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8 面積・体積と多重積分
8.1 積分と面積 〜区分求積法〜
(非負値)関数f(x)のグラフとx-軸と、2直線x= a, x=b(ただしa < bとます)で囲まれた領域Dの面 積が積分 Z b
a
f(x)dx
で計算される事は既にご存知の通りです。
これはこの領域を細かく縦に千切りにして1本1本の面積を計算して全部足し合わせ ると云う積分本来の定義方法、いわゆる区分求積法に基づいているわけですから、本当 は有限個に分割して、その分割をどんどん細かくして行く極限値を考えなければなりま せんがいろいろ面倒な記述になりますので敢えて17世紀の記法『微小幅dx』を使え ば、領域Dを微小幅に千切りにした時、一般にx-座標がxである所で切った1本は縦 がf(x)、横が微小幅dxの長方形と考えられますからその面積はf(x)dxとなり、これ をx=aからx=bまで全部足すと云う記号を『足す(sum)』の頭文字をとってRb
a で 表し、結果的に全体の面積は
Z b
|{z}a 全部足す
f(x)dx
| {z }
1本の面積
と書ける事になるわけです。
しかし後年積分は微分の逆演算である事が発見され、具体的な積分計算はまず『微分 するとf(x)になるような関数(これをf(x)の原始関数と呼びます)』F(x)をどこかか ら見つけて来て、これを使って
Z b a
f(x)dx=F(b)−F(a)
と計算すれば良い事になり、大抵の積分計算はこの方法によって実行されています。
この様に積分と云うものは本来の『面積を求める』と云う目的から離れ、純粋に抽象 的に『関数f(x)を積分する』と考える事も出来ます。この目から見ると、今見た領域 Dの面積は関数f(x)の積分に他ならないわけで、では領域Dにとってf(x)とは何だ ろうかと考えてみると、これはこの領域を縦に切った時の切り口の幅なんですね。だか らその意味で
(面積)= Z
(切り口の幅)dx
と解釈する事も出来るわけです。
実際、もっと一般的な領域の場合、例えば下図のような領域Dの場合にも、
(Dの面積)=(D1の面積)+(D2の面積)
= Z b
a
f(x)dx− Z b
a
g(x)dx
= Z b
a {f(x)−g(x)}dx
となっており、やはり領域を切ったときの切り口の幅を積分すれば領域の面積が得られ る事が分かります。
8.2 面積と2重積分から体積と3重積分へ
面積を計算する時に、千切りばかりが能ではありません。みじん切りにしたって良い 筈です。つまり、領域Dを縦dy、横dxの(各辺が座標軸に平行な)微小長方形に分割 し、1枚の面積dxdyを領域D内で全部足せば全体の面積になる筈です。この時の『全 部足す』も、さっきと同様の記号R
Dで表しますが、2次元の概念である面積を足すの でそれを表現してRR
Dと書くことが多いようです。
(領域Dの面積)= ZZ
|{z}D 全部足す
dxdy
| {z }
1枚の面積
こう云った類いの2次元での『全部足す』のことを2重積分と呼んでいます。
ただしこの解釈では実際に具体的な計算をしようとすると色々と困難が多いので、あ くまで『考え方』としてそう云うものがあると考えておけば良いでしょう。具体的に計 算する時は領域を千切りにして切り口の幅を積分すれば良いわけです。
全く同様に3次元空間内の領域Rの体積を求めるとき、この領域(あるいは立体と考 えても良いでしょう)をみじん切りにし、1個1個の直方体の体積を全部足すという発
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(領域Rの体積)= ZZZ
| {z }R 全部足す
dxdydz
| {z }
1個の体積
を考えます。ただしこれも具体的な計算に向いた解釈ではありません。
8.3 体積の具体的な計算方法
さっき面積を計算した時に、切り口の幅を積分すると面積になると云う事を見ました が、これを3次元に拡張すると当然、立体(=領域)をスライスした時の断面積を積分 すれば体積が復元出来ると考えられるわけです。
(面積)= Z
(切り口の幅)dx ⇒ (体積)= Z
