主要な研究成果
背 景
BWR 炉心では、気泡(ボイド)量が増加すると反応度が低下し、出力が減少するというボイド反応度フィード
バックがある。出力が低減するとボイド量が低下するため、自己制御性として働くが、フィードバックの位相
によっては、炉心全体が同位相で振動する炉心不安定現象、または炉心領域間で異なる位相で振動する領域不
安定現象が発生する可能性がある。
米国ラサール 2 号機での炉心不安定現象やイタリア国カオルソ炉での領域不安定現象の知見を元に安定性評
価手法が見直され、現在はこの手法に基づく安定性評価結果を元に原子炉の設計および運転がなされている。
これらコードの検証は実用炉での不安定現象もしくは核動特性を考慮しない炉外試験にて行われているため、
核動特性を考慮できる炉外試験装置を開発し、それを利用した広い範囲の系統的な実験に基づく検証を行うこ
とが望まれている。
目 的
チャンネル安定性、炉心安定性および領域安定性を高精度に再現する手法を開発し、ABWR を対象に許認
可条件を含む広い範囲で試験を行い、許認可解析コード ODYSY の精度を検証する。
主な成果
(1)安定性評価手法の開発
ABWR の炉内流動を模擬した熱流動ループ(図-1)とボイド反応度フィードバックのリアルタイムシミュ
レーションを融合させることにより、チャンネル安定性、炉心安定性および領域安定性を精度良く再現できる
試験設備 SIRIUS-F を設計・製作した。炉内の構造物(タイプレートおよびスペーサ等)を精緻に模擬するこ
とで、商用炉で採用されている 9 × 9A 燃料の流れ方向の圧力分布と一致させている(図-2)。また炉心入口流
量の時系列データから自己回帰(AR)法を用いて伝達関数を推定し、その支配極から安定度を求めるノイズ
解析手法を開発した。これにより過度の保守性を考慮することなく、任意の運転条件における安定度の指標
(減幅比:DR)と共振周波数をオンラインで評価することが可能になった。
(2)許認可条件における熱水力安定性評価
最低ポンプ速度最大出力点および自然循環最大出力点を含み広い範囲に対してチャンネル安定性試験を実施
した。試験で得られた DR と共振周波数は許認可安定性解析コード ODYSY の結果と精度良く一致した(図-3)。
これまでの炉外試験では安定限界が指標であったが、時系列解析技術の導入により設置許可に要求される DR
を指標として解析コードの検証が初めて可能になった。
(3)許認可条件における核熱結合安定性評価
最低ポンプ速度最大出力点および自然循環最大出力点を含み広い範囲に対してボイド反応度フィードバック
を考慮した安定性試験を実施した(図-4)。試験では安定度が低いモードである領域安定性が卓越して現れた。
二つのチャンネル入口流量の相互相関が時間遅れ 0s で大きな負のピークを示すことからも、試験では領域安
定性が卓越したこと判断できる。
領域安定性の DR と共振周波数についても、許認可解析コードの計算結果は、試験結果と精度良く一致した
(図-4)。
以上により、これまでは実炉の不安定現象のデータが数点存在するのみであったが、SIRIUS-F 設備を用い
て幅広い条件で、DR を対象に許認可解析コードを検証することができ、実機の安定裕度を系統的かつ正確に
把握することが初めて可能になった。
主担当者 原子力技術研究所 発電基盤技術領域 主任研究員 古谷 正裕
関連報告書 「炉内流動と核反応度との結合を模擬した BWR 領域安定性試験設備 SIRIUS-F の開発と安
定性評価」電力中央研究所報告: L04001(2004 年 3 月)
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炉内流動と核反応度との結合を模擬した
BWR領域安定性試験設備SIRIUS-Fの開発とABWRの安定性評価
5.原子力発電/軽水炉発電の経済性・信頼性向上
81
6.85 6.86 6.87 6.88
-0.5
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
圧力, P (MPa)
炉心入口からの高さ,
H
(m)
模擬燃料チャンネル(左)
模擬燃料チャンネル(右)
ABWRプラント設計値
60 65 70 75 80 85
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
安定
不安定
最低ポンプ速度最大出力点
領域安定性
炉心安定性
領域安定性
最低ポンプ速度最大出力点
炉心安定性
実機出力, P(%)
炉心安定性・領域安定性減幅比,
DR
(−)
共振周波数,
f(Hz)
42%実機流量
42%実機流量
SIRIUS-F試験結果
許認可解析コードの結果(領域安定性)
許認可解析コードの結果(炉心安定性)
60 65 70 75 80 85
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
安定
不安定
最低ポンプ速度最大出力点
最低ポンプ速度最大出力点
実機出力, P(%)
チャンネル安定性減幅比,
DR
(−)
共振周波数,
f(Hz)
42%実機流量
42%実機流量
SIRIUS-F試験結果
許認可解析コードの結果(チャンネル安定性)
凝縮器
オリフィス流量計
予熱器
真空ポンプ
圧力開放系
微調冷却器
循環ポンプ
気水分離器
模擬燃料チャンネル
(左)
模擬燃料チャンネル
(右)
バイパス
(平均チャンネルを模擬) 主冷却器
ゲート弁
下部プレナム
窒素ガス
タンク
タービン
流量計
図-1 SIRIUS-F設備の熱流動ループ
全高13mのSIRIUS-F設備はABWRの炉内流動を精緻に
模擬できるように設計されている。
図-2 流れ方向圧力分布の比較
安定性評価上重要な圧力分布はABWRとSIRIUS-F
設備とで良い一致を示した。
図-4 炉心安定性・領域安定性試験結果
核反応を考慮した核熱結合安定性評価を行った。そ
の結果、安定度の低いモードである領域安定性の解
析結果はSIRIUS-Fでの試験結果と精度良く一致した。
図-3 チャンネル安定性試験結果
出力一定条件下で熱流動の安定性を評価した。その
結果、解析結果はSIRIUS-Fでの試験と精度良く一致
した。