• 検索結果がありません。

スイスの不正競争防止法の紹介

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "スイスの不正競争防止法の紹介"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

スイスの不正競争防止法の紹介

田  村  善  之

[*27]

スイスの 1986年 12月 19日の不正競争防止法1)は,旧1943 年法2)を全面的に改廃する 新規立法である。改正の主要動機は,旧法制定以来40余年に渡り形成されてきた新たな不 正競争行為類型に対処するというところにある。旧法は一般条項を有していたが,スイスの裁 判実務はその適用に慎重であったといわれ3),改正法においては,個別条項を拡大すること によって新たに形成されてきた不正競争行為類型を把握することを試みている。また,禁止 規定が実効性を持つように,消費者や消費者団体その他にも訴権を拡大するなどの方策が 取られている4)。個別条項を制定する際には少なからずドイツの不正競争防止法5)の判例を 参酌しているが,ドイツにおいては一般条項の解釈により対処している行為類型に対して,

上のような事情があるために立法による規律を試みる点が特徴的であり,立法技術的な興味 を引くところである。以下,新たに追加された行為類型を中心に新法の概観を試みる6)

1) Bundesgesetz gegen den unlauteren Wettbewerb (UWG), vom 19. Dezember 1986.本稿の末尾 に全条文の試訳を掲げる。なお,同法は,第29条第1項により自由選択の国民投票に服するこ ととなっていたが,投票に付されないままに1987年4月13日をもって国民投票の期間は満了し た。同法は,1988年3月1日に施行されている。Vgl. AS 1988, 231.

2) 満田重昭・不正競業法の研究(1985年・発明協会)446〜467頁に邦訳と紹介がなされている。

3) Lucas David, Schweizerisches Wettbewerbsrecht, Bern 1988, S. 22.

4) Botshaft zu einem Bundesgesetz gegen den unlauteren Wettbewerb von 18. Mai 1983, S. 2.

5) Gesetz gegen den unlauteren Wettbewerb (UWG), vom 7. Juni 1909, RGBl. S. 499.参照,[*28]

田村善之「ドイツの不正競争防止法(訳文)」判例タイムズ793号(1992年)92〜97頁。

6) なお,新法の紹介としては,安田英且「スイスの不正競争に対する連邦法」判例タイムズ793号

(1992年)84〜88頁,同「スイスの不正競争防止法と消費者保護」(NBLに1992年掲載予定)を も参照。

Ⅰ  不正競争防止法の保護対象

スイスの新不正競争防止法は第1条に目的条項を,第2条に一般条項を置く。

この目的条項と一般条項は,不正競争防止法の保護対象は何かという議論に関連する。

旧法も 1 条に一般条項を置いていたが,そこでは信義誠実の原則に反する欺瞞的な「手段

(2)

(Mittel)」を不正競争であると断じていた。一部の学説は,この言葉遣いを根拠として,当該行 為の効果が経済政策に反するからその行為が不正競争防止法上違法となるのではなく,単 にそこに到達する「手段」が詐欺的である点を捉えて不正競争防止法上違法となるのだという 考え方を採用し,不正競争法は経済政策から価値中立的であるという見解を支持していた。

しかし,新法は「手段」という用語を避けており,これにより明らかに効果志向型の法律となっ たと説かれることがある1)2)

かように不正競争防止法が競争の機能そのものを保護する法ということになってくると,不 正競争法とカルテル法の機能が交錯することになる。かつての不正競争法の価値中立性の 学説は,競争の自由および存立はカルテル法が保障するものであって,不正競争法は営業 上のモラルの公正を担保する法であるとするから,両者の機能分担は完全に分けられていた

3)。新しい解釈のもとでは,両法はともに競争という制度を保障する法として位置づけられる

4)。競争の自由を保護するカルテル法と,競争の公正を保護する不正競争防止法は,競争の 機能を発揮せしめるために,競争政策がよって立たなければならないところの車の両輪であ るとされる5)。概念上は,不正競争法は競争が過多な場合に適用され,カルテル法は競争が 過少な場合に適用されると分けることは可能である6)が,競争の過多行為が結果的に競争の 過少をもたらすことを目的としている場合には両法の規定の領域が重なることになる7)。両法 が競合的に適用されるといっても,不正競争防止法の方が消費者個人と消費者団体の訴権

を認め[*29]ている点で包括的であることに注意しなければならない8)

なお,新法の目的条項で新たに用いられた「全ての関係者」という言葉は,不正競争防止 法の保護主体を消費者にまで拡大する趣旨で用いられたものである。これにより,競争の名 宛人であり,構成者でもある消費者の役割を明示し,競争法の三方向性,すなわち経済,消 費者,公共の各利益の等価値性を明確化することが意図されている9)

