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東京23区における障害児の母親の就労状況と支援策の検討

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東京

23 区における障害児の母親の就労状況と支援策の検討

美浦

幸子

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The Employment Status of Mothers of Children with Disabilities

and Consideration of Support Measures for their Employment

in 23-ku Area of Tokyo

Sachiko Miura

1.はじめに 国際労働機関(ILO)は 2018 年、ケア労働に関する報告書において、全世界で無償ケア 労働の76.2%を女性が担っており、約 6 億 600 万人の女性が就労機会を逃していると公表 した。ここでいう無償ケア労働には、子育て、高齢者介護とともに障害者へのケアが含まれ る。報告書は、「ケアに関する論議において、子育てと高齢者へのケア対策を強調してきた 結果、障害者はしばしば見過ごされてきた」(p.24)と指摘している。同書では各国にケア 労働に関する政策見直し、保育・教育、保健、福祉事業への投資を求めており、政策の枠組 みの一つとして、女性―男性間ならびに世帯―国家間のケア責任の再分配を挙げている。 日本政府は高齢者介護について「介護離職ゼロ」を掲げ、子育てについては子ども・子育 て支援新制度(15 年)を制定した。新制度はすべての子どもを対象とするが、現実にはす べての障害児が定型発達児と同等の支援を受けられるわけではなく、その場合、専門施策で ある障害児支援の対象となる。新制度が仕事・子育ての両立を支援する一方、障害児支援は 仕事・子育ての両立を目的としない。厚生労働省「国民生活基礎調査」(17 年)の「末子の 母の仕事の状況の年次推移」によると、18 歳未満の子どもがいる母親の就業率は 70.8%で あるが、現在に至るまで障害児の母親を対象とした就業率の全国調査は行われていない 2 障害児には「子育て」という言葉に包摂しきれない、介助、看護、療育、医療・教育・福 祉のコーディネート等、直接・間接のケアが必要である。定型発達児であれば加齢とともに 子育てに要するケアは減じるが、障害児へのケアは個人差こそあれ、加齢しても継続する。 子育て、ケアを主に母親が担うことを所与とする性別役割分業への批判的視点は不可欠だ が、こうしたケアへの社会的支援が不十分であった場合、現実において障害児の母親は、就 労に際して定型発達児の母親に比べ困難な状況に置かれる。 本研究では東京23 区における障害児の母親の就労状況、必要とされる就労支援策、各区 の対応を明らかにし、今後の課題を検討する。その際、ひとり親家庭が生計を立てられるよ 1 昭和女子大学 現代ビジネス研究所 研究員 2 政府統計の総合窓口(e-Stat)の回答による(18 年 11 月 5 日)。

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2 う、母親個人の選択が可能になるよう、フルタイム勤務を可能とする支援策が必要と考える。 2.先行研究 障害児の母親は、土屋(2002)、中根(2006)による障害者家族の概観にみられるように、 「ケアを担う者」と見なされることが多かった。障害児家族支援については、江尻(2014) が指摘したように「子どもの障害に対する母親の受容過程や育児負担感情に重点をおく研 究」(p.431)が中心であった。一方、障害児の母親の就労に関する研究は 1990 年代から少 ないながら蓄積されてきた。以下では、先行研究を主な論点ごとに整理し、概観する。 (1)障害児の母親の就業率の低さ、未就労者の就労意向の指摘 【表1】に、97 年以降に行われた先行研究における障害児の母親の就業率と、同時期の厚 生省・厚労省「国民生活基礎調査」による母親の就業率をまとめた。「国民生活基礎調査」 が全国調査であるのに対し、障害児の母親を対象とした各調査は地域を限定した調査であ るため、単純比較することはできないが、傾向を看取することは可能であろう。 【表1】先行研究における障害児の母親の就業率(筆者作成) 実施年 出典 対象 就業率 全国※ 1997 年 藤 本 ・ 黒 田 (1999) 滋賀県内の障害児学校10 校・ 小1~高 3 までの保護者 512/ 751 名(有効回答率 68.2%) 48.1% 6~8 歳=48.3% 9~11 歳= 55.3% 12~14 歳=61.5% 15~17 歳 =57.6% 1998 年 上村・高橋・ 日 高 ・ 原 田 (1999) 神奈川県内の通園施設・訓練 会・保育所・幼稚園に通う障 害児の母親47 名 17% 0~2 歳=25.9% 3~5 歳= 40.8% 同上 上村・高橋・ 日 高 ・ 原 田 (2000) 神奈川県内4 養護学校に通う 児童生徒の母親 259/633 名 (回収率41%) 34% 6~8 歳=48.0% 9~11 歳= 54.4% 12~14 歳=59.0% 15~17 歳 =57.3% 2002 年 津止・津村・ 立田 (2004) 京都の障害児学校・障害児学 級・普通学級に通う障害のあ る小中高生の保護者673 名 48.8% 参考:01 年 7~8 歳=58.8% 9~11 歳= 63.4% 12~14 歳=67.0% 15~17 歳 =67.4% 2011 年 江 尻 ・ 松 澤 (2013) A 県の特別支援学校児童生徒 の保護者103/421 名 55% 7~8 歳=66.3% 9~11 歳= 71.9% 12~14 歳=75.0% 15~17 歳 =75.6% ※厚生省「国民生活基礎調査」「末子の年齢階級別にみた父母の就業状況別児童のいる世帯数の構成割合」

