子どもの学びを拓く音楽授業の構想と実践に関する研究
一小学校高学年音楽科における単元学習の特性と指導方法の開発を中心にー
教科・領域教育専攻 芸術系(音楽)コース
島 田 郁 子
はじめに
音楽の授業が,子どもにとって意味を探究す ることが可能な授業になるためには,子どもの 認識過程をふまえた授業を構想する必要があ る。このような授業の実現をめざして思索され てきた単元の歴史は, 19世紀に始まり,今日に 至っている。本研究は,このような単元の歴史 をふまえながら,音楽の授業において小学校高 学年の子どもたちの学びを拓く音楽科単元学習 の原理的な特性と具体的な指導方法について検 討することを目的とする。
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.単元の本質的な特性と意義単元という発想はヘルバルトに始まり,その 言葉自体はチラーに始まる。その後,アメリカ に伝えられた単元は,マクマリー兄弟,パーカ ー デューイらによって検討され,多くの実験 や実践を通して その原理が確立された白
一方,我が国においては,第二次世界大戦後,
大村はまによって,国語科という教科の枠の中 で単元学習が実現した。
このような単元の歴史的な変遷に着目する と,単元が成立するためには,【現状把握と主 題設定】{学習経験を呼び起こす学習活動の選 択】【教材の選択】【作業課題の構想、】【教師の 役割】という五つの観点が必要であることが明 らかになったロここで
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学習経験J は,子ど もの「帰納演緯的な思考過程Jを内包するもの指 導 教 員 長 島 真 人
であり
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作業課題jはr
反省的思考Jを促し 経験を連続させる,共同的で社会的な作業が選 択された。2 .音楽科教育における単元学習
単元が日本に紹介された明治中期から大正時 代にかけて,大学の附属学校や私立学校では子 どもの活動を重視した音楽授業が試みられるよ うになった。また,戦争による超国家主義時代 を経て,戦後,アメリカによって単元学習が奨 励され,音楽科でも試みられるようになった白
しかしながら,昭和33年の音楽科の学習指導要 領から単元という言葉が消え,単元学習の本質 が理解されないまま,代わりに題材という言葉 で指導計画が作成されるようになった。この題 材は,楽曲による題材と音楽的なまとまりによ る題材,生活経験的なまとまりによる題材が例 示されたが,楽曲による題材が主として取り扱 われるようになった。昭和55年の『小学校音楽 科指導資料指導計画の作成と学習指導』では 主題による題材と楽曲による題材が例示され,
主題による題材が第一義的なものとして捉えら れた。この主題による題材は,音楽的なまとま りを意識した点で,単元学習と類似しているが,
個々の「教材Jが関連づけられたものであると はいえ,子どもの認識過程をふまえながら授業 を組み立てる単元学習とは全く違うものであっ た。このような状況の中で,長島真人は,主題
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にそって「学習経験J を呼び起こす学習活動と
「教材Jをカ動的に編成した音楽科単元学習を その実践において試みていた。そこで,この実 践の分析と,長島の音楽の学習理論を援用する ことによって,第一章で明らかにされた単元の 特性と,音楽の学習の特性をふまえた,音楽科 単元学習の構想と展開における留意点を明らか にしたロ
3.単元構成による音楽授業の具体的構想 次に,音楽科単元学習の可能性を探るために,
平成18年の秋に 5年生の子どもたちを対象と した単元「短調のしくみときもちjを構想し,
実践した。「あなたにとって短調の音楽とはど んな音楽といえるだろうj という発問によって 主題の探究が促された単元学習で、あった。この 単元を実際に試みることによって,音楽科単元 学習の可能性と
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作業課題J の構想と「学習 経験J の拡大についての新たな課題を明らかに することができた。このような課題をふまえながら,次に,単元
「世界の民族音楽体験キャンベーンを開こう J を構想した。ここでは,具体的な f作業課題J の構想において,
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学習経験J を呼び起こす学 習活動と「教材Jを選択しカ動的に編成する方 法を検討した。そしてr
学習経験Jを呼び起 こす学習活動は,子どもたちの現状把握と主題 設定に基づいて適正に計画されr
教材j は多 様な民族音楽の中から選択されることになっ たD また,子どもたちの主題探究のために,手 引きとなる資料や映像が準備された。4,単元構成による音楽授業の成果と課題 単元「世界の民族音楽体験キャンベーンを開 こうJは,平成19年の夏に, 6年生の子どもた ちを対象として実践した。キャンペーンは, 自 分たちのグループが探究した民族音楽の思いや
願いと演奏を,観客である他グループに伝え,
ワークショップによって分かち合うという展開 で 実 施 し た 。 子 ど も た ち は 学 級 応 援 歌 を 作 ろう JrCMで伝えよう J などの「作業課題j
の具体的な実践において
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反省的思考」をく り返しながら主題を探究していった。そして「音 楽にこめられた思いや願いjに対する自分なり の考えを見つけていった。このキャンペ}ンに おいて,子どもたちは音楽による一体感を味わ い 音 楽 に 込 め ら れ た 思 い や 願 いJ を自分なりに把握することができたようで、あった。
この実践に関する反省的な考察によって,音 楽科単元学習のあり方は,いっそう明らかにさ れた。「作業課題Jは,子どもたちに「反省的 思考Jを促し,主題の探究を深めるものであり,
「学習経験jの連続を促すものであることが 子どもたちの学びの姿から確認された。また,
「主題J は,本質的側面と手段的側面の二層構 造で設定することが有効で、あることが確認され た。しかし,具体的な学習活動と子どもたちの 内面で生じる「学習経験J との関係を的確に把 握する力量や
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教材J を適正に編成する方法 に関して,新たな課題も明らかになったロ おわりに子どもたちの音楽の学びに関する「現状把握J に基づいて構想された単元を実践することによ って,
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学習経験Jを呼び起こす学習活動と「教 材Jが的確に組み込まれた「作業課題Jが具体 的に展開され,その結果r
主題Jの探究を促 す「学習経験jが連続され,子どもたちの学び が拓かれていく過程を確認することができた。本研究によって明らかにされた課題について は,さらに新たな単元の構想と実践を通して検 討を深め,より充実した音楽科単元学習の実現
をめざしていきたい。
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