Title
体外循環中の凝固線溶系, および血小板機能の変動について
-- 特にアプロチニンとメシル酸ガベキセートの効果 --( 内容
の要旨(Summary) )
Author(s)
味元, 宏道
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第858号
Issue Date
1993-05-19
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15416
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員
味
元宏
道(高知県) 博 士(医学) 乙第 858 号 平成 5 年 5 月19 日学位規則第4条第2項該当
体外循環中の凝固線溶系,および血小板機能の変動について
一特にアブロチニンとメシル鞍ガベキセートの効果-(主査)教授鹿
瀬 (副査)教授 恵 良 聖 一 教授 土 肥 修 司 論 文 内 容 の 要旨
関心術の補助手段として用いられる休外循環(以下ECC)において、血液がECC回路との接触から生じる 血液凝固を防止するために一般にヘパリンが使用されている。しかしながら、最近ではヘパリン投与下において も凝固線溶系が冗進して、ECC後の凝固線溶系ならびに血小板機能に悪影響を及ぼすことが指摘されている。 そこでこの祝固線溶系の冗進を抑制して、血小板の機能低下を防止する目的で、蛋白分解酸素阻害剤である aprotinin(AP)並びにgabexatemesilate(GM)を用いてECC中、ECC後の凝固線溶系、血小板系の変 動および術後出血量への影響を検討した。 対象および方法 [研究1]対象はECCを用いた関心術で大動脈冠動脈バイパス術(CABG)10例、弁置換術8例、弁輪形成 術2例の計20例であった。性別は男11例、女9例で、平均年齢は50.5±11.2歳であった。これを無作為に2群に 分類し、ECC充填液中にヘパリンを単独投与した11例を対照群(Ca群)、ECC充填液中にヘパリンおよび APを投与した9例をA群とした。 [研究2]対象はECCを用いた関心術でCABG13例、弁置換術13例の計26例であった。性別は男14例、女12 例で平均年齢は52・8±11・6歳であった○これを無作為に2群に分類し、ECC充填液中にヘパリンを単独投与し た14例を対照群(Cg群)、ヘパリンに加えてGMを持続投与した12例をG群とした。 方法はA群ではECC充填液中にAPl・5×10-KIU/kgを加えた。尚、AP投与に当たっては使用歴の無い ことを確認した。G群ではGMをECC開始とともに、時間当り40mg/kg、回路内に持続投与した。採血は、中 心静脈に挿入したカテーテルより、ECC開始前、ECC開始5分後(ECC5)、60分後(ECC60)、ECC 終了プロタミン中和5分後(ECC終了後)の各時点で行なった○検討項目は以下のごとくである。①凝固系: Activatedpartialthromboplastintime(APTT),Prothrombin time(PT),AntithrombinⅡ(ATⅡ), Thrombin-antithrombinⅡcomplex(TAT),Fibrinogen,Fibrin degradation products(FDP)②線溶系: Euglobulinlysis time(ELT),Tissueplasminogen activator(t-PA),Plasminogen,a 2plasmin inhibitor-plasmincomplex(a2PI-Pmcomplex)・③血小板系‥血小板数、血小板凝集能(ADP,COllagen)、 血小板粘着能、④出血量:術後24時間出血量、総出血量0統計学的処理は2群間の平均値の差の検定には unpairedStudentt-teStを、前値との比較にはpairedStudentt-teStを行ない、危険率5%未満を有意差あり と判定した。 尚、両研究とも、2群間の男女比、平均年齢、体外循環時間、大動脈遮断時間はStudentt-teStでは有意差を 認めなかった。 結果および結語 [研究1]①凝固系:APTTはECC終了後でCa群93±51sec、A群44±15secとA群はCa群に比し有意 (P<0・05)に短縮していた。PTはECC5でCa群11±8%、A群19±5%、ECC60でCa群8±7%、 51
A群17±5%とA群はCa群に比しECC5、ECC60で有意(P<0・05、P<0.01)に高かった。 ②線溶系‥PlasminogenはECC5でCa群96±19%、A群69±16%、ECC60でCa群100±9%、A群81 ±16%で、A群はCa群に比し、ECC5、ECC60で有意(P<0.01)に低かった。 ③血小板系:血小板数、血小板凝集能、血小板粘着能ではA群、Ca群の間に有意差を認めなかった。 ④出血量:総出血量はCa群では882±403ml、A群では549±175mlとA群はCa群に比し有意(P<0.05) に少なかった。 [研究2]①凝固系:PTはECC5でCg群15±8%、G群2±2%、ECC60でCg群15±7%、G群5±6 %、ECC終了後でCg群25±8%、G群43±5%と、G群はCg群に比し、ECC5、ECC60で有意(P< 0・Ol)に低下していたが、ECC終了後では有意(P<0・01)に高かったoATⅡはECC60でCg群75±19 %、G群97±22%とG群はCg群に比し有意(P<0・05)に高かった。FDPはECC終了後でCg群37±22〟 g/ml、G群19±11FLg/m2tG群がCg群に比し有意(P<0.05)に低下していた。 ②線溶系:ELT、t-PA、Plasminogen、α2PI-PmcomplexではG群、Cg群の間に有意差を認めなかっ ③血小板系‥血小板凝集能のADP凝集はECC60でCg群59±22%、G群95±53%とG群がCg群に比し有 意(P<0・05)に高かった。COllagen凝集ではECC終了後でCg群50±26%、G群弱±25%とG群はCg群に 比し有意(P<0.01)に高かった。 ④出血量:G群、Cg群の間に術後24時間出血量および総出血量の有意差を認めなかった。 以上の結果より、ECC充填液中のAP投与は凝固因子の消費を抑制し、線溶系も軽度抑制することにより、 術後異常出血の予防に有用であった。一方、GM投与は線溶系に対する効果は認めないものの、凝固因子の消費 を抑制し、術後の血小板機能を温存することを示した。