛍光コンバーター(Fluorescent converter)は、シン チレータに Gd もしくは 6Li を含有したものである。シン チレータからの光はミラーで反射させ、C-CCD カメラによ り画像を取得する。 表2 TNRF のスペック 図2 TNRF の実験体系(2)

4.実験

試験体に普通コンクリートと中性子遮蔽コンクリート を用い、中性子ラジオグラフィ画像を取得した。使用した 中性子遮蔽コンクリートは、大強度陽子加速器施設(J- PARC)のビームラインに使用したものと同一のもので ある。試料は、100mmφのコンクリートコアを1枚当たり 20mm 厚づつ切り出し、コンクリートコア表面から 80mm 深 さまでを実験に供した(図3)。均一性評価において各試 料は、図2に示す TNRF の蛍光コンバーターの前にセット して撮影を行った。実験風景を図4に示す。 図3 コンクリート試料 なお、遮蔽に有効な成分量の推定のために使用した中性子ラ ジオグラフィ装置は、TNRF ではなく加速器中性子源を利用し た中性子ラジオグラフィ装置を使用した。 SiO2 H2O M gO M nO Al2O3 33.1 14.8 29.1 0.09 1.54 CaO SO3 Cl Cs Na2O 11 0.38 0.016 < 0.01 0.05 TiO2 B2O3 P2O5 Eu CoO 0.07 2.61 0.11 < 0.01 < 0.01 Fe2O3 K2O Ig-loss 6.23 0.06 13.6 Density 2.2 g/cm3 SiO2 H2O M gO M nO Al2O3 57.7 6.04 1.31 0.08 10.5 CaO Cs Na2O K2O TiO2 14.5 <0.01 2.29 0.86 0.39 Fe2O3 Eu Co 3.47 <0.01 <0.01 Density 2.2 g/cm3

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Fluorescent converter Li-loaded ZnS scintillator とが出来ない水分を見ることが出来る。図1に示すように、 水素、リチウム、ホウ素など大きい減弱係数を持った元素 は濃く映り、シリコン、カルシウム、酸素、アルミニウム など減弱係数の小さい元素は薄くなるか、もしくは見えな くなる。 表1 元素組成分析結果 中性子遮蔽コンクリート(wt%) 普通コンクリート(wt%) 図1 熱中性子に対する各元素の減弱係数(3) 中性子ラジオグラフィで用いる熱中性子ビームは、原子 炉や加速器中性子源で得られる。日本原子力研究開発機構 の JRR-3M 研究用原子炉に設置されている熱中性子ラジオ グラフィ装置 (TNRF)のスペックを表2に、実験体系を図2に示す。 図2において、JRR-3M からの中性子ビームが試験体に照射 される。蛍光コンバーター(Fluorescent converter)は、シン チレータに Gd もしくは 6Li を含有したものである。シン チレータからの光はミラーで反射させ、C-CCD カメラによ り画像を取得する。 表2 TNRF のスペック 図2 TNRF の実験体系(2)

4.実験

試験体に普通コンクリートと中性子遮蔽コンクリート を用い、中性子ラジオグラフィ画像を取得した。使用した 中性子遮蔽コンクリートは、大強度陽子加速器施設(J- PARC)のビームラインに使用したものと同一のもので ある。試料は、100mmφのコンクリートコアを1枚当たり 20mm 厚づつ切り出し、コンクリートコア表面から 80mm 深 さまでを実験に供した(図3)。均一性評価において各試 料は、図2に示す TNRF の蛍光コンバーターの前にセット して撮影を行った。実験風景を図4に示す。 図3 コンクリート試料 なお、遮蔽に有効な成分量の推定のために使用した中性子ラ ジオグラフィ装置は、TNRF ではなく加速器中性子源を利用し た中性子ラジオグラフィ装置を使用した。 SiO2 H2O M gO M nO Al2O3 33.1 14.8 29.1 0.09 1.54 CaO SO3 Cl Cs Na2O 11 0.38 0.016 < 0.01 0.05 TiO2 B2O3 P2O5 Eu CoO 0.07 2.61 0.11 < 0.01 < 0.01 Fe2O3 K2O Ig-loss 6.23 0.06 13.6 Density 2.2 g/cm3 SiO2 H2O M gO M nO Al2O3 57.7 6.04 1.31 0.08 10.5 CaO Cs Na2O K2O TiO2 14.5 <0.01 2.29 0.86 0.39 Fe2O3 Eu Co 3.47 <0.01 <0.01 Density 2.2 g/cm3

