Ⅳ-2.サンゴ種苗生産技術の開発
2.現地対応型のサンゴ幼生収集・着床技術の開発
2.1 幼生収集装置の開発
目 次
Ⅳ-2 サンゴ種苗生産技術の開発 2. 現地対応型のサンゴ幼生収集・着床技術の開発 ···Ⅳ-2-2-1 2.1 幼生収集装置の開発 ···Ⅳ-2-2-1 (1) はじめに ···Ⅳ-2-2-1 (2) 調査内容 ···Ⅳ-2-2-3 1) 目 的 ···Ⅳ-2-2-3 2) 試験概要 ···Ⅳ-2-2-4 (3) 調査結果 ··· Ⅳ-2-2-12 (4) 考察および評価 ··· Ⅳ-2-2-14 (5) 結 論 ··· Ⅳ-2-2-15 (6) 今後の課題 ··· Ⅳ-2-2-15 2.2 現地対応型の着床具の開発 ··· Ⅳ-2-2-17 (1) はじめに ··· Ⅳ-2-2-17 (2) 調査概要 ··· Ⅳ-2-2-18 1) 目的 ··· Ⅳ-2-2-18 2) 調査場所 ··· Ⅳ-2-2-19 3) 手順および工程 ··· Ⅳ-2-2-22 4) 試験方法 ··· Ⅳ-2-2-26 (3) 調査結果 ··· Ⅳ-2-2-33 1) 崎枝湾(今年度試験) ··· Ⅳ-2-2-33 2) 過年度試験のモニタリング結果 ··· Ⅳ-2-2-39 3) 夏季高水温によるサンゴの白化状況(石垣島・石西礁湖) ··· Ⅳ-2-2-52 (4) 考 察··· Ⅳ-2-2-58 1) 着床具のリサイクル性の検討 ··· Ⅳ-2-2-58 2) 低コスト型着床具の検討 ··· Ⅳ-2-2-58 3) 着床作業の効率化の検討 ··· Ⅳ-2-2-59 4) 小分割着床具の種苗生残性の把握 ··· Ⅳ-2-2-60 5) 移植場所による種苗生残性の比較 ··· Ⅳ-2-2-60 6) 水深別・格子ピッチ別の生残性の比較 ··· Ⅳ-2-2-60 (5) 今後の課題 ··· Ⅳ-2-2-61 1) 低コスト型着床具の検討 ··· Ⅳ-2-2-61 2) 装置を有効活用した種苗生産の検討 ··· Ⅳ-2-2-61 3) 着床作業の効率化の検討 ··· Ⅳ-2-2-622 現地対応型のサンゴ幼生収集・着床技術の開発
2.1 幼生収集装置の開発
(1)はじめに
現在行っている種苗生産は、陸上水槽による種苗生産・運搬・移植に関して、一定のコ ストと労力が必要である。ここでは、現地においてサンゴ卵の収集、幼生保持、着床具へ の着生までの一連の種苗生産を可能にする幼生収集装置(以下、装置)を開発し、陸上水 槽による種苗生産手法の省力化を検討した。図Ⅳ-2.2.1.1 に示すイメージのように、ネット 状円筒型の装置を製作し、サンゴ卵の収集から着床具への幼生の着生までの過程を海域で 完結する技術開発を目指すものである。 石垣島浦底湾(西海区水産研究所亜熱帯研究センター前)で行った基礎試験により、平 成25 年度には、幼生の生残率を高められる装置の適正な目合いサイズが 30μm であること を確認した。同海域において平成26 年度には、強度・耐久性を高め、幼生の偏在による死 滅を低減するため、角型から円筒型に装置の構造を改良した。また、100 万から 300 万の 幼生を収集・保持可能であることを確認した。平成27 年度には、装置内に保持した幼生を、 表層から全層に吊して設置した格子状着床具に着生させ、着生しやすい水深帯および配置 方法を把握し、装置内で大量の種苗を生産できる可能性を実証した。さらに、平成27 年度 は沖ノ鳥島で実証試験を行い、装置を 7 日間サンゴ増殖実証試験基盤(以下、試験基盤) 周辺に設置して構造の耐久性を確認した。 平成28 年度は、沖ノ鳥島での大規模な現地種苗生産の可能性を実証するために、装置と 試験基盤との一体化を目標として、試験基盤一マス(5 ㎡)を被うことができる装置を開発 し、耐久性を確認した。1.5m 1.5m 親サンゴ 着床具 底部を閉じて幼生 の流出を防ぐ
