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セラミックウィスカを含むアルミニウム合金 複合材料の時効と疲労

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(1)

セラミックウィスカを含むアルミニウム合金 複合材料の時効と疲労

柴田政勝* 藤原 敏* 西 彰矩**

Aging and fatigue of an aluminium al!oy matrix composite with ceramics whisker

Masakatsu SHIBATA , Satoshi FUJIWARA and Akinori NISHI

 A6061 aluminium al loy matrix composite reinforced with aluminium−borate ceramics whisker was fabricated by squeeze casting and then its aging phenomina and fatigue properties were evaluated. Mg concentration in the composites decrease and intermetallic compounds is produced by interact of aluminium−borate whisker and molt−

en aluminium alioys. Agifig hardenability with the compesit.e is accelerated but slightly. Fatigue limit of t−he composites is higher with increas ing the voluine fraction of aluminium−borate whisker.

1. 緒 言

 セラミックウィスカを含むアルミニウム合金複合材料用 のウィスカとしてはすでに炭化けい素(SiC)が用いられ,

その複合材がすでに一部実用化されているが1}   2}   31 Sic

の価格が高く.したがって複合材料そのものが高価になり その優れた特性をもつ割には広く普及するまでにいたって いない。ところが,最近,四国化成(株)が開発した新し いセラミックウィスカであるホウ酸アルミニウムウィスカ

(2B,0,・9A1203)は強度はやや劣るものの弾性率や硬さ,

比重といった構造用複合材料として用いる場合に重要な性 状はSiCにくらべ,ほとんど遜色がなく価格はSiCの約1/10 である4)。 したがって著者らは安価で実用に耐える複合 材料を開発するため,ホウ酸アルミニウムウィスカを用い た複合材料を作成し,時効処理を施し,回転曲げ疲労試験 を行なった。これまでの著者らの研究5)によるとウィスカ 体積比Vfが30〜38コ口大きい場合,時効による硬化はほ

とんど見られずVf=38累の場合はむしろ時効開始とともに軟 化し,通常のアルミニウム合金と極めて異なる変化を示し た。このような例はSicを用いた複合材料でも報告されて おり6}s7} 8),この原因については諸説あるが確定的な説 明はない。 また,Vfが小さくなると通常のアルミニウ ム合金の時効変化と同一の挙動を示すことが一般に報告さ れているが,本セラミックウィスカを用いた時効挙動につ いては報告が見当らない。一方,疲労試験の結果はVfの

大きい場合,溶体化処理のままの複合材料が最も疲労強度 が高く,時効を行なったものはかえって疲労強度が低くな り,この現象も通常のアルミニウム合金とは異なった挙動 を示している5,。そこで,今回はVfの小さい複合材料を 作り,時効および疲労挙動を調べ,ホウ酸アルミニウムウ ィスカを含むアルミニウム合金複合材料の実用化のための 基礎的データを得ることを目的とした。

*  機械工学科

** 情報工学科

  平成7年10月31日受理

2。 実 験 方 法

 2。1 複合材料の作成

 複合材料はまずホウ酸アルミニウムウィスカでプリフォ ーム(予備成形体)を作成し,これにアルミニウム合金溶 湯を加圧しながら配湯するいわゆる高圧鋳造法9,によって 作成した。 ウィスカは四国化成(株)製アルポレックス M204}を用い,これに蒸留水を加えてスラリー状にし常温 での成形性を保たせるためポリストロン◎.25g重,さらに 高温での成形性保持のため,アルミナゾル2。Og重添加した 後,硫酸アンモニウム2.Og重を加えて中性にした。 Vfを

調整するため,Vf=23Xの場合は5. Og重, Vf=27%の場合は2.

