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「文京・食農教育ファーム」実践活動の試みと 参加園児への影響

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「文京・食農教育ファーム」実践活動の試みと 参加園児への影響

中山 智晴

・西方 浩一

**

Key Words: Food and Agriculture Education ,Farming,Influence on Kinder gartner,Regional Community

1.はじめに

 「食育」と「農」を結びつける教育として,「食農教育」がある.「食農教育」とは,食育に 農業体験活動を加味するもので,食を五感で捉え,食と農を一体的に学習させていく教育活動 である.食べることと,育てることを繋ぐことにより,食の大切さ,生命の尊さ,人と人の繋 がりや地域連携の大切さを学び,自然の仕組みを理解する感性を育成していこうとする取組み である.

 食農教育の推進には,食農教育の重要性を参加者全員が認識し各主体が連携する取組みを構 築する必要がある.具体的には,農業に専門的知識を有する主体,食農教育を必要とする主体,

そして農と食を関連付け食農教育の実践を企画,展開する主体の協働体制を形成させ,地域ぐ るみの取組みが不可欠となる.将来的には,食農教育を受ける対象を幼稚園・保育園から小・

中・高校・大学まで広げ,例えば,食農教育を受けた高校生や大学生が地域住民との協働によ り,その経験を園児や小学生などに還元する仕組み作り,さらには,地域住民の知恵が次世代 を担う子どもたちに還元されていく地域循環型の教育体制の構築が必要であると考える.

 本論文は,食農教育の地域ぐるみでの推進を目的に,本学に設置される「環境教育研究セン ター」が農と食を関連付け食農教育を展開する主体となり実践する「文京・食農教育ファーム」

の活動事例を報告するとともに,本活動に参加する幼稚園児に注目し,食農教育が園児に与え る影響について基礎的データを収集・分析し,食農教育活動の課題と今後の展開について考察 する.

 *人間学部共生社会学科

**保健医療技術学部作業療法学科

(2)

「文京・食農教育ファーム」実践活動の試みと参加園児への影響(中山智晴・西方浩一)

2.「農」と「食」を取り巻く社会情勢

 我が国の「食」の現状の一部を概観することで,「食」に対する日本人の意識,ライフスタ イルを振返る.そして,子どもを取巻く「食」環境と,食農教育推進への我が国の取組みにつ いて重要と思われる 2 つの法律に触れ,なぜ今,我が国において食農教育が必要なのかを分析 する.

2-1 我が国の「食」の現状

 図- 1 に,2003 年における世界の農産物貿易構造を示す.この図を一目見てわかることは,

世界人口のたった 2.0% を構成するにすぎない日本人が,世界の農産物輸入額合計の 9.8%,特 に,とうもろこし 23.6%,肉類 25.5% と,世界で流通する約 4 分の 1 を日本一国で輸入する現 状が見えてくる.とうもろこしの大部分は日本人が口にするものではなく,家畜のエサとして 消費されている.家畜を 1 キロ太らせる為に牛 8 キロ,豚 4 キロ,鶏 2 キロの飼料(穀物)が 必要となる.1 キロの穀物を生産するのには 1 トンの水が必要となる.このことから,例えば 牛肉を食べる一人の行為は,間接的に 10 人分の穀物と 1000 人分の水を消費していることとな り,その多くは,輸入により他国の資源を消費していることになる.

 農林水産省総合食料局の推計では,日本で年間に人間の食用に向けられる食品資源約 9000 万トンのうち,食品関連事業者,一般家庭から排出される食品由来の廃棄物は年間 1900 万ト ン(2005 年度)と推計され,その内,可食部分である 300~500 万トンは食品関連業者(食品 製造業,卸売業,小売業,外食産業)から,200~400 万トンが一般家庭から,食べ残されたり 店で売れ残ったりして,本来食べられるものが捨てられている.すなわち,毎年 500~900 万ト ンの食品ロス(本来食べられるものの廃棄)が日本一国から廃棄されている計算になる

1

.  一方,世界の飢餓人口は 8 億人,そのうち 2 万 5,000 人が毎日死んでいる.5 歳未満の飢え ている子どもたちは 2 億人で,その 3 分の 1 は学校にも行けずに,5 秒に 1 人の速度で餓死し ている.世界全体の食糧援助量を見ると,最高値に達した 1993 年度の 1,700 万トンに比べ,

2001 年度には,1,100 万トン(穀物製品の世界取引量のわずか 4%,穀物の世界生産量の 0.5%

に相当)まで減少している

2)

.日本だけみても,年間最大 900 万トンの食品ロスを出しており,

これは世界の食糧援助総量に匹敵する量である.

 世界から大量の食料を輸入し,その多くを廃棄する私たちのライフスタイルは,日本国内の 食料自給率低迷という問題のみならず,世界の多くの人々に飢餓・餓死といった「負の負担」

を与え続けている現実を理解し,その改善に向けた本格的な取組みを実践していく責務がある.

 このように,「食」に対する一般的な日本人の意識は低く,食農教育の推進は,持続可能な

社会を形成していく上にも重要な取組みであることが理解される.

