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をもって登校している児童生徒の健康管理について

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(1)

茨城太学教育学部紀要(教育科学)34号(1985)153−174 °       153

慢性疾患(特に心疾患,腎疾患,喘息,その他)

をもって登校している児童生徒の健康管理について 第2報   学級担任教師の関与を中心に

中村 朋子*・前田 シゲヨ**

(1984年9月29日受理)

Health Care for Pupils with Heart Disease, Renal Disease,

and Bronchial Ast㎞a at Schoo1

Part皿一ARole of Class Teachers一

Tomoko NAKAMURA*alld Shigeyo MAEDA**

(Received September 29,1984)

Abstract

The survey of health care cases at school showed that 60 primaエy school class teachers

and 53 junuor high school ones in total had cares of 22 pup皿s with heart disease,23 with renal disease,47 bronchh【asthma a鶴d 21 with othel disease. What health cales were taken of

血1the above cases are investigated. The results are summadsed as fbllows;40 to 80 percent of

dass teachers ale communicated the cases with by the虻predecessoエandlor the guard血ms」11 65to 90 percent of the cases,the class teachels are communicated the dヨagnostic results. The da皿y health observations of the above・mentioned pup皿s are made together with other normal

ones by the class teachers. About 60 to 90 percent of pup皿s in anxiety about thek disease and

backwardness血11earnhlg ale needed」辰)I lead血gs and assistance by thek class teacheτs。 Theh class teachers take hto consideration 30 to 50 percent of pup証s who is restricted on the虻

pa正tcipation in athletic or school activities, such that pup聾s are not fbrced to work, observa一

tions of them are carefu皿y ma(1e and so on. More than 80 percent of the class teachers oommunicate their pup皿s diagnostic results and indication at school and at home with the

famihes of their pup皿s.

      、

P  はじめに

最近,心疾患,腎疾患,気管支喘息などの慢性疾患をもつ児童生徒が増加傾向にあり1),学校に

*茨城大学教育学部教育保健学科  Laboratory of Health Science Education, Ibaraki University.

**茨城県鹿島郡白鳥 東小学校   Shiratori Elementary School, Kashima−gun,Ibaraki Pref.

(2)

       ,

P54       茨城大学教育学部紀要(教育科学)34号(1985)

おいて,そのような児童生徒がかかわる問題は,身体面,精神面,学習面など,多岐にわたってい

る。

こうした問題に対し,学校側は,保護者や,主治医との連携のもとに,適切な指導,健康管理を

行うことが望ましいと思われる。

第1報では,慢性疾患をもって登校している児童生徒の健康管理について,おもに養護教諭が関 与していることを中心に,管理や,指導の実態を明らかにし,望ましいあり方を検討した。

慢性疾患をもつ児童生徒力斗学校生活の大半を学級の中で過ごすことを考えると,児童生徒の教

育に直接携わっている学級担任の果たす役割は大きいと思われる。

学級担任は,それぞれの疾病について関心を持ち,本人の病歴や現在の状態を十分理解すること が必要であり,医療機関,保護者,養護教諭などと連携をとり,健康管理,指導を行っていくこと が要求されよう。退院児童の学校生活への適応に関する研究においては,担任教師による支援方法 の検討がなされている2)。

本研究は,心疾患,腎疾患,喘息その他の慢性疾患をもって登校している児童生徒と日常かかわ りの深い学級担任教師が,それらの児童生徒の健康管理にどのように関与しているのか,また疾病

による種々の問題(学習の遅れ,心理的問題,運動,学校行事等への参加制限など)に対して,どの

ように支援しているのか実態を明らかにしようとした。学級担任による疾患の把握方法,日常の健

康観察等健康管理を行っていくうえで,また,主治医,保護者,養護教諭等の相互の連絡内容や,

連絡を行ううえでの配慮点や困難点を明らかにし.学級担任による望ましい健康管理への関与のし

かた,支援方法を検討した。

皿 研究方法

1.調査対象

10都府県の小学校57校,中学81校を対象とした。第1報で回答のあった養護教諭に,慢性疾

患をもっ児童生徒の学級担任を選んでもらい調査を依頼した。回収は小学校27校一60名,中学校

24校一53名であった。113名から,心疾患・異常22例,腎疾患23例,喘息47例,その他21例計

113例の事例の回答があった。学級担任の経験年数は,小学校は0〜9年が48.3%と過半数で,

中学では10〜19年が52.8%,0〜9年が26.4%だった。

2.調査方法 質問紙郵送調査法 3.調査内容

慢性疾患児童生徒の事例の概況,児童生徒の疾患の把握状況,健康観察の実態,心理的問題への 支援学習の遅れへの援助,運動,学校行事面での管理,級友関係についての管理,家庭,養護教

諭,主治医,関係者との連絡の実態等。

4.調査期間

昭和58年9〜10月

(3)

