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高齢者に対する医療福祉

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高齢者に対する医療福祉

著者 小川 憲人

雑誌名 金沢大学文化人類学研究室調査実習報告書

巻 29

ページ 61‑77

発行年 2014‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/2297/40133

(2)

60

てきた女性たちが、その能力をふるうことのできる場として、長生会という組織が選ばれている のではないだろうか。長生会での催しは、趣向が凝らされ向上心に溢れた企画が多い。これも女 性たちの配慮によるものが大きいのではないか。現在会員減少に頭を悩ます長生会だが、その魅 力的な活動が周知されるようになれば、女性たちの支持を得て、ある程度の改善は十分可能であ るように感じた。

以上をふまえ、改めて蛸島における女性のあり方を考える。女性たちは家庭・社会のさまざま な人間関係のなかで、辛抱しながらもいきいきと暮らし、家庭を守り抜いてきた。自身の職にも 誇りをもち、娯楽にも興じるなど充実した暮らしを営んでいるように思われる。さらにその人生 で培った経験を長生会という組織で活かし、年を重ねてもなお輝く女性たちもいる。彼女たちは 漁師町に生まれ、また嫁いで、多くの日々を経てきた女性たちだからこそ、こうも頼もしく朗ら かなのだろう。このような女性像は漁師町・蛸島の特徴のひとつであるように思う。

6.おわりに

漁村・漁師町での暮らしというのは、馴染みがなく知らないことばかりです。当然そこに生き る方々のことも想像できず、調査期間中は毎日が新たな出会いに満ちていました。そのように無 知な私に対し、優しく、温かく接してくださった蛸島の皆さんに、心から感謝申し上げます。ま た調査の内容に限らず、人生のこと、世間のことなど、いろいろなお話ができたこともよい思い 出となりました。蛸島という地で過ごした1週間を胸に、今後も精進して参りたいと思います。

私たちの実習調査に快くご協力いただき、本当にありがとうございました。

1最低賃金法に基づき、国が賃金の最低限度を定め、使用者はその最低賃金額以上の賃金を支払わなければな らないという制度のこと。船員の最低賃金の場合、労働環境などの海上労働の特殊性を考慮し陸上労働者の 最低賃金とは別に定められている(『国土交通省 北陸信越運輸局webページ』を参照)。

2珪藻土:珪藻の遺骸から成る堆積物。主成分は二酸化珪素水化物で、白色・灰白色・黄色など。多孔質で吸 水性に富み、軽くてもろい。海底のほかに、湖沼または温泉・溜池にも生する。磨き粉・耐火材・吸収剤や ダイナマイト製造などに使用(『広辞苑 第五版』)。能登半島の珪藻土は泥岩を多く含むため、焼き固める ことが可能である(河野 2011:56)。

3煉瓦:粘土に砂をまぜてねり固めた、一定の大きさの建築材料。ふつうは型に入れて窯で焼いたもの。壁・

舗装・窯など用途は広汎。普通煉瓦(赤煉瓦)・舗装煉瓦・耐火煉瓦・空洞煉瓦・アドベなどがある(『広辞 苑 第五版』)。

4既製服:日本では第2次世界大戦後急速に発達し品質も向上、背広服、学生服、作業服にはJIS規格が定め られ、婦人服も色、柄、サイズとも豊富になった(『百科事典 マイペディア』より一部抜粋)。

61

6 .高齢者に対する医療福祉

小 川 憲 人

1.はじめに

2.医療サービス提供について 3.高齢者を支援する活動 4.まとめ・考察

1.はじめに

日本は高齢社会となってから久しい。その現状は、健康寿命・平均寿命は共に第一位をとり続け て来たほどの高水準であり、乳幼児死亡率は世界最低である。これは日本が世界最高峰の医療水 準を保ってきたことの一つの表れであるが、その日本の医療サービスは人口転換に伴い、高齢化 率の順位が先進国諸国内において上昇し始めた1990年代から転換を求められてきた。2000年代も 後半になると世界中でも類を見ない高齢化率となり、大型の媒体では、医療サービスの質の低下、

社会保障費による財政逼迫を懸念した「医療崩壊」が叫ばれない日はない状態となっている。医 療に関する問題としては、たらいまわし・ドラッグラグ1)・ワクチン・医師不足・介護問題など様々 にあるが、この中で、地方と都会の医療サービスの地域格差が議題にあがることも少なくない。

「地方では若者が都会へ移動し、過疎化が激しく、高齢化が都会に比べると顕著である。」と一般 的には言われている。高齢化は多くの弊害をもたらすことはよく知られており、今後はいままでよ りも少数の生産年齢2)の人口が、多数の非生産年齢の人口を支えねばならない。具体的に言えば、

全国平均で、1965年当時は非生産年齢の1人を生産年齢の約9人が支えていたが、2012年現在で は、1人を約2.7人が支えている。生産年齢人口にこれまでより多大な負担がかかってくるのは自 明であるが、では、能登地方・蛸島町では実際には現在どうなのだろう。また、生産年齢人口の減 少に伴った、生活の質の低下は現状どれほどのものであろうか。

今回はその中でも石川県北部珠洲市の蛸島町を対象とし、高齢者が安心して暮らしていくこと を目的とした支援の現状や、充実感などの生活の質を上げることを目的とした営みなどを文化人 類学・社会医学の観点を用いて述べていくこととした。

(3)

62 2.医療サービス提供について

行政は病院が国民の分布に従い、中大規模型の病院や福祉施設を様々な方法で管理している。し たがって、国民の分布に関して正しいデータに基づき判断される必要性がある。それは様々な統計 データとなるがその詳細をまず知る必要がある。

そのデータの中で、国民に一番近いのは二次医療圏3)である。ゆえに、その統計データをまず把握 したい。公開されている情報でも、人口分布、人口動態、医療従事者数、病院数、福祉施設数など が詳細に手に入れることができる。膨大なデータ量だが、今回は特に医療福祉に関して、である ので、人口関連、医療施設、福祉施設に限定して分析・考察をする。

2.1 人口関連~高齢化比較~(全国・能登北部・蛸島町)

まず人口に関するデータであるが、石川県では、二次医療圏は、南加賀(小松)・石川中央(金 沢)・能登中部(七尾)・能登北部(輪島)の4地域に分かれている。前者二つは地方都市型、後 者二つは過疎地域型と分類されている。今回本調査にうかがわせていただいたのは、珠洲市蛸島 町。所属する二次医療圏は「能登北部」という区分である。この区分には輪島市、珠洲市、穴水町、

