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レオロジーと構造観察の同時計測と画像解析法の紹介 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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レオロジーと構造観察の同時計測と画像解析法の紹

著者

藤井 修治

著者別名

FUJII Shuji

雑誌名

工業技術

43

ページ

55-58

発行年

2021-02-24

URL

http://doi.org/10.34428/00012424

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

ている。建築状況からみると「廊下型」は2か所のみだ が、「混合型」(7か所)と「一体型」(8か所)に新築 した施設が多い。通いサービスを主とする施設では、前 述したように食堂および機能訓練室の設置が義務づけ られており、それらは隣接して一体的な空間構成が多い からだと推察する。新築の施設でも共用空間を2か所以 上設置している施設もあるが、全体的には少数であった。 一方で、既存の建物を改修・増築した施設では「廊下型」 が17か所、「混合型」が13か所、「一体型」が15か所と、 目立ったばらつきはなかった。 5.まとめ 以上、共生ケア施設のアンケート調査から、介護保険 法上の通所介護事業の指定を受けて運営している施設 が大半を占め、高齢者施設に障害者・児、または乳幼児 などの受け入れも可能にしている施設が多いことが分 かった。提供するサービスは一時的な預かりや通いが全 般的に多いが、中には宿泊サービスを提供する小規模多 機能型居宅介護施設やSSなどもあり、特に障害者に関し ては就労に関する支援もあった。 注 注1)高齢者、障害者・児、子どもなど対象者を限定しない、誰で も利用できるサービスを提供するケア。自治体によっては共生型 小規模デイサービス、宅幼老所など呼称が異なるが、本研究では 「共生ケア」で統一する。 注2)富山県統計による。「高齢者・障がい者・子どもなど対象者 を限定しない(誰でも利用できる)サービス・ケアを提供する施 設」の数を各都道府県に照会(2012年8月実施)。 注3)指定を受けるべき要件(法人格、人員、設備および運営基準) のうち、一部を満たしていない事業者で、一定の水準を満たすサ ービス提供を行う施設に対し、市町村の判断で制度の給付対象と することができる。 注4)アンケート調査時点では、旧法の障害者自立支援法で設問を 行った。 注5)富山型の多くは指定通所介護事業(介護保険法)として高齢 者を受け入れた上で、障害者・児の受け入れも行っている。逆に、 指定生活介護・自立訓練・児童デイサービス事業(障害者自立支 援法)として障害者・児を受け入れた上で、高齢者も受け入れて いる場合もある。なお、障害者自立支援法は2012年6月に法改正さ れ、障害者総合支援法に変更し、児童デイサービスは放課後等デ イサービスに改名ののち児童福祉法に取り込まれた。 ムに統合された(2014年4月1日施行)。 注7)自由回答にレスパイトに関するサービスの記述があった。 注8)アンケート調査ではスタッフを職員とボランティアの2種類 で質問した。職員は正規職員、常勤臨時職員(32時間/週以上)と 短時間非常勤職員(6時間/日以下、32時間/週以下)で質問し、常 勤換算は以下で計算した。[正規職員数×40時間+(常勤臨時職 員数+短時間非常勤職員数)×32時間]÷40時間=常勤換算職員 数。 注9)富山県における共生ケア支援策では、既存建物活用施設整備 や新築整備などに助成を行っている。特に、前者では既存建物の 改修だけではなく、既存の共生ケア施設に宿泊機能等を付加する 改修にも助成を行っている。従って、助成の件数や総額も改修の 方が多い。 参考文献 1) 伊藤綾子、竹下あゆみ、田上健一:地域共生ステーションの空 間特性―共生ケアを行う宅老所の建築計画(その1)―、日本 建築学会研究報告九州支部、No.49、pp.65-68、2010.3 2) 伊藤綾子、竹下あゆみ、田上健一:施設基準からみる宅老所の 空間と共生ケアの地域展開―共生ケアを行う宅老所の建築計 画(その2)―、日本建築学会研究報告九州支部、No.49、pp.69-72、2010.3 3) 中島美登子:「富山型」小規模多機能サービスの宅老所への導 入に関する研究―利用者とスタッフ、知的障害スタッフの三 者の関わりに着目して―、都市住宅学、No.67、pp.50-55、2009 4) 中田悟、勝又英明、安田剛:富山県における古民家転用福祉施 設に関する研究―地域資源としての古民家の公的利活用に関 する研究―、日本建築学会関東支部研究報告集Ⅱ、pp.85-88、 2007 5) 中園眞人、山本幸子:農家住宅を再利用した地域共生ホーム 「中村さん家」の使われ方―総合・循環型福祉サービス推進モ デル事業の事例研究―、日本建築学会計画系論文集、Vol.75、 No.651、pp.1199-1207、2010.5 6) 江文菁、佃悠、藤井容子、岡本和彦、西出和彦:富山型デイサ ービスにおける空間構成と利用者のかかわりに関する研究― 地域共生ケアホームに関する研究―、日本建築学会計画系論 文集、Vol.77 No.675、pp.987-994、2012.5 7) 江文菁、岡本和彦、西出和彦:共生ケア施設における基礎的ケ ア状況に関する分析、日本建築学会技術報告Vol.21,pp.255-258、2015年2月