(3)

図-1 世界の農産物貿易構造

(出所:農林水産省資料「世界の農産物貿易構造の変化」より作成)

2-2 食料・農業・農村基本法の概要

 近年の日本の経済社会および食料・農業・農村をめぐる情勢は大きく変化している.経済社 会が急速な経済成長,国際化の著しい進展等により大きな変化を遂げる中で,食生活も高度化・

多様化が進み,米の消費が減退し,畜産物のように大量の輸入農産物を必要とする食料の消費 が増加したことにより,日本の食料自給率は,供給熱量総合自給率で 40% まで低下してきて いる.しかし,このような食料需要の高度化等に対応した国内の供給体制は未だ十分に確立さ れていない状況にある.

 そのような現状の中,良質な食料を安定的に供給する役割に留まらず,自然環境の保全,伝 統文化の伝承,レクリエーションの場の提供など,農業・農村の持つ多面的機能を評価する動 きは近年増加している.

 以上のような背景を踏まえ,1999 年 7 月,食料・農業・農村基本法は,21 世紀における食料・

農業・農村政策の基本指針となるものとして制定され,国内生産の増大を通じた食料自給率の 向上や農業・農村の有する多面的機能の発揮などの新たな理念を掲げていることが大きな特徴 となっている.

 政府は, 「食料の安定供給の確保」, 「多面的機能の発揮」, 「農業の持続的な発展」, 「農村の振興」

の 4 つの理念の下に,「食料・農業・農村基本計画」を策定し,施策の基本的な方針や食料自 給率を設定している.計画はおおむね 5 年ごとに見直しされることとなっている.

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「文京・食農教育ファーム」実践活動の試みと参加園児への影響(中山智晴・西方浩一)

①食料の安定供給の確保

1.食の安全性と消費者の信頼の確保(農場から食卓までの食の安全を確保) 

2.望ましい食生活の実現に向けた食育の推進(国民一人一人が食について考え判断できる 能力の養成)

3.地産地消の推進(生産者と消費者が顔が見え話ができる関係の構築)

4.食料の輸入の安定確保と不測時における食料安全保障

②多面的機能の発揮

 農業生産活動により生ずる国土の保全,水源のかん養,自然環境の保全,良好な景観の形成,

文化の伝承等の多面的機能は,将来にわたって,適切かつ十分に発揮されなければならない.

農業が果たす多くの役割は,農作物のように市場で取り扱われるものではないが,市民に対し て何らかの利益を与えるものを生ずる機能を発揮することであり,水田や畑が降雨を一時的に 貯留したり,灌漑水や雨水が地下へ浸透し水源をかん養したり,あるいは田畑,ため池,用水 路などに多様な生き物が生息することなどにより,農村の自然環境を保全し,美しい景観を残 し,そこに暮らす人,訪れる人にゆとり,安らぎを与えてくれる機能を有する場所が本来の農 村であると考える.

③農業の持続的な発展

 農業の自然循環機能(農業生産活動が自然界における生物を介在する物質の循環に依存し,

かつ,これを促進する機能)が維持増進されることにより,その持続的な発展が図られなけれ ばならない.その実現のためには,以下の取組みが必要である.

1.地域における農の担い手の明確化

2.人材の育成・確保等(高齢者の生きがいの確保など)

3.農地の有効利用の促進(遊休農地の発生防止・解消など)

④農村の振興

 農業の有する食料その他の農産物の供給の機能及び多面的機能が適切かつ十分に発揮される よう,農業の生産条件の整備及び生活環境の整備より,その振興が図られなければならない.

その実現のためには,以下の取組みが必要である.

1.資源保全施策の構築(地域住民が一体となり農村環境の保全等に取り組む)

2.都市と農村の共生・対流 3.農村経済の活性化

2-3 食育基本法の概要

 現代の大量生産・大量消費・大量廃棄の経済システムの中で暮らす私たちは,生涯にわたり

健全な心と身体を培う「食」への関心が薄らいでいる.「食」の安全性の問題や食料自給率の

向上の問題が顕在化する中,地域の多様性と自然の豊かさがもたらす日本の「食」が失われる

危機に瀕している.

(5)

 2005 年 7 月に「食育基本法」が施行され,2006 年 3 月には,関係府省が連携をして,家庭,

学校,地域における食育を総合的かつ計画的に推進するため,「食育推進基本計画」が決定さ れた.食育の定義に明確なものはないが,「食育基本法」の前文には以下のような記述がある.

「今,改めて, 食育を,生きる上での基本であって,知育,徳育及び体育の基礎となるべきも のと位置付けるとともに,様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習 得し,健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進すること」が求められて いる.

 「食育推進基本計画」には,食育の推進に関する施策についての 7 つの具体的・基本的な方 針が記されている.

1.国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成 2.食に関する感謝の念と理解

3.食育推進運動の展開

4.子どもの食育における保護者,教育関係者等の役割 5.食に関する体験活動と食育推進活動の実践

6.伝統的な食文化,環境と調和した生産等への配慮及び農山漁村の活性化と食料自給率の 向上への貢献

 7.食品の安全性の確保等における食育の役割

2-4 子どもを取巻く「食」環境

 私たちの「農」や「食」への意識を改善し,より住みやすい世界を構築するためには,地域 コミュニティの再生による農を通した人と人のつながりの形成が大切であり,さらには,活動 を継続させていくため次世代への教育が不可欠なものと考える.すなわち,子どもに対し「食」

と「農」を理解し体験する場を提供する必要がある.