1) Carl Baudenbacher, Schwerpunkte der schweizerischen UWG-Reform,Das UWG auf neuer Grundlage, Bern・Stuttgart・Haupt 1988, S. 113 f. Vgl. auch Lucas David, Schweizerisches Wettbewerbsrecht, Bern 1988, S. 15 f. かつての自由主義モデルに従えば,営業の自由を保障 すれば自動的に競争者の機会均等が保障される。そこにおいて不正競争法はいわば警察法と して自律性あるシステムに対して補助的な立場を有するに止まり,市場の結果に対して介入する ことはしないとされた。しかし,このような 19 世紀モデルが実際の経済世界においては単なる幻 想にすぎないことは明白である,という。Baudenbacher, a. a. O., S. 19.

2) 第1条が公正な(lauter)競争ばかりではなく偽りのない(unverfälscht)競争を保障することを目的 としていることから,新法が,伝統的な営業上の道義(Geschäftsmoral)のみではなく競争の機能 (Funktionfähigkeit der Wettbewerb)をその侵害から保護しているという命題が導かれると説かれる こ とが あ る。Rolf Sack, Probleme des neuen schweizerischen UWG im Vergleich mit dem deutschen UWG, Das UWG auf neuer Grundlage, a. a. O., S.22 f.なお,Walter R. Schluep, Die Werbung im revidierten Lauterkeitsrecht,Das UWG auf neuer Grundlage, a. a. O., S. 72 f.は,自ら

(3)

の商品が高価であり品質が粗悪であると称する者は,営業上の道義には違反していないものの 偽りのある競争を行うものであり,競争の機能を害するという。競争のメカニズムは人が安価で良 質な商品よりも高価で粗悪な商品を選ぶ場合や,確実な収益性の高い投資よりも不確実な儲け の少ない投資を選択する場合に正しい帰結を生み出さない,と論ずる。

3) Baudenbacher, a. a. O., S. 35 f.; Sack, a. a. O., S. 118.

4) Sack, a. a. O., S. 118.

5) Botshaft zu einem Bundesgesetz gegen den unlauteren Wettbewerb von 18. Mai 1983, S. 30.

6) David, a. a. O., S. 25.

7) Sack, a. a. O., S. 118.

8) Baudenbacher, a. a. O., S. 36.

9) Botshaft,a. a. O., S. 35, 50; Baudenbacher, a. a. O., S. 15; David, a. a. O., S.23; Schluep, a. a.

O., S. 71 f.

[*30]

Ⅱ  禁止行為類型

1  個別条項

(1)  新法の定める構成要件のうち,事実に基づく信用毀損に関する規定(第 3 条a項),品 質等誤認行為に関する規定(第3条b項),資格詐称に関する規定(第3条c項),混同惹起行 為に関する規定(第3条d項),契約違反唆し行為に関する規定(第4条),営業秘密に関する 規定(第6 条),廉価販売等に関する規定(第21条)は旧法にも存在したものを改訂したもの である1)。むしろ,重要なのは新法において新設された行為類型であろう。以下,主要なもの を順に見ていくことにする。

(2)  比較広告(第3条e項)

新法3 条e項は,比較広告について規律する。この規定は決して新しい規律を生み出すも のではなく,旧法下においても連邦裁判所(Bundesgericht)によって認められていた法理を法 文化したものである2)

(3)  原価割れ売買(第3条f項)

旧法下においてスイスの連邦裁判所は,不正競争法の経済政策からの中立性を根拠に 原価割れ売買を不正競争行為の範疇から除いていた3)が,スイスの連邦政府は原価割れ売 買を個別条項で規律することとし,政府草案にて,原価割れ売買は顧客を欺惘する場合に 不正となること,また,欺惘の推定規定を置くという提案を行った4)。だが,議会の段階で,産 業界を代表する立場から,原価割れ売買を直ちに違法とする旨の絶対的禁止規定とすべき との対案が提出され,大いに議論となった。この案に対しては憲法で認められた営業の自由 を侵害するという批判が出された。また,単なる原価割れ売買は確かに過酷な競争ではある が,決して不正な競争ではないとの意見も提示された。さらに絶対的禁止規定案は,妥協的

(4)

