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日本透析医会雑誌

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(1)

THEJOURNALOFJAPANESEASSOCIATION OFDIALYSISPHYSICIANS

日本透析医会雑誌

Vol.19 No.1 2004

[巻 頭 言]

Gerontol ogi zi ngNephrol ogy

日本透析医会副会長

大 平 整 爾…

1

[透析医療における ConsensusConference2003 ]

透析患者の高血圧の薬物療法について

埼玉医科大学 腎臓内科

鈴 木 洋 通…

3

血圧管理と予後

日本透析医学会統計調査委員会/名古屋大学医学部附属病院

中 井 滋…

7

透析患者の心機能障害と高血圧

旭川医科大学 第一内科

菊 池 健次郎…

15

透析患者の体液管理

県立岐阜病院 腎臓内科

大 橋 宏 重…

20

低血圧の管理

大阪府立急性期・総合医療センター 腎臓内科

椿 原 美 治…

26

透析医療における ConsensusConference2003

―維持透析患者の血圧管理―

札幌北クリニック

大 平 整 爾

広島大学大学院医歯薬学総合研究科病態制御医科学講座

岡 德 在…

38

[医 療 経 済]

医療機関の会計制度改定にどのように対応するか

―透析医療機関に求められる社会の流れへの注目と積極的な対応―

医療経営戦略研究所

櫻 堂 渉

ヘルスケアマーケティング研究所

鈴 木 喜 六…

40

[医療安全対策]

平成 15 年十勝沖地震における災害情報ネットワークの活動報告

日本透析医会医療安全対策委員会 災害時透析医療対策部会情報ネット本部

武 田 稔 男 吉 田 豊 彦

同副本部

森 上 辰 哉

災害時透析医療対策部会部会長

申 曽 洙

医療安全対策委員会委員長

杉 崎 弘 章…

47

地震の町に来た地震 ―平成 15 年十勝沖地震による浦河赤十字病院の被災―

総合病院浦河赤十字病院内科

赤 塚 東司雄…

52

[臨 床 と 研 究]

血液製剤の使用指針

東北大学病院 輸血部

峯 岸 正 好…

68

慢性腎不全に対する在宅療法 ―現況と課題―

近畿大学医学部堺病院 腎・透析科

今 田 聰 雄 玉 井 良 尚

(医)長寿クリニック

大 野 卓 志 吉 本 忍…

73

血液透析時間に関わる問題

矢吹病院 腎透析センター

政 金 生 人…

78

血管再生医療の現状

大阪大学大学院 医学系研究科 病態情報内科学

伊 藤 孝 仁…

84

目 次

(2)

[実 態 調 査]

第 7 回透析医療費実態調査報告書

日本透析医会医療経済委員会 適正医療経済部会

鈴 木 満 杉 崎 弘 章 吉 田 豊 彦 山 親 雄…

89

平成 14 年度千葉県における透析医療機関の感染性廃棄物の現状

に関するアンケート調査(第 4 報)

千葉県透析医会感染症委員会/浦安駅前クリニック

佐 藤 孝 彦

同/市川クリニック

田 島 知 行

同/三愛記念病院

入 江 康 文

同/玄々堂君津病院

茅 野 嗣 雄

同/東クリニック病院

鈴 木 満…

123

[関 係 団 体]

「透析療法指導看護師」認定制度発足にあたって

日本腎不全看護学会

宇 田 有 希…

132

[各支部での特別講演]

岡山県における透析医療災害対策への取り組み

岡山県医師会透析医部会/日本透析医会災害時透析医療対策部会

笛 木 久 雄…

137

透析症例の開心術

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 循環器・呼吸器疾患制御学

坂 田 隆 造…

142

透析骨症の新しい治療方針

神戸大学医学部附属病院 腎臓内科・代謝機能疾患治療部

阿 部 貴 弥 喜 田 亜 矢 深 川 雅 史…

145

透析の原疾患と血液浄化法の種類

熊本大学医学部附属病院 腎臓内科

江 田 幸 政…

150

腎性骨症の病態と治療

松下会あけぼのクリニック 腎臓内科

田 中 元 子…

159

[透析医のひとりごと]

最近の透析医療に感ずること

串間市国民健康保険病院

川 畠 尚 志…

166

どうする未来の透析医療

札幌北クリニック

今 忠 正…

168

[た よ り]

千葉県支部だより

千葉県透析医会会長

横 山 健 郎…

170

愛知県支部だより

愛知県透析医会会長

渡 邊 有 三…

172

兵庫県支部だより

兵庫県透析医会会長

宮 本 孝…

175

鹿児島県透析医会だより

鹿児島県透析医会会長

前 田 忠…

178

常任理事会だより

日本透析医会常任理事

山 川 智 之…

181

投稿規定

186

編集後記 久 保 和 雄…

187

お知らせ

第17回社団法人日本透析医会シンポジウムのお知らせ 社団法人日本透析医会平成16年度通常総会のお知らせ 学会ご案内 163

平成16年度(財)日本腎臓財団 公募助成のご案内 183 第3回「維持透析患者の補完・代替医療研究会」のお知らせ 184 平成16年度 透析療法従事職員研修のお知らせ 185

(3)

日本における現在の慢性透析療法の課題は,しばしば論議の俎上に載っているように,①新規導 入患者が依然として減少しないこと,②糖尿病性腎不全の著増,③長期透析患者の増加(これは言 葉を換えれば,治療に難渋する各種合併症の出現),④高齢透析患者の増加,⑤医療費の抑制など に要約できましょう.

わが国の平均寿命が女性で 85 歳,男性で 78 歳で世界に冠たることはご同慶の至りですが,加齢 があらゆる臓器の生理的機能を減弱せしめていくことを勘案すれば,長寿は程度にさまざまな差異 はあるにせよ,障害を持つことをも意味します.健康長寿が望まれるのは当然のことなのですが,

わが身が前期高齢者に区分される年齢に達すると,この点を実感せざるをえません.日本透析医学 会統計調査委員会のデータもまた,2002 年新規透析導入患者の平均年齢が 65 歳で,年度末患者の それが 62 歳であることを示し,経年的な高齢化が明白だと言わざるをえません.高齢化率が全国 平均で 18. 5 % であることを知れば,当然の帰着と言えましょう.

数年前から腎不全(透析)医療が高齢者医療の主要部分を担っていると言われてきましたが,こ の事実が一層加速的に感じられる昨今であります.高齢透析患者の増加は,これまでも認識してき たことではありますが,①心・肺・血管系に低影響度の透析法の確立・選択(CAPD療法の見直 し・促進など),②送迎支援,重症または痴呆患者の受け入れ先の拡大と確保,③家族内外の介護 者の確保と社会的支援体制,④終末期医療の充実,緩和医療との連携,⑤透析非導入・継続中止例 に対する学際的な支援体制,⑥社会的資源の活用と拡大,MSW との連携,⑦心のケア,精神科医・

臨床心理士との連携,⑧老年医学との連携などの課題が湧出いたします.

高齢者に対してどのような医療を提供し,どのような社会復帰を可能にするかなどの幾つかの問 題で,透析医療は関わる多くの職種がチーム医療の体制を採り, 「高齢化社会における医療」を他 領域に先んじて取り組んできた経緯があります.高齢透析患者が心身に多くの障害を持つ可能性が 高いことは私共が日頃の臨床で実感するところであり, medi cal ・functi onal ・psychol ogi c ・soci al と多彩な病態を示します.今日の透析医療を円滑に行うためには老年医学的な知識や素養の必要性 をすでに感じてまいりました.表題は私の思いを一言で表現してくれており,まさに目から鱗が落 ちる思いです.