中村・前田:慢性疾患児の健康管理皿       155

皿 結果と考察

1.慢性疾患児童生徒の事例の概況      表1慢性疾患事例の分類

担任教師が現在受持っている慢性疾患児         核種

小   中   計 童生徒の病名を回答してもらい表1にまと   疾患名

n=60 n=53 n=113

めた。       〈心疾患・異常〉

心疾患・異常は20例で心室中隔欠損症  心室中隔欠損症 4   2   6

が多く,腎疾患は23例で,ネフローゼ症候  フアロー四徴症

2        2 リウマチ性心疾患 1        1

群が多かった。喘息は47例と他の疾患にく       右胸心・単心房・単心室

1    1

らべて非常に多く・担任教師として一度は  肺動脈狭窄症

1        1

経験する疾患ではないかと思われる。    心筋症の疑い

1        1

その他では,てんかん,ペルテス病等種  そ の他

1   9   10

種の事例があげられた。心疾患では詳しい       計 10   12   22

       〈腎疾 患〉病名を不明としたものが9名おり,「その       ネフローゼ症候群

3   6   9 他」に入れた。以下 これらの事例の分析  慢性腎炎

1   4    5

を行った。      腎炎

3    1   4 2.児童生徒の疾患の把握状況       慢性糸球体腎炎 1    1

      IgA腎症担任教師力鰻性疾患をもつ児童生徒を管      そ の 他

1        1

Q   1   3 理指導していく上で,本人の疾患について

計 10   13   23 正確に把握しておくことは基本的なことで

〈喘 息〉 24   23   47

ある。個々の疾患やその程度により,管理       くその他の疾患〉

指導のしかたが異ってくることも多い。   てんかん 3   1   4

ここでは,受持ちの児童生徒の疾患の把  ペルテス病

3        3 握の方法受診状況受診結果の把握の有  慢性血小板減少性紫斑病 2        2

若年性糖尿病 2        2

無等についてまとめた。       バセドー病

2   2 1)疾患の把握の方法      穎粒球減少症 1        1 表2にまとめた。      術後鉄欠乏性貧血

1   1 各疾患とも,保護者や,前担任からの連  水頭症

1        1 進行性筋ジストロフィー症 1        1

絡で知ることが多いようである。「養護教       レックリングハウゼン症候群

1        1

諭より連絡があった」という回答は・中学  特異体質 1        1 校の方がやや高率であるが,意外に少なか  二分脊椎 1    1 1        1

年度はじめに,養護教諭は,新入生や,       計

16   5   21       L

ン校生の健康状態の資料などを準備し,慢

性疾患をもっている児童生徒について,担任教師だけでなく,全職員が把握できるようにしておく のが望ましいと思われる。とくに中学では,担任教師だけでなく,各科担当教師も,慢性疾患をも

つ生徒を把握しておく必要がある。

担任教師と養護教諭は可能な範囲で疾病や,児童生徒の状態について情報の提供交換を行う必

(4)

156       茨城大学教育学部紀要(教育科学)34号(1985)

表2 疾患の把握の方法

疾 患 心 疾 患 腎 疾 患 喘  息 その他の疾患

校種

小  中  計 小  中  計 小  中  計 小  中  計

把握の方法 n=10n=12 n=22 n=10n=13 n=23 n=24n=23 n=47

n=16 n=5n=21

保護者より連絡があった  6  2  8

i60.0)(16.6)(36.4)

 7  8  15

i70.0)〈61.5)(65.2)

22  18  40

i91.7)(78.3)(85.1)

 6  3  9

i37.5)(60.0)(42.9)

前担任より連絡があった  3  5  8

i30.0)(41.7)(36.4)

 4  4  8

i40.0)(30.8)(34.8)

 4  6  10

i16.7)(26.1)(21.3)

 9  5  14

i56.3)(10α0)(66.7)

養護教諭より連絡があった

0  5  5

@(41.7)(22.7)

 1  6  7

i10.0)(46.2)(30.4) 2  2  4

i8.3)(8.7)(8.5)

 2   1  3

i12.5)(20.0)(14.3)

健康診断で異常が認められ 1  0  1 1  2  3

0  0  0

0  0  0 精密検査の結果わかった

(10.0)   (4.5) (10.0)(15.4)(13.0)

そ   の   他

0  0  0

0   1  1

@ (7.7)(4.3)  5  2  7

i20.8)(8.7)(14.9)

 3  0  3

i18.8)  (14.3)

表3 受診状況

疾 患 心 疾 患 腎 疾 患 喘  息 その他の疾患

校種

小  中  計 小  中  計 小  中  計 小  中  計

受診状況 n=10n・=12 n=22 n=10n=13 n=23 n=24n=23 n=47 n=16 n=5 n=21 定期的に受診している  9  8  17

i90.0)(66.7)(77.3)

 8  10  18

i80.0)(76.9)(78.3)

 7  4  11

i29.2)(17.4)(23.4)

ユ2  4  16

i75.0)(80.0)(76.2)

1年に1回 5  2  7 0  0  0 0  0  0

1  0  1

半年に1回

1  2  3 0   1  1

0  0  0 0  0  0 3月に1回 0  0  0

1  0   1 1  0  1 3  1  4

1月に1回

1  2  3 6  4  10

3  0  3

4   1  5

2週に1回 0  0  0

1  2  3 1  1  2 0  2  2

1週に1回 0  0  0

0   1  1 2  0  2 1  0  1

そ  の  他

2  2  4 0  2  2 0  3  3

3  0  3 必要に応じて受診している  1  3  4

i10.0)(25.0)(18.2)

 2  3  5

i20.0)(23.1)(21.7)

14  17  31

i58.3)(73.9)(66.0)

 2   1  3

i12.5)(20.0)(14.3)

特に受診していない 0   1  1

@ (8.3)(4.5)

0  0  0

 3  2  5

i12.5)(8.7)(10.6)

 2  0  2

i12.5)   (9.5)

要があろう。

2)受診状況と受診結果の把握の状況について 受診状況は表3にまとめた。

心疾患,腎疾患,その他の疾患では「定期的に受診している」が70〜80%と多かった。喘息で は発作をおこした時など「必要に応じて受診する」が約6割だった。

心疾患は1年〜半年に1回が多い。これは,今回の事例が症状の軽度のものが多く,それ程頻繁

に受診する必要がなかったものと思われる。腎疾患は1か月に1回ぐらいの間隔で受診しているも

のが多いが,これは,腎疾患は尿検査など継続的検査を必要とするために受診回数が多くなるためと

思われる。

(5)

中村・前田:慢性疾患児の健康管理豆       157

受診結果を学級担任がどのように把握しているか表4にまとめた。

心疾患をもつ児童生徒の学級担任の90%が結果を把握している。腎疾患,喘息その他の疾患では 65%前後であった。把握の方法1よ「家庭から連絡がある」が多く,「本人から連絡がある」「本人

に働きかけて把握する」もみられた。

結果を把握していない場合の理由は,「特に連絡がない」が多く,「軽症のため,必要がない」と

するものもみられた。その他の理由では,「生れつきの体質のため,あまり変化がないから」「父兄 が特別に扱われることをことごとく嫌うため」など回答があった。

受診結果を何らかの方法で把握し,子どもの現在の状態を知ることは日常の健康管理を行ってい くために必要である。「主治医に働きかけて把握する」という意見は,病状の重い例ではあるが,

