植物由来配糖体の構造と腫瘍細胞毒性に関する研究
3
きた. その結果, ユリ科 Ornithogalum saundersiae より単離した cholestane 配糖体 OSW-1 は薬剤耐性腫瘍細胞を含む各種腫瘍細胞に対し, 腫瘍選択的かつ強力な細胞毒性を
示すことを見出した.8) その他にも, キンポウゲ科 Helleborus foetidus 全草から単離され
た bufadienolide 配糖体 (i),9) ハマビシ科 Larrea tridentata 地上部から単離された
triterpene 配糖体 (ii)10) などが強い細胞毒性を有することを明らかにした (Figure 1).
Figure 1. Plant glycosides with potent cytotoxicity against tumor cells
4 【第 1 章】ガガイモ科 Marsdenia cundurango 樹皮の化学成分 1-1 Marsdenia cundurango について ガガイモ科 Marsdenia cundurango は, 南米アンデス山脈の北西部原産の蔓性木本で ある. アフリカ東部では消化不良や食欲不振などの消化器症状に民間薬として用いら れており,11) 日本でも, その樹皮は芳香性苦味健胃薬として日本薬局方に収載されて いる.12) 本植物の研究は 1960 年代から行われており, 含有成分として condurangogenin 類および condurangoglycoside 類と称される pregnane 誘導体や, それらをアグリコンと する配糖体が知られ, 細胞毒性, 抗腫瘍活性, 抗炎症作用などの生物活性が報告され ている.13, 14) しかし, 近年では新たな成分探索の報告はなく, さらに詳細な成分研究 が必要と考えられる. そこで今回, M. cundurango の薬用部位として用いられる樹皮の MeOH エキスについて, pregnane 配糖体に着目した詳細な成分探索を行った. 1-2 抽出・分離 M. cundurango の樹皮 (5.0 kg) を熱 MeOH (10 L) で温浸抽出し, 抽出液を減圧下濃 縮した. 得られた MeOH 抽出エキス (500 g) を Figure 2 に示すスキームにより分離・ 精製し, 1-15 を単離した.
5 C 1a 20R -form 20S -form 17 56.1 53.1 51.9 20 70.0 70.6 65.3 21 23.1 23.4 22.4 1-3 Pregnane 配糖体の構造 [化合物 1 の構造] 化合物 1 は非晶質の白色粉末として得られ, MeOH 溶液中, 比旋光度 -17.1 を示し た. High resolution-electrospray ionization-time of flight-mass spectroscopy (以下,
HR-ESI-TOF-MS) (m/z: 839.4759 [M + Na]+, calcd for C42H72NaO15 839.4769) および 13C-NMR ス
ペクトルにより, その分子式を C42H72O15と決定した. IR スペクトルは水酸基に基づく 吸収 (3434 cm-1) を示した. 化合物 1 の1H-NMR スペクトルにおいて, 2 個の 3 級メチル基プロトン [ H 1.72 and 1.04 (each 3H, s)], 4 個の 2 級メチル基プロトン [H 1.64 (1H, d, J = 6.0 Hz), 1.56 (1H, d, J = 6.2 Hz), 1.49 (1H, d, J = 6.5 Hz), 1.41 (1H, d, J = 6.2 Hz)], 3 個のメトキシ基プロトン [H 3.85, 3.58, 3.53 (each 3H, s)], 3 個の糖のアノマープロトン [H 5.31 (1H, br d, J = 8.1 Hz), 5.31 (1H, d, J = 8.1 Hz), 4.68 (1H, dd, J = 9.7, 1.7 Hz)] に由来するシグナルが観測された. 13C-NMR スペクトルでは, 6 個のメチル基炭素 ( C 23.6, 18.9, 18.7, 18.6, 12.4, 11.6), 3 個 のメトキシ基炭素 (C 62.1, 58.8, 57.2), 3 個の糖のアノマー炭素 (C 102.0, 101.9, 95.9) に由来するシグナルが観測された. 以上のことから, 1 は 3 個の糖を有する pregnane 配 糖体であると推測された. 化合物 1 を 0.025 M HCl で酸加水分解を行ったところ, アグリコンとして, Marsdenia roylei より単離されている 5-pregnane-3,11,12,14,20-pentol (desacylcondurangogrnin
C: 1a)15) が, 糖として D-cymarose と
6-deoxy-3-O-methyl--D-allopyranosyl-(1→4)--D-oleandropyranose (pachybiose) が得られた.16) D-Cymarose は, 加水分解後の糖画分の
HPLC 分析を行い, 保持時間と旋光度検出器の正負のシグナルを標品と比較すること により, 絶対構造を含めて同定した. Pachybiose は, 絶対構造が明らかな標品と NMR スペクトル, 旋光度を比較することにより同定した. アグリコン (1a) の C-20 位の立体配置は, 1a の 13C-NMR スペクトルを既知化合物 である isolineolin-3,12-diacetate の 20R および 20S 体の 13C-NMR スペクトルと比較し, 20R と決定した (Figure 3).17)
6
化合物 1 の糖鎖構造は, 以下のスペクトル解析によって決定した. まず 1H-1H shift
correlation spectroscopy (以下, 1H-1H COSY) スペクトルにより, 各アノマープロトンお
よび H3-6 位プロトンからの相関ピークを確認することで, 各単糖の H-1 位から H3-6
位までの化学シフト値およびスピン結合定数 (J 値) を帰属した. 次に, 1H-detected
heteronuclear single quantum coherence (以下, HSQC) スペクトルにより, 各プロトンが 結合した炭素シグナルの帰属を行うことにより, 1 の糖鎖は C-4 位の水酸基が置換さ れた -D-cymaropyranosyl 基 (Cym) [H-1 5.31 (1H, br d, J = 8.1 Hz); C 95.9, 37.6, 77.9, 83.6, 68.9, 18.7 (C-1'-C-6')], C-4 位の水酸基が置換された -D-oleandropyranosyl 基 (Ole) [H-1 4.68 (1H, dd, J = 9.7, 1.7 Hz); C 101.9, 38.0, 79.2, 82.9, 72.0, 18.9 (C-1''-C-6'')], 末端 6-deoxy-3-O-methyl--D-allopyranosyl 基 (All) [H-1 5.31 (1H, br d, J = 8.1 Hz); C 102.0, 73.2, 84.0, 74.6, 71.0, 18.6 (C-1'''-C-6''')] で構成されていることが明らかとなった. 各 糖のアノマーの立体配置は, J 値 (All, Cym: 8.1 Hz, Ole: 9.7) からいずれの糖も 配置 であることを確認した.
化合物 1 の1H-detected heteronuclear multiple-bond correlation (以下, HMBC) スペクト
ルにおいて, All のアノマープロトン (H 5.31) から Ole の C-4 位炭素 (C 82.9) へ, Ole
のアノマープロトン (H 4.68) から Cym の C-4 位炭素 (C 83.6) へ, Cym のアノマープ
ロトン (H 5.31) からアグリコンの C-3 位炭素 (C 76.6) へ, それぞれの遠隔相関が観
測されたことから, 各単糖の結合関係とアグリコンへの結合位置を Figure 4 に示すよ うに決定した.
Figure 4. Important HMBC correlations of the sugar moiety of 1
以上のことから 1 の構造を, (20R)-11,12,14,20-tetrahydroxy-5-pregnan-3-yl O-(6-deoxy-3-O-methyl-- D-allopyranosyl)-(1→4)-O--D-oleandropyranosyl-(1→4)-β-D-cymaropyranoside と決定した.
7 [化合物 2 の構造]
化合物 2 は非晶質の白色粉末として得られ, HR-ESI-TOF-MS (m/z: 1001.5293 [M +
Na]+, calcd for C48H82O20Na 1001.5297) および 13C-NMR スペクトルにより, その分子
式を C48H82O20と決定した. 化合物 2 の分子式を 1 と比較したところ, 2 の方が C6H10O5 分大きかった. 化合物 2 の1H-NMR スペクトルは 1 とよく類似していたが, 1 よりも 1 個多い 4 個のアノマープロトン [H 5.27 (1H, dd, J = 9.6, 2.0 Hz), 5.24 (1H, d, J = 7.8 Hz), 4.97 (1H, d, J = 8.5 Hz), 4.64 (1H, dd, J = 9.7, 1.7 Hz)] に由来するシグナルが観測された. したがって, 2 は 1 にさらに 1 個の糖が結合した pregnane 配糖体であると推定された. 化合物 2 を β-D-glucosidase を用いて酵素加水分解を行ったところ, 1 と D-glucose (Glc) が得られた. さらに 2 の HMBC スペクトルにおいて, Glc のアノマープロトン (H 4.97) から All の C-4 位炭素 (C 83.3) への相関が観測されたことから, 2 は 1 の末 端 6-deoxy-3-O-methyl--D-allopyranosyl 基の C-4 位水酸基に β-D-glucopyranosyl 基が結 合していることが明らかとなった (Figure 5).
Figure 5. Important HMBC correlations of the sugar moiety of 2
以上のことから 2 の構造を, (20R)-11,12,14,20-tetrahydroxy-5-pregnan-3-yl O--D-glucopyranosyl-(1→4)-O-6-deoxy-3-O-methyl--D-allopyranosyl-(1→4)-O--D-
oleandropyranosyl-(1→4)-β-D-cymaropyranoside と決定した.
