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(1)

5 3  

看護婦の生命観に関する調査報告

— 看護婦と看護学生の 比較検討 ー~

川崎医療短期大学 第一看護科

初 鹿 真由美 杉 田 明 子 渡邊ふみ子 酒井 恒 美

(平 成2年8月27日受理)

A  Comparative  Investigation on  Nurses'an d  St udent  Nurses'Outlook on Life 

Ma y umi  H A   TSUSHIKA,  Akiko SU  GIT  A ,  Fumiko  WAT  A N   ABE a nd  T s unemi  SAKA I  D e p a r t m e n t  o f   N

s i n g ,K aw

a k iC o l l e g e  o f  A l l i e d  H e a l t h  P r o f e s s i o n s  

K u r a s h i k i ,   O k a y a m a   7 0 1 ‑ 0 1 ,  j a p a n   ( R e c e i v e d  o n  A u g .   2 7 ,  1 990 )  K e y  w o r d s :

生 命 観,看 護 婦 , 看 護 学 生

概 要

看護婦を対象に,生命観に関する調査を行った。そして,前報の看護学生の場合と比較検討をした結果,看護 婦も看護学生も自分の場合には癌を告げてほしいが,一般・家族の場合には告げることを踏躇していた。末期癌 の治療では,いずれの場合も,苦痛の緩和を第一としていた。植物状態の患者の治療・看護では,看護婦と看護 学生は,自分の場合には自然に任せたいとする率が高率で,同傾向を示した。しかし,一般・家族の場合には異

なった傾向を示した。脳死と臓器移植では, 7割が肯定的な反応を示した。

は じ め に

死を目前にした人々への看護には,磨 き 抜 か れた看護技術か必要であり,さらに高度な人間 的な判断や配慮が求められる。そこには,看 護 に当たる者の生命観が重要なかかわりをもつと 思われる。

今 回,川崎 医 科 大 学 附 属 病 院 の 看 護 婦

5 5 1

名を 対象に生命観に対する調査を行い,その実態を 明らかにするとともに,前報1)の本学看護学生の 場 合 と 比 較 検 討 し た の で,その結果を報告する。

I I

研 究 方 法

1 .

調 査 対 象

川 崎 医 科 大 学 附 属 病 院 看 護 婦

5 5 1

名 2.調 査 時 期

1989年7月

3 .

調 査 方 法

質問紙を作成し, 「癌を告げる」 「末 期 癌 の 治 療」「植 物 状 態 に なった 患 者 の 治 療 ・看謹」「脳 死 と 臓 器 移 植 」 の

4

項 目 に つ い て 調 査 し た。各 設 問 内 容 は 前 報1)と同一であり,各設問毎に一般 の 場 合 (以下 〔一 般〕),自分の場合 (以下 〔自 分〕),家 族 の 場 合 (以 下 〔家 族〕) の賛否を,賛 成, どちらともいえない,否定の3段 階 で 回 答 を求めた。回答者は518名で,回収率は94.0%で あった。

4.調 査 結 果 の 分 析

看 護 学 生 と の 比 較 は , 看 護 婦 の 経 験 年 数 に よ って,

5

年 未 満(以下

N 1 )  3 5 7

名,

5

年 以上(以 下

N 2 )  1 6 1

名に分類し,検 討 し た。

比率の差の検定には,

F i s h e r

の直接確率計算 法を用いた。検 定 に お け る 有 意 水 準 は5%とし た。

(2)

I I I

1 .

癌を告げる

較は,図

4

である。

次に, 自分が当事者であったなら苦痛の緩和 を優先してほしいと回答した

8 8 . 9

%の者のうち, 癌を告げることに賛成である と肯定的反応を

した者が,〔一般〕

2 6 . 6 % ・

〔自分〕

6 8 . 2

%・〔家 族〕

1 3 . 2

%であった。これに対して,告げるこ とに反対であると否定的反応をした者は, 〔一般〕

2 2 . 7 %

・〔自分〕

1 9 . 2 %

・〔家族〕

5 7 . 5

%であっ た(図1)。

〔一般〕及び〔家族〕にはどのように考えてい るかをみると,積極的に治療を続けるとした者 か,〔一般〕 ・〔家族〕共に

2 . 6

%であり,この率 は,看護学生 (〔一般〕

2 . 7 %

・〔家族〕

4 . 8 %)

