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自動車産業軌跡合成 の可能性

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(1)

自動車産業軌跡合成 の可能性

‑ボル ボ展 開 と トヨタの新 しい実験 をめ ぐって ‑

1

は じめ に

朝 日新 聞の連載記事 「揺れ る生産現場 ‑ トヨタの工場 か ら

( 1 99 4

1 0

月1

4

日付) は,ボルボ社 の生産方式 をめ ぐっての研究者 と トヨタ経営陣の 自動車産 業の今後 に関す る対立的な見解 を報 じた。イエテポ リ大学のエルガー ドは,ボ ルボにおいて作業貞 は真 の能力 を発揮 し,生産性 も上がっている と主張 し,一 方は,「ボルボ方式 は,生産性か らみて, トヨタに とって参考 になる とは思 え ない」 と反論 しているこの記事が掲載 された時期 は,すでにバ ブルがは じけ て 「悪魔のサイクル」 に日本 自動車産業が完全 に組み入れ られているときであ る。新 しい方向が模索 され, トヨタが福 岡県宮 田町に 「トヨタ自動車九州」 を 建設す るに当たって,ボルボをは じめ とす る トヨタとは異 なる方式 を詳 しく研 究 した ことも報 じている

他方,

MI T

研 究陣は,「リー ン生産方式」 こそ, クラフ ト生産 と大量生産 の最良の面 を結合 し,原価 を削減する とともに著 しく品質 を向上 させ,同時に 製品の多様性 を広 げなが らや りがいのあ る仕事 を提供 す ることで世界 に貢献

,21

世紀 には標準的生産 システム となる

( Wo ma c k e

t.

,1 9 9 0 :2 7 7,3 48 ‑ 3 49

頁) と主張す る とともに,ボルボ ・ドック生産方式 に対 しては,「新職人主義」へ のノス タルジアで 「ヘ ンリー ・フォー ドの組立小屋へ の全面的回帰ときめつ ける

( 1 01

,

1 26 ‑1 2 7

)。

エルガー ドと同 じボルボの研究者バー グレンは,主

普 " TheVo l voExpe r ie nc e' '( 1 9 9 3 )

でかかる 「偏見」に反論 し,俗 に言 う 「ボ

〔3 〕

(2)

4

4 7

2・3

合併号

ルヴイズム」 にかわる 「ボルボの軌跡」 こそ論議 さるべ きもの と主張す る らに,かかる 「ボルボの軌跡」 と真 の 日本的生産方式 こそ合成 されて しか るべ きであ り,そ こにこそ世界 の 自動車産業の将来が展望 される と主張す る。

本小論 は,「ボルボ軌跡の歴史的論理的構造 を追体 験 的に明 らか にす る と ともに,現在進行 してい る新 「トヨタ生産方式」の進行が,果 た していかなる「 験軌跡」 をた どり始めているのか, さらに,バーグ レンのい う 「軌跡 の合成」

の可能性が はた して存在 しうるか否か も究明の課題 としたい。

2

ボルボ軌跡の基礎条件

バーグ レンによれば,いわゆる 「ボル ビズム」 といわれる ものはボルボ社 に は存在せず,その代 わ りに 「ボルボ軌跡」 なる ものがみ られる とい う ボルボ の生産戦略,経営理念,労使 関係,技術文化,かてて加 えてス ウェーデ ンがお かれてい る社会構造 と労働市場 な どが

1 9 7 0

年か ら

1 9 9 0

年 にかけての 「ボルボの 軌跡」の条件 を作 り出すのであって,それ らの総合的整序がいかにボルボ社 と い え ども常 に見 られ る とは限 らないか らであ る。1)以下,彼 に沿 いなが ら,そ の 「ボルボ軌跡」の基礎条件

( Cha pt . 4 )

を考察 してみ よう。

ボルボ社が立地す るスウェーデ ン経済 は,豊か な金属鉱 山 と森林資源 を基 に 早 くか ら輸 出志 向の国際化 を経験 していた。 ボルボを含 む トップ

1 7

社 が輸 出の 1)彼の論議において,それらの条件が満たされれば,「ボルビズム」 と言えるのかに ついては否定的である。彼にあっては,1企業がその存在のすべての期間において, かつすべての戦略展開 (スウェーデン,ベルギー,米国)において条件を満足する ことはあり得ないのである

( Be r ggr e n :1 0‑1 4, 8 7‑8 9 )

。式部は,「ボルビズムは, 通常,フォーディズムや トヨテイズムといった用語と同様に,生産方式の目的理念 として,定義さるべ きであろうが,フォー ドシステムとフォーディズム, トヨタシ ステムとトヨテイズムが,それぞれ,生産方式と生産理念という表裏一体といった 意味で用いられがちであるが,作業の自律性を主目的とした生産方式といった,意 味で用い」,したがって,ボルボの一連の 「」の営みとして捉えるもの

( 37

頁) とするが,フォー ドにおいて奉仕の根幹である 「高賃金」が貫徹せず,「フォー ド システム」と 「フォーディズム」 とが乗離 したように,「作業の自律性」がボルボ 社のすべてをカバーしているとは見なしがたい。

(3)

自動車産業軌跡合成の可能性

5 5 0 %

を占めていた。一方,労働市場 においては,失業率 は,

1 9 7 0 ‑9 0

年代 にか けて

3. 5 %

を超 えることはな く,女子,不熟練労働者 も組織化 されていた

。5 0

‑8 0

年代 にかけて,労働組合は平等主義を根幹 とし,連帯的貸金政策を追求 し, その結果,産業間の賃金格差はごく少なかった。 自動車産業の ような高生産性 のセクターの企業は,連帯的賃金政策の下,相対的低労務費 を享受す ることが で きたのである

労働組合の構造においては,低失業率 と所得低下に対する保障制度の保護の 下,ブルーカラーの高い組合加入率 とホワイ トカラーの相対的高い加入率がみ られ,組合機構の集権化 と分権化が進め られた。そのことは,共同決定 と経営 参加 に大 きく寄与するのである

1 9 7 0

年代 には,社会民主主義改革運動が進展するが,その基盤はすでに

6 0

代 に築かれていた。すなわち,

6 0

年代後半,スウェーデ ンにおいては労働者の 自主管理,企業民主化,ー私企業に対する統制の強化が広 く一般の関心 をひ く中 で,山猫ス トが急増 し,

1 9 6 9

年の労働損失 日数は

6 4, 0 0 0

日を数える。 とりわけ 関心 をひいたのは,

1 9 6 9

1 2

月に発生 し

,5 6

日間続いた鉄鉱山キールナでの山 猫ス トライキであった。キールナにおいては,科学的管理法の時間研究法の現 代版

MTM

の応用形態である

UMS(

保全労働標準時開法) を中心 とする管理 の厳格化 の下で,労働者が厳 しい作業環境の中で汚れ,疲れ,健康 を損なって いることが報告 されていた (赤岡

: 1 1 4 ‑1 1 6 )

