日本透析医会雑誌
[巻 頭 言]
透析医療費について 日本透析医会副会長 吉 田 豊 彦…247
[保 険 審 査]
透析保険審査委員懇談会について ― 第
8
回透析保険審査委員懇談会報告―日本透析医会適正療法委員会 医療経済部会部会長 吉 田 豊 彦…249
[医 療 経 済]
透析医療はどこへ向かうのか 札幌北クリニック 大 平 整 爾…255
[医療安全対策]
宮城県沖および宮城県北部を震源とする地震における災害情報ネットワークの活動報告
日本透析医会医療安全対策委員会 災害時透析医療対策部会情報ネット本部 武 田 稔 男 吉 田 豊 彦
同副本部 森 上 辰 哉
災害時透析医療対策部会部会長 申 曽 洙
医療安全対策委員会委員長 杉 崎 弘 章…264 透析施設における
SARS
対策 増子記念病院 山親 雄…278 透析医療における医療安全管理対策 ― 具体的促進に向けて ―
春日井市民病院 渡 邊 有 三…286 中国ブロック
5
県における透析医療災害対策岡山県医師会透析医部会 笛 木 久 雄 菅 嘉 彦 西 崎 哲 一 草 野 功
島根県透析医会 鈴 木 恵 子
鳥取県透析懇話会 谷 口 宗 弘
広島県透析連絡協議会 辰 川 自 光
山口県透析医会 前 田 日出三…293
[臨 床 と 研 究]
長期透析患者の視覚障害 社会保険中京病院 眼科 黒 川 智 子…303 血液透析患者における閉塞性動脈硬化症の診断と治療
板橋中央総合病院 腎不全外科 赤 松 眞 阿 岸 鉄 三
同臨床検査科 日向野 智 香…310 腎臓再生医療 日本大学医学部内科学講座内科二部門 岡 田 一 義
福 田 昇 松 本 紘 一…318 慢性血液透析患者における脳血管障害 九州大学病院 腎疾患治療部 平 方 秀 樹…327
目 次
透析医療と
Pi tfal l
― 感染と事故と感染性廃棄物 ―増子記念病院 山
親 雄…337 これからのブラッドアクセス維持管理について社会保険中京病院透析療法科 天 野 泉…345 慢性腎不全患者における副甲状腺ホルモンと骨代謝
財団法人鷹揚郷腎研究所 寺 山 百合子 舟 生 富 寿
財団法人鷹揚郷腎研究所弘前病院 佐 藤 元 昭 百 瀬 昭 志
弘前大学医学部泌尿器科 高 橋 信 好…351
[研究助成論文]
血液透析における透析液中エンドトキシンの挙動
大阪市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学 土 田 健 司 武 本 佳 昭 吉 村 力 勇 仲 谷 達 也…358
[た よ り]
長崎県透析医会の設立にあたって 長崎県透析医会会長 新 里 健…367
岩手県支部だより 岩手県透析医会会長 後 藤 康 文
地ノ森クリニック 木川田 典 彌…369
福岡県支部だより 福岡県透析医会会長 隈 博 政…371
常任理事会だより 日本透析医会常任理事 山 川 智 之…376 投稿規定 379
編集後記
岡 德 在…380お知らせ
(社)日本透析医会研修セミナー案内 366 学会ご案内 374
誰が考えても,毎年
1
万人を超えて増加する透析患者の医療費を,現行の保険制度で賄ってい くのは困難で,一つの公的保険でその総枠が決められている以上,透析医療費のみが突出するこ とは許されず,ある一定枠内に押さえ込まれていくのは,どうしようもない現実ととらえている と思う.このまま推移すれば2017
年にはどうなるか,近々日医総研の透析医療のグランドデザ インで明らかにされる予定である.総医療費の中で,一定枠内に押さえ込まれる透析医療費で,現在の透析医療の質を維持してい くための対策を含めて,以下の問題点をあげてみた.
1
. 患者増を抑える.① 透析の原因疾患の発生を抑制し,その治療をより充実させて,透析への移行を減らす努力 をさらに推し進めていくこと.
② 移植の推進を強力に進めること.
③
75
歳以上の高齢者保険制度で,透析医療をどう扱うか,国民的議論を行い対処しておくこ と.高齢者医療においては,尊厳死の選択の自由もあってよいのではないか.現状では,たと え本人が透析医療を望まなくても,家族や周囲が延命の手段がある以上,それをせずに死を 迎えるのは罪悪と考え,透析に導入している.いわゆる老衰死も認められず,透析に導入さ れている現実がある.
透析に導入された高齢者は,一部を除き家族や社会の手厚い介護を必要とし,本人はいつ も迷惑を掛けてすまない,申し訳ないと詫びながら,週
3
回苦しい透析を続けて生きていっ ている.その姿は,見方によれば地獄の鬼が寄ってたかって,「まだまだこれ位では楽にさせ てはやれないぞ,もっともっと苦しめ.」と言っているようにも見える場合がある.また,以前生命維持装置につながれた植物人間の透析導入のレセプトを見たことがある.
植物人間となってから年余の時間が経ち,腎不全を合併した症例で,無論延命のためのみに 透析を行った症例である.
今ここで,国民全体が「何故の透析か」という命題を真剣になって討論する時期にきてい ると思う.現在のように,ただ単に延命のためのみに透析を続けなければいけないのか,終 末期医療の問題も絡んでくるとは思うが,倫理面や生命観の問題も含めて議論して決めてい かねばならないと思っている.
透析医療費について
(社)日本透析医会
副会長
吉田豊彦
[巻 頭 言]
安易な方法としては,高齢者医療保険における透析医療費を週
2
回のマルメの点数に制限 するとか,自己負担を1
~2割にするなどの仕方があるが,「何故の透析か」を充分討論して からにして欲しい.④ 透析医療の“自己負担の増加”をすること.
仮に透析医療費の
1
~2割が自己負担となった場合は,導入も維持も激減することは目に見 えている.これは,透析医療の普及の歴史を振り返ってみればすぐわかることで,昭和46
年 以降,特に更生医療の適応となってからの伸び率がこのことを証明している.2
. 透析医療費に占める保険医療材料費と薬剤費の比率を引き下げる.① 現在,保険医療材料費と薬剤費が透析医療費に占める割合は,37~40% 弱と思われ,引き 下げる余地がある.
② マルメにした場合,その比率は激減する.
以上が一定枠内の透析医療費で,透析の質を担保していくための消極的な方策であるが,われ われはこのまま坐して見守っていってよいものであろうか.新たな医療財源の投入を考えなけれ ば,じり貧となっていってしまうのではないかと思う.
