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韓国の教育の地方自治に関する研究 −日本の教育委員会制度との対比をベースとして− [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)韓国の教育の地方自治に関する研究 −日本の教育委員会制度との対比をベースとして− キーワード:地方分権、教育の中立性、教育委員会、教育委員、住民の参与 発達・社会システム専攻 金 善 一 第3節. 〈目次〉. 第4章 韓国の現行教育自治制の問題点および改善方案. はじめに 第1章 第1節. 韓国の教育自治への示唆点. 第1節. 教育自治制の理論的背景. 韓国の現行教育自治制の問題点. 1.教育行政の地方分権化の問題. 地方自治と教育自治の概念. 1.地方自治の概念. 2.議決機関の重複設置による効率性の問題. 2.教育自治の概念. 3.教育委員および教育監の資格の問題 1) 教育委員の資格をめぐる問題. 第2節 教育自治の本質. 2) 教育監の資格をめぐる問題. 1.教育の自主性 2.教育の専門性. 4.教育委員および教育監の選出方式の問題. 3.教育の中立性. 5.教育自治制の実施単位の問題 第2節 韓国の教育自治制の改善方案. 第3節 教育の地方自治の基本原理. 1. 教育行政の地方分権化の推進. 1. 地方分権の原理 2. 住民参与および統制の原理. 1) 教育行政権限の委譲. 3. 教育行政の独立の原理. 2) 地方教育行政機関内の国家公務員の地方職化 2.教育委員会制度の定着. 4. 専門家による管理の原理 第4節. 3. 教育委員および教育監の資格要件の改善. 教育自治組織の類型. 1. 独立型議決機関. 1) 教育委員の資格要件の改善. 2. 委任型議決機関. 2) 教育監の資格要件の改善 4. 教育行政に対する住民の参与・統制の実現. 3. 合議制執行機関 第2章 第1節. 1) 教育委員の選出方式の改善. 韓国の教育自治制. 2) 教育監の選出方式の改善. 韓国の教育自治制の変遷過程. 3) 住民に請求権の付与. 1.「教育法」の制定と教育自治制. 5. 基礎単位までの教育自治制の実施. 2. 教育自治制の中断と復活. おわりに. 3.「地方教育自治に関する法律」の制定 第2節. 韓国の現行教育自治制. 1.教育自治制の実施単位 ※論文要旨. 2.教育委員会および教育委員. 教育の地方自治は、教育における地方分権の理念と民. 3.教育・学芸に関する執行機関および補助機関. 衆統制という民主主義の理念を教育行政に具現するため. 4.下級の教育行政機関 第3章 第1節. に運営される制度である。韓国はこのような教育の地方. 日本の教育自治制. 自治制が施行されてから50年を超える歴史を持っている. 日本の教育自治制の変遷過程. 1.教育委員会の成立とその史的背景. が、いまだに定着せず、教育行政の地方分権化、教育自. 2.教育委員の準公選制. 治制の実施単位、教育委員会のあり方、教育委員と教育. 第2節. 監(日本の県教育長)の資格や選出方式など多くの問題. 日本の現行教育自治制. 点を含んでいる。. 1.中央教育制度. したがって、本研究は、韓国の過去および現行教育自. 2.地方教育制度 3.中央と地方との関係. 治制の考察・分析を通して韓国の教育自治制の問題点を. 4.地方公共団体と教育委員会との関係. 抽出・分析し、また教育の地方自治が定着している日本 1.