レオロジーと構造観察の同時計測と画像解析法の紹介

An Introduction of Rheo-Image Analysis Methods

藤井 修治* 1.はじめに 私はソフトマターと呼ばれる柔らかい物質群のダイ ナミクスを研究対象にしている。ソフトマターの代表 例である高分子(ゴムやゼリー)および界面活性剤(シャ ンプー)、泡、コロイド(ヨーグルトやマヨネーズ)など を思い浮かべていただくとわかりやすいのではと思う が、これらの物質群に共通する特徴は、”弱い力”でも” 大きく変形”することにある。大変形下において、これ らの物質群は特異な非線形力学応答を示す。この”力””変形”の間の関係を調べる研究領域をレオロジーと いう。 これまで、液晶や界面活性剤が作り出す様々な構造 とレオロジー的性質との因果関係を明らかにすること を目的に、様々な装置を組み立て、研究を展開してき た1)-6)。東洋大学食環境科学部へは2020 年 4 月に着任 し、これまで培ってきた計測・解析技術を食品物性に 応用し始めたところである。 本稿では、私が普段、研究に用いている実験装置と 解析手法のいくつかを紹介したい。ここに紹介するの は、巨視的な物理量である力学物性値を微視的な構造 情報に結びつけるために作成された実験装置と解析法 である。 2.レオロジーと構造の同時観察 2.1 流動光学測定 (Rheo-Microscopy) レオロジー測定の基本は因果律にある。因果律と は、「刺激の結果として応答が観察される」という、ご く当たり前のように聞こえる一般的な原理のことであ る。 レオロジーにおいて、刺激とは、外部から試料 に加える変形をいう。そして、応答は、1. レオロジー 計測においては力学応答であるし、顕微観察において は2. 構造の変化を指す。 力学応答から得られるのは、弾性率や粘性率といっ た巨視的な物理量であり、構造観察により得られるの は数μm 程度の微視的な構造情報であるため、力学応 答と構造観察の同時測定を実現することにより、巨視 的応答のメカニズムを微視的構造情報から要素還元的 に議論することが可能になる。図1は、力学計測を行 うためのレオメーターに、倒立顕微鏡を組み合わせた 力学・構造同時計測装置である。図1 の右に模式的に 示したように、ガラス製の流動セルを回転させること により試料に剪断変形あるいは剪断流動を与え、粘弾 性測定を行いながら構造観察を行うことができる。 近年、同様の装置を市販品として購入することがで きるようになったが、市販品では対物レンズや光学系 に制限があるため、自作装置に比べて分解能に劣るの が現状である。また、我々の装置では、通常の光学顕 微鏡のみならず、蛍光顕微鏡、偏光顕微鏡下における 構造観察が可能であることも特徴の一つである。 同様の装置が威力を発揮した研究成果の一つに、液 晶のレオロジーがある1), 4)。ここでは研究内容の詳細 についての説明を省くが、巨視的粘弾性と微視的構造 観察を同時に実施することにより、液晶の弾性の起源 が、液晶が内包する欠陥の張力にあることを発見し た。粘弾性測定と構造観察の同時計測が生み出した成 果であり、液晶以外の研究においても役立つと考えて いる。 CCDカメラ トルク計測 (粘性率・弾性率) ガラス回転セル 試料 レーザー 図1. 力学・構造同時計測装置と、その概略図。粘性率 や弾性率を測定しつつ、構造観察を行うことができる。