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3 (97、98 年)、厚労省「国民生活基礎調査」「児童のいる世帯のうち母のいる世帯における末子の年齢階級、 母の仕事の有無別構成割合」(01 年)、「末子の年齢階級、仕事の有無、正規・非正規別にみた母の構成割 合」(11 年)。02 年調査では該当データがなかったため、01 年調査を参考データとした。 【表1】の内、江尻・松澤(2013)を除いた各調査では、未就労者を対象に就労希望の有 無を調査していた。上村ら(1999)では 71.8%、上村ら(2000)では 55%、藤本・黒田 (1999)では 61.8%、津止ら(2004)では 71.1%と、いずれも半数以上が就労を希望して いた。 これらの調査から、障害児の母親の就業率は全国調査に比べて有意に低く、未就労者の半 数以上は就労を希望していることが明らかになっている。 国外の先行研究においても江尻(2014)が整理したように「障害児の母親は、定型発達児 の母親に比べて就労率が低いことや、フルタイム就労者の割合が少ないこと、また、労働時 間が短いことは、国外においてはすでに多くの研究によって報告されている」(p.432)。中 でも自閉症児の母親の就業率がほかの障害や疾病を持つ子どもの母親の就業率よりも低い こと、仕事を削減または中断する率が高いとの知見が、米国(Kogan,M.D.,Strickland,B.B, Blumberg,S.J.,Singh,G.K.,Perrin,J.M.,&van Dyck,P.C.,2008)、カナダ(Hodgetts,S.,Mc Connell,D.,Zwaigenbaum,L.,Nicholas,D.,2014)、スウェーデン(McEvilly,M.,Wicks,S.& Dalman,C.,2015)等で示されている。 (2)障害児の母親が就労する意義の考察 障害児の母親が就労する意義を、上村ら(2000)はアンケート調査から「生きがい」「気 分転換」(p.47)、久保山(2006)はインタビュー調査から「親ではない時間を過ごせる」「社 会の一員でいられる」「前向きに生きられる」「収入がある」(pp.69-70)、丸山(2012)はイ ンタビュー調査から経済的理由、生きがいとともに、「育児ストレスの軽減」(p.33)と整理 している。これは、意に反して就労がかなわない場合、経済的損失、個人的意義・社会参加 の喪失3、高ストレスを被ることを意味する。 経済面について田中(2010)は、成人した知的障害者の母親への調査から「重度の障害→ 濃密なケア→母親のケア役割の一層の専従化→母親の就労機会の剥奪→家族の貧困」 (p.267)との構図が成り立つとし、江尻・松澤(2013)は質問紙調査の分析から「障害児 家族は、一般家庭に比べてより厳しい経済状況にあり、特に母子家庭においてそれが顕著で ある」(p.158)ことを指摘している。ストレスについて須田・坂田(2006)は、質問紙調査 から「常勤的職業がないと答える人の方が負担感得点が高くなっている」(p.106)との結果 を得ている。 3 例えば重度障害児の母親・佐々(2016)は「仕事を中心に組み立てていた自分の人生がもう以前のよう には働くことはとても難しいことなのだという現実を受け止めることは、まるで社会とのつながりが途切 れてしまうようでもあり、私にとっては考えていたよりもずっと辛いことだった。今までの私の人生って 何だったの?」(p134)と述べている。

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4 (3)就労阻害要因と就労支援策の分析 重度障害児(重度重複障害児、重症心身障害児)の母親を研究対象とした藤原(2006) は、「障害があるから、養護学校への就学であるからという理由で、母親の全面的な援助が 自明視される」(p.67)、「障害児の家族は、母親が子どもの育児と介護に長期間従事するた めに、家族内の性別役割分業が固定化する傾向が強まり、子どものケアをする母親と、生計 を立てる夫という組み合わせが作られる」(p.154)とし、社会において母親が福祉資源化し、 家庭内で性別役割分業の強化が起きていることを指摘している。これらは就労阻害要因と して具現する。丸山(2011)はインタビュー調査から就労阻害要因として「外出・帰宅した り家で過ごしたりすることが子ども一人では難しい」「学校の長期休業期間には日中も子ど ものケアが必要になる」「障害があることと関連して体調不良が起こりやすい」「定期的な通 院」「病院や訓練機関に子どもを通わせること」「家庭での学習指導」「(親の会など)親・保 護者としての活動」(pp.84-85)を挙げている。藤原(2006)は、「女性の就労を促進する社 会条件の変化や、母親の個人的な選択を許容することができないほど、障害児の母親として の仕事は質的にも量的にも膨らみ、就労することが必然的に抑制されるしくみが作られて いた」(pp.154-155)と指摘している。 丸山(2013)は、インタビュー調査時まで一貫してフルタイムの雇用で就労を継続して いた母親すべてが、祖父母から預かり、送迎、療育機関への通園などの支援を受けていたこ とを明らかにし、「母親・保護者の就労保障のための社会資源の体系を構築すること」「障害 児者のケアを家族に強く期待する意識を改めさせつつ、障害児者のケアを家族が担わなけ ればならない実態を改善していくこと」(p.98)を提言している。小木曽(2014)は、就労 継続支援の資源をインタビュー調査のデータ分析から「職場資源(産前産後休業、育児・介 護休業制度、年次有給休暇、短時間勤務制度、柔軟な勤務時間など)、社会資源(保育所、 学童保育、ガイドヘルパー、日中一時支援、学生ボランティアなど)、家族資源(祖父母、 夫、伯父・叔母などその他親族)が確認された」(p.157)と整理している。 3.研究方法と仮説 児童福祉法第2 章第 9 節では、厚生労働大臣が定める基本指針に即して市町村が市町村 障害児福祉計画を定め、その達成に資するため都道府県は都道府県障害児福祉計画を定め るとしている。計画は市町村によって実施される。 本研究では2018 年に公表された 23 区各区の第 1 期障害児福祉計画(18~20 年度)等(第 1 期障害児福祉計画を含む各区の計画・プラン/以下、「区名・計画」)ならびに計画策定の ために実施された障害者(児)実態・意向調査報告書等(区によって名称が異なる/以下、 「区名・調査」)、パブリックコメント(以下、「区名・パブコメ」)から、以下の仮説①~⑤ に関連する設問と結果、該当箇所を抽出、分析することにより、仮説検証する(計画・調査・