・Gerontol ogi zi ngNephrol ogy・確かにネフロロジーは老年医学化してきております. geron- tol ogy (老年医学)や hospi cecare (緩和医療)という専門の医療分野が現に存在し一定の成果 をあげているわけですから,これ等の領域が蓄積してきた成果を活用しない手はありますまいし,

是非にこれ等の専門家と協同して高齢透析患者に対処すべきだと考えます.いたずらに,性急に cure のみを求めず,care の質を高め本来その高齢者が居るべき場でその人が年齢相当に恙無く日

長崎県透析医会の設立にあたって 1

[巻 頭 言]

Gerontol ogi zi ngNephrol ogy

(社)日本透析医会

副会長 大平整爾

(4)

常生活を過ごせるように配慮する術を学びたいものです.

残された機能を最大限に活かすという観点に立てば,リハビリ医学の知識・技術も必要となりま しょう.社会資源の活用などという言葉を私共はよく使いますが,「既存臨床医学の活用」も今,

望まれる事項の一つではないかと思うのです.このためには腎機能代替療法のなんたるかを,他領 域の人々に理解して貰う必要がでてきます.これは当然ながら私共の仕事になりましょう.このよ うに考えますと,今以上に多くの医療人が透析患者に関与することになり,「船頭多くして船,山 に登る」が懸念されます.そこは,患者の最も身近かに絶えずいる透析医が,家庭医として総括的 な役向きを果たさなければなりますまい.

そして,社会一般の人々には,透析医療は高齢化社会の縮図であり,この成り行きの可否が日本 という社会全般の将来に大きく影響するのだということを理解していただかなければなりません.

つまり,私共透析医は国の命運を左右するほどの重要な責務を担っているわけであり,その自覚を 心に秘めたいと強く思います.

文 献

1) LukeRG,BeckLH:GerontologizingNephrology.JAm SocNephrol,10;1824,1999.

2) Holley JL,et al.:The need for end-of-life care training in nephrology:Nationalsurvey results of nephrologyfellows.Am JKidneyDis,42;813,2003.

日本透析医会雑誌 Vol.19 No.1 2004 2

(5)

要 旨

透析患者の高血圧の問題は多くの論文で述べられて いるが,まず高血圧の定義が不充分であること,降圧 薬に関しても充分な EBM がないことなどより明確な 結論が出されていない.しかしまずドライ・ウエイト もしくは,体重の管理を充分に行うことによって血圧 を下降させることが可能であるという意見もある.こ こでは,主として,降圧薬の使用について,いくつか の論文を参考として述べた.Ca 拮抗薬の有用性と,

レニン・アンジオテンシン系抑制薬の臓器保護作用に ついて,とくに強調した.

はじめに

透析患者の降圧治療に関しては一般の高血圧と異な りガイドラインはつくられていないのが現状である.

それは透析患者が若年から高齢者まで比較的幅広い年 齢層にわたっていることと,また透析年数や原病が様々 であり,一定の基準を決めにくい面もある

1~5

.そこ で,ここでは EBM(evi dence-basedmedi ci ne )とや やかけ離れた小生の経験を中心とした治療法について 述べていきたい.

1 どのような降圧薬を用いるか

現在市販されている降圧薬は,利尿薬,β遮断薬,

α

1

遮断薬,Ca 拮抗薬,ACE阻害薬,AII 受容体拮 抗薬,中枢作動薬がある.透析を受けていることより

利尿薬は通常使われない.これらの中で Ca 拮抗薬が 本邦では多く用いられており,透析患者でも同様な傾 向が認められている.

1 ) Ca 拮抗薬は透析患者の心血管系病変を防ぐ ことができるか

Ca 拮抗薬は,一時降圧効果はあるが交感神経系を 亢進させ反射性頻脈を起こすことより,心血管系障害 をむしろ起こしやすくすることから降圧薬としては適 さない可能性が指摘された

6

.しかしその後の大規模 臨床試験の成績をまとめたメタアナリシスでは脳卒中 の予防に効果が認められることが示された

7

が,心血 管系疾患に関しては必ずしもその有用性は証明されて いない.Ca 拮抗薬はさらに腎疾患ではその進展阻止 効果は少くとも大規模臨床試験では証明されていない.

しかし透析患者においては,腎障害の進展阻止効果に ついて議論する必要はないので,いかに心血管系疾患 を予防する“力”があるかないかを問題にすべきであ る.

Ca 拮抗薬の有用性について,明確に大規模臨床試 験 が 行 わ れ て は い な い の で , 評 価 は 難 し い が , Kestenbaum ら

8

は Ca拮抗薬の有用性について,

Uni ted StatesRenalDateSystem Di al ysi sMor- bi di ty and Mortal i ty WaveII を用いて,4, 065 名 の透析患者について検討した.そのうちデータとして 用いられたのは 3, 716 名(91. 4 %)である.

まず降圧薬についてみてみると,Ca 拮抗薬を使用

透析患者の高血圧の薬物治療について 3

[透析医療における ConsensusConference2003]

透析患者の高血圧の薬物治療について

鈴木洋通

埼玉医科大学 腎臓内科

keywords :ドライ・ウエイト,Ca 拮抗薬,ACE阻害薬,AII 受容体拮抗薬

PharmaceuticalTreatmentinPatientsonDialysis DepartmentofNephrology,SaitamaMedicalSchool HiromichiSuzuki

(6)

しているのは全体の 51. 2 %(1, 902 名)で,非使用群 1, 814 名とほぼ対比できる数になっていた.両群間で 様々なデータをみるとほとんど差がなく, さらに ACE阻害薬やβ遮断薬の使用頻度も Ca 拮抗薬使用 群で 23. 4 %(446 名)と 19. 6 %(372 名)に対し,Ca 拮抗薬非使用群で 22. 8 %(413 名)と 15. 9 %(289 名)

とほとんど差異を認めなかった.

Ca 拮抗薬を四つのクラスとさらにその組み合わせ でみると,ニフェジピン(Cl assI )が 9. 5 %,Cl ass II (本邦でのいわゆる長時間作用型 Ca拮抗薬)が 31. 3 %,ジルチアゼム(ヘルベッサー)(Cl assIII ) が 9. 8 %,ベラパミル(ワソラン)(Cl assIII )2. 0 % であり,主流は Cl assII に属する長時間作用型 Ca 拮 抗薬で全体では 60 % 近くになっている.しかし ACE 阻害薬,β遮断薬,アスピリンの使用は全体の死亡率 には有意な影響を与えなかった.しかし Ca 拮抗薬使 用群は総死亡において相対危険率で 0. 771 (信頼区間:

0. 69 ~0. 90 )と有意に減少させることが示された.

もちろんこの研究において,年齢,アルブミン,糖 尿病,心血管系疾患の既往の有無,人種は総死亡率に 有意な影響を与えていることは言うまでもない.さら にこの研究では,透析前の収縮期血圧が 130mmHg 以 下 あ る い は 160mmHg以 上 , 拡 張 期 血 圧 が 60 mmHg以下あるいは 90mmHg 以上では死亡率が増 加することが示されている.