に,原価割れの推定規定の方は置かないこととしていたが,それでは原価割れの証明が困 難であるから,実効性に乏しいであろうとの批判もなされた。激戦の結果,採択された新法第 3 条f項は,以下のようなも[*31]のとなった。「選抜した商品,製品,役務をくりかえし原価を割 って提供し,宣伝においてこれらのものを提供することを特に強調し,もって自己ないしは競 業者の供給能力につき顧客を欺惘する者。販売価格が同種の商品,製品,役務を同様に仕 入れる場合の原価を下回っている場合には,欺惘するものと推測される。被告が実際の原価 を証明した場合には,それが判断の基準となる。」5)このように,スイス新法第3条f項は,供給 能力の欺罔の危険という観点,すなわち当該商品以外の他の商品も廉価であると欺惘させる 危険という観点からのみ原価割れ売買を規律する。同項は,壊滅的競争および妨害的競争 という観点から原価割れ売買を規制しているわけではない。

新法第 3 条f項の意義は,とくに推定規定に認められるとの指摘もなされている。通常の原 価よりも安く販売している者は,本項の適用を免れるためには自己の原価を明示しなければ ならず,かりに適用を免れたとしてもそこでは行為者に有利な価格差別が存在することが明ら かになることになる。その意味で,推定規定には価格差別を予防する効果がある,というので ある6)。なお,f項の第2文と第3文の関係に関して,第2文の推定規定に対する反証は,第 3 文に従い販売価格を下回る原価を証明した場合にのみ逃れうると解すべきであるという説 が主張されている。消費者に対する調査では,繰り返し原価割れ売買が行われる場合には,

その商品が特別に廉価に販売されていることが明らかにされていたとしても,行為者が提供 する他の商品も廉価であるとの錯覚を生じることが判明しており,よって,第2文の推定は,第 3文の場合を除くほか,事実上,覆滅不可能であると解すべきである,というのである7)

さらに,本項に対しては,原価割れ売買の正当化事由を類型化していないとの批判があ る。傷みやすい商品であるとか,陳腐化しやすい商品については,廉価販売が許容されるの であって,その限度では欺惘行為がないことになるとされてはいるが8),その他,新商品の導 入価格,新規開業価格,在庫一掃価格,閉店価格,競業者が競争価格を付けている場合の 対抗価格などの正当化事由を認めるべきであり,f項の「繰り返し」という要件や「欺惘」という 要件だけでこれらの事例のすべてを適用除外することはできないから,目的論的に制限

[*32]解釈を行うことが必要であろうと説かれている9)

(4)  特別に攻勢的な販売方法(第3条g項)

消費者に心理的抑圧を加え,購入決定の判断力を制限するような行為は,学説において は認められていた不正競争行為類型であるが,判例はいまだ存在しない。政府草案は,特 別に攻勢的な販売方法と宣伝方法によって購入者の決定の自由を侵害する行為を不正で あると規定することを提案していた。だが,議会の過程において削除案が出され,結果的に 宣伝方法に関して削除が行われ,販売方法のみを規律する現在の第3条g項として成立した

10)

しかし,消費者の意思形成は宣伝方法においても販売方法と同様に危険に晒されるので あるから,この削除は不当である,という批判がある。ただし,現実には攻勢的な宣伝方法の

(5)

ない攻勢的な販売方法は存在しないから,その削除がはたしてどの程度実効性があるのか どうか疑問であると指摘されている11)。また,宣伝方法に関しては一般条項により規制すると の見解もある12)

(5)  品質等隠蔽行為(第3条i項)

第 3 条i項によれば,商品,製品,役務の品質,量,使用目的,効用,危険性を隠蔽し,も って顧客を欺く者は,不正に行為する者である。伝統的な欺惘行為である第 3 条b項との相 違は,誤認的表示によって作出した状況が問題なのではなく,何らかの理由により存在する 誤解を処理しないことが問題となることである。したがって,本質的な事情について沈黙する ことにより,本項の不正競争行為が生じる。これは債務法上の説明義務が具現化したもので ある13)

(6)  購入者に対する契約違反の唆し(第4条a項)

新法第4条a項は,判例に従い,自己と契約を締結する意図で,購入者に対し契約違反を 教唆する行為を不正であると規定する。しかし,本条は実務上重要である供給者に対し契約 違反を教唆する行為を規律していない点で不備があり,その規律は裁判所に委ねられてい ることになる14)

(7)  他人の成果の利用(第5条)