と比較して有意差は認められなかった。

看護婦の経験年数を

5

年未満と 5年 以 上 に 分 け,前報1)の看護学生と比 較して肯定的反応をした 者の率及び,否定的反応 をした者の率をみたのが 図

2

である。ただし,図 には3群間に有意差が認 められなかったものは省 略した。

次に, (自分〕は知りた いと答えた

6 8 . 2

%の者が,

〔一般〕及び〔家族〕に はどのように考えている かをみると,告げると答 えた者が〔一般〕

3 5 . 9 %・

〔家族〕

1 7 . 4

%にとどま っている。この率を看護 学生〔一般〕(

4 5 . 9

%・〔家 族〕

2 7 . 0 %

)と比較する

と,〔家族〕において看護 婦が有意に低率であった。

2.末期癌の治療 多少の苦痛は我慢して でも治療を続けたいとす る者,〔一般〕

4 . 3

%・〔自 分〕

5 . 1 %・

〔家族〕

4 . 5%

, どの場合も低率であ った。それに対して,苦 痛の緩和を優先するとし た者は,〔一般〕

8 8 . 9 %・

〔自分〕

8 8 . 9%

・〔家族〕

91. 4%と,いずれの場合 にも非常に高率であった

(図 3)。看護学生との比

一般

自分

家族

0  10  20  30  40  50  60  70  80  90  100¾ 匿癌を告げる ど ち ら と も い え な い ・9癌 を 告 げ な い n=515  同 一 の ア ル フ ァ ベ ッ ト が 記 さ れ た 群 間 に は 有 意 の 差 を 認 め な い

図1 癌 を 告 げ る こ と に 対 す る 賛 否

ー 一般と 自 分 と 家 族 に 対 す る 場 合 の 比較_

癌を告げる

%  一般〕

癌を告げる

自分〕

癌を告げる

家族〕

癌を告げない

家族〕

80  70  60  50 

ab 

ab 

40 

一般

自分

家族

:晋護学生 NI:着設婦経験年数5年未満 N2:看護婦ー経験年数5年以上 同一のアルファベットが記された群間には有意の差を認めない

2 癌 を告 げ る ことに対する賛 否 ー看 護婦 と 看 護 学 生 の 比較

0  10  20  30  40  50  60  70  80  90  100%  冶療を続ける ど ち ら と も い え な い 苦 痛 の 緩 和 を 侵 先 n=Sl 2  同 一 の ア ル フ ァ ベ ッ ト が 記 さ れ た 群 間 に は 有 意 の 差 を 認 め な い

図3 末 期 癌 治 療 の 是 非 ー 一般 と 自 分 と 家 族 に 対 す る 場 合 の 比較

(3)

3.

植物状態になった患 者の治療 ・看 護 人工呼吸器等は外さな い で,治療を続けて現在 の状態をできるだけ維持 したいと望む者が,〔一 般〕

20.7%・〔自分〕3.5%・ 

〔家 族〕22.7%であった。

これに対して,むしろ自 然に任せたいとした者は,

(一 般〕47.8%・〔自分〕

86.2%・〔家族〕63.4% で ある(図5)。この率を看

看護婦の生命観に関する調査報告

治療を続ける 苦痛の緩和を優先

%  〔一般〕 〔家族〕

100 r  a  b  ab  90 

80  70  60  50  40  30  20  10 

S I Nl I N2 

S :看護学生

Nl:君護婦ー経験年数5年未満 N2:君護婦ー経験年数5年以上

同一のアルファベットが記された群間には有意の差を認めない

4 末期癌治療の是非 一看護婦と看護学生の比較一

55 

護学生と比較すると (図 〔一般〕

6),治療を続けるとした 者 は 看 護 学 生 が,〔一 般〕・〔家族〕共に有意に 高率であった。また, 自 然に任せるとした者は,

〔一 般〕で

N2

が有意に 高率であり, 〔家族〕は看 護学生が有意に低率であ

った。

次に,〔自分〕は自然に 任せたいとした86.2%の うち, 〔一般〕及 び〔家 族〕

にはどのように考えてい るかをみると,治療を続 けるとした者が,〔一般〕

16.0%・〔家族〕16.4% で あった。この率を看護学 生 〔一 般〕( 28.9%・〔家 族〕34.9%)と比較する と, 〔一 般〕・〔家 族〕共に 看護婦が有意に低率であ

った。

4.