このまま経済が回復せず,GDPの伸び率が年間
1
~2% に推移し,現行の保険制度の「混合診 療の禁止」が守られ,新しい医療財源が得られぬと仮定した場合,今までの透析患者増が続くな ら,透析医療費が1
人1
カ月当り30
万円という時代がくるかもしれないのである.そうなった 場合の透析医療の質の低下は,想像するだに,ぞっとする程のものとなるであろう.透析施設の 経営は成り立たなくなり,全国の大半の施設が寡占化されるため,患者の選択肢も無くなり,荒 廃した透析医療の姿が現出することとなろう.そうなるのを防ぐためには,透析患者増を抑えることと,ここでは述べぬが,新しい医療財源 投入ができる医療保険制度を創設することが必要である.それまでは,透析医療の質をできるだ け維持していけるような保険改定を行っていかねばならない.具体的には標準透析を下回る短時 間透析は,減算方式を取り入れるとか,透析不足や水処理不足による合併症が多発している施設 には,厳しい保険改定となるようにしていかなければならないと思っている.
質を維持しつつの透析医療費のマイナス改定で,まず第一に手をつけるのは,保険医療材料費 と薬剤費の引き下げである.関係各方面からの抵抗が強いことは予想されるが,政治力に抗して もやり抜かねばならない.透析の技術料は,質を担保するための最後の砦である.ここに手をつ けるようなマイナス改定は絶対やってはいけないことである.
はじめに
第
8
回透析保険審査委員懇談会が平成15
年6
月21
日(土),大阪のリーガ・グランドホテルにおいて 出席者34
名で開催された.この懇談会は,全国の透析保険審査委員が年に一度 学会時に集まり,日頃の透析審査上の問題点を討論し,
少しでも日常の審査に役立たせられたらという目的で 始めた会である.(社)日本透析医会の干渉はもとよ り,ほかからもなんの影響力も受けない独立した自由 な会であるということ,討論事項が,各審査会の独立 性をなんら拘束するものではないということを申し述 べておく.事前に行ったアンケートは,平成
14
年4
月のドラスティックなマイナス改定の影響によるもの か,過去7
回には見られなかった多数の回答を得た.その内容は,検討事項,要望事項ともに具体的であり,
有意義な会となった.
1
検討事項検討事項については,当日の会議の議題とし,最近 の透析の保険診療上の問題点,疑問点,提案に関する 事項を,診療行為別にまとめて討議を行った.以下に
提出都道府県数 問題点・疑問点・提案内容 討議結果の順で記載する.
<指導管理料>
①
1
県 特定疾患療養指導料または老人慢性疾患生活 指導料を慢性維持透析患者外来医学管理料(以 下慢透と略す)とは別に請求することは正当で あると考えていますが,全国ではどのように請 求していますか. 特定疾患療養指導料を算定すべき主病名群に 腎不全が入っていないことが算定できない原因 となっている.②
1
県 慢透2, 670点を算定時,胸部単純撮影は包
括されるが,画像診断管理加算等Ⅰなどは問題 なく算定できますか. 算定できる.③
2
県 慢透に包括されない検体検査を算定する場合 には,その必要性をレセプトに記載するとある が,どの程度の説明が必要ですか. 大半の県で,レセプトの摘要欄にその検査の 必要性を簡単にコメントしてあれば通している.病名欄ではっきりわかっている場合は認めてい る県もあった.
④
1
県 糖尿病患者における頻回の血糖測定に関する 請求をいかにしていますか. インシュリン投与中の入院患者では月に90
~120回認めている所が大半.60回までと透析保険審査委員懇談会について
第 8 回透析保険審査委員懇談会報告
吉田豊彦
[保 険 審 査]
(社)日本透析医会適正療法委員会医療経済部会部会長
いう県も
2
県あった.<在宅医療>
①
1
県 初診時に行う検査で査定される下記の項目に ついて.・感染症の有無(梅毒血清反応,HCV抗体)
・PTH精密
是非必要かと思いますが,全国ではいかがで しょうか.
提出県を除いて,全県で通しているが,血型 に関しては算定不可が4
県ほどあった.②
1
県 在宅自己注射指導管理料を算定する薬剤名,加算などに使用する材料の一覧表をつくっては どうでしょうか.
青本P317
保発(1)に規定されている.<検査・画像診断>
①
1
県 シャント血管拡張術(PTA)の際の血管造 影手技料を認めているか,また血管造影用カテー テル使用時の特殊血管造影加算(640点)を認 めているか. 鎖骨下静脈の拡張以外のPTAは内シャント
血栓除去術(3,130
点)となったため,K613 のしばりが無くなり,血管造影手技料は請求で きるという解釈で問題は無いとしている県が大 半.また,E003
(P287)保発(3)の特殊血 管造影加算(640点)は算定不可としている所 が大半であった.②
1
県AL- Pの 骨 型 ア ル カ リ フ ォ ス フ ァ タ ー ゼ
(BAP)の算定について.
パルス療法中なら,開始と4
~5カ月後に1
回位なら認めている県が大半.画一的には認め られない.③
2
県 動脈硬化の病名の下で脈波図(PWV)を集 中的に施行している医療機関があり,対応に苦 労している. 画一的でなければ,せいぜい6
~12カ月に1
回測定する位なら認めるという県が大半.④
1
県 尿沈渣で染色加算(10点)が認められてい るが,腎疾患に関してどうしているか. 尿路感染症の病名があれば全部認めている.そのほかの場合は,症例による.
⑤
1
県 鉄欠乏性貧血,二次性副甲状腺機能亢進症でi ntact- PTH
,フェリチンを月1
回測定してよ いか.3~6カ月に1
回しか測定できないと聞 いているが本当か.当県では毎月測定しても査 定されたことがない. 入院患者なら毎月測定しても査定している県 は1
県もない.⑥
1
県CAPDで月 2
回以上受診する際の検査,画 像診断を減点しないでほしい. 大半の県で査定していない.⑦
1
県 透析医会の提示する(また,厚生労働省版に よる院内感染マニュアルが提示する)指針通り に半年に1
回,HBs抗体をチェックしている が,注釈をいれても減点されてくる.HBs
抗原のチェックなら全県で通している が,抗体の場合は認めている所が半分,否認し ている所が半分である.⑧
1
県 骨代謝マーカー(オステオカルシン)の請求 について. 医科点数表の解釈に,手術適応の決定と術後 の治療効果判定の場合にのみ算定すとあるので,そのコメントがあれば大半が通している.
