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田川正人 論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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田川正人 論文内容の要旨

主 論 文

Retrospective Diagnosis of Congenital Cytomegalovirus Infection at a School for the Deaf by Using Preserved Dried Umbilical Cord

聾学校における保存乾燥臍帯を用いた 先天性サイトメガロウイルス感染の後方視的診断

田川正人、田中英雄、森内昌子、森内浩幸

Journal of Pediatrics・ 2009 年掲載予定

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 新興感染症病態制御学系専攻 (主任指導教員:森内浩幸 教授)

【緒言】

先天性サイトメガロウイルス(以下 CMV)感染症は先進国における感音性難聴の 主な原因の一つである。出生時には無症候性の場合でも、そのうち7-15%以上が遅発 性に感音性難聴を発症するとの報告があるが、新生児期以降の診断が困難であるため、

その殆どは診断されず見逃されている可能性が高い。またCMV感染の疫学は社会経 済学的、人種的、および地域的影響を受けやすいが、日本国内の感音性難聴の疫学に おける先天性CMV感染症の役割はよくわかっていない。

最近の研究で、先天性感染の後方視的検索のための材料として先天代謝異常スクリ ーニング濾紙血検体が有用である事が報告されている。しかしこの濾紙血検体は通常、

日本を含めた多くの国で1-2年以内に廃棄されるため、それを用いた乳児期以降の後 方視的診断は極めて困難である。日本では“母子の絆”の象徴として乾燥させた臍帯 を長く保存する習慣があり、先天性CMV感染の後方視的診断に有用である事が報告 されている。

我々は乾燥保存臍帯を用いて、日本国内の両側性高度感音性難聴の疫学に与える先 天性CMV感染症の影響を調査した。

【対象と方法】

長崎県立聾学校に在学または卒業した79名の生徒のうち、36名の両側性感音性難 聴生徒が書面による同意のもと、研究に参加した。そのうち臍帯から十分量の DNA

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が採取された26名について更なるウイルス学的精査を行った。

各生徒の家庭に保存されていた乾燥臍帯の一部(約 30mg)を清潔なカッターナイ フで切断し、QIAamp DNA Mini kit (QIAGEN社)を用いてDNAを抽出した。iCycler iQ Real-Time Detection System (Bio-Rad社)を用いリアルタイムPCRが抽出されたDNA 液の一部を用いてなされた。

【結果】

ウイルス学的精査を行った 26 名のうち、3 名(12%)からCMV-DNA が検出され た。3 名とも出生時にはっきりとした異常を認めず、無症候性先天性 CMV 感染症と 考えられた。

CMV 陽性例のうち 2 名(67%)は子宮内発育遅延がみられ、CMV 陰性例では 23 名中2名(9%)に認めた(p = 0.052)CMV陽性例には感音性難聴の家族歴を持つ例 はなかったが、CMV陰性例23名中9名(39%)には家族歴があった(p = 0.261。非 対称性難聴と進行性難聴は CMV 陽性例ではそれぞれ 2 名ずつ認められたが、CMV 陰性例では全く認められなかった(p = 0.0269 および p = 0.0092)

【考察】

CMV は小児の感音性難聴の主たる原因の一つであるが、日本を含めた多くの国で その実態が不明なままである。その理由の一つに先天感染児の約90%は出生時に無症 候であるため見過ごされ、新生児期以降では診断が非常に困難である事があげられる。

本研究では家庭に保存されている臍帯を用い、長崎県下における先天性CMV感染 が感音性難聴の発生に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、聴力障害児に対す る特殊教育を施す県内唯一の教育機関である県立聾学校の生徒と卒業生を対象とし て調査した。我々は、検討した 26 名の両側性高度感音性難聴児のうち 3 名(12%)

に先天性CMV感染を証明した。いずれもこれまでは原因不明の難聴とされていたが、

子宮内発育遅滞を認めやすい、難聴の家族歴がない、聴力障害が非対称的になりやす い、発症後も進行がみられる等の特徴を有することを示した。

ただ本研究では、臍帯からの DNA 抽出効率が必ずしも高くない事やサンプルサイ ズが小さい事から、その実態を十分に究めたとは云えない。また地域差についても考 慮しなければならない。感音性難聴における先天性CMV感染の関与をさらに明らか にするためには、それぞれの地域において大規模な前方視的研究を行うことが必要で ある。

参照

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