能登町の全域が入っている。また、住民票から、特に蛸島14区域に関して統計的なデータを手に入 れることができた。その二つのデータと全国とを比較すると、下記の図・グラフのようになる。

1 人口・高齢化の現状比較

全国 能登北部 蛸島14区域 総数(万人) 総数(人) 総数(人)

総人口 12780 75458 1195

高齢者人口(65歳以上) 2975 29669 504

65~74歳人口(前期高齢者) 1504 12354 206

75歳以上人口(後期高齢者) 1471 17315 298

生産年齢人口(15~64歳) 8134 38738 600

年少人口(0~14歳) 1671 6977 91

構成比 % % %

総人口 100 100 100

高齢者人口(高齢化率) 23.3 39.3 42.2

65~74歳人口 11.8 16.3 17.2

75歳以上人口 11.5 22.9 24.9

生産年齢人口 63.6 51.3 50.2

年少人口 13.1 9.24 7.6

(出所:平成24年度版高齢社会白書[内閣府HP]、二次医療圏データベースWELLNESS、蛸島町住民票より)

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62 2.医療サービス提供について

行政は病院が国民の分布に従い、中大規模型の病院や福祉施設を様々な方法で管理している。し たがって、国民の分布に関して正しいデータに基づき判断される必要性がある。それは様々な統計 データとなるがその詳細をまず知る必要がある。

そのデータの中で、国民に一番近いのは二次医療圏3)である。ゆえに、その統計データをまず把握 したい。公開されている情報でも、人口分布、人口動態、医療従事者数、病院数、福祉施設数など が詳細に手に入れることができる。膨大なデータ量だが、今回は特に医療福祉に関して、である ので、人口関連、医療施設、福祉施設に限定して分析・考察をする。

2.1 人口関連~高齢化比較~(全国・能登北部・蛸島町)

まず人口に関するデータであるが、石川県では、二次医療圏は、南加賀(小松)・石川中央(金 沢)・能登中部(七尾)・能登北部(輪島)の4地域に分かれている。前者二つは地方都市型、後 者二つは過疎地域型と分類されている。今回本調査にうかがわせていただいたのは、珠洲市蛸島 町。所属する二次医療圏は「能登北部」という区分である。この区分には輪島市、珠洲市、穴水町、

能登町の全域が入っている。また、住民票から、特に蛸島14区域に関して統計的なデータを手に入 れることができた。その二つのデータと全国とを比較すると、下記の図・グラフのようになる。

1 人口・高齢化の現状比較

全国 能登北部 蛸島14区域 総数(万人) 総数(人) 総数(人)

総人口 12780 75458 1195

高齢者人口(65歳以上) 2975 29669 504

65~74歳人口(前期高齢者) 1504 12354 206

75歳以上人口(後期高齢者) 1471 17315 298

生産年齢人口(15~64歳) 8134 38738 600

年少人口(0~14歳) 1671 6977 91

構成比 % % %

総人口 100 100 100

高齢者人口(高齢化率) 23.3 39.3 42.2

65~74歳人口 11.8 16.3 17.2

75歳以上人口 11.5 22.9 24.9

生産年齢人口 63.6 51.3 50.2

年少人口 13.1 9.24 7.6

(出所:平成24年度版高齢社会白書[内閣府HP]、二次医療圏データベースWELLNESS、蛸島町住民票より)

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(出所:平成24年度版高齢社会白書[内閣府HP]、二次医療圏データベースWELLNESS、蛸島町住民票より)

さて、人口学では「人口転換」として知られているが、経済発展のまだ進んでいない国では「多 産多死」から、保健、医療、公衆衛生の発達に従い、「多産少死」、教育投資の重視、晩婚非婚の 増加から子供の数が減り、また、平均寿命の伸びから「少産少死」社会となっていくのが、現在 世界中で見られている現象である。中でも日本は、先進諸国の高齢化率を比較してみると、1980 年代までは下位、90 年代にはほぼ中位であったが、2005年には最も高い水準となり、世界のどの 国もこれまで経験したことのない高齢社会を迎えている。日本は先進国の中でも特に高齢化が激 しいが、それは先ほど述べたとおり、都市部よりも地方でさらに顕著であると言われてきた。本 当にそうなのだろうか。

この真偽は上記の表で一目瞭然である。確かに、都会化されていない地方に行くほど、高齢化率 が高くなっている。原因として、研究者に広く受け入れられているのは、平均寿命の延伸による 65 歳以上人口の増加、少子化の進行による若年人口の減少、そして、比較的若い世代の都市部への 流出(いわゆる過疎化)の三つである。これらは後述するが、住人の実感を聞き取り調査すると、

能登北部でも例外ではないようである。

前ページ図表より判断できるのは、全国に比べ、年少人口の割合が少なく、高齢者の割合、特 に後期高齢者の割合が非常に高いということである。能登北部・蛸島町では非生産年齢の1人を 生産年齢の約1人が支えているし、高齢者の割合は40%を超える勢いである。これは政府の予測 統計で2055年に日本全体が陥る高齢社会の縮図といえる。能登北部の医者の中にも、「タイムマシ ンに乗らずとも40年後の未来の医療が見える」ということを話す人もいるが、データ上から判断す

全 国 能 登 北 部 蛸 島1 4区 域

13.1 9.24 7.6

63.6 51.3 50.2

11.8 16.3 17.2

11.5 22.9 24.9

2 人 口 構 成 比 比 較

年少人口 生産年齢人口

65~74歳人口 75歳以上人口

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ると誇張ではない。また、「都会と地方」という格差だけではなく、地方内でも「地方都市と零細 地域」といった格差もみることができている。都会に比し、地方に行くほど、年少人口の割合の減 少が激しい(表1,表2)。

続いて人口の次は、世帯の把握に入る。文化人類学では、世帯での把握も重視している。

次の円グラフをみると直感的に分かりやすい。

世帯構成の把握として、65歳以上の高齢者が居る世帯で、単身もしくは夫婦のみの世帯の割合に 注目する。これは高齢者でも社会的に孤立している状態に居る人々は、文化的・社会的に問題があ る状態に陥りやすいとされているからである。例示するなら、生きがいや張り合いを感じにくい、

100世帯 22%

85世帯 19%

261世帯 59%

3 蛸島14区域世帯別65歳以上人口統計

単身 夫婦

子または他の親族ないし非親族と 同居

4631世帯 16%

10670世帯 37%

13615世帯 47%

4 全国世帯別65歳以上人口統計

単身 夫婦

子または他の親族ないし非親族と同 居

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ると誇張ではない。また、「都会と地方」という格差だけではなく、地方内でも「地方都市と零細 地域」といった格差もみることができている。都会に比し、地方に行くほど、年少人口の割合の減 少が激しい(表1,表2)。