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5 パブコメは巻末【資料】参照)。なお、実態・意向調査等は2 区で未公開、2 区で未実施4 った。 ①23 区において障害児の介助の大半を母親が担っている 障害児の母親は社会においてケア役割が自明視され、家庭内ではケア役割が強化されて いることが先行研究で指摘されている。23 区においても障害児の介助の大半を母親が担っ ていると推察される。 ②23 区において障害児の母親の就業率は低く、未就労者の大半に就労意向がある 先行研究では、調査時期・地域の違いにかかわらず、障害児の母親の就業率は、全国調査 よりも有意に低く、未就労者の大半に就労意向があった。このことから、23 区においても 同様の傾向があると推察される。 ③23 区において障害児の母親には再就職・就労継続のために社会資源へのニーズがある 先行研究の知見から、障害児の母親には複数の就労阻害要因が存在することが明らかに なっている。阻害要因を軽減・解消するために、母親には就労支援のために社会資源へのニ ーズがあることが推察される。 ④自閉症児と医ケア児の母親の就労がより困難である 国内の先行研究において、特定の障害と就労阻害要因の関連を分析した研究はなかった。 国外の先行研究では、複数の国で自閉症児の母親の就業率がほかの障害や疾病を持つ子ど もの母親の就業率よりも低いことが共通しており、国内においても同様である可能性があ る。また、ケアに制約5のある医療的ケア児(以下、医ケア児)は既存の社会資源を限定的 にしか利用できず、母親の就業率がより低いことが推察される。 ⑤23 区の第 1 期障害児福祉計画等は仕事・子育て両立支援策を含まない 国は継続的に全国の母親の就業率を調査し、仕事・子育ての両立を支援している。これに 対し、子育てに加え、障害に起因する複数の就労阻害要因を抱える障害児の母親については 就業率の全国調査が実施されていない。これらの事実から、国の基本指針に基づく各区の第 1期障害児福祉計画等は、ケアに配慮した仕事・子育て両立支援策、就労支援策を含んでい ないと推察する。 4.研究結果 ①23 区において障害児の介助の大半を母親が担っている 調査において、主たる介助者を問う設問があったのは16 区であった。この内、障害児と 4 「墨田区障害福祉計画【第 5 期】等の策定に係るアンケート調査」結果は未公開。北区は 14 年に「北 区障害者計画」改訂にあたり実態・意向調査を実施しているが、第1 期北区障害児福祉計画用の調査は未 実施のため、本研究では取り上げない。板橋区では「障がい者・区民実態意向調査 調査報告書(概要・ 暫定版)」を公開しているが、公開時未集計分を加えた最終結果は公表していない。足立区では障害者団 体、当事者、家族からの聞き取り調査を実施し、実態・意向調査は実施していない。 5 文部科学省「学校における医療的ケアの実施に関する検討会議中間まとめ」(18 年 6 月 20 日)による と、介護職員や学校教職員が喀痰吸引等の特定行為を行うには一定の研修が必要であり、人工呼吸器等の 管理は認められていない。

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6 障害者を区別して調査していたのは、港区、新宿区、文京区、品川区、目黒区、大田区、世 田谷区6、渋谷区の8 区であった。千代田区、台東区、江東区、中野区、杉並区7、豊島区、 練馬区8、葛飾区では障害児・者混合で調査していた。 障害児・者混合で調査した場合、障害児が18 歳未満であるのに対し、障害者は 18 歳以 上高齢者までを含むため、障害児の占める割合が相対的に小さくなる。障害児における障害 種別人数比では知的障害が最も多いが、障害者には障害児が加齢した場合に加え、事故や病 気による中途障害者が含まれるため、身体障害が最も多くなる。そのため、障害児と障害者 では母集団の障害種別人数比が異なる。また、障害者の介助者には、障害児では選択肢とし て存在しない配偶者や子どもが含まれる9。よって、本研究では障害児と障害者を区別した 8 区の調査結果を用いることとする。 主な介助者は港区で母親96.4%、父親 68.8%、新宿区で母親 87.0%、父親 15.6%、文京 区で母親65.5%、父親 18.6%、品川区で母親 78.4%、父親 6.0%であった。目黒区では親・ 祖父母で92.6%、大田区で同居家族や親せき 93.2%、世田谷区 5 歳以下で親 90.9%、6 歳 ~18 歳未満で親 94.3%、渋谷区で母親 98.3%、父親 0.8%であった。港区では他区よりも 父親の比率が高いが、これは介助者を7 の選択肢(母親、父親、その他の家族・親戚、近所 の人・知人、ホームヘルパー等の在宅サービス事業者、ボランティア、その他)からあては まるものすべてに〇をつける設問であったためだと推察される。 【図1】障害児の主な介助者(筆者作成) 6 世田谷区は障害児・者混合で調査していたが、クロス集計により障害児と障害者の区別が可能である。 7 杉並区は重度重複障害、発達障害、高次脳機能障害を障害児・者混合、身体障害・難病、知的障害、精 神障害を0~9 歳、10 歳代等年代別に調査している。児童福祉法の対象は 18 歳未満であるためここでは 障害児・者混合とみなす。 8 練馬区では 20 歳未満の調査があるが児童福祉法の対象は 18 歳未満であるためここでは障害児・者混合 とみなす。 9 例えば千代田区・調査の主な介助者は「ホームヘルパーや施設の職員 29.7% 配偶者 28.1% 父母 25.6% 子ども 22.7%」で父母による介助が相対的に小さく見え、障害児の母親の介助実態が把握しづら くなっている可能性がある。 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0% 120.0%

主な介助者

母親 父親 親、家族など

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7 23 区すべてにおける主たる介助者は不明であるが、設問があったすべての区において家 族、父母の別がある場合は母親が介助の大半を担っていた。23 区すべてにおける仮説の検 証は不可能であったが、父母の別があった5 区で仮説は検証された。 以下、本研究では、「主たる介助者=母親」とは限定できないため、介助者の大半が母親 であることを念頭に置きつつ、母親、主たる介助者、保護者を適宜用いる。 ②23 区において障害児の母親の就業率は低く、未就労者の大半に就労意向がある 調査において、母親、主たる介助者の就業率を調査していたのは3 区 10であった。目黒 区、渋谷区では父母それぞれの、世田谷区では主な介助者または支援者の就業率を調査して いる。【表2】では、各区の就業率と同時期における全国の母親の就業率を比較した。 【表2】母親・主な介助者の就業率(筆者作成) 年 調査 就業率 全国 16 目黒区 (n=154) 49.5% 67.2% 世田谷区 (n=130) 5 歳以下=22.6% 6 歳以上 18 歳未満= 44.5% 17 渋谷区 (n=118) 55.9%(就学前=56.8% 就学後=54.6%) 70.8% 注)nは人数。目黒区の就業率は「フルタイム勤務」「パート・アルバイト勤務」を加算して算出した。世 田谷区の就業率は「フルタイムで仕事をしている」「パート・アルバイトをしている」を加算して算出した。 渋谷区の就業率は「一般企業」「官公庁・団体」「自営業・在宅就労」を加算して算出した。全国の就業率 は、厚労省「国民生活基礎調査」「末子の年齢階級別にみた母の仕事の状況」(16 年、17 年)による。 【表2】の結果より、母親、主たる介助者の就業率は全国の母親の就業率よりも低いこと が明らかになった。23 区すべてにおける就業率は不明であり、仮説の検証は不可能であっ たが、調査のあった3 区において仮説は検証された。 未就労者の就労意向についての設問は3 区すべてでなく、仮説の検証は不可能であった。 但し、世田谷区では設問「主な介助者または支援者の方は、介助または支援にあたってどの ような不安や悩みを抱えていますか(17 項目中 5 つまで〇)」に対して、「仕事に出られな い」が5 歳以下 45.2%、6 歳以上 18 歳未満 51.5%であった。これは未就労者の就労意向を 明確化する設問ではないが、主な介助者の半数前後が「働けない」と考えていることを示唆 している。 ③23 区において障害児の母親には再就職・就労継続のために社会資源へのニーズがある 10 品川区は未就学医ケア児の主な介助者の就業率を調査しているが、母集団が異なるためここでは含めな い。板橋区は調査(概要・暫定版)に公開時点での保護者の就労状況(17 年)を掲載していた。「身体= 48.0% 知的=52.9% 精神=44.1%」(n=301「ある程度希望に沿った就労をしている」「介護・看護の ため、非常勤で時間を調整しながら働いている」を加算して算出)