担任教師の積極的な支援方法の一つであろう。

3.健康観察の実態

日常行われる学級担任教師の健康観察は,児童生徒の健康問題の早期発見,あるいは健康の保持 増進に大きな効果をあげているばかりでなく,教師と子どもの親和関係を深めて,学級経営や,生 活指導を進めていく上に役立ち,また,授業を効果的に行うという点でも意義があるといわれてい る3)。慢性疾患をもつ児童生徒にとっても,病状の変化を知ったり,その日の状態にあわせて生活

指導をする上で必要なものである。

1)日常の健康観察の実施状況

日常の健康観察の実施状況を表5にまとめた。

各疾患とも,「学級の児童生徒全員に行う」としているものがほとんどであった。そのうち,心 疾患と,その他の疾患では「慢性疾患をもつ児童生徒を特に注意して観察している」ものが多かっ た。腎疾患では「慢性疾患をもつ児童生徒を特に注意して観察している」ものと「他の児童生徒と

表4 受診結果の把握の状況

疾 患 心 疾 患 腎 疾 患 喘  息 その他の疾患

校 種 小  中  計 小  中  計 小  中  計 小  中  計 受診結果の把握 n;10n=12 n=22 n=10n=13 n=23 n=24n=23 n=47 n=16 n=5 n=21 把握している(方法)

 10  9  19

i100.0)(81.8)(90.5)

 6  9  15

i60.0)(69.2)(65.2)

14  13  27

i66.7)(61.9)(64.3)

10  3  13

i71.4)(60.0)(68.4)

家庭から連絡がある 9  6  15

3  5  8 10  7  17 3  1  4

本人から連絡がある 1  1  2

2  2  4 3  5  8 1  2  3

本人に働きかける 1  1  2

1  2  3

1  5  6

2  2  4

家族に働きかける

0  0  0

1  0  0 0  1  1

4  0  4

主治医に働きかける 1  2  3 0   1  1 1  0   1

0  0  0

特に把握していない(理由)

0  2  2

@(18.2)(9.5)  4  3  7

i40.0)(23.1)(30.4)

 7  8  15

i33.3)(38.1)(35.7)

 4  2  6

i28.6)(40。0)(31.6)

特に連絡がない

0  2  2

3   1  4 5  6  11

3  2  5

軽症のため必要ない

0  0  0 1  2  3

1  1  2

0  0  0

多忙のためできない

0  0  0 0  0  0 0  0  0 0  0  0

そ   の   他

0  0  0 0  0  0

1  1  2

2  0  2

無   回   答

0  0  0

0   1  1

@ (7.7)(4.4)

0  0  0 0  0  0

(6)

158       茨城大学教育学部紀要(教育科学)34号(1985)

表5 日常の健康観察の実施状況

疾 患 心 疾 患 腎 疾 患 喘  息 その他の疾患

校 種 小  中  計 小  中  計 小  中  計 小  中  計 実施状況 n=10n;12 n=22 n=10n=13 n=23 n=24n=23 n=47

n=16nニ5 n=21

学級の児童・生徒全員につい

10  9  19

10  12  22 24  22  46

15  5  20

て行ている

(10Qρ)(75.0)(86.4) (10α0)(92.3)(95.7) (10α0)(95.7)(97.9) (93.8)(100.0)(95.2)

慢性疾患児〉普通児 6  4  10

3  6  9 10  8  18

9  4  13

慢性疾患児=普通児

2  4  6 4  5  9 7  13  20

4   1  5

0   1  1

0  0  0

0  0  0 1  0  1 慢性疾患をもつ児童・生徒のみ

(8.3)(4.5) (6.2)   (4.8)

0  2  2 0  0  0

0  1  1

0  0  0

特に行っていない

(16。7)(9.1) (4.3) (2.1)

0  0  0

0   1  1

0  0  0 0  0  0

無  回  答

(7.7)(4.3)

表6 健康観察実施上の配慮点

疾 患 心 疾 患 腎 疾 患 喘  息 その他の疾患

校種

小  中  計 小  中  計 小  中  計 小  中  計

配 慮点

nニ10n=10 n=20 n=10n=12 n=22 n=24n=22 n=46

n=16nニ5 n=21

観察時の視点 2  4  6 2  3  5 10  7  17

6   1  7

声をかけ励ます

1  0  1 0  0  0 0  3  3 2   1  3 本人が神経質にならないように 0  1  1

0  0  0

1  2  3 1  0  1 そ  の  他

0  0  0 0  0  0 2  2  4

0   1  1

特になし(無回答)  7  5  12

i70.0)(50.0)(60.0)  8  9  17

i80.0)(75.0)(77.3)

12  10  22

i50.0)(45.5)(47.8)  8  3  11

i50.0)(60.0)(52.4)

同程度に観察している」ものが同率であった。健康観察は,朝の会等を利用して行われる。小学校 では,学級担任が授業中に観察が継続でき,変化など把握しやすいが,中学では,時間ごとに担当 教師が異るため,継続した観察が行われにくいことがある。本人が,異常を感じたら,申し出るよ

う指導しておくことも必要である。

2)健康観察実施上の配慮点や困難点について

健康観察を行う際特に配慮していることを回答してもらい,表6にまとめた。回答率は20〜50

%であった。各疾患とも,観察時注意している,「観察の視点」をあげたものが多かった。その内 容としては,「顔色や表情や行動などいつもと違う様子,態度」や喘息特有のものとして「呼吸状 態」があげられた。「本人が神経質にならないよう配慮している」や「声をかけ,はげます」も少 数みられた。その他喘息では,「心理的な面も強いので過保護にしない」「天候季節と関係があ