続いて人口の次は、世帯の把握に入る。文化人類学では、世帯での把握も重視している。

次の円グラフをみると直感的に分かりやすい。

世帯構成の把握として、65歳以上の高齢者が居る世帯で、単身もしくは夫婦のみの世帯の割合に 注目する。これは高齢者でも社会的に孤立している状態に居る人々は、文化的・社会的に問題があ る状態に陥りやすいとされているからである。例示するなら、生きがいや張り合いを感じにくい、

100世帯 22%

85世帯 19%

261世帯 59%

3 蛸島14区域世帯別65歳以上人口統計

単身 夫婦

子または他の親族ないし非親族と 同居

4631世帯 16%

10670世帯 37%

13615世帯 47%

4 全国世帯別65歳以上人口統計

単身 夫婦

子または他の親族ないし非親族と同 居

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孤立死や高齢者による犯罪の増加、高齢者を対象とした悪質商法の蔓延といった問題があげられ る。

厚生労働省のHP と同様に「社会的な孤立」を「家族や地域社会との交流が、客観的にみて著 しく乏しい状態」と定義するならば、先ほど述べた、「65歳以上の高齢者が居る世帯で、単身もしく は夫婦のみの世帯」はそのような状態になりやすい。地域的な活動に身体的・精神的理由から、家族 や地域とのつながりを持てなかった場合、単身世帯は、同居家族がいないので、孤立してしまう。

また、高齢夫婦世帯は、夫婦がそろって健康でいる間はよいが、どちらかが亡くなったあと、子 どもと同居しなければ単身世帯となる可能性が高い。さらに、介護の面で言えば、それが必要とな ったとき、ヘルパーや介護施設など、有料の施設利用の必要性が生じてしまう。このような家庭は 蛸島区域では全国と比較して多いのだろうか。

上記グラフをみると、過疎が進み、若者が少ないとされている地方であっても、リスクの高い世 帯の割合は、全国よりも実は低い。しかしながら、単身の世帯が少し多いという結果になった。これ は昨年度の珠洲市若山町での調査結果と類似しており(金沢大学文化人類学研究室編 2013)、こ れが地方の典型なのかは分からないが、珠洲市ではおおむね全国に比して高リスクな世帯は割合 で少ないということが言えそうである(表3、表4)。

調査にて聞かれた声・壱:少子高齢化

ここで、聞き取り調査にて、高齢者の暮らしで、実際に聞かれたことをまとめた。

Aさん(東貝蔵、男性、60歳代)

東貝蔵は比較的若者が多い町であるが、それでも少子高齢化は進んでいる。自分の所属してい る班は10軒前後の家で構成されているがうち4軒は高齢者の一人暮らし。住んでいた若者が金沢 などに家を買って戻ってこなくなるため、空き家が増えているのもよく見る。これらの人々は時々 墓参りなどで戻ってきて掃除をしていくが、泊っていくこともない。

Bさん(島の地、男性、60歳代)

現在、島の地に空き家は5軒ある。亡くなったり、病院に行ったり、移住したりで住人が居なく なった。近所の人が買い取ったり、更地にして家を建て直したりすることもある。

Cさん(西脇、男性、70歳代)

蛸島には多くの空き家がある。外から来た人がその家を借りたいと申し出ることもあるらしい が、ほとんどの家は一年に一度ほど帰ってくるので、そのために貸すことができない。というこ

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とで、普段は空き家であるが、それを減らすこともできない家庭が多い。

また、蛸島出身の高校卒業生は一割程度しか地元に残らない。残った人の就職先は、役所、市内 企業、自営業(主に漁師)である。女性はほとんど嫁いだら帰ってくることがない。

Dさん(東仲町、男性、60歳代)

東仲町には28軒あるが、そのうち5軒は老人の一人暮らしである。冬場には出稼ぎにでている 家族が金沢に連れて行くなどで空き家になることも多い。少子高齢化のせいで、(児童の利用する)

バスの本数の減少、学校施設の減少、子供会の廃止、キリコの太鼓担い手の不足(太鼓は子供が 担っていた)という事態が起こっている。

Eさん(西脇、男性、60歳代)

「蛸島小便り」は約20年前から作っていて、子供が居る家庭に限らず蛸島の全家庭に配っている が、子供が少なくなってきたので、(制作費が足らず)年間500円を今では全家庭が小学校に払っ ている。

Fさん(中脇、男性、60歳代)

かつて蛸島中学校があった場所は、今は野球場になっている。昭和40年前後に廃校となり、川 尻町にある緑丘中学校に合併された。蛸島小学校に今年(2013)入学したのは6人である。

Gさん(栄町、女性、70歳代)

蛸島小学校は今一年生が6人で、全体で40人くらいの規模だが、昔は一学年100人はいた。隣 の正院小学校との合併の話も出ている。

では、次にその人口を支える医療施設・福祉施設のデータを示す。

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とで、普段は空き家であるが、それを減らすこともできない家庭が多い。

また、蛸島出身の高校卒業生は一割程度しか地元に残らない。残った人の就職先は、役所、市内 企業、自営業(主に漁師)である。女性はほとんど嫁いだら帰ってくることがない。

Dさん(東仲町、男性、60歳代)

東仲町には28軒あるが、そのうち5軒は老人の一人暮らしである。冬場には出稼ぎにでている 家族が金沢に連れて行くなどで空き家になることも多い。少子高齢化のせいで、(児童の利用する)

バスの本数の減少、学校施設の減少、子供会の廃止、キリコの太鼓担い手の不足(太鼓は子供が 担っていた)という事態が起こっている。

Eさん(西脇、男性、60歳代)

「蛸島小便り」は約20年前から作っていて、子供が居る家庭に限らず蛸島の全家庭に配っている が、子供が少なくなってきたので、(制作費が足らず)年間500円を今では全家庭が小学校に払っ ている。

Fさん(中脇、男性、60歳代)

かつて蛸島中学校があった場所は、今は野球場になっている。昭和40年前後に廃校となり、川 尻町にある緑丘中学校に合併された。蛸島小学校に今年(2013)入学したのは6人である。

Gさん(栄町、女性、70歳代)

蛸島小学校は今一年生が6人で、全体で40人くらいの規模だが、昔は一学年100人はいた。隣 の正院小学校との合併の話も出ている。

では、次にその人口を支える医療施設・福祉施設のデータを示す。

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5 全国と能登北部の比較(医療施設)