Ca 拮抗薬は心血管系疾患の危険率を 26 % 減少(信 頼区間:0. 60 ~0. 91 )(P <0. 001 )させ,さらにジヒド ロピリシン系では 38 % 減少(信頼区間:0. 42 ~0. 90 )

(P <0. 001 )させている.このような血圧のいわゆる Uカーブ減少は以前にも報告されている

9

.さらに興 味のあることには,Ca 拮抗薬は,心血管系の既往の あるものに対しては,32 % 危険率を減少(信頼区間:

0. 53 ~0. 087 )(P <0. 001 )させている.これらのこと は,従来の一般の高血圧患者を中心に行われた大規模 臨床試験では Ca 拮抗薬は心血管系疾患を減少させな いとする結果

7

とやや異なっている印象がある.何故 透析患者で Ca 拮抗薬が有効なのかを少し検討してお く必要がある.

はじめにも述べたように,Ca 拮抗薬が心血管系病 変に余りよい影響を与えない理由として,強い血管拡 張の結果,交感神経系を賦活化し,頻脈などをひき起 こすことが最大の理由とされてきた.透析患者ではほ

とんどが無尿のため利尿による降圧をもたらすことは 難しい.したがって血圧を下降させるには,少くとも 容量を透析によりとり去る

10

か血管拡張を起こして血 圧を下降させるかであることより,Ca 拮抗薬の透析 患者での有用性が生じてくるものと考えられる.さら に透析患者では常に容量が過剰な状態が続いているこ とより,この血管拡張による降圧がより有効であると 考えられる.

2 ) レニン・アンジオテンシン(R A )系 抑制薬は有効か

透析患者で R A系がどのような役割を果たしてい るかについてはいくつかの議論があるが

11~13

,容量 過剰に対して,R A系は十分には抑制されていない と考えるのが重要である.すなわち,レニンの合成分 泌の主たる調節は,灌流圧=血圧の変動によって行わ れている可能性が高いからである.したがって透析患 者での R A系抑制薬の一つの目標は血圧の変動を抑 制すること,もう一つは臓器障害を抑制すること,こ の二つに集約して考えるとよいのではと思われる.

まず血圧の変動の抑制

14

であるが,R A 系抑制薬 が血圧の変動性に影響を与えている可能性について透 析患者で検討した成績は少ない.しかし透析患者でも R A系抑制薬は透析患者での血圧変動性を抑制しう る可能性はある.R A 系抑制薬が臓器保護に働いて いる可能性は多くの研究で示されている

15~20

.これ については,ここでは最近私共の行った研究成果につ いて発表したい.

私共は糖尿病性腎症患者で左心室肥大のある患者に ACE阻害薬, AII 受容体拮抗薬,あるいはその併用 効果について検討した.その結果は ACE阻害薬, AII 受容体拮抗薬はともに左心室肥大を退縮することが認 められた.そこでさらに ACE阻害薬あるいは AII 受 容体拮抗薬で左心室肥大の退縮しえなかった患者に対 して,相手方を加えることで,その左心室肥大におよ ぼす影響を検討した.その結果は一方では肥大が退縮 しなかった患者の約半数が併用することにより左心室 肥大の退縮することを認めた.

以上より慢性腎不全や糖尿病性腎症で報告されてい る ACE阻害薬と AII 受容体拮抗薬の併用療法の有用 性が透析患者の左心室肥大を退縮させるということが 示されたことになる.

日本透析医会雑誌 Vol.19 No.1 2004 4

(7)

3 ) α

1

β遮断薬の有用性

α

1

β遮断薬が心筋梗塞の再発作予防や心不全におい て効果のあることが示されており,腎障害を有する患 者でも使用できる可能性が示されている.透析患者で の報告は比較的少ないが,左心室肥大を有している患 者では交感神経系の亢進が潜在的にあること

21,22

より 有用であると考えられる.

2 今後の方向性

透析患者の降圧治療において重要なことはまず至適 体重の維持に努めることであるが,透析患者の高齢化,

医療技術や薬物治療の進歩により心血管系の合併症を 有する患者が急速に増加している.そのような時代に あっては当然のことではあるが,薬物によるコントロ ール,臓器障害の予防が重要な課題となってくる.

そこで私の提案としては,長時間作用型の Ca 拮抗 薬に AII 受容体拮抗薬を併用し,さらに必要であれ ば,α

1

β遮断薬やα

1

遮断薬,時に中枢作動薬を使用 して血圧を適正に保つことが大切であると考えている.

もう一つ着目しているのが抗アルドステロン薬である.

透析患者においては,しばしば高 K 血症があること より,高アルドステロン血症患者が多くみられる.そ のような患者が必ずしも臓器障害を有しているとはか ぎらないが,アルドステロンによる線維化が生じてい る可能性もある.そのような症例に対して抗アルドス テロン系の有用性が検討される日は近いと考えられる.

3 降圧目標について

透析患者のどの血圧をもってどこまでを高血圧とす るかについては十分な検討は行われていない.一つの 参考になるものとして,Zager ら

9

の成績(図 1 )が ある.この図をみるとわかるように透析患者において は血圧は高過ぎてもまた低過ぎてもよくないことがわ かる.透析前の収縮期血圧を 140 ~160mmHg 前後に するのが適切であると考えられる.また脈圧について も最近論じられているが

17,23

,十分な介入試験が行わ れていないので,不明である.

文 献

1) Mailloux LU:Hypertension in the dialysis patient.

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透析患者の高血圧の薬物治療について 5

図 1 血液透析患者の透析前後での収縮期血圧による心血管系疾 患を含む死亡の相対危険率

(文献9より)

(8)

11) TepelM,vanderGietM,ZidekW :Efficacyandtol- erability ofangiotensin IItype1receptorantagonists in dialysis patients using AN 69 dialysis membranes.

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日本透析医会雑誌 Vol.19 N o.1 2004 6

(9)

要 旨

日本透析医学会では,全国の透析患者を対象とする 統計調査を行っている.2001 年末調査結果に従って 血圧に関連する諸因子について概説した.施設血液透 析患者の透析開始時収縮期血圧(開始時血圧)の平均 は 153. 8mmHg であった.透析前収縮期血圧に対す る透析後収縮期血圧の比をとり,これを血圧透析前後 比(透析前後比)とした.血液透析患者全体の透析前 後比の平均値は 0. 91 であった.最低下時血圧と終了 時血圧との関係を明瞭化するため,終了時血圧に対す る最低下時血圧の比をとり,これを最低下終了時血圧 比とした.血液透析患者全体での最低下終了時血圧比 の平均は 0. 88 であった.透析前後比と最低下終了時 血圧比の平均値で患者群を 4 種に分類した.すなわち,

①安定群:透析前後比 0. 9 以上,最低下終了時比 0. 9 以上,②低下・回復群:透析前後比 0. 9 以上,最低下 終了時比 0. 9 未満,③大低下・小回復群:透析前後比 0. 9 未満,最低下終了時比 0. 9 未満,④低下・未回復 群:透析前後比 0. 9 未満,最低下終了時比 0. 9 以上,

である.安定群を比較対象とした場合,低下・回復群 と大低下・小回復群に高い心不全死を認めた.また,

低下・回復群には高い心筋梗塞死のリスクも認めた.

はじめに

日本透析医学会では,1968 年から年に 1 回,全国 の透析患者を対象とする統計調査を行っている.2001

年末に実施された調査

1

では,透析開始時血圧,終了 時血圧,そして透析中血圧が最も低下した際の血圧が 調査された.以下,これらの資料を用いてわが国の透 析患者の血圧と種々の背景因子との関係について概説 する.