⑨
1
県 内シャントエコーについて,D215 2ロの350
点を認めているか. 認めているとした所が8
県あったが,ヨー ドアレルギーのある場合以外,大半は認めてお らず,D215 4イの末梢血管血行動態検査20
点として認めていた.⑩
1
県 定期的な検査, 特にi ntact- PTH
,β2- Mg
(特に前後
2
回やったとき),肝炎ウイルス検査などが時々査定される.
ダイアライザ変更時,前後2
回のβ2- Mg
は 認めている所が大半.⑪
1
県 フェリチン,β2- Mgを月 1
回定期検査に組 み込んでいる施設がある. 年に数回程度なら大半が認めている.<投薬・注射>
①
4
県 外来透析患者の処方回数について,多くの合 併症を有するので,投薬の種類,錠剤が多くな るが,これが査定されることがある. 分割処方(たとえば月に14
回)は望ましく ないが,止むをえないとして大半の所で査定し ていない.②
1
県 透析患者の投薬,注射においては,通常認め られているより,投与回数,投与量が減る場合 が多いので,審査で透析患者の投薬の特性とし て認めるべきである. 特に抗生物質などの減量投与などは医学的に 妥当.③
1
県 カルタン錠の上限について15
錠くらいと考 えているが,いかがか. 通常,薬の適宜増減は1. 5
倍程度であるが,ある県では,12錠までとしている所もあるが,
大半は
2
倍以上まで認めている.④
1
県 オキサロールまたはロカルトロール投与中の 高カルシウム血症に対し投薬中止せず,長期間(数カ月以上)のエルシトニン
40
単位投与は 是か非か. 薬効から考えると意味が無い.また,高カル シウム血症でのOCT投与は矛盾する.大半で
認めていない.⑤
1
県 透析患者の骨粗鬆に効果判定をほとんどせず,漫然と長期(1~10数年)にエルシトニンを投 与することは認められるか.
通常,骨粗鬆の病名がある場合,レセプトは単月で審査しているので,大半が認めているが,
この場合は認められない.
⑥
1
県 患者が自宅での低血糖発生時の救急処置など にグルカゴンGを処方した場合,皮下注射の
手技料は算定できるのか,その際注記が必要か. グルカゴンの自己注射が許されているのかど うかが問題点となる.また,自己注射には手技 料はつかない.⑦
3
県 透析中の,たとえば「5% ブドウ糖液20ml
+フェリコン,生理食塩液
20ml
+エルシトニ ン」などに対して,TZ,生理食塩液の別途請 求が認められていないが,これは注釈にある回 路の洗浄,充填,血圧低下時の補液,回収に使 用される生理食塩液などとは違うと思うが. 平成6
年4
月20
日の日本透析医会ニュース に詳細が載っている.外来透析での局所ヘパリ ン化に用いられる硫酸プロタミンや,この溶解 剤としてのブドウ糖,生理食塩液あるいは,フ ラグミンなどに関するブドウ糖,生理食塩液な どは算定できないが,透析中に生じた低血糖を 改善するためにブドウ糖液を使用した場合や,筋痙攣時の塩化カルシウム液,抗生物質などの 溶解液は薬剤料として別途算定できる.したがっ て,この場合は大半で認めている.
⑧
5
県 エ リ ス ロポエ チ ン 投 与基 準に つ い て ,Ht
>30% でも投与可能か.エスポー,エポジ ン3, 000
単位×週3
回投与は認められるか. 全県でエポを査定している所はなかった.た だし,レセプトに開始時と当月のHt
値を記載 させている県が7
つあった.⑨
1
県 フルスタン◯Rの投与が2/
週または3/
週投与 であれば,VDパルス療法とみなされるか. 内服なので,パルス療法としては認めていな い所が多く,認めている県は2
つであった.⑩
1
県HDFの補液量はどれくらいまで許されるか.
薬事法上の規定量.ただし,適宜増減を考え,1
回20 l
くらいまでか.⑪ 1 県
院外処方での特定疾患処方管理加算 15 点
(月 2 回まで,診療所,200 床未満の病院)は 算定できないか.他府県では認めている所があ る.
腎不全は,特定疾患療養指導料の対象主病名 ではないので,併せて算定できない.
⑫ 1 県
透析回路よりの注入か,別の注射か判断でき ず手技料が査定される.
透析回路以外の静脈注射手技料は,透析以外 での投与の必要性などのコメントが必要である.
大半が認めている.
⑬ 1 県
ノルバスク(5mg )2 錠は,査定されること がある.
注記があれば,2 倍量まで認めている所が大 半である.ただし,蓄積性があるので,その分 考慮しながらの使用方法が必要である.
⑭ 1 県
禁忌薬剤について,国保では原則として認め ていないが,腎不全には禁忌となっている薬剤 が多く,今後透析患者に使用できる薬剤の選択 範囲が狭くなっていくのではないかと心配して いる.腎不全に禁忌となっている薬剤が使用さ れている場合の取扱いについてお尋ねします.
たとえば,NSAIDを胃潰瘍に使用している場 合,NSAIDを透析前の腎不全に使用している 場合,NSAIDを透析患者に使用している場合.
出血性胃潰瘍やプロトンポンプ阻害薬投与中 の場合は査定するが,落ち着いていると思われ る状況なら認める.透析前の腎不全や透析患者 に使用している場合も大半は認めている.
<処 置>
① 1 県
CAPDと HDの併用例について HDがメイ ンの場合の CAPD算定の対処.
ルールに従い,併用を認めている所が大半で ある.
② 1 県
外来透析の出来高での抗凝固薬(フサンなど)
の使用を,生命に危険を及ぼす程度の重篤な出 血性合併症(頭蓋内出血,消化管出血)と重大 な視力障害にいたる可能性が著しく高い,進行 性眼底出血以外に認めているか.
コメント(AT Ⅲ欠乏症,シックハウス症候 群等々)があれば,止むをえず認めているとし た所が大半.
③ 1 県
フラグミン,フサンなどの抗凝固薬が 1 瓶 に減点されたことがある.ほかはどうしている か.
フサン透析は,フサン 30 ~50mg/ 時間,1 日 24 時間で,最大 50mg ×16 瓶認めている 所が大半.4 時間透析の場合,実使用量 50m g ×4 時間 認めている所が大半である.
④ 1 県
外来透析で,下肢壊疽のガーゼ処置を毎回し ていても,算定できないがどうしているか.
コメントがあれば通しているのが大半.制限 を設けている所は無かった.