全国 能登北部 全国 能登北部

補正方法 1万人口あたり ㏊面積あたり

病院数 0.67 0.66 2.31 0.44

病院 病床数

病床数 122.72 105.75 421.42 70.62

一般病床数 69.99 69.71 240.35 46.55 療養病床数 25.37 34.59 87.11 23.10 精神病床数 26.51 0.00 91.03 0.00 結核病床数 0.55 0.93 1.88 0.62 回復期病床数 5.13 0.00 17.61 0.00 感染病床数 0.30 0.53 1.05 0.35 病院

従事者数

病院勤務医数 15.58 10.38 53.50 6.93 総看護師数 67.03 58.30 230.17 38.93 理学療法士 4.05 1.99 13.89 1.33 作業療法士 2.58 1.33 8.85 0.88 言語聴覚士 0.83 0.53 2.86 0.35 診療所病床数 9.84 3.58 33.80 2.39 診療所

従事者数

診療所医師数 9.51 6.56 32.65 4.38 総看護師数 14.11 12.97 48.47 8.66

分娩総数 82.93 42.94 284.80 28.67

分娩(病院) 44.21 42.94 151.83 28.67 分娩(診療所) 38.72 0.00 132.97 0.00

(出所:二次医療圏データベースWELLNESSより)

(出所:二次医療圏データベースWELLNESSより)

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(出所:二次医療圏データベースWELLNESSより)

まず、医療施設について述べる。病院数に関しては人口あたりの比較ではほとんど差異はないが、

面積あたりに換算するとおおよそ5:1と、大きな格差があり、アクセスの面で問題があることが 懸念される。病院病床数に関しては総病床数での差異が見られるが、これは精神病床が存在しな いことに起因するもので、それを除いて考えると人口あたりの病床数は全国平均を上回る。特に 療養病床(症状は安定しているが長期の療養が必要とされる、主に高齢者など慢性疾患の患者の ために、管理、看護、医学的管理下での介護や機能回復訓練などの医療を行う施設。医師や看護 師の配置は少なくてよいが、介護職員を手厚く配置する必要がある。)に関しては、全国平均を大 きく上回っている。高齢者の割合が多く、必然的に慢性疾患の患者が多く、比較的医療的ケアが 必要と言うよりは、慢性期ケアの重要な患者の多いこの地方では、望ましい割合と思われる。

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(出所:二次医療圏データベースWELLNESSより)

まず、医療施設について述べる。病院数に関しては人口あたりの比較ではほとんど差異はないが、

面積あたりに換算するとおおよそ5:1と、大きな格差があり、アクセスの面で問題があることが 懸念される。病院病床数に関しては総病床数での差異が見られるが、これは精神病床が存在しな いことに起因するもので、それを除いて考えると人口あたりの病床数は全国平均を上回る。特に 療養病床(症状は安定しているが長期の療養が必要とされる、主に高齢者など慢性疾患の患者の ために、管理、看護、医学的管理下での介護や機能回復訓練などの医療を行う施設。医師や看護 師の配置は少なくてよいが、介護職員を手厚く配置する必要がある。)に関しては、全国平均を大 きく上回っている。高齢者の割合が多く、必然的に慢性疾患の患者が多く、比較的医療的ケアが 必要と言うよりは、慢性期ケアの重要な患者の多いこの地方では、望ましい割合と思われる。

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(出所:二次医療圏データベースWELLNESSより)

人的資源については、病院従事者数をみると、人口あたり全国平均に比べて医師は約3分の2、 看護師は87%ほどで、リハビリテーションの担い役である理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 に関しては約半数と少なくなっている。これは診療所でも同様で、医療従事者は総じて少ない。

分娩に関しては出産できる診療所が、能登北部には一件も存在しないため、ゼロという環境が 見られた。

10.全国と能登北部の比較(福祉施設)

全国 能登北部 全国 能登北部

補正方法 1万人口あたり ㏊面積あたり

老人保健施設収容数 27.37 53.41 94.00 35.66 特別養護老人ホーム収容数 39.16 114.63 134.48 76.55 介護療養型医療施設 6.62 20.14 22.72 13.45 高齢者

住宅数

有料老人ホーム計 24.45 21.20 83.97 14.16 グループホーム 13.36 38.03 45.86 25.40 高齢者住宅計 6.90 0.00 23.71 0.00

その他計 14.62 43.47 50.21 29.03

(出所:二次医療圏データベースWELLNESSより)

0.00  10.00  20.00  30.00  40.00  50.00  60.00  70.00 

病院勤務医数 総看護師数(病院)

表 8. 病院従事者数比較 1

全国 能登北部

0.00  0.50  1.00  1.50  2.00  2.50  3.00  3.50  4.00  4.50 

理学療法士 作業療法士 言語聴覚士

表 9. 病院従事者比較 2

全国 能登北部

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(出所:二次医療圏データベースWELLNESSより)

高齢者の介護などに関して、高齢化が著しいからか、特別養護老人ホーム4)の収容数・介護療 養型医療施設5)は3倍近く存在している。また、高齢者住宅数ではグループホーム6)が非常に多 い。ただ、面積あたりでは全国平均よりだいぶ数値が小さく、自宅から通うデイサービスなどの システムは全国に比べてアクセスが難しいことが考えられる。

調査にて聞かれた声・弐:医療福祉施設の現状

医療施設・福祉施設に関しては、実際に住んでいる人間からの聞き取り調査で、利用している施 設の詳細が分かる。ここでは、蛸島町の住民がどのようなアクセスをしているか、記す。能登北部の 介護施設に関しては、下に公的データを表としてまとめた。

Hさん(中脇、男性、60歳代)

蛸島町には個人医院は存在しない。昔は一つだけ個人医院があったが、高齢で引退され、その場 所は今、製鉄所になった。正院地区まで行けば、個人医院があるが、もう少し行けば珠洲市総合病院 があるので、そちらにはじめから行ってしまうことが多い。

Iさん(諏訪、男性、60歳代)

困ったときは正院の個人医院か珠洲市総合病院にかかる。整形外科の時は飯田の個人クリニッ クまで行くこともある。父親が存命中には、小泊の介護老人保健施設の美笑苑に通わせていた。諏

0 20 40 60 80 100 120 140

老人保健施設収容数 特別養護老人ホーム収容数 介護療養型医療施設

表 11. 人口あたり介護施設関連データ

全国 能登北部

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(出所:二次医療圏データベースWELLNESSより)

高齢者の介護などに関して、高齢化が著しいからか、特別養護老人ホーム4)の収容数・介護療 養型医療施設5)は3倍近く存在している。また、高齢者住宅数ではグループホーム6)が非常に多 い。ただ、面積あたりでは全国平均よりだいぶ数値が小さく、自宅から通うデイサービスなどの システムは全国に比べてアクセスが難しいことが考えられる。