8 [化合物 3 の構造] 化合物 3 (C41H70O15) の 1H- および13C-NMR スペクトルを 1 と比較したところ, 両 者はよく一致していたが, 1 で観測された D-cymarose のメトキシ基に由来するシグナ ルが消失していた. また, 3 の分子式は 1 よりも CH2分小さかった. 化合物 3 を 1 と同 じ条件で酸加水分解を行ったところ, アグリコンとして 1a が, 糖として D-digitoxose (Dig) と pachybiose が得られた. 化合物 3 の HMBC スペクトルにおいて, Figure 6 で示した遠隔相関が観測されたこ とから, 3 は 1 の -D-cymaropyranosyl 基が -D-digitoxopyranosyl 基に置き換わった構 造であることが明らかとなった.
Figure 6. Important HMBC correlations of the sugar moiety of 3
9 (1H, d, J = 8.6 Hz); C 101.6, 75.2, 78.8, 72.0, 78.4, 63.2 (C-1''''-C-6'''')] が観測された. 化 合物 4 の13C-NMR スペクトルを 1 と比較したところ, 4 のアグリコンの C-20 位炭素の シグナルが 1 と比べて 7.0 ppm 低磁場にシフトして観測された. さらに, 4 の HMBC ス ペクトルにおいて, Glc のアノマープロトン (H 4.98) からアグリコンの C-20 位炭素 (C 77.3) への遠隔相関が観測されたことから, 4 は 1 のアグリコンの C-20 位に -D-glucopyranosyl 基が結合していることが明らかとなった (Figure 7).
Figure 7. An HMBC correlation of the sugar moiety of 4
10
個結合した構造であると推測された. 化合物 5 の HMBC スペクトルにおいて, アグリ
コンの C-11 位のヒドロキシメチン基プロトン (H 5.81) からカルボニル炭素 (C
167.0) へ遠隔相関が観測されたことから, (E)-cinnamoyl 基はアグリコンの C-11 位に結 合していることが明らかとなった (Figure 8).
Figure 8. An HMBC correlation of the aglycone moiety of 5
11
行ったところ, D-cymarose のみを与えた. このことから, 6 は condurangogenin E をアグ
リコンとし, それにD-cymarose 2 個 (Cym, Cym') からなる糖鎖が結合した配糖体であ
ると推定された.
化合物 6 の HMBC スペクトルにおいて, Figure 9 で示した遠隔相関が観測されたこ
とから, 2 個のD-cymarose の結合関係とアグリコンへの結合位置が明らかとなった.
Figure 9. Important HMBC correlations of the sugar moiety of 6
12 らかとなった.
Figure 10. Important HMBC correlations of the sugar moiety of 7
以上のことから 7 の構造を, 11-acetoxy-12-[((E)-cinnamoyl)oxy]-8,14-dihydroxy- 20-oxopregn-5-en-3-yl O-(6-deoxy-3-O-methyl--D-allopyranosyl)-(1→4)-O--D-
oleandropyranosyl-(1→4)-O-β-D-digitoxopyranosyl-(1→4)-β-D-cymaropyranoside と 決 定 し た.
13 [化合物 8-15 の構造] 化合物 8 (C51H78O17), 9 (C53H80O17), 10 (C59H90O22), 11 (C53H76O18), 12 (C60H88O21), 13 (C66H98O26), 14 (C48H82O21), 15 (C59H88O22) は非晶質の白色粉末として得られ, 物性値, 1H- および 13C-NMR スペクトルデータを文献値と比較することにより, それぞれ (20R)-11-acetoxy-12-[(benzoyl)oxy]-14,20-dihydroxy-5-pregnan-3-yl O-(6-deoxy-3-O-methyl--D-allopyranosyl)-(1→4)-O--D-oleandropyranosyl-(1→4)-β-D-cymaropyranoside (condurangoside C) (8),18) (20R)-11-acetoxy-12-[((E)-cinnamoyl)oxy]-14,20-dihydroxy-5-pregnan-3-yl
O-(6-deoxy-3-O-methyl--D-allopyranosyl)-(1→4)-O--D-oleandropyrano-syl-(1→4)-β-D-cymaropyranoside (condurangoglycoside C) (9),19)
(20R)-11-acetoxy-12-[((E)-cinnamoyl)oxy]-14,20-dihydroxy-5-pregnan-3-yl O--D-glucopyranosyl-(1→4)-O-
(6-deoxy-3-O-methyl--D-allopyranosyl)-(1→4)-O--D-oleandropyranosyl-(1→4)-β-D-cymaropyranoside (10),18) 11-acetoxy-12-[((E)-cinnamoyl)oxy]-8,14-dihydroxy-20-oxo-
pregn-5-en-3-yl O-(6-deoxy-3-O-methyl--D-allopyranosyl)-(1→4)-O--D-oleandropyrano-
syl-(1→4)-β-D-cymaropyranoside (condurangoglycoside E) (11),19)
11-acetoxy-12-[((E)-cinnamoyl)oxy]-8,14-dihydroxy-20-oxopregn-5-en-3-yl O-(6-deoxy-3-O-methyl--D-allo-
pyranosyl)-(1→4)-O--D-oleandropyranosyl-(1→4)-O--D-cymaropyranosyl-(1→4)-β-D-cymaropyranoside (condurangoglycoside E2) (12),19) 11-acetoxy-12-[((E)-cinnamoyl)oxy]
-8,14-dihydroxy-20-oxopregn-5-en-3-yl O--
D-glucopyranosyl-(1→4)-O-(6-deoxy-3-O-
methyl--D-allopyranosyl)-(1→4)-O--D-oleandropyranosyl-(1→4)-O--D-cymaropyranosyl-(1→4)β-D-cymaropyranoside (condurangoglycoside E3) (13),19) dihydrosarcostin
3-O--D-glucopyranosyl-(1→4)-O-(6-deoxy-3-O-methyl--D-allopyranosyl)-(1→4)-O--D-oleandro-
pyranosyl-(1→4)-β-D-cymaropyranoside (14),20) 11-acetoxy-12-[((E)-cinnamoyl)oxy]-8,
14-dihydroxy-20-oxo-5-pregnan-3-yl O--
D-glucopyranosyl-(1→4)-O-(6-deoxy-3-O-methyl--D-allopyranosyl)-(1→4)-O--D-oleandropyranosyl-(1→4)-β-D-cymaropyranoside
15 1-4 小括 M. cundurango 樹皮の MeOH 抽出エキスより, 新規 7 種 (1-7) を含む 15 種の pregnane 配糖体を単離し, それらの構造を二次元 NMR を中心としたスペクトル解析 と既知化合物とのデータの比較, 加水分解の結果をもとに明らかにした. 化合物 8-15 は, いずれもアグリコンの C-11 位水酸基に acetyl 基が, C-12 位水酸基 に benzoyl 基または (E)-cinnamoyl 基が結合しており, Marsdenia 属植物から単離され ている pregnane 配糖体に特徴的な構造である. 一方, 5 は C-11 位水酸基のみに (E)-cinnamoyl 基が結合した構造を有し, このようなアグリコンはこれが初めての例であ る.
今回単離された pregnane 配糖体のうち, 6 以外の化合物はいずれも, Marsdenia 属植 物から単離された pregnane 配糖体に特徴的な deoxy 糖の 6-deoxy-3-O-methyl--D-allose
を構成糖として有している. また, 3 と 7 は糖鎖にD-digitoxose を有する pregnane 配糖
体である. ガガイモ科植物において, D-digitoxose を有する pregnane 配糖体は Asclepias
16 【第 2 章】キョウチクトウ科 Thevetia neriifolia 種子の化学成分 2-1 Thevetia neriifolia について キョウチクトウ科 Thevetia neriifolia は, 熱帯アメリカや西インドなどに広く分布す る常緑小低木である. 下剤, 催吐剤のほか, 間欠熱の治療に民間薬として用いられて いる. 葉や種子の化学成分として, neriifolin を代表とする cardenolide 配糖体のほか, sterol 類や iridoid 配糖体などが報告されている .23,24) 当教室ではゴマノハグサ科
Digitalis purpurea 種子より単離された cardenolide 配糖体 glucodigifucoside が, HepG2 ヒ ト肝がん細胞や ACHN ヒト腎がん細胞に対して腫瘍細胞毒性を示し, その毒性発現に
p21/Cip1 の 誘 導 が 寄 与 し て い る こ と を 明 ら か に し て い る .25,26) こ の こ と か ら ,
cardenolide 配糖体は新規悪性腫瘍治療薬シーズとして有用であると考えられる. そこ で今回, T. neriifolia のうち入手可能であった種子の MeOH エキスについて, cardenolide 配糖体に着目した詳細な成分探索を行った.
2-2 抽出・分離
T. nerifolia の種子 (2.0 kg) を熱 MeOH (20 L) で温浸抽出し, 抽出液を減圧下濃縮し た. 得られた MeOH 抽出エキス (250 g) を Figure 11 に示したスキームにより分離・精 製し, 16-39 を単離した.
17 2-3 Cardenolide 配糖体の構造
[化合物 23 の構造]
化合物 23 は非晶質の白色粉末として得られ,MeOH 溶液中, 比旋光度 -152.0 を示
した. HR-ESI-TOF-MS (m/z: 883.3962 [M + Na]+, calcd for C
18
73.4) へ, それぞれの遠隔相関が観測されたことから, 各単糖の結合関係とアグリコ ンへの結合位置を Figure 12 に示すように決定した.