Thermal neutron flux 1.2×108 (n/cm2 sec) Irradiation area 255mmW ×305 mmH Resolution of cold-CCD 100 µm/pixel

(3)

試料を透過する中性子の強度は下式で示される4) ここで,Σは巨視的断面積,t は試料厚さ,I は試料透 過後の中性子強度,I0は試料透過前の中性子強度である。

5.実験結果

5.

1 均一性評価

取得した中性子ラジオグラフィ画像を図-5に示す。 図-5において,中性子強度は前述のとおり白黒のコン トラストとして現れる。この画像をデジタル画像処理し, 試料無しの場合における中性子ラジオグラフィ画像と比 較することにより,透過率のグラフを書くことが出来る。 図-6に図-5に示す中心線位置における透過率のグラ フを示す。透過率 1.00 は,遮蔽体無し(試験体無し)を 表し,透過率 0.00 は完全に遮蔽されている状態を表す。 図-5より,普通コンクリートに比べ中性子遮蔽コン クリートの中性子ラジオグラフィ画像の方がより黒化度 が高いことから,中性子遮蔽コンクリートの方が熱中性 子遮蔽性能が高い事が解る。なお,コンクリート下の三 角形の部分は試料の台座である。図-6より,中心線位 置における中性子遮蔽コンクリートの透過率は,粗骨材 に伴う揺れが見られるが各位置とも± 0.10 の範囲に収ま り,均一性がほぼ保たれていると考えられる。なお,普通 コンクリートにおいて,中心部の熱中性子透過率が端部 より下がっているのは,図-5を見ると試料中心部の黒 化度が端部より高いことから,試料中心部の水分量が端 部より多いためと考えられる。 また比較のため,灰ほう石とエポキシ樹脂を混合した 樹脂系中性子遮蔽材料5)に対する中性子ラジオグラフィ 画像の取得も行った。図-7に当該材料の中性子ラジオ グラフィ画像と透過率を示す。 図4 実験風景 試料を透過する中性子の強度は下式で示される(4)

I = I

0

exp(-

Σ

t

t)

ここで、Σは巨視的断面積、t は試料厚さ、I は試料透過 後の中性子強度、I0は試料透過前の中性子強度である。

5.実験結果

5.1 均一性評価

取得した中性子ラジオグラフィ画像を図5に示す。図5 において、中性子強度は前述のとおり白黒のコントラスト として現れる。この画像をデジタル画像処理し、試料無し の場合における中性子ラジオグラフィ画像と比較するこ とにより、透過率のグラフを書くことが出来る。図6に図 5に示す中心線位置における透過率のグラフを示す。透過 率 1.00 は、遮蔽体無し(試験体無し)を表し、透過率 0.00 は完全に遮蔽れている状態を表す。 図5より、普通コンクリートに比べ中性子遮蔽コンクリ ートの中性子ラジオグラフィ画像の方がより黒化度が高 いことから、中性子遮蔽コンクリートの方が熱中性子遮蔽 性能が高い事が解る。なお、コンクリート下の三角形の部 分は試料の台座である。図6より、中心線位置における中 性子遮蔽コンクリートの透過率は、粗骨材に伴う揺れが見 られるが各位置とも±0.10 の範囲に収まり、均一性がほぼ 保たれていると考えられる。なお、普通コンクリートにお いて、中心部の熱中性子透過率が端部より下がっているの は、図5を見ると試料中心部の黒化度が端部より高いこと から、試料中心部の水分量が端部より多いためと考えられ る。 また比較のため、灰ほう石とエポキシ樹脂を混合した樹 脂系中性子遮蔽材料5)に対する中性子ラジオグラフィ画像 の取得も行った。図7に当該材料の中性子ラジオグラフィ 画像と透過率を示す。 (1)表面 (2)深さ 80mm 図5 各コンクリートの中性子ラジオグラフィ画像 普通コンクリート 中性子遮蔽コンクリート 普通コンクリート 中性子遮蔽コンクリート 中心線 図-4 実験風景 図-5 各コンクリートの中性子ラジオグラフィ画像 図4 実験風景 試料を透過する中性子の強度は下式で示される(4)

