沿岸域における高波避難に関する高度警戒システムの開発
研究予算:運営費交付金 研究期間:平29~令1 担当チーム:寒冷沿岸域チーム 研究担当者:中嶋雄一、佐々木淳、
長谷一矢
【要旨】
沿岸道路の越波による交通障害に対しては、道路管理者が交通規制を敷いて安全確保に努めるが、それでもな お車両の破損事故が発生する場合がある。このような事故回避を目的として、越波発生の危険性を直接運転手に 周知する高波警戒システムの開発を進めている。本システムを開発するうえで、波のうちあがり状況を広範に把 握する必要があり、その方法として光ファイバによる歪計測技術(FBG センサー)の活用を検討した。水理模型 実験により
FBGセンサーの適用性を検討した結果、波のうちあがりに連動して応答すること、波のうちあげ高の 推定が今後の研究課題となることなどが明らかとなった。
キーワード:越波、沿岸道路、交通障害、光ファイバ、
FBG1.はじめに
北海道沿岸の道路においては、低気圧や台風の接 近に伴い越波による交通障害がしばしば発生してい る(写真-1) 。道路管理者による交通規制
1)が安全対 策として行われているものの、越波による通行車両 の破損事故も報告
2)されている。本研究では、越波 発生の危険性を直接運転手に周知することにより、
危険路線からの退避や車両の減速による被害の軽減 が可能であると考え、高波警戒システムの開発を進 めることとした。
図-1 は高波警戒システムの構想図である。道路護 岸側壁に設置されたケーブル状のセンサー部で波の うちあがりを広範に感知し、監視部から危険情報を 発信する構想である。このセンサー部に光ファイバ センシング技術である
FBGセンサー
3)の活用を検討 している。本報告は、高波警戒システムへの
FBGセ ンサーの適用性を水理模型実験で検討するとともに、
システム開発に向けた課題を整理したものである。
2.研究方法
2.1 FBG
センサーの計測原理
FBG
センサーの概念図を図-2 に示す。図中の写真 が本研究で使用した
FBGセンサーであり、構造は一 般的な光通信で使用する光ファイバと同じである。
光ファイバはコアと呼ばれるガラス繊維の中心層を 光が進行する仕組みであるが、このコアに一定の格 子間隔
Λの回折格子(
Fiber Bragg Grating:
FBG)を 書き込む(特殊な方法で屈折率を変える)ことによ
北海道開発局提供
写真-1 沿岸道路における越波発生状況
光送受信機
12V DC バッテリー GPRSモデム
ソーラーパネル
PC データ送信部
センサー部
センサー部
データ送信部
無線送信
FTPサーバーor外部クラウドサーバー
監視PC(道路管理者)
LAN接続 orインターネット接続
警報発令(道路情報板、警告灯、携帯端末、etc.) 監視部
高波警戒システム
監視部
北海道開発局HPより
図-1 高波警戒システムの構想図
光ファイバ
Λ1→Λ2
FBG(回折格子)
入射光 反射光
透過光
入射光
透過光 反射光
λ1→λ1
波長λ
光強度 光強度 光強度
波長λ 波長λ
λ= 2・n・Λ 屈折率n
図-2 FBG センサーの概念図
り、その格子間隔に応じた波長の光だけが反射する 性質がある。この格子間隔
Λと反射光の波長
λには
λ=2・n・Λ(n:コアの屈折率)の関係があることから、光の波長変化を計測することにより、回折格子 の間隔すなわち光ファイバの歪を計測することがで きるのである。詳細は文献
3)を参照されたい。
2.2 実験方法
写真-2 は、道路護岸模型に
FBGセンサーを設置 した水理模型実験(平面実験)の状況である。
FBGセンサーは多点計測が可能であり、広範な波の監視 が可能であるかを検討するため、固定治具を用いて 区間 1、区間 2、区間 3 に 3 分割した。また、波のう ちあがり高は、ビデオ映像から測線 1、測線 2、測線 3 の目盛りを読んで測定した。波の入射角を 30°と し、区間 1 側から波が順に作用するようにした。
3.研究結果
図-3 は、 写真-2 に示す実験の結果である。図上段 は測線
1、測線
3における波のうちあげ高、そして 図下段は
FBGセンサー歪の時系列データである。
FBG
センサーの歪変化を見ると、押し波時と引き波 時に応答していることがわかる。また、1 本の
FBGセンサーであるが、固定治具で
3分割することで、
区間
1と区間
3が独立して応答していることがわか る。図-4 は、波のうちあげ高と
FBGセンサー歪の 関係を示している(断面実験結果) 。両者には全体的 に右肩上がりの傾向が見られるものの、歪のみから うちあげ高を推定することは困難である。
4
.まとめ
高波警戒システムの開発に向けた
FBGセンサー の適用性を検討し、以下の結果を得た。
1)FBG
センサーは、うちあがる波の動きに連動し
て応答する。また、区間分けされた
FBGセンサー は区間毎に独立して応答する。
2)FBG
センサーの歪と波のうちあげ高には明瞭な
比例関係はない。歪のみからうちあげ高を推定す ることは、現時点では困難である。これは
FBGセ ンサーの測定区間内において、波のうちあがりに 偏りがあるためと考えられる。うちあげ高の解析 方法は、 今後解決すべき研究課題のひとつである。
今後は本報告で明らかとなった課題解決と、実用 化に向けた現地試験が必要であると考えている。
参考文献
1) 長谷一矢:
「沿岸道路における高波警戒システムの開発
~数値波動水路を用いたシステム作動条件の検討~」 、 寒地土木研究所月報、第
785号、pp.22-27、2018.
2)清水敏明・木村克俊・高橋翼・山本泰司・上久保勝美・
名越隆雄・吉野真史: 「海岸道路を走行する車両の高波 によるフロントガラス被害の分析」、土木学会論文集
B2(海岸工学)、Vol.66
No.1、pp.746-750、2010.3) 佐々木一正:
「光ファイバセンシング-FBG 歪センシ
ングと応用」 、
Plant Engineer(Dec.2009)、pp.66-72、2009.測線1 測線2 測線3
区間1 区間2 区間3
FBGセンサー
道路護岸天端
固定治具
平面実験
写真-2 FBG センサーを用いた水理模型実験状況
-10 0 10 20 30 40 50 60 70
-0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8
14.0 14.5 15.0 15.5 16.0
FBGセンサー歪με
うちあげ高R (m)
経過時間 (s)
護岸天端
潮位 D.L. ±0.0
FBGセンサー歪 うちあげ高
測線1 測線3
区間1 区間3
平面実験
押し波 引き波
図-3 波のうちあげに対する FBG センサーの応答
-500 0 500 1000 1500 2000 2500
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
FBGセンサー歪με
うちあげ高 R (m)
設置高+0.3m 設置高+0.4m 設置高+0.5m T=1.90s
D.L.+0.0 +0.2
+0.5 +0.3
FBGセンサー
模型堤体 +0.4
断面実験