別紙1
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
報告番号
甲 第 3228 号 氏 名 青木 雅枝論文審査担当者
主査 教授 馬場 一美 副査 教授 柴田 陽
副査 准教授 宗像 源博
論文題名「Objective and Subjective Evaluation of Contact Strength Between Dental Implant and Natural Tooth 」
掲載雑誌名 THE SHOWA UNIVERSITY JOURNAL OF MEDICAL SCIENCES 上記の主査1名、副査2名が個別に審査を行った.
インプラント補綴装置は欠損補綴の有用な治療法として現在定着しているが,予後を 観察すると補綴装置と隣在天然歯の間に,近心コンタクトロスが発生することが報告さ れている.しかし,どの程度のコンタクトロスが起こっているかという報告は少ない.
本研究は,擬似模型を用い,コンタクト測定時の客観的評価,主観的評価の関係および 妥当性を明らかにした.客観的評価は,最大豊隆部で接触させた擬似模型(天然歯-天 然歯,天然歯-インプラント,インプラント-インプラント間)に対し,デジタルフォ ースゲージを用いて摩擦力を測定した.主観的評価は,上記の擬似模型に対し,歯科医 師10 名が5 段階を行い主観的な感覚を評価した.客観的評価で得られた摩擦力の数値 を,主観的評価の値に対応させることで平均値を算出し,一定の基準を作ることができ た.また,主観的評価と客観的評価の間では相関関係が認められた.主観的評価による コンタクト調整は,術者間によってばらつきが生じるため,コンタクトゲージの挿入方 向は歯列に対して直角にし,口腔内の唾液をエアシリンジで乾燥させるといった測定条 件を一致させる工夫により,より誤差の少ない正確な測定が可能であると示唆された.
本論文の審査において,副査の柴田教授および宗像准教授から多くの質問があり,その 一部とそれらに対する回答を以下に示す.
柴田教授の質問とそれに対する回答:
1.抄録内に「咬合時には上下歯列が収縮するため,食片圧入を防止する」と書いてある が,歯列は拡大することはないのか?
回答:不正咬合,歯周病を有している場合を除き,正常な隣接歯間関係を有している前 歯部,臼歯部の安静時には通常3~21 µm の空隙があり,噛みしめ時にはその空隙が閉鎖 する方向に歯が変位し,隣在歯と緊密に接触すると考えられております.
柴田教授の質問とそれに対する回答:
1. 今回判明したトルクレンチの誤差による臨床的影響はなにか
(主査が記載)
2.乾燥下と湿潤下での違いはあるか?
回答:違いがあると考えられます.先行研究により,天然歯-天然歯間,天然歯-イン プラント間を除く,インプラント-インプラント間において乾燥下と湿潤下では有意差 は認められました.
宗像准教授の質問とそれに対する回答:
1.本論文のコンタクトロスの要因に関する考察と対応策について述べなさい
回答:連結冠より単冠の発症率が高いという報告や,前歯部より臼歯部に多いとの報告 からも咬合力や部位の影響を受けると考えます.さらに,隣在歯の歯周組織の状態の影 響も受けることから,メインテナンス時には BOPや PPD,骨吸収等のインプラント周囲組 織に関する診査のみならず,隣在歯とのコンタクトロスの有無についても留意する必要 があると考えます.また対応策として,コンタクトロス時の対応の容易性からスクリュ ー固定による上部構造の作製が有利であると考えます.
2.機能期間との関連や上下顎との差はあるか?
回答:Byun ら(2015)の報告では,機能期間5 年で25%,10 年で50%発症し,部位と しては上顎より下顎に多いことが報告されております.Liang ら(2020)は機能期間との 関連について有意な相関関係があることを報告しております.
両副査は、上記を含めた質問に対する回答が、いずれも満足のいくものであることを確 認した.
主査 馬場教授の質問とそれに対する回答:
1.模型を用いた本研究の臨床的意義はなにか?
回答:患者を対象とした臨床報告はされておりますが,験者によるコンタクト挿入時の 摩擦力を,定量的に測定をしている基礎的な研究はなされておりません.そこで本研究 はコンタクトゲージと,摩擦力の関連性の評価を行いました.シミュレーションにて主 観的評価と客観的評価の法則性を検証することにより,臨床においてのコンタクト測定 時の影響および評価の推定が可能になると考えます.
2.客観的評価の摩擦力は異なるが,主観的評価に差がないのはなぜか?
理由として,シミュレーション模型のため,コンタクトの測定時の挿入感覚は実際の口 腔内とは異なり,験者による 3パータンの模型上での挿入感覚の評価が困難であったこ とが挙げられます.また,験者は摩擦力の 5段階評価の適切な値を認識しており,適切 な値に近似した評価をしたことが考えられます.
主査の馬場委員は、両副査の質問に対する回答の妥当性を確認するとともに、本論文の 主張をさらに確認するために上記の質問をしたところ、明確かつ適切な回答が得られた.
本論文は本学大学院学位論文(博士)審査基準を満たしており、学位論文に値すると判断し た.