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. 2 流動小角 X 線散乱 (Rheo-SAXS) 前節で紹介したように、レオメーターと顕微鏡を組 み合わせることにより、試料の内部構造がどのように 流動・変形するのか直接評価することができるが、勿 論、この手法が万能というわけではない。顕微鏡の光 学限界であるおよそ200 nm 以下の構造は、通常の光 学顕微鏡では観察できないためである。蛍光顕微鏡を 用いれば、より小さな構造体を観察することも可能で あるが、蛍光標識など試料調整の困難が伴う。また一 分子観察にはさらに複雑な光学系のセットアップが必 要となるため、これらを達成するのは技術的・金銭的 にも容易ではない。 間接的ではあるが、比較的容易に光学限界以下の構 造観察を実現する手法が、放射光施設にて実施できる 小角X 線散乱である。小角 X 線散乱では直接的な構造 観察はできないが、数nm から 100nm に至る光学顕微 鏡では到達できないスケールの構造を探索することが できる。放射光施設を利用するには、共同利用公募に 課題を提出し、審査にパスする必要がある7), 8)。この 時点で敷居が高く、ちっとも容易ではないように思わ れるかもしれないが、もし審査にパスすれば、必要な 経費は旅費+α程度のものである。つい尻込みしがち であるが、課題申請に必要な書類作成時にはビームラ イン責任者のサポートもあるので、臆せず申し込んで みる価値はある。 高エネルギー加速器研究機構やSpring8 の放射光施 設のビームライン内には、外部(自分の研究室)から装 置を持ち込むことができる。もしレオメーターを持ち 込むことができれば、粘弾性測定を行いつつ小角X 線 散乱による構造解析も可能になる。我々は、レオメー ターではなく、自作の流動セルを持ち込み、流動下に おける小角X 線散乱測定を行っている。この場合、粘 弾性測定との同時計測という最大のメリットを享受で きないが、それでも独立に計測した粘弾性データとの 比較により、価値のある情報が得られる。 流動セルの構造は単純である。ポリカーボネート製 の径の異なる二つの円筒の隙間に試料を入れ、外筒を ステッピングモーターで回転させるだけである(図 2(a))。 円筒の素材にはポリカーボネートが最適であ る。ポリカーボネートの特徴的な散乱は、広角側に現 れるので、小角側に現れるメソスケールの構造を反映 した散乱パターンに干渉しないためである。 自作の流動セルを高エネルギー加速器研究機構内の ビームライン(Photon Factory)に持ち込み、リン脂質分 図2. 流動小角 X 線散乱(Rheo-SAXS)装置の概略図と、二次元 SAXS パターンの一例 (a)。さまざまな温度におい てリン脂質ベシクル分散液に剪断流動を与えながら測定した SAXS プロファイルの円環平均と、モデルへのフィ ッティング結果 (b)。散乱強度 I の円環平均は、(a)の矢印方向における散乱強度の平均により求める。円環平均デ ータへのフィッティングにより抽出したリン脂質ベシクルの配向秩序パラメーターSと粘性率η(T)との比較 (c)。 散液を試料に行った流動小角X 線散乱(Rheo-SAXS)の 測定例を図2 に示した6)。流動方向に試料内部の構造 が配向すると、図2(a)の写真のように Rheo-SAXS パタ ーンに異方性が観察される。図2(b)と(c)は、同じくリ ン脂質分散液において測定されたRheo-SAXS パターン の円環平均と、円環平均へのモデルフィッティングに より抽出したリン脂質ベシクルの配向秩序パラメータ ーS と粘性率 η の比較結果である。ここで配向秩序パ ラメーターS は、流動下における構造体の配向の程度 を表す指標であり、1に接近するほど、配向度が高い ことを表す。 リン脂質分散液は温度に対して複雑な粘性挙動を示 し、二つの粘性率ピークを持つ。リン脂質系の複雑な 粘性挙動は古くから知られていたものの、複数の粘性 率ピークの起源は明らかにされていなかった。 Rheo-SAXS 測定より抽出されたベシクルの流動配向と比較 すると、ベシクルの配向ピークと低温側における粘性 率のピークが一致することがわかる。一方で、高温側 における粘性率のもう一つのピークでは、ベシクルの 配向度は高くない。このことから、二つのピークの原 因が、全く異なる構造要因に起因することが明らかで ある。ベシクルはリン脂質が球殻状に会合した構造体 であるため、流動下において大きく配向することはな い。したがって、高い配向度はベシクルが流動により 破壊されたことを示す。一方、ベシクルの低い配向度 は、ベシクルが球状のまま安定であり、流動では破壊 されないことを示唆する。このように、直接的な構造 観察ができなくても、SAXS によりもたらされる構造 情報は有益である。 間接的な構造情報しか得られない小角X 線散乱であ るが、光学顕微鏡には無い大きな利点もある。顕微鏡 観察では、観察できる視野が極端に制限され、構造を 詳細に見ようとすればするほど視野は狭くなる。この ため、たとえ流速が遅くても構造観察は困難になる(超 高速カメラがあれば問題無いが、当然高額である)。一 方、SAXS 測定は視野の制限を受けず、流速が速くて も計測に困ることはない。時間分解能も高いので、構 造の経時変化を追跡することも可能である。 最後に、SAXS を利用した配向度の抽出法について 簡単に説明する。まず、円環平均により得られた散乱 プロファイル(図 2(b))を、(1)式でフィッティングす る。 (1) P2(x)は変数 x のルジャンドル多項式であり、αは SAXS 強度のピーク分布の幅を特徴付けるパラメータ ーである。散乱プロファイルにおいて、この幅が狭 く、ピークが鋭いほど配向度が高いことを意味する。 またI0はSAXS 強度の最大値、Icはバックグラウンド の強度である。図を見ると、散乱プロファイルは(1)式 により、きれいに表現されていることがわかる。フィ ッティングにより得られたルジャンドル多項式を用 い、次の数値積分((2)式)を実施することにより、構造 体の配向の程度を表す配向秩序パラメーターS が決定 される。 (2) これらは液晶の配向分布関数を応用した解析法である が、流動配向の目安として様々な系の解析に適用でき るだろう。 3.動画からダイナミクスを抽出する 3.1 差分画像法 この節では、顕微鏡下で撮影した動画を解析し、動い ている物体の運動情報を抽出するための手法の一つ、差 分画像法を紹介する。 本解析では、動画を構成する一連のフレーム間の差分 を取る。時間差𝛥𝛥𝛥𝛥だけ離れたフレーム間の差を取ると、 この間にどれだけ粒子が移動したのかがわかる。異なる フレームにおけるイメージの差分𝛥𝛥𝛥𝛥(𝛥𝛥𝛥𝛥)を(3)式のよう に定義する。 レオロジーと構造観察の同時計測と画像解析法の紹介 An Introduction of Rheo-Image Analysis Methods