5g重の炭素織維を蒸留水に混合したものを上記溶液に加え 三三後,超音波器を用いて解繊した。その後,真空ポンプ

を用いて吸引ろ過を行ない,直径60㎜,高さ約30mmのプリ フォームを作成した。このプリフォームを353Kで一昼夜乾 燥後,鋳造前に1073Kで1時間焼結した。この際,プリフ

ォーム申の炭素繊維は燃焼し,℃02となって除去され,し たがってVfを調整することができる。このプリフォーム を773Kに予熱した金型に装入した後,1073Kで溶解したア ルミニウム合金を注湯後直ちに加圧した。加圧は万能試験

(2)

機を用い,90MPaで行なった。

 2.2 時効および疲労試験

 2.1の方法で作成した複合材料から時効実験用として 3×5×18㎜の短冊状,疲労試験用として平行部直径6㎜,長 さ60mmの丸棒を切出し,それぞれ実験を行なった。実験方 法は二二5)のとおりである。透過電子顕微鏡による組織観 察はまず機械的研磨により約0.2㎜厚さとしたのちイオン

ミリング装置により薄膜にし,日立HU−11B型を用い て加速電圧100kVにて行なった

3.実験結果および考察

 3.1 複合材料の組織

 Fig.1 は複合材料を走査型電子顕微鏡を用いて観察し た組織写真でウィスカは短繊維であるため,試料の切断の 仕方によって長く見えたり,丸い断面が見えており,ウィ スカはほぼランダムに配向していることがわかる。そして 空隙はほとんど観察されずウィスカの間隙はほぼ完全にア ルミニウムによって充填されていることがわかる。

Fig.1 Scanning electron micrographs of the    compos ites ,(a) showes that of 23X volume    fraction and (b) showes that of 27%.

 Table 1はアルキメデス法によって測定した複合材料 およびマトリックスであるA6061合金の密度およびそれよ り求めたVfを示す。測定方法ならびに用いた計算式は二 二5)と同様である。ホウ酸アルミニウムウィスカの密度は 2. 934}であり,A6061の2.70io)にくらべて大きいため,複 合材料になると若干密度は大きくなる。なお,Fig.1 の 電子顕微鏡写真より点算法11,によって求めたVfはVf・30

〜38Xの場合は密度より求めた値とほぼ一致したが,本実 験のようにVfが少なくなるとウィスカの分布が不均一に なるため,写真より求めたVfは同一試料においてもlo 30Xとばらっきが多く,密度より求めた値とはかなり異な った。したがって,本実験の試料の体積比は密度より求め

Table 1 Densities and volume fraction of aluminium     borate whisker of composites and A6061 alloy

密 度 ρ 体 積 比 %

A6061合金

。合材料Vf23%

。合材料Vf2甥

2. 709

Q,775

Q. 787

一22.7

Q6.8

た値を採用した。

つぎに,割干5)と同様にX線マイクロアナライザにより,

複合材化による成分元素の変化を測定した。Table 2 に その値を示す。複合材化により,Mgは約1mass%減少して いることが特徴的であり他にSiがやや増加している。 Vf が30〜38Xの場合もMgは約1%減少し同様の傾向を示して いるがVfの大小による差異は認められなかった。

Table 2 Chemical analysis of composites and     A6061 alloy.

分析元素 複合材料 複合材料 A6061合金

Vf23% Vf27%

Mg 3.51 3.69 4.50

Si 1.00 1.19 0.69 Fe 0.05 0.09 0.06 Cu 0.25 0.43 0.20 A1 ba 1 hal bal

 3.2 時効による硬さ変化

 前野5)と同様に3×5×18の短冊状試験片を切り出し,アル ゴン封入した後,803Kで2時間溶体化処理し,直ちに水中 に焼入れ,所定時間シリコン油中にて時効を行なった。時 効による硬さ変化をFig.2,3,4に示す。 A6061合金は時効 開始とともに,いずれの時効温度においても硬化し始め,

時効温度が高くなるほど最高飛さに到達する時間は早くな るがその値は低い。溶体化処理直後にビッカース硬さHvニ 48だったものが時効処理によ.って最高硬さHv=110〜130と なり,時効処理によって2.5〜3倍になる。この変化は 他の研究者ら6)とほぼ一致している。Vf=23Xの複合材料で