⑤ 1 県
透析時間の条件撤廃に伴う透析液量の制限は 行っているか.
透析液の請求量は,実使用量が原則である.
今のところ,大半の所で透析液量算定の変更は
みられていないので,思ったより短時間透析に 移行していないのではないか.<手
術>① 1 県
シャントトラブル時の PTA複数回施行間隔 をどのくらいとしているか.
PTAの手技料が 3, 130点になってからは,
症状詳記が妥当なら特に制限していない所が大 半である.下手だからという理由で月に 2 回 までとしている所が 2 県あった.
② 1 県
ネックレスの手術点数は何点にしているか.症例により,K611 の 4 または 5 としている.
主として心臓血管外科での手術で,透析施設で は行われていない.
③ 1 県
④
1
県 シャント造設術と血栓除去術とが同一月に,複数回におよぶと減点される.
複数回行ってもコメントが妥当なら査定して いる所は無かった.⑤
8
県PTAの算定方法が血栓除去術 3, 130
点となっ たが,項目名としても妥当でないので,四肢の 血管拡張術15, 800点で算定するようにしても
らいたい.だめなら,新点数の設定を. 今年より四肢の血管拡張術では算定できなく なったが,血栓除去術ではあまりに不合理だと 大半の所で思われている.2
要望事項アンケートの要望事項については,平成
15
年6
月13
日(金)に開かれた(社)日本透析医会常任理事 会と第4
部会と第7
部会との合同会議において討議 し,基本的考え方についての合意を得て,具体的要望 事項について取りまとめた.さらに,これを平成15
年6
月21
日(土)の(社)日本透析医会支部長会議 にかけ,そのほかの要望も加えてまとめ,(社)日本 透析医会の具体的要望事項とした.要望事項についても診療行為別にまとめて報告する.
提出都道府県数 要望内容<基本診療料>
①
1
県6
月からの再診料逓減制廃止に伴い,点数が 下がったことは理解し難い.一人当たり2, 400
円/年の減収となった.②
1
県 マルメは止むをえないとしても,適正職員数(ドクター,ナース,技師,補助など)を明記 できないか.
③
1
県 入院透析患者の選定療養非該当条件の「寝た きり度」ランクB以上を A以上としてほしい.
④
1
県 特定長期入院に人工腎臓(2/W以上)は認 めているが,CAPD患者は認められていない.合併症のため通院不能の者もいるので,同様に 認められるようにしてほしい.
⑤
1
県 透析患者の高齢化が進み,より手間がかかる ようになってきているので,スタッフの人件費 も考えて上げてほしい.<指導管理料>
①
1
県 慢透は,減算方向でしか認められていないが,むしろ増点方向で考えていくべきでは.
②
1
県 慢透に包括されている検査が多すぎる.<在宅医療>
①
1
県 透析の通所サービスで,外来透析が維持され ている患者が益々増加しているので,診療報酬 面でのバックアップはできないか.②
1
県CAPDにおけるナースの役割に対する点数
の設定.③
1
県 高齢透析者の介護保険1割負担の軽減処置
はできないか.④
1
県CAPDは点数が上昇しているが,在宅血液
透析は見直しが無い.在宅血液透析は今後無く なるのでは?⑤
1
県 新しいオートプライミングシステム(返血の 生理食塩液も透析液の輸液として使用し,安全 性とクリーン度が,より高まる帝人の在宅透析 システム)の点数設置.<検 査>
①
1
県 慢透に含まれない検査が査定されるケースが 多いので,もっと包括範囲を拡げるべきでは.<処 置>
①
3
県 緊急時ブラッドアクセス用留置カテーテル(ダブルルーメンカテーテル)を設置する手技 料の新設.(IVHの手技料:G005 2:1,
400
点と変わらないはずですが.)②
10
県 改定前の透析時間制復活を強く望む.<手 術>
①
5
県 難しいシャントや人工血管を用いた内シャン ト作成術が急増しているので,手術料を年々下 げるのでなく,逆に上げていくべきだ.②
4
県PTAが 3, 130
点では余りにも低い.看護師,X線技師,フィルム代,シース,インデフレー
タなどが全部赤字になるので,適正な新点数設 置を希望する.<特定保険医療材料>
①
3
県 ダイアライザーのPS
膜以外は3
型にまとめ,新点数を設定してはどうか.また,血液回路と 分け,各々価格を設定してはどうか.
②
3
県 とにかく高すぎる.医療費に占める保険医療 材料費が多すぎる.③
1
県 シャント作成時のフォガティカテーテル,イ ンデフレータが請求できないので,算定可とな るようにしてもらいたい.<その他>
①
1
県 透析医療費は莫大となっており,同様に集中 治療室の医療費も巨額となってきているので,年齢によって対処の仕方が異なってもよいので はないかという考え方もある.透析の導入年齢 についても検討されて然るべき状況になってき ているのではないか.尊厳死の選択が許されて もよいのではと思う.
<次期改定の要望事項>
①
12
県 透析の時間制の復活.ただ,経済的理由のみ での透析の短時間化は,極端に透析の質を低下 させるので,時間制を復活すべきである.②
2
県 ダイアライザーの再使用禁止.③
3
県 前回の改定での下げ幅が大きすぎたので,人 工腎臓処置料の見直し.④
2
県 感染廃棄物処理費用,事故防止対策費用,感 染防止対策費用を明確に診療報酬に反映させて ほしい.⑤
2
県 エンドトキシン処理費用の新点数設置.⑥
1
県 介護度2以上には,障害加算をつけてほし
い.<その他の要望事項>
①
2
県 審査委員による査定基準のばらつきが大きす ぎる.特に,エリスロポエチンについて統一し ていただきたい.②
2
県 透析の食事加算の復活.要 旨
わが国における腎機能代替療法は腎移植の伸び悩み から,慢性透析療法殊に慢性血液透析療法が主体となっ て経過してきている.
慢性透析療法が本邦に導入されて約
30
有余年が経 過し,この間,本療法は種々の領域で目覚ましい進歩・発展を遂げたと言えるであろう.技術的な進展が延命 を生み患者の社会復帰を促進したが,健康保険の適用 拡大により透析患者数は日本透析医学会が統計を取り 始めた
1968
年以降一貫して増加の一途をたどってい る.患者の高齢化・糖尿病性腎不全例の急増など対象 患者群に大きな変化が認められ,一方では「透析医療 費の高騰」がしばしば話題の俎上に乗り診療報酬改訂 のたびにマイナス査定が繰り返されてきている.私共透析医はこれら透析医療を取り囲む社会情勢を 的確に捉えながら,私共の行う医療行為が質的向上を 保ちつつ,どこへ向かうのかを熟慮しなければならな いであろう.会員諸兄の考察の一助に私見を述べさせ ていただいた.