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8 児童福祉法第6 条の 2 の 2 に基づく障害児支援には、障害児相談支援と障害児通所支援 がある。通所支援には、児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービス(以下、 放デイ)、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援がある。これらは保護者の就労支援 を目的に含まない。児童福祉法第6 条の 3 に基づく放課後児童健全育成事業である学童ク ラブは、保護者の就労等を理由に定型発達児とともに障害児も受け入れているが、中高生は 利用できない。 23 区各調査では未公開・未実施の 4 区を除く 19 区の内、17 区に自由記述(自由意見、 自由回答など、調査によって名称が異なる。以下、自由記述)があり、原文掲載している場 合と区が集約または抜粋して掲載している場合がある。パブリックコメントの募集は23 区 すべてで実施されていた11。記述の中から就労に直接言及した意見・ニーズを抽出し、【表 3-1】では就労に関する訴えを、【表 3-2】では具体的な問題点・ニーズを要約、分類した。 なお、文中の表記で、「母親、シングルマザー」は母親を指し、「両親、共働き」は母親を含 むが、「保護者、家族、親」が母親を意味するかは明確でない。障害児の主たる介助者の大 半が母親であり、仕事との両立を志向する「保護者、家族、親」が母親を意味しないと考え る根拠はないため、ここでは「保護者、家族、親」が母親を指す可能性があると判断した。 また、主語のない「フルタイム、キャリア、仕事、再就職、働く、就労」についても同様に、 母親についてである可能性があるものと判断し、取り上げた。 【表3-1】就労に関する訴え(筆者作成) 働けない 訴え ・子どもが障害をもつまでフルタイムで働いていたが、その後無職(世田谷区・調査) ・キャリアを目指してきたが、子どもの成長が遅く、なかなか再就職できない(中野 区・調査) 就 労 継 続 の た めの訴え ・障害児の育児と仕事の両立が精神的、肉体的、時間的にとてもつらい。虐待防止の ためにも負担軽減を図ってほしい(文京区・調査) ・障害児がいても両親が仕事をできるサービスを(品川区・調査) ・小学生になっても仕事が続けられるように整えてほしい(品川区・調査) ・両親が仕事をし、子どもが自立できるようサポートを(品川区・調査、荒川区・パ ブコメ) ・両親が就労していても障害児を育てられる環境づくりを(世田谷区・パブコメ) ・フルタイム勤務。サービスの隙間に困っている。通学支援、土日休みなど。つぎは ぎしてサービスを組み合わせるのが大変(渋谷区・調査) 【表3-2】就労に関連した問題点・ニーズ(筆者作成) 問題点・ニーズ 保育所 ・気管切開している子どもの受け入れ先がなく、親は働けない(新宿区・パブコメ) 11 渋谷区では 19 年 1 月 18 日現在、処理中。

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9 ・職員が少ないからと延長保育に対応してもらえず、フルタイムを諦めた(渋谷区・調査) ・親の就労、障害理解のため保育園等普通の子どもが使えるサービスは使わせてほしい (中野区・調査) ・スクールバス付きの障害児専門保育園があれば再就職できる(中野区・調査) 児童発達支 援 ・療育のためにどちらかの親が仕事を休むか辞めなくてはならず、収入が減って困る(目 黒区・調査) ・働いている人も困らないように朝から夕方までの療育にしてほしい(大田区・調査) 学校 ・小学校で母親が介助しなくてはならないと仕事、妊娠等を諦めなくてはならず大変負担 (品川・調査) 放課後等デ イサービス ・就労時間に預かってもらえる場所が少ないので、未就学医ケア児も放デイを利用できる ように(新宿区・パブコメ) ・育成室(学童クラブ)には小学校卒業後通うことができないので、保護者の就労に対応 できるように中高生向けの放デイの充実を(文京区・調査) ・個別指導の放デイが区内に少なく、仕事を制限して送迎。帰宅時間が遅くなり子どもの 負担になる(品川区・調査) ・放デイ利用で、家族は休息・仕事ができている。質の向上のために規制が厳しくなって いると聞くが、家族にとっては利用できる施設がなくなることが一番の不安。継続支援を (江東区・パブコメ) 日中一時支 援、 短期入所 ・保育園では延長保育をしてもらえた。就学後、仕事で遅くなるときに見てもらえる施設 を設置してほしい(港区・調査) ・共働き世帯が増加しているので、日中預かりや短期入所の拡充を検討してほしい(新宿 区・パブコメ) 学童 クラブ ・親が就労していて18 時までに迎えに来られない、帰宅や留守番が困難な児童は 18 時 以降も利用可能にしてほしい(品川区・パブコメ) ・基本的に障害児への施策は専業主婦を想定しているが、シングルマザーが正社員として 働けるよう、預かり時間の延長を希望(江東区・パブコメ) 移動支援・ 通学支援 ・共働きでないと生活が苦しいため、辞められない。保育園-療育施設の移動支援を(港 区・調査) ・働く親に代わって放課後や長期休暇の自宅―習い事に移動支援を(港区・調査) ・両親ともに就労している場合、通学支援の上限が10 回では少なすぎる(文京区・調査) ・就労支援でも送迎してほしい(品川区・調査) ・特別支援学校バス停―すまいるスクール(全児童放課後等対策事業)の移動支援が少な く、親が仕事で不在だとすまいるスクールの利用が困難(品川区・パブコメ) ・フルタイムで仕事をしたいので移動支援とデイサービスの両立(目黒区・調査) ・幼稚園・保育園―療育の送迎。平日仕事をしていると療育に通えない(渋谷区・調査) ・学童は親の就労等で利用できるのに、学校休業日に学童往復の移動支援が利用できず困