Figure 12. Important HMBC correlations of the sugar moiety of 23
以上のことから 23 の構造を, 3-[(O--D-glucopyranosyl-(1→6)-O--D-glucopyranosyl-(1→4)--L-rhamnopyranosyl)oxy]-14,19-dihydroxy-5-card-20(22)-enolide であると決定し た.
19 [化合物 16-22, 24-39 の構造] 化合物 16 (C30H46O8), 17 (C30H46O8), 18 (C32H48O9), 19 (C36H56O13), 20 (C36H56O13), 21 (C36H54O14), 22 (C36H56O14), 24 (C42H66O18), 25 (C42H66O18), 26 (C42H66O18), 27 (C42H66O19), 28 (C44H68O19), 29 (C42H64O19), 30 (C44H66O20), 31 (C42H66O19), 32 (C41H64O19), 33 (C30H46O9), 34 (C32H48O10), 35 (C42H66O19), 36 (C44H68O20), 37 (C30H44O8), 38 (C36H54O13), 39 (C42H64O18) は非晶質の白色粉末として得られ, 物性値, 1H- および 13C-NMR スペクトルデータを 文 献 値 と 比 較 す る こ と に よ り , そ れ ぞ れ digitoxigenin 3-O--L-thevetopyranoside
(neriifolin) (16),30) uzarigenin 3-O--L-thevetopyranoside (thevefolin) (17),31) digitoxigenin
3-O-(2-O-acetyl--L-thevetopyranoside) (2'-acetylthevefolin) (18),32) digitoxigenin
3-O--D-glucopyranosyl-(1→4)--L-thevetopyranoside (19),33) uzarigenin
3-O--D-glucopyranosyl-(1→4)--L-thevetopyranoside (20),33) connogenin
3-O--D-glucopyranosyl-(1→4)--L-thevetopyranoside (21),27) cannogenol 3-O--D-glucopyranosyl-(1→4)--L-thevetopyranoside
(22),27) digitoxigenin
3-O--D-glucopyranosyl-(1→6)-O--D-glucopyranosyl-(1→4)--L-thevetopyranoside (thevetin B) (24),34,35) uzarigenin
3-O--D-glucopyranosyl-(1→6)-O--D-glucopyranosyl-(1→4)--L-thevetopyranoside (25),33) digitoxigenin
3-O--D-glucopyranosyl-(1→6)-O--D-glucopyranosyl-(1→4)--L-acofriopyranoside (26),24) uzarigenin
3-O--D-glucopyranosyl-(1→6)-O--D-glucopyranosyl-(1→4)--L-acofriopyranoside (27),33) digitoxi-
genin 3-O--D-glucopyranosyl-(1→6)-O--D-glucopyranosyl-(1→4)-(2-O-acetyl--L-theveto-
pyranoside) (acetylthevetin B) (28),27,35,36) cannogenin
3-O--D-glucopyranosyl-(1→6)-O--D-glucopyranosyl-(1→4)--L-thevetopyranoside (thevetin A) (29),35,37) cannogenin
3-O--D-glucopyranosyl-(1→6)-O--D-glucopyranosyl-(1→4)-(2-O-acetyl)--L-thevetopyranoside
(acetylthevetin A) (30),35) cannogenol
3-O--D-glucopyranosyl-(1→6)-O--D-glucopyranosyl-(1→4)--L-thevetopyranoside (31),27) 19-nor-10-hydroxydigitoxigenin 3-O--D-glucopyrano-
syl-(1→6)-O--D-glucopyranosyl-(1→4)--L-thevetopyranoside (32),27)
(20R,S)-18,20-epoxydigitoxigenin 3-O--L-thevetopyranoside (33),33) (20R,S)-18,20-epoxydigitoxigenin
3-O-(2-O-acetyl--L-thevetopyranoside) (34),38) (20R,S)-18,20-epoxydigitoxigenin 3-O--D-gluco-
pyranosyl-(1→6)-O--D-glucopyranosyl-(1→4)--L-thevetopyranoside (thevetin C) (35),35)
(20R,S)-18,20-epoxydigitoxigenin
3-O--D-glucopyranosyl-(1→6)-O--D-glucopyranosyl-(1→4)-(2-O-acetyl--L-thevetopyranoside) (acetylthevetin C) (36),35) thevetiogenin
3-O--L-thevetopyranoside (thevetioside A) (37),24) thevetiogenin
3-O--D-glucopyranosyl-(1→4)--L-thevetopyranoside (thevetioside C) (38),24) thevetiogenin
21 2-4 小括
T. neriifolia 種子の MeOH 抽出エキスより, 新規 1 種 (23) を含む 24 種の cardenolide 配糖体を単離し, それらの構造を二次元 NMR を中心としたスペクトル解析と既知化 合物とのデータの比較, 加水分解の結果をもとに明らかにした. 化合物 23 は cannogenol をアグリコンとする triglycosyl 体であり, 今回の研究で単離 された cardenolide 配糖体の中で唯一, 糖鎖の構成糖としてL-rhamnose を有する化合物 である. 化合物 21, 22, 30-32, 35, 36 はキョウチクトウ科 Thevetia peruviana から,27,35) 34 は同
科 Thevetia thevetoides から,38) 16, 18, 24 は同科 Cerbera manghas から,30,32,34,35) 17 はムク
ロジ科 Sapindus emarginatus から報告されているが,31) 本植物からの単離は今回が初め
てである.
22 【第 3 章】リュウゼツラン科 Yucca glauca 地下部の化学成分 3-1 Yucca glauca について リュウゼツラン科 Yucca glauca はアメリカ合衆国南西部の原産の多年生植物で, 幹 は地上には現れず, 無茎に見える矮性種である. 葉は長く, 長さ 40-60 cm で粉白色, 花茎は長さ 50-90 cm で直立して白色の花をつける.39) 本植物の根は「soapweed」と称 し, 炎症や創傷による出血の治療に民間薬として用いられているが, 本植物の成分研 究の報告はない. リュウゼツラン科植物には steroid および steroid 配糖体が豊富に含ま れていることが知られており, 当教室では同科の植物である Agave utahensis, Dracaena thalioides, Cordyline terminalis などから腫瘍細胞毒性を有する steroid 配糖体を単離して
いることから,40-44) 本植物にも steroid 配糖体が含有されていると推定された. そこで
今回, Y. glauca の薬用部位として用いられる地下部の MeOH エキスについて, steroid 配 糖体に着目した成分探索を行った.
3-2 抽出・分離
Y. glauca の地下部 (乾燥重量 2.0 kg) を熱 MeOH (2×5 L) で温浸抽出し, 抽出液を 減圧下濃縮した. 得られた MeOH 抽出エキス (435 g) を Figure 13 に示したスキーム により分離・精製し, 40-59 を単離した.
23 3-3 Spirostan 配糖体の構造
[化合物 40 の構造]
化合物 40 は非晶質の白色粉末として得られ, MeOH 溶液中, 比旋光度は -4.4 を示し
た. HR-ESI-TOF-MS (m/z: 739.4244 [M + H]+, calcd for C
39H63O13: 739.4269) および 13 C-NMR により, その分子式を C39H62O13と決定した. IR スペクトルは, 水酸基に基づく 吸収 (3347 cm-1) を示した. 化合物 40 の 1H-NMR スペクトルにおいて, 2 個の 3 級メチル基プロトン [δ H 0.95, 0.81 (each 3H, s)], 1 個の 2 級メチル基プロトン [δH 1.09 (3H, d, J = 6.8 Hz)], 1 組のエキ ソメチレン基プロトン [δH 4.81 and 4.77 (erch 1H, br s)] のほか, 2 個の糖のアノマープ ロトン [δH 5.28 (1H, d, J = 7.7 Hz), 4.89 (1H, d, J = 7.5 Hz)] に由来するシグナルを認め た. 以上のことから, 40 は 2 個の糖を有する spirostan 配糖体であると推定された. 化合物 40 を 1.0 M HCl で酸加水分解を行ったところ, アグリコンとして
5-spirost-25(27)-en-3-ol (40a) が,45) 糖としてD-galactose とD-glucose が得られた.
化合物 40 の糖鎖は, 各種 2 次元 NMR スペクトルの解析により, C-2 位の水酸基が置 換された -D-galactopyranosyl 基 (Gal) [δH-1' 4.89 (1H, d, J = 7.5 Hz); δC 102.2, 81.2, 75.1, 69.7, 76.5, 62.0 (C-1'-C-6')] と末端 -D-glucopyranosyl 基 (Glc) [δH-1'' 5.28 (1H, d, J = 7.7 Hz); δC 105.7, 76.7, 77.9, 71.6, 78.3, 62.7 (C-1''-C-6'')] で構成されていることが明らかと なった. 各糖のアノマーの立体配置は, J 値 (Gal: 7.5 Hz, Glc: 7.7) からいずれの糖も 配置であることを確認した. 化合物 40 の HMBC スペクトルにおいて, Glc のアノマー プロトン (δH 5.28) から Gal の C-2 位炭素 (δC 81.2) へ, Gal のアノマープロトン (δH 4.89) からアグリコンの C-3 位炭素 (δC 75.2) へ, それぞれの遠隔相関が観測された (Figure 14).