。このス トは,労働条件,賃金制度, 企業民主化 を要求するものであったが,ス トは同社の全鉱山,全施設 に及び,

また,労働運動の 日を分配問題だけでな く,労働者の働 く環境へふ りむけ,新 しい方向を開 くもの となった。

この時期の労働組合の組織構造を見 ると,

3

層の団体交渉がみ られ,全国 レ ベルでは,スウェーデン経営者連盟

SAF( S ve n s kaAr d e s t s g iv a r e ‑ f 6 r e n i ng e n)

とスウェーデ ン労働組合連合

LO ( La nd s o r g a n i z a t i o niSv e r i g e )

が対峠す る 一方で,産業 レベルでは,スウェーデ ン金属労働組合

SMWU

,な らびに技術 従業員連合

EEF

が活動 していた。地方企業交渉では,固有の組織,職場 クラ

ブが

6 0 ‑7 0

年代 にかけて多 くの組合で結成 され,2)ボルボでは

,1 9 6 9

年にはク

(4)

6

47

2・3

ラブ総会で選出された代議員は独 自に出来高賃率 について交渉す る任務 を与 え られている

。70

年代 にその任務 はさらに拡張 された

( Be r ggr e n ‥77)

3)

S AF

LO

は,民間 と公共両部門での賃上 げの基準 を設定す るとい う風 に, すべての全国交渉 に決定的影響 を及ぼ して きた。同時に,両者 は,交渉団体の 自主規制の伝統 を維持 し,労使体制への国家の介入 を回避 して きた。しか し

,70

年代 に入 る と協調 と自律 的交渉のモデルは解消へ と向か うことになる 労働 市場の変化 に伴 う労働危機が企業 を襲 うか らである

( Be r ggr e n: 79 )

0

70

年代か ら

9 0

年代 にかけて,つ ま り石油危機前後か ら経済の退潮期,ス ウェー デ ンの雇用率 は高止 ま りし,労働市場の好条件 は組合 の立場 を強化 し,社会民 主主義 による産業民主化の波 を呼び起 こす。名 目労働時間に対 して,実質労働 時間は低下 し,アブセ ンテ ィーイズムが常態化 した。 カルマル工場新設の最終 決定 の な された1

972

年 にお けるボルボの イエ テポ リ地 区の欠勤率 は全体 で

22. 3%

(病気欠勤率 はうち,1

3

.4%)であった。退職率は30%を超 えていた。

労働力不足 もあ り,女子労働者の比率が増大 したが,女子欠勤率 は,男子のそ れの倍 に達 した。家庭維持の責任 に加 えて,職場が男子向 きに作 られてお り, 女子 は,反復的,単調労働 に振 り向け られていたか らである。 自動車産業の求 人難は とりわけ大 きく,ボルボでは,外 国人労働者の生産労働者 に占める割合 は,197

2

年に実に

45. 2%

に達 していた (赤 岡 :

1 21 )

0

こうした情況の中で,

LO

は,続発す る非公認ス トライキ, 自主管理要求の 高 ま りをうけ,従来の協調主義の立場 を変 え,従業月の意思決定参加それ 自体 に価値があることを認めるに至 る。従来の団体交渉 と工場協議会 による活動 に

2)クラブの数の増加傾向では ,1 9 6 0

年の1,

5 0 0

8 0

年には

2, 3 4 0

に増え,その

3

分の

2

が1

0

名以上の会員 を擁 し,その9

5 %が5 0

名以上の会員 を持つ ものである

( Be r g g r e n : 7 7 )

3)赤岡は,「 I E専門家による作業研究にもとづ く出来高給の決定は,高度の専門性に

もとづ くものであって,労働者は自分の賃金の算定とその交渉からも疎外されてい

」( 1 1 6‑1 1 7

頁)し,全国情況においては

,1 9 6 0

年代にLOの中央集権化が進み, 組合活動も拡大 し,複雑化 し,時間が一層多 くかかるようになり,労働者は組織と の距離を感じ始める

( 1 1 7‑1 1 8

頁)とするが,全国情況とボルボとでは,情況に違 いがあることが想定される。

(5)

自動車産業軌跡合成の可能性 7 とどまらず,企業におけるすべての階層において従業員の意思決定への参加 を はかろうとする路線‑ と転換する なかで も,

FODD

(企業民主化委員会) の下で,国営のスウェーデ ン ・タバ コ社のアルヴイカ工場ですすめ られた産業 民主化が他 に与 える影響が多大であった。同工場の労働組合は,作業組織の変 革により経営参加 を実現 しようとしたが,実現 したのは,経営の意志決定に対 する労働組合 による参加であった。 しか し,意志決定の各階層‑の労働組合の 参加の実現 は高 く評価 され,監督者の事実上の棚上げは労働者か ら歓迎 された のである (赤岡 :

11 9

頁)0

こうした動 きを承けて

,7 0

年代一連の労働立法が労働組合の立場 を強化する 目的で制定され

, 1 9 7 3

年には労働組合代表の取締役会参加が認め られるに至 る。

さらに,

1 9 7 7

年,共同決定法が成立 し,重大な変化 につながる意志決定を行 う 前 には,企業は組合 と協議することが義務づけられた。

一方,

SAF

としては,組合が職場 に要求する 「自律的作業集団」 なる もの を自主管理 とは異 なるものた らしめる必要がある と同時 に,他方で労働者 に とって満足 しうる職場 と生産性の向上 を実現 してみせる必要に迫 られることに なる (赤岡 :

119

頁)0

他方,バーグレンのいう技術戦略の失敗 も路線転換 に荷担す ることになる

つ まり,製品の複雑化 と異種 の増加 に対する対応の問題である。スウェーデ ン 自動車産業の最初の改革の波 は,

1 9 7 0

年代のはじめに起 こったが,当初は上述 のように社会的問題や求人難か らの ものであった

。8 0

年代の改革は,相対的に 広範 なものであ り,生産上の条件 によるものであった。相対的に低い品質上の 要件 と強い市場需要の下での標準生産 システムにあっては,高い労働移動率は さして難 しい問題ではなかった。しか し,フレキシビリティー,納期の正確 さ, 品質問題が起 こると,低い欠勤率,高度の能力 と忠誠心 を備 えた安定 した要員 を維持することが重大 となって くる労働集約的工程では,これ らの労働資質は, 決定的役割 を果たすのである