1 透析開始時収縮期血圧

2001 年末に実施された調査では,透析開始時血圧,

終了時血圧,そして透析中の最低下時血圧が調査され ている.はじめに, 2001 年末に週 3 回の血液透析を 実施されていた患者の透析開始時血圧と背景因子との 関連について概説する.

施設血液透析患者の透析開始時収縮期血圧(以下,

単に開始時血圧とする)の平均は 153. 8 (±23. 9; ±s. d. , 以下同じ, n =159, 220 )mmHgであった.男女の開 始時血圧に大きな差はなく,年齢では 45 歳から 75 歳 で高い傾向があり,これより若年でも高齢でも血圧は 低かった.透析歴との間には比較的明瞭な関係があり,

透析歴が 10 年以上では,透析歴が長いほど開始時血 圧は低下する傾向が認められた.腎不全原疾患が糖尿 病性腎症である患者(以下,単に糖尿病患者とする)

の開始時血圧(161 ±24mmHg )は,原疾患が糖尿病 性腎症以外の患者(以下,非糖尿病患者とする)の開 始時血圧(151mmHg ,注:集計表から再計算したた め,標準偏差は算出できなかった)よりも高い傾向が 認められた.

日本透析医学会の統計調査では,前回透析終了時の

血圧管理と予後 7

[透析医療における ConsensusConference2003]

血圧管理と予後

中井 滋

日本透析医学会統計調査委員会/名古屋大学医学部附属病院

keywords :血圧変動,血液透析,体重増加,予後

Therelationshipbetweenbloodpressurecontrolandprognosisinhemodialysispatients Departmentofin-homemedicine/Nagoyauniversityschoolofmedicine

ShigeruNakai

(10)

体重が調査されていないため,透析間の体重増加率を 計算することができない.しかし,透析中の体重減少 量を透析後体重を除して百分率で表した体重減少率は,

透析間の体重増加率にほぼ等しいと考えられる.体重 減少率が大きいほど透析開始時血圧は高い傾向が認め られた.

体重減少率(%)= 透析前体重-透析後体重 透析後体重 ×100

2 収縮期血圧透析前後比

2001 年末の血圧に関する調査結果をもとに,透析 前血圧に対する透析後血圧の比をとり,これを血圧透 析前後比(以下,単に透析前後比とする)とした.

日本透析医会雑誌 Vol.19 No.1 2004 8

図 1 血圧透析前後比の概念

血圧透析前後比=透析終了時血圧÷透析開始時血圧 透析前後比が1.0より大:透析終了に向かって血圧上昇 透析前後比が1.0より小:透析終了に向かって血圧低下

図 2 収縮期血圧透析前後比と体重減少率 2001年末の週3回血液透析患者(透析歴2年以上,n=109,204)

体重減少率が大きいほど透析前後比は低い(透析終了までの血圧低下が大きい)が,

体重減少率6% 以上ではほぼ一定の値を示した.

(文献1より)

(11)

血圧透析前後比= 透析終了時血圧 透析開始時血圧

透析前後比の概念図を図 1 に示す.透析前後比が 1. 0 より大きい場合は,透析終了に向かって血圧が上 昇したことを示し,逆に透析前後比が 1. 0 より小さい 場合は,透析終了に向かって血圧が低下したことを示 すことになる.

透析前後比は,収縮期血圧,拡張期血圧,そして平 均血圧のそれぞれについて算定可能である.ここでは 収縮期血圧について透析前後比をとった結果について,

基礎的な背景因子との関係について概説した.

血液透析患者全体の透析前後比の平均値は 0. 91

(±0. 15 ,n =155, 166 )であった.性別との関係では,

男性でやや前後比が高い(透析終了までの血圧低下が 少ない)傾向を認めている(男性:0. 92 ±0. 15 ,女性:

0. 90 ±0. 16 ).年齢との関係では,30 歳から 60 歳で透 析前後比は低く,これより若年でも高齢でも透析前後 比は大きくなる(透析終了までの血圧低下が少ない)

傾向が認められた.透析歴との関係では,透析歴が長 くなるに従って,透析前後比は低く(透析終了までの 血圧低下が大きい)傾向を認めた.糖尿病との関係で は,糖尿病患者の透析前後比(0. 90 ±0. 17 )は,非糖 尿病患者(0. 91 )よりもわずかに低い(透析終了まで の血圧低下が大きい)傾向を認めた.体重減少率との 関係では,体重減少率が大きいほど透析前後比は低い

(透析終了までの血圧低下が大きい)傾向を認めたが,

体重減少率 6 % 以上では体重減少率にかかわらず透析 前後比はほぼ一定の値を示した(図 2 ).

3 最低下時開始時血圧比

2001 年末の調査では,透析中最も血圧が低下した 際の血圧を最低下時血圧として調査している.そこで,

透析開始時血圧に対する最低下時血圧の比をとり,こ れを最低下開始時血圧比とした(図 3 ).

最低下開始時血圧比= 最低下時血圧 開始時血圧

透析中に血圧が上昇し続けた場合,最低下時血圧は 開始時血圧となる.すなわち最低下時開始時血圧比の 最大値は 1. 0 となる.また,この値が小さいほど,透 析中に大きく血圧が低下した,ということになる.

最低下開始時血圧比も,収縮期血圧,拡張期血圧,

平均血圧のそれぞれについて算定可能であるが,ここ では収縮期血圧の最低下時開始時血圧比について概説 した.

血液透析患者全体での最低下時開始時血圧比の平均 は 0. 80 (±0. 14 ,n =140, 950 )であった.

図 4 に最低下終了時血圧比と開始時収縮期血圧との 関係を示した.開始時血圧が高いほど,透析中に大き く血圧が低下している.また体重減少率が大きいほど 最低下開始時血圧比は低下する(透析中に血圧が低下 する)傾向が認められた.

4 最低下終了時血圧比

最低下時血圧と終了時血圧との関係を明瞭化するた め,終了時血圧に対する最低下時血圧の比をとり,こ れを最低下終了時血圧比とした(図 5 ).

血圧管理と予後 9

図 3 最低下時開始時血圧比の概念 最低下開始時血圧比=最低下時血圧÷開始時血圧

最低下開始時血圧比が小さいほど透析中に大きく血圧が低下したことを示す.

(12)

最低下終了時血圧比= 最低下時血圧 終了時血圧

透析開始後,血圧が低下し続けた場合,最低下時血 圧は終了時血圧と等しくなる.すなわち最低下終了時 血圧比は最大 1. 0 であり,この場合,透析中血圧が低

下し続けたことを示す.透析中に一旦低下した血圧が 終了までに上昇した場合,最低下終了時血圧比は 1. 0 よりも小さくなる.最低下開始時血圧比も収縮期血圧 について算定した結果について概説した.

血液透析患者全体での最低下終了時血圧比の平均は

日本透析医会雑誌 Vol.19 No.1 2004 10

図 5 最低下終了時血圧比の概念 最低下終了時血圧比=最低下時血圧÷終了時血圧

最低下終了時血圧比は最大1.0.この場合,透析中血圧が低下し続けたことを示す.

最低下終了時血圧比が1.0未満の場合,透析中に低下した血圧が終了までに上昇 したことを示す.

図 4 最低下開始時血圧比と開始時収縮期血圧 2001年末の週3回血液透析患者(n=141,021)

開始時血圧が高いほど,透析中に大きく血圧が低下する.

(文献1より)

(13)

0. 88 (±0. 12 ,n =139, 870 )であった.

図 6 には最低下終了時血圧比と終了時血圧の関係を 示す.終了時血圧が高い患者ほど,最低下終了時血圧

比は低く,血圧低下後の血圧上昇が大きいことを示し ている.