第5条は他人の成果の利用に関して規律する。このうち,a項とb項はすで[*33]に判例によ り認められていた法理を法文化したにすぎない。これに対して,c項の,市場性の熟した他人 の労務の成果を,自ら相当な費用を費やすことなく,技術的な複製手段を通じて,そのまま 引写し,利用する行為という類型は新たに設けられたものである15)

c項は,市場性の熟した成果にのみ適用される。市場性が熟しているということは,成果が 事実上市場に向けて特定されていることを意味する,とされる16)。この要件は,単なる着想や 認識をコピーすることは許される行為であり,具体的かつ完成された製品を複製して初めて 不正となるということを明らかとするために設けられた。したがって,本項による保護は,アイデ ィアや方法の保護を意味しない。かくして,無体財産権との交錯を回避することを意図してい る17)。また,型取り,複写,複製,測定など,相当な固有の費用を掛けることのない技術的な 複製手段による引き写し行為のみが対象となり18),この方法以外の模倣行為は本項の対象 ではない。そのような行為に対しては,無体財産権の保護が及ぶにすぎない19)。したがって,

たとえば,鋳物を型取りするのではなく自ら作成する場合,自ら機械を設計し制作する行為,

写真を複写するのではなく自ら対象を撮影する行為,写真製版するのでなく文章を自ら活字 に組む行為,ダビングするのではなく自ら音声を録音する行為,既存のプログラムを複製す るのでなく自ら創作する行為等々は,本項にいう不正な行為とはならない,とされる20)。以上 のように適用範囲を限定された本項の対象となる労務の成果としては,たとえば録音物,写 真,技術的製品,コンピュータプログラム,印刷物などが想定されている21)22)

このc項は,本質的には,自らの労力と費用を節約し,何らの改良や付加を加えること無く 模倣した労務の結果を利用する行為,特に技術的な複製方法を用いる行為は,不正である

(6)

と す る ド イ ツ に お い て 判 例 に よ っ て 発 展 さ れ て き た 成 果 の 直 接 的 引 写 し(unmittelbare

Leistungsübernahme)の法理に対応する。ドイツの判例においては,直接的引写しの場合に限

らず,他にも,模倣物が回避可能な出所の誤認混同を引き起こす場合,他人の成果を信頼 に違反して自己のものとする場合,被模倣者が模倣の品質により支障を被る場合,原商品の

信[*34]用を模倣物の販売促進のために不当利用する場合などにも,成果の保護が及ぶとさ

れている23)。現在のドイツの判例において展開されている成果保護のうち,スイス新法第5条 c項によって規律されている直接的引写しはその一部ということになるが,その他の類型につ いては一般条項の問題として判断されることとなるとされている24)

ところで,費用と労力を掛けない模倣を許容すると,成果物作成に労力,費用を投じた分,

成果物作成者が不利となる。これに対して,直接的引写し禁止の法理により,模倣者は自己 の費用と労力を掛けないかぎりは,模倣行為をなすことができないことになる。これにより,成 果物の作成者は,市場に先行した分,期間的な有利性が保障されることになり,この限度で 成果物作成のインセンティヴが与えられることになる25)。それ以上の保護を欲する場合には 知的財産権の保護を受けなければならない。ドイツの判例によれば,労力と費用を掛けて作 成された成果は,彼に正当に帰属すべき作業の果実を吸収するのに必要な期間の間,直接 的引写しから保護されるとされている26)。なるほど回避可能な出所の混同が生じるような場合 には,誤認混同の危険がある限り,期間的な制限のない保護が許容されようが,その場合に 成果が保護される形となったとしても,これは成果保護以外の理由による模倣禁止の反射的 な結果にすぎない。限定期間はケイス毎に決定していくほかないが,この場合,作成者が事 実として相当な果実を取得したかどうかは問題ではなく,その機会があれば足りるとされてい る。この観点からスイス新法を検討すると,スイス新法第2条の一般条項によって成果が保護 される場合には,不正かどうかの判断の中で期間的要素を顧慮することができるから問題は 生じない。しかし,第5条c項の直接的引写しが問題となる場合には,同項には何らの期間限 定も付されていない。これに対しては,期間限定を付すべきという立場から,目的論的に制限 解釈をすべきということが唱えられている27)

(8)  濫用的な契約約款の利用(第8条)

ドイツにおいては普通契約約款法28)により対処されている問題であるが,スイス法は,その ような特別法が未だ制定されるには至っておらず,今改正は,[*35]訴権者を拡大するととも に訴権を強化することを意図した不正競争防止法改正の機会を利用した措置といった側面 がある29)

従来のスイスの判例は,約款の内容のコントロールに消極的であったところ,政府提案は,

直接適用ないしは準用可能な法の規定から著しく乖離した約款か,契約の性質に著しく矛 盾した権利義務の配分を予定する約款で,一方当事者の不利になるものをすべて規律しよう というものであった。しかし,議会段階でそのような一般的な内容規制に対し反対があり,約 款が誤認的な態様であることという要件が付加され,新法第8条として成立した。不正競争防 止法に載せるには誤認の要素を無視しえないというのである30)。しかし,このような要件の挿

(7)

入はその理論的な理由が不当であるばかりか,実質的な妥当性も欠くとの指摘がある。すな わち,約款が問題となるのは,たとえそれが誤認的でなかったとしても,経済的,知識的,構 造的に下位に立たされている一方当事者が自己に不利な条項が挿入されることを拒絶する ことはできず,結局約款をもって契約が締結されるという事情があるとの批判がなされている のである31)

1) Carl Baudenbacher, Schwerpunkte der schweizerischen UWG-Reform,Das UWG auf neuer Grundlage, Bern・Stuttgart・Haupt 1988, S. 20.