( Be r ggr e n: 8 7 )

ところで,

1 9 8 0

年代,ボルボとサーブは同 じ条件変化 に対応すべ く同様 に製 品開発努力 をな して きていた。だが,両者 を比較 した場合,ボルボの方が作業

(6)

第47巻 2・3

組織の変容 は徹底的であった

。1 9 7 0

年 を通 じて,サーブはボルボのカルマル工 場 に匹敵する ものを持たず,

1 9 8 0

年代,マルメ工場 の建設計画で も,ボルボの

ウデ ヴァラで の展 開 に比 べ て 中途半 端 な努 力 に終 わっ て い る

( Be r ggr e n:

87‑88)

二つの会社 の違いの重要 な理由の一つは, トップ ・マネジメン トの方針 と態 度 にある ボルボの

CEO

,エ レンハ ンマーは,サーブやス カニアの経営者 と はまった く違 って,人間的にデザインされた組織上 と技術上の革新への強い関 心 を見せたのである。彼の個性が,経営方針設定には大 きな意義 を持 ち,い く つかの新規事業で決定的な役割 を果た したのである。 この立場 を守 るために, 彼 は,労働組合 との密接で長期的な協力 関係 を築 くよう努力 し, このことが同 社 の意志決定構造 における労働組合 のウェイ トの増大 をもた らしたのである。

一方,経営方針 と作業現場 を結ぶ環 としての生産管理者 と技術陣の存在 も重 要 な役割 を果た している 彼 らのオープ ンな文化 は,経営陣の新 しいアイデア を社会科学者 との交流 の中か らさえも引 き出そ うとの努力 により醸成 された。

この文化 は,次 に替わるべ き作業形態 を追い求めての長い実験 と試行 によ り増 進 される時 に鋭い対立 をは らみなが らも,あるべ き生産形態 をめ ぐってボル ボの技術者達は常 に柔軟 にことに対処 していたのである。 これ ら関係 当事者達 の姿勢 は,カルマル工場の操業開始

( 1 9 7 4

年) に先駆 けての同社 における労働 の人間化 の試みに如実 に現れてい る。 ウメオ

( Ume a )

工場 (トラック運転 台 の製造)では

1 9 6 9

年 に,オロフス トレム (

Ol o f s t r 6 m)

工場 (車体,プ レス部品, 溶接部品) で は

1 9 7 0

年 に, また,アル ヴイカ

( Ar vi ka )

鋳造工場 で は

1 9 7 2

か ら,さらにヨテポ リ

( G6 t e b o r g)

の トルス ランダ

( To r s l a nd a )

工場で も

1 9 7 3

年か ら,それぞれ労働の人間化 に取 り組んでいた (赤 岡 :

1 1 2‑1 1 3

頁)0

ただス ウェーデ ンの技術的風土 として注 目しなければならないのは,労働の 人間化 を可能 とす る組立技術 の開発 を最初 にス ウェーデ ンで実現 したのは,ボ ルボではな く,

1 9 7 2

年 に操業 を開始 したサーブ ・スカニア社 セデルテ リエ工場

( Sa a b ‑ Sc a ni a , Sb l d e r t

a'

h ' e )

のエ ンジ ン ・ブロック組立 ライ ンであった ことで ある。 ここでは,小規模ではあるにせ よ,後にカルマル工場 で採用 されること

(7)

自動車産業軌跡合成の可能性 9 になる生産技術上の

5

つの変革,すなわち,ベル ト・コンベアの廃止, ドック 組立方式,直線的組立方式,キャリアの採用,バ ッファ ・ス トック設置のすべ

てがみ られる。

4 )

これ らの情況,すなわち,ボルボ社 の生産戦略, トップ ・マネジメ ン トの経 営理念,労使関係,技術文化, さらには,ス ウェーデ ンの社会構造 と労働市場 などが相倹 って

1 97 0

年か ら

1 9 9 0

年にかけての 「ボルボ軌跡」の基礎条件 を作 り 出 したのである。

3

ボルボ軌跡

1

カルマル :その第

1

段階

ボ ル ボ軌 跡 の 第

1

段 階

( Ber ggr e n:23 6 ‑2 39 )

が 展 開 され る カル マ ル の

vKAV

工場 は,国際規格か らす れば小規模 に属 し,社 内的に も

6 0

年代 か ら操 業 している最終組立工場

TC

のある トールス ランダ工場があ くまで も中核 をな

。8 0

年代 中期で年産

3

3

千台 (

1

直) の規模 で しかなかった

。8 5 0

名の従 業貞の うち,ホ ワイ トカラーが

80

名, ブルーカラーが

77 0

名の割合 であった。

組立 には

475

人が配置 され,

6 0

名が資材管理,

1 60

名が調整,検査,保全 を担当 していた。

同工場建設の端緒 は

,7 0

年代初期 の

1 0 0 %

かそれ以上の労働移動率であ り, 技術 陣はこの間題 に伝統的工場 デザイ ンで対処 しようとし,労働組合 も当初関 心 を寄せていなかった。ただ, トップ ・マネジメ ン トのみが独創 的工場 デザイ ンを構想 している すなわち,工場 は, 自律 的で高い熟練 のチーム作業 を助長 すべ きであるとい うのがその発想であった。

工場建物 は,周知の

6

角形 を組み合 わせた ものであったが,多 くの壁 と広い

4)

赤岡は,それにも関わらず,カルマル工場建設の革命性は,少しも薄れることはな いという。すなわち,エンジン・ブロックはかなりの重量があるとはいえ,自動車 そのものとは大きさ,重量が全 く違うし,組立ラインの長さは比較にならない。全 工場に及ぶベル ト・コンベアの廃止と全体で

1 8

人 (セデルテリ工のエンジン組立の 旧ライン)のラインとは比較を絶するのである (113頁)

(8)