 現在の「食」環境を見渡せば,外食産業や惣菜,弁当などの中食産業が発展,さらにはコン ビニエンスストアの急激な普及により,お金を出せば,いつでもどこでも手軽に好きなものが 食べられる時代となっている.その一方で,偏食,欠食,高カロリー食の過剰摂取といった不 規則な食事が蔓延し,食を通じた家族の団らんは生活環境の変化のため取りにくい状況となっ ている.このように,食生活に大きな乱れが見受けられる.

 食生活が欧米化する中,食料の海外依存度は益々増加し,食料自給率は 40% にまで低下し ている.食を海外に依存する中,今までは取り上げられたこともない問題が顕在化している.

BSE(牛海綿状脳症),鳥インフルエンザ,輸入農産物の残留農薬,国内でも食品の偽装表示

などが起きている.このような現状の中,生産者と消費者の顔が見える地産地消の取組みが見

直されている.生産された農産物を地域で消費するこの取組みは,地域の多様性と豊かな自然

の恵み,伝統文化や地域のつながりの下で生産されてきた日本の「食」のよさを再認識するも

のと期待されている.

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「文京・食農教育ファーム」実践活動の試みと参加園児への影響(中山智晴・西方浩一)

 一方,「農」の環境を見渡せば,国民の多くは,生活環境や住環境の変化,グローバル化に 伴う農産物の輸入拡大などから,食料の生産現場をみたり,農作業を体験する機会が少なくなっ ている.家族や地域コミュニティが協働しながら生産性を上げていく農業,農業を支える農村 の生活スタイルへの理解は得にくい状況にある.食を育む「農」の体験は,食べ物への感謝の 気持ち,自然からの恵への喜び,自然の大切さ,地域のつながりの重要性,協働の必要性など を培ってくれるが,今や「農」の大切さを感じる場は少ない.

 現在,子どもを取り巻く「食」環境は良好であるとは言いがたい.東京都福祉保健局が 2005 年に実施した「幼児期からの健康習慣調査報告書」は,子どもたちの生活習慣の形成に 与える幼稚園の役割に着目し,幼稚園における食育の取組み調査(都内の幼稚園全園 1,065 園)

と幼児の食習慣等の現状や保護者の意識調査(都内の幼稚園及び保育園に通園する 4・5・6 歳 児の保護者 1,482 名)の結果を報告している.

 それによると,「朝食をほぼ毎日食べる」子どもは 93.2%,「朝食を食べる頻度が少ない子 ども(週に 2,3 回以下しか食べない子ども)」は 2.6% であった.また,朝食に「主食(ご 飯・パンなど)」「主菜(卵・魚など)」「副菜(野菜など)」を組み合わせて食べている割合は

24.3% であった.週に 1~2 回以上朝食を抜く子どもが 8% 程度,バランスの取れた食事を取る

子どもは 4 人に 1 人という割合である.

 このような現状の中,94.5% の幼稚園が園児や保護者に食育を実施している.実施方法は,

園児に対しては「昼食時に声かけをする」(95.8%),「教材(エプロンシアター・紙芝居・パ ネルシアター・絵本等)を使った働きかけ」(58.4%)である.保護者に対しては,「保護者会 でのお話」(78.1%)が最も多かった.取組み内容は,園児,保護者のいずれに対しても「生 活リズムと食事の関係」,「朝食を食べる大切さ」を伝えるものである.子どもの食事を「今よ りもよくしたい」と願う保護者は全体の 70.0% に達している.

 子どもたちは,食生活と心,体の両面において様々な問題を抱えていることから,幼児食育 の重要性が叫ばれている.

3.「食農教育」を活用した地域づくりと取組み事例

 本活動は,上述した「食」と「農」を取巻く社会情勢を背景に食育を一歩前進させた「食農 教育」を展開している.食農教育を推進させていくためには,食農教育の重要性を地域が認識 し,教育現場と連携して地域ぐるみの取組みを構築する必要がある.

 文京学院大学ふじみ野キャンパスは,埼玉県南西部のふじみ野市に位置する.かつては武蔵

野の雑木林に広がる都市農業地帯であった.都心から 30 キロ圏という地理的条件から東京の

ベッドタウンとして宅地化が進行,稲作と野菜栽培を中心とした伝統的生活様式は衰退してい

る.1990 年時点でのふじみ野市の農家人口は 2,844 名であったが, 15 年後の 2005 年では 1,932

名,すなわち 3 分の 1 が消滅している.

(7)

 都心と農村の狭間の中で,伝統的コミュニティが急速に失われ,新興的コミュニティが拡大 する地域事情を抱えているふじみ野周辺地域には,都市近郊の農村環境に代表される地域の自 然,生活様式・文化伝統など,今残しておかねば消えてしまう人と人,自然との共生の姿が残 されている.

 このような状況の中,2007 年 3 月,環境教育研究センターは,ふじみ野市における将来の 都市近郊農業の在り方を議論する「田んぼ.com」を開催し,「農」に関心を持ち,将来何ら かの環境活動に参加したいと考えている 45 名の参加者に対し「地域の抱える問題点」や「あ なたの思うまちづくりとは」などのアンケート調査(複数回答方式)を実施した.その結果,

参加者の半数が「地域交流の希薄化」を,次いで 20.0% が「自然環境の悪化」「伝統文化の消失」

を地域問題と捉えていること,また,60.0% が「地域交流のあるまち」,20.0% が「自然環境 の残るまち」を望んでいる姿が理解された.