血圧管理と予後 11

図 6 最低下終了時血圧比と終了時収縮期血圧 2001年末の週3回血液透析患者(n=139,941)

終了時血圧が高い患者ほど,血圧低下後の血圧上昇は大きい.

(文献1より)

図 7 血圧変動パターン分類

血圧の透析前後比と最低下終了時血圧比を組み合わせて,透析中の血圧変動パターンを4種に分類した.境 界値はそれぞれの平均値とした.

(14)

5 血圧変動パターン分類

透析前後比と最低下終了時血圧比のそれぞれについ て,それぞれの平均値で患者群を 2 群に分類した.各 パラメータの平均値を小数点 2 位で四捨五入するとと もに 0. 9 となったので分類境界値はともに 0. 9 とした.

この分類の組み合わせによって透析中の血圧変動パタ ーンを以下の 4 種に分類した(図 7 ).

① 安定群

透析前後比:0. 9 以上,最低下終了時比:0. 9 以 上.

透析開始から終了にかけて血圧の大きな低下がな く,透析中に一時的な血圧低下も経験しない群.

透析中に血圧が上がる患者もこの群に含まれる.

② 低下・回復群

透析前後比:0. 9 以上,最低下終了時比:0. 9 未満.

透析中に一時的な血圧低下があったが,終了まで に回復した群.

日本透析医会雑誌 Vol.19 No.1 2004 12

図 8 血圧変動パターンと年齢

高齢者では安定群と低下・未回復群が減少し,低下・回復群,大低下・小回復群が増加している.

(文献1より)

図 9 血圧変動パターンと透析歴

透析歴の長い患者では,低下・回復群が減少し,低下・未回復群が増加している.

(文献1より)

(15)

血圧管理と予後 13

図 10 血圧変動パターンと糖尿病

糖尿病患者は非糖尿病患者に比べて,安定群が少なく,大低下・小回復群が多い.

図 11 血圧変動パターンと体重減少率

体重減少率が大きいほど安定群は少なく,大低下・小回復群や低下・未回復群が多い.

図 12 血圧変動パターンと透析開始時血圧

開始時血圧が高くなるに従い,安定群や低下・回復群が減少し,大低下・小回復群や低下・未 回復群が増加する.

(16)

③ 大低下・小回復群

透析前後比:0. 9 未満,最低下終了時比:0. 9 未満.

透析中に血圧が大きく低下し,終了までに不十分 に回復した群.

④ 低下・未回復群

透析前後比:0. 9 未満,最低下終了時比:0. 9 以上.

透析中に血圧が大きく低下し,回復することなく 終了した群.

血圧変動パターンと年齢の関係を集計した結果を図 8 に示す.高齢者では安定群と低下・未回復群が減少 し,低下・回復群,大低下・小回復群が増加している.

透析歴との関係では,透析歴の長い患者では,低下・

回復群が減少し,低下・未回復群が増加している(図 9 ).安定群と大低下・小回復群は透析歴が長くなって もその割合にほとんど変化を認めていない.

糖尿病との関係では,糖尿病患者は非糖尿病患者に 比べて,安定群が少なく,大低下・小回復群が多い傾 向が認められた(図 10 ).低下・回復群は糖尿病で多 く,低下・未回復群は糖尿病で少ない傾向が認められ たが,顕著ではなかった.

体重減少率との関係では,体重減少率が大きいほど 安定群は少なく,大低下・小回復群や低下・未回復群 が多い傾向が認められた(図 11 ).

透析開始時血圧との関係では,開始時血圧が高くな るに従い,安定群や低下・回復群が減少し,大低下・

小回復群や低下・未回復群が増加する傾向が認められ た(図 12 ).

6 血圧変動パターンと予後

2001 年末に週 3 回の血液透析を実施されていた患

者を対象に血圧関連諸因子と生命予後との関係を解析 した.予後追跡の end poi nt に心不全死をとった解 析では,透析開始時収縮期血圧が 140mmHg 未満,

そして終了時収縮期血圧では 120mmHg未満と 180 mmHg 以上の両者に高い心不全死のリスクを認めた.

血圧変動パターンについて心不全死との関係を解析 した結果では,安定群を比較対象とした場合,低下・

回復群と大低下・小回復群に高い心不全死のリスクを 認めた.この結果は,透析中に一過性の大きな血圧低 下を経験する患者で心不全死のリスクが高いことを示 していると考えられた.

一方,同じ患者群を対象に,予後追跡の endpoi nt に心筋梗塞死をとった解析では,透析開始時収縮期血 圧,透析終了時収縮期血圧のいずれにおいても 100 mmHg未満の低い血圧の患者において高い心筋梗塞 死のリスクを認めた.

血圧変動パターンについて心筋梗塞死との関係を解 析した結果では,安定群を比較対象とした場合,低下・

回復群に高い心筋梗塞死のリスクを認めた.低下・未 回復群には有意なリスクを認めていないので,この結 果は,透析中大きく血圧が低下し,かつその血圧が終 了までに回復する患者で心筋梗塞死のリスクが高いこ とを示している可能性があると考えられた.

文 献

1) 日本透析医学会統計調査委員会:わが国の慢性透析療法の 現況(2001年12月31日現在);日本透析医学会,東京,2002. 日本透析医会雑誌 Vol.19 No.1 2004

14

(17)

要 旨

慢性透析患者の心機能障害の基本病態は,高血圧,

糖尿病,貧血,過度の透析間体重増加,酸化ストレス 増大,血管石炭化などに起因する左室リモデリング

(左室肥大,心筋間質線維化,冠動脈拡張予備能低下,

左室内腔拡張など)とこれに由来する左室拡張能の低 下にある.これは左室拡張終期圧・左房圧・肺毛細管 圧上昇を介して肺うっ血を発症させる.これに冠動脈 狭窄に伴う心筋虚血やカルニチン代謝異常などによる 左室収縮能の低下が加わり心不全が進展すると考えら れる.

はじめに

維持透析患者の死因の第一位は心不全,第二位が脳 卒中で,両疾患にはいずれも高血圧が大きく関与して いる.また近年,長期透析患者や高齢導入患者あるい は糖尿病性腎症透析患者の増加に伴い,透析患者の長 期予後決定に占める心血管系合併症の比重が一層増加 しつつある.

これまで筆者らは透析患者の心機能障害の頻度,そ の成因,病態,および予後との関係について検討を重 ねてきた.そして,慢性透析患者における心機能障害 の危険因子として左室肥大(LVH )が重要な意義を 有すること,また,LVH の発現には高血圧,貧血,

糖尿病(DM),加齢などが大きく関与することを報 告してきた.

本稿では,LVHの頻度および程度を胸部 X線像,

心電図および心エコー図の三つの方法により評価し,

さらにこれら評価法による LVHの検出感度の差異,

LVH 発症に関わる高血圧,酸化ストレスの意義,心 臓の収縮および拡張機能障害と LVHの関連などにつ いて教室の成績を中心に述べる.