脳 死 と 臓 器 移 植

(一 般〕では,脳死を 死と認めることに賛成し た者63.5%, 反 対 し た 者 9.0%である(図7― ①)。 看護学生と比較すると,

脳死を死と認めることに 賛成した者が,図

8

のよ

〔自分〕

(家族〕

0  IO  20  30  40  50  60  70  80  90  lOOX  璽治療を続ける 口どちらともいえない 悶"自然に任せる n=508  同一のアルファベットが記された群間には有意の差を認めない

5 植物状態の患者の治療・看護の是非 ー一般と自分と家族に対する場合の比較ー

治療を続ける

〔一般〕 治療を続ける

〔家族〕 自然に任せる 自然に任せる

〔一般〕 〔家族〕

%  70  60  50  40 

a  30  20 

a  b  b  a  a  b 

:看護学生 NI:看護婦ー経験年数5年未満 N2:看護婦ー経験年数5年以上 同一のアルファベットが記された群間には有意の差を認めない

図6 植物状態の患者の治療・看護の是非 一看護婦と看護学生の比較一

脳死を死と 認めるか

腺 器 移 植 賛 否

0  10  20  30  40  50  60  70  80  90  100¼

111賛成

どちらともいえない t..:反対 n=501  同一のアルファベットが記された群間には有意の差を認めない

7一① 脳死を死と認めるか否かと臓器移植の賛否 ー一般の場合一

(4)

う に 看 護 学 生

6 7 . 6 % ・  N  165 . 6%  ・  N  2  5 8 . 6% 

であり,有意差は認められないか,

N2

は低い 傾 向 に あ っ た。

ま た , 臓 器 移 植 に 対 し て 賛 成 し た 者 は

6 9 . 5%,

反 対 し た 者 は

5 . 8

% で (図

7

一①), この 率 を 看 護 学 生 と 比 較 す る と , 図

9

の よ う に

N2

か 反 対 し た 率 が 有 意 に 高 い。

脳 死 を 死 と 認 め る か 否 か と 臓 器 移 植 の 賛 否 の 内 訳(図

7

一②)をみると,

脳 死 を 死 と 認 め る こ と に 賛成した者のうち,

8 2 . 4

% が 臓 器 移 植 に 賛 成 し て

% o 

0 0 0  

2I 

5 3 . 7% ,  4 6 .  7 %

)と 比 較 し て 有 意 差 は な か っ た。

次 に , 臓 器 の 授 受 に つ い て み る と, 提供 を す ることに対しては,賛成〔自分〕

5 5 . 1

%・〔家族〕

32.9% 

・反対〔自分〕

1 8 . 0 %

・〔家族〕

3 5 . 1

% で

賛 成 反 対

未 以 年 年 5 5   年 年 験 験

生︱︱

••

••

S N

a a 

••

% o

o o o o o o o o  

87

6 5 4 3 2

同一のアルファベットが記された群問には有意の差を認めない

い る が,

3 . 1

% は 反 対 し て 8 脳死を死と認めるか否かの賛否 ー 一般の場合の看護婦と看護学生の比較一 いた。こ の 率 は , 看 護 学

生 (賛 成

7 9 . 5

%・反 対

1 . 7 

%)と比較 し て,笠否と も に 有 意 差 は み ら れ な か った。また,どちらとも い え な い と し な が ら,臓 器 移 植 に 賛 成 し た 者 が

4 6 . 4

% と 半 数 あ り , 脳 死 を 認 め な い 者 の 中 に も 臓 器 移 植 に 賛 成 し た 者 が

4 8 . 9

% で あ っ た。これら の 率 は 看 護 学 生 (そ れ ぞ

技 成 反 対

未 以 5 5   験 験

生︱︱

. .. .

. . 

1 2  

s z z  

. 

0 0 0 0 0  

7

6 5

43 

同一のアルファベットが記された群間には有意の差を認めない 9 臓器移植の賛否ー一般の場合の看護婦と看護学生の比較一

股器移植に賛成 反対

0 10 20 30 40 50 60 70 80  90100 

% 

股器移植に どちらとも

II

反対

丹成 いえない

0 10 20 30 40 50  60 70 80 90100 

% 

どちら 腺器移植に 1ともい

I

反対

笠成 えない

圏脳死を死と認める

どちらともいえない

・・脳死を死と認めない n •501

0 IO  20 30 40  50 60 70 80  90 I 00 

% 

7一② 脳死を死と認めるか否かと朦器移植の賛否の内訳 ー 一般の場合一

(5)