 また,2007 年 4 月には,地元ふじみ野市で有機肥料・無農薬の稲作をはじめ 4 年目となる 地域活動団体「エコ田んぼビオトープ NORA(以下 NORA)」の会員 40 名に対し,「活動に参 加する目的」,ならびに,「NORA の将来展望」についてアンケート調査(複数回答方式)を 実施した.アンケート調査の結果,「地域住民の交流」,「地域の自然環境保全」,「米作りへの 興味」を目的に入会した会員が半数以上と多く,次いで「土とのふれあい」(40.0%)「健康活 動の一環」(15.0%)と続いた.また,「将来展望」については約 72.5% の会員が「世代を超え た地域交流をさらに深めていきたい」という意識を持っている結果が得られた.

 以上より考察するに,「食農教育」を地域コミュニティの再生という視点から地域ぐるみの 取組みと位置づけることで,子どもから大人まで,世代を越えた人々がつながり協働する,地 域循環型の教育体制を構築することが可能となり,自然豊かな地域づくりが展開されることが 期待されるとの結論に至った.

 都市と農村の共生,地産地消の推進,生物多様性の確保,地域住民との交流によるコミュニ ティの形成などに果す「食農教育」の推進を目的に,環境教育研究センターでは,「文京・食 農教育ファーム」活動を幼稚園児を対象に展開してきた.文京・食農教育ファームは,“消費 者が生産者に”を合言葉に,食や農に対する地域住民の理解が一層深まることをも目的とした

“教育農場”である.

 地域,行政,教育機関そして大学等が連携した一連の食農教育プログラムを,年間を通じて

複数回にわたり体験学習することにより,子どもたちに食や生命の大切さを学んで欲しいとい

う願いの他に,将来的には,対象を幼稚園から小中学校,高校にまで拡大し,幼稚園,保育園

から大学までもが共同体制を敷き,食農教育ファームで食農教育を受けた中学生や高校生が幼

稚園児や保護者に教育成果を還元する,あるいは地域住民のもつ豊かな知恵が子どもたちに受

け継がれていく,という循環型の教育に展開していきたいと考えている.

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「文京・食農教育ファーム」実践活動の試みと参加園児への影響(中山智晴・西方浩一)

図-2 循環型の食農教育の展開

 環境教育研究センターでは,上記理念の下,2007 度から文京学院大学ふじみ野幼稚園と連 携し,年長組園児を対象とした食農教育の展開を始めている.幼稚園側からは,毎年 100 名程 度の園児と担任教員,並びに園長が参加している.受け入れ側は,NORA,当大学の教員,学 生である.地元農家から無償で提供されている農地(1000 ㎡)を活用し,年間を通じた食農 教育を協働で展開している.

 NORA は有機肥料,無農薬の稲作により,生き物の豊かな田んぼ作りを目指している.冬 も田んぼに水を張る冬期湛水を実施している.現在では,カモなどの渡り鳥の休息場所として や,イタチやタヌキの餌場となっている.春にはカエルやドジョウ,ホウネンエビなど多くの 生き物が姿を現す生物多様性に富む田んぼである.

 便宜的,1 年間を下記のように分類し,それぞれの季節に実施した園児に対する食農教育プ ログラムの取組み内容を概説する.

表-1 年間を通じた田んぼを利用した食農教育プログラムの展開

 (1)田んぼ紙芝居の実施

 幼稚園年長組を対象とした食農教育の一環として,お米が出来るまでの一連の活動内容の意 味と,農業を維持する農村の役割(生物多様性の維持,食の安全など)を,紙芝居を通して伝

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春(4月から6月) ・学生による田んぼ紙芝居(お米のできるまで)の実施

・どろんこ遊び(代掻きの実施) ・田植え

夏(7月から9月) ・図書館、福祉施設での展覧会(園児の描いた田植の風景)

・案山子作り、田んぼに設置 ・稲刈り

・前夜祭で田んぼを飾る行灯の装飾用絵の作成 秋(10月から12月) ・福祉施設での高齢者への歌のプレゼント・収穫祭 冬(1月から3月) ・収穫米によるおにぎりづくり

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える田んぼ紙芝居を実施している.実施時期は,農作業の開始に当たる代掻きが始まる前であ る.これから一年を通して関わりをもつ農作業,農作業に関わる人たちとの交流をスムーズに 促す目的もある.

 (2)どろんこ遊び

 素足で土の感触を踏みしめることで,土のもつ温かみ,植物が根を張る土の状態,生物多様 性に富む自然環境を五感を通して感じることを目的として実施している.本来は機械を田んぼ に入れ代掻きとして実施される農作業であるが,機械の代わりに子ども達に思いっきり遊んで もらい土を軟らかくしようという試みである.

 (3)田植え

 園児が軟らかくした田んぼに稲を植える行事,小さな稲が実をつけ穂を垂れる生物の生長を 感じる第一段階での取組みである.丁寧に苗を植えていかねば倒伏してしまう現実,植えた苗 を踏みつければ苗は土の中に沈んでしまう,といった生き物との接し方を学ぶための取組みで ある.