①卵の収集・受精
②幼生の保持
(着底期まで)
③幼生の着床具への着生
卵 着床具に着生 した稚サンゴ着生具を用いた
種苗生産
図Ⅳ-2.2.1.1 幼生収集装置の将来的なイメージ④着床具を岩盤や架台に移植
(2)調査内容
1)目的 本検討の目的は、装置を活用した現地種苗生産技術に関する知見を収集・整理し、沖 ノ鳥島での実用化に寄与することである。 本試験の検討項目および評価項目を表Ⅳ-2.2.1.1 に示す。 表Ⅳ-2.2.1.1 装置の開発における検討項目 目的 検討項目 評価項目 装置の耐久性の検討 :沖ノ鳥島(実証試験) ・試験基盤一マス(5 ㎡)を被うことができる 装置をコンクリート型試験基盤に固定して、 親サンゴの産卵から幼生の着底期までの期間 を想定して1週間程度設置し、耐久性につい て検討する。 ・耐久性 ※ 本検討では、大森ら(2005)の報告を参考に、プラヌラ幼生は3日齢以降に鉛直的に 分散し始めるとの仮定の下、4日齢を着底期の幼生と定義した。2)試験概要 沖ノ鳥島のコンクリート型試験基盤に、装置を固定し、設置方法および耐久性等を 検討した。 ① 場所 沖ノ鳥島における調査位置を図Ⅳ-2.2.1.2 に示す。 図Ⅳ-2.2.1.2 調査位置 第 2 フェーズ試験区 蛇カゴ型 コンクリート型 対照区 100m :調査場所 第 2 フェーズ試験区 500m 試験対象区画
② 工程 調査中にサンゴ(A. tenuis)の成熟が確認された場合には、装置内で産卵・受精させ、 幼生を収集し、格子状着床具への着生を観察することとした。しかし、今回の調査時 には成熟サンゴの抱卵が確認されなかったため、装置の設置方法や構造、耐久性等の 検討のみを実施した。 調査工程の実績を表Ⅳ-2.2.1.2 に示す。 調査期間中の礁外の平均風速は3.0~10m/s で、平均波高は 0.5~2.0m であった。5/24 ~25 は荒天で、水面付近に風浪の影響が生じていた。 表Ⅳ-2.2.1.2 調査工程の実績(沖ノ鳥島) 日程 調査内容 平均気温/風速/波高 5/22 ・礁内に生息する成熟サンゴ(A.tenuis)の抱卵 状況確認 ・装置を固定するための単管を試験基盤の柱 に固定 ・装置の設置 31.0℃ / 4.0m/s / 1.0m 5/23 ・装置の設置 ・試験基盤側面に幼生流出防止用ネットを 取付け ・格子状着床具の配置 (下層:試験基盤内の格子状台座部) 30.0℃ / 5.0m/s / 1.0m 5/24~25 荒天待機 27.0℃ / 8.0m/s / 2.0m 27.0℃ / 10m/s / 2.0m 5/26~27 ・装置の状況確認および点検 28.0℃ / 8.0m/s / 1.5m28.0℃ / 5.0m/s / 1.0m 5/28 ・格子状着床具の配置 (上層・中層:ブイで装置上部から吊り下げ) 27.0℃ / 10m/s / 1.0m 5/29 ・装置撤去 31.0℃ / 3.0m/s / 0.5m 注)平均気温・風速は調査船の船員記録を参照した。
③ 試験方法 a. 装置の構造と材料 装置の枠組みやネットの材質・構造については、昨年度までの試験で検討されている ため、基本的な枠組みとネットの構造に関しては昨年と同様の材料・構造とした。 ネット部に関しては、ネットの目合いが発生初期(卵割開始~桑実胚期)の幼生の生 残率に大きく影響する。昨年度までの試験において、ネット目合い 100μm、30μm お よび不透過膜では、目合い 30μm のネットが最も幼生の生残率が高くなることが明ら かとなっている。このため、物理的な衝撃に弱い受精卵や発生初期の幼生が多く分布 すると考えられる水面下 1m までのネットを目合い 30μm ネット、水面下 1m 以深を 幼生(ウスエダミドリイシのプラヌラ幼生の大きさ:750μm(岩尾・大矢,1998))が 抜け出ず海水交換の効率が高い100μm ネットとした。 