(2) の教育自治制度との対比を通して教育自治の本来の目的. 教育自治の本質として教育の自主性、専門性、中立性. は何か、誰のために教育自治制を実施すべきか、という. をあげることができ、現行「大韓民国憲法」でもこれを. ことを明らかにする。同時に、このような分析結果を踏. 保障することになっている。. まえて、教育自治の基本精神が具現できる方向と韓国に. 教育の自主性は、教育が政治的支配や官僚的統制の犠. おける教育の地方自治制の合理的な改善方案を提示しよ. 牲になることなく、学問の自由と教育の自主性を尊重し. うとする。. て行なわれなければならない、ということを意味し、教 育の専門性は、知識教育を通して合理性を啓発し、自律 人を育てる仕事の専門性を意味し、自律人を育てる仕事 の自律性を保障するために、教育自治が要請されている. はじめに 教育の地方自治は、地方自治で追求する地方分権の理. といえるのである。. 念と民衆統制という民主主義の理念を教育行政に具現す. 教育の中立性とは、特定の党派や階層などによる明確. るために運営される制度である。すなわち、一定の地域. な政治的、宗教的、または、倫理的な価値的立場に与す. の住民が、その地域の教育に関する公共的な事項を自ら. ることなく、対立する価値観の間にあって両極を排する. の意思と責任のもとで処理することによって住民の参与. 中庸を意味する。 教育の地方自治の基本原理としては、地方分権の原理、. 意識を高め、各地域の実情にふさわしい教育行政を施行 することによって、教育の自主性と専門性及び政治的中. 住民参与と住民統制の原理、教育行政の独立性の原理、. 立性を確保しうるようにする基本的な教育制度であると. 専門家による管理の原理があげられる。. 言うことができる。 教育の地方自治制の実施は、教育において画一的中央. 第2章. 第2章では、韓国の教育自治制の変遷過程と現行の教. 集権的な統制を排除し、開放的な地方分権制を指向して、 保護者および住民の教育参与権と教育請求権を保障する. 育自治制の状況について考察した。 韓国の教育自治制は、米軍政下で教育行政制度の民主. とともに、各地域住民に最適な教育サービスを、民主的 方式によって提供しようとすることである。このような. 韓国の教育自治制. 化の要請にともなって芽生え始めた。. 目的をもって実施された教育の地方自治の実施過程を振. 1949年「教育法」の制定とともに始まった教育自治制. り返って見ると、あらゆる制度がそうであるように韓国. は、5. 16軍事クーデターによって地方教育行政が一般行. の教育自治制においても、事前に予測したり検証してみ. 政に統合されることによって廃止された。その後、第3. なかった新たな問題点などが、具体的な実施の過程で相. 共和国の樹立とともに改正された「憲法」で教育の自主. 次いで発生しているので、その改善策が早急に要求され. 性と中立性を保障され、この「憲法」精神に従って教育. ている。. 行政機構が一般行政機構から分離・独立することによっ て、教育自治制が再び復活することになったが、当時は. 第1章. 厳密な意味では名目だけの教育自治制であったといえる。. 教育自治制の理論的背景. このような中で教育の地方自治制度の改善のため教育. 第1章では、教育自治の概念、教育の地方自治の本質、 教育の地方自治の基本理念など、教育の地方自治が実現. 自治に関する条項が「教育法」から分離され、1991年3. されるための基本原理について考察した。. 月に「地方教育自治に関する法律」が公布されることに. 教育自治制とは、教育の自主性を保障するための教育. よって現行の教育自治制が施行されることになった。. 行政体制を意味する。教育活動の特殊性と独自性、その. 韓国の現行教育自治制をみると、広域単位(特別市、. 専門性に対する認識を土台として、教育行政において自. 広域市、道)だけで実施されており、教育の自主性およ. 主性を保障し、その政治的中立性を確保しようとする制. び専門性と地方教育の特殊性を生かし、地方自治体の教. 度と言うことができる。. 育・科学・技術・体育、そのほか、学芸に関する事項を. 教育の地方自治は、画一的な中央統制より地方分権を. 審議・議決するために、教育委員会が設置されている。. 指向し、教育の自主性と中立性の保障に資する。また地. このような教育委員会は、地方自治体の事務中、教育・. 域住民の教育に対する自発的な参与意識を高め、自律的. 学芸に関する事項が地方自治体から委譲されて、これを. な教育統制が可能になり、教育行政の安定性と継続性の. 審議・議決する委任型審議・議決機関としての性格を持. 確保のための制度的な保障の形態として、主要な意味を. っている。 特別市・広域市・(以下、単に「市」とする)・道の. 有しているといえる。 - 2-.