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10 っている(豊島区・調査) 情報・相談 ・働いていると相談したくても、平日日中に相談できない。メールでの相談や土日・夜間 相談窓口等を(品川区・調査、目黒区・調査、渋谷区・調査、江東区・調査) その他 ・障害児を持つ親は心の余裕がない。働いている場合はなおさら。ヘルパー制度を(品川 区・調査) ・フルタイムで親不在時にヘルパーによる入浴など(目黒区・調査) ・就学後は勉強を見る時間が必須なので、フルタイムで両親が働く場合、家事代行(目黒 区・調査) ・育児と同様に介護者に時短勤務を認めてほしい(世田谷区・調査) 【表 3-1】「働けない訴え」は、保護者自身の意に反して就労不能になったことを示して いる。「就労継続のための訴え」では、さまざまな支援が必要であることが示された。以下、 【表3-2】の問題点・ニーズを概観、整理する。 保育所、学校での受け入れ態勢の整備、障害児保育園設置のニーズがある。これらが整備 されなければ、障害児は幼児期を在宅中心で保護者、多くの場合は母親と過ごすことになる。 その場合、障害児は集団生活の機会を喪失し、同時に母親の就労は困難になる。就学後、保 護者の付き添いが通学の条件12とされれば、同様に就労は困難である。 児童発達支援が平日日中に限定されると保護者は定期的に欠勤せざるを得ず、就労困難 になる場合がある。経済的理由等で就労を優先すると障害児は早期療育の機会を喪失する。 放デイは保護者の就労支援を目的としないが、登校後、夕方まで通所することによって連 続した母子分離時間を確保し、就労の可能性を生む。また、放デイでは1 カ月に利用回数の 制限がある場合や保護者の就労時間帯に対応しきれない場合があるため、預かり=日中一 時支援拡充のニーズがある。学童クラブにも預かり時間延長へのニーズがある。短期入所へ のニーズの背景には宿泊を伴う出張や繁忙期への対応が推察される。 移動支援では要望に挙げられたさまざまな用途に利用できない場合、障害児が療育や放 課後支援の機会を喪失するか、保護者が送迎せざるを得ないことで継続した就労時間の確 保に困難をきたす。また、移動支援は保護者の就労を利用条件としている場合があり、この 条件によって就労継続支援にはなるが、再就職の阻害要因となっている可能性がある。 情報・相談では、平日日中の勤務時間外での対応要望が複数挙げられた。これは就労を阻 害するに至らないまでも、就労によって必要な情報提供・相談支援が得にくく、不利益を被 っている状況を示唆している。 以上のように、就労支援として社会資源へのニーズが複数あり、仮説は検証された。 ④自閉症児と医ケア児の母親の就労がより困難である 12 文科省の調査によると、15 年 5 月 1 日時点で全国の公立小中学校の校舎内で付き添いをしている保護 者等は1897 名であり(医療的ケアあり 20%、なし 80%)、16 年 5 月 1 日時点で公立特別支援学校にお いて医ケア児の学校生活に付き添いをしている保護者等は826 名(東京都では 111 名)であった。

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11 各調査において特定の障害を対象として母親、主たる介助者の就業率を調査していたの は、品川区の未就学医ケア児20 名を対象とした調査 13のみであった。よって、自閉症児、 医ケア児等、障害別の母親の就業率を比較することはできず、仮説の検証は不可能であった。 但し、就労に際して利用が想定される社会資源について、各調査・パブコメの自由記述や 記述式回答欄には、特定の障害名を挙げた利用の限定性や困難性を指摘する記述があった。 ③では就労継続・再就職のために社会資源拡充のニーズが複数みられたが、拡充以前に既存 の社会資源の利用が限定的であれば、就労はさらに困難になることが推察される。ここでは、 それらの記述を就労への言及に限らず抽出、要約し、障害別に資源不足、利用制限、質的問 題に分類して【表4】にまとめた(記述は区により原文掲載している場合と集約、抜粋して いる場合がある。同一区での類似回答は一本化した)。なお、障害種別として主に用いられ ている「身体障害」「知的障害」「難病」「精神障害」「発達障害」および「重度」「軽度」等 の障害程度のみの記述は除外した。 その結果、医ケア児では多種の資源不足および利用制限が挙げられ、ニーズが突出して多 いことが明らかになった14。重症心身障害児、肢体不自由児では、資源不足解消のニーズが 中心であった。視覚障害児では利用制限撤廃のニーズ、聴覚障害児では既存資源に対する質 的問題提起があった。自閉症児では利用制限の指摘と質的問題提起が複数あった。さらに、 障害特性であるこだわりの強さから「母親しか対応できない」「頼るあてがない」という、 ほかの障害では見られない自閉症児本人の社会資源への不適応が挙げられた。 医ケア児、重症心身障害児、肢体不自由児、視覚障害児、自閉症児は社会資源の利用がニ ーズに対して限定的であり、その母親の就労がより困難な状況に置かれている可能性があ るといえよう。 【表4】社会資源へのニーズ・意見(筆者作成) 資源不足 利用制限 質的問題 医ケア児 ・児童発達支援の受け入れ先が ない、整備を(文京区・パブコメ) ・放デイの受け入れ先がない/ 少ない/増設を(新宿区・パブコ メ、文京区・パブコメ、品川区・ パブコメ、目黒区・調査・パブコ メ、大田区・パブコメ、世田谷区・ 調査) 医ケア児 ・発作時に薬の利用を認める「移 動支援+医療ケア」を可能に(港 区・調査) ・一時保育を利用できるように (新宿区・パブコメ) ・児童発達支援で母子・親子分離 になる体制を(新宿区・パブコメ、 文京区・パブコメ) 重症心身障害児 ・レスパイトを利用しやすく(目 黒区・パブコメ、葛飾区・パブコ メ) 聴覚障害児 ・ろう重複障害児の放デイの必 要性を考えてほしい(葛飾区・パ ブコメ) 13 品川区・調査によると主たる介助者(母親 85.0% 父親 10.0%)の就業率は「フルタイム 25.0%、パ ートタイム5.0%、自営業 10.0%、産休または育休中 15.0%、働いていない 45.0%」であった。 14 【表 4】医ケア児・通学支援について、従来、医ケア児は車中の医療的ケアの必要性からスクールバス に乗車できなかったが、都立特別支援学校では18 年秋より医療的ケア専用通学専用車両の運行を一部開 始した。