調査にて聞かれた声・弐:医療福祉施設の現状

医療施設・福祉施設に関しては、実際に住んでいる人間からの聞き取り調査で、利用している施 設の詳細が分かる。ここでは、蛸島町の住民がどのようなアクセスをしているか、記す。能登北部の 介護施設に関しては、下に公的データを表としてまとめた。

Hさん(中脇、男性、60歳代)

蛸島町には個人医院は存在しない。昔は一つだけ個人医院があったが、高齢で引退され、その場 所は今、製鉄所になった。正院地区まで行けば、個人医院があるが、もう少し行けば珠洲市総合病院 があるので、そちらにはじめから行ってしまうことが多い。

Iさん(諏訪、男性、60歳代)

困ったときは正院の個人医院か珠洲市総合病院にかかる。整形外科の時は飯田の個人クリニッ クまで行くこともある。父親が存命中には、小泊の介護老人保健施設の美笑苑に通わせていた。諏

0 20 40 60 80 100 120 140

老人保健施設収容数 特別養護老人ホーム収容数 介護療養型医療施設

表 11. 人口あたり介護施設関連データ

全国 能登北部

71

訪町にはデイサービスに行っている人は現在おらず、認知症の重い方は金沢の加療施設に引っ越 し療養していると聞く。

Jさん(本仲町、男性、70歳代)

老人ホームは近隣にもあるが、待機者も多いと聞くし、時・人によってどちらに行くかは定まっ ていない。他の遠くに行く場合もある。デイサービスは本仲町では二人行っており、蛸島の住人は ほとんどがみさきデイサービスセンターに通っている。病院は小さな問題は正院の個人医院、大き な問題や検査は珠洲市総合病院、もしくは能登総合病院に行っている。

Kさん(本仲町、男性、70歳代)

三崎にはデイサービスセンターと老人ホームの美笑苑がある。特別養護老人ホームは宇出津・布 浦ノにある。グループホームは折戸にある。蛸島の人はそれぞれ行っているが、多くの施設が定員 いっぱいであり、遠く七尾金沢まで施設に入っている人も多く聞き、ばらばらになってしまってい る。

12 能登北部医療圏の特別養護老人ホーム一覧 (計収容数 717) 特別養護老人ホーム あての木園 石川県輪島市三井町小泉上野2 105 ユニット型特別養護老人ホーム みやび 石川県輪島市町野町寺地1027 60 特別養護老人ホームゆきわりそう 石川県輪島市門前町深田22-42 80 特別養護老人ホーム あかかみ 石川県輪島市門前町赤神10-1 85 特別養護老人ホーム 長寿園 石川県珠洲市宝立町春日野4字117 100 能登穴水聖頌園 石川県鳳珠郡穴水町岩車6字27-2 84 介護老人福祉施設 こすもす 石川県鳳珠郡能登町五郎左エ門分藤17 50 特別養護老人ホーム 石川県鳳寿荘 石川県鳳珠郡能登町藤波井字48-2 103 特別養護老人ホーム 第二長寿園 石川県鳳珠郡能登町布浦ノ字10-3 50

(出所:二次医療圏データベースWELLNESSより)

13能登北部医療圏の老人保健施設一覧 (計収容数 260) 老人保健施設 百寿苑 石川県輪島市気勝平町1-28 104 介護老人保健施設 美笑苑 石川県珠洲市三崎町小泊ト部3-1 100 老人保健施設 あゆみの里 石川県鳳珠郡穴水町字川島タ-38 56

(出所:二次医療圏データベースWELLNESSより)

(13)

72 3.高齢者を支援する活動

人は多くが長生きしたいと願うが、全ての人間は死を必ず迎えるわけで、また生きている以上、

老いを避けることはできない。しかし健康に長生きすることはある程度可能で、直感的にも以前に 比べるとかなりの改善も期待できるようになってきた。それには本人の努力も勿論必要だが、社会 的な支援も大切であることが科学的にも証明されてきている。

科学的なアプローチとして、社会医学では生活の質をQOL(Quality of Life)として把握する試み がなされている。QOLとは未だに完全な定義・コンセンサスは得られていないがWHO(国際保健

機関World Health Organization)の定義では,健康とは「単に疾病がないということではなく,完

全に身体的・心理的および社会的に満足のいく状態にあること」であり、また「霊的にも満足のい く状態にあること」 としている。これを真として、QOLの向上が社会医学領域では目的となってい る。

QOL の向上に対し、様々なアプローチがなされているが、中でも分かり易く、因子として関わり が大きいと分かっているものはADL、そしてIADLである。ADL(Activities of Daily Living)とは、

「日常生活動作」のことで、日常生活を営む上で、普通におこなっている行為、行動のことである。

具体的には、排泄、衛生状態(入浴・歯磨き)、食事摂取、着替え、移動(歩行)のことである。そし て、IADL(Instrumental Activity of Daily Living)とは「手段的日常生活動作」のことで、日常生活 を送る上で必要な動作のうち、ADLより複雑で高次な動作である。具体的には、買い物、家事(掃 除・洗濯など)、金銭管理、食事準備、乗り物に乗っての移動などのことである。この二つは、要介護 高齢者や障がい者等の介護計画の立案・検討に用いられると共に、どの程度自立的な生活が可能か を評価する指標としても使われている。老人は老年病を抱えることが多く、これらが障害されやす い。

ADL、IADLの低下に対して、昔は村などの地域での支援などがあったが、近代化・現代化により、

コミュニティの矮小化の流れなどの社会的事情で、家族などの小さな共同体間での支援に頼らざ るをえなくなった。それにより、QOL の低下を招くことが多くなり、また高齢者の増加が著しいこ とから社会的な支援・対応が望まれることとなった。旧来からの地域的な支援を再度強化するとい う意味で、民生委員の仕事の拡大、また、高齢者・障がい者・幼児小児支援組織の拡充、さらにはそれ ぞれの地域に合わせた、小さな行政府主体の新たな支援システムの生成が望まれている。今回は過 疎化のすすむ地方での取り組みでは、実際にどのように対処されているのか、聞き取り調査によっ てアプローチすることにした。

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72 3.高齢者を支援する活動

人は多くが長生きしたいと願うが、全ての人間は死を必ず迎えるわけで、また生きている以上、

老いを避けることはできない。しかし健康に長生きすることはある程度可能で、直感的にも以前に 比べるとかなりの改善も期待できるようになってきた。それには本人の努力も勿論必要だが、社会 的な支援も大切であることが科学的にも証明されてきている。