(3) 教育・学芸に関する事務の独任制執行機関として、市・. 自治は部分的に行なわれているが、教育行政の権限がい. 道に教育監を置き、教育監の補助機関として副教育監を. まだに中央に集中しているため、真の教育の地方自治が. 置き、副教育監は大統領が任命することになっている。. 実現されていないという点にある。また、教育委員会を 独立した審議・議決機関と規定し、地方議会と同様な機. 第3章. 能を遂行するようにした結果、二重の審議による教育行. 日本の教育自治制. 第3章では、日本の教育自治制について考察し、韓国. 政の効率性の低下も指摘できる。 教育委員会の構成も、教育の専門性の確保という美名. の教育自治制への示唆点を導出しようとした。 戦前日本の教育行政、とりわけ地方教育行政組織は地. の下で、教育又は教育行政の経歴を持つものを、必ず2. 方長官を中心とする一般行政に従属していたので、その. 分の1以上含んで構成することとし、教育監の出馬資格. 独立性、特殊性が確保できなかった。こうした教育行政. も教育公務員として教育又は教育行政の経歴が5年以上. が、1945年の終戦とともに米国教育使節団報告書に基づ. (あるいは両経歴をあわせて5年以上)あるもののみを. いて教育行政の地方分権、地域住民の教育行政への直接. 対象としているので、一般住民の出馬が不可能である。. 参与による住民統制、一般行政からの独立という3原則. 教育委員および教育監の選出も、学校運営委員のみを もって構成された選挙人団によって選ばれるため、住民. の下で改革され、教育委員会制度が導入された。 しかし、それまで未経験の新しい制度の運営にいろい. の代表性が確保できず、このような間接選挙のため、選. ろな問題点が発生し、文部省は教育の政治的中立性の確. 出過程でも多くの問題点が生じている。また、教育自治. 保、教育行政の安定性の確保、教育行政と一般行政との. が広域単位のみで実施されるため、住民と直接繋がる教. 調和、国・都道府県・市町村一体としての教育行政制度. 育自治が実現できないなどさまざまな問題点を含んでい. の樹立という4原則をあげ、「教育委員会法」を「地方. る。 このような問題点の改善方案として、中央政府は教育. 教育行政法」に改めた。 そのため教育委員の公選制が任命制に変わった。この. 行政の権限を地方に大幅委譲すべきであり、現在の委任. ような任命制への転換は、住民の代表性を根源とする教. 型審議・議決機関である教育委員会を合議制執行機関に. 育委員の影響力が弱くなって、地域住民の意思を充分反. し、教育・学芸に関する審議・議決機能を地方議会に単. 映した教育行政が行なわれず、教育委員会が形骸化して. 一化して教育行政の効率性を上げ、一般行政との連繋性. いる点で、韓国の教育自治制に多くのことを示唆してい. を向上させるべきであろう。. るといえる。こうした任命制の欠点を直し、教育委員の. また、教育委員会の組織原理に照らしてみる時、教育. 選任権を教育の主体である住民に返すという意図をもっ. 委員の選出は開放と参与の原則が尊重されるべきであり、. て、東京都中野区で1981年に、教育委員の準公選制が施. 教育委員を希望するすべての人に公平な機会が与えられ. 行されたが、文部省の反対のため、1994年にその実施が. なければならない。 住民参与を通して教育行政への住民統制と民主主義の. 中断された。 日本の教育自治制から得られる韓国への示唆は、基礎. 理念を具現し、住民の要求を忠実に代弁するためには、. 自治体である市町村まで教育委員会が設置されている点、 教育委員を住民の手で直接選出することが望ましい。 教育分野も地方行政の一部として行なわれている点、教. 合議制執行機関である教育委員会には、決定した教. 育委員会を首長から独立した合議制執行機関とし、教育. 育・学芸に関する事務を、教育委員会の指揮と監督のも. の自律性と中立性を執行過程で確保している点、教育委. とで具体的に処理するために、教育監を置いている。し. 員に特別な資格要件を要求せず、多様な方面から選任す. たがって、教育監が教育委員会の指揮・統制下で、責任. る点、文部省は教育環境の整備および教育行政に対する. を持って業務を執行する補助機関としての役割を充実さ. 指導・助言を主な事務とし、教育委員会が教育に関する. せるためには、教育委員会が教育監を任命すべきだろう。 選挙権をもつ住民に、教育委員および教育監に対する. 具体的な業務を担当している点などである。. 解職請求権と執行機関の不正や重大な違法行為に対する 第4章. 監査請求権を与え、また、住民の選挙で教育委員を選び、. 韓国の教育自治制の問題点および改善方案. 第4章では、韓国の現行教育自治制の問題点を分析し、 その地方の教育行政を担当するよう委任した教育委員会 これまでの内容を踏まえて現行教育自治制の改善方案を. が、公益又は住民全体の意思に反する行為をした場合は、. 模索した。. 教育委員会に対して解散を求めることができる制度の導. 韓国の現行教育自治制の問題点としては、教育の地方. 入も考える必要があるだろう。. - 3-.