平成27 年度の沖ノ鳥島実証試験では、試験基盤内の台座を覆うように装置を設置し たが、台座が格子構造のため、装置が完全には密閉されていない状態であった(図 Ⅳ-2.2.1.3)。このため、産卵時に装置内で下方向への流れが生じた場合に、卵の装置外 への流出が懸念された。 以上を踏まえ、今年度の試験では、産卵時における装置全体を密閉するような改善策 として、試験基盤一マス(5 ㎡)を被うことができるように装置底部をスカート状に改 良し、さらに、試験基盤側面に別途100µm 目合いのネット素材を取付けた。これによ り、試験基盤全体を覆うことが可能で、周囲からの流れを遮蔽するとともに、卵や幼 生の流出も防ぐことができると考えられる。 表Ⅳ-2.2.1.3 に装置作成に使用した主な材料、図Ⅳ-2.2.1.4 に装置外枠の材質の仕様、 図Ⅳ-2.2.1.5 に装置全体の構造、図Ⅳ-2.2.1.6 に装置底部(スカート部)の構造を示す。 図Ⅳ-2.2.1.3 産卵時の装置設置状況(平成 27 年度実証試験) 格子構造のため、完全な 密閉状態ではない 成熟サンゴを 覆うように設置 下方向の流れが 生じている可能性 あり
表Ⅳ-2.2.1.3 装置の材質および形状 部位 材質、形状 等 外枠 強化プラスチック複合管 (外径・内径φ14mm・φ4mm×1,400mm) 可動性支柱 上記に同じ ネット部 水面下0~1m 目合い100μm のナイロンネット 水面下1~3m 試験(1):目合い100μm のナイロンネット 浮子 装置用 EVA ブイ(浮力 5kg) 中性浮力用 500ml ペットボトル ロープ 装置固定用 φ20mm ロープ パーツ固定用 ナイロンロープ ※ 強化プラスチック複合管: [メーカー・製品名]積水化学工業・タフポール [材質]FRP 製 [重量]230g/m [特徴]・塩ビ管等よりも軽くて強靭な素材 ・海水・錆・腐食に強く、耐久性に優れる 図Ⅳ-2.2.1.4 装置外枠の材質の仕様
b. 装置の設置 沖ノ鳥島では、基礎試験を行っている石垣島浦底湾と比べて流速が速く、装置にか かる抵抗も大きいことが想定される。したがって、図Ⅳ-2.2.1.23 のようにコンクリー ト型試験基盤の周りに補助用の単管を組み、ロープで単管と装置を固定することで耐 久性の向上を図った。 評価方法は、親サンゴの産卵後から幼生が着底期となる 4 日齢までの期間中に幼生 を装置内で保持することを想定し、構造が1 週間程度維持されるかどうかで評価した。 幼生収集装置の設置イメージおよび位置を図Ⅳ-2.2.1.7 に示す。 図Ⅳ-2.2.1.7 沖ノ鳥島における幼生収集装置の設置イメージおよび位置 -5.0m -0.0m -3.0m -2.0m -1.0m -4.0m 単管 目合い30µm(※水面下1mは、100μm) 2.8m 装置: φ1.7m 枠: 1.7m四方 浮子 ・グレーチング水平棚に親サンゴ (A.tenuis)8群体以上を配置 ・インターバルカメラを設置して、 産卵状況を観察 最満潮時の水深 強化プラ複合菅 (φ9mm)の外枠 強化プラ複合菅 (φ9mm)の外枠 → コンクリ礁に固定 コンクリ礁全体をネットで覆う ・天端部はスカート状のネット取り付けて密閉 ・側面の開口部にもネットを取り付けて密閉 天井部と同様に 2段に組む(高さ10cm) → 単管に固定 装置設置位置 -4.6m ロープで連結 リング状の器具とロープで連結し可動式にする ロープで連結 装置設置位置