科学的なアプローチとして、社会医学では生活の質をQOL(Quality of Life)として把握する試み がなされている。QOLとは未だに完全な定義・コンセンサスは得られていないがWHO(国際保健

機関World Health Organization)の定義では,健康とは「単に疾病がないということではなく,完

全に身体的・心理的および社会的に満足のいく状態にあること」であり、また「霊的にも満足のい く状態にあること」 としている。これを真として、QOLの向上が社会医学領域では目的となってい る。

QOL の向上に対し、様々なアプローチがなされているが、中でも分かり易く、因子として関わり が大きいと分かっているものはADL、そしてIADLである。ADL(Activities of Daily Living)とは、

「日常生活動作」のことで、日常生活を営む上で、普通におこなっている行為、行動のことである。

具体的には、排泄、衛生状態(入浴・歯磨き)、食事摂取、着替え、移動(歩行)のことである。そし て、IADL(Instrumental Activity of Daily Living)とは「手段的日常生活動作」のことで、日常生活 を送る上で必要な動作のうち、ADLより複雑で高次な動作である。具体的には、買い物、家事(掃 除・洗濯など)、金銭管理、食事準備、乗り物に乗っての移動などのことである。この二つは、要介護 高齢者や障がい者等の介護計画の立案・検討に用いられると共に、どの程度自立的な生活が可能か を評価する指標としても使われている。老人は老年病を抱えることが多く、これらが障害されやす い。

ADL、IADLの低下に対して、昔は村などの地域での支援などがあったが、近代化・現代化により、

コミュニティの矮小化の流れなどの社会的事情で、家族などの小さな共同体間での支援に頼らざ るをえなくなった。それにより、QOL の低下を招くことが多くなり、また高齢者の増加が著しいこ とから社会的な支援・対応が望まれることとなった。旧来からの地域的な支援を再度強化するとい う意味で、民生委員の仕事の拡大、また、高齢者・障がい者・幼児小児支援組織の拡充、さらにはそれ ぞれの地域に合わせた、小さな行政府主体の新たな支援システムの生成が望まれている。今回は過 疎化のすすむ地方での取り組みでは、実際にどのように対処されているのか、聞き取り調査によっ てアプローチすることにした。

73 3.1 民生委員

構成に関して述べる。蛸島には四人の民生委員が存在し、それぞれに担当地域がある。また、そ の下に推進委員という役があり、民生委員を3~4人で補助している。定例会としては、団体内で は、蛸島町内では年2回、変化・近況の報告会があり、珠洲市第三地区では2月に一回開催され ている。公的機関の研修として、民生委員、推進委員共に4月に研修があり、役所・社会福祉協議会 の人のレクチャーを受けている。仕事内容を列挙すると、①高齢者独居の方の月一度の訪問、②社 会福祉協議会の補助であるオムツ助成券の配布(1000円×12ヶ月、年一回でまとめて)、③おはぎ

(3個/年)・ティッシュ(一袋五個/年)の75歳以上の独居もしくは夫婦二人暮らしへの配布、④救 急要請後の家の管理(例えば、鍵閉めなど)、⑤臨時の手伝いと、この5つである。各家庭の日常訪 問は、高齢者を抱える家族との連携で行わなくても問題が起こっていない。

聞き取り調査では、本仲町での話が聞くことができた(Lさん、本仲町、男性、70歳代)。

(本仲町での)寝たきりは現在2名で、一つは高齢者二人暮らしで奥様が、一つは直系家族で息 子夫婦が世話している。独居老人を特に注意しているが、今はいないので、ご家族と相談しながら 活動している。とのことであった。

3.2 社会福祉協議会

蛸島を支援している団体に珠洲市社会福祉協議会(以下「社協」と表現)がある。

この団体は各家庭から資金を集め、様々な福祉サービスを提供している。2013年4 月、市単位で あった社協が町単位で蛸島に設立された。社協は、活動費として蛸島町民生委員側に予算を渡して、

先述したオムツ、おはぎ代にあてている。活動を具体的に並べると、ふれあい福祉相談・金銭管理の 手伝い・生活資金貸借・紙おむつ購入助成券交付・移送サービス・車いす貸出・家族介護者交流・ボラ ンティアセンターとの連携・福祉バスの運行・災害見舞金制度・在宅福祉サービスの援助を行って いる。

会費について詳説すると、個人(家庭)と法人で分かれていて、個人は年一度500円(会費)+

年一度(共同募金)であり、法人は年一度3000円(会費)となっており、共同募金は善意で行っ てもらっている。

それでは、それぞれの活動に関して詳細に述べる。

紙おむつ購入助成券に関して、配布物は二種類存在する。乳幼児向けと高齢者・障がい者向けの 二つであり、配付金額、必要書類、配布方法で全て異なっている。昔は現物支給であったが、高齢者 増加により在庫管理の問題が発生したので、助成券配布となった。これは市内の大概の薬局等の店 舗にて使える券で、指定額の割引がなされる。

(15)

74

14 おむつ購入助成券交付~地区別数~

地区名 寝たきり 乳幼児 地区名 寝たきり 乳幼児

宝立 116 14 蛸島 47 7

上戸 44 17 三崎 90 18

飯田 41 14 日置 17 0

直 37 15 大谷 57 5

正院 44 12 若山 61 11

計 554 113

(出所:珠洲市社会福祉協議会提供資料より)

乳幼児は珠洲市に住所を有する2歳0ヶ月以下の乳幼児を対象に月2000円(2011年まで1000 円であった)が支給されている。これは転入であっても2歳まではもらえるということになってい る。申請に必要なものは母子手帳と印鑑のみである。2 年分まとめて渡しており、月6~7名ほどの 新規申請があり、70~80名程度の年実績となっている。

寝たきりの高齢者・障がい者には、在宅で一ヶ月以上の使用を対象(入院は対象外)に、月1200 円の支援を行っている。申請に必要なものは当人の印鑑と地区担当民生委員の証明(承認と印)で ある。これは民政委員を通すことで、地域の状況などの情報の共有を狙っており、現場で即時の支 援、地域全体での高齢者の保護に役立てられる。昔は年一度配布だったが、紛失など諸問題の多発 から、現在は月を指定して配布している。平成25(2013)年8月27日時点では420人分出している。

災害見舞金制度については、火災・天災・地震・土砂崩れなどで被害に遭われた方を対象にしてい る。これは即時支援の意味合いが強く、民生委員を通して、年一回ほど行われている。額は、全壊3万 円・半壊1万円である。