(4) ための手段であり、決してそれ自体が目的ではないとい う言葉を、もう一度繰り返して本論のまとめとしたい。. おわりに 本論の分析に基づいて以上のように提言したが、これ らが一挙に達成されることは不可能であろう。教育は国 家発展の原動力で全国民的な関心事である。教育行政体. ※ 主要参考文献( ※は韓国の資料). 制の変化に対しては、多くの集団の利害関係が絡むため、 国民的な合意が必要であろう。また、教育制度に対する. 堀内孜『地方分権と教育委員会制度』 2001年. 補完も必要である。そして更に大切なことは教育行政を 担当している人々と住民らの教育自治に対する意識であ. ぎょうせい. 堀内孜『教育委員会の組織と機能の実際』ぎょうせい 2001年. るといえよう。 教育の地方自治は、地方分権の理念と民衆統制の理念. 堀内孜『開かれた教育委員会と学校の自律性』ぎょうせ い. を教育行政に具現するために運営される制度である。教 育自治制は、教員および教育行政専門家による自治では. 2002年. 中田三男・尾形利雄共著 『わが国における教育委員会 制度の研究』大空社. なく、住民によって教員および教育行政家を統制するた めの制度である。教育の地方自治という言葉が明確に含. 兼子仁・神田修編. んでいることは、住民が教育の主権をもっているという. るために』. ことと、その主権は教育の発展のためにあるということ. 教育開発院. 2003年. 出版 2001年 ※金南淳『地域発展のための教育自治制の改善方案』 集文堂. 実現されるためには、教員および教育行政を担当する 人々の教育自治に対する認識の変化が何より必要である. エイデル研究所 1985年. ※金容溢『地方教育自治の現実と理想』ムンオム社図書. かかわらず、いまだにその概念に対して少なくない誤解 があることも事実である。したがって、真の教育自治が. 『資料中野区・教育委員準公選を知. ※コジョン(研究責任者)『教育自治制診断研究』韓国. である。教育の地方自治の目的は何か、誰が自治の主体 であるか、ということはあまり難しいものではないにも. 1976年. 1997年. ※柳在源『地方自治の定着のための住民参与の活性化方 案』韓国行政研究院 1995年8月. といえる。 教育自治制を実施する究極的な目的は、学校教育の発. ※韓国教育開発院『地方敎育自治制度の發展方案研究』. 展にあるといえる。教育の最も基本的な経営単位は学校 であり、教育行政の機能は各学校で教育がよりよく行な われるよう効果的に支援することに焦点がある。したが って、各学校の運営の自律が実現される方向での教育自 治が行なわれるべきであることはいうまでもない。 とはいえ、各学校の自律経営が実現されたとしても、 教育自治が必ず実現されると保障することはできない。 真の教育自治が実現されるためには、教育自治の主体で ある住民らの積極的な参与が必要だし、また教育行政側 は、彼らの参与に対して拒否感を示してはならず、彼ら の意思を尊重・吸収し、地域教育が発展できるよう積極 的に協調する姿勢を持たなければならないだろう。 以上のように教育自治制の問題点と改善方案を模索し てみた。しかし、教育の地方自治制が実現されるための 重要な要素である地方教育財政に関する論議がなされて いない点と、日本の教育自治制に関する資料の収集およ び分析に限界があったという点は否めない。これらの限 界は、筆者が将来補完すべき問題であると思う。 最後に、教育の地方自治に対する正しい認識が広がる ことを期待しながら、教育自治とは教育をよりよくする - 4-. 1994年.

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