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12 ・日中一時支援創設を(目黒区・ 調査) ・短期入所・レスパイト整備を (港区・調査、新宿区・パブコメ、 文京区・調査・パブコメ、品川区・ 調査・パブコメ、大田区・調査、 世田谷区・調査、葛飾区・パブコ メ) ・在宅レスパイト(板橋区・パブ コメ) ・移動支援引き受け業者増加(港 区・調査) ・通学支援(港区・調査、新宿区・ パブコメ、台東区・調査、世田谷 区・調査、江戸川区・パブコメ) 重症心身障害児 ・放デイの受け入れ先が少ない (葛飾区・調査) ・短期入所・レスパイト整備を (江東区・調査、大田区・調査、 練馬区・パブコメ、葛飾区・パブ コメ) ・緊急一時預かり(江東区・調査) ・在宅レスパイト(文京区・調査) 肢体不自由児 ・児童発達支援整備を(目黒区・ 調査) ・放デイの受け入れ先が少ない /増設を(港区・調査、新宿区・ パブコメ、品川区・調査・パブコ メ、大田区・パブコメ、世田谷区・ 調査) ・児童発達支援へヘルパーで通 所(新宿区・パブコメ) ・訪問でなく通所での療育(新宿 区・パブコメ) ・放デイが月 2 回に制限され不 十分(新宿区・パブコメ、文京区・ パブコメ) ・放デイ週5 日通所に(新宿区・ パブコメ、品川区・調査) ・放課後支援の長期休暇中の利 用(新宿区・パブコメ) ・学童受け入れ(文京区・パブコ メ) 視覚障害児 ・他区の弱視学級への送迎か通 学支援の特例使用を(江東区・調 査) ・自立移動の訓練・どんな用件で も移動支援利用可能に(港区・調 査) 自閉症児 ・自閉症で走り回るので、居宅介 護なら受けるが移動支援は断ら れた(葛飾区・調査) 自閉症児 ・こだわりが強く、母親しか対応 できない。(移動時)付き添いは 母親以外無理。頼るあてがない (港区・調査) ・待合室で静かに待てず、身体の 異常を言葉やジェスチャーで表 現できないため、障害理解のある 医師や施設が必要(港区・調査) ・福祉課の相談で自閉症児は保 健所に行ってと言われた(渋谷 区・調査) ・学校、行政、病院でさえ、自閉 症に対する理解・取り組みが不十 分(豊島区・調査) ⑤23 区の第 1 期障害児福祉計画等は仕事・子育て両立支援策を含まない 厚労省「今後の障害児支援の在り方について(報告書)」(14 年)には「本検討会では、 子どもに障害があるからといって就労が制限されるようなことはあってはならないという 考え方が共有された。(中略)厚生労働省においては、これらの観点を踏まえつつ、今後望

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13 ましい在り方について検討すべきである。」(p.27)とあるが、国による第 1 期障害児福祉計 画の基本指針は「1.重層的な地域支援体制の構築を目指すための児童発達支援センターの設 置及び保育所等訪問支援の充実、2. 主に重症心身障害児を支援する児童発達支援事業所及 び放課後等デイサービス事業所の確保、3. 医寮的ケア児支援のための関係機関の協議の場 の設置」であり、仕事・子育て両立支援策、保護者の就労支援への言及はない。 23 区の内、9 区では計画において具体的な施策を伴う「保護者(親、家族)の就労支援」 に言及していた。新宿区、品川区、大田区、渋谷区、中野区、板橋区は日中一時支援事業15 (目黒区、荒川区、足立区は公式ホームページに記載)を挙げており、杉並区は医療的ケア が必要な重症心身障害児等に対する独自の「保育対応型児童発達支援保育料助成」を挙げて いる。北区、練馬区が挙げている医ケア児等の施設、児童発達支援事業所確保は、国の基本 指針2 に沿った支援策である。 文京区・計画は「仕事と子育ての両立を含めた障害のある子どもの保護者の支援を図る」 (p.55)、世田谷区・計画は「障害児と暮らす家族の就労を支える仕組みについて検討しま す」(p.56)としているが、具体的な施策への言及はない。 なお、各調査で介助者・保護者・家族の不安や悩み、必要な支援への設問があるのは新宿 区、文京区、江東区、品川区、目黒区、世田谷区、渋谷区の7 区であり、この内、就労を選 択肢としているのは目黒区を除く6 区であった。 【表 5】では、23 区を所得水準の高い順に並べ替え、計画における就労支援への言及と A)介助者・保護者・家族の不安や悩み、必要な支援に関する設問の選択肢として就労を含 む、B)就業率を調査している(②参照)、C)自由記述に就労に関する要望等がある(③【表 3-1,2】参照)との関係を整理した。 【表5】各区の所得水準と計画、調査、要望等に見られる就労支援(筆者作成) 区名(課税対象所得) 計画 A B C 1 港区(9,071) 〇 2 千代田区(7,843) 3 渋谷区(7,027) ◎ 〇 〇 〇 4 中央区(5,558) 5 文京区(5,441) 〇 〇 6 目黒区(5,368) 〇 〇 7 世田谷区(5,058) 〇 〇 〇 8 新宿区(4,772) ◎ 〇 〇 9 杉並区(4,364) ◎ 10 品川区(4,274) ◎ 〇 ※1 〇 11 豊島区(4,116) 〇 15 日中一時支援事業は児童福祉法に基づく支援ではなく、任意事業である。