るので,この点に特に注意している」等の意見があった。

健康観察を行う際,いつもとちがう様子や態度や疲労の状態をみることが大切である。健康観察

を行う上での困難点としては次のようなことが回答された。「症状から本当に具合がわるいかどう

か判断しにくい」「観察すること自体難しい。ジロジロ見るわけにいかない」「どんな小さな変化で

も知っておきたいと思うが,よく聞いてやることが,かえって気力の弱い子にしてしまっているよ

うな気がする」「時間がなく十分に観察できない」等があげられた。級友の前で一人だけ特別視す

(7)

中村・前田:慢性疾患児の健康管理H      l5g

       r

驍フも本人にとって苦痛の場合もある。本人が自分の状態をよく理解し,担任に訴えるようにする

ことも大切である。

3)健康観察結果の利用について

健康観察結果を,どのように役立てているか回答してもらい表7にまとめた。

各疾患とも,小学校では「授業に役立てる」が多かった。具体的には「授業をすすめる上で役立

つ」「健康状態に応じて運動,作業の軽減変更ができる(特に体育時)」等であった。

慢性疾患をもっている児童生徒の健康観察について第1報の養護教諭側からの調査をみると,「担 任に特別に依頼している」や「担任が毎朝行う観察にまかせている」が60〜80%だった。すなわ ち養護教諭の6〜8割のものは学級担任が健康観察を実施することを期待しているといえる。「養 護教諭に連絡する」の回答は少なかった旭これは,健康観察をしていて,何か問題があった場合 に,連絡をとりあっているものと思われる。症状から判断が難しいなどの困難点があげられたが,

これらは養護教諭や,主治医等に相談することによって解決できるのではないだろうか。また,そ うすることによって,関係者との情報交換の機会が多くなり,連絡が密になると考えられる。そし てより有効な健康観察が実施可能となり,それが慢性疾患をもつ児童生徒のよりよい健康管理に通

じると思われる。

4.心理的問題への支援

慢性疾患をもつ子どもは,行動に種々の制限を受けることが多い。それがもとで欲求不満に陥っ

たり病気や症状の変化に対する不安や恐怖があったり,過保護による影響で依頼心が強くなったり,

わがままになるなど様々な心理的問題をもっているといわれている4)5)。

ここでは,それらの実態を調べ,学級担任がどのような支援を行っているのか,また支援する際

どのような問題(困難)があるのか明らかにした。

1)慢性疾患をもつ児童生徒の心理状況について

心理状況を学級担任教師の感じから回答してもらい表8に示した。「普通の子どもと変わらない」

ものが心疾患で64%,腎疾患で44%,喘息で43%,その他の疾患で57%であった。

表7 健康観察の結果の利用

疾 患

心疾 患

腎 疾 患 喘  息 その他の疾患

校 種 小  中  計 小  中  計 小  中  計 小  中  計 利用内容 n=10n=10 n=20 nニ10n=12 n=22 n=24n=22 n=46 n=16 n=5 n=21 授業に役立てる 8  2  10

5  3  8 15  3  18

9  1  10 健康状態を把握する 1  3  4

3  3  6 2  5  7 4  2  6

休み時間や清掃時等に役立てる 1  1  2 1  1  2

2  2  4

1  2  3 学校生活全般に役立てる 0  2  2

0  0  0 2  4  6

1  1  2 養護教諭に連絡する 1  0  1

0  0  0

2  2  4 1  1  2 教科担任に連絡する 0  0  0

0  0  0

0   1  1 0   1  1

給食時の参考にする 0  0  0

0  0  0

1  0   1

0  0  0

そ  の  他 0  0  0

0  2  2

1  0   1 1  0  1 特になし(無回答)  2  3  5

i20.0)(30.0)(25.0)

 3  4  7

i30.0)(33.3)(31.8)

 4  6  10

i16.7)(27.3)(21.7)

 3  2  5

i18.8)(40.0)(23.8)

(8)

160       茨城大学教育学部紀要(教育科学)34号(1985)

表8 慢性疾患をもつ児童・生徒の心理状況

疾 患 心 疾 患 腎 疾 患 喘  息 その他の疾患

校 種 小  中  計 小  中  計 小  中  計 小  中  計 心理状況 nニ10n=12 n=22 n=10nニ13 n=23 n=24n=23 n=47 n=16 n=5 n=21

8  6  14 7  3  10 10  10  20 8  4  12 普通の子と変わりない

(80.0)(50.0)(63.6) (70.0)(23.1)(43.5) (41.7)(43.5)(42.6) (50.0)(80.0)(57.1)

体のハンディを学業で補おう

0  0  0 0  0  0 3  1  4

0  0  0

として積極的である

(12.5)(4.3)(8.5)

1  3  4

2  5  7 4  4  8

6  1  7 わがままなところがある

(18.2) (30.4) (17.0) (33.3)

病気に対する不安・恐怖心を 1  1  2

2  2  4

5  4  9 2  0  2

もっている

(9.1) (17.4) (19.1) (9.5)

学業の遅れに対する不安が強

0  3  3 0  3  3 2  6  8

2  1  3

(13.6) (13.0) (17.0) (14.3)

1  1  2 1  1  2

5  3  8

2  1  3

依頼心が強い

(9.1) (8.7) (17.0) (14.3)

友達が少ないための孤独感が 0  1  1

0  4  4 3  3  6

1  0  1

強い

(4.5) (17.4) (12.8) (4.8)

行動の制限による心理的欲求

0  0  0

1  1  2

0  0  0

0  0  0

不満の状態

(8.7)

1  0   1 1  1  2

0  0  0

1  0   1

そ の 他

(4.5) (8.7) (4.8)

喘息では,「体のハンディを学業で補おうとして積極的である」ものが8%みられた。問題をも

つものの傾向としては,「わがままなところがある」「病気に対する不安,恐怖心を持っている」「学 学の遅れに対する不安が強い」などがあげられた。

今までに入院経験のある者や,検査を受ける頻度の高い子どもの場合学校を休むことが多くなれ ば学業の遅れもでてこよう。腎疾患では7割が心理的に問題をもっていると回答している。「小学校

