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消化管上皮性腫瘍に対する内視鏡的治療

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Academic year: 2021

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は じ め に

消化管の粘膜病変に対する内視鏡的切除術は,1969 年にスネアによる胃ポリープの切除術が報告されたこ とに始まった。その後,1980年代以降に様々な内視鏡 的粘膜切除術(EMR)が開発されたが,一括切除で きる大きさが約2cm までというのがおおよその限界 であり,その大きさが消化管上皮癌の内視鏡的切除術 における適応限界病変とされてきた。1999年頃より病 変の周辺粘膜を切開し,粘膜下層を 離して病変を切 除する手技が,当時は 切開 離法 という名称で行 われるようになり,10数 cm 以上の大きな病変でも一 括切除できる技術がそれ以降広がっていった。その後,

処置具の開発が進み手技が安定して来たこともあり,

現在では日本発祥の技術として世界各国で粘膜下層 離術 (ESD)(図1)が行われている。

本来,外科的に切除されてきた消化管の悪性上皮性 腫瘍に対して内視鏡的切除が適用されるためには,内 視鏡的に治癒可能であること,すなわち転移がないこ とが大前提である。近年は,多数の症例検討から,

「リンパ節転移を生じない癌」の特徴が検討され, 新 たな適応病変 がガイドラインに登場している。

胃 癌

胃は比 的厚い固有筋層と漿膜を有しており,内視

鏡的治療において穿孔を生じる危険性は食道や大腸と 比 して低い。前庭部病変は内視鏡的操作も容易であ り,ESD ビギナーが最初に治療を行う場所でもある。

また,胃酸が存在するため創部は比 的清潔が保たれ ると考えられ,穿孔した場合に緊急外科手術を行わず,

内視鏡的創閉鎖と抗生剤投与で保存的に加療できるこ とも多い。しかし,胃は内腔が広いために内視鏡の近 接が困難な部位があり,太い血管や粘膜下脂肪織が豊 富な症例もあり,治療の難易度は様々である。

胃の上皮性腫瘍はH. pylori感染による慢性胃炎を 背景として発生することが大半であり,病変の範囲診 断が困難であることが多い。ESD の手技を用いれば,

意図した部分を正確に切除することは可能であるが,

病変の範囲診断が誤っていれば治癒切除は得られない。

近年,85〜100倍程度の拡大観察が可能な拡大内視鏡 に狭帯域光観察(NBI)を組み合わせて観察するこ とで,腫瘍の正確な範囲診断が可能になってきており,

治療前には欠かせない検査になりつつある。

内視鏡的切除術の 絶対適応病変 は,以前から行 われて来た,いわゆる狭義の粘膜切除術(ストリップ バイオプシー法,キャップ法など)でも一括切除でき る病変である(表1)。ESD が主流になりつつある今 日では,リンパ節転移がほとんどないという理論的条 件が多数の外科的切除例の解析を根拠に 適応拡大病

343  

No. 5, 2012

信州医誌,60⑸:343〜344,2012

図1 粘膜下層 離術(ESD)の手順 粘膜下層(SM)

固有筋層(MP) 粘膜層(M)

腫瘍

周辺切開

切除 粘膜下層剥離

消化管上皮性腫瘍に対する内視鏡的治療

〜内視鏡的粘膜下層 離術(Endoscopic Submucosal Dissection :ESD)〜

信州大学医学部内科学第2講座

菅 智 明

(2)

変 として提示されている 。その条件を満たす か否かについては,病変を一括で切除し,切除標 本を全域にわたり詳細に検討する必要がある。

食 道 癌

食道は内腔が狭く,構造的に外膜がなく筋層も 薄いため,内視鏡治療時の穿孔リスクは高い。ま た周囲は心臓・肺・大動脈といった重要臓器に取り囲 まれ,穿孔から縦隔炎を生じたた場合にはレスキュー の外科的処置も困難であり,致命的になる危険性も高 い。しかし,その他の治療法としての外科的切除や放 射線/化学療法は,それ自体の身体に与える負担が大 きいため,治療法の選択に迷う場合には,診断的に内 視鏡的切除を行ってみることも多い。その場合に,切 除標本を病理組織学的に正確に評価することは必須で あり,ESD による一括切除検体で充分な評価を行う 必要がある。

病理組織学 的 に は,胃 ・ 大 腸 と 異 な り 粘 膜 筋 板

(MM)以深に浸潤するとリンパ節転移のリスクが高 くなるため,内視鏡的治療の絶対的適応は粘膜固有層

(LPM)までである 。また,比 的狭い管腔臓器と いう特性上,病変切除後の瘢痕狭窄を生じ易く,2/3 周以下の広がりであることが絶対的適応の条件とされ ている。しかし,狭窄に対しては,術後に予防的にス テロイド投与を行ったり,計画的に拡張術を行うこと で対処できることも多く,狭窄予防方法検討のための 複数のスタディが現在進行中である。

大 腸 癌

大腸は長い管腔臓器であるため,内視鏡の手元の操 作と先端部の動作に乖離を生じることが多く,処置は

概して困難である。また,壁が薄いために穿孔を生じ 易く,穿孔した場合に便で腹腔内が汚染されて腹膜炎 に至る危険性が高いと考えられている。そのため,大 腸の ESD は高度先進医療として行われてきたが,そ の有用性と安全性が確認され,本年4月にようやく保 険収載された。しかし,腹腔鏡下の腸切除も比 的侵 襲の少ない治療法であり,ESD の適用に際してはよ く検討する必要がある。

ESD の良い適用は,EMR で一括切除が困難な,

2cm を超える大型の粘膜内癌が疑われる症例である。

一括切除により得られた検体を詳細に評価し,リンパ 節転移のリスクを評価する必要があることは他の臓器 と同様である(図2)。

ま と め

ESD の普及により,内視鏡的に切除可能な消化管 上皮性腫瘍は増加の一途にある。しかし,治癒切除を 得るためには病変の範囲診断・深達度診断を正確に行 うことが必須であり,切除標本の詳細な病理組織学的 評価も欠かせない。患者の全体像をみながら,適切な 治療法を選択すべきと思われる。

文 献

1) 胃癌治療ガイドライン :2010年10月改訂[第三版], 日本胃癌学会, 金原出版, 東京 2) 食道癌診断・治療ガイドライン :2012年4月版, 日本食道学会, 金原出版, 東京 3) 大腸癌治療ガイドライン :2010年版, 大腸癌研究会, 金原出版, 東京

信州医誌 Vol. 60 最新のトピックス

※浸潤度<1,000μm,脈管侵襲陰性,簇出軽度,分化型腺癌 図2 早期大腸癌の治療方針

表1 内視鏡的切除の適応(胃癌)

絶対適応病変

2cm 以下,潰瘍瘢痕(−),分化型腺癌 適応拡大病変

① 2cm を超える,潰瘍瘢痕(−),分化型腺癌

② 3cm 以下,潰瘍瘢痕(+),分化型腺癌

③ 2cm 以下,潰瘍瘢痕(−),未分化型癌

M癌、SM癌

M癌または SM軽度浸潤癌

最大径2cm未満

内視鏡的摘除 可能

内視鏡的摘除 病理診断

経過観察

内視鏡的摘除 不可能

外科的切除 最大径2cm以上

SM高度浸潤癌

※ 以外

344

参照

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