はじめに
日本経済低迷の影響をもろに受けて,医療費に対す る風当たりもきわめて強い.つまり,医療費の高騰が 取り沙汰されて,総医療費を押さえ込もうとする動き である.
透析医療は高額医療の代表的なものとして矢面に立
たされて殊に厳しい視線を浴び,診療報酬の改定のた びに「マイナス改定」が繰り返されてきている1).末 期慢性腎不全患者に対する腎機能代替療法には,長年 の臨床経験と研究からいくつかの選択肢が登場してき た.
透析医は個々の腎不全患者に相対して,それ等の中 から当該患者に最適な治療形式を選択するのが重要な 務めの一つであるが,この当然の行為が遺憾ながら必 ずしも容易ではない.すべての医療行為には,①医学 的,②社会的,③倫理的な問題が立ちはだかっている が(表
1
),本論では透析医療をこの観点から見直し,それぞれの項目における主な問題に重点的に触れてみ たい.
1
腎機能代替療法の現況先刻ご承知のように,慢性透析患者は毎年約
1
万 人増加し,2002年12
月31
日現在総計約23
万人に 達している2).
腹膜透析が3. 8
%で残る96. 2
%は血液 透析であり,著しく血液透析優位な状況にあると言え よう.つまり,腹膜透析患者数の伸び悩みが依然とし て顕著であり,この点については後述する.なお,わ が国における腎移植の年間施行例数は700例前後に
止まり,献腎が思うに任せないところに最大の障碍が あるとされている.慢性透析に関しては
① 新規導入患者の高齢化(2002年新規導入患者 の平均年齢は
64. 7
歳[n=32, 637 ]
)(表2
)透析医療はどこへ向かうのか
大平整爾
(社)日本透析医会 副会長/札幌北クリニック
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:透析医療の多様化,診療報酬制度の枠,医療費負担の再考,医療制度改革[医 療 経 済]
Whereliesthefutureofdialysistherapy?
SapporoKitaClinic SeijiOhira
② 糖尿病性腎不全の著増
③ 長期透析患者の増加 (10年以上透析患者は
24
.3
%)④ これに伴う動脈硬化や骨・関節障害などの合併症 が重大な問題となっている.これ等
4
項目は,患者 ケアのすべての面で従来よりも一層人手を必要とする 状況を生み出している.中でも派生してきた深刻な課題は,①血液透析の困 難な症例の増加,②通院困難患者の通院補助や通院不 可能患者の収容先の確保である.さらには透析療法へ の非導入およびすでに開始している透析療法の中止の 模索と,これ等に関連して終末期医療のあり方と充実 が私共透析医療人の一方の大きな課題と認識せざるを えない状況にある3).
2
透析医療の形態2)2002年末の時点で,慢性透析患者の 96
.2
% は血 液透析(HD)療法下に,3.8
% が腹膜透析(PD)療 法下にある.HD患者の82
% は昼間透析で,社会復 帰に有利な夜間透析は18
% を占めるに過ぎない.HD患者の約 70
% は,1回4. 0
~4.5
時間・週3
回の 形式で行われて最頻であるが,これは診療報酬点数に 大きく影響されているものと推定される.HDにおける透析量を代表する尺度の一つは Kt/V
であり,日本透析医学会の統計4)は「好ましいHDの
条件」の一つを,s
(Kt/V)>1.6
(Kt/V)
/t
=0.30
~0.45
透析時間>5時間としている.これのみで
HDの適正性を結論できな
いことを認めるとしても,141,767例の HD症例の分
表1日本における透析医療が抱える諸問題 1.透析医療の専門性にかかわる課題
① 透析導入と非導入の適正な判断
② 透析導入期前の学際的患者管理
③ 導入時期の判断
④ 透析方法の的確な選択
⑤ 残腎機能の保持
⑥ 維持透析期における合併症予防と発生時の対策 長期使用可能なブラッド/ペリトネアールアクセス
の確立
血圧の調整,心機能の改善と維持 動脈硬化の解明
Ca/P代謝の是正とアミロイド症対策を含め骨関節 障害の解明,予防と治療
低栄養状態の改善 透析液の再考と純化
QOL,ADLの向上,適正な尺度に基づく透析医療 の質的向上,並びに適正なアセスメントによるその自 己および第三者評価
各種病態に対するわが国に適合したガイドライン・
フローチャート・またはアルゴリズムの作成 適正透析量の検討
罹病率と死亡率の詳細な分析 総合的長期的腎機能代替療法の確立 腎移植の推進
臨床研究法の再考
2.透析医療の社会性にかかわる課題
① 高騰する医療費問題,透析医療における診療報酬制度 の適正化
② 医師の裁量権
③ 介護者の問題
④ 社会資源活用の問題
⑤ 患者・家族への医療情報開示,患者の自己管理能力の 向上
⑥ 医療事故の開示・予防・事後対策
⑦ 透析スタッフ・患者・家族並びに一般市民への教育と 啓蒙
⑧ 『透析科』の標榜,透析専門医の呼称の認可取得,透 析室施設基準の検討と設定
⑨ 透析スタッフ後継者の育成
⑩ 社会からの意見聴取と社会への透析専門医としての意 見発信
⑪ 患者の社会復帰の促進
3.透析医療の人間性/倫理性にかかわる課題(上記2と表 裏一体)
① 自己決定権・informed consent・shared decision makingなどに関連する問題
② 代理判断,事前指示(書)
③ QOL,ADLの向上とその算定法
④ 終末期医療のあり方と充実
⑤ 透析回避,透析中止などにおける医療人のかかわり方
⑥ 生命の捉え方 大平による
表2 世界各国の高齢化率 (単位:%)
19901995200020052010201520202025 日 本
アメリカ イギリス ドイツ フランス スウェーデン
12.0 12.5 15.7 15.0 14.0 17.8
14.5 12.6 15.5 15.2 14.9 17.3
17.2 12.4 15.3 16.0 15.7 16.7
19.6 12.3 15.2 18.1 16.0 16.6
22.0 12.9 15.7 19.2 16.2 17.9
25.2 14.3 17.1 19.7 17.9 19.8
26.7 16.1 18.0 20.9 19.7 20.7
27.4 18.1 19.0 22.9 21.3 21.2 出典:日本については,1995年までは「国勢調査」,2000年 以降は国立社会保障・人口問題研究所の中位推計.諸外 国の数値は国連資料(TheSex and Distribution of theWorldPopulation,1994)
注:高齢化率=65歳以上人口が総人口に占める割合
析5)で は
Kt/V
>1.6は 16. 5
%,1.2
<Kt/V<1.6は 51. 7
% で,透析不足と推定されるKt/V
<1.2
は31. 8
% に存在している.