10

4 7

2・3

窓をもち,閉塞感 を除 くとともに,作業チームの くつ ろぎ場所 を確保する もの であった 色彩,換気,騒音 にも注意が払われた。

従来の機械的 コンベ ア ・ベル トか らの離脱の第

1

点 は,

AGV

自動搬送車の 導入である。このキャリアーは,直列組立 ラインに配置 されたが,ラインは

,1 5

‑2 0

人か らなる

2 0

の区域, またはチームか ら構成 されてお り,それぞれバ ッ ファーを持 っていた。バ ッファーは効果的に作用 し,チームは相対的な自律性 を享受す ることがで きた。ただ,AGVは,当初,手動で調整で きる ものであっ たが,全体の体系上整合性がつかな くな り,中央 コンピュー ターによ り

3‑ 4

分の タク トが切れる と次のステー ションへ と送 られるもの となった。

2

点 は, ドック (並列 一日本では 「島

」)

組立方式 である 連続 の流れの 間に組み込 まれた

AGV

の並列作業区間であ り,根本の狙 いは,チームの全車 組立 にあった。台は作業が終 わる と入 って きた順序で次の直列へ と移動す る

次の改善点 は組立の人間化 で,

AGV

9 0

度 まで傾 け られ,支柱があって車 体下部の作業の場合 には,高 さを調節す ることがで きた。人に触れると自動的 に停止す る機能 を備 えていた。 また,チーム内の作業 は,で きるだけ一定の機 能的にまとま りのあるもので構成 されるよう編成 された。

作業組織 で上 は,管理階層の変革が見 られ,監督 は,エ ンジニア と組 になっ

2‑ 3

つの集団を管理 し,チーム内には,グループ ・リーダーがおかれた。

彼 らは,組合 に諮問 した上で,経営者が選任す る者であ り,折衷的な性格の立 場 にあった。す なわち,新 しい従業員に仕事 を教 え,品質情報のセ ンターの役 を果た し,監督 とエ ンジニアに対す るグループのスポークスマ ンの機能 も併せ 持 っていた (赤 岡 :

1 2 8 )

0

こうしたカルマル工場であったが,その成果に関 してバーグ レンは,創立

1 0

年後の

1 9 8 4

年,全般的な生産性 ならびに低管理費の点でボルボ社 中ベス トの運 営 をな している と認定 された とす る。5)また,

1 9 7 6

年の

SAF

LO

の合 同報告 書 は,工場投資額 において,他工場 より

1 0%

高 く,品質 ・工数は同程度,監督

5)

その成果の一つに欠勤率の低下があるが,赤岡は,カルマルの欠勤率が

,1 9 7 6

年段 階で トールスランダの

1 9. 2 %

に対して,カルマルが

1 4. 0 %

と低下したことを確認す

(9)

自動車産業軌跡合成の吋能性

ll

者数は減少,生産の再調整の弾力性 は高 まった としている

( 1 29)

さらに,直 列 方式 と ドック方式 との比 較 で は, 自律性 の点 で後 者 が 高 い とされ てい る

( 1 39 ‑1 40)

0

この ように,伝統的なラインに比べれば,労働条件 は改善 されたが,当初 に 意図 されたほ どではなかった。む しろ,改革のパイオニアであるところか らカ ルマル工場 は,流れ作業原理 を抜本的に打破す ることな しに組立作業 を改革す る試みの技術 的制約 を発見する立場 にたった とする すなわち,連続チームの 問にバ ッファーを挿入 して労働者の自律性 を高めるのは非常 に難 しく,全工程 に混乱 を来す ことになる 同様 に,量産の流れにおいて,連続原理 と並行原理 とを結合す るの も容易ではな く,結局は ドック方式 を放棄せ ざるを得 なかった のである。80年代の合理化計画の結果 として,経営陣は,当初の改革 目標か ら 後退 し,労働工程 に対する統制 を強化 した。

2 LB:

2

段階

重量 トラック組立の

LB

工場 は,1

9 81

年 に操業開始 し,ボルボ軌跡の第

2

階を代表す る。 カルマル工場の場合 とは違 って,計画段階及 び操業開始段階に おいて労働組合のかな りの程度の介在がみ られた。伝統的なライ ン組立 システ ム とバス工場での統合組立 との妥協の産物 として,バ ッファー ・フロー と工貞 制御の

AGV

を用いての生産設計が なされた。作業組織 は, これ らの工場 よ り 洗練 され,

LB

工場での作業チームは,か な りの意思決定力 を持 った。 カルマ

ル工場建設の場合 は,基本的に労働市場 に規定 され,増大す る変種 を処理す る 社会 ・技術論的設計の採用 の可能性 は,操業か らかな り経 って,ボルボ自動車 会社が高級車市場志向に踏み切 った ときにようや く実現 されたのである それ に比べ て,

LB

工場 は,設計開始投 階か ら二重の改革理念で構想 されている 拡大す るプロダクツ ・ミックスの問題解決お よび組立作業 をより魅力ある もの

るとともに,この差の

5%

が改善だとしても,それが,すべて作業組織の変革の結 果であるとは,認定できないし

,1 4 %

それ自体が高率であることにかわりはないと する

( 1 3 1‑1 3 2 )

(10)

1 2

47 2・3 とする必要性のそれである。

数年の間,

LB

工場 は好成績 を挙 げえた。 しか し

1 9 8 0

年代 の後半 になると, プロダクツ ・ミックスは急激 に複雑度 を増 し,

「 LB

妥協」では能率的な組立 を続行することは困難になった。 さらに,労働市場の逼迫の結果,労働移動率 が急上昇 し,集団組織が脆弱化 し,不安定なもの となった。 これ らの制約 に対 処するため,経営側 は職場統制 を強化 し,基本 コンセプ トを捨て去 りは しない ものの制限せ ざるを得な くなった。同時に,会社 は

1

チームが

1

台丸 まる作 り 上げる ドック式職場 をス ター トさせた。 これ らの措置が

LB

工場での統制強化

に強 く反対 していた労働組合の支持 を受けることとなった。 イエテポリ工場で のボルボ トラック計画は,

LB

工場の生産能力の拡張 を必要 とし, これが新 し い ドック式職場 を導入するステ ップーバ イーステップの動 きと一致することと なった。稔 じてこれが,製品構成 と労働者要求の双方でのフレキシブルでダイ ナ ミックな構造 をもた らす こととなったのである。

3

ウデパラ :第

3

段階

1 9 85

年,ボルボは完全 に新 しい 自動車工場 を計画 し始めた。 この時期,労働 市場の情況は,企業が魅力ある仕事 を提供 しなければならないことを必須 にし て1、た し,機械的な組立が,既存の車種の製造 に全 く適合 しないことが証明さ れていたか らである。くわえて

,1 9 87

年,ウデヴァラの労使の代表が最新の 「日 本のうね り」の見本, 日産英国工場 をじきじきに見学 して, 日本的解決策は全

くスウェーデ ンでは実現不可能であ り,ボルボは自己 自身の道を歩 まねばなら ないことを共感 していた。ボルボの

CEO

,

P.G.