24 以上のことから 40 の構造を, 5-spirost-25(27)-en-3-yl O--D-glucopyranosyl-(1→2)--D-galactopyranoside と決定した. 40 [化合物 41 の構造] 化合物 41 (C39H60O14) の1H- および13C-NMR スペクトルは 40 とよく一致していた が, アグリコンの C 環部分 (C-11-13) に由来するシグナルに差が認められた. 化合 物 41 の IR スペクトルは 1705 cm-1にカルボニル基に基づく吸収を示し, 13C-NMR スペ クトルでは δC 213.0 に 4 級炭素のシグナルが観測されたことから, 41 のアグリコンに はカルボニル基が存在していることが示された. 化合物 41 の HMBC スペクトルにお いて, H-11 位プロトン [δH 2.36 (1H, dd, J = 13.6, 13.6 Hz), 2.19 (1H, dd, J = 13.6, 4.8 Hz)], H-17 位プロトン [δH 2.82 (1H, dd, J = 8.2, 7.1 Hz)] および H3-18 位のメチル基プロトン [δH 1.09 (3H, s)] からカルボニル炭素 (δC 213.0) へ遠隔相関が観測されたことから, カ ルボニル基は C-12 位に存在することが確認された (Figure 15).
Figure 15. Important HMBC correlations of the aglycone moiety of 41
化合物 41 を 1.0 M HCl で酸加水分解したところ, アグリコンとして
3-hydroxy-5-spirost-25(27)-en-12-one (41a)が,45) 糖としてD-galactose とD-glucose が得られた.
25 41 [化合物 42 の構造] 化合物 42 (C44H68O18) の 1H- および13C-NMR シグナルを 41 と比較したところ, ア グリコンに由来するシグナルはよく一致していた. しかし, 42 の分子式は 41 より C5H8O4分大きく, 1H-NMR において 3 個のアノマープロトン [δH 5.57 (1H, d, J = 7.9 Hz), 5.23 (1H, d, J = 7.7 Hz), 4.88 (1H, d, J = 7.7 Hz)] が確認された. 化合物 42 を 1.0 M HCl で酸加水分解したところ, アグリコンとして 41a が, 糖とし
てD-galactose (Gal), D-glucose (Glc), D-xylose (Xyl) が得られた.
化合物 42 の糖鎖に由来する 13C-NMR シグナルを 41 と比較したところ, Gal の C-3
位炭素のシグナルが低磁場シフトし, さらに -D-xylopyranosyl 基に由来する 5 個のシ
グナル [δH-1'''5.23 (1H, d, J = 7.7 Hz); δC 106.2, 75.1, 78.5, 71.0, 67.1 (C-1'''-C-5''')] が観測
された. 化合物 42 の HMBC スペクトルにおいて, Figure 16 で示した遠隔相関が観測 された.
26 以上のことから 42 の構造を, 3-[(O--D-glucopyranosyl-(1→2)-O-[-D-xylopyranosyl-(1→3)]--D-galactopyranosyl)oxy]-5-spirost-25(27)-en-12-one と決定した. 42 [化合物 43 の構造] 化合物 43 (C44H70O18) の1H- および 13C-NMR スペクトルを 42 とよく一致していた が, 42 の C-25 位と C-27 位間の二重結合に由来するシグナルが, 43 では 2 級メチル基 [δH 0.70 (3H, d, J = 5.6 Hz); δC 17.3] とメチン基 [δH 1.57 (1H, m); δC 30.5] のシグナルと して観測された. 化合物 43 を 1.0 M HCl で酸加水分解したところ, アグリコンとして
(25R)-3-hydroxy-5-spirostan-12-one (43a) が,46) 糖として D-galactose, D-glucose, D-xylose が得
られた.
以 上 の こ と か ら 43 の 構 造 を , (25R)-3-[(O--D-glucopyranosyl-(1 → 2)-O-[-D-xylopyranosyl-(1→3)]--D-galactopyranosyl)oxy]-5-spirostan-12-one と決定した.
27 [化合物 44 の構造]
化合物 44 (C44H70O19) の分子式は 43 より酸素原子が 1 個分だけ多かった. 化合物 44
を 1.0 M HCl で加水分解したところ, 糖としてD-galactose, D-glucose, D-xylose が得られ
たが, アグリコンは分解して得られなかった. 化合物 44 の 1H- および 13C-NMR スペクトルを 43 と比較したところ, 両者はよく 一致していたが, アグリコンの F 環 (C-22-27) に基づくシグナルに相違が認められ た. 化合物 44 の1H-1H COSY スペクトルの解析により, δ H 4.03 のオキシメチン基プロト ンからのスピン結合関係を確認し, HSQC スペクトルにより各プロトンの結合先の炭 素 シグ ナ ルを帰属した . その結果, F 環の部分構造は [-C(23)H2-C(24)(-OH)-C(25) H(-C(27)H3)-C(26)H2-O-] であり, C-24 位に水酸基を有することが明らかとなった. C-24 位と C-25 位の立体配置は, ROESY スペクトルにおいて H-24 (δH 4.03) と H-26ax (δH 3.60)
および Me-27 (δH 1.10) 間, H-23ax (δH 2.02) と H-25 (δH 1.85) 間にそれぞれ ROE 相関が
確認されたことから, 24R, 25S と決定した (Figure 17).
Figure 17. 1H-1H COSY and important ROE correlations of the F-ring of 44
以上のことから 44 の構造を, (24R,25S)-3-[(O--D-glucopyranosyl-(1 → 2)-O-[-D-xylopyranosyl-(1→3)]--D-galactopyranosyl)oxy]-24-hydroxy-5-spirostan-12-one と決定し た.
28 [化合物 45-51 の構造]
化合物 45 (C39H64O13), 46 (C39H64O14), 47 (C39H64O14), 48 (C39H62O14), 49 (C39H64O14), 50
(C44H70O17), 51 (C44H72O17) は非晶質の白色粉末として得られ, 物性値, 1H- および13
C-NMR スペクトルデータを文献値と比較することにより, それぞれ
(25R)-5-spirostan-3-yl O--D-glucopyranosyl-(1→2)--D-galactopyranoside (45),47)
(25R)-12-hydroxy-5-spirostan-3-yl O--D-glucopyranosyl-(1→2)--D-galactopyranoside (46),46)
(25R)-3-[(O--D-glucopyranosyl-(1→2)--D-galactopyranosyl)oxy]-5-spirostan-12-one (47),48)
2-hydroxy-5-spirost-25(27)-en-3-yl O--D-glucopyranosyl-(1→2)--D-galactopyranoside (48),45)
(25R)-2-hydroxy-5-spirostan-3-yl O--D-glucopyranosyl-(1→2)--D-galactopyranoside
(49),49) 5-spirost-25(27)-en-3-yl O--
D-glucopyranosyl-(1→2)-O-[-D-xylopyranosyl-(1→3)]--D-galactopyranoside (50),45) (25R)-5-spirostan-3-yl O--
29 3-4 Furostan 配糖体の構造 [化合物 52 の構造] 化合物 52 (C45H74O20) の1H-NMR スペクトルにおいて, 2 個の 3 級メチル基プロトン [δH 0.94, 0.83 (each 3H, s)], 1 個の 2 級メチル基プロトン [δH 1.30 (3H, d, J = 6.9 Hz)], 1 組 のエキソメチレン基プロトン [δH 5.33 and 5.04 (each 1H, br s)], 3 個の糖のアノマープロ トン [δH 5.28 (1H, d, J = 7.7 Hz), 4.98 (1H, d, J = 7.6 Hz), 4.89 (1H, d, J = 7.7 Hz)] が観測 された. 13C-NMR スペクトルにおいては, δ C 110.3 にヘミアセタール炭素に由来するシ グナルが確認され, Ehrlich 試薬に陽性を示したことから, 52 は 3 個の糖を有する 22-hydroxyfurostan 型 steroid 配糖体であることが示唆された. 化合物 52 を -D-glucosidase で酵素分解を行ったところ, 既知の spirostan 配糖体 48 とD-glucose (Glc') が得られた. 化合物 52 の HMBC スペクトルにおいて, Glc' のアノ マープロトン [δH 4.98 (1H, d, J = 7.6 Hz)] からアグリコン C-26 位炭素 (δC 72.0) への 遠隔相関が認められたことから, アグリコン C-26 位に D-glucose が結合していること が明らかとなった (Figure 18).
Figure 18. An HMBC correlation of the sugar moiety of 52
アグリコン C-22 位の立体配置は, phase-sensitive nuclear Overhauser effect correlation
spectroscopy (PHNOESY) スペクトルにおいて, H-20 位プロトン (δH 2.25) と H2-23 位
プロトン (δH 2.20) 間に NOE 相関が観測されたことにより, 22と決定した (Figure
19).
30
以 上 の こ と か ら 52 の 構 造 を , 26-[(-D-glucopyranosyl)oxy]-2,22-dihydroxy-5-furostan-25(27)-en-3-yl O--D-glucopyranosyl-(1→2)--D-galactopyranoside と決定した.