看護婦の生命観に関する調査報告 57 

あった(図

1 0

。) この率を看護学生と比較すると

(図11),賛成は〔自分〕で,看護婦が有意に低 率であった。一方,〔自分〕に賛成した55.1%の 中の51.1%は, 〔家族〕にも賛成したが,残りの 48.9%は賛成していない。この率は,看護学生

(賛成46.5%)と比較して有意差はみられなか った。

これに対して,提供を受けることに賛成は,

〔自分〕 37.5 %・ 〔家族〕 57.5%•反対は〔自分〕

23.6%・〔家族〕14.0%であった(図12。) この 率を,看護学生と比較すると(図13),提供を受 けることに賛成する者が〔自分) ・〔家族〕の両 方において,看護学生か有意に高率であった。

提供を受けることに反対する者は, 〔自分〕では N 2が看護学生とN lより有意に高率であり,

〔家族〕ではN 2が看護学生よりも有意に高率 であった。

〔一般〕

自分

〔家族

0  IO  20  30  40  50  60  70  80  90  I 0

提 供 す る 口 ど ち ら と も い え な い i提 供 し な い n=50 I  同 一 の ア ル フ ァ ベ ッ ト が 記 さ れ た 群 間 に は 有 意 の 差 を 認 め な い

図10 朦 器 提 供 の 賛 否 ー 一般 と 自 分 と 家 族 に 対 す る 場 合 の 比 較_

% o

o o o o o o o o  

87

6 5 4 3 2

b

賛 成

〔家族〕

反 対

〔自分〕

反 対

家族

:看護学生 NJ君 護 婦 ー 経 験 年 数5年 未 満 N2 :看護婦ー経 験 年 数5年 以 上 同 一 の ア ル フ ァ ベ ッ ト が 記 さ れ た 群 間 に は 有 意 の 差 を 認 め な い

図11 臓 器 提 供 の 賛 否 看 護 婦 と 看 護 学 生 の 比 較 一

一般

自分

〔家族

0  IO  20  30  40  50  60  70  80  90  I O(f.l  提 供 を 受 け る 口 ど ち ら と も いえない ''提供を受けない n=501  同 一 の ア ル フ ァ ベ ッ ト が 記 さ れ た 群 間 に は 有 意 の 差 を 認 め な い

図12 臓 器 提 供 を 受 け る こ と の 賛 否 ー 一般 と 自 分 と 家 族 に 対 す る 場 合 の 比 較

(6)

% o o o o o o o o o  

87

6 5 4 3 2 1  

賛 成

〔自分〕

笠 成

〔家族〕

反 対

〔自分〕

反 対

〔家族〕

ab 

Nl

1 N2 

: 看 護 学 生 N 1 : 看 護 婦 ー 経 験 年 数5年 未 満 N2 :看護婦ー 経 験 年 数5年 以 上 同 一 の ア ル フ ァ ベ ッ ト が 記 さ れ た 群 間 に は 有 意 の 差 を 認 め な い

図13 臓器提供を受けることの賛否 一看護婦と看護学生の比較一

w

考 察

1 .

癌を告げる

患者は,最後まで回復への希望をもっている。 癌告知の問題は,それを告げること,告げない

ことで,患者の生きることへの希望とどうかか わっていくかという点を考えなければならない。 患者か, 自分の人生をどのように歩んてきたの かということが一つの目安となり,また,告げ た場合には家族も含めて,医療者側がどれだけ 終末期のケアを行いうる力と姿勢をもっている かということが重要になる。今回のアンケート の結果は,看護婦も看護学生も自分の場合には 告げてほしいとしながら,一般及び家族の場合 には告げることを躊躇している。また, 自分の 場合には知りたいと答えた者のうち,家族の場 合に告げると答えた者が,看護婦は

1 7 . 4

%にと

どまり,看護学生より有意に低率であった。

川崎医科大学附属病院では,積極的告知はさ れていない現状にある。患者は,初期の癌で,

回復できる可能性や治療が成功する可能性が高 いとしても,致命的疾患であるならば,それを 告げられたことで闘病意欲を失い, 自棄的にな ることが予想される。このようなことか,看護 婦の考え方に影響しているとも推察される。

また,キュープラー・ロス叫ま, 「癌と告知さ れた患者は,否定,怒り,取り引き,抑うつ,

受容というような心の動きを経過し,死に至る」 と述べている。これらの否定や怒りは, 日頃か ら信頼関係にある家族や看護婦に向かいやすい 傾向にあるため,そのようなときの患者の反応 に看謹婦が対処できるだろうかという不安が,