 (4)展覧会開催

 農作業は自分たちだけで成し遂げることはできない.地域の多くの方々の協力を得て田植 えが執り行われたことを理解し,お世話になった方々へ感謝の念を還元する目的で実施され る.NORA の皆様,田んぼと隣合せに位置する老人福祉センタースタッフ,高齢者の方々など,

関係した多くの方々に感謝を込めた田んぼ展覧会を図書館や福祉センターで開催し,地域との 交流を深める活動である.

 (5)稲刈

 園児は,安全を考慮し鎌の代わりにはさみで稲を刈る.園児自らが植えた稲を刈り入れする ことで,自然の恵みを実感し,食の大切さへの理解を深める活動である.刈り取った稲は園児 自らの手により脱穀される.

 (6)収穫祭

 稲刈が終了した田んぼに感謝の意を込め,園児が農作業風景を描いた灯篭を土手に飾り収穫 祭が執り行われる.農作業に参加した地域の方々が一同に参加する一大イベントである.休日 の夕方に開催されるため園児の参加はないが,幼稚園でこの様子を収めたビデオ鑑賞会が行わ れる.

 (7)収穫米によるおにぎりづくり

 食への関心を高めると同時に,周囲にある自然素材(薪となる木の枝など)が生活に役立つ

という意識,自分の力で食べ物を作る楽しさを伝えることを目的としている.

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「文京・食農教育ファーム」実践活動の試みと参加園児への影響(中山智晴・西方浩一)

図-3 年間を通した食農教育ファームでの取組み

4.食農教育体験が参加園児に与える影響(幼稚園教員の立場から)

 上記の取組みのもと,幼稚園児が関わった食農教育としての田んぼ活動は,幼稚園児や園活 動にどのような影響を与えているのかを分析することを目的に,2008 年 10 月,幼稚園教員に 対するインタビュー調査を実施した.

4-1 対象および方法

 対象は,主に田んぼの活動に関わった年長組担任である幼稚園教員 3 名である.インタビュー 手法はグループフォーカスインタビューの手法を参考に実施した.図- 4 に示すインタビュー ガイドに基づき実施し,IC レコーダーにて録音されたデータは逐語録を作成し,質的手法を 用いて分析を行った.カテゴリー生成に当たっては,2 名の研究者により分析を実施し相互に 確認し信頼性を担保した.

図-4 インタビューガイド

【目的】 食農教育としての田んぼ活動が幼稚園児や園活動に及ぼす影響 の理解。

【対象・方法】

 幼稚園教員3名を対象。インタビュー手法はグループフォーカスインタビューの 手法を参考に実施し、質的手法を用いて分析。

【インタビューガイド】

(1)子どもたちにとって文京・食農教育ファームの活動に参加することはどのよ うな経験だったと思いますか?

(2)今回の経験は何か子どもたち自身に影響を及ぼしましたか?

(3)活動に参加してよかったことは何ですか?

(4)活動に参加して大変だったこと、苦労したことはなんですか?

(11)

4-2 インタビュー調査の分析結果

 分析の結果,図- 5 に示す 5 つの《カテゴリー》と 14 の < サブカテゴリー > を得ることが できた.図- 6 にカテゴリーごとの関連図を示す.

図-5 5 つのカテゴリーと 14 のサブカテゴリー

図-6 カテゴリーごとの関連図

 以下に得られたデータよりカテゴリー化した内容を示す.

 (1)《幼稚園教員の田んぼへの思い》

 お米作り(田んぼへのかかわり)は幼稚園教員にとって未経験なものであり,かつ,田んぼ は他の畑作業とは異なり,長期的な関わりを必要とする活動と認識していた.しかし,身近な 食べ物の生育を理解する活動は子どもにとって大切なものと捉え,子どもと一緒にかかわるこ とで教員も新たな経験ができるものと考えた.

< 教員から見た田んぼ >

 教員は農作業の難しさや長期的に関わる苦労を知っており,畑とは異なる活動となると考え ていた.

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「文京・食農教育ファーム」実践活動の試みと参加園児への影響(中山智晴・西方浩一)

< 子どもへのプラスとなるもの >

 1 年を通じて稲の生育を観察できる体験は,園児にとって自分の口に入るものがどのように して作られるのかを理解することにつながり,将来,大きくなってからも良い影響を与える活 動であると考えていた.

 (2)《様々なサポート》

 田んぼで活動をするには他の多くの方々と深い関わりを持つ機会が必要であった.その中で お米づくりを成功させるには様々な人たちのサポートが重要であることを再認識する機会と なった.

< 経験者の存在 >

 田んぼ活動は経験が無いとできないことである.未経験者である教員を後押ししたのは田ん ぼの経験者たち(NORA スタッフ)であり,それが教員の田んぼチャレンジに繋がったと思 われる.

< 親の存在(家庭環境)>

 保護者の存在は活動を継続させる上で大きな影響を持っていた.田んぼでの活動に積極的に 参加させてほしいという肯定的な意見を持つ保護者が多く存在する一方,子どもの洋服や靴な どが汚れてしまうことを心配する保護者も存在していた.

