別紙1
論 文 審 査 の 要 旨
報告番号 甲 ・乙 第
3049
号 氏 名 秋山 友里論文審査担当者
主査 教授 宮﨑 隆
副査 教授 山本 松男 副査 教授 高見 正道
(論文審査の要旨)
学 位 申 請 論 文 「
Effects of surface roughness of ceria-stabilized zirconia/alumina nanocomposite on the morphology and function of human gingival fibroblasts
」について、上記の主査、副査 2 名が個別に審査を行った。
Ce-TZP/Al2O3
をインプラントアバットメントへ応用するため、ヒト歯肉繊維芽細胞株(以下HGF-1)の生物学的挙動に対する Ce-TZP/Al
2O
3の表面粗さの影響について検討した。鏡面研 磨されたCe-TZP/Al
2O
3上で培養したHGF-1
細胞は、Ti
および機械研磨されたCe-TZP/Al
2O
3と比較して、細胞接着・増殖能、基質合成能、細胞骨格の発達がより高いことが認められた の でアバットメントに対して有効であることが示唆された 。
本論文の審査にあたり、副査の高見委員および山本委員から多くの質問があり 、その一部と それらに対する回答を以下に示す。
高見 委員の質問 とそれに対 する回答 :
1. 今回の研究対象とした
Ce-TZP/Al
2O
3とY-TZP
が臨床応用において、それぞれどのような 長所と短所を有するかについてこれらの物理化学的特性に基づきながら比較しなさい。(Ce-TZP/Al2
O
3の硬さはY-TZP
とほぼ同じであるが、破壊靭性値と曲げ強さは2
倍近く大き く、弾性係数も高い。インプラントアバットメントにはこれまで靭性の高い金属材料が多用さ れてきたが、金属アレルギーや審美性などの観点からセラミックス材料への代替を図った場合 は、Y-TZP より高強度なCe-TZP/Al
2O
3を選択する意義がある。しかし、高強度のため加工時 間がかかる。2. 本研究が歯科医学に資する点について述べ(基礎と臨床)、今後の展開を示しなさい。
(近年、インプラント治療は予知性の高い歯科治療として認識されるようになった が、天然歯 周囲粘膜と比較してインプラント周囲粘膜のインプラント体に対する上皮性、結合組織性の付 着は脆弱であり、インプラント周囲炎の原因菌に対する防御機能は不十分である。今回の実 験 で従来のインプラント材料であるチタンと比較して
Ce-TZP/Al
2O
3の軟組織に対する親和性 が良く、より周囲粘膜とインプラント体との封鎖性が良くなると考える。今後インプラント治 療の予後を考慮し、インプラント周囲炎を解決できるようにしていきたい。(主査が記載)
山本 委員に対す る質問とそ れに対する 回答 :
1.
ぬれ性が高いと細胞接着・増殖に関係があるのか。(インプラント表面の親水性は、タンパク質の吸着だけでなく、細胞接着と増殖に重要な因子 である。in vitro 研究では、親水性表面が疎水性表面と比較して、
HGFs
の接着・増殖が増強 し 炎 症 誘 発 性 メ デ ィ エ ー タ ー の 減 少 し た レ ベ ル を 示 す こ と が 実 証 さ れ て い る (N.
Esfahanizadeh, S. Motalebi, N. Daneshparvar et al. Morphology, proliferation, and gene expression of gingival fibroblasts on Laser-Lok, titanium, and zirconia surfaces. Lasers Med Sci, 31 (2016) pp:
863-873)。これらのことから、ぬれ性は細胞接着・増殖に関係があるといえる。)
2.
鏡面研磨されたCe-TZP/Al
2O
3では機械研磨されたCe-TZP/Al
2O
3に比較しても細胞接 着・増殖が促進するのはなぜか。(以前の研究では、培養48時間後および
72時間後に、 HGFsが滑らかなZr表面上で他の粗さを
有する表面Zr上よりも著しく速く 細胞増殖することが示され ている(Yamano S, Ma AK, Shanti RM et al. The influence of different implant materials on human gingival fibroblast morphology, proliferation, and gene expression. 2011 Nov-Dec;26(6):1247-55.)。本研 究では、機械研磨、鏡面
研磨された表面を有するTiおよびCe-TZP/Al
2O
3は、細胞接着、細胞増殖が生物学的応答に明 らかに影響を及ぼした。これらの過去の文献から、鏡面研磨されたCe-TZP/Al
2O
3が細胞接着・増殖が最も高いことが裏付けることができる。
両副査は、上記を含めた質問に対する回答が、いずれも満足のいくものであることを確認し た。
主査 宮﨑委員の 質問とそれ に対する回 答 :
1. Ti
とCe-TZP/Al
2O
3では、細胞増殖量に大きな差が出たと考えるのか、細胞とDisk
との 関係について生物学的視点から答えなさい。(Ce-TZP/Al2
O
3は、ZrO
2粒子内に閉じ込められた10〜 100 nmサイズのアルミナ酸 化物(Al
2
O
3)粒子からなる特徴的なトポグラフィを持っている。Ce-TZP/Al
2O
3はZrとAlの結晶中にZrO
2とAl2O
3粒子を数ナノメートルの規模で相互に析出させている。40ナノサイズの粒子はタ
ンパク質の吸着を促進することが示されている(Nishizaki M, Komasa S, Taguchi Y, Nishizaki H, Okazaki . J Bioactivity of NANOZR Induced by Alkali Treatment . International journal of molecular
sciences 2017;18:780.)。 さらに、Ti表面にコーティングされたナノスケールのAl
2O
3粒子は、標準的なTi表面と比較してより優れた細胞接着と増殖を誘導した 。これらの過去の論文から今 回の実験においてTiと比較してCe-TZP/Al2
O
3の細胞応答がよかったと考えられる。)主査の宮崎委員は、両副査の質問に対する回答の妥当性を確認するとともに、本論文の主張 をさらに確認するために上記の質問をしたところ、明確かつ適切な回答が得られた。
以上の審査結果から、本論文を博士(歯学)の学位授与に値するものと判断した。
(主査が記載)