表
3に掲げた当院症例の dp
(Kt/V)を分析すると,望ましい
dp
(Kt/V)>1.2
を示す症例は高齢者と短時 間透析者に多いことが明白である.患者の自覚症状や 検査値などから,HDスケジュールを再考する必要が 出てくる.時間を延長した緩徐なHDが一般的に透
析中の症状出現率を低下させるが(表4
),HDの時間 設定には種々の考慮事項が出てきて,簡単には決定し 難い面がある(表5
).関連
5
施設のHD患者 566名からアンケートで得
た結果によれば(回答率:75.9
%),
時間延長に伴う 利点を縷々説明した後の回答であるが,透析期間から み る と 時 間 延 長 を 望 む 者 は13. 0
~33.7
% ( 平 均22. 3
%)で,年齢からみた希望者は19. 5
~31.5
%(平 均28. 1
%)であった.長時間透析のメリットを説明 しても,大多数のHD患者は必ずしもそれに賛同し
ない現状が浮き彫りになった.これには個々の透析施設の事情(表
5
)が絡み,患 者側への説明が奥歯に物の挟まったようでシャープさ に欠けていることも一因であろう.つまり,多くの患 者を4
時間から5
時間または6
時間へと延長すれば,人員的にも経済的にもその施設が成り立っていかない 懸念がでてくるために,患者への説明が曖昧となるき らいが出てくるということである.現行の透析治療時 間による診療報酬の撤廃が,大きな制限因子の一つに なっていることは疑いがない.
わが国で主体的に行われているのは施設透析である が,この時間の調整が自由となるものに在宅(家庭)
血液透析がある.しかし,在宅
HD患者は全国で僅
か99
名に止まっており2),
患者/家族に対する教育の 困難性/手間暇・患者側の安全性への危惧・緊急時体 制の不備/負担・低または負採算性・患者側の依存的 体質(少ない希望者)などが大きな隘路となっている.l i mi tted care
のHD施設は日本では皆無であるが,
在宅血液透析とともに
・doctorfee・を節減する一法
ではあろう.また,在宅
HD療法の一変法としての 1
回2
時間・週
6
回(ダイアライザー再利用,透析液自動作成お よび自動洗浄)の治験に参画する機会を得たが,この 方式は患者に概ね快適なHDをもたらし検査データ
も良好で,血圧の適正化が得られるなどの利点を実感 している.自己穿刺を容易にするボタン・ホール式な どのブラッドアクセス上の工夫が進めば,将来の発展 を期待したい
HD方式である.しかし,経済性が前
面に出てきて医療側が責任だけを押し付けられる体系 であれば,医療側が在宅HDや l i mi ttedcareHDを
推進していこうとする意欲を殺そぐことになろう.透析 医療の質を左右する重要な因子の一つは医師と患者と の接触時間(doctorbedsideti me
)6)の多寡にある表3 血液透析時間と年齢からみたdp(Kt/V)
―Daugirdasの方式で算出―
週3回HD 男 性 女 性 5.0時間
4.5 4.0 3.5 3.0
1.42(31例)
1.32(22) 1.21(25) 1.01( 4) 0.70( 6)
1.69(10例)
1.47(10) 1.34(28) 0.62( 1) 0.86( 2) 合 計 (88例) (51例)
70歳以上 65~69歳 60~64歳 60歳未満
1.04(14例)
1.38(10) 1.35( 8) 1.31(56)
1.04(10例)
1.38( 5) 1.35( 9) 1.29(27) 合 計 (88例) (51例)
札幌北クリニック,平成15年2月時点での数値
表4 血液透析時間と症状出現率(/HD1,000回)
Diaphane
(仏,1981) Bregamo
(伊,1991) Tassin Tassin 透析時間(hrs)
血圧低下 筋痙攣 嘔 吐 頭 痛
4.3 208回 102回 44回 30回
4 216回 110回 45回
-
8 70回 31回 6回 7回
5 129回
20回 15回 12回 Laurent G, Charra B:Nephrol Dial Transplant, 13
(suppl6);125,1998,より.
表5 血液透析時間の設定上の問題点 1.医学的な考慮事項
① 適正透析量の把握:Kt/V,(Kt/V)/t,URR
② ブラッドアクセスの状態:確保可能な血流量と循環器 系への影響度
③ 患者の身体的耐性(除水量・血圧など)と精神的(心 理的)我慢度
2.透析施設の特性(事情)
① 施設のスタッフ数,勤務体制(人員の確保)
② 時間外手当
③ 透析関連機器の準備,洗浄,消毒に要する時間
④ 診療報酬制度の締め付け
⑤ 激務によるスタッフの心身の継続的疲労感
のであって,この点が適正に担保された制度が肝心で ある.
わが国における
PD患者数は伸び悩み,2002
年末 時点で3. 8
% を占めるに過ぎない.CAPD患者増加
の伸び悩み(普及の低迷)の原因は多種考えられるが,表
6
のように要約できる.いくつかの医学的な項目 ではすでにかなりの改善や進歩が確認されているが,医療者および患者に正しい理解を得てもらう面での努 力は依然不十分と言わざるをえない.
それでは何故,CAPD患者を増やさなければなら ないのか.表
7
にその概要を掲げた.項目5
の特性 は高齢者への適用を示唆するものであろう.PDは,① 血行動態の安定性
② 代謝管理の安定性
③ 高血圧管理の有用性
④ 通院からの解放
⑤ ブラッドアクセス・トラブルからの解放
などいくつかの重要な利点を有し,家族の協力や支援 体制の確立により,高齢者にも十分に施行可能であ る7,8).項目
7
に掲げた費用効果は本邦ではHD例と PD例とでそれぞれの月当たりの経費に大差がないが,
イギリスやフランスではCAPDの経費が著しく廉価
であると報告されている9).交換キット・回路・透析 液などに関わる価格が再考される必要がある.いずれにせよ患者の高齢化が著しく,したがって循 環器系合併症を有する患者が急増している現状に鑑み,
PD適応症例を広げる機運を高めることが必要だと考
える.3
慢性透析療法の合併症これに関しては表
1
に主な事項を掲げたが,① 動脈硬化を基盤とする虚血性心疾患・脳血管障 害・閉塞性動脈硬化症・BA作製困難
②
ADLを損なう骨関節障害
③ 易感染性などへの対策
が焦眉の急である.糖尿病性腎不全の急増に対しては 腎疾患専門医と糖尿病専門家の連携を強化することは 当然であるが,これを国民的な重要問題として捉え糖 尿病の予防対策に相当思い切った国家的予算措置を講 ずる必要があろう.