I = I

0

exp(-

Σ

t

t)

ここで、Σは巨視的断面積、t は試料厚さ、I は試料透過 後の中性子強度、I0は試料透過前の中性子強度である。

5.実験結果

5.1 均一性評価

取得した中性子ラジオグラフィ画像を図5に示す。図5 において、中性子強度は前述のとおり白黒のコントラスト として現れる。この画像をデジタル画像処理し、試料無し の場合における中性子ラジオグラフィ画像と比較するこ とにより、透過率のグラフを書くことが出来る。図6に図 5に示す中心線位置における透過率のグラフを示す。透過 率 1.00 は、遮蔽体無し(試験体無し)を表し、透過率 0.00 は完全に遮蔽れている状態を表す。 図5より、普通コンクリートに比べ中性子遮蔽コンクリ ートの中性子ラジオグラフィ画像の方がより黒化度が高 いことから、中性子遮蔽コンクリートの方が熱中性子遮蔽 性能が高い事が解る。なお、コンクリート下の三角形の部 分は試料の台座である。図6より、中心線位置における中 性子遮蔽コンクリートの透過率は、粗骨材に伴う揺れが見 られるが各位置とも±0.10 の範囲に収まり、均一性がほぼ 保たれていると考えられる。なお、普通コンクリートにお いて、中心部の熱中性子透過率が端部より下がっているの は、図5を見ると試料中心部の黒化度が端部より高いこと から、試料中心部の水分量が端部より多いためと考えられ る。 また比較のため、灰ほう石とエポキシ樹脂を混合した樹 脂系中性子遮蔽材料5)に対する中性子ラジオグラフィ画像 の取得も行った。図7に当該材料の中性子ラジオグラフィ 画像と透過率を示す。 (1)表面 (2)深さ 80mm 図5 各コンクリートの中性子ラジオグラフィ画像 普通コンクリート 中性子遮蔽コンクリート 普通コンクリート 中性子遮蔽コンクリート 中心線 図4 実験風景 試料を透過する中性子の強度は下式で示される(4)

I = I

0

exp(-

Σ

t

t)

ここで、Σは巨視的断面積、t は試料厚さ、I は試料透過 後の中性子強度、I0は試料透過前の中性子強度である。

5.実験結果

5.1 均一性評価

取得した中性子ラジオグラフィ画像を図5に示す。図5 において、中性子強度は前述のとおり白黒のコントラスト として現れる。この画像をデジタル画像処理し、試料無し の場合における中性子ラジオグラフィ画像と比較するこ とにより、透過率のグラフを書くことが出来る。図6に図 5に示す中心線位置における透過率のグラフを示す。透過 率 1.00 は、遮蔽体無し(試験体無し)を表し、透過率 0.00 は完全に遮蔽れている状態を表す。 図5より、普通コンクリートに比べ中性子遮蔽コンクリ ートの中性子ラジオグラフィ画像の方がより黒化度が高 いことから、中性子遮蔽コンクリートの方が熱中性子遮蔽 性能が高い事が解る。なお、コンクリート下の三角形の部 分は試料の台座である。図6より、中心線位置における中 性子遮蔽コンクリートの透過率は、粗骨材に伴う揺れが見 られるが各位置とも±0.10 の範囲に収まり、均一性がほぼ 保たれていると考えられる。なお、普通コンクリートにお いて、中心部の熱中性子透過率が端部より下がっているの は、図5を見ると試料中心部の黒化度が端部より高いこと から、試料中心部の水分量が端部より多いためと考えられ る。 また比較のため、灰ほう石とエポキシ樹脂を混合した樹 脂系中性子遮蔽材料5)に対する中性子ラジオグラフィ画像 の取得も行った。図7に当該材料の中性子ラジオグラフィ 画像と透過率を示す。 (1)表面 (2)深さ 80mm 図5 各コンクリートの中性子ラジオグラフィ画像 普通コンクリート 中性子遮蔽コンクリート 普通コンクリート 中性子遮蔽コンクリート 中心線