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. 2 流動小角 X 線散乱 (Rheo-SAXS) 前節で紹介したように、レオメーターと顕微鏡を組 み合わせることにより、試料の内部構造がどのように 流動・変形するのか直接評価することができるが、勿 論、この手法が万能というわけではない。顕微鏡の光 学限界であるおよそ200 nm 以下の構造は、通常の光 学顕微鏡では観察できないためである。蛍光顕微鏡を 用いれば、より小さな構造体を観察することも可能で あるが、蛍光標識など試料調整の困難が伴う。また一 分子観察にはさらに複雑な光学系のセットアップが必 要となるため、これらを達成するのは技術的・金銭的 にも容易ではない。 間接的ではあるが、比較的容易に光学限界以下の構 造観察を実現する手法が、放射光施設にて実施できる 小角X 線散乱である。小角 X 線散乱では直接的な構造 観察はできないが、数nm から 100nm に至る光学顕微 鏡では到達できないスケールの構造を探索することが できる。放射光施設を利用するには、共同利用公募に 課題を提出し、審査にパスする必要がある7), 8)。この 時点で敷居が高く、ちっとも容易ではないように思わ れるかもしれないが、もし審査にパスすれば、必要な 経費は旅費+α程度のものである。つい尻込みしがち であるが、課題申請に必要な書類作成時にはビームラ イン責任者のサポートもあるので、臆せず申し込んで みる価値はある。 高エネルギー加速器研究機構やSpring8 の放射光施 設のビームライン内には、外部(自分の研究室)から装 置を持ち込むことができる。もしレオメーターを持ち 込むことができれば、粘弾性測定を行いつつ小角X 線 散乱による構造解析も可能になる。我々は、レオメー ターではなく、自作の流動セルを持ち込み、流動下に おける小角X 線散乱測定を行っている。この場合、粘 弾性測定との同時計測という最大のメリットを享受で きないが、それでも独立に計測した粘弾性データとの 比較により、価値のある情報が得られる。 流動セルの構造は単純である。ポリカーボネート製 の径の異なる二つの円筒の隙間に試料を入れ、外筒を ステッピングモーターで回転させるだけである(図 2(a))。 円筒の素材にはポリカーボネートが最適であ る。ポリカーボネートの特徴的な散乱は、広角側に現 れるので、小角側に現れるメソスケールの構造を反映 した散乱パターンに干渉しないためである。 自作の流動セルを高エネルギー加速器研究機構内の ビームライン(Photon Factory)に持ち込み、リン脂質分 図2. 流動小角 X 線散乱(Rheo-SAXS)装置の概略図と、二次元 SAXS パターンの一例 (a)。さまざまな温度におい てリン脂質ベシクル分散液に剪断流動を与えながら測定した SAXS プロファイルの円環平均と、モデルへのフィ ッティング結果 (b)。散乱強度 I の円環平均は、(a)の矢印方向における散乱強度の平均により求める。円環平均デ ータへのフィッティングにより抽出したリン脂質ベシクルの配向秩序パラメーターSと粘性率η(T)との比較 (c)。 散液を試料に行った流動小角X 線散乱(Rheo-SAXS)の 測定例を図2 に示した6)。流動方向に試料内部の構造 が配向すると、図2(a)の写真のように Rheo-SAXS パタ ーンに異方性が観察される。図2(b)と(c)は、同じくリ ン脂質分散液において測定されたRheo-SAXS パターン の円環平均と、円環平均へのモデルフィッティングに より抽出したリン脂質ベシクルの配向秩序パラメータ ーS と粘性率 η の比較結果である。ここで配向秩序パ ラメーターS は、流動下における構造体の配向の程度 を表す指標であり、1に接近するほど、配向度が高い ことを表す。 リン脂質分散液は温度に対して複雑な粘性挙動を示 し、二つの粘性率ピークを持つ。リン脂質系の複雑な 粘性挙動は古くから知られていたものの、複数の粘性 率ピークの起源は明らかにされていなかった。 Rheo-SAXS 測定より抽出されたベシクルの流動配向と比較 すると、ベシクルの配向ピークと低温側における粘性 率のピークが一致することがわかる。一方で、高温側 における粘性率のもう一つのピークでは、ベシクルの 配向度は高くない。このことから、二つのピークの原 因が、全く異なる構造要因に起因することが明らかで ある。ベシクルはリン脂質が球殻状に会合した構造体 であるため、流動下において大きく配向することはな い。したがって、高い配向度はベシクルが流動により 破壊されたことを示す。一方、ベシクルの低い配向度 は、ベシクルが球状のまま安定であり、流動では破壊 されないことを示唆する。このように、直接的な構造 観察ができなくても、SAXS によりもたらされる構造 情報は有益である。 間接的な構造情報しか得られない小角X 線散乱であ るが、光学顕微鏡には無い大きな利点もある。顕微鏡 観察では、観察できる視野が極端に制限され、構造を 詳細に見ようとすればするほど視野は狭くなる。この ため、たとえ流速が遅くても構造観察は困難になる(超 高速カメラがあれば問題無いが、当然高額である)。一 方、SAXS 測定は視野の制限を受けず、流速が速くて も計測に困ることはない。時間分解能も高いので、構 造の経時変化を追跡することも可能である。 最後に、SAXS を利用した配向度の抽出法について 簡単に説明する。まず、円環平均により得られた散乱 プロファイル(図 2(b))を、(1)式でフィッティングす る。 (1) P2(x)は変数 x のルジャンドル多項式であり、αは SAXS 強度のピーク分布の幅を特徴付けるパラメータ ーである。散乱プロファイルにおいて、この幅が狭 く、ピークが鋭いほど配向度が高いことを意味する。 またI0はSAXS 強度の最大値、Icはバックグラウンド の強度である。図を見ると、散乱プロファイルは(1)式 により、きれいに表現されていることがわかる。フィ ッティングにより得られたルジャンドル多項式を用 い、次の数値積分((2)式)を実施することにより、構造 体の配向の程度を表す配向秩序パラメーターS が決定 される。 (2) これらは液晶の配向分布関数を応用した解析法である が、流動配向の目安として様々な系の解析に適用でき るだろう。 3.動画からダイナミクスを抽出する 3.1 差分画像法 この節では、顕微鏡下で撮影した動画を解析し、動い ている物体の運動情報を抽出するための手法の一つ、差 分画像法を紹介する。 本解析では、動画を構成する一連のフレーム間の差分 を取る。時間差𝛥𝛥𝛥𝛥だけ離れたフレーム間の差を取ると、 この間にどれだけ粒子が移動したのかがわかる。異なる フレームにおけるイメージの差分𝛥𝛥𝛥𝛥(𝛥𝛥𝛥𝛥)を(3)式のよう に定義する。