< 近隣福祉施設の存在 >

 園と田んぼが離れているため,荷物の置き場や体洗い場,トイレなどの確保に不安があった が,田んぼの隣にある老人福祉センター「太陽の家」スタッフのサポートがあったおかげで,

すべてを「太陽の家」の施設を借りることで対応ができた.これも成功の一つの要因といえる.

 (3)《子どもたちにとってのお米づくり》

 年間を通したお米作り(田んぼ)との関わりを通じて,通常の生活では考えもつかなかった 予想外の反応や,お米への意識の変化,ひいては食べ物への関わりに変化をもたらした.

< 予想外の行動 >

 当初予想していた子どもたちとの反応とは異なり,泥だらけになることを楽しむことなど,

予想以上に子どもらしさを発揮することになった.

< お米や食べ物への意識の変化 >

 田んぼに関わったことにより,田んぼに多くの生物がいることや食べ物と季節の関わりを理 解した.それによりお米は様々な関わりと時間をかけて成長するものだという意識や知識が芽 生えた.お弁当箱についたご飯粒までももったいないから残さず食べるという気持ちが園児に 生まれ,園内の小さな田んぼに目を向ける姿を生み出した.その姿からもお米への意識の変化 が見えた.

 (4)《幼稚園全体としてのお米づくり活動》

 当初,環境的な制約(園からは歩いていけない田んぼまでの距離)や園活動としてスケジュー

ルに組み込むことの難しさなどを感じていた.子どもたちの活動へお米作りを組み込むため,

(13)

継続したかかわりを持てるように新たな園活動の計画を練ったりしているうちに,教員の気持 ちは不安から期待へと変化していった.

< 活動に必要な要素 >

 活動をスムーズに実施するためには,スケジュールの調整や天候との兼ね合い,田んぼの立 地条件など様々な検討すべき要素が存在していた.

< 新たな活動の展開 >

 事前練習としてのミニ田んぼ作成や案山子作り,サポートを受けた福祉施設への歌のプレゼ ントなど,田んぼとの関わりをスムーズに行えるような新たな活動を企画,展開した.

< 保護者への啓蒙 >

 園の活動として保護者の理解は最大のサポートである.理解を得るための難しさを感じつつ も工夫を凝らした啓蒙活動を実施してきた.

< さらなる期待 >

 一年間の活動を通し,さらに次の展開を考え期待を膨らませていくようになった.

 (5)《様々な副産物》

 年長組のみが参加する活動であったが,気が付けば,その様子を下の学年の子どもが見て期 待を抱くことや,下の学年の保護者たちが期待を示すこととなっていた.また関わった世代の 異なる人たちとの様々な交流が芽生えた.

< 下の学年の期待 >

 園の中で年長さんが活動することは小さい子たちから見て憧れや期待を抱くことがあるが,

それが今回の園内の様子から見えてきた.

< 保護者の期待 >

 関わる保護者も年中行事としての認識を持ち,来年も同様に実施して欲しいという意識を 持っている多くの方々が存在していた.

< 様々な人とのかかわり >

 サポートを受けた地域の人々との関わりや,学生,福祉施設へ通う人々など,通常では関わ りのない人々との交流も生まれた.

 幼稚園児がお米作りに参加することは,当初,難しい課題と考えられていた.しかし,様々 な形で活動をサポートする人や環境の存在により,園児のみならず教員,幼稚園全体のチャレ ンジングな活動になっていった.

 園児にとっては,予想外の反応を示す出来事でもあった.これは,家庭や幼稚園といった既

存の生活空間とは異なる環境がもたらす影響や様々な人とのコミュニケーションが影響してい

ることの現れであると考えている.

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「文京・食農教育ファーム」実践活動の試みと参加園児への影響(中山智晴・西方浩一)

図-7 難しい課題の克服へ向けて(インタビュー調査の考察)

4-3 インタビュー調査結果のまとめ

 当初,幼稚園教員は園児がお米作りに参加することは,難しい課題と考えていた.しかし,

教員たちが率先して田んぼ活動を経験することが,子どもたち自身や子どもと教員が一緒に取 組む活動として,何か良い経験になるという思いや,田んぼ経験者の存在や福祉施設の存在な ど様々なサポート体制,人と人のつながりが後押しし本活動をスタートすることができたと考 えている.また,活動をより価値のあるものにしていけるように,園児のみならず教員,幼稚 園全体が独自に企画を展開,実践するというチャレンジングな活動に成長していったことが分 かる.子どもたちの活動と園全体の活動が相互に関連しあうことと,それらを支える様々なサ ポートの存在があって,初めて「幼稚園児のお米作り」という活動が達成できたものと捉える ことができる.

 本活動は,園児の視点に立てば,食の大切さ,生命の尊さ,人と人のつながりを理解する場 となり,幼稚園教員の立場に立てば,人と人のつながり,地域連携の大切さを再認識する場と なっており,食農教育が目指す本来の目的を大方達成できていると考えている.

図-8 文京・食農教育ファームを支える 3 つの柱 ᩊẲẟᛢ᫆ỉΰ஌

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5.食農教育体験が参加園児に与える影響(保護者の立場から)

5-1 アンケート調査の概要

 食農教育活動に参加することによる園児の意識や行動の変化を把握するために,2009 年 8 月に,文京・食農教育ファームの活動に参加している文京学院大学ふじみ野幼稚園の年長組 99 名の保護者を対象に調査シートを配布し,61 票を回収した(回収率 62%).