エ レンハ ンマーの作業の刷新 への関心 も実験の実施 に大いにに寄与 した。

プロジェク トは,カルマル生産デザイ ンの近代版 を目指 して開始 されたが, カルマルレベルの選択肢 は,ボルボの経営陣や労働組合のみならず,プロジェ ク トに関わった多 くの革新的技術者が拒否するところとなった。 これ らの技術 者の何人かは,カルマル,アレンダル,

LB

,ボラスな どで計画や設備の稼働 に個人的に関わって きてお り,全 く新 しい代替案でなければ状況に対応 し得な

(11)

自動車産業軌跡合成の可能性

13

い こ とを実感 していたのである 6)

こうした社 内経験者 の ウデヴ ァラ計画‑ の参画 に加 えて,上記実験結果 を解 明 しうる社 内研 究者が助言す る立場 に加 わった。一人 は,工学 の立場か ら従来 型 に変 わる選択肢 を模索 していた し,他 の一人 は,教育学 と心理学 の立場か ら 学 習 と訓 練 の 必 要 性 を強 調 して い た。 こ れ が 後 に 「包 括 的 学 習 の 原 理」

( El l ga r d: 7 , 1 9

頁) として結実す るのである

だか らとい って,あるべ き生産体制 について社 内が統一 した見解 を持 ってい た こ とにはな らない。 イエテポ リの主工場 での経営 陣 も労働組合 も,計画段 階 や操業 開始 してか らも意見が対 立 していた。いず れに して も貯余 曲折7)の結果,

19 89

年, ウデ ヴ ァラ工場 が陽の 目を見 るのである。

で は次 に,いか なる生産デザ イ ンと作業組織が実現 したのか を概括す れば以 下の ようである

まず物理 的な施設か らい えば,組み立 てるべ き塗装済み事体 はイエ テポ リの トー シュラ ンダ工場 か ら運 ばれ,

AGV

に乗せ られ作 業現場 に到着す る部品 は部品供給業者 か ら部品庫 に運 ばれ,高度 自動化工程 で組立作業 に適す る よう に分類 され,

1

1

台の車 ごとの部品ス タン ドに配架 されて現場 に配分 される

( El l ga r d: 7‑8, 19

貫)

6)ここで ,1 9 7 4‑7

7年,

7 7‑7 9

年の

2

期にわたって行われた,アレンダルでの組立配 列の実験が注 目を引 く

1

段階では

,2 0

人が

2

段の ドックで車全体を組み立てた のである。生産のペースは,およそ

4

時間の作業サイクルで

1

2

台であった。長 い作業サイクルにも関わらず,アレンダルはただちにⅩ工場 と同じ生産性をあげ,

しかも品質はより高かった。さらに,生産の流れを変えることなしに,顧客の注文 に応 じることが容易であ り,組立工の知識 と創意を従来のラインアツセンブリ‑と は全 く違った形で利用 し得たのである

。1 9 7 6

年に操業開始 したボラスの新工場は, 当初機械速度の従来型工場で計画されたが,アレンダルの影響をうけて

4

つの並行

ドック組立を導入 したのである

( Be r g g r e n : 1 3 0 ) 0

7)エルガー ドは,ウデヴァラ工場建設 目標について,究極 目的は収益性であ り,それ を達成するための

5

つの下位 目標が設定された。それらは,高い柔軟性,高い生産性, 高い製品品質,高い総合効率

( h i g h o v e r a lle f B c i e nc y )

,良好な作業条件である

( 6

,

1 8

頁),とするが,結果的にはそれらの条件を満足する工場が建設されたとしても, 当初からこれらが関係者における合意であるか否かについては,吟味の必要があろ

う。

(12)

14

第47

2・3

これを前提 として,作業は並列方式 と完全組立の下に作業競合 と作業の自律 性確保が達成 される。車体 を固定 し,

5 0

組の並列ステーションで作業が進行す 全車組立であるか ら作業は一貫性 をもち,製品の内的論理は十分 に作業員 の理解するところであった。従来の職長を抜 いたフラッ トな工場組織 は,工場 長,職場 リーダー,チームの3層か らな り,組立チームに重要 な権限 と責任 を もた らし,チームを更にサブグループに分 けるような柔軟 な作業組織編成 を可 能 とした

( l

l

,2 0

頁)。

包括的学習の原理の下,労働者の思考は,細分化 された課業のみに限定され ず,全体の生産工程 にも及び,卓越 した生産の質は,新 しいアツセンブリ‑志 向の製品分析 と情報構造 とによって補強されている。

全車組立は, もちろん,労働者の組立能力 に最低 限度の レベルを要求 し,塞 本能力は車の1

/ 4

を組み立てうることであった。これは作業サイクルでいえば,

2

時間か ら2時間半に相当 した。さらに,労働者 は,従来ホワイ トカラーによっ て担 われていた品質,生産工学,教育,保全 などの間接作業に関する特別訓練

を受け, 自らの能力 を高めることがで きた。その結果,労働者の1

/3

以上が, 車の

5 0 %

以上を組み立てる能力 を持つ に至 ったのである。労働者の能力 に対 し ては,マス ター試験が設け られてお り,労働者が他の労働者の助 けな しで,読 定された標準時間内に,求め られた品質の車 を最初か ら最後 まで組み立て られ れば,修得認定 された。合格者の多 くは,生産技術者 によって設定 された標準 時間 よりも短時間で組み立てることがで きたのである

(9‑1 0

,

2 0

頁)。 この 能力取得 に対 して割増賃金が支払われ,チームリーダー となるための訓練 を受 け認定され声者 も同様の扱いを受けることがで きた。

従業員採用 に当たっては,男女いずれをも雇 うこと,若年 ・中年 ・高年齢 と 異 なった年齢集団で もって職場が構成 されるよう配慮 された。希求 ラインは, 女性の採用

4 0 %

以上,

25

才以下 を

2 5 %,2 6 ‑4 0

才 を

5 0 %,45

才以上 を

2 5 %

とす ることであった。時には,女性の比率が

45 %

以上 にも達 したことがあ り,異 な るパーソナ リティー,異 なる性 と年齢が互いに補い合 った

( 1 2 ,2 0‑21

頁)0

(13)