4
医療経済情勢の変化1979年当時,国民総医療費 16
兆円のうち透析医 療は0. 7兆円
(4.4
%) を占めていた.20年後
の1999年には国民総医療費は 30. 7
兆円へと約2倍に
増加したのに対して,透析医療費は1. 1
兆円(3.6
%)であり相対的に減少したと言えよう10).1.
1
兆円は確 かに巨額であるが,その主因は合併症を有する高齢患 者の経年的増加にあるのであって,透析医が定見なく 闇雲にこの療法を誰かれなく施行しているのでは決し てない.本療法が高額だとしばしば言われるが,透析 医療費の多くの部分が関連機器や薬剤の価格に占めら れていることは一般に知られておらず,また,意識的 にか言及されてきていない.ただ,私共透析医には透 析医療費に対して一般社会への説明責任は発生するの であり,的確な説明により社会の理解と納得とを取り表6 何故,CAPD患者は増えないのか 1.主として医学的問題
① 腹膜炎,出口部感染,腹膜硬化症
(使用器具・ケア・治療法の工夫/進歩・中止基準の設定)
② 腹膜透析液の非生理性,腹膜機能の経年的劣化
(透析液の改良 [中性液・icodextrin],腹膜休息法, HD併用)
③ カテーテル・トラブル,カテーテルの劣化
(カテーテル挿入法の工夫,カテーテル材質の進歩)
④ 目標とする「透析量」設定の不明確さ,並びに「透析 量」調整の困難性(CANUSA,NKF-DOQI,ADEMEX などの報告)
2.主として社会的問題
① 患者・家族の依存性
(自主性の向上,社会復帰の意欲亢進とその動機付け)
② 医療者・患者/家族のバイアス
(正しい知識,教育と啓蒙)
③ 透析および一般医療界,一般社会への教育と啓蒙
(患者がPDを知らない,医師が選択肢としてPDを 示さない)
④ 在宅患者の孤独感(患者支援体制,患者会)
⑤ 介護者の不足(介護保険の活用,介護支援専門員の協 力/教育)
⑥ PD中止および治療法変更への不安(先発完投型の治 療法ではない)
(PD療法の利点の理解)
表7 何故,CAPD患者を増やさなければならないのか 1.連続的血液浄化法という生理的手段
2.自主的で自由な患者の日常生活 3.社会復帰に対する優位性 4.残腎機能の比較的長期保持
残腎機能保持期における良好な身体状態と予後 5.循環器系への低侵襲性
6.重装備なしで多人数に施行可能 7.優れた費用効果
付けなければなるまい.
日本の医療費について考える場合,総額約
31
兆円 であることの外に,その財源は税金が32
%,事業者 負担が23
%,そして国民の保険料・窓口負担が45
% であることを知っておきたい.さらに,人口構成の高 齢化が進んだ結果,老人医療費はその伸び率が国民医 療費のそれを大きく上回っており,1998年度では国 民総医療費の36
% を占めるに至っている点に注目し なければならない.1
) 平成14
年4
月以降の透析関連保険点数の問題 点 透析診療報酬と日本透析医会の活動 前回の透析診療報酬改定では,① 慢性維持透析患者外来医学管理料の引き下げ
② 透析時間制の撤廃
③ 食事加算の撤廃 が決定された.
厚労省による診療報酬改定の解説によると,「人工 腎臓の時間などについては,患者の病態に応じて,最 も妥当なものとすること.」とある.日本透析医学会 の膨大な透析資料は,すでに透析時間の一定以上の長 さが患者の一般状態や生命予後に良好な結果をもたら すと結論11)しており,定番の
4
時間/回を5
~6時間/
回へと延長しなければならない患者は少なくない.しかし,これには適正人員の配置・機器の整備等々に
相当な経費が必要であり,新報酬制度のもとで透析分 野の収益が
8
~10% 減少している現状(透析患者1
人 当たり年間医療費では約47
万円の減収)では個々の 透析施設にのみ犠牲を強いることは明白であり,透析 時間の延長は担当医が望み患者が賛同したとしてもそ う易々とは実行しがたい環境である.1967
年に血液透析が保険収載されて以来,透析医 療にかかわる診療報酬制度は目まぐるしく変遷した.1978年手技料とダイアライザーが包括化されて 4, 000点となり,1981年の改定では再び手技料とダ
イアライザーとが分離され手技料は2, 000点,ダイ
アライザーには初めて公定償還価格(特定保険医療材 料としての点数)930点(膜面積1. 5
~2.0m
2)が設 定された.1992年改定では,透析の定期検査が包括 化されている.ダイアライザーについては実勢価格調 査に基づく引き下げが続き,差益収入が望みえない状 態となったことは記憶に新しい.日本透析医会は手技料(doctorfee)に重点を置く 戦術を採ったと考えるが,急激な収入減を抑制するた めに,診療報酬改定の度に夜間透析・導入期・休日・
食事・水処理・除水制御器・特殊疾患管理などに加算 点数を付けることに成果を上げたことは評価されよう.
このような透析医会を中心とした懸命な努力にもかか わらず透析医療費は改定毎に減額されてきているが,
この間の事情は図
1
12)から明らかに読み取れる.す(百万円) (10,000例)
18 16 14 12 10 8 6 4 2 0
18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 透析人口
年間1透析当たり末期腎不全医療費
末期腎不全医療費の国民総医療費に占める比率(%)
・79 ・80 ・81 ・82 ・83 ・84 ・85 ・86 ・87 ・88 ・89 ・90 ・91 ・92 ・93 ・94 ・95 ・96 図1 透析患者数とその末期腎不全医療費に占める割合の推移
透析患者数は増加,透析単価は低下,国民医療費に占める率は一定
(文献12より引用)
なわち,患者数の増加(これは同時に重症患者数の増 加を意味する)と透析単価の低下がある一方,国民医 療費に占める割合は一定である.透析施設に経済的な 苦境が重くのしかかってきているが,低い死亡率・高 い生存率と社会復帰率など世界に誇りうる治療成績を 上げていることは自負してよいのではないか.