31 [化合物 53-59 の構造] 化合物 53 (C45H76O20), 54 (C45H76O20), 55 (C45H74O19), 56 (C45H76O19), 57 (C45H76O19), 58 (C45H74O20), 59 (C45H76O19) は非晶質の白色粉末として得られ, 物性値, 1H- および13 C-NMR スペクトルデータを文献値と比較することにより, それぞれ (25R)-26-[(-D-glucopyranosyl)oxy]-2,22-dihydroxy-5-furostan-3-yl O--D-glucopyranosyl-(1→2)--D-galactopyranoside (53),51)
(25S)-26-[(-D-glucopyranosyl)oxy]-2,22-dihydroxy-5-furostan-3-yl O--D-glucopyranosyl-(1→2)--D-galactopyranoside (54),52)
26-[(-D-glucopyranosyl)oxy]-22-hydroxy-5-furost-25(27)-en-3-yl
O--D-glucopyranosyl-(1→2)--D-galactopyranoside (55),53)
(25R)-26-[(-D-glucopyranosyl)oxy]-22-hydroxy-5-furostan-3-yl O--D-glucopyranosyl-(1→2)--D-galactopyranoside (56),53)
(25S)-26-[(-D-glucopyranosyl)oxy]-22-hydroxy-5-furostan-3-yl O--
D-glucopyranosyl-(1→2)--D-galactopyranoside (57),54) (25R)-3-[(O--D-glucopyranosyl-(1→2)--D-galactopyranosyl)-
oxy]-26-[(-D-glucopyranosyl)oxy]-22-hydroxy-5-furostan-12-one (58),55)
(25R)-26-[(-D-glucopyranosyl)oxy]-22-hydroxy-5-furostan-3-yl O--
32 3-5 小括
Y. glauca 地上部の MeOH 抽出エキスより, 新規 5 種 (40-44) を含む 12 種の spirostan 配糖体, および新規 1 種 (52) を含む 8 種の furostan 配糖体を単離し, それらの構造を 二次元 NMR を中心としたスペクトル解析と既知化合物とのデータの比較, 加水分解 の結果をもとに明らかにした.
今回単離された steroid 配糖体のアグリコンの A/B 環の結合様式は, すべて cis 体 (H-5であった同属の Y. gloriosa や同じリュウゼツラン科の Agave utahensis からは
A/B trans 体 (H-5と cis 体 の両方が単離されているが40-42,46,49,57spirostan および
furostan 配糖体の多くは A/B trans 体をとるY. glauca から A/B trans 体の spirostan およ び furostan 配糖体が単離されず, cis 体のみが単離されたことは興味深い
化合物 52, 53, 55, 56 はそれぞれ spirostan 配糖体 48, 49, 40, 45 に対応する furostan 配 糖体である.
33 【第 4 章】マメ科 Stryphnodendron fissuratum 果皮の化学成分 4-1 Stryphnodendron fissuratum について マメ科 Stryphnodendron fissuratum は, ブラジル原産の高さ 3-7 m の落葉亜高木であ る. Stryphnodendron 属植物は, その樹皮にタンニンを多く含み, 止血や下痢止めなど を目的に茶剤, 煎剤, エキス剤として用いられ, 外用薬として潰瘍や腫れ物の治療に 用いられている.58-60) また, S. fissuratum の果皮は, 家畜動物に対して, 経口摂取で消化 器系疾患や肝疾患を誘発したという報告がある.61) 当教室では S. fissuratum 果皮の EtOH エキスから, これまでに 13 種の triterpene 配糖体を報告しているが, 62,63) 成分探 索が未着手の分離画分にさらに多数の配糖体が含有されていると推定された. そこで 今回, S. fissuratum 果皮の EtOH エキスについて, triterpene 配糖体に着目した詳細な成 分探索を行った.
4-2 抽出・分離
S. fissuratum の果皮 (乾燥重量 2.0 kg) を EtOH で温浸抽出し, 減圧下濃縮した. EtOH 抽出エキス (353 g) を水に懸濁させ, n-BuOH で分配した. 得られた n-BuOH 可 溶性画分 (70 g) を Figure 20 に示したスキームにより分離・精製し, 60-69 を単離し た.
34 4-3 Triterpene 配糖体の構造
[化合物 60 の構造]
化合物 60 は非晶質の白色粉末として得られ, MeOH 溶液中で比旋光度 -26.1 を示し
た. HR-ESI-TOF-MS (m/z: 805.4332 [M + Na]+, calcd for C
41H66O14Na: 805.4350) および 13C-NMR スペクトルにより, その分子式を C 41H66O14と決定した. IR スペクトルは, 水 酸基に基づく吸収 (3326 cm-1) とカルボニル基に基づく吸収 (1730 cm-1) を示した. 化合物 60 の1H-NMR スペクトルにおいて, 7 個の 3 級メチル基プロトン [1.15, 1.13, 1.01, 0.95, 0.89, 0.86, 0.81 (each 3H, s)] と 1 個のオレフィンプロトン [ 5.27 (1H, br s)] が観測され, さらに 2 個の糖のアノマープロトン [ 4.36 (1H, d, J = 7.9 Hz), 4.34 (1H, d, J = 7.7 Hz)] が観測された. 化合物 60 を 1.0 M HCl で酸加水分解を行ったところ, アグリコンとして
2,3,21-trihydroxyolean-12-en-28-oic acid (60a) が,64) 糖としてD-glucose とD-xylose が得られた.
化合物 60 の糖鎖構造は, 各種 2 次元 NMR スペクトルの解析により, C-4 位の水酸基 が置換された -D-glucopyranosyl 基 (Glc) [δH-1' 4.36 (1H, d, J = 7.9 Hz); δC 106.2, 76.4, 76.2, 80.3, 75.2, 61.4 (C-1'-C-6')] と -D-xylopyranosyl 基 (Xyl) [δH-1'' 4.34 (1H, d, J = 7.7 Hz); δC 105.4, 77.8, 74.9, 71.0, 67.1 (C-1''-C-5'')] で構成されていることが明らかとなった. 各糖のアノマーの立体配置は, J 値 (Glc: 7.9 Hz, Xyl: 7.7) からいずれの糖も 配置で あることを確認した. 化合物 60 の HMBC スペクトルにおいて, Xyl のアノマープロト ン (δH 4.34) から Glc の C-4 位炭素 (δC 80.3) へ, Glc のアノマープロトン (δH 4.36) か らアグリコンの C-3 位炭素 (δC 96.2) へ, それぞれの遠隔相関が観測されたことによ り, 各単糖の結合関係とアグリコンへの結合位置を Figure 21 に示すように決定した.
Figure 21. Important HMBC correlations of the sugar moiety of 60
35 60 [化合物 61 の構造] 化合物 61 の分子式 (C47H76O18) は 60 より C6H10O4分大きく, 両者の13C-NMR スペ クトルを比較したところ, 61 のアグリコンの C-3 位に結合した糖鎖は 60 と同一であ り, 61 では, さらに末端 -L-rhamnopyranosyl 基 (Rha) [H 4.72 (1H, br s); C 104.1, 72.4, 72.5, 74.0, 70.1, 18.4 (C-1'''-C-6''')] に基づくシグナルが観測された. Rha のアノマーの 立体配置は, 1J C-H 値が 173.0 Hz であったことから 配置であると決定した. 化合物 61 を酸加水分解したところ, アグリコンとして 60a が, 糖として D-glucose, D-xylose, L-rhamnose が得られた. 化合物 61 の HMBC スペクトルにおいて, Rha のアノマープロトン (H 4.72) からア グリコンの C-21 位炭素 (C 84.1) へ遠隔相関が観測された (Figure 22).
Figure 22. Important HMBC correlations of the sugar moieties of 61
37
Figure 23. Important HMBC correlations of the sugar moiety of 62
以上のことから 62 の構造を, 3-[(O--L-arabinopyranosyl-(1→4)-O--D-xylopyranosyl- (1→2)-O-[-D-xylopyranosyl-(1→4)]--D-glucopyranosyl)oxy]-2,21-dihydroxyolean-12-en-28-oic acid と決定した. 62 [化合物 63 の構造] 化合物 63 (C57H92O27) の分子式は 62 より C6H10O5分大きく, 1H-NMR スペクトルに おいて 5 個の糖のアノマープロトン [ 4.81 (1H, d, J = 7.6 Hz), 4.73 (1H, d, J = 7.9 Hz), 4.53 (1H, d, J = 4.2 Hz), 4.46 (1H, d, J = 8.0 Hz), 4.32 (1H, d, J = 7.7 Hz)] に由来するシグ ナルが観測された. 化合物 63 を酸加水分解したところ, アグリコンとして 60a が, 糖 としてL-arabinose, D-glucose, D-xylose が得られた.