(断面積)dx
実際に3次元の領域(=立体)Rをx-軸に垂直な平面群でスライスする事を考えま しょう。スライスの幅はx-軸方向の微小幅なのでdxとします。すると、1枚の食パン の体積は
(1枚の体積)=(断面積)×dx ですから、切る範囲がx=aからx=bまでであるなら
(領域Rの体積)= Z b
|{z}a 全部足す
(断面積)dx
| {z }
1枚の体積
となる筈です。
もう少し具体的に見てみましょう。2変数関数h(x, y)のグラフである曲面z=h(x, y) とxy-平面内の領域Dが与えられているとしましょう。このとき、曲面z =h(x, y)と xy-平面、そして領域Dの周囲に立てた垂直な壁によって囲まれる領域(立体)Rの体 積はどのように計算されるでしょうか。
まず立体Rをx-座標がxの所でスライスした時に床である領域Dもスライスされま すがその時のy-座標の範囲がv(x)≤y ≤w(x)であり、スライスする範囲がx-座標で 言ってaからbまでだったとしましょう(下図右下)。
これは領域Dが連立不等式:
v(x)≤y≤w(x) a≤x≤b
で表される事を意味します。このとき断面は上図右上のようになっており、その断面積は
(断面積)= Z w(x)
v(x)
h(x, y)dy
で計算されます(もともとh(x, y)は2変数関数ですが、今はx-座標一定の平面で切っ ていますからxを固定して考えているのでh(x, y)はyの1変数関数として考えて積分 しています)。
従って全体の体積はこの断面積を積分して
(領域Rの体積)= Z b
a
(断面積)dx= Z b
a
(Z w(x) v(x)
h(x, y)dy )
dx
と計算される事が分かります。
この様に立体の体積を計算しようとすると、2変数関数をまず変数yで積分し、次い でその結果得られるxの1変数関数を今度はxで積分する計算が出てきます。
このような計算を『逐次積分』あるいは『累次積分』と呼びます。
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8.4 逐次積分
ここからは一旦『体積』を計算しているんだと云う背景からは離れて、純粋に計算と して逐次積分を見て行きます。
問題 8.1 次の逐次積分を計算して下さい。
J= Z 3
0
ΩZ 2 0
(2xy2−y)dy æ
dx
そのまま順次計算すれば J =
Z 3 0
∑2xy3 3 −y2
2
∏2 0
dx= Z 3
0
µ16x 3 −2
∂ dx=
∑8
3x2−2x
∏3 0
= 18
となりますね。
ここで、同じ被積分関数を、同じ積分範囲で、しかし積分の順番だけ換えて計算する とどうなるでしょうか?これをやってみると
Z 2 0
ΩZ 3 0
(2xy2−y)dx æ
dy= Z 2
0
£x2y2−xy§3 0dy=
Z 2 0
°9y2−3y¢ dy=
∑ 3y3−3
2y2
∏2 0
= 18 となって同じ値になります。これは偶然でしょうか?
例題 8.2 次の積分と順序を交換したものと2種類計算して下さい。
(1)
Z 1 0
ΩZ 2 1
xy2dy æ
dx (2)
Z 2 0
(Z x2 0
x2ydy )
dx
(1)を計算してみると確かにこの場合も同じ値になっています。
Z 1 0
ΩZ 2 1
xy2dy æ
dx= Z 1
0
∑1 3xy3
∏2 1
dx= Z 1
0
7 3xdx=
∑7 6x2
∏1 0
=7 6 Z 2
1
ΩZ 1 0
xy2dx æ
dy= Z 2
1
∑1 2x2y2
∏1 0
dy= Z 2
1
1
2y2dy= 1 2
∑1 3y3
∏2 1
=7 6
(2)についても順序を逆にしたものも計算してみましょう:
Z 2 0
(Z x2 0
x2ydy )
dx= Z 2
0
∑1 2x2y2
∏x2 0
dx= Z 2
0
1 2x6dx=
∑1 14x7
∏2 0
= 64 7 Z x2
0
ΩZ 2 0
x2ydx æ
dy= Z x2
0
∑1 3x3y
∏2 0
dy= Z x2
0
8 3ydy=
∑4 3y2
∏x2 0
=4 3x4 あれ?一致しませんね。しかも単に一致していないと言うよりも、積分順序を入れ替 えると定数ではなく関数になってしまい質的におかしい気がします。