の頃の入院がもとで,わがままになり,学校生活にうまく適応できない」「友人が少ないため,孤独 感が強い」などがあった。喘息では,「病気に対する不安,恐怖心をもっている」「依頼心が強い」

「わがままなところがある」などがあげられた。

2)心理的問題のある慢性疾患児童生徒への支援

学級担任が行っている援助,指導の内容を表9−1,表9−2にまとめた。

「わがままなところがある」者には,「自分の欲求を通さないこと,がまんをし協力すること」

「宿泊行事など特に友人と行動する場面が多い暁友人とうまくやっていくよう指導している」等 があげられた。病気に対する不安や恐怖心をもっている者には,病気の種類によりさまざまであっ

た。「自分で体調に気をつけ,具合がわるくなったらいつでも知らせるよう言ってある。また,学校

で具合が悪くなっても養護の先生,担任がついているから心配ないと常々指導している」

「発作がおきそうだったら遠慮なく教科の先生に訴えるよう指導している」「身体を丈夫にさせ てやることが,心理的不安をとり除くことに通じると思い,喘息体操に力を入れている」などがあ げられた。

何らかの援助をしていると回答したもののうち,3〜5割が,支援,指導していく上で問題点あ

(9)

中村・前田:慢性疾患児の健康管理H      161

表9−1 心理的問題のある慢性疾患児童・生徒への支援

心理的問題 援助・指導の内容

わがままなところがある

・自分勝手な行動せず協力する     5

n=26

そ の 他      5 特になし(無回答)        17

学業の遅れに対する不安が強い ・あせらず気長に治療に努めるよう助言  5 n=17

周りの生徒に教えるよう指導     3 そ の 他      3 特になし(無回答)         7

依頼心が強い

・自分でできることは自分でやるよう指導5

n=15

そ の 他       1 特になし(無回答)        10

友だちが少ないための孤独感が強い

・できるだけ級友と一緒に行動させる  4

n=12

そ の 他      2

特になし(無回答)        6 行動の制限による心理的欲求

・運動量を過限している        1 不満の状態である    n=2 病気の説明をし安静を要することを理解1

させる

表9−2 病気に対する不安・恐怖心をもっている者への支援

心疾 患n;2 腎 疾 患n=4 喘   息n=9 その他の疾患n;2

常に自己の健康管理に 運動時無理をさせない 体力をつけることによ 病気についてはなるべ

注意させ,無用の恐怖 2 って病気を克服しよう くふれないようにして

感を抱かせない   2

病気について学級の子 と助言し,実践に努力 いる         2 どもに説明し本人を刺 している(小)   4

激しないよう指導  1 成人に従って段々と良 特になし(無回答) 1 くなり必ず治癒するよ う説明       1 発作が起きそうな時は

遠慮なく訴えるよう 1 特になし(無回答) 2

りとしていた。

「本人の性格行動に問題がある」(10例)ものでは,「すぐ投げやりな気持になってしまう」「無

口で意志表示がはっきりしない」などがあった。「家庭環境に問題がある(5例)」では,過保護な 母親の養育態度に対するものがほとんどであった。その他「心理的な圧迫がどの程度体に影響して

いくのかわからない」「生徒のもっている病気について正しい認識が大切であり,そのことで自分自 身に認識不足がありはしないかと思っている」等の意見がみられた。

表8のような心理状態は,学校生活や,病気に何らかの影響を与えていると思われる。学級担任

は,さまざまな面から子どもを理解し,指導を行うことが望まれる。

5.学習の遅れへの指導

慢性疾患をもった児童生徒は,学習面で遅れがちであるといわれている6)。実際に学習面で遅れ

のみられる児童生徒に対して学級担任教師がどのような対応をしているかみた。

(10)

162       茨城大学教育学部紀要(教育科学)34号(ユ985)

1)学習の遅れの状況

学習の遅れがみられると回答したものは,表10のとおりである。

心疾患で41%,腎疾患で44%,喘息で38%,その他の疾患で38%であった。

各疾患とも,小学生では「一部の教科に遅れがみられる」が多く,中学生では「全部の教科に遅

れがみられる」としているものが多い。

これは,疾患があることにより,学校を早退したり,欠席したり,時には入院したりで,小学生 では一部の教科の遅れであったものが,中学生になって,欠席等をくり返すうちに,学習について いけなくなるたあではないかと考えられる。しかし,欠席がちであっても,本人が「がんばりゃ」

の場合,学習の遅れはみられないようである。

2)学習に遅れがある場合の支援状況

学習に遅れのある児童生徒に対して,学級担任教師が指導,配慮している場合にはその方法を,

特にしていない場合には,その理由を回答してもらい表11にまとめた。

援助,配慮していることが「ある」のは,心疾患で56%,腎疾患で70%,喘息で70%,その

他87.5%であった。その方法は,「授業中,特に留意して指導している」が多かった。「放課後指

導している」ものもみられた。その他,「特活,その他時間をみつけて指導」「家庭学習をさせてい

表10 学習の遅れの状況

疾 患 心 疾 患 腎 疾 患 喘  息 その他の疾患

校種

小  中  計 小  中  計 小  中  計 小  中  計

学習の遅れの状況 n=10n=12 n=22 n=10n=13 n=23 n=24n=23 n=47 n=16 n=5 n=21 学習面での遅れは特にみられ 7  6  13 7  6  13 16  13  29

10  3  13

ない

(70.0)(50.0)(59.1) (70.0)(46.2)(56.5) (66.7)(56.6)(61。7) (62.5)(60.0)(61.9)

全部の教科に遅れがみられる

 1  4  5

i10.0)(33.3)(22.7)

 1  6  7

i10.0)(46.2)(30.4)

 4  5  9

i16.7)(21.7)(19.1)

 3  2  5

i18.8)(40.O)(23.8)

一部の教科に遅れがみられる  2  2  4

i20.0)(16.7)(18.2)

 2  1  3

i20.0)(7.6)(13.1)

 4  5  9

i16.7)(21.7)(19.1)

 3  0  3

i18.8)  (14.3)