化合物 63 の糖鎖は 5 個の糖で構成されており, 通常の 2 次元 NMR スペクトルです
べての糖領域の 1H- および 13C-NMR スペクルのシグナルを帰属することは困難であ
38 ルを照射し, それぞれに対応する糖のサブスペクトルを抽出した後 (Figure 24), 1H-1H COSY スペクトルにより, すべての糖プロトンの化学シフト値と J 値を完全に帰属し た. 次に, HSQC および HSQC-TOCSY スペクトルの解析により, 各糖の炭素シグナル を帰属した. その結果, 63 の糖鎖は C-2 位の水酸基と C-4 位の水酸基が置換された -D-glucopyranosyl 基 (Glc) [H-1 4.46 (1H, d, J = 8.0 Hz); C 104.6, 81.4, 76.8, 80.0, 76.5, 61.4 (C-1'-C-6')], C-3 位の水酸基と C-4 位の水酸基が置換された -D-xylopyranosyl 基 (Xyl) [H-1 4.81 (1H, d, J = 7.6 Hz); C 105.0, 76.4, 83.3, 72.2, 64.5 (C-1''-C-5'')], 末端 -D-glcopyranosyl 基 (Glc') [H-1 4.73 (1H, d, J = 7.9 Hz); C 105.0, 75.5, 78.0, 70.6, 77.9, 62.0 (C-1'''-C-6''')], 末端 -L-arabinopyranosyl 基 (Ara) [H-1 4.53 (1H, d, J = 4.2 Hz); C 100.5, 70.8, 73.3, 66.9, 63.5 (C-1''''-C-5'''')], 末端 -D-xylopyranosyl 基 (Xyl') [H-1 4.32 (1H, d, J = 7.7 Hz); C 105.3, 74.9, 78.4, 71.0, 67.2 (C-1'''''-C-5''''')] で構成されていることが明らか となった. Glc, Glc', Xyl, Xyl' のアノマーの立体配置は, それぞれのアノマープロトン の J 値 (7.6-8.0 Hz) からいずれも 配置であることを確認した.
39
化合物 63 の HMBC スペクトルにおいて, Glc' のアノマープロトン (δH 4.53) から
Xyl の C-3 位炭素 (δC 83.3) へ, Ara のアノマープロトン (δH 4.53) から Xyl の C-4 位炭
素 (δC 72.2) へ, Xyl のアノマープロトン (δH 4.81) から Glc の C-2 位炭素 (δC 81.4) へ,
Xyl' のアノマープロトン (δH 4.32) から Glc の C-4 位炭素 (δC 80.0) へ, Glc のアノマ
ープロトン (δH 4.46) からアグリコンの C-3 位炭素 (δC 96.6) へ, それぞれの遠隔相関
が観測されたことにより, 各単糖の結合関係とアグリコンの結合位置を Figure 25 に 示すように決定した.
Figure 25. Important HMBC correlation of the sugar moiety of 63
ここで, 63 の Ara 部の1H- および 13C-NMR における化学シフトと J 値を 62 と比較 したところ, 両者に大きな差が認められた. さらに, 63 では1J C-H 値が 166 Hz で観測さ れ, HMBC においてアノマープロトン [H 4.53 (1H, d, J = 4.2 Hz)] から C-3 位炭素 (C 73.3) と C-5 位炭素 (C 63.5) へ強い遠隔相関が観測されたことから, 63 の Ara は1C4 型配座をとっていることが明らかとなった (Figure 26).
40 以 上 の こ と か ら 63 の 構 造 を , 3-[(O--L-arabinopyranosyl-(1→4)-O-[-D- glucopyranosyl-(1→3)]-O--D-xylopyranosyl-(1→2)-O-[-D-xylopyranosyl-(1→4)]--D-glucopyranosyl)oxy]-2,21-dihydroxyolean-12-en-28-oic acid と決定した. 63 [化合物 64 の構造] 化合物 64 (C69H112O35) の 1H- および 13C-NMR スペクトルを解析したところ, アグ リコンは 61 と同一であると推定されたが, 糖部は 7 個の単糖で構成されており, 63 と 同様, 通常の 2 次元 NMR スペクトルでの解析は困難であった. そこで, 63 と同じよう
に, 1D-selective-TOCSY, 1H-1H COSY, HSQC, HSQC-TOCSY スペクトルの解析を行った.
41
化合物 64 を酸加水分解したところ, アグリコンとして 60a が, 糖としてL-arabinose,
D-glucose, L-rhamnose, D-xylose が得られた.
化合物 64 の HMBC スペクトルにおいて, Rha のアノマープロトン (δH 5.10) から Glc' の C-2 位炭素 (δC 80.4) へ, Glc' のアノマープロトン (δH 4.90) から Xyl の C-3 位 炭素 (δC 79.9) へ, Ara のアノマープロトン (δH 4.65) から Xyl の C-4 位炭素 (δC 71.8) へ, Xyl のアノマープロトン (δH 4.70) から Glc の C-2 位炭素 (δC 81.3) へ, Xyl' のアノ マープロトン (δH 4.36) から Glc の C-4 位炭素 (δC 80.2) へ, Glc のアノマープロトン (δH 4.48) からアグリコンの C-3 位炭素 (δC 96.6) へ, Rha' のアノマープロトン (δH 4.72) からアグリコンの C-28 位炭素 (δC 84.0) へ, それぞれの遠隔相関が観測されたことに より, 各単糖の結合関係とアグリコンの結合位置を Figure 27 に示すように決定した. なお, 1H- および13C-NMR スペクトルにおける化学シフト値と J 値, 1J C-H 値より, 64 の Ara は 63 と同様に1C4型配座をとっていることが明らかとなった.
Figure 27. Important HMBC correlations of the sugar moieties of 64
43
Figure 28. Important HMBC correlations of the aglycone moiety of 65
以上のことから 65 の構造を, 2,21-dihydroxy-3-[(O--D-xylopyranosyl-(1→4)]--D-glucopyranosyl)oxy]olean-12-en-28-oic acid -lactone と決定した.
65 [化合物 66 の構造] 化合物 66 (C57H90O26) の1H- および13C-NMR スペクトルデータを 65 と比較したと ころ, アグリコンに基づくシグナルは両者でよく一致していた. また, 1H-NMR スペク トルにおいて, 5 個のアノマープロトン [(1H, d, J = 7.8 Hz), 4.74 (1H, d, J = 8.0 Hz), 4.55 (1H, d, J = 4.2 Hz), 4.47 (1H, d, J = 7.8 Hz), 4.34 (1H, d, J = 7.7 Hz)] に由来する
シグナルが観測され, 酸加水分解によりL-arabinose, D-glucose, D-xylose が得られた.
44
Figure 29. Important HMBC correlations of the sugar moiety of 66
以 上 の こ と か ら 66 の 構 造 を , 3-[(O--L-arabinopyranosyl-(1→4)-O-[-D- glucopyranosyl-(1→3)]-O--D-xylopyranosyl-(1→2)-O-[-D-xylopyranosyl-(1→4)]--D-glucopyranosyl)oxy]-2,21-dihydroxy-olean-12-en-28-oic acid -lactone と決定した.
45 [化合物 67 の構造] 化合物 67 (C63H100O30) の1H- および13C-NMR スペクトルデータを 65 と比較したと ころ, アグリコンに基づくシグナルは両者でよく一致していた. また, 1H-NMR スペク トルにおいて, 6 個のアノマープロトン [(1H, br s), (1H, d, J = 7.4 Hz), 4.70 (1H, d, J = 7.6 Hz), 4.66 (1H, d, J = 3.0 Hz), 4.47 (1H, d, J = 7.8 Hz), 4.36 (1H, d, J = 7.7 Hz)]
に由来するシグナルが観測され, 酸加水分解により L-arabinose, D-glucose, L-rhamnose,
D-xylose が得られた.
化合物 67 の糖鎖構造は, HMBC スペクトルにおいて, Figure 30 に示した遠隔相関が 観測されたことから, アグリコンの C-3 位に 64 と同じ糖鎖が結合していることが明ら かとなった.
Figure 30. Important HMBC correlations of the sugar moiety of 67
47
Figure 31. Important HMBC and NOE correlations of the aglycone moiety of 68
化合物 68 を 1.0 M HCl で酸加水分解したところ, L-arabinose, D-glucose, L-rhamnose,
D-xylose が得られた.
以 上 の こ と か ら 68 の 構 造 を , 11,12-epoxy-2,13,21-trihydroxy-3-[(O--L- rhamnopyranosyl-(1→2)-O--D-glucopyranosyl-(1→3)-O-[-L-arabinopyranosyl-(1→4)]-O- -D-xylopyranosyl-(1→2)-O-[-D-xylopyranosyl-(1→4)]--D-glucopyranosyl)oxy]olean-28-oic acid -lactone と決定した.
48 [化合物 69 の構造] 化合物 69 (C63H100O32) の1H- および13C-NMR スペクトルデータを 68 と比較したと ころ, アグリコンの C-3 位に結合した糖鎖に基づくシグナルは両者でよく一致してい た. また, 69 のアグリコンに基づくシグナルを 60 と比較したところ, C 環部分 (C-8, 9, 11-14) のシグナルに相違が認められた. 化合物 69 の IR スペクトル (1659 cm-1), UV (251 nm) および13C-NMR [C 202.4 (C-11), 172.1 (C-13), 128.5 (C-12)] により, 69 は共役 カルボニル基を有することが示唆された. 化合物 69 の HMBC スペクトルにおいて, H-12 位のオレフィンプロトン [H 5.57 (1H, s)] および H-9 位のメチン基プロトン [H 2.45 (1H, s)] から C 202.4 のカルボニル炭素へ遠隔相関が観測されたことから, C-11 位にカルボニル基が存在していることが明らかとなった (Figure 32).