2) Botshaft zu einem Bundesgesetz gegen den unlauteren Wettbewerb von 18. Mai 1983, S. 55 f.;

Baudenbacher, a. a. O., S. 20 f.; Walter R. Schluep, Die Werbung im revidierten Lauterkeitsrecht, Das UWG auf neuer Grundlage, a. a. O., S. 79.

3) Baudenbacher, a. a. O., S. 21.学説について,Botshaft, a. a. O., S. 36.

4) 草案の形成過程については,Botshaft, a. a. O., S. 35 ff.に詳しい。

5) 以上につき,Baudenbacher, a. a. O., S. 22 f.

6) Botshaft, a. a. O., S. 58; Baudenbacher, a. a. O., S. 21; Rolf Sack, Probleme des neuen schweizerischen UWG im Vergleich mit dem deutschen UWG, Das UWG auf neuer Grundlage, a.

a. O., S. 124.

7) Sack, a. a. O., S. 125 ff.

8) Vgl. Baudenbacher, a. a. O., S. 24.

9) Sack, a. a. O., S. 128.

10) Vgl. Baudenbacher, a. a. O., S. 26.

11) Baudenbacher, a. a. O., S. 26.

12) Lucas David, Reformauswirkungen des neuen UWG aus der Sicht der Praxis, Das UWG auf neuer Grundlage, a. a. O., S. 99.

13) Schluep, a. a. O., S. 89.

14) Baudenbacher, a. a. O., S. 26.

15) Vgl. Baudenbacher, a. a. O., S. 27.

16) Lucas David, Schweizerisches Wettbewerbsrecht, Bern 1988, S. 116 f.

[*36]

17) David, Schweizerisches Wettbewerbsrecht, a. a. O., S. 116; Botshaft, a. a. O., S. 62;

Baudenbacher, a. a. O., S. 28.ちなみに,この要件を楯にとって,未だ売り出し前のもののみを保 護する規定であるとも解する余地があると述べる邦語文献があるが,本項の保護が売り出し前の ものにも及びうることはともかく,市場に出現した途端に保護が失われるなどということは全く想定 していない規定であり,右文献の読み方は単なる見当違いでしかない。

18) Botshaft, a. a. O., S. 62 f.; David, Schweizerisches Wettbewerbsrecht, a. a. O., S. 116.

19) Botshaft, a. a. O., S. 63.

(8)

20) David, Schweizerisches Wettbewerbsrecht, a. a. O., S. 116.

21) Botshaft, a. a. O., S. 63.

22) なお,直接的引写し行為に依る以外に,他人の市場の成果を利用する可能性がない場合に

は , そ の よ う な 引 写 し 行 為 は 何 ら 不 正 と な る も の で は な い と い う 見 解 が あ る 。David, Schweizerisches Wettbewerbsrecht, a. a. O., S. 116.また,本項を2条との関係で解釈するときに は,経済的な目的のために利用する行為のみが規制され,私的な複製には本項は及ばないとい う見解がある。Sack, a. a. O., S. 130.

23) ドイツにおける成果保護に関する判例の変遷については,Sack, a. a. O., S. 1 32 ff.

24) た と え ば ,David, Reformauswirkungen, a. a. O., S. 101 は , 隷 属 的 模 倣(sklavische Nachahmung)を一般条項の問題としており,Sack, a. a. O., S. 136もそれを前提としている。

25) この法理を直接論じたものではないが,D.S.カ−ジャラ「著作権,ソフトウェアと新保護主義」

D.S.カ−ジャラ=椙山敬士・コンピュータ・著作権法(1989 年・日本評論社)62〜64・83〜85・132

〜134 頁は,直接的引写しの法理の趣旨を理解するために大いに資する議論を展開している。

さらに,参照,田村善之「他人の商品のデッド・コピーと不法行為の成否」特許研究 14 号(1992 年)掲載予定。

26) Vgl. Baudenbacher, a. a. O., S. 28.

27) 以上につき,Sack, a. a. O., S. 135 ff.