浮子 吊り下げ型 ・3 水深 ・3 セット 架台配置型 150 ㎝ 網袋(5 枚) →計45 枚 全て 4.0cm 格子 ピッチ 水面 最満潮時 :460 ㎝ 最干潮時 :325cm 50 ㎝ 50 ㎝ 第 1 層 第 3 層 (1.0m) (2.0m) 第 2 層 (0.5m) (1.5m) 50 ㎝ 浮子 浮子 計55 枚(2.5cm 格子ピッチ 25 枚含む) 潮位変動 対応範囲 (2.5m) 170 ㎝ c. 格子状着床具の配置 幼生の着底期(4日齢)となる日を想定して、装置設置から5日後にあたる5/28(装 置の設置完了は5/23)に、装置内に格子状着床具を投入した。格子状着床具は、網袋 (目合い1~2cm)に入れた状態で装置天井部からロープにより吊り下げて、上~中層 (水面から0.5m、1.0m、2.5m)へ配置した。浮子付きのポールから吊り下げること で、着床具を任意の位置に配置し、流れによる着床具の偏りを防止した。上~中層の 着床具は、幼生が着生するまでの期間を想定し、1日間設置した。 下層(海底から1.5m)には、試験基盤の天端面および側面を密閉する前に、格子状 着床具を試験基盤内の台座部上に水平に配置した。 格子状床具の装置内配置イメージを図Ⅳ-2.2.1.8に示す。 図Ⅳ-2.2.1.8 格子状着床具の配置イメージ(断面図) 着床具配置イメージ (断面図)
(3)調査結果
装置の構造は、5 月 22 日から 5 月 29 日までの計 8 日間において、大きな破損は確認 されず、構造を維持できた。 装置本体(水中)は、目立った破損等はみられなかった。 装置上部(水面上)は、2 日間の荒天待機後、ネット生地の破損が確認された。 格子状着床具は、1 日間設置した結果、着床具の偏りや流出等の問題はみられなかった。 図Ⅳ-2.2.1.9 に装置の設置時の状況、図Ⅳ-2.2.1.10 に荒天後の状況、図Ⅳ-2.2.1.11 に格 子状着床具の配置状況を示す。 図Ⅳ-2.2.1.9 装置の設置時の状況 装置固定用単管の設置 装置本体の設置 装置底部(スカート状) 試験基盤側面のネット取付け 試験基盤の 上部を被覆 側面からの 配偶子・幼生の 流出防止 装置設置後:水中 装置設置後:水面上 20cm 程度の 空間を確保 N E W S図Ⅳ-2.2.1.10 荒天後(5/25 以降)の装置の状況 図Ⅳ-2.2.1.11 格子状着床具の配置状況 ネットが一部破損 N(奥) W E S(手前) 5/26(荒天後)の状況:水面上 5/26(荒天後)の状況:水中 5/29(装置撤去前)の状況:水中 装置内の着床具配置状況(上~中層) 浮子による吊り下げ 装置内の着床具配置状況(下層) 配置作業状況 5/23(荒天前)の状況:水面上 N E W S
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 5月22日 5月23日 5月24日 5月25日 5月26日 5月27日 5月28日 5月29日 波高 ( m ) 風速 (m/s ) 波高 風速
(4)考察および評価
装置の設置方法および耐久性試験の結果、装置本体に大きな破損はみられず、計 8 日 間、構造を維持した状態で海域に設置することができた。これにより、設置方法に関し ては特に問題はないものと思われる。 しかし、装置上部(水面上)は荒天時に一部破損しており、卵および幼生が装置外へ 流出する恐れがある。 装置の設置期間中の気象・海象情報を図Ⅳ-2.2.1.12 に示す。荒天時(5/24~5/25)は、 平均風速が8.0~10m/s、平均波高が 2.0m である。装置は主に 30μm~100μm のナイロ ンメッシュ素材のネットであり、装置上部の破損箇所も同様の素材であるため、荒天時 の強い風力・波力によりネットにテンションがかかり、裂け目が発生したことが考えら れる。 以上より、装置上部の材質および構造について改良し、ネットにかかるテンションを 分散させることで、裂け目の発生を防止する工夫が必要である。ただし、水面付近は物 理的な衝撃に弱い受精卵や発生初期(卵割開始~桑実胚期)の幼生が多く分布するため、 通水性も確保でき、幼生の生残率を高く維持できるような材質・構造が望ましい。また、 波当たりが破損の主な原因であれば、水面付近の装置の傾きを低減するような設置方法 も破損対策に有効な可能性がある。 図Ⅳ-2.2.1.12 装置設置期間中の平均波高・平均風速情報 (調査船の船員観測記録より整理) 荒天待機(5)結論