1 心臓死とその危険因子

筆者らの教室関連透析施設における維持透析患者 367 例 (男 225 例, 女 142 例, DM 患者 89 例, 非 DM 患者 278 例)の 2 年間の死亡例 39 例のうち心臓 死は 10 例を占めた. この 2 年間における心臓死群

(n =10 )と,年齢をマッチさせた生存群(n =165 ) の背景を比較すると,心臓死群では生存群に比し,い ずれも有意に心エコー図上の LVHの指標である左室 壁厚および左室重量係数は大きく,大動脈弁石灰化

(エコー図上),胸部大動脈石灰化(X 線像上)およ び虚血性心疾患(IHD )の頻度が高い傾向を,血清 HDL コレステロール(HDL-C )レベルは低目の傾 向を示した(表 1 ).この成績は,心臓死に LVHの 存在が強く関与すること,加えて大動脈の石灰化や HDL-C低値,IHDの存在も一部関わっていることを 示唆するものと考えられる.

次に,胸部 X線上の CTR ≧50 %,心電図 SV

1

+RV

5

≧35mm ,心エコー図上の左室壁厚(IVSTd +PWTd

≧22mm ),左室重量係数 男性>108g/m

2

,女性>

104g/m

2

を LVH 有りの基準として,LVH (+)群

透析患者の心機能障害と高血圧 15

[透析医療における ConsensusConference2003]

透析患者の心機能障害と高血圧

菊池健次郎

旭川医科大学 第一内科

keywords :心機能障害,高血圧,左室肥大,慢性透析患者

Interrelationshipbetweencardiacdysfunctionandhypertensioninpatientswithchronichemodialysis FistDept.ofInternalMed.,AsahikawaMed.College

KenjiroKikuchi

(18)

と LVH (-)群の背景を対比した.その結果,LVH

(+)群では LVH (-)群に比して男性,高血圧,

IHD ,大動脈および大動脈弁の石灰化の頻度が有意に 高率であった.さらに LVHの程度と臨床諸量との相 関関係を検討すると,表 2 のごとくで,LVH と最も 強く正相関するのは平均血圧で,次いで年齢,除水率 がこれに次ぎ,ヘマトクリット(Ht )や血清アルブ ミン濃度(Al b )はむしろ負に相関する傾向を示した.

つまり,LVH形成には高血圧が最も大きく関与し,

これに加齢,除水率(透析間体重増加率)増大,貧血 などが関与するものと考えられる.

そこで,前述した胸部 X線上の CTR ,心電図,心 エコー図の 4 指標からみた透析患者の LVHの頻度を DM 群,非 DM 群に分け評価した.その結果,LVH の頻度は, DM, 非 DM の両群とも左室重量係数

(LVMI )を指標としたときに最も高く 93 ~95 % に達 し,次いで,心エコー図上の左室壁厚(54 ~69 %)で 高頻度で,胸部 X線上の CTR ,心電図では 43 ~60 % となり,心エコー図による評価が最も高感度であった.

したがって,心臓死の予測因子となる LVHの評価に は心エコー図を用いることが適切と考えられる.また,

DM,非 DM 群間の対比では,高血圧,IHDの合併 頻度は,いずれも非 DM 群に比し,DM 群で有意な 高率を示した(図 1 ).

2 左室肥大(LVH)と左室拡張・収縮能

LVH 形成時には,心筋細胞の肥大に加え,心筋間 質,特に心筋層内の小冠血管周囲の線維化促進が生じ,

日本透析医会雑誌 Vol.19 No.1 2004 16

図 1 高血圧(HT)および虚血性心疾患(IHD)の頻度

表 1 age-matched生存群と心臓死群間の背景の比較 生存群

(n=165)

心臓死群

(n=10) 年齢(歳)

除水率(%)

DMの頻度(%)

IHDの頻度(%)

HDL-C(mg/dl) PreMBP(mmHg) CTR(%)

胸部X線石灰化(%)

大動脈弁石灰化(%)

左室壁厚(mm)

左室重量係数(g/m2

64.2±8.3 3.9±1.7

35.8 14.5 40.6±12.9 104.7±13.2 50.7±5.0

66.3 50.6 22.7±3.5 187.6±61.0

63.9±9.2 4.2±1.2

40.0 30.0 34.1±9.7 100.3±16.5

52.0±6.1 90.0 80.0 26.3±5.3 227.3±42.0

p=0.926 p=0.524 p=0.788 p=0.191 p=0.139 p=0.317 p=0.419 p=0.121 p=0.072 p<0.003 p=0.044

(mean±SD)

表 2 左室肥大と年齢,透析期間,除水率,平均血圧,ヘマトクリット(Ht)値 および血清アルブミン(Alb)値との相関

年 齢 透析期間 除 水 率 平均血圧 Ht Alb 胸部X線像

CTR

r=0.281

p<0.001 ― r=0.161

p<0.05 ― r=-0.134 p<0.05

r=-0.198 p<0.01 心電図

SV1+RV5 ― r=-0.169 p<0.01

r=0.146 p<0.05

r=0.369

p<0.001 ― r=-0.144 p<0.05 左室壁厚

IVSTd+PWTd

r=0.166

p<0.01 ― r=0.142 p<0.05

r=0.317 p<0.001

r=-0.136

p<0.05 ― 左室重量係数

LVMI

r=0.178

p<0.01 ― ― r=0.219

p<0.001 ― ―

心エコー図

(19)

これは冠動脈の拡張予備能を低下させ,心筋虚血を誘 発する.これらの変化に加え,透析間体重増加率の増 大や貧血などによる左室内腔の拡張などを含め心筋リ モデリングと呼び,これらは,いずれも心不全や IHD , 突然死の大きな危険因子となることが明らかにされて いる.

そこで, M モード心エコー図による左室駆出率

(LVEF ),左室円周短縮率(%FS )に加え,パルス ドプラ心エコー図による左室流入血流波形の E/A比,

等容拡張時間(IRT ),カラー M モードドプラ法によ る左室内血流伝播速度(FPV )などによる左室拡張 能を評価した(表 3 ).そして,これら指標を明確に

計測しえた非 DM 群 42 例を LVH (+)群と LVH (-)

群に分け,これら指標を比較した.

その結果は, 表 4 のごとくで,LVH (+)群では

(-)群に比し,いずれも有意に収縮期血圧 SBP ,左 室径(LADI )は大で,かつ,E/A 比,IRT ,FPV などの拡張能の指標はいずれも有意な低下を示した.

しかし,収縮能の指標である EF ,%FS は両群間で 有意な差違を示さなかった.そして,LVHの指標で ある左室重量係数は拡張能の指標である E/A比と有 意に負に相関した(図 2 ).加えて,LVH (+)群で は LVH (-)群に比し,透析前および後の心房性ナ トリウムペプチド(ANP ),脳性ナトリウムペプチド

(BNP )値はいずれも有意な高値を示した.つまり,

LVH の存在は,まず左室拡張能の低下をもたらし,

これは左房径の拡大や ANP ,BNP の上昇を生ずると 考えられる.

透析患者の心機能障害と高血圧 17

表 4 透析前の心機能―nonDM 群において左室肥大(LVH)の有無による比較―

LVH(-)

(n=31)

LVH(+)

(n=11) SBP(mmHg)

HR(bpm)

LADI(mm/m2) LVDdl(mm/m2) LVEF(%)

%FS(%)

E/A IRT(msec) DcT(msec) S/D

FPV(cm/sec) IVCCI

148.8±22.5 69.6±9.2 25.6±3.2 34.0±3.4 76.0±7.9 38.6±6.9 0.88±0.35 91.2±32.3 238.0±66.5 1.66±0.51 43.5±12.1 57.1±15.5

170.4±26.0 63.5±8.1 27.9±3.0 35.6±3.1 79.9±6.8 42.1±6.3 0.61±0.16 124.6±24.6 287.7±64.3 2.04±0.64 30.5±5.7 52.4±14.7

p<0.05 n.s.

p<0.05 n.s.

n.s.

n.s.

p<0.05 p<0.01 p<0.05 n.s.

p<0.05 n.s.