28) Gesetz zur Regelung des Rechts der Allgemeinen Geschäftsbedingungen vom 9. Dez. 1976.

29) Botshaft, a. a. O., S. 35 ff., 63 f.

30) Vgl. Baudenbacher, a. a. O., S. 29.

31) Baudenbacher, a. a. O., S. 30.

2  一般条項

新法は,不正競争の特別の構成要件を旧法の10から22へと増加せしめている。しかしな がら,そのことにより一般条項の意義が減殺するわけではないとされる。時とともに新しい広告 や販売方法が生み出されるのであるから,それを予め完全に特別の構成要件で保護してい くことは困難であるとされる1)

新法 2 条の一般条項は,旧法の一般条項の適用を制限する方向に導いた「手段」「濫用」

という用語の使用を避けるとともに,時代の変遷に応じた解釈を可能とする「信義誠実」という 言葉を用いている。また,適用対象を「行[*37]為」または「営業態度」とすることで,特別の手 段を用いない,たとえば不作為のようなものをも把握可能としている。そのうえ,競争関係に 影響を与える行為と定義することで,競業者あるいは顧客として直接競争に介入する行為で はない行為をも対象としている2)。このような新法により,不正競争違反に対する訴訟の際に,

当事者間に競争関係があることが必要かということが問題にされないことになる,と指摘され ている3)。新法のもとでは,不当な商品テストに対して,消費者団体による不正確な価格比較

(9)

に対して,非競業者による著名標章,商号,地理的出所表示を稀釈化する行為や品位を毀 損する行為に対して,成果物の創作者が利用者の競業者ではない場合の他人の成果物の 利用行為に対して,適用をみることができるであろう,と予測されている4)

一般条項が適用されるべき具体的事例5)の画定に関しては,とくに新法が拡大した個別の 構成要件との関係如何が問題となる6)7)

この点に関しては,以下のように説く見解8)がある。

まず個別条項が全くない場面においては,一般条項が適用されることに疑いはない,とさ れる。たとえば,契約違反により優位を獲得する行為がこれに当たる。また,他人の契約違反 を利用する行為が不正であるかどうかということも一般条項によって決定されるべき問題であ る9)。むしろ困難であるのは,個別条項が存在する分野においても,はたして個別条項が適 用されない部分について一般条項の適用があるかどうかという問題である,とされる。時が経 つとともに必要となってくる調整のために,一般条項の適用は原則として肯定されるべきであ るが,たとえば第3条f項(原価割れ売買),g項(特別に攻撃的な販売方法),第8条(濫用的な 約款の利用)など,前述したような政治的な論争の中で適用範囲を限定した条項があることを 想起しなければならない。したがって,個別条項の適用如何に関して事実の要素が欠如して いることの結果適用されない場面において,一般条項を持ち出すことはできない。これに対し て,このような欠如している事情の代わりに,個別条項が言及していない,しかし機能的には 関連する要素が付加されている場合には,一般条項が適用されることになる,という。たとえ ば,誤認的ではないために第3条f項が適用されない原価[*38]割れ売買であっても,特別の 事情が存在する場合には,一般条項により不正競争行為となりうる。また販売方法ではない ために第3条g項が適用されない宣伝方法であっても,攻勢が異常な程度に到達する場合に は,第 2 条が適用される。また誤認的でない約款も直接または準用可能な法規範から,ある いは,契約の性質上帰結される権利義務の配分から多大に乖離している場合であって,約 款が過度に片面的である場合には,第2条の問題となる,とされる10)

1) Lucas David, Reformauswirkungen des neuen UWG aus der Sicht der Praxis, Das UWG auf neuer Grundlage, Bern・Stuttgart・Haupt 1988, S. 99.; Botshaft zu einem Bundesgesetz gegen den unlauteren Wettbewerb von 18. Mai 1983, S. 34.

2) Botshaft, a. a. O., S. 52, Rolf Sack, Probleme des neuen schweizerischen UWG im Vergleich mit dem deutschen UWG, Das UWG auf neuer Grundlage, a. a. O., S. 120. Vgl. aber Lucas David, Schweizerisches Wettbewerbsrecht, Bern 1988, S. 29.

3) Sack, a. a. O., S. 120; David, Schweizerisches Wettbewerbsrecht, a. a. O., S. 23.

4) Sack, a. a. O., S. 121.