表11 学習に遅れのある慢性疾患児童・生徒への指導状況

疾 患

心疾 患

腎 疾 患 喘  息 その他の疾患

校 種 小  中  計 小  中  計 小  中  計 小  中  計 支援状況 n=3 n=6 n=9 n・=3 n=7 n=10 n=8 n=10n=18 n=6 n=2 n=8

3  2  5 3  4  7

8  5  13 6  1  7

ある(方法)

(55.6) (70.0) (72.2) (87.5)

授業中特に留意して指導 1  0  1 2   1  3 7  3  10

5  1  6

放課後指導 1  0   1 1  2  3 3  1  4 l  l  2 そ の 他 1  2  3

0  2  2

0  1  1

0  0  0

特にない(理由)

0  4  4

@   (44.4)

0  3  3

@   (30.0) 0  5  5

@   (27.8)

0   1  1

@   (12.5)

学校では多忙でできない 0   1  1

0  0  0 0  3  3 0  0  0

当面病気を治すことが先決 0  1  1

0  0  0

0  0  0

0  0  0 そ の他(無回答)

0   1  1

0  3  3

0  2  2 0   1  1

(11)

中村・前田:慢性疾患児の健康管理H      163

る」「友達同志でノート写しをするなど,できる範囲で遅れを補うように助言している」などの援

助,配慮もあった。「特にない」と回答したものは中学に13例みられた。理由は,「学校では多忙で できない」があげられた。その他,疾患が重症であるから「当面病気を治すことが先決である」「皆

と一緒に活動できればよいと考えているため,学習に関して注意をはらっていない」等の事例(心 疾患)がみられた。

なお,「学習面での遅れは特にみられない」と回答したもののうち9例は,前述のいずれかの方 法により援助・配慮していると回答した。「欠席が長く続くときは家庭に出向いて指導してきた」

は(若年性リウマチ1例)心理的問題で「学業が遅れてしまうのではないかという不安が強い」と回 答したものであった。これは,学級担任教師の積極的な支援であろう。

一般に,疾患をもつ児童生徒はまず疾患の管理を優先させるべきといわれてきている瓜治療が 長期にわたるので,児童生徒の心身の健全な発達をはかることが大切である。学級担任の管理・支

援も,そのような方向にもっていく必要がある。学習面で実際に遅れのみられるものばかりでなく,

遅れることに不安を持つものに対して,教師が指導援助することは必要なことと考えられる。

3)学習に遅れのある児童生徒への指導上の問題点(困難点)

担任教師が援助,配慮する上での問題点についての回答を表12にまとめた。

32例中半数の工6例に,問題あるいは困難があるとしている。

「本人のやる気根気がない」「なかなか指導のための時間がとれない」「病気のため無理ができ

ない」「欠席が多く基礎が定着していないため,授業内容があまり理解できない」などがあげられた。

またその他として,「家庭が甘やかしていて,本人にもきびしく言えない(喘息)」「授業中,薬の副 作用でよく眠ることがあり,どうしても学習の遅れがみられる」(てんかん)などがあげられた。

慢性疾患をもっている児童生徒には,身体の病弱からもたらされた精神面の弱さ旭時には学習 面の妨げとなることも考えられるので,学習指導の際にはその点に十分留意する必要があるといわ れている6)。また,受診のため欠席や早退などが重なると,学習面での遅れは避けられない問題と なり,担任教師が授業中特別留意して指導しても,なかなか解消できないような場合もある。

さらに40数名の児童を一斉指導しなければならない教師にとって,著しい遅れのみられる子ど もの個別指導は容易なことではないと思われる。しかし,児童生徒の体力,体調の回復や病気の悪

表12 学習の遅れのある慢性疾患児童・生徒への指導上の問題点(困難点)

疾 患 心 疾 患 腎 疾 患 喘  息 その他の疾患

校 種 小  中  計 小  中  計 小  中  計 小  中  計 問題点(困難点) n=3 n=2 n=5 n=3 n=4 n=7 n=8 n=5 n=13 n=6 n=1 n=7 問題点(困難点)がある 0  2  2

@   (40.0) 1  1  2

@   (28.6)

6  4  10

@   (76.9)

2  0  2

@   (28.6)

本人のやる気・根気がない 0  2  2

0  0  0

2  2  4

0  0  0

なかなか指導時間がとれない 0  0  0 1  1  2 1  2  3

0  0  0

病気のため無理ができない 0  0  0

0  0  0

1  1  2 1  0  0 そ の 他 0  0  0

0  0  0

3  1  4 1  0  0 特になし(無回答) 3  0  3

@   (60.0)

2  3  5

@   (71.4)

2   1  3

@   (23.1)

4  1  5

@   (71.4)

(12)

164       茨城大学教育学部紀要(教育科学)34号(1985)

化防止を考慮しながら,長期的な展望に立って学習をすすめることが大切であり,それが児童生徒

の心身の健全な発達に通じるであろう。

6.運動,学校行事面での管理

慢性疾患をもつ児童生徒の運動,学校行事等への参加は,強度の運動負荷により再発悪化を恐れ

るため,学校において制限されがちと考えられる7)。

このような参加制限によって多くの慢性疾患をもつ子どもは,体力的に仲間についていけないと いう劣等感や,仲間はずれにされているような疎外感をいだきがちである。従って,参加制限の判 断は適切になされるべきであり,決して過度の制限を加えてはならない。と同時に,児童生徒自身 にも制限の必要性をしっかり自覚させなければならないであろう。ここでは,学校における運動,

行事への参加制限の状況,担任教師の参加制限の決定について関与状況,制限する場合の担任の配 慮点などの実態を明らかにし,より望ましい参加制限の決定の関与,適切な支援を検討した。

1)参加制限の状況について

       表13−1 運動・行事等の参加制限の状況(心臓・腎臓系)表13−1は心疾患,腎疾患

について参加制限の状況をま       疾患 心 疾 患 腎 疾 患

とめたものである。心疾患で      校種

小  中  計 小  中  計

      参加制限の状況は,「学校行事,その他の活

n=10n=12 n=22 n=10n=13 n=23

0   1  1 1  1  2 動」で36.4%であった。これ  体育全般

(4.5) (8.7)