(4)

樹脂系中性子遮蔽材料は,灰ほう石の紛体をエポキシ 樹脂に混ぜており B2O3の含有量も 30.4wt% と高いため,画 像全体が黒化している。熱中性子透過率においては,紛体 を混ぜているため図-6で見られた粗骨材に伴う揺れが 見られずおり,ほぼ一定の透過率を示している事から,非 常に均一性が高い事が解る。

5.

2 ホウ素成分の推定

中性子ラジオグラフィ画像は,熱中性子透過率により 黒化度が変化することから,画像をデジタル処理する事 によりコンクリート中におけるホウ素成分の含有量の推 定が可能であるのではないかと考え,解析を試みた。 まず初めに検量線に準じたものを得るため,ホウ素濃 度が既知のコンクリートに対する中性子ラジオグラフィ 画像を取得した。使用したコンクリートは,灰ほう石 5% , 灰ほう石10%,炭化ホウ素(B4C)を3%,炭化 ホウ素(B4C)を6%を混ぜたコンクリートである。図- 8に取得した中性子ラジオグラフィ画像を示す。 (1)表面 (2)深さ 80mm 図6 中心線位置における各コンクリートの熱中性子 透過率 中性子ラジオグラフィ画像

熱中性子透過率

図7 樹脂系中性子遮蔽材の中性子ラジオグラフィ画像 と熱中性子透過率 樹脂系中性子遮蔽材料は、灰ほう石の紛体をエポキシ樹脂 に混ぜており B2O3の含有量も 30.4wt%と高いため、画像全 体が黒化している。熱中性子透過率においては、紛体を混 ぜているため図6で見られた粗骨材に伴う揺れが見られ ずおり、ほぼ一定の透過率を示している事から、非常に均 一性が高い事が解る。

5.2 ホウ素成分の推定

中性子ラジオグラフィ画像は、熱中性子透過率により黒 化度が変化することから、画像をデジタル処理する事によ りコンクリート中におけるホウ素成分の含有量の推定が 可能であるのではないかと考え、解析を試みた。 まず初めに検量線に準じたものを得るため、ホウ素濃度 が既知のコンクリートに対する中性子ラジオグラフィ画 像を取得した。使用したコンクリートは、灰ほう石5%, 灰ほう石10%、炭化ホウ素を3%、炭化ホウ素を6%を 混ぜたコンクリートである。図8に取得した中性子ラジオ グラフィ画像を示す。 普通コンクリート 中性子遮蔽コンクリート 普通コンクリート 中性子遮蔽コンクリート 図-6  中心線位置における各コンクリートの熱中性子 透過率 図-7  樹脂系中性子遮蔽材の中性子ラジオグラフィ画 像と熱中性子透過率 (1)表面 (2)深さ 80mm 図6 中心線位置における各コンクリートの熱中性子 透過率 中性子ラジオグラフィ画像

熱中性子透過率

図7 樹脂系中性子遮蔽材の中性子ラジオグラフィ画像 と熱中性子透過率 樹脂系中性子遮蔽材料は、灰ほう石の紛体をエポキシ樹脂 に混ぜており B2O3の含有量も 30.4wt%と高いため、画像全 体が黒化している。熱中性子透過率においては、紛体を混 ぜているため図6で見られた粗骨材に伴う揺れが見られ ずおり、ほぼ一定の透過率を示している事から、非常に均 一性が高い事が解る。