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(3) (3)式で𝛥𝛥𝛥𝛥を系統的に変化させることにより、短時間か ら長時間にわたる粒子の運動(ゆらぎ)情報を得ること ができる。蛍光微粒子の顕微鏡画像をもとに、異なる時 刻 𝛥𝛥 � 𝛥𝛥𝛥𝛥と 𝛥𝛥におけるイメージの差分をとった一例を 図3(a)と(b)に示した。次に、この差分画像𝛥𝛥𝛥𝛥を時間 t に わたり平均した後、フーリエ変換することにより、ゆら ぎの構造因子D(q, 𝛥𝛥𝛥𝛥)が抽出される(図 3(c))。この操作 を、𝛥𝛥𝛥𝛥を系統的に変えつつ行うことにより、ゆらぎの時 間発展が得られる。図4 に、本解析により得られる蛍光 微粒子のゆらぎの構造因子 D(q, 𝛥𝛥𝛥𝛥 )の時間発展を示し た。図中の矢印は波数 q の増大方向を指す。この図か ら、時間経過とともにゆらぎの構造因子が増大していく 様子が見える。これこそが、粒子の運動を反映する緩和 曲線であり、この曲線の勾配から微粒子の拡散係数を得 ることができる。 ここまで、差分画像のフーリエ変換像を基にした解析 法を示したが、差分画像そのものの経時変化からも運動 に関する情報を抽出することができる。図3(b)に示した 差分画像には𝛥𝛥𝛥𝛥秒間における粒子運動の軌跡が色の濃 淡によって表現されている。画像全体にわたり濃淡の強 度の自乗平均⟨𝛥𝛥𝛥𝛥(𝛥𝛥𝛥𝛥)⟩を読み取り、その時間変化を追 跡すれば、図4 と同様に微粒子の運動を反映した緩和曲 線が得られる。 8.まとめ 本稿では、私が研究に使用している装置群と解析手 法の一部を紹介した。もし、ここに紹介する実験装置 や解析手法が、この拙文をお読みになった方の研究の 一助となるなら望外の喜びである。 参考文献