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14 12 大田区(3,951) ◎ 〇 13 練馬区(3,950) 〇 14 江東区(3,892) 〇 〇 15 中野区(3,868) ◎ 〇 16 台東区(3,855) 17 墨田区(3,502) ― ― 18 板橋区(3,497) ◎ ※2 19 江戸川区(3,463) 20 荒川区(3,451) 〇 21 北区(3,437) 〇 22 葛飾区(3,331) 23 足立区(3,242) ― ― 課税対象所得(納税義務者一人あたり、千円)は内閣府・市区町村別人口・経済関係データ(15 年 1 月 28 日訂正)による。計画における◎は区独自または任意事業、〇は国の基本指針に基づく施策、△は支援への 意向。※1 は脚注 13、※2 は脚注 10 を参照。 計画において国の基本指針に加え、区独自または任意の施策を伴い就労支援に言及して いる7 区の内、杉並区を除く 6 区、ならびに施策を伴わないものの支援への意向を示した 2 区では、A、B、C のいずれか、またはすべてに該当していた。その内 A、B、C の内、2 種以上に該当する区は、所得水準が23 区中上位 10 位以内にあった。所得 1 位の港区、2 位 の千代田区、4 位の中央区では、就労への計画・言及、調査がないため、所得水準が高けれ ば就労支援策に結びつくとは言えないが、23 区全体では所得水準が相対的に高い区の方が 低い区よりも就労支援への問題意識が高く、取り組みがなされる傾向にあるといえよう。 以上のように、23 区では 9 区が計画において「保護者(親、家族)の就労支援」を具体 的な施策とともに言及していた。よって、14 区において仮説は検証されたが、9 区におい て仮説は検証されなかった。 5.結論考察 子ども・子育て支援新制度が子どもの育ちと保護者、特に母親の就労を支援しているのに 対し、国の基本指針に基づく障害児支援は障害児の発達支援を意図するものの、23 区にお ける母親への就労支援は限定的であり、就労保障の観点からは公平性に欠ける。政府は「共 生社会」の実現を標榜するものの、現行では制度上、障害のある「子ども」に内閣府の新制 度を基本として障害児支援を追加するのではなく、「子ども」と区別した「障害児」に厚労 省による障害児支援を実施している。この構造により、多くの障害児の母親は障害児ととも に新制度の対象外に置かれているといえよう。また、「親亡き後」との言葉が象徴するよう に、これまで親は健在である限り、障害児・者の保護者、主たる介助者・支援者であり続け

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15 ることが想定されてきた。そのため、政府が女性活躍、両立支援を推進し、母親当事者から 就労への要望が上がっても、ケアの社会化、障害児支援に必要な有資格者や専門家の人材育 成が需要に追い付かず、母親によるケアに依存する状況が継続していると推察される。今後、 こうした状況を改善していくために、国による障害児の母親の就労状況の調査・検討・基本 指針の立案、各区による計画立案・実施が必要である。 障害児の母親、主な介助者の就業率を調査・公表していたのは3 区のみであった。そのす べてが全国の母親の就業率に比べて低く、再就職、就労継続のために支援策の拡充を必要と している。社会資源へのニーズに対応するためには、「障害児を受け入れる保育所整備、学 校での付き添い不要の体制構築」「児童発達支援の土日の実施、保育所等訪問支援の拡充」 「放デイへの保護者の就労時間に配慮した預かり機能の付加、必要な通所回数の保障、日中 一時支援の拡充と放デイとの在り方の再検討」「学童クラブの預かり時間への合理的配慮」 「移動支援の量的拡充による利用条件の緩和と柔軟な運用」「利用者の都合に配慮した相談 時間や方法」等の検討・実施が必要である。 障害別の母親の就業率は比較可能な調査結果がなかったため、検証できなかった。但し、 就労に際して利用が想定される社会資源について、現状では医ケア児、重症心身障害児、肢 体不自由児、視覚障害児、自閉症児に利用の限定性が見られ、母親の就労がより困難になっ ている可能性がある。それぞれの障害児が利用可能な社会資源の量的拡充、利用制限の緩 和・撤廃、質的改善が今後の課題であるが、障害特性によって、母親以外によるケアの社会 化が困難な自閉症児とその母親への支援には、量的拡充に限らない支援策の検討が必要で ある。障害児の発達・自立支援と母親の就労支援は表裏一体であるとの認識の上に、今後は それぞれの障害の個別ニーズをくみ取る調査、支援策の検討が必要である。 計画において保護者の就労支援に具体的な施策を伴って言及した区は 9 区であり、そこ で示された施策は、母親、保護者のニーズに対応しきれていない。23 区で唯一、母親の就 業率調査を行い、調査において家族の悩みや不安の選択肢に就労を設け、就労支援策を講じ ている渋谷区では、計画の対象を「児童福祉法が定める「障害児」とその家族」とし、家族 も支援対象であることを明確化している。一方、大半の区では支援策以前に、就労に関する 調査を実施しておらず、【表3-2】に「基本的に障害児への施策は専業主婦を想定している」 との指摘があるように、母親によるケアを前提としている可能性がある。また、相対的に所 得水準が高い区の方が低い区よりも就労支援への取り組みがなされる傾向が見られること から、区ごとの就労支援への取り組みの違いは、問題意識・意欲、財源・人材等資源の差に 起因するものと推測される。今後、障害児支援・母親の就労支援策を検討する際には、その 前提となる調査において、①障害児と障害者では、障害種別の人数比が異なる点、生活環境・ 社会活動、主たる介助者が異なる場合が多い点を考慮して、障害児・者の調査を区別するこ と、②障害児、母親それぞれを異なるニーズを持つ当事者と捉え、双方の実態・意向を調査 することが必要である。 多くの計画では障害児の療育・就学・進学・就労への「切れ目のない支援」を掲げるが、