(mean±SD) 表 3 方法(1)

検討項目

1. Mモード心エコー図

心室中隔壁厚+左室後壁厚(IVS+PW)

左房径係数(LADI=LAD/BSA)

左室拡張末期径係数(LVDdl=LVDd/BSA) 左室収縮末期径係数(LVDsl=LVDs/BSA) 左室駆出率(LVEF)†1

左室内径短縮率科(%FS)†1 2.パルスドプラ心エコー図

左室流入血流速波形(LVIF)

拡張早期波高/心房収縮期波高(E/A)†2 等容拡張時間(IRT)

肺静脈血流速波形(PVF) 収縮期波高/拡張期波高(S/D)†2 3.カラーMモードドプラ法

左室内血流伝播速度(FPV)†2 4. Bモード心エコー図

下大静脈虚脱率(IVC CI)†3

†1 収縮性の指標

†2 拡張性の指標

†3 前負荷の指標 図 2 慢性透析患者における左室肥大と左室拡張機能(E/A)

(20)

3 心不全の既往と左室機能

最後に,心不全(CHF )の既往を有する CHF (+)

群と,これを有さない CHF (-)群で心機能の諸指 標を対比すると表 5 のごとくで,CHF (+)群では CHF (-)群に比し,左房径(LADI )は大きく,左 室拡張能の低下(E/A比・FPV低値,IRT ・S/D高 値)を示したが,左室収縮能(LVEF ,%FS )には両 群間で有意な差異は認められなかった.一方,左室重 量係数と左室収縮能の指標である左室駆出率の相関を 検討すると,DM 群(n =74 ,r =-0. 300 ,P <0. 01 ),

非 DM 群(n =250 , r =-0. 355 , P <0. 001 )のいず れにおいても両指標間に有意な負の相関が認められた.

これらの成績をまとめると,維持透析患者では高血 圧に起因する左室重量係数増大,左室・左房内腔拡大 を伴う頻度が高く,これらを有する例では,まず左室 拡張能が低下し,透析間体重の過度の増加による容量 負荷や貧血,頻脈などにより左室拡張終期圧・左房圧・

肺毛細管圧上昇をもたらし,肺うっ血(心不全)を発 症すると考えられる.そして左室肥大の持続は冠拡張 予備能の低下や冠動脈硬化に伴う心筋虚血(無症候性 のことも少なくない)と相まって,左室収縮能の低下 を惹起し,さらに心不全発症が助長されると推察され る.

4 高血圧管理と左室肥大退縮

これまで述べたように,心機能障害・心不全の準備 状態である LVH ・左室リモデリングを退縮させるた めには厳格な高血圧管理が不可欠である.適切な体液

管理・ドライウエイトの設定と透析前座位血圧の 140/90mmHg 未満へのコントロールが勧められる.

透析患者の高血圧の成因には体液量増大・細胞内 Ca

2

増加が大きく関与するが,レニン・アンジオテンシン

(RA )系,特に組織 RA系の活性増大も推察されて いる.また,高血圧患者の LVH退縮効果は長時間作 用型 Ca 拮抗薬(CCB )とアンジオテンシン変換酵素 阻害薬(ACEI ),およびアンジオテンシン受容体拮 抗薬(ARB )が優れ,この三薬剤の効果は同等であ ることが Arnfri edらのメタ解析 (Am J Cardi ol , 115;41,2003 )により明示されている.したがって,

長時間作用型 CCBと ARBのそれぞれ単独および両 者の併用を基本とし,これで十分な降圧が得られない 場合には,ドライウエイト(目標体重)を下方修正す べきと考えられる.

透析患者では,酸化ストレスが増大しており,その 成因には,高血圧,糖尿病,脂質代謝異常,組織 RA 系の活性亢進,エンドトキシンなどを介する活性酸素 の産生増加と,グルタチオン,ビタミン C系など活 性酸素消去系の低下の両者が関与している.この酸化 ストレスの増大は血管内皮機能障害,動脈硬化,血管 壁石灰化,心筋障害などを促進する.厳格な血圧管理 自体にも酸化ストレス軽減作用があるが,RA系抑制 薬やアムロジピン,ニソルジピン,ニルバジピン,シ ルニジピン,アゼルニジピンなどの CCBにも抗酸化 作用のあることが指摘されており,これらとビタミン C ,スタチンなどの組み合わせも有用と考えられる.

日本透析医会雑誌 Vol.19 No.1 2004 18

表 5 透析前の心機能―心不全(CHF)の既往の有無による比較―

CHF(-)

(n=45)

CHF(+)

(n=10) SBP(mmHg)

HR(bpm)

LADI(mm/m2) LVDdl(mm/m2) LVEF(%)

%FS(%)

E/A IRT(msec) DcT(msec) S/D

FPV(cm/sec) IVCCI

155.9±26.8 70.5±12.0 26.6±3.9 34.3±3.7 76.4±8.8 39.2±7.7 0.82±0.32 97.6±32.6 255.4±74.8 1.63±0.44 44.5±12.3 55.2±16.3

167.4±22.0 69.3±10.8 29.7±3.7 34.9±4.5 73.6±6.6 36.3±5.2 0.58±0.25 119.9±26.2 241.5±62.6 2.33±0.75 30.8±6.4 54.4±16.7

n.s.

n.s.

p<0.05 n.s.

n.s.

n.s.

p<0.05 p<0.05 n.s.

p<0.05 p<0.05 n.s.

(mean±SD)

(21)

おわりに

以上,維持透析患者の心機能障害には高血圧,DM,

貧血,酸化ストレス増大などに起因する左室肥大・左 室リモデリングが重要な意義を有することを教室の成

績を中心に述べた.心機能障害の発症を防止する上で,

適切な体液管理・貧血管理下に抗酸化作用を有する RA系抑制薬や CCBなどを用い,厳格な降圧(透析 前座位血圧<140/90mmHg )を図ることがきわめて 重要と考えられる.

透析患者の心機能障害と高血圧 19

(22)

要 旨

透析導入患者では原因疾患がなんであれ,末期腎不 全から透析導入期において高血圧の合併頻度は高い.

高血圧を合併している透析患者の予後は不良であるが,

高血圧だけでなく,低血圧や大きな脈圧も予後に影響 を与えている.

透析患者の高血圧には多くの因子が関与しているが,

Na ・水の排泄が障害された体液量に依存した高血圧 が多い.自由行動下に透析患者の血圧を測定すると,

透析中の血圧変動は大きく,non-di pper が多く認め られ,このような患者では extremedi pper ,di pper に比較して体液量に依存した高血圧の可能性が高い.

Non-di pper ,i nverteddi pper には心不全,突然死が 多い.

透析患者では体液量依存型高血圧が多いことから,

適切なドライウェイトの設定が重要である.胸部 X 線検査,心房性 Na 利尿ペプチドの測定,下大静脈径 の計測,循環血液量の変化率,バイオインピーダンス の変化,総蛋白濃度の濃縮率を参考に決定する.透析 患者での Na ・水代謝異常は高血圧だけでなく心肥大 を出現,進行させ,予後に大きな影響を与えている.

はじめに

慢性腎不全が進行するとナトリウム(Na )・水代謝 異常が出現する.残存腎機能が低下した,もしくは消 失した透析患者では体液が蓄積し,このような過剰に

蓄積した体液を除去することが透析の目的の一つであ る.