は溶体化処理直後の値はHv=118で複合材化によって約3倍 になることがわかる。しかしながら時効による硬化は少な く最大でHv・130であり,硬化度はたかだかHv・10である。

そしてA6061と比較した場合,最高硬さに達する時間はほ ぼ同じでかつ時効温度が高くなるほど最高硬さに到達する 時間は早くなりA6061合目と類似の傾向を示す。 Vf=27Xで は溶体化処理直後の値はHv=120〜126であり,A6061,Vfニ23 毘よりも硬く,Vfの大きいほど硬化する。時効温度が高

(3)

くなるほど最高到達時間は短くなるが,その硬化度はVf=

23%よりさらに小さく,全体的には溶体化処理直後よりも 低い値となり,前報5}のVf=30〜38Xと類似の傾向を示す。

3.3 時効による電子顕微鏡組織変化

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/hr Fig.2 Changes of the hardness of A6061 alloys    with aging.

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@Vf 23%

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 Fig.5はA6061合金を403Kで時効したときの組織変化を 示す。時効開始後4時間経過したものは非常に微細な析出 物が多数観察され,またマトリックスにはコントラストが 明瞭でないGPゾーンらしきものが認められ,これらが硬 化に寄与したものと考えられる。硬さがピークに達した時 効開始後14時間の試料では数10nmの長径をもつ楕円体状の 析出物が観察される。30時間経過したものは粗大な多角形

︾ミ切OO⊆℃ ω﹂Φ着〜Ob一Σ

      Aging time /hr

Fig.3 Changes of the hardness of the composites    (Vf=23X) with aging.

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Composite

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      Aging time /hr

Fig.4 Changes of the hardness of the composites    (Vf=27X) with aging.

    轍無    雛     癖

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30hrs

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Fig.5 Transmission electron micrographs of    A6061 alloy aged at 403K.

(4)

またはそれと同サイズの長い棒状析出物が観察されること から,この析出物は厚さが数10nmで一辺の長さが数100nm の多角形台と推測される。 この析出物はMg2Siと推測さ れ12,,このように粗大化したため軟化したものである。

 Fig.6 は時効処理した複合材料(Vf・23X)を透過型電 子顕微鏡によって観察した組織を示す。太く棒状あるいは 楕円状に見えているのがウィスカでFig.5に見られるA60 61合金の類似の析出物とは異なる。ウィスカ表面には数10 nmの黒い粒状が認められるが,これは複合材料製造時の高 圧鋳造中に合金溶湯と反応して生成した反応生成物でMgA1 204t3)と推測される。この推測はTable 2に示したよう に複合材料のMg濃度がA6061合金にくらべ大きく減少して いることと一致する。また,時効開始後0.5時間の試料と2 時間の試料いずれもその反応生成物の量や大きさはほとん ど変わらず,したがって時効によって生じたものとは考え にくい。ウィスカ自体は2時間時効のものは0.5時間時効の ものよりもやや丸みを帯びているように観察されるが,時 効温度が453Kと低いことからほとんど変化はないと考えら れる。一方マトリックスには0.5時間のものにも小さな析 出物が認められるが2時間ではその数が多く,かつ明瞭に 認められFig.3 に示す硬さ変化からも判断されるように

これが硬化に寄与しているものと考えられる。

3.4 疲労試験

 Fig.7に403Kで30時間, Fig.8に453Kで2時間時効処理 を施した複合材料の疲労試験結果を示す。いずれもほぼ硬 さが最高値を示す時間の試料である。403Kで時効したVf=

27Xの複合材料が最も疲労強度が高くその値は約135HPaで 次いで453KのVfニ27Xと403KのVf=23Xが130MPaとほぼ同じ値 であり,最も低いのが453KのVf=23Xの複合材料であった。

したがって,403K,453Kいずれの時効温度においてもVf=

27%の複合材料の方が疲労強度は高く,硬いほど疲労強度 が大きいことがわかる。そして前報5}と比較すると453Kで 最高硬さに到達する2時間時効した試料の疲労強度は110 凹Paであり,疲労強度に対しては時効に要する時間も考慮 に入れると453KでVf・28%付近が最良条件と判断される。