Figure 32. Important HMBC correlation of the aglycone moiety of 69
49
50 4-4 小括
51 【第 5 章】腫瘍細胞に対する細胞毒性 悪性腫瘍は 40 年近くに渡って日本人の死因の第 1 位となっており, 新たな治療薬の 開発が必要とされている. 悪性腫瘍全体の中で死亡者数が最も多いのは肺がんである. また, 白血病は全年齢における罹患者数は多くはないが, 未成年者における患者数は 悪性腫瘍の中で最も多く, 社会的影響が大きいといえる. これらのことから, 今回, 4 種の植物より単離された 69 種の配糖体について, HL-60 ヒト白血病細胞と A549 ヒト 肺がん細胞に対する腫瘍細胞毒性を検討した. 5-1 単離された化合物の細胞毒性
M. cundurango から単離された pregnane 配糖体 (1-15), T. neriifolia から単離された cardenolide 配糖体 (16-39), Y. glauca から単離された spirostan 配糖体 (40-59) および furostan 配糖体 (53-59), S. fissuratum から単離された triterpene 配糖体 (60-69) につ いて, 接触時間 72 時間における, HL-60 ヒト白血病細胞と A549 ヒト肺がん細胞に対
する細胞毒性を 3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromide (MTT) 法
により評価した. その結果, pregnane 配糖体 (5-7, 11, 12), cardenolide 配糖体 (16-39), spirostan 配糖体 (40, 45, 50, 51), furostan 配糖体 (55-57) は, HL-60 細胞と A549 細胞
の両者に対して細胞毒性を示した (IC50 0.0050–16.9 M). Triterpene 配糖体は, いずれ
52
Table 1. Cytotoxic activities of 1-69, etoposide, and cisplatin against HL-60 and A549 cells 1)
1 >20 >20 37 14.7 ± 0.870 11.1 ± 0.32 2 >20 >20 38 0.40 ± 0.011 0.27 ± 0.0052 3 >20 >20 39 3.8 ± 0.024 2.3 ± 0.11 4 >20 >20 40 2.5 ± 0.47 7.3 ± 0.63 5 4.2 ± 0.24 12.2 ± 1.34 41 >20 >20 6 4.6 ± 0.53 15.7 ± 0.47 42 >20 >20 7 5.6 ± 0.12 16.3 ± 0.63 43 >20 >20 8 14.1 ± 2.16 >20 44 >20 >20 9 8.4 ± 0.91 >20 45 3.1 ± 0.35 8.4 ± 0.34 10 >20 >20 46 >20 >20 11 6.1 ± 0.54 16.9 ± 0.75 47 >20 >20 12 3.8 ± 0.31 12.8 ± 1.87 48 5.0 ± 0.09 >20 13 >20 >20 49 11.3 ± 1.42 >20 14 >20 >20 50 4.9 ± 0.43 6.0 ± 0.65 15 >20 >20 51 4.2 ± 0.37 5.9 ± 0.43 16 0.0050 ± 0.0002 0.0055 ± 0.00015 52 13.3 ± 0.09 >20 17 0.031 ± 0.0037 0.036 ± 0.0036 53 17.8 ± 2.47 >20 18 0.019 ± 0.0010 0.026 ± 0.0012 54 9.2 ± 1.21 >20 19 0.050 ± 0.0016 0.069 ± 0.0040 55 4.4 ± 0.10 11.9 ± 0.7 20 0.48 ± 0.043 0.23 ± 0.012 56 3.7 ± 0.55 7.0 ± 0.29 21 0.065 ± 0.0029 0.035 ± 0.0044 57 3.3 ± 0.15 9.3 ± 2.07 22 0.57 ± 0.032 0.57 ± 0.019 58 >20 >20 23 1.8 ± 0.021 1.4 ± 0.17 59 14.3 ± 0.07 >20 24 0.47 ± 0.0084 0.2 ± 0.0090 60 >20 >20 25 5.6 ± 0.20 2.8 ± 0.25 61 >20 >20 26 0.58 ± 0.021 0.38 ± 0.011 62 >20 >20 27 1.9 ± 0.086 1.1 ± 0.083 63 >20 >20 28 1.0 ± 0.027 0.76 ± 0.041 64 >20 >20 29 0.66 ± 0.023 0.53 ± 0.055 65 >20 >20 30 0.82 ± 0.014 0.73 ± 0.043 66 >20 >20 31 1.7 ± 0.037 1.7 ± 0.11 67 >20 >20 32 11.6 ± 1.1 12.0 ± 1.0 68 >20 >20 33 0.081 ± 0.002 0.22 ± 0.02 69 >20 >20 34 0.21 ± 0.0063 0.16 ± 0.002 35 2.8 ± 0.16 2.5 ± 0.17 Etoposide 0.73 ± 0.063 14.3 ± 0.070 36 1.9 ± 0.170 1.6 ± 0.11 Cisplatin 1.7 ± 0.0034 5.1 ± 0.27
1) Date are presented as the mean value ± S.E.M. of three experiments performed in triplicate
IC50 (M)
HL-60 A549
Compound Compound
HL-60 A549
53 5-2 HL-60 細胞に対する構造活性相関 5-2-1 Pregnane 配糖体における構造活性相関 Pregnane 配糖体では, アグリコンの C-11 位または C-12 位水酸基に, acetyl 基, benzoyl 基, (E)-cinnamoyl 基のいずれかの置換基が結合すると, 腫瘍細胞毒性が増強し た. また, 10 や 13 のように糖鎖の末端に -D-glucopyranosyl 基が結合すると, 腫瘍細胞 毒性が減弱した (IC50 >20 M). 化合物 6, 7, 11, 12 は共通のアグリコン構造を有し, 構 成糖の種類や数は異なるが, すべて deoxy 糖のみから成る糖鎖を有する配糖体である. これらの腫瘍細胞毒性の強度はほぼ同等であった. 5-2-2 Cardenolide 配糖体における構造活性相関 化合物 16 は, 今回単離した cardenolide 配糖体のなかで最も強い腫瘍細胞毒性を示
した (IC50 0.0050 M). Cardenolide 配糖体においては, アグリコンの A/B 環の結合様式
56 5-3 HL-60 細胞に対するアポトーシス誘導活性
単離された化合物のうち, HL-60 細胞に対して腫瘍細胞毒性を示した pregnane 配糖
体 6 (IC50 4.6 M), cardenolide 配糖体 16 (IC50 0.0050 M), spirostan 配糖体 40 (IC50 2.5
M), furostan 配糖体 55 (IC50 4.4 M) について, HL-60 細胞に対するアポトーシス誘導
57 5-3-1 細胞の形態変化
化合物 6 (23 M), 16 (0.025 M), 40 (12.5 M), 55 (22 M) でそれぞれ 3, 6, 12, 24 時間 処理した HL-60 細胞の DNA を, 4’,6-diamidino-2-phynylindole (DAPI) で染色し, 蛍光顕 微鏡で形態観察を行った. その結果, アポトーシス細胞に特徴的な核クロマチンの凝 集が観察された (Figure 33).
Figure 33. Morphology of HL-60 cells treated with 6, 16, 40, 55, or etoposide
58 5-3-2 細胞周期解析
化合物 6, 16, 40, 55 で処理した HL-60 細胞を RNase で処理後, DNA を propidium ioide (PI) で染色し, DNA 量の変化をフローサイトメーターで測定した. その結果, 6, 16, 40 は 6 時間の, 55 は 24 時間のヒストグラムにおいて, アポトーシス細胞に特徴的な sub-G1 のピークの上昇が観察された (Figure 34).
59 5-3-3 Caspase-3 活性 Caspase 類は, アポトーシス誘導のシグナル伝達経路を構成するシステインプロテ アーゼである. それらのうち, caspase-3 はアポトーシスの実行段階で活性化される efector caspase である. 化合物 6, 16, 40, 55 で処理した HL-60 細胞の caspase-3 活性を測定した. その結果, コントロールと比較して, すべての化合物に caspase-3 の活性化が認められた (Figure 35).
Figure 35. Caspase-3 activity in the HL-60 cells treated with 6, 16, 40, 55, or etoposide HL-60 cells were treated with either 23 M of 6 for 16 h, 0.025 M of 16 for 16 h, 12.5 M of 40 for 6 h, 22 M of 55 for 16 h, or 15 M of etoposide for 16 h, and caspase-3 activity in the lysates was measured using a caspase-3 colorimetric assay kit. The data are presented as the mean ± S.E.M. ofthree experiments. (* p < 0.001 vs. the control group readings)
60 5-4 アポトーシス誘導経路の検討 HL-60 細胞に対する 6, 16, 40, 55 のアポトーシス誘導経路を検討するため, アポト ーシス誘導に関与する caspase-8 と caspase-9 活性の測定, ミトコンドリア膜電位の変 化の観察を行った. 5-4-1 Caspase-8 活性
Caspase-8 は, 細胞表層にある Fas や TNF 受容体などのデスレセプター (death receptor) を介するアポトーシス誘導に関与する分子で, アポトーシス誘導に関わるシ グナル伝達経路の最上流に位置する iniciator caspase の 1 種である. デスレセプターを 介して活性化された caspase-8 は, より下流の caspase カスケードを活性化してアポト ーシスを誘導する. 化合物 6, 16, 40, 55 で 6 時間処理した HL-60 細胞の caspase-8 活性を測定した結果, 40 で処理した HL-60 細胞において, caspase-8 の有意な活性化が認められた (Figure 36).