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16 日常生活においても「切れ目のない支援」が必要である。【表3-1】に「サービスの隙間に困 っている。(中略)つぎはぎしてサービスを組み合わせるのが大変」とあるように、支援不 足による「サービスの隙間=切れ目」を担うのは多くの場合、母親であり、結果として母親 の就業率が低くなっていると推察される。 本研究では社会資源による就労支援を検討してきたが、【表 3-2】に「育児と同様に介護 者に時短勤務を認めてほしい」とあるように、職場における支援もまた必要とされている。 職場における長時間労働はケアを担わないケアレスマンを前提としており、その是正は家 庭で子育てや介護などのケアを担うすべての人に必要である。障害児へのケアの場合、長時 間労働の是正、短時間勤務等の柔軟な勤務時間の適用は、移動支援の利用抑制や平日日中の 児童発達支援通所を可能にし、社会資源を補完する可能性がある。また、特に幼少期は、保 護者にとっても障害理解等のため、通院や親子通園等、一定の時間が必要となる場合がある。 社会資源が不十分な場合、中高生さらには成人後もケアが継続することが多く、職場におい てもより長期にわたる対応が必要となる。職場による障害児・者家族への対応は、「障害児・ 者と共に生きる」生活を可視化し、直接・間接に職場、引いては社会の障害理解を促進する ことにつながる。また、障害児・者家族とは母親のみを意味するのではない。父母それぞれ の職場が対応を取れば、母親のみに就労上の不利益が偏ることなく、父親の障害理解・ケア スキルの向上にもつながる。職場は自他のケアが必要な人材でも働き続けられる環境づく りにより、多様な人材確保のメリットがあることを認識し、多様性を認め合う共生社会の実 現に向け、社会的責任を担うべきである。 障害児の母親への就労支援は、当事者一人ひとりにとって切実な現実であり、国にとって は憲法第二十七条「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」に基づく権利保障の 課題である。さらに、障害児ケアの母親への偏在、相対的に低い就業率は、ILO が指摘する 無償ケア労働のジェンダー不平等に該当し、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」におけ る、「目標 5.ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」「目標 8. 包括的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのあ る人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」に通底する課題である。SDGs は 「誰一人取り残さない」との理念を掲げる。障害児・者を取り残さないことは言うまでもな く、ケアと称される中で、子育てと高齢者介護の狭間で見過ごされ、取り組みが遅れがちな 障害児ケアを担う母親を取り残してはならない。 本研究における調査では、公開情報を用いることにより、数値や記述内容を各区と共有す ることが可能である一方、各調査における設問の有無・相違によって、各項目について必要 十分な結果が得られたわけではない。各調査は障害児の母親の就労状況調査を最優先課題 としていないため、就労支援に関する意見・ニーズを抽出し切れていない可能性がある。ま た、社会資源、職場のほかに学校・PTA・特別支援学校寄宿舎、専門病院の受診、祖父母・ きょうだい児の有無など、今回の研究では対象とできなかった検討課題も残る。今後はこれ らの課題を含め、母親の就労状況・支援策をさらに調査・検討するとともに、国内未着手の

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自閉症児の母親の就労状況・支援策を研究課題としたい。 【資料】 千代田区「千代田区障害福祉プラン」(アンケート調査結果のポイントを含む)(https://ww w.city.chiyoda.lg.jp/koho/kenko/shogaisha/kekaku-4.html)2018.10.25.「パブリックコメ ント」(https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kuse/shisaku/p-comment/h29/documents/h30 0305syogaisyafukushi.pdf)2018.10.25. 中央区「第5 期中央区障害福祉計画・第 1 期障害児福祉計画」(中央区障害者(児)実態調 査を含む)(http://www.city.chuo.lg.jp/kenko/sinsin/keikaku/dai5kichuosyogai.html)201 8.10.25.「パブリックコメント」(http://www.city.chuo.lg.jp/kusei/paburikku/ikenkaitou/p abukome29/dai5kichuosyogaipabu.files/publiccomment.pdf)2018.10.25. 港区「港区障害者計画 第5 期港区障害福祉計画(第 1 期港区障害児福祉計画)」(http://w ww.city.minato.tokyo.jp/shougaisesaku/event/documents/6468kb.pdf)2018.10.25.「港区 保健福祉基礎調査 報告書 2(障害者基礎調査) 平成 29 年 7 月」(http://www.city.mina to.tokyo.jp/kenko/fukushi/shisaku/documents/houkokusho2_shougai2.pdf)2018.10.25. 「パブリックコメント」(http://www.city.minato.tokyo.jp/kouchou/kuse/kocho/kuseiken/ documents/180323-keikan.pdf)2018.10.25. 新宿区「新宿区障害者計画 第 1 期新宿区障害児福祉計画 第 5 期障害福祉計画」(http:// www.city.shinjuku.lg.jp/content/000234703.pdf)2018.10.25.「新宿区障害者生活実態調 査報告書 平成 29 年 3 月」(http://www.city.shinjuku.lg.jp/ content/000216036.pdf)2018.1 0.25.「パブリックコメント」(http:// www.city.shinjuku.lg.jp/content/000234888.pdf)201 8.10.25. 文京区「「文の京」ハートフルプラン 文京区地域福祉保健計画 障害者・児計画 平成 3 0 年度~平成 32 年度」(http://www.city.bunkyo.lg.jp/var/rev0/0151/6273/2018327181752. pdf)2018.10.25.「文京区障害者(児)実態・意向調査報告書」(第 2 章 障害児の方を対 象にした調査)(http://www.city.bunkyo.lg.jp/var/rev0/0131/6837/2017412152232.pdf)2 018.10.25.「パブリックコメント」(http://www.city.bunkyo.lg.jp/var/rev0/0147/4623/2018 13193120.pdf)2018.10.25. 台東区「第 5 期障害者福祉計画」(https://www.city.taito.lg.jp/index/kurashi/shogai/keika ku/0157894420180327.files/zenntaiban.pdf)2018.10.25.「台東区障害者実態調査報告書」 (http://www.city.taito.lg.jp/index/kurashi/shogai/keikaku/01578944201610314001.files/ jittaichousahoukokusho.pdf)2018.10.25.「パブリックコメント」(https://www.city.taito. lg.jp/index/kurashi/shogai/keikaku/0157894420180327.files/pabukome.pdf)2018.10.25. 墨田区「墨田区障害福祉計画【第5 期】墨田区障害児福祉計画【第 1 期】」http://www.city. sumida.lg.jp/kuseijoho/sumida_kihon/ku_kakusyukeikaku/ta8040.files/honpen.pdf「パ ブリックコメント」(https://www.city.sumida.lg.jp/iken_yobo/public_comment/publiccom 17

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