 調査項目は,下記項目から構成される.

[保護者自身に関する質問]

① 年代,性別,職業,子どもの性別

② 居住歴,家族構成(子どもの数,両親との同居)

③ 家庭での野菜や果物の栽培経験

④ 食農教育体験への参加意欲

⑤ 子どもが活動に参加することによる気持ちや行動の変化

[家庭における子どもへの質問]

① 活動をきっかけに家庭で話し合われたこと

② 活動に関する印象

③ 活動参加による子どもの変化

④ 活動に参加してよかったこと,問題点

⑤ 子どもに体験させたいその他の活動

⑥ 食農教育体験で得られる事項として特に大切だと思うこと

⑦ 活動への感想や望むこと

5-2 回答者のプロフィール

 表- 2 に,回答者のプロフィールを示す.回答者は全て女性(母親)であり,子どもの性

別は男子 50.8%,女子 49.2% と,ほぼ半数ずつであった.母親の年代は 30 代 78.7%,40 代

21.3% で 100% を占め,その 85.2% は専業主婦である.家族形態は 4 人家族が多く,父母いず

れとも同居していない保護者が全体の 88.5% と非常に多い.すなわち,身近に高齢者と接す る機会が少ない子どもが多いと推察される.

 家庭での野菜等栽培の経験についても質問した.栽培への関心は高く,95.1% の回答者が栽 培を継続する,栽培したいと回答している.また,食農教育体験へ参加する機会があったらど うするか,との質問には, 80.4% が「積極的に参加したいと思う」「出来れば参加したいと思う」

と回答している.一方で,「参加はしない」「わからない」との回答も 19.7% 寄せられている.

 食農教育体験の取組みに関しての全体的な感想を質問した.「とても良い」との評価が

90.2% と非常に高く,「良い」が 9.8% である.取組みに関する否定的な回答は 0% であった.

また,食農教育体験参加後の子どもの変化について質問したところ,60.0% が「あった」と回

(16)

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「文京・食農教育ファーム」実践活動の試みと参加園児への影響(中山智晴・西方浩一)

答し,「なかった」11.7%,「わからない」28.3% を上回っていることがわかった.その具体的 内容を自由記述欄に記入してもらい KJ 法で整理した内容を図- 9, 10 に示す.図中に示すカッ コ内の数値は回答数である.

表-2 回答者のプロフィール

図-9 食農教育体験についての保護者の感想    図-10 食農教育体験による子どもの変化  ᘙ ὼᾁᴾ ׅ ሉ ᎍ ỉἩἿἧỵὊἽᴾ

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 保護者の感想を分析,整理すると,体験できない経験,土を踏む泥んこになるなど自然を肌 で感じる経験,食べ物への感謝の気持ち,食べ物を育てる楽しさ,他者に楽しさを伝える意欲,

といった普段,家庭では実行することの困難な体験を経験させることができて,とても良い取 組みである,といった内容で本活動を評価していることがわかる.

 また,子どもの変化については,今まで気付かなかった周囲の自然(田んぼや草花)に興味 を持つようになった,食べ物の好き嫌いや泥・虫に触る嫌悪感を克服できるようになった,お 米づくりへの興味や食への関心が向上した,という変化を保護者は感じ取っている.

5-3 保護者の気持ちの変化や行動の変化

 子どもが,この食農教育体験活動に参加して,保護者自身が参加前と気持ちや行動に変化が あったかを質問した.その結果を図- 11 に示す.すべての回答者が気持ちや行動に何らかの 変化があったと回答している.子どもたちが活動に参加することにより,4 割以上の保護者が

「食べることや食物への感謝の気持ちがわいた」と感じており,約 3 割が「農業を身近に感じ るようになった」「子どもと食農教育活動に参加してみたくなった」と回答している.実体験 していない保護者でも,子どもからの情報により「農」や「食」への興味,関心が向上してい ることが分かる.

図-11 子どもが食農教育体験活動に参加することによる,

      保護者自身の気持ちや行動の変化(3 つまで回答可)

5-4 食農教育体験をきっかけに家庭で話し合った内容

 食農教育体験をきっかけに家庭で話し合った内容について質問した.図 -12 に示すように,

「お米づくりについて」(62.3%),「お米や食べ物の大切さについて」(57.4%)と半数を超える 家庭で「食」や「農」に関する話し合いがもたれている.また, 「生き物や自然の大切さについて」

(29.5%), 「地域交流の楽しさについて」(19.7%)の話し合いを持つようになった家庭も増加し,

「特に話はなかった」(4.9%)と比較すると,子どもの体験活動への参加を機会に,家庭での 食農教育に関する話題が増えている.

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「文京・食農教育ファーム」実践活動の試みと参加園児への影響(中山智晴・西方浩一)

 話し合われた内容を具体的に自由記述欄に記入してもらい,KJ 法で整理したものが図- 13 である.回答者の家庭においては, 「お米づくりの苦労」 「お米の作り方」 「お米づくりへの興味」

といった米づくりへの直接的な内容のみならず, 「食べ物への感謝」「自然との触れ合い」など,

広い範囲に及ぶ話し合いが行われている.特に,生産者の苦労,苦労して作られる食べ物への 感謝について話し合う家庭が多く,保護者の関心が高い内容であることが分かる.