在宅福祉サービスについては、居宅介護支援・訪問介護・訪問入浴・訪問配食・通所介護の5活動が 主なサービスとして存在する。訪問入浴以外は365日態勢で臨んでいる。

これらに関しそれぞれ述べると、居宅介護支援とは介護が必要になったとき、在宅生活が送れる ように介護支援専門員(ケアマネージャー)が支援するというもの。訪問介護とはホームヘルパ ーが介護を必要としている住居に訪問し、調理・買い物・掃除などの日常生活、食事・入浴・オムツ交 換などの介護・通院介助などを行うもの。訪問入浴とは看護師とホームヘルパーが自宅訪問して入 浴を支援するもの。通所介護はデイサービスセンターで、入浴や食事、機能訓練や季節行事等のサ ービスを受けて一日をほがらかに過ごしてもらうもの。訪問配食とは、調理の困難な高齢者のみの 世帯に昼、弁当を配達するというもので、一食550円で提供している。

福祉バスについては、保育所、老人会、障がい関係団体、民生委員協議会など様々な団体から利用 されている。運行日数は平成24(2012)年度の実績で、152日・大人2456名・小人1552名・総走 行キロ合計21,545kmと広く利用されているのが分かる。一回15人以上が基本で、一往の限界遠端

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14 おむつ購入助成券交付~地区別数~

地区名 寝たきり 乳幼児 地区名 寝たきり 乳幼児

宝立 116 14 蛸島 47 7

上戸 44 17 三崎 90 18

飯田 41 14 日置 17 0

直 37 15 大谷 57 5

正院 44 12 若山 61 11

計 554 113

(出所:珠洲市社会福祉協議会提供資料より)

乳幼児は珠洲市に住所を有する2歳0ヶ月以下の乳幼児を対象に月2000円(2011年まで1000 円であった)が支給されている。これは転入であっても2歳まではもらえるということになってい る。申請に必要なものは母子手帳と印鑑のみである。2年分まとめて渡しており、月6~7名ほどの 新規申請があり、70~80名程度の年実績となっている。

寝たきりの高齢者・障がい者には、在宅で一ヶ月以上の使用を対象(入院は対象外)に、月1200 円の支援を行っている。申請に必要なものは当人の印鑑と地区担当民生委員の証明(承認と印)で ある。これは民政委員を通すことで、地域の状況などの情報の共有を狙っており、現場で即時の支 援、地域全体での高齢者の保護に役立てられる。昔は年一度配布だったが、紛失など諸問題の多発 から、現在は月を指定して配布している。平成25(2013)年8月27日時点では420人分出している。

災害見舞金制度については、火災・天災・地震・土砂崩れなどで被害に遭われた方を対象にしてい る。これは即時支援の意味合いが強く、民生委員を通して、年一回ほど行われている。額は、全壊3万 円・半壊1万円である。

在宅福祉サービスについては、居宅介護支援・訪問介護・訪問入浴・訪問配食・通所介護の5活動が 主なサービスとして存在する。訪問入浴以外は365日態勢で臨んでいる。

これらに関しそれぞれ述べると、居宅介護支援とは介護が必要になったとき、在宅生活が送れる ように介護支援専門員(ケアマネージャー)が支援するというもの。訪問介護とはホームヘルパ ーが介護を必要としている住居に訪問し、調理・買い物・掃除などの日常生活、食事・入浴・オムツ交 換などの介護・通院介助などを行うもの。訪問入浴とは看護師とホームヘルパーが自宅訪問して入 浴を支援するもの。通所介護はデイサービスセンターで、入浴や食事、機能訓練や季節行事等のサ ービスを受けて一日をほがらかに過ごしてもらうもの。訪問配食とは、調理の困難な高齢者のみの 世帯に昼、弁当を配達するというもので、一食550円で提供している。

福祉バスについては、保育所、老人会、障がい関係団体、民生委員協議会など様々な団体から利用 されている。運行日数は平成24(2012)年度の実績で、152日・大人2456名・小人1552名・総走 行キロ合計21,545kmと広く利用されているのが分かる。一回15人以上が基本で、一往の限界遠端

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は穴水市となっている。能登空港、もしくは宇出津が多い。イチゴ狩りでは内浦から正院・飯塚が多 く、りんご狩りでは上戸・馬緤が多い。

移送サービスについては、軽車両二台を用いて行われている。片方はダイハツのアトレーでスロ ープがついていて、他方は三菱のミニキャブでリフトがついている。利用対象者は、要介護3・4・5ま たは身体障害者手帳1・2級所持者で、車椅子を利用しなければ移動が困難な者となっており、通院・

買い物など様々なものに利用してよいサービスとなっている。また、そのような条件を満たさない 者であっても、疾病その他の理由(両足骨折など下肢系の不全を呈する疾病)により移動困難な者 も、社会福祉協議会長が認めれば利用することができる。実際の平成24(2011)年運用実績を見る と、通院が164回で18人。リハビリが226回で6人。となっており、実際、買い物などで使われたこ とは少ない。通院は一人あたり約9回、リハビリは一人あたり約38回と、同じ車いす利用者が何度 も利用できる態勢となっていることは望ましいと思われる。

しかしながら、これは行政のサービスであり、無資格者が提供しているので、病院の乗降車場、家 の玄関までの移動しかできず、病院の場合、連絡して看護師などの援助があるからいいが、家の場 合、ベッドまで運ぶことが不可能であるので、介護者が必要となってしまう。また、これは全て無料 のサービスであるため、使用は非常に便利だが、申請から調査を経て登録となるので、利用開始ま でが少々煩雑であるという難点も聞かれた。少し特徴的な点として、冠婚葬祭への参加参列の場合、

ADL・IADLと関係なしに利用が認められるということである。一回しか利用された形跡がないが、

珠洲市内であれば利用することができ、最遠、能登空港までは利用してもよいそうだ。

4.まとめ・考察

以下、データと聞き取り調査により分かったことをまとめる。

・ 珠洲市蛸島町は全国に比べ、年少人口の割合が少なく、高齢者の割合、特に後期高齢者の割 合が非常に高い。非生産年齢の1人を生産年齢の約1人が支えている。高齢者の割合は40%程 度である。これは政府の予測統計で2055年に日本全体が陥る高齢社会の縮図といえる。

・ 「都会と地方」という格差だけではなく、地方内でも「地方都市と零細地域」といった格差 もみることができる。

・ 過疎が進み、若者が少ないとされている地方であっても、リスクの高い世帯の割合は、全国よ りも実は低い。しかしながら、単身の世帯が少し多い。これは昨年度の若山町での調査結果と 類似しており、これが地方の典型なのかは分からないが、珠洲市ではおおむね全国に比して高 リスクな世帯は割合で少ないということが言えそうである。