Fig.9はVf=23%の複合材料の疲労試験後の破面を示す。疲 労破面の特徴であるストライエーションが観察されるが通 常のアルミニウム合金とは異なり,ストライエーションの 一本一本が直線的で平坦である。当然同→破面に延性破壊 を示すディンプルも見られるがVf=30〜38Xに比べるとス

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Aged at 403 K  for 30 hr

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 Number of cycte to faiture

Fig.7 S−N curves of the composites aged at    403k for 30 hrs.

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Aged at 453 K for 2 hrs  ロVf 23%

Vf 27  le

  

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Fig.6 Transmission electron micrographs of the    compos i tes (Vf=23X) aged at 453K.

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 Number of cyctes t6t ta}ture

Fig.8 S−N curves of the compos ites aged at    453K for 2 hrs.

1

(5)

トライエーションが多く,ディンプルは少なくなって通常 のアルミニウム合金の疲労破面に近くなっている。

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(b)

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Fig.9 Fatigue fracture surface of the compos ites    (a) showes that of the whole feature ,(b)

   showes striation and (c) showes dimple    pattern.

4. 結 言

ホウ酸アルミニウムウィスカを用い,高圧鋳造法によって ウィスカ体積比Vf20〜27%のA6061合金複合材料を作成し 時効硬化挙動を調べた後,疲労試験を行なった。

(1)複合材化すると㎏濃度が減少するが,一これは高圧   鋳造時にウィスカと合金溶湯との反応により,反   応生成物が生成するためである。

(2)Vfが大きくなるほど溶体化処理直後の硬さは高   いが,時効による硬化は小さくVf=27Xの場合は一   時的な硬さのピークは見られるものの全体的には   軟化する。

(3)Vfの大きいほど疲労強度は高くなり,かつ時   効処理によってさらに疲労強度は上昇する。

最後に複合材料のTEM観察用薄膜を作成して頂いた日立 金属(株)副参事瀬崎博史氏ならびに実験にご協力頂いた 本校機械工学科卒業生石岡卓也,内田良平,国本政男,前 原真吾,安井道之 準工学士に深く感謝します。

参 考 文 献

1)材料技術研究協会編,先端材料技術とその展望,総合   技術出版,1987.

2)材料技術研究協会編,複合材料と界面,総合技術出版   1986.

3)石川敏功,先端技術3 新素材,日本ビジネスレボー   ト(株),1986.

4)四国化成工業(株)編,アルポレックス 技術資料,

  1992.

5)柴田政勝,藤原敏,西彰矩,アルミニウム合金複合材   料の時効と疲労について,津山高専紀要,Vol.34,

  1994, 13.

6)池野進他5名,アルミナ粒子分散型Al−Cu一凹g合金基複   合材料の時効挙動に及ぼす粒子体積率の影響,43−9

  (1993), 465.

7)池野進他4名, アルミナ粒子分散型Al−Cu−Mg系複合   材料の時効析出,軽金属,41−11(1991),752.

8)洪 性吉,手塚裕康,神尾彰彦,SiCw/Al−Li−Cu合金   複合材料の時効硬化挙動,軽金属,43−6(1993),328.

9)福永秀春,スクイズキャストによる軽金属複合材料   の作製,軽金属,38−11(1988),740.

10)40周年記念事業室実行委員会記念出版部会編,ア    ルミニウムの組織と性質,軽金属学会,1991.

11)佐久間健人,西沢泰二,定量金属組織学,日本金属

   学会会報,10−5(1971),279.

12)大堀紘一,Al一㎏一si合金,軽金属,38−11(1988),

   748.

13)管沼克昭他3名,ホウ酸アルミニウムウィスカ/

   AC8Aおよび6061アルミニウム合金の界面反応,

   軽金属,41−5(1991),297.

参照

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