らには,マラソン,水泳,体       軽い運動の体育実技

迹蜑?ネど強度の運動があげ

1  0   1

@    (4.5)

1  3  4

@   (17.4)

2  4  6

1  3  4

られていた。次いで「強い運  中等度の運動の体育実技 (27.3) (17.4)

動の体育実技」であった。腎       強い運動の体育実技

セ患では,「強い運動の体育

4  3  7

@   (31.8)

6  5  11

@   (47.8)

3  3  6 3  4  7

実技」が48%制限されてい  体育的部活動

(27.3) (30.4)

た。       学校行事・その他の活動

@表13−2は喘息,その他の

2  6  8

@   (36.4)

R   1  4

1  2  3

@   (13.0)

P  0   1

疾患の制限状況をまとあたも  特に制限はない (9.1) (4.3)

のである。喘息では,約60%

が,「参加制限はない」が多

      表13−2 運動・行事等の参加制限の状況(喘息,その他の疾患)かった。その他の疾患では,

「一部参加制限がある」は52      疾患

喘  息 その他の疾患

%だった。       校種 小  中  計 小  中  計 2)運動,行事についての   参加制限の状況 n=24n=23 n=47 n=16 n=5 n=21

参加制限の決定について  参加制限はない

15  13  28

@   (59.6)

4  2  6

@   (28.6)

参加制限の決定の関与者お 7  9  16 9  2  11

       一部参加制限があるよび中心となるものは,表14

(34.0) (52.4)

1  1  2 3   1  4

に示した。      ほとんど参加制限がある (4.3) (19.0)

参加制限の決定には,担任,

1  0   1

0  0  0

       無  回  答

ニ族主治医養護教諭,本 (2.1)

(13)

中村・前田:慢性疾患児の健康管理H      165

人等いろいろな回答があった。

中心となるものは主治医が多かった。学級担任が参加制限の決定に関与している状況は5割〜8 割であった。その際担任教師が困った経験があるかどうかまとめたものが表15である。

表14 運動・行事についての参加制限の決定の関与者・中心となる者

疾 患 心 疾 患 腎 疾 患 喘  息 その他の疾患

関与者・    校 種

小  中  計 小  中  計 小  中  計 小  中  計 中心となる者 n=4 n=8 n=12 n=5 n=9 n=14

n=8 n=10n=18

n=12 n=3 n司5

    担   任

i

3  6  9

@   (75.0)

2  6  8

@   (57.1)

5  5  10

@   (55.6)

10  3  13

@    (86.7)

4  4  8

@   (66.7) 1  6  7

@   (50.0)

6  6  12

@   (66.7)

11  2  13

@    (86.7)

与   主 治 医 2  4  6

@   (50.0)

2  7  9

@   (62.3)

4  6  10

@   (55.6)

9  2  11

@   (73.3)

者    養護教諭

j

0  6  6

@   (50.0) 1  3  4

@   (28.6) 1  7  8

@   (44.4)

6   1  7

@   (46.7)

本   人

0  0  0 0   1  1

@    (7.1)

2  1  3

@   (16.7)

1  0   1

@    (6.7)

    担   任

i

1  1  2

@   (16.7)

0  0  0 0  0  0 0  0  0

2   1  3

@   (25.0)

0   1   1

@    (7.1)

3  1  4

@   (22.2)

5  1  6

@   (40.0)

寒 主治医

1  3  4

@   (33.3)

2  7  9

@   (62.3)

2  2  4

@   (22.2)

5  1  6

@   (40.0)

0  2  2

@   (16.7) 1  1  2

@   (14.3)

0  4  4

@   (22.2)

0  0  0 本   人

0  0  0

0  0  0

1  0   1

0  0  0

(5.6)

表15 運動・行事についての参加制限に関与する際の困った経験

疾 患 心 疾 患 腎 疾 患 喘  息 その他の疾患

校種

小  中  計 小  中  計 小  中  計 小  中  計

困った経験の内容 n=4 n=8 n=12 n=5 n=9 n=14 n=8 n=10n=18

n=12n=3 n=15

児童・生徒のその日の体調に

1  ユ  2 q  2 2 2  3  5

1  3  4

合った判断が難しい

(16.7) (14.3) (27.8) (26.7)

運動そのものの負荷量がわか 2  3  5

0  2  2

1  0   1

2  0  2

らず難しい

(41.7) (14.3) (5.6) (13.3)

保護者を通しての医師からの 0  2  2 2  0  2 1  0   1

3  0  3

指示内容が正確でない

(16.7) (14.3) (5.6) (20。0)

保護者や児童・生徒の希望と 0   1  ユ 0   0   0 1  1  2

0  0  0

一致しない

(8.3) (11.1)

そ  の  他 0  0  0 1  0   1

@    (7.1)

0  2  2

@   (11.1)

0  0  0

特になし(無回答)  2  3  5

i50.0)(37.5)(41.7)

2  5  7

S0.0)(55.6)(50。0)

 4  6  10

i50.0)(60.0)(55.6)

 6  0   6

i50.0)  (40.0)

(14)

166       茨城大学教育学部紀要(教育科学)34号(1985)

心疾患では,7例中5例が「運動そのものの負荷量がわからず難しい」と回答している。また,

「児童生徒のその日の体調にあった判断が難しい」「保護者を通しての医師からの指示内容が正確で

ない」などもみられた。腎疾患でも,心疾患と同様の困難が各々2例ずつみられた。喘息では,「児 童生徒のその日の体調に合った判断が難しい」が8例中5例みられた。また,「保護者や児童生徒 の希望と一致しない」もあげられている。これは喘息をもつ児童生徒に対しての父兄の厳しい態度

あるいは過保護の態度が担任の方針と合わないとするものであった。

運動,行事等の参加決定に保護者養護教諭等関係者が同席して決定すれば,いろいろな立場か らの判断がなされ,より好ましい決定ができると思われる。その際他の情報の交換も可態であり,