(17)

76

・ 住民は、空き屋数の増加、小学校の様子、子供の環境などの変化から少子高齢化と過疎化を実 感している。

・ 医療施設に関しては、病院数に関しては人口あたりの比較ではほとんど差異はないが、面積 あたりに換算すると大きな格差があり、アクセスの面で問題があることが懸念される。

・ 療養病床に関しては、全国平均を大きく上回っている。慢性期ケアの重要な患者の多いこの 地方では、望ましい割合と思われる。

・ 珠洲総合病院が比較的近くに存在し、個人クリニックもアクセスしやすい場所にあることか ら、特に蛸島町住民は医療施設に関しては、不便を感じてはいない。

・ 医療福祉に関する人的資源については、病院従事者数をみると、人口あたり全国平均に比べ て医師は約3分の2、看護師は87%ほどで、リハビリテーションの担い役である、理学療法 士・作業療法士・言語聴覚士に関しては約半数と少なくなっている。これは診療所でも同様 で、医療従事者は総じて少ない。

・ 分娩に関しては出産できる診療所が、能登北部には一件も存在しないため、ゼロだった。

・ 高齢者の介護などに関して、特別養護老人ホームの収容数・介護療養型医療施設は3倍近く 存在している。また、高齢者住宅数ではグループホームが非常に多い。ただ、面積あたりで は全国平均よりだいぶ数値が小さく、自宅から通うデイサービスなどのシステムは全国に比 べてアクセスが難しいことが考えられる。

・ 介護施設に関しては、入居型の介護施設に関しては、全国の流れと同じく、待機数も多いよう で、収容数の増加が望まれている。

・ 高齢者を支援する活動は様々なサービスが無償・有償でなされている。かなりの部分を民生委 員・社会福祉協議会がQOLの向上に貢献していることがうかがえた。ただ、始まったばかりで、

現在、評判を聞き取り調査中・実験段階であるサービスも多く存在し、今後足らざるところを 検討・改善されていくものと思われる。

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・ 住民は、空き屋数の増加、小学校の様子、子供の環境などの変化から少子高齢化と過疎化を実 感している。

・ 医療施設に関しては、病院数に関しては人口あたりの比較ではほとんど差異はないが、面積 あたりに換算すると大きな格差があり、アクセスの面で問題があることが懸念される。

・ 療養病床に関しては、全国平均を大きく上回っている。慢性期ケアの重要な患者の多いこの 地方では、望ましい割合と思われる。

・ 珠洲総合病院が比較的近くに存在し、個人クリニックもアクセスしやすい場所にあることか ら、特に蛸島町住民は医療施設に関しては、不便を感じてはいない。

・ 医療福祉に関する人的資源については、病院従事者数をみると、人口あたり全国平均に比べ て医師は約3分の2、看護師は87%ほどで、リハビリテーションの担い役である、理学療法 士・作業療法士・言語聴覚士に関しては約半数と少なくなっている。これは診療所でも同様 で、医療従事者は総じて少ない。

・ 分娩に関しては出産できる診療所が、能登北部には一件も存在しないため、ゼロだった。

・ 高齢者の介護などに関して、特別養護老人ホームの収容数・介護療養型医療施設は3倍近く 存在している。また、高齢者住宅数ではグループホームが非常に多い。ただ、面積あたりで は全国平均よりだいぶ数値が小さく、自宅から通うデイサービスなどのシステムは全国に比 べてアクセスが難しいことが考えられる。

・ 介護施設に関しては、入居型の介護施設に関しては、全国の流れと同じく、待機数も多いよう で、収容数の増加が望まれている。

・ 高齢者を支援する活動は様々なサービスが無償・有償でなされている。かなりの部分を民生委 員・社会福祉協議会がQOLの向上に貢献していることがうかがえた。ただ、始まったばかりで、

現在、評判を聞き取り調査中・実験段階であるサービスも多く存在し、今後足らざるところを 検討・改善されていくものと思われる。

77 注

1有識者の間では、先進国の中で、日本は新薬の上市時期が遅いと言われている。その未承認薬(海外で標準的 に使用されている医薬品が、日本で上市あるいは開発されていない)や未承認適応(海外で承認されている 適応が,日本で承認されていない)の増加を総称し、ドラッグラグと呼んでいる。ドラッグラグは、国際的に 標準的とされる医薬品による治療が日本では受けられない、最新の新薬による治療が他国より遅くなると言 った問題が発生している(厚生労働省HP)。

2年齢別人口のうち労働力の中核をなす15歳以上65歳未満の人口層。これに対し15歳未満の年少人口と、

65歳以上の老年人口を合わせたものを被扶養人口(非生産年齢人口)という。

3行政の医療サービス提供は、地理的には医療圏によって把握されている。医療圏とは、地域の実情に応じた 医療を提供する体制を確保するために、都道府県が設定する地域単位のことである。日常生活に密着した保 健医療を提供する一次医療圏(基本的に市町村単位)、健康増進・疾病予防から入院治療まで一般的な保健 医療を提供する二次医療圏(複数の市町村)、先進的な技術を必要とする特殊な医療に対応する三次医療圏

(都道府県単位)があり、これらは、医療計画に基づいて整備が行われる。医療計画とは、地域の医療体制 の整備を促進し、効率のよい医療を提供できるよう、都道府県が5年ごとに定める計画で、医療法で規定さ れている。地域の人口や年齢構成、病気の傾向に合わせた基準病床数の算定などを行われているが、医療計 画では、二次医療圏と三次医療圏のみに行政が差配している(厚生労働省HP・南山堂医学大事典・Sub note)。

4介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は、日常生活において常に介護が必要で、自宅では介護ができな い方が対象の施設である。家族が遠方に住んでいて介護ができない場合や、介護者が高齢で、療養中などで 自宅での介護が難しい方のために、家族に代わって食事や入浴など日常生活の介護や健康管理を行う。介護 認定で、要介護1以上が対象である。

5急性期の治療が終わり、病状が安定したものの、長期間の治療が必要な方が対象で医療や看護などを受けら れ、介護の体制が整った医療施設。要介護1以上の要介護認定が必要。

6認知症の高齢者が、少人数(5~9人)でより家庭に近い雰囲気の中で介護や支援を受けながら、可能な範囲 で食事の支度や掃除、洗濯などの家事を行い、自宅に近い状況で生活を送ることができる施設。認知症対 応型共同生活介護として、地域密着型サービスに位置づけられる(2013 老人ホームの種類と選び方)。

参照

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