今回の結果を示しているのではないだろうか。

一般・家族の場合に告知することを躊躇してい る具体的な問題を明らかにして,解決の糸口を 見つけだしていかなければならない。

2.末期癌の治療

末期癌の痛みは強く,持続的である。それは, 患者の一番の苦痛であり,痛みと闘うことに全 エネルギーを費やして,他のことを何も考えら れなくする。柏木叫ま, 「人が尊厳をもって生を 全うすることができるためには,激痛の緩和か 第一である」と述べている。今回の調査で看護 婦は,一般・自分・家族のいずれの場合におい ても,苦痛の緩和を優先すると答えており,柏 木と認識のしかたは同じであった。

3 .

植物状態になった患者の治療 ・看護 人間は,人格の尊厳をもって生きている。植 物状態の患者というのは,大脳半球,間脳,上 部脳幹のいずれかに, または合併して障害をう けているか,呼吸・循 環 ・代 謝 ・体温調節など の機能をつかさどる下部脳幹の障害は免れてい る状態4 6)で,人工呼吸器,人工栄養補給などの 生命維持の治療の進歩によって,数年あるいは 十数年の生存か可能となった。

看護婦は,自分の場合,自然に任せる者が86.2

%と高率であった。看護学生と比較すると,自 分の場合は,同傾向を示したが,一般 ・家族の 場合には,看護学生は治療を続けるとする者の 率が高く,看護婦は自然に任せる率が高かった。

看護婦は,植物状態の患者の看護に携わりなが ら,生命維持装置をつけて十数年生存している 現実をまのあたりにして,人間か尊厳をもって 生きることへの疑問を感じている。人間の気持 ちとして,感情として, 自然に任せる率が高〈

なったのではないかと考える。

(7)

看護婦の生命観に関する調査報告 59 

4 ・脳死と臓器移植

脳死と臓器移植は,先端医療が我々の生と死 のはざまに投げかけた新しい問題である。欧米 諸国では,脳死を「個体死 (人間の死)」とする 考え方が定着しており,脳死者からの臓器移植 は頻繁に行われているが, 日本では,未だ社会 的コンセンサスが得られない状況にある。

今回の調査では,医療現場にいる看護婦は,

7

割が脳死を死と認めており,臓器移植に対し ても同様に,肯定的反応を示す者が多かった。

しかしながら,看護婦と看護学生の比較をした 時に,経験年数の高い看護婦は,脳死を死と認 める率が低く,臓器移植も反対する率が高かっ た。これは今までの看護体験が影響しているの ではないかと考えられる。

v

結 論

1.癌を告げるについて, 自分の場合には告げ てほしいか,一般 ・家族の場合には,告げる ことを躊躇していた。

2.末期癌の治療では,一般 ・自分・家族のい ずれの場合も,苦痛の緩和を第一としていた。

3 .

植物状態になった患者の治療 ・看護につい

て,看護婦も看護学生も自分の場合には自然 に任せたいとした者が高率で, 同傾向を示し たが,一般 ・家族の場合には,看護学生は治 療を続けるとする者の率が有意に高く,看護

婦は自然に任せるとする者の率が有意に高か った。

4.

脳死と臓器移植に関しては,

7

割近くの者 が賛成していた。経験年数5年以上の看護婦 は,脳死を死と認める率が他より低い傾向に あり,臓器移植に対しては,反対する率が有 意に高かった。

謝 辞

本調査の実施にあたり,ご協力いただきまし た川崎医科大学附属病院看護婦の皆様に感謝い たします。

文 献

1)渡遥ふみ子他: 看護学生の生命観に関する調査 報告(第二報),川崎医療短期大学紀要,9,53‑59 

(1989) 

2)キュープラー・ロス (川口正吉訳):死ぬ瞬間,

読売新聞社,東京 (1978)

3)柏木哲夫 :生と死を支えるーホスピス・ケアの 実 践 p,197,朝日新聞社,束京 (1987) 4)唄 孝ー:医療と人権,中央法規出版株式会社,

東京 (1985)

5)植村研ー,中谷比呂樹他:人間の死と脳幹死,

医学書院,東京 (1984)

6)黒川利雄:よ〈わかる脳死・臓器移殖ー問一答,

合同出版株式会社,東京 (1985)

(8)

参照

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