自動車産業軌跡合成の可能性

15

3

技術 デ ザ イ ン と作 業組 織 の統 合

1

社会 ・技術 システム論の伝統

ところで,上述 のような展開を見せ たボルボ軌跡 で,理論 において運動 にお いてその基盤 になっているのは,社会 ・技術 システム論であ り,バーグレンは, それを 「社会 ・技術 システム的伝統」と主著の随所で指摘 している。ここでは, そ うした伝統がいかにボルボ軌跡の実現 に作用 しているのかを明 らかに し,そ の上で技術 デザイ ンと作業組織 との統合問題 を考 えてみたい。

1 9 4 5

年 に設立 された タビス トック人間関係研究所 はその初期 レビンやパイオ ンの小集団に関す る考え方に影響 を受 けた といわれているが,その後,エメリー や トリス トの理論的方向は,石炭産業やグ レーシヤー ・メタル社 の研究 を重ね る中で,社会 ・技術 システム論の基本的な枠組みに到達 した。す なわち,企業 ( 織) は環境 と相互変換 を行 うオープ ンな社会 ・技術 システムであるとい うこと である

( Eme r ya ndTr i s t : 2 9 2‑2 9 3 )

この考 え方 を基底 として,労働者の職場 の作業組織 は技術設備 によ り一方 的 ・一義的に規定 されるのではな く,同一の生産技術 に対 して複数の作業組織 が可能であ り,生産技術 と社会的諸条件 に適 した作業組織 の選択が可能である

ことが示 された。そこか ら,具体的な作業 システムの設計 において,あるいは 現実 に存在す る有効 な作業組織 として,責任 ある半 自律的作業集団の概念が重 要な役割 を果たす ことが確認 されたのである (奥林 :

1 3 4‑1 4 2

頁)。

一定の理論的有効性 を確認 された社会 ・技術 システム論 は

,1 9 6 0

年代初期, ノルウェーの産業民主化論 と合流す る 第二次大戦前後,労働者委員会や生産 協議会 を導入 したノルウェーの労使 は,それ らの諸制度が有効 に機能 していな いことに鑑み,制度の再検討 に取 りかかっていた。労働者側の運動 目標 は取締 役会への労働者代表参加であ り,産業界 は

EC

加入の可能性が高 ま り,いかに 企業の競争力 を高めてい くかが緊急の課題であった。

ノルウェー経営者連盟

NAF

と全 国労働組合連合

LO

とは,

1 9 6 2

年 に産業民

(14)

16

第47

2・3

主化の新 しい方向を検討するために合同委員会 を設置 し,その具体的な研究を トロ ンへイムにある産業社会研究所

( I FI M)

に委託 した。所長 トールスルッ ドは,産業民主主義 と職務再設計 とを結合 しようと研究 を進めていることが知 られていたか らである 彼 はタビス トック人間関係研究所のエメ リーの協力 を 条件 に して, この 「労資協調プロジェク ト」 を引 き受けた (奥林 :

41

頁)0

同プロジェク トにもとづ く実験では

,1 9 6 4

年のクリスチャニア ・ス ピーグブ ルク社のワイヤ一巻取部門をは じめ として4カ所の職場が実験対象 に選ばれ, その うちの一つでは,労働者の職務満足 の増大 と

20‑250

/Oに達する生産性の向 上 を実現するという結果を得 ることがで きた

。1 9 69

年 にそれ らモデル工場の成 功事例が合同委員会の席上報告 され,労使双方は以後産業民主化 プログラムの 普及につ とめることとなる

一方,第2節で も触れたように,スウェーデ ンではキールナの鉄鉱山での山 猫ス トをきっかけとして続 々と紛争が波及 し,紛争解決方策が社会的に必要 と されていた。 これ らの労働諸問題 に直面 して,

SAF

,

LO

な らびにホワイ ト カラーの労働組合である職員中央評議会

T C

Oの合同組織が協調問題推進評議

UR

を結成 し,スウェーデンにおいて も作業組織の改善を行 うことを決議 し

た。それにもとづ き,

1 9 6 6

〜1 9 6 9

年の間に

1 5

の企業で作業組織改善の実験 を 導入 している

1 9 69

4

月,経営者連盟

SAF

の技術 部 は, コ ンファレンス を開いて ノル ウェーにおける産業民主化実験 の結果 を各界 に公開 した (赤岡 :

76

頁)。 これ に勢いを得て,産業民主化 プロジェク トが積極的に展開される 実際の調査 に は,

UR

の調査下部組織

URAF

が当た り,並行 して国有企業 に対 しては,企 業民主化委員会

FODD

も作業組織の変革 を推進 し,上記の ような産業民主化 の高揚 をみたのである

( 77

)0

しか し,こうした社会 ・技術 システム論の盛行 にあって同 じく (辛) 自律的 作業集団に注 目はしても,それによって実現 されるべ き産業民主制 について,

SAF

技術部 と

LO

には大 きな差異がみ られた。前者 に とっては,産業民主化 とはその職場のみに限定された仕事 を通 じてのいわば職場だけの仕事の変革で

(15)

自動車産業軌跡合成の可能性

17

あるの に対 し,

LO

に とっては職場 の民主化 とは,企業 の他 の職場 ,組織 の よ

り上層‑ の参加 だけで な く,他企業‑ の波及 を も含 む よ り広範 な民主化 を意味 していたのであ る。 それゆえ,

SAF

技術 部 の アプ ローチが 明確化 し,それ に もとづ く作業組織 の変革 のケースが増 えるにつれ,両者 の対立 は次第 に鮮 明 に なってい き,

URAF

の中 で

SAF

と労働 組合側 とは対立 し別行 動 を とる こ と になる。8)っ ま り,

SAF

は技術 部 をつ う じて

URAF

とは別 に独 自にプ ロジェ ク トを展 開 し,数多 くの職場 で作業組織 の変革 を実施 し始 め る一方で,

LO

は独 自のプロジェク トを展 開す る とともに,産業民主化 の実現 の方法 として立 法 に頼 る ことにな り,

1 9 7 6

年の共 同決定法 を成立 させ る道 を歩 み始 め る

2 バーグ レン ・モデル

上述 によ り,ボルボ関係者 の理論 的運動的立脚点が明 らか になったが,つ ぎ にバ ーグ レンは伝 統 的流 れ作業組織が持つ固有の技術 的問題点 を指摘す る。 こ れ を指摘 す るこ とによ り,彼 は作業組織変革 の必然性 が経営工学 的 に も存在す るこ とを裏付 け ようとす る それは

,1 9 7 0

年代 の は じめ,英 国の研 究者

R.