5.2 ホウ素成分の推定

中性子ラジオグラフィ画像は、熱中性子透過率により黒 化度が変化することから、画像をデジタル処理する事によ りコンクリート中におけるホウ素成分の含有量の推定が 可能であるのではないかと考え、解析を試みた。 まず初めに検量線に準じたものを得るため、ホウ素濃度 が既知のコンクリートに対する中性子ラジオグラフィ画 像を取得した。使用したコンクリートは、灰ほう石5%, 灰ほう石10%、炭化ホウ素を3%、炭化ホウ素を6%を 混ぜたコンクリートである。図8に取得した中性子ラジオ グラフィ画像を示す。 普通コンクリート 中性子遮蔽コンクリート 普通コンクリート 中性子遮蔽コンクリート

熱中性子透過率

(5)

図-8の画像から求めた各画像全体に対するピクセル 値分布のピーク値と,混合したそれぞれのホウ素原子数 との関係を図-9に示す。相関の決定係数 R2 は 0.893 で ある。 図-9に示す相関式を用いて求めた各コンクリートの ホウ素成分の推定値と実際の分析値との結果を表-3に 示す。 未知試料に対する推定値との比較は今後の課題である が,30% 程度の差で推定できる可能性があると考えられる。

6.結論

中性子ラジオグラフィを用いて,コンクリート内の遮 蔽性能の均一性評価に関する試みと,ホウ素成分の推定 に関する試みを行った。今回,J-PARCで使ったコン クリートを利用して均一性評価を試みた結果,遮蔽に有 効な成分の分布はほぼ均一である事が判った。ホウ素成 分の推定に関する試みについては,標準試料の数を増や せば推定精度が向上すると考えれるが,その手法につい ては今後の課題である。 図8 各濃度における中性子ラジオグラフィ画像 図7の画像から求めた各画像全体に対するピクセル値分 布のピーク値と、混合したそれぞれのホウ素原子数との関 係を図8に示す。相関の決定係数 R2 は 0.893 である。 図8 ホウ素原子数とピクセル値との関係 図8に示す相関式を用いて求めた各コンクリートのホウ 素成分の推定値と実際の分析値との結果を表3に示す。 表3 相関式から求めた推定値と分析値の比較 未知試料に対する推定値との比較は今後の課題であるが、 30%程度の差で推定できる可能性があると考えられる。

6.結論

中性子ラジオグラフィを用いて、コンクリート内の遮蔽 性能の均一性評価に関する試みと、ホウ素成分の推定に関 する試みを行った。今回、J-PARCで使ったコンクリ ートを利用して均一性評価を試みた結果、遮蔽に有効な成 分の分布はほぼ均一である事が判った。ホウ素成分の推定 に関する試みについては、標準試料の数を増やせば推定精 度が向上すると考えれるが、その手法については今後の課 題である。 灰ほう石5% 灰ほう石10% 炭化ホウ素3% 炭化ホウ素6% B4C分析値 推定値 推定値/分析値 炭化ホウ素 3% 3 3.29 1.10 炭化ホウ素 6% 6 4.19 0.70 B2O3分析値 推定値 推定値/分析値 灰ほう石5% 2.79 2.35 0.84 灰ほう石10% 3.76 2.93 0.78 図-8 各濃度における中性子ラジオグラフィ画像 図-9 ホウ素原子数とピクセル値との関係 表-3 相関式から求めた推定値と分析値の比較 図8 各濃度における中性子ラジオグラフィ画像 図7の画像から求めた各画像全体に対するピクセル値分 布のピーク値と、混合したそれぞれのホウ素原子数との関 係を図8に示す。相関の決定係数 R2 は 0.893 である。 図8 ホウ素原子数とピクセル値との関係 図8に示す相関式を用いて求めた各コンクリートのホウ 素成分の推定値と実際の分析値との結果を表3に示す。 表3 相関式から求めた推定値と分析値の比較 未知試料に対する推定値との比較は今後の課題であるが、 30%程度の差で推定できる可能性があると考えられる。