透析患者では容量依存性(vol umedependent )の 高血圧と心肥大の合併頻度が高く,予後に大きな影響 を与えている.高血圧,心肥大の合併を減少させるに は Na ・水代謝異常の是正が必要であり,本稿では,

血液透析(以下,「透析」と略)患者の高血圧と低血 圧の特徴,体液管理に重要なドライウェイト(dry wei ght;DW)の捉え方,透析患者に特徴的な Na ・ 水代謝異常について概説する.

1 透析患者の高血圧の特徴

透析導入時の腎不全患者では原因疾患がなんであれ,

80 % 以上に高血圧が認められる.透析導入後に血圧 が正常化する患者も認められるが,現在,透析を受け ている患者の 57. 9 % が降圧薬を内服している

1

わが国で透析を受けている慢性糸球体腎炎患者(平 均年齢 60. 0 歳) の透析前の血圧は 151 ±23/80 ±13 mmHg ,糖尿病性腎症患者(平均年齢 63. 8 歳)の血 圧は 161 ±24/79 ±14mmHgと収縮期血圧が上昇し ている患者が多く,この傾向は糖尿病性腎症患者でよ り強く認められている

1

高血圧を合併している透析患者の予後は不良である が

2

,高血圧だけでなく,低血圧や大きな脈圧が予後 に重大な影響を与えている

3

透析患者の高血圧の発症には多くの因子が関与して いる.Na ・水の排泄が障害され,血圧が上昇する機

日本透析医会雑誌 Vol.19 No.1 2004 20

[透析医療における ConsensusConference2003]

透析患者の体液管理

大橋宏重

県立岐阜病院 腎臓内科

keywords :透析,高血圧,低血圧,体液管理

Thecontrolofbodyfluidinpatientswithhemodialysis PrefecturalGifuHospital,DivisionofNephrology HiroshigeOhashi

(23)

序が大きな役割を演じている.体液量の増大は心送血 量を増加させ,血圧を上昇させる.また,体液量の増 加は内因性ジギタリス様物質の産生を増加させ,交感 神経系を亢進させるだけでなく,細小動脈壁のカルシ

ウム(Ca )濃度を上昇(末梢血管抵抗の増大)させ,

高血圧の発症に関与している

4

.腎血流低下によるレ ニン・アンジオテンシン系の亢進が末梢血管抵抗を増 大させ,高血圧を発症させる機序(reni ndependent;

透析患者の体液管理 21

表 1 血液変動パターンによる高血圧を有する透析患者の特徴 変動パターン

non-dipper dipper extremedipper

症例数 年齢(歳)

透析期間(月)

左室心筋重量(g/m2) 左室駆出率(%)

ANP(pg/ml) BNP(pg/ml) Kt/V

アルブミン(g/dl)

34(60.7%)

62.5±11.8 28±11 148±23 61.2±7.6

192±18※※

418±149 1.5±0.2 3.6±0.3

14(25.1%)

60.8±7.4 27±17 152±19 62.4±8.2

128±46 427±135

1.6±0.3 3.6±0.4

8(14.2%)

69.5±8.2 31±11 145±23 61.9±8.6

124±51 356±176

1.4±0.5 3.5±0.2

※ p<0.05,extremedippervs.non-dipper,dipper

※※ p<0.01,non-dippervs.dipper,extremedipper

図 2 高血圧を有する透析患者の血圧変動パターンと生存率の関係(N=56)

図 1 48時間携帯型血圧測定による透析患者の血圧(N=56)

(24)

レニン依存症)も提唱されている

5

.いずれにしろ,

透析患者では体液量に比べ,レニン分泌が不適当に亢 進している状態と考えられている

5

さらに,透析患者では交感神経系の亢進

6

,血管内 皮細胞障害によるエンドセリンの上昇

7

,副甲状腺ホ ルモンの増加(血管壁内の Ca 濃度の上昇)が高血圧 発症に関与している(昇圧系の亢進)

8

.また,細小 動脈を拡張し,降圧的に作用する一酸化窒素(NO ) とプロスタグランジンの産生低下も血圧上昇に関与し ている(降圧系の減弱)

5

.透析患者では NO合成を 阻害する asymmetri caldi methyl argi ni ne が上昇し ていると報告されている

9

.エリスロポエチンの投与

10

, 大動脈の石灰化・弾性の低下も高血圧発症に関与して いる

3

透析中の血圧変動は大きく,透析前の血圧が最も高 く,透析後の血圧が最も低い(図 1 ). 48 時間連続して 血圧を測定すると, non-di pper;60. 7 %,di pper;25. 1

%,extremedi pper;14. 2 %と昼間の血圧に比較して,

夜間降圧しない non-di pper が最も多く認められた.

Non-di pper では左室心筋重量,脳性ナトリウム利 尿ペプチド (brai n natri ureti cpepti de;BNP ) が di pper ,extremedi pper と比較して有意差を認めて いないにもかかわらず,心房性ナトリウム利尿ペプチ ド(atri alnatri ureti cpepti de;ANP )が上昇して いることから体液量依存性の高血圧の可能性が高い

(表 1 ).なお,non-di pper では心不全,突然死が,

extremedi pper では脳梗塞が多く認められた(図 2 ).

以上より透析患者の高血圧は収縮期血圧が高く,

non-di pper が多いという特徴を有していた.収縮期 血圧が 140mmHg以下に調節されている期間が長け れば長いほど,心肥大の少ないことが報告

11

されてい ることから,家庭血圧値を参考にしながら,透析前の 座位血圧で 140/90mmHg 以下が目標血圧値になる ものと思われる.

2 透析患者の低血圧の特徴

透析患者の低血圧を持続性低血圧と透析時低血圧に 大別することができる.

持続性低血圧は冠動脈疾患を合併した糖尿病性腎症 患者に多く認められた.透析期間が長く,左室収縮機 能が低下した心肥大患者が多く,ANPならびに BNP が上昇していた.また,透析効率が低下し,低アルブ

日本透析医会雑誌 Vol.19 No.1 2004 22

表 2 持続性低血圧を有する透析患者の特徴 収縮期血圧低下

(+)

N=10

収縮期血圧低下

(-)

N=10 収縮期血圧(mmHg)

拡張期血圧(mmHg) 年齢(歳)

透析期間(月)

冠動脈疾患(%)

左室心筋重量(g/m2) 左室駆出率(%)

ANP(pg/ml) BNP(pg/ml) Kt/V

アルブミン(g/dl)

96.2±6.8※※

68.2±10.5※※

62.4±6.8 68±14※※

60※※

196±24※※

46.2±13.8※※

224±56※※

524±263 1.16±0.24

3.2±0.4

158.4±18.6 78.2±14.7 60.5±8.6

36±11 20 148±24 61.8±15.6

129±60 324±215 1.43±0.18

3.8±0.4

※ p<0.05 ※※ p<0.01

図 3 透析時に血圧が低下する透析患者の baroreflexsensitivity

図 4 透析患者での透析前ならびに血圧低下時の 血中ノルアドレナリン値

図 1 血液透析患者の透析前後での収縮期血圧による心血管系疾 患を含む死亡の相対危険率
図 1 48時間携帯型血圧測定による透析患者の血圧(N=56)
図 6 生存例と死亡例の透析経過中の収縮期血圧の変動の比較
図 12 透析終了直後の起立試験における起立性低血圧症状の有無と血漿 norepi nephri ne(NE)濃度の変動の関連
+7

参照

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