8.5 積分範囲に文字(積分変数)が入っている場合の順序交換
まず最初の(2)の積分を見て下さい。
Z 2 0
(Z x2 0
x2ydy )
dx
この積分ではまず内側の積分ではyで0 ≤y≤x2の範囲で積分していますが、このと きxは定数と思って固定して考えています。
言い方を変えれば、本来0≤x≤2の範囲内で動くxであるけれども、この範囲内か ら勝手に1つのxをとって、取り敢えずxの値はそこに固定した上でyを0≤y ≤x2 の範囲で動かしているわけです。
そしてその積分が終わった後で、定数と思って固定してあったxを元に戻して変数と 考え、0≤x≤2の範囲で積分すると云う事です。
この2回の積分の結果として、
点(x, y)の動く範囲は
0≤y≤x2 0≤x≤2
と云う不等式で表すことが出来、
この領域を図示すると右図の様に なっています。
第1の不等式ではまずxを任意に固定して、そのx座標に於けるyの動く範囲を指定し、
次に固定したxを動かしていますから、丁度領域を縦に千切りにした様な感じになって
Revised at 02:01, December 4, 2015 解析学B 第8回 http://my.reset.jp/˜gok/math/ 4 います。千切りにした1本1本が最初の不等式で、それを全部集めると云うのが2番目
の不等式です。
縦切りがあるのなら横切りもある筈で、実際にこの領域をあるyのところで横切りに してみると、左図の様になっていて、その切り口でのxの動く範囲は√y ≤x≤2と なっています。更にyは0≤y≤4の範囲を動きます。
以上からこの領域は不等式:
√y≤x≤2 0≤y≤4
で表されることになるわけです。これが領域を横切りに した場合の表現不等式です。
この様に領域を表す不等式は1通りではありません。
この縦切り・横切りの他にも色んな表現方法があります。
しかしそれらの中で最も基本的なものは矢張りこの縦切 り・横切りの2つですね。
さて、ここで積分に話しを戻しましょう。最初に考えていた(2)の積分は領域を縦 切りにした不等式に対応していたわけですが、領域を横切りにした不等式に対応した積 分と云うものもあるはずですよね。そしてそれはどんな積分になるのでしょうか。
実際やってみると、まずyを固定してxを√y≤x≤2の範囲で動かして積分します。
そしてその結果を今度は0≤y ≤4で積分しますから、それは Z 4
0
(Z 2
√y
x2ydx )
dy になるはずです。これを計算してみると
Z 4 0
(Z 2
√y
x2ydx )
dy= Z 4
0
∑1 3x3y
∏2
√y
dy=1 3
Z 4 0
≥
8y−y52¥ dy= 1
3
∑ 4y2−2
7y72
∏4 0
=64 7 となって(2)の積分と結果が一致しています。どうやらこれが『正しい』積分順序の 交換法の様です。
8.6 積分範囲が全て定数で書けている場合
どうやら積分順序の交換と云うものは思ったよりも複雑なものであるらしいと云う事 が分かって頂けたと思いますが、いや、ちょっと待てよ。だって(1)はシンプルにそ のまま交換しただけで良かったじゃないですか。あれはどう云うことなんでしょうか?
そこで(1)の積分の積分領域を不等式で書くと
1≤y≤2 0≤x≤1
ですからこれを図示すると下図の様な長方形になっていま す。これを 縦切り にしたのが上の不等式だったわけです。
実はこの長方形は横切りにしても全く同じ不等式で表現されてしまうんです。実際やっ てみると、あるyで切ったとき、xの動く範囲はyには依存せず0≤x≤1です。従っ てこの領域を横切りにした不等式は
0≤x≤1 1≤y≤2
であって、これはさっきの連立不等式と全く同じです。
従って積分領域が(座標軸に平行な)長方形である場合は単純に積分範囲を交換する だけでちゃんとした積分順序の交換になってくれていたんです。
Exercise
基本演習 1 (教科書問題8.1) そのままの順序と順序の交換をしたものを両方計算 して下さい。
(3)
Z 1 0
(Z x2 0
(x2+ 2y)dy )
dx (4)
Z 2 0
ΩZ x
−x
x2y2dy æ
dx