図-12 食農教育体験をきっかけに家庭で話し合ったこと(複数回答可)

図-13 家庭で話し合われた内容

5 - 5 本活動以外に参加させたい活動

 本活動以外にも,子どもを参加させたいと思う内容について調査した.その結果を図- 14 に示す.「野外体験活動(野外体験を通して生き物に触れたり,観察したり自然と触れ合う」

が 82.0% と評価が高く,次いで「地域環境活動(地域でゴミ拾いをしたり,公園に花を植え

たりする活動)」57.4%,「異世代間交流(昔遊びなどを通して,おじいちゃん,おばあちゃん 世代と交流を深める)」49.2% である.保護者は,第一に,子どもに自然との触れ合いを通し

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(19)

て命の大切さを学んで欲しいという期待があることが推測される.

図- 14 食農教育体験以外にも子どもを参加させたいと思う活動内容(3 つまで回答可)

5-6 食農教育体験で得られる大切な内容

 保護者が,食農教育体験を通して子どもに学んで欲しい,あるいは,学ばせたいと考える内 容について質問した.その結果を図- 15 に示す.特に 2 つの項目,「自然の恩恵等への感謝,

環境との調和(命の大切さ,もったいない精神)」(70.5%),「生産者への感謝(農業の大切さ,

大変さの実感と感謝)」(65.6%)の評価が高い.

 「食を通じたコミュニケーション(食卓を囲む家族の団らん,食の楽しさの実感,地域交流)」

(37.7%),「食に対する基本所作(正しい食事マナー,食前食後の挨拶習慣)」(13.1%),「地域 の世代間交流の楽しさ(米づくりを通しての地域交流)」(9.8%)という結果であり,家族内,

地域内でのマナー,交流といった内容以上に, 「命の大切さ」 「感謝の念」 「食や農の大切さ」といっ た内容を重視している傾向がうかがえる.

 「食生活・栄養のバランスへの関心(栄養のバランスに関する意識の向上)」には 31.1% の 保護者が関心を寄せているが,これは先に述べた東京都福祉保健局が実施した「幼児期からの 健康習慣調査報告書」において発表された,朝食に「主食(ご飯・パンなど)」「主菜(卵・魚 など)」「副菜(野菜など)」を組み合わせて食べている割合 24.3% と近い数値を示すことから,

栄養バランスへの関心を持つ保護者の家庭では,バランスの取れた食事が提供されていると考 えることができる.

 また, 「食文化への関心(郷土料理,行事食など,食文化,伝統に関する意識の向上)」(6.6%),

「食品の安全性への関心(食品の安全性に関する意識)」(13.1%),「食生活リズムへの関心(健 全な生活リズムへの意識の向上)」(6.6%)への評価は相対的に低く,「伝統」「安全性」「生活 リズム」といった生活スタイルに関する内容に関して,保護者は幼稚園児に対して現段階では 最も重視する内容ではないと考えていることが分かる.

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「文京・食農教育ファーム」実践活動の試みと参加園児への影響(中山智晴・西方浩一)

図-15 食農教育体験で得られる大切な内容について

5-7 食農教育体験への保護者の期待

 すべての保護者が,本活動を家庭では実行することのできない貴重な体験として捉え評価し ている.また,子どもに対しては,田畑への興味,嫌いな食べ物や泥んこ遊びなど,苦手な行 為にチャレンジする心,お米づくりへの興味や食への関心が芽生えたと感じ取っている.

 食農教育体験をきっかけに,家庭内で米づくりや食べ物の大切さ,生き物や自然の大切さ,

地域交流の楽しさなどについて積極的に話し合う家庭が増加し,その結果として,保護者自身 の気持ちや行動の変化,具体的には 4 割以上の保護者が,食べることや食べ物への感謝の気持 ちがわいたと感じており,3 割が,農業を身近に感じるようになったり,子どもと一緒に食農 教育活動の参加してみたいと考えるようになっている.

 保護者は食農教育の役割を,食育推進基本計画の 7 つの方針に記されている「伝統的な食育 文化への配慮」「食料自給率の向上への貢献」や「食の安全性の確保」を学ばせる場として捉 えているというよりは,「命の大切さ」「食べ物への感謝」「食や農の大切さ」を学ばせる良い 機会であると捉えていることが分かる.

6.本活動の課題と今後の展開

 本活動の課題と今後の展開について考察を行いまとめとする.図- 16 は,保護者に対し「子 どもが食農教育体験に参加してよかったこと,問題点」についてアンケート調査した結果を KJ 法で整理したものである.問題点に関しては直接指摘する声はなかったが,食農教育活動 へ望むこととして,「親子参加への可能性の模索」「田んぼ活動に割く時間・質の充実」「地域 清掃活動など田んぼ活動のさらなる発展」を望む声が一部から寄せられている.

 体験に参加することで,「農」「食べ物,自然への関心」そして「人と人のつながり」に関す る子どもの意識が向上したと評価する保護者が多く,食農教育が目指す目的に対しては評価さ

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参照

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