1) S. Fujii, S. Komura, Y. Ishii, C.-Y. D. Lu, J. Phys., Cond. Matt., 23, 235105, (2011)

2) S. Fujii, D. Mitsumasu, Y. Isono, W. Richtering, Soft Matter, 8 5381, (2012)

3) S. Fujii, S. Komura, C.-Y. D. Lu, Soft Matter, 10, 8289, (2014) 4) S. Fujii, S. Komura, C.-Y. D. Lu, Materials, 7, 5146, (2014) 5) S. Fujii, Y. Yamamoto, Soft Matter, 11, 9330, (2015) 6) S. Fujii, J. Biorheol., 31, 6, (2017) 7) 高エネルギー加速器研究機構の課題公募は下記サイトを参 照のこと。https://www2.kek.jp/imss/pf/use/proposal/ 8) Spring8 の課題公募は下記サイトを参照のこと。 https://user.spring8.or.jp/?p=34896

𝛥𝛥 � 𝛥𝛥𝛥𝛥 𝛥𝛥 (a) (b) (c) フーリエ変換像 差分画像𝛥𝛥𝛥𝛥(𝛥𝛥𝛥𝛥) 図3. 異なる時間における蛍光顕微画像 (a)と、その差分画像 (b)、そして、差分画像のフーリエ変換像 (c)。

=

図4. フーリエ変換像の各波数におけるフーリエ 係数の時間発展。図中の矢印は波数𝑞𝑞の増加方向 を示す。

𝑞𝑞

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参照

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