ブラッドアクセス(BA)は
HDに必要不可欠であ
る.その重要性のほかに作製・修復に多額の経費を要 するものであるために一言するが,BA関連の保険点 数にも矛盾が多い.BA
のPTA
技術料は血管結紮術 (K602の2
):3, 130点 (31, 300円 ) に 統 一 さ れ て き て い る が , PTA
に使用するカテーテルは約11
万円でステント が約25
万円である.技術料の低さと材料費の高さに 驚くしかない.カテーテルやステントの価格はアメリ カで入手すれば1/5
~1/10で済むと知ると,その驚 きは一層募る.脈管を温存する方式の
PTAを主体とする BAIVT
(bl
oodaccessi nterventi onaltherapy
)は今やBA
修復に際して重要な手段となっているが,現時点では 外科的修復術よりも遥かに高額の費用を要する12,13).中本14)は
BA
修復がすべてPTAにより行われると,
外科的修復時に比較して90
億円程透析医療費を押し 上げることを概算した.それを踏まえて中本は,①
BAIVT関連機材価格の低下に対する努力
② 技術料の適正化を要望
③ その運用を絶対的適応(今後の
BA造設が著し
く困難な症例,人工血管のrun- offvei n
の狭窄 および中心静脈狭窄)と相対的適応に区分して技 術料を別途に設定することを提案したが妥当な考え方であろう.
2
) 医療費の負担は誰がするのか医療者の立場から医療は
・mi ni malrequi rement・
に甘んじてよいはずはなく,常にその時点,時点で の
・opti malrequi rement・
でなければならない.こ れは国民の願いであるが,過去の実績が示すように当 然ながら総医療費の高騰が避けえない.「国庫がもっ と負担すべき」15)との意見に対して中村秀一厚労省老 健局長は,次のように述べている.「2002年度の社会保障関係費は
18. 3
兆円であ る.国の歳出は約80
兆円だが,そこから地方交付税や公債償還費を除くと,国が政策的に使える 経費(一般歳出)は
48
兆円弱である.すでに社 会保障の経費は一般歳出48
兆円の約4
割を占め ており,1970
年の2割に比較すると,この 30
年間にその比重が高くなっている.……このよう に歳出に比べて歳入がまったく足りないという状 況下で,社会保障関係費,とりわけ医療費の国庫 負担をもっと増やせというのも相当困難であるこ とは,制約条件として考えなければならない.」GDP
に占める総医療費の割合(1998年)15)はアメ リカ:12.9
%,ドイツ:10.3
%,フランス:9.4
%,日本:7.
4
%であり,わが国の国民医療費(患者負担 と保険給付を含む)はその経済力と比べると決して高 い水準ではなく,もう少しわが国の富を医療分野へ振 り向けられるのではないかと考えるのは素人の浅知恵 なのであろうか.国の税収入は結局のところ国民のものであり,その 財源をなににどれ程使用するかは国民の総意で決めら れるべきことであろう.総医療費が上限を定めた枠の 中で論議される昨今の「医療保険改革」について,紺 谷(日本証券経済研究所主任研究員)は「高齢化社会 の対応や医療問題の解決を目指したものではなく,単 に財政問題の解決策でしかなかったと見るべきです.
その意味で厚生労働省よりも財務省の意向が強く働い たものだろうと疑っています.」と述べている16).国 民のコンセンサスがどの方向へ向かうのかには,私共 医療人の正しい意見表明が一つの鍵であると考えたい.
むろん,医療費が無制限に高騰することが許される訳 ではなく,国民がより充実した医療を望むのであれば 医療費負担の区分を再考しなければならない時期には 来ている.
表
8は,第 26
回日本医学会総会における特別シン ポジウム『医療費の負担は誰がするのか』における各 識者の発言を,著者の責任において要約したものであ る.現行の医療保険制度のみでは高水準の医療を受け ることが経済的に難しくなってきていることを,全識 者が言及している.そこでどのような負担を誰が担う のかに関しては,私的保険の拡充や混合診療の導入な どが論議されたが,明確な方向性をこのシンポジウム では見出せなかった.吉田17)は新たな医療費財源の調達法として,
① 皆保険制度は堅持し,この制度の下で患者
1
人
1
カ月100
万円程度を上限に現物給付する② それ以上の高額医療となる場合に備えて,第二 公的保険(任意加入の掛け捨て保険で保険料を所 得控除の対象とする)を創設する
③ 第二公的保険でもさらに不足する部分は自費支 払いで補う
という「支払い三段階建」を提言している(図
2
).付帯的に論議されるべき事項が少なくないが,具体的 な提案として傾聴に値するものであろう.
この考え方は,現在しばしば論争されている「自由 診療」または「混合診療」にも絡む微妙で難しい側面 を心情的にも乗り越えなければならないと考える.自 らの健康を自ら守る姿勢は当然ながら求められるもの であり,それに対して応分の自己負担を背負うことの 必要性も考えなければならないであろう18).
国民はそれぞれの実生活でそれぞれの希望に対し収 入に応じて出費しているのであるが,健康管理に重点 を置き,より良い医療を受けるためには幾分かの自己
表8『医療費の負担は誰がするのか』
第26回日本医学会総会 特別シンポジウム,福岡市,2003年4月 池上直也(慶応大学教授)
患者の要望は,① 金に糸目をつけずに最高の医療を受けること
② 低い保険料と税負担 患者・国民の対立の解消策 ⇒ 社会連帯か自助か
私的保険の拡充,混合診療の導入は日本の現状では難しい 島田忠彦(一橋大学教授)
① 医療費の負担は結局,患者・被保険者・納税者の三者の負担率
② 公的保険給付範囲の縮小化へ向かうべき
③ 従来の発想を転換して,私的保険の役割を検討すべき 高木安雄(九州大学教授)
① もはや,公的保険のみでの財源確保は困難
② 中間的連帯保険の導入
③ 民間保険の導入 飯野奈津子(NHK解説員)
① 医療費の使途の透明化を図ること
② 無駄を無くして質の高い医療の実現
③ 負担の公平化
④ 国民に選択肢を示せ 著者の責任で講演を要約
任意保険加入者の場合 任意保険非加入者の場合 自費による支払い
妥当 → 患者負担 自費による支払い 不適当 → 医療機関負担
すべてNPO
第二公的保険(任意)
(200,400,上限なしの3段階)
第一公的保険
(給付限度100万円)
の審査に委ねる
1/3を第一公的保険に
第一公的保険(皆保険)
(給付限度100万円)
図2 高額医療費の新しい支払いシステムの概念図
(文献17より引用)