イル ドに よって解 明 された経営工学 ロス概 念

( Be r g gr e n: 9 0‑9 2

,式部 :

2 5

頁) であ る。彼 はライ ン組立 に生起す るロス についての包括 的調査 を行 い,そ こに 生起す るロス を調整 ロス,搬送 ロス, システム ・ロスの

3

種類 に分類す る。 ロ スは,理論上の人/時間の最小値Zの百分比増加 で算定 され る。 Zは,すべ て の作 業貞が完全稼働 し,すべ ての資材 が間断 な く供給 され,組立 において無欠 陥の状況 を表す理想値 であ る。

ワイル ドによれば,調整 ロス は,連続流れ作業が 同 じ作 業遂行 時間 を要す る ようにはなってい ない ことか ら生ず る

。 1 0 0 %

の時 間が消費 され る最適 のステー

8)

奥林は

,1 9 6 9

年報告に接 しての経営者側の積極的態度を指摘する

( 6 4

頁)。一方, 赤岡は,実施された実験,再編成の数においては,

SAF

技術部の圧倒的な多数に 対 して,

URAFI

O件,

FODD4

件 と少ないことを,両機関の産業民主化における 地位の評価に結びつけるべ きではなく,

URAF

の極端な少なさ自体が重要な問題 点を示すとともに,それがまた,

LO

をして立法による経営参加要求への傾斜を強 めたとする

( 7 7

頁)0

(16)

18

第47巻 2・3号

シ ョンを除いたすべてのステーシ ョンにおいて,微少 な未消費時間が存在する。

調整 ロスは,課業 を平均化す るのが難 しいゆえに,作業周期が短ければ短いほ ど増加する傾向をも 一方,調整 ロス,変種 ロスは多品種化の高 まりに応 じ て も増加する。

搬送 ロス :資材 ならびに工具の移動に費や される時間がそれである 作業サ イクルが短 くなればなるほど,ロスは大 きくなる しか し,ワイル ドの研究に よれば,長周期 になった ところで,ロスは

,

Zの

5%

より少な くはな り得ない。

しか も,労働者が,基準 よ り早 く作業を して しまう場合 には,

I E

の想定値 よ り広 く移動 し,搬送ロスは大 きくなる

システム ・ロスは,生産システムにおける個人差の結果である。定速 ライン においてそれがあれば,ある者にとっては時間があま り,ある者にとっては時 間が不足 し,仕事 を未完成のまま次へ渡 して しまう。 どれだけ調整の幅をとる か ということと検査ス タッフの増員 とが, システム ・ロスの存在 を表す。

調整 ロス とシステム ・ロス とは, ロスの性質上硬直的 と考え られる。生産ス ケジュールが変更 された り,新型車が導入 された りする際に,硬直的ロスが生 起 し,再調整の

I E

作業 コス トを発生 させ る いま, Z値 を実例 に基づいて示 せ ば, トロールへ ツタンのサーブ

9 0 0 0

組立でZ値が約

1 7 5 %

(最小理論値の約

3

倍)であるのに対 して,ボルボ

7 4 0

の数値 は,それ よ りも良かったが,依然 として想定値 を超 え,調整 ・ロス

3 0 %

,搬送 ロス

1 5 ‑2 0 %

,システム ・ロス

7 0 %

, 全体で

1 1 5 ‑1 2 0 %

であった。 ロスは,多車種化 と不合理 な資材供給体制などに

よるものである

( Be r gg r e n: 9 1 ‑ 9 2 ) 。

1 9 7 0

年代 になって,スウェーデ ンの自動車産業の経営工学者 はこれ らのロス が限界にまで達 しているのに気づ き始めた。特 にボルボ ・トラック部門では多 品種化が進み,組立の変種 ロスが急激 に上昇 し始めた。硬直的製造 ラインでの

混合車種組立の難 しさと多品種化 とが,在庫資本比率 を急上昇 させ,高品 質化 もラインの合理性 を再考慮する必要 を高めた。

多品種化の進行 に伴 う経済的条件 と作業上の条件の変化 は,作業組織 と設備 配列の組み合わせ を理論的には膨大 な数に上 らせ る しか し実際に,スウェー

(17)

自動車産業軌跡合成の可能性

0rganlZation

4・ln【egra【ed quajitied teamwork

3・stronggroup organi乙ation

2・Weakgroup organiza【ion 1.Traditional

organiZation VolvoTC

Volvo

L B

TUN

Vlyo

BuS

.Uddeyalla

Scani3

'

●Bus

Production design

1 2 3 4 5

Line ModiL;ed Parallel CornpZere ln【egraled line nowwork; assembZy assembly

cycles unpaced

1

スウェーデン

6

自動車工場の生産デザインと作業組織

1 9

デ ンの 自動車産業での

1 9 7 0‑1 9 9 0

年 にかけて現れた組立配列の諸方法 は限 られ た数であった。バーグ レンは,それ を図

1

のサ ンプル分布 として示 している ( 中,

TC

,

TUN

,

Ud d e v a l l a

は乗用車,

LB

は重量 トラック)。横軸 は,組立 システムの Ⅹ軸 と呼ぶ次元 であ り, この軸 には,水平的分業か ら作業統合へ の展 開が配列 される。最低点には,伝統的 ラインシステムが置かれる

( 9 2)

Ⅹ軸の各範噂 は,以下のように段階で示 される

1.伝統的 ライ ン組立 生産配列 は厳密 な連続 タイプであ り,仕事 は反復的で ある。作業サイクルは,通常,乗用車製造で

1‑ 3

分であ り,重量 トラック 組立では

1 5

分である もちろん, トラック生産数量 は少 ない。

2.フレキシブル ・ライン組立 通常,バ ッファーを伴 った連続の流れである

技術的には,弾力的に連結 された コンベヤー部分か らな り,中央制御 される

(18)

20

47 2・3

AGV

を備 えた個別移送 システムの場合 もある。作業サ イクルは乗用車生産 で多少長 く

,1 0 ‑2 0

分 となる。

3

.平行連続 システム このシステムは,二つの基本形態 をもつ 。 一つは,数 個の短い並行の流れか らなる。他 は,自動機械化 または資材補給のための集 中,言い換 えれば, くびれを伴 うことがあるこのケースでは,並行部門, ライン組立,並行部門,ライン組立の構成 となる。作業サイクルは

,1 5 ‑2 0

分, 完全組立では,

1‑ 2

時間にわたる

4.