Figure 36. Caspase-8 activity in the HL-60 cells treated with with 6, 16, 40, 55, or staurosporine (S)
61 5-4-2 ミトコンドリア膜電位の変化 化合物 6, 16, 40, 55 について, アポトーシスのシグナル伝達経路の一つに深く関わっ ているミトコンドリアに注目し,ミトコンドリア膜電位の変化を観察した. 正常細胞のミトコンドリアは負電荷を帯びているが, アポトーシス誘導の初期にミ トコンドリア傷害を受けると, ミトコンドリア膜電位の消失が起こる. MitoCaptureTM 試薬はカチオン性の蛍光色素であり, 正常細胞を染色すると蛍光色 素がミトコンドリアに蓄積して凝集し赤色の蛍光を発する. 一方, ミトコンドリア膜 電位が消失した細胞では蛍光色素がミトコンドリア内で凝集できずに, 細胞質におい て緑色の蛍光を発する. 化合物 6, 16, 40, 55 でそれぞれ, 3, 6, 12, 24 時間処理した HL-60 細胞を MitoCaptureTM 試薬で染色し, 蛍光顕微鏡で観察を行った. その結果, 陽性対照の etoposide では 12, 24 時間処理した HL-60 細胞でミトコンドリア膜電位の消失を示す緑色の蛍光が認められ た. 化合物 6, 16, 40 では, 12 および 24 時間処理した HL-60 細胞で緑色の蛍光が観察 された (Figure 37).
Figure 37. Mitochondrial membrane morphology of HL-60 cells treated with 6, 16, 40, 55, or etoposide
HL-60 cells were stained with MitoCaptureTM reagent after treatment with either 6, 16, 40, 55, or etoposide
62 5-4-3 Caspase-9 活性
アポトーシスの誘導によりミトコンドリア膜電位の消失が起こると, ミトコンドリ ア膜内部の cytochorome c が細胞質へ流出される. 流出した cytochorome c は細胞質中 の Apaf-1 および caspase-9 の前駆体である pro-caspase-9 と複合体を形成し, caspase-9 が 活性化される. その後, efector caspase である caspase-3 の活性化が起きる.
化合物 6, 16, 40, 55 で 24 時間処理した HL-60 細胞の caspase-9 活性を測定した結果,
16 および 40 で処理した HL-60 細胞において, caspase-9 の有意な活性化が認められた
(Figure 38).
Figure 38. Caspase-9 activity in the HL-60 cells treated with 6, 16, 40, 55, or etoposide HL-60 cells were treated with either 23 M of 6, 0.025 M of 16, 12.5 M of 40, 22 M of 55, or 15 M of etoposide for 24 h, and caspase-9 activity was measured using a caspase-9 activity apoptosis assay kit. The data are presented as the mean ± S.E.M. of three experiments. (* p < 0.001 vs. the control group readings)
64
Figure 39. Cytostatic and cytotoxic effects of 6, 16, 40, 55, etoposide, or cisplatin on HL-60 cells
65 5-6 TIG-3 ヒト胎児肺由来線維芽細胞に対する細胞毒性 化合物 6, 16, 40, 55 の腫瘍細胞選択的な細胞毒性を確認するため, TIG-3 ヒト胎児肺 線維芽細胞に対する細胞毒性を評価した. その結果, pregnane 配糖体である 6 は, 腫瘍 細胞選択的な細胞毒性を示した (Table 2). 一方, 16, 40, 55 は TIG-3 細胞を傷害するこ とから, cisplatin と同様, 腫瘍細胞選択性をもたないことがわかった. 5-7 Cardenolide 配糖体の腫瘍細胞毒性と Na+, K+-ATPase 阻害活性との相関 一般に cardenolide 配糖体は強心配糖体と称し, Na+, K+-ATPase 阻害を作用機序とす る強心活性を示し, その腫瘍細胞毒性については Na+, K+-ATPase 阻害活性の寄与が示 唆されている.67) そこで, 今回単離した cardenolide 配糖体 (16-19, 21-37, 39) の Na+, K+-ATPase 阻害活性を評価した (Table 3). その結果, Na+, K+-ATPase 阻害活性の IC 50値は, 18, 16, 17 の順に, それぞれ 0.61, 0.79, 3.36 M であった. これに対して, HL-60 および A549 細胞に対する細胞毒性の IC50値 は, いずれも 16, 18, 17 の順 (HL-60: 0.0050, 0.019, 0.031 M, A549: 0.0055, 0.026, 0.036 M) であり, 16-18 のもつ腫瘍細胞に対する毒性は, Na+, K+-ATPase 阻害活性とは別 の機構により発揮されている可能性が考えられた.
Table 2. Cytotoxic activities of 6, 16, 40, 55, and cisplatin against HL-60, A549, and TIG-3 cells 1)
HL-60 A549 TIG-3 6 4.6 ± 0.53 15.7 ± 0.47 > 20 16 0.0050 ± 0.00020 0.0055 ± 0.00015 0.0019 ± 0.00010 40 2.5 ± 0.47 7.3 ± 0.63 4.8 ± 0.30 55 4.4 ± 0.10 11.9 ± 0.70 5.0 ± 0.43 cisplatin 1.7 ± 0.0034 5.1 ± 0.27 1.2 ± 0.031
1) Date are presented as the mean value ± S.E.M. of three experiments performed in triplicate.
66
Table 3. Na+, K+-ATPase inhibitory activity of 16-39, and ouabain 1)
Compound Compound 16 0.79 ± 0.04 29 4.43 ± 0.9 17 3.36 ± 0.3 30 11.2 ± 0.3 18 0.61 ± 0.1 31 10.2 ± 1.8 19 1.32 ± 0.2 32 >55 20 n.d.2) 33 8.95 ± 0.7 21 3.55 ± 0.8 34 17.3 ± 2.1 22 6.02 ± 0.9 35 34.9 ± 2.7 23 20.5 ± 2.2 36 29.0 ± 1.2 24 2.96 ± 0.4 37 >55 25 2.46 ± 0.5 38 n.d. 26 7.05 ± 1.2 39 29.6 ± 2.4 27 6.64 ± 0.6 28 7.59 ± 0.6 Ouabain 1.10 ± 0.2 2) Not determined. IC50 (M) IC50 (M)
67 5-8 小括
M. cundurango から単離された pregnane 配糖体 (1-15), T. neriifolia から単離された cardenolide 配糖体 (16-39), Y. glauca から単離された spirostan 配糖体 (40-59) および furostan 配糖体 (53-59), S. fissuratum から単離された triterpene 配糖体 (60-69) につ
いて, HL-60 細胞と A549 細胞に対する腫瘍細胞毒性を MTT 法により評価した. その
結果, pregnane 配糖体 (5-7, 11, 12), cardenolide 配糖体 (16-39), spirostan 配糖体 (40,
45, 50, 51), furostan 配糖体 (55-57) は, HL-60 細胞と A549 細胞の両者に対して腫瘍細
胞毒性を示した (IC50 0.0050–16.9 M). Triterpene 配糖体 (60-69) は, いずれの化合物
も 20 M の濃度で有意な腫瘍細胞毒性を示さなかった. これらの結果を考察し, 構造 活性相関に関する知見を得た.
単離された化合物のうち, pregnane 配糖体 6, cardenolide 配糖体 16, spirostan 配糖体
40, furostan 配糖体 55 について, HL-60 細胞に対するアポトーシス誘導活性を検討した. その結果, 16 と 40 はミトコンドリア膜電位の消失と caspase-9 の有意な活性化を伴う アポトーシスの誘導が確認された. また, 40 には caspase-8 の有意な活性化とミトコン ドリア膜電位の消失が認められたことから, 40 は細胞膜表面に存在する death receptor を介し, ミトコンドリア経路によりアポトーシスを誘導する可能性が示唆された. 化 合物 6, 16, 40, 55 は, いずれも植物由来の配糖体成分であるが, アポトーシスの誘導経 路が異なることが示唆された (Figure 40).
Figure 40. Caspase cascade pathway
68 化合物 6, 16, 40, 55 の HL-60 細胞に対する生細胞の割合の経時変化を検討したとこ ろ, 化合物 6 は, HL-60 細胞に対して, 培養時間が 12 時間では細胞増殖抑制活性を示 し, 培養時間が 24, 48, 72 時間では細胞傷害性を示した. 化合物 16 は, 培養時間が 12 時間から顕著な生細胞数の減少をもたらすことから, 細胞傷害性を示すと考えられた. 化合物 40 は, 16 と同様に細胞傷害性を示した. 化合物 55 は, HL-60 細胞に対して, 短 時間での細胞傷害性を示さず, 培養時間が長くなることで徐々に生細胞の割合が減少 することから, 細胞増殖抑制活性を示すと考えられた. 化合物 40 は spirostan 配糖体で あり, 55 はそれに対応する furostan 配糖体である. 化合物 40 は細胞傷害性を示し, 55 は細胞増殖抑制活性を示すことが確認された. 化合物 40 は spirostan 配糖体であり, 55 はそれに対応する furostan 配糖体である. 化 合物 40 は濃度依存性の細胞毒性を示し, 55 は時間依存性の細胞毒性を示すことが確 認された. 化合物 55 を glucosidase で処理すると, 55 のアグリコンの C-26 位に結合した -D-glucosyl 基が加水分解して外れるとともに, 閉環して 40 となる (Figure 41). 化合物 55 を培養中, 何らかの要因によりスピロスタン配糖体への変換が起こる可能性はない かについて, 今後検討する予定である.
Figure 41. Conversion of 55 to 40 via enzymatic hydrolysis