5) 一般条項の解釈基準として Lucas David が説くところを紹介しておく。新法において一般条項 たる第2条は欺罔行為に焦点を当てているが,何が欺罔行為となるかは,それに続く3条以下で 詳細に定められているために,第2条において欺瞞行為を問題にする必要は,少なくとも現在で

(10)

は小さく,むしろ,問題は同条にいう「その他の方法により」信義誠実の原則に反する行為とはど のようなものがあるかということである。かつては不正競争か否かを決定する基準は成果競争 (Leistungswettbewerb)であるかどうかというところに求められていたが,現在ではおとり広告,過激 広告,暗示的広告など成果原理では説明しきれないものがあるとされる。もちろん,みずからの成 果により競争を行わなければならないという原則は未だ通用するから,成果競争もそれで全部と いうことではないにせよ一つの大きな基準であるが,この他に,市場に対する真実性や透明性の 要請であるとか(例として,欺惘行為,誤認惹起行為の禁止,あるいは事実に基づいた広告,価 格と品質の表示の要請等),購入者の人格の尊重であるとか(例として,攻勢広告,攻勢的な販 売方法,射倖心の利用の禁止),さらには公共の利益(例として,おとり広告や妨害競争の禁止 等)も不正競争を決定する基準となる,という。David, Reformauswirkungen, a. a. O., S. 100 f.;

David, Schweizerisches Wettbewerbsrecht, a. a. O., S. 37.

以上の基準自体および各行為類型の当てはめについては異論がありえよう。ちなみにドイツの 不 正 競 争 防 止 法 の 一 般 条 項 に 対 し て Baumbach/Hefermehl, Wettbewerbsrecht, 16 Aufl.

München 1988が提唱する解釈基準の紹介とその批判として,参照,田村善之執筆担当・知的財

産研究所・不正競争防止法に関する調査研究(1992 年・知的財産研究所)131〜155 頁,また,

日本の不正競争防止法の捉え方に関して,田村善之「不正競争行為類型と不正競争防止法」ジ ュリスト1005号(1992年)16〜20頁。

6) ちなみに,ドイツ法においては,3 条以下の個別要件は一条の不正競争行為の具体例に過ぎ ないという理解がある一方,他方で1条の「不正」競争行為と3条以下の「それ自体として許され ない違法」行為を区別する見解がないわけではない。後者によれば,ただちに違法となる個別要 件に掲げられた行為と異なり,1条の行為は強度に違法である場合にのみ適用されるということに なる。参照,田村・前掲・不正競争防止法に関する調査研究。しかし,スイスの新法は立法技術と して,3条以下の個別要件の冒頭に「特に以下のような者は不正に行為する者である」という文言 を用いることで,このような見解が成立する余地を無くしている,とされる。Botsc-[*39]haft, a. a.

O., S. 51; Sack, a. a. O., S. 122.

7) 一般にドイツの判例が個別条項に依存すること無く,1 条の一般条項を用いて緻密なシステム を構築してきたのに対し,これまでのスイスの判例は一般条項を具体化する際にも個別条項に依 存する傾向が極めて強かったという批判がある。Sack, a. a. O., S. 122.

8) Carl Baudenbacher, Schwerpunkte der schweizerischen UWG-Reform,Das UWG auf neuer Grundlage, a. a. O., S. 34 f.

9) 以上につき,a. a. O., S. 34 f.

10) 以上につき,a. a. O., S. 34 f.

3  救済手段

かくして禁止行為類型が拡充されたわけであるが,さらに新法は,法の実効性を担保する

(11)

ために,訴権者を拡大せしめる(10 条)とともに,調停もしくは簡易迅速な手続きを設置するこ と(13条)によって訴権の行使を容易にすることで,法の貫徹手段の改善を図っている1)

救済手段に関して具体的に解説すれば,まず,第9条第1項により,直接的な競業者のみ ではなく,競争関係にない市場参加者も,自己の経済的利益を侵害されるかその危険がある かぎり,差止め訴訟を提起することができることとなった2)。また,第 2 項によって訂正文や判 決の通知,公示等の救済手段を受けることが可能である3)。さらに,第3項は損害賠償を定め る。成果保護の分野においてはドイツの判例は被害者に 3 種の損害算定方法を認めてい る。すなわち,1に逸失利益,2 に相当許諾料,3に侵害による利益の返還である4)。スイス新 法はこの第 9 条 3 項において,一般的な不正競争行為違反について侵害者利益の返還を 認めているが,同項は債務法の準事務管理を前提としており,違反行為が直接的に競業者 に対抗して遂行されるような事例にのみ他人の事務性が認められる,とされている。したがっ て,成果保護であるとか,誤認混同惹起行為の場合にはこれが肯定されるが,不正確な表示 による品質等の欺惘行為では否定される,とされている5)6)