関係者間の密接な連携が保てるのではないか。

3)参加制限の場面での配慮について

運動行事の参加制限がある場合,担任教師が配慮していることについて表16にまとめた。

各疾患とも「あまり無理をさせないようにしている」が多かった。その他,「常に観察している」

「記録係等できる活動をさせている」などがあげられた。

参加制限を必要とする子どもの3〜5割の学級担任が何らかの配慮をしていた。このことは本人

に疎外感を抱かせないために大切であると思われる。児童生徒にも参加制限の必要性を理解させ,

自己の健康を管理していける能力を養う必要がある瓜運動参加を自分でコントロールできるよう

指導していくことも大切であろう。

7.級友関係についての支援

慢性疾患をもつ児童生徒は,身体の病弱から性格,学習面,運動面にさまざまな影響を与え,そ れらが,級友関係にも何らかの影響を与えていると思われる。ここでは,慢性疾患をもつ子ども達 旭級友にどの程度理解されているのか,疾患があることにより,級友関係においてどのようなプ

ラス面やマイナス面がみられるのか,担任教師はどのような指導,配慮を行っているかを明らかに しようとした。

表16 運動・行事の参加制限の場面での配慮

疾 患 心 疾 患 腎 疾 患 喘  息 その他の疾患

校 種 小  中  計 小  中  計 小  中  計 小  中  計 配慮内容 n=7 n=11n=18 n;9 n=13n=22 n=8 n=10n=18 n=12 n;3 nニ15 あまり無理をさせないように 3   1  4

4  2  6

5  1  6 2  0   2

している

(22.2) (27.3) (33.3) (13.3)

常に観察している

0  3  3

@   (16.7)

0  0  0

2  0  2

@   (11.1)

2  0  2

@   (13.3)

記録係等できる活動をさせて 0   1  1

0  0  0

0  0  0 3  0  3

いる

(5.6) (20.0)

別行動を避けなるべく見学さ 0   1  1

0  0  0

1  0   1 1  0   1

せている

(5.6) (5.6) (6.7)

0   1  1 1  0   1 0   1  1

1  0  ユ

そ  の  他

(5.6) (4.5) (5.6) (6.7)

特になし(無回答)

4  5  9

@   (50.0)

4  11  15

@   (68.2)

1  8  9

@   (50.0)

4  3  7

@   (46.7)

(15)

中村・前田:慢性疾患児の健康管理H      167

1)病気の理解について

「級友は児童生徒の病気についてどの程度理解しているか」についての回答を表17にまとめた。

心疾患,腎疾患とも大部分のものが理解しているが6割をしめていた。残りは「一部のものは理 解している」がほとんどであった。喘息が他の疾患よりも理解している度合が高いのは,症状の変 化が他の疾患に比べてわかりやすく,そのような発作をみる機会が多いため,担任教師らの指導・

配慮がなされる機会も多く,理解しやすいのではないだろうか。「ほとんどない」の中には,「病気 のことを級友に知らせる必要を認めない」とする意見もみられた。

病気によっては,病気を知られてかえって特別な目でみられて困るという場合も考えられるので,

その点の配慮も必要である。

2)生活面の参加制限の必要性の理解

運動,行事の他に,朝会,掃除,クラブ活動の参加制限など,それらの必要性を級友がどの程度 理解しているか表18にまとめた。

大部分の級友が理解しているが,4〜8割であった。学級担任が病気の内容や運動,行事等の参 加制限の必要性を学級全体の児童生徒に説明し,理解させることは,慢性疾患をもつ児童生徒に対

する理解を容易にするだけでなく,以下に述べるような教育的な観点からも意義があると思われる。

表17 病気の理解について

疾 患

心疾 患 腎疾 患

喘  息 その他の疾患

校 種 小  中  計 小  中  計 小  中  計 小  中  計 理解の程度 n=10n=12 n=22 n=10n=13 n=23 n=24n=23 n=47 n=16 n=5 n=21

大部分がある  6  5  ユ1i60.0)(41.7)(50.0)

 6  5  11

i60.0)(38.5)(47.8)

15  14  29

i62.5)(60.9)(61.7)

12  2  14

i75.0)(40.0)(66.7)

一部の者はある

 2  7  9

i20.0)(58.3)(41.0)

 3  7  10

i30.0)(53.8)(43.5)

 7  6  13

i29.2)(26.1)(27.7)

 2  2  4

i12.5)(40.0)(19.0)

ほとんどない

 2  0  2 i20.0)   (9.1)  1  1  2

i10.0)(7.7)(8.7) 2  2  4

i8.3)(8.7)(8.5)

 2  1  3

i12.5)(20.0)(14.3)

無  回  答

0  0  0 0  0  0

0  1  1

@ (4.3)(2.1) 0  0  0

表18 生活面の参加制限の必要性の理解について

疾 患 心 疾 患 腎 疾 患 喘  息 その他の疾患

校 種 小  中  計 小  中  計 小  中  計 小  中  計 理解の程度 n=7 n=11n=18 n=9 n=13n=22 n=8 n=10n=18 n=12 n=3 n=15 大部分の者が理解している

 6  5  11

i85.7)(45.5)(61.1)

 5  5  10

i55.5)(38.5)(45.5)

 5  8  13

i62.5)(80.0)(72。2)

10  2  12

i83.3)(66.7)(80.0)

一部の者は理解している  1  5  6

i14。3)(45.5)(33.3)

 3  6  9

i33.3)(46.2)(40.9)

 1  2  3

i12.5)(20.0)(16.7)

0  1  1

@(33.3)(6.7)

ほとんどの者が理解していな 0   1  1 1  1  2 2  0  2 2  0  2

(9.0)(5.6) (11.2)(7.7)(9.1)

(25.0)  (11.1) (16.7)  (13.3)

無  回  答 0  0  0 0   1  1

@ (7.7)(4.5)

0  0  0

0  0  0

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