完全組立 このシステムでは

1

人か

2

人またはそれ以上の集団が車全体の 組立を行 う この場合,全体のシステムは,平行 な流れの集合か らなる。最 高の発展形は,全面的に平行なステーション構造 一純粋 ドック組立 ‑である。

作業サイクルは長 く,製品によって数時間か ら数 日に及ぶ。

5

.統合組立 このシステムは単なる組立だけではな く,検査,試験,調整 ま で含んだ,よ り長い流れの統合である 個人やチーム レベルでの組立工は, 出来上がって運転で きるまでの製品に責任 を持つ。そのような統合では,分 権化 された検査設備の設置のような高度の技術条件 を前提 とする。

y軸で取 り扱われるのは,作業組織である。課業の職位への結合,権限,情報, 責任が配列 される バーグレンは,テイラー的作業組織 は,理念的,かつ典型 的に四つの基本特徴が有 るとい う。すなわち,(1)職位 と職能の高度 な専門化,

( 2 )

組織 を通 しての厳格 な階層構造,た とえば,副職長,調整工/検査工,組 立工 といった職階,

( 3)

細部にわたった指示 による統制 と指令の連鎖 を通 して の命令の授与,(4)個別的垂直的関係。かかる組織 において作業員は,個人 と

して上司に関係 し,上司はすべての調整 に対 して排他的な責任 を負 う

1 9 7 0

年代以来,スウェーデ ン自動車工場での職場の組織 は変化 を重ね,種 々 のグループ作業形態が導入 された。 この展開にあっては,い くつかの異 なった 局面が分析対象 となるが,垂直的分業 ならびに権限の配分の変化のみが焦点 と なる レベルの

2

以上は,生産過程での作業者間の協働の組織的に発展 した形 態である。そのポイン ト値が高 くなればなるほど,職場組織の統合度は高ま り,

グループが影響 を与 えられる問題の数は増大する

( 9 4)

0

(19)

自動車産業軌跡合成の可能性

21 1.

伝統的階層 これは厳密 に個人 を対象 とす る。作業 ローテーションの問

題 をのぞいては,作業者の影響の余地はご く小 さい。

2.

伝統的な職場管理構造での集団組織 これは限定 された階層のグループ 組織である。グループは, 日々の計画やグループ内での作業の配分などの 短期的問題 に影響力 を行使 しうる。 グループの代表 またはリーダーの役割

は,組織階層に固有かつ関連 した もの となる

3.

高度の分権化 を伴 った,強いグループ組織 生産 グループは,従来の職 長の業務や

I E

作業のい くつか を遂行す る。 グループ代表 は,グループ内 で選出される。

4.

統合的チームワー ク 伝統的職長の類型は存在 しない。 グループの責任 の領域 は,製品開発や技術のような職能を担当する職員 と協働することを 含む。

Ⅹ軸上の 「統合組立」 は,作業範囲が単 なる組立以上の課業 を含 む とい うこ とを意味す る それ と同様 に, y軸上 の 「統合的チームワー ク」 は,グルー プの課業 と権限が,直接的生産職能 とその組織階層 を超 えて広がるということ を意味 している

組織構造 と管理統制の問には,生産計画 と技術統制 にみ られるような密接 な 関わ りがある 労働者の行動の詳細 な監視 は,通常,y軸上 の もっ とも低 い レベルの工場で生ずる。一方,高い レベルの工場 においては,管理統制のパ ター ンは, 目標管理 に転換 される しか しなが ら,矛盾 した統制パ ター ンを伴 う一 貫性 のない形態 もまた生ず る。

y

軸のスケールは,労働者間の協働 の程度 を 直接 には意味 しないが,高度の影響力

( y > 2)

を持つ強いグループは,発達

した協力関係な しにはほとん ど考 えられないのである

( 9 5)

ところで, Ⅹ軸の 「技術 シス テム」 の含意 についてバーグ レンは,次の よ うに語 る. この概念 は機械や装置一式の無関連 な集合ではな く,地理的,機能 的な関係 を具体的に示 された具体的な配置 を表す。 したがって,このモデルは 限定された適用範囲 しか もちえず,無限定に一般化 され得 ないのである。特 に, 統合 と影響力の行使 を論ずる組織側面は,スウェーデ ンの状況 に深 く根 ざして

(20)

22

47 2・3

いるがゆえに, 日本の生産に適用す ることは難 しいであろう 日本では,いか に職能的統合が高度化 されていて も,それに相応す る力が労働者 に対 して与 え られてお らず,役割 システムが技術 システム (労働過程)か ら切 り離 されて し まってい るか らである それ故, y軸上の高い値 は,国境 を越 えて同 じ意味 を持つ と考 えることはで きない と断定する この場合の国境 とは,彼 によれば

ラダイム境界を意味 し,「技術 システムといえ ども,それが地理的社 会機能的情況 を前提 として ドッ トされている以上,容易 に普遍性 を持 ち得 ない

とい うのである

( 97)

こうした立場 を解釈すれば,ボルボの軌跡がス ウェーデ ン固有であ り,前提 が前提 としてある以上,「軌跡」 を他 の 「パ ラダイム」 に移植 した り,適用 し た りすることは一般的にいって不可能であるとい うことになる こうした断言 は, ウオマ ック らの 「リー ン生産方式」国際支配説 に対す る反論 として受け取 る必要がある

4

軌跡合成の可能性

ところでバーグレン自身は, 日本的生産方式 とボルボ軌跡の合成 に言及 し, 両者 は全 く異質な存在ではな く,その合成 は不可能ではな く,む しろ望 ましい とさえ言 う。その立場が示 されるのは,90年代初頭,日本の 自動車産業の動向, 特 に トヨタのそれを知 った上

( Nomur a, 1992)

でのことである ところは,我 々

の興味を引 く

近年,トヨタにあって もユーザニーズの多様化 に伴 い車両の構造が複雑化 し, 組立工程 で も組立作業その ものが複雑 にな り生産性 の上昇が鈍化 し始 めてい た。 さらに労働時間短縮 の要求やいわゆる

3K

の''製造業離れ"現象 に代 表 される労働価値観の変化,出生数の減少 による若年就労者の減少,生産現場 の 高齢化 とい う働 く人の変化が顕在化す る ようになって きた (新美 ほか :

86)

0 また,生産工程の上で も,一人一人の作業のムダを徹底的に排 除す るあま り, 作業が機能的関係 のない,脈絡 にかけた作業の組み合 わせ になって きたため,

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