第10条第1項により顧客も自己の経済的危険が存する限り,差止めおよび損害賠償の訴 訟を提起できる。同項の顧客には消費者のみではなく,購入者も含まれるとされている7)。さら に,第10条第2項により,職業団体や経済団[*40]体,そして消費者団体にも差止め請求が 認められる。職業団体および経済団体は,定款により構成員の利益を保護する権限を有す れば足りるが,消費者団体の方は,濫用を防止するために,定款に従い消費者の保護に専 念する団体で,全スイスもしくは地方的な意義を有する団体であることが要求されている8)

これに対して,政府提案に存在した連邦の訴権9)は議会段階で削除された。また,消費者 団体等が集合的損害賠償を請求することまでは認められていない10)。この他,新法第 7条は 労働条件の不履行について定めるが,その違反に対しては,上記の者以外に,労働者に訴 権を認めるという法制は採用されていない11)

1) Vgl. Botshaft zu einem Bundesgesetz gegen den unlauteren Wettbewerb von 18. Mai 1983, S. 46.

2) Carl Baudenbacher, Schwerpunkte der schweizerischen UWG-Reform,Das UWG auf neuer Grundlage, Bern・Stuttgart・Haupt 1988, S. 31.

3) 新聞社に対し,判決文中の侵害を確認する部分で裁判所に認められた部分を被侵害者の請 求 に 応 じ て 公 表 す る 義 務 を 付 与 す る と こ ろ に 本 条 の 意 味 が あ る , と さ れ る 。Lucas David, Schweizerisches Wettbewerbsrecht, Bern 1988, S. 26.

4) Rolf Sack, Probleme des neuen schweizerischen UWG im Vergleich mit dem deutschen UWG, Das UWG auf neuer Grundlage, a. a. O., S. 137.そもそも,ドイツの三種の損害算定方法は特許権 や著作権侵害において発展せられてきた法理である。その詳細は,田村善之「特許権侵害に対 する損害賠償(2)・(3)」法学協会雑誌108巻7号(1991年)1118〜1216頁・9号1437〜1452頁に 譲るが,ドイツの三方法における侵害者利益の返還は準事務管理と効果の点で相違があること に注意しなければならない。同「(2)」1166〜1172頁を参照。

(12)

5) Lucas David, Reformauswirkungen des neuen UWG aus der Sicht der Praxis, Das UWG auf neuer Grundlage, a. a. O., S. 108.

6) ところで,ドイツの不正競争防止法は,スイス法と異なり,顧客の損害賠償に関する規定を置い ていないが,その代わりにドイツ不正競争防止法第13条aは,虚偽の誤認的な広告により購入を 決定した顧客に解除権を認めている。スイス法の下においても,不正競争行為により契約締結に 至った消費者に,一般民事法の取消権の他,損害賠償の一形態として認められる原状回復の一 貫として契約からの解放を請求しうるのではないかということを考えることもできる,との指摘があ る。損害賠償による場合には不正競争行為者の故意または過失が必要であるが,新法第8条の 約款の規定違反の場合には,新法第9条第1項b項の侵害を除去する請求の一環として故意ま たは過失とは無関係に侵害を除去する請求権として取消請求が認められるという見解もある。少 なくとも,第9条第1項の請求により第8条違反の約款に将来拘束されることを防止することがで きるはずであるとの指摘もなされている。以上につき,Sack, a. a. O., S. 152 f., 151.

7) Baudenbacher, a. a. O., S. 32.

8) Baudenbacher, a. a. O., S. 32.

9) Vgl. Botshaft, a. a. O., S. 46, 71.

10) Baudenbacher, a. a. O., S. 32 f., 31.

11) David, Reformauswirkungen, a. a. O., S. 106.

[*41]

[付記]  本研究に関しては文部省科学研究費(重点領域研究・情報社会と人間・知的財産権の諸 問題)の補助を受けている。

参照

関連したドキュメント

はじめに ~作成の目的・経緯~

2014 年度に策定した「関西学院大学

(大防法第 18 条の 15、大防法施行規則第 16 条の 8、条例第 6 条の 2、条例規則第 6 条の

住所 〒163-8001 東京都新宿区西新宿2-8-1 都庁第二本庁舎20階 電話 03-5388-3481(直通).

EC における電気通信規制の法と政策(‑!‑...

者は買受人の所有権取得を争えるのではなかろうか︒執行停止の手続をとらなければ︑競売手続が進行して完結し︑

能率競争の確保 競争者の競争単位としての存立の確保について︑述べる︒

Urteil vom Landgericht I B erlin Kammer fu¨r Handelssachen, abgedruckt bei Schutz von Gesangsvortra ¨g e n. gegen phonographische Wiedergabe, GRUR ῍῔ῌῌ ,S