6.結論

中性子ラジオグラフィを用いて、コンクリート内の遮蔽 性能の均一性評価に関する試みと、ホウ素成分の推定に関 する試みを行った。今回、J-PARCで使ったコンクリ ートを利用して均一性評価を試みた結果、遮蔽に有効な成 分の分布はほぼ均一である事が判った。ホウ素成分の推定 に関する試みについては、標準試料の数を増やせば推定精 度が向上すると考えれるが、その手法については今後の課 題である。 灰ほう石5% 灰ほう石10% 炭化ホウ素3% 炭化ホウ素6% B4C分析値 推定値 推定値/分析値 炭化ホウ素 3% 3 3.29 1.10 炭化ホウ素 6% 6 4.19 0.70 B2O3分析値 推定値 推定値/分析値 灰ほう石5% 2.79 2.35 0.84 灰ほう石10% 3.76 2.93 0.78 図8 各濃度における中性子ラジオグラフィ画像 図7の画像から求めた各画像全体に対するピクセル値分 布のピーク値と、混合したそれぞれのホウ素原子数との関 係を図8に示す。相関の決定係数 R2 は 0.893 である。 図8 ホウ素原子数とピクセル値との関係 図8に示す相関式を用いて求めた各コンクリートのホウ 素成分の推定値と実際の分析値との結果を表3に示す。 表3 相関式から求めた推定値と分析値の比較 未知試料に対する推定値との比較は今後の課題であるが、 30%程度の差で推定できる可能性があると考えられる。

6.結論

中性子ラジオグラフィを用いて、コンクリート内の遮蔽 性能の均一性評価に関する試みと、ホウ素成分の推定に関 する試みを行った。今回、J-PARCで使ったコンクリ ートを利用して均一性評価を試みた結果、遮蔽に有効な成 分の分布はほぼ均一である事が判った。ホウ素成分の推定 に関する試みについては、標準試料の数を増やせば推定精 度が向上すると考えれるが、その手法については今後の課 題である。 灰ほう石5% 灰ほう石10% 炭化ホウ素3% 炭化ホウ素6% B4C分析値 推定値 推定値/分析値 炭化ホウ素 3% 3 3.29 1.10 炭化ホウ素 6% 6 4.19 0.70 B2O3分析値 推定値 推定値/分析値 灰ほう石5% 2.79 2.35 0.84 灰ほう石10% 3.76 2.93 0.78 炭化ホウ素(B4C)3% 炭化ホウ素(B4C)6%

(6)

謝辞:本研究を実施するに当たり,日本原子力研究開発機 構の飯倉寛氏(現 文部科学省)には画像撮影やデータ処 理について大変お世話になりました。ここに感謝の意を 表します。

参 考 文 献

1) Koichi Okuno, Masayoshi Kawai, Hitoshi Yamada, Development of Novel Neutron Shielding Concrete, Nuclear Technology, Vol. 168: 545-552(2009)

2) Manabu Kanematsu, Ippei Maruyama, Takafumi Noguchi, Hiroshi Iikura, Visualization of water penetration into concrete through cracks by neutron radiography, Proc. of International Seminar on durability and lifecycle evaluation of concrete structures, 69-76(2006)

3) J.C. Domanus, Neutron Radiography Handbook, D. Reidel Publ. Co., Dordrecht, (1981)

4) M.R.Hawkesworth, Neutron Radiography: Equipment and Methods, Atomic Energy Review, Vol.15 (2): 169-220(1977)

5) Koichi Okuno, Neutron Shielding Materilas based on Colemanite and Epoxy Resin, Radiation Protection Dosimetry, Vol. 115, No 1-4, pp. 258-261(2005) 6) Koichi Okuno, Hiroshi Likura, Homogeneity tests

on neutron shield concrete, Nuclear Science and Techniques, 25, S010604(2014)

A Tentative Test for Homogeneity and Boron Contents of Neutron Shield Concrete

Koichi OKUNO

In recent years, neutrons have been studied for applications in fields such as material analysis and boron neutron capture therapy. In order to create a compact shield for these facilities, a type of concrete able to shield against neutrons has been developed. In order to ensure adequate shielding performance, it is important to verify the homogeneity of the concrete. In this research, neutron radiography images of the concrete were taken and the transmission ratio of the thermal neutrons and boron contents were tentatively estimated. The results showed that the transmission ratio of the concrete was almost the same at the center, and also found that it was possible to estimate the boron content.

参照

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