表Ⅳ-2.2.1.4 に、評価項目に対する評価結果を整理した。 表Ⅳ-2.2.1.4 装置の設置方法・耐久性の検討に対する評価結果 目標に対する評価結果 <目標> 卵の収集~幼生の着生まで1 週間程度、装置の構造を維持する。 設置方法 ○:8 日間装置の構造を維持できており、単管による装置の固定や、 スカート状の装置底部の取付け等、設置方法に問題はない。 構造・耐久性 △:装置上部(水面上)は耐久性に課題があるため、より強度の高い 材質および構造で補強する必要がある。 ※「凡例」◯目標達成、△改善の余地あり(6)今後の課題
表Ⅳ-2.2.1.5 に、今後の課題および改良点を示す。 表Ⅳ-2.2.1.5 各試験における今後の課題および改良点 区分 今後の課題および改良点 装置の 耐久性 装置上部の材質および構造について、荒天時であっても破損を防 げるように改善する必要がある。改善案としては、図Ⅳ-2.2.1.13 に示すように、装置上部のネット生地の箇所に強度の高い生地 (キャンパス生地等)を一部取付けて補強することが挙げられ る。これにより、風や波による外力を受けた際にネットにかかる テンションを分散させ、裂け目の発生を防止することができ、か つ通水性を保つことができる。 波当たりによる破損に対しては、水面付近の装置の傾きを低減す るような設置方法も有効な可能性がある。例えば、補助用の単管 を長くして、水面付近の外枠もロープ固定することで安定性を向 上させる方法や、ブイの浮力を大きくする方法等が考えられる。 ただし、補助用単管を長くした場合には、抵抗が増大することや、 運搬および設置時のハンドリングが低下することにも留意する 必要がある。1,000mm 1,000mm 1,000mm 1,000mm 600mm 1,700mm 250mm 550mm 550mm アイメッシュ ネットに縫合されている メッシュ加工 (太さ約2~5mm) ネット (目合い100µm) 破損箇所 (ネットの破れ) 100mm 100mm ネット (目合い30µm) 丈夫なキャンパス生地で 補強 装置の断面図 図Ⅳ-2.2.1.13 幼生収集装置の断面図および水面上の破損状況と対策イメージ
2.2 現地対応型の着床具の開発
(1)はじめに
本検討の目的は、現地における種苗生産技術(現地種苗生産技術)の確立に向けた知 見を収集・整理し、沖ノ鳥島での実用化に寄与することである。 水産庁では沖ノ鳥島のサンゴ群集を拡大させるための手法として、これまで表Ⅳ -2.2.2.1 の①、②の技術開発に取り組んでいる。さらに、技術の多様化を図ることによっ てリスクを軽減し、着実にサンゴ群集の拡大を図っていくことが望まれており、表Ⅳ -2.2.2.1 の③の技術に示す現地対応型の種苗生産技術の開発にも取り組んでいる。 表Ⅳ-2.2.2.1 沖ノ鳥島で検討しているサンゴ群集拡大のための技術開発 技術名称 概 要 リスク(例) ①サンゴ種苗生産 および移植技術 沖 ノ 鳥 島 産 の 親 サ ン ゴ から種苗を生産し、沖ノ 鳥島に移植する。 飼育期間が長いため、大きなコストと労 力を要する。 ②現地種苗生産技術 (幼生飼育、放流) 成 熟 し た サ ン ゴ を 陸 上 ( 船 上 ) の 水 槽 内 で 産 卵・受精させる。着底期 ま で 飼 育 し た 幼 生 を 着 床具に着生させて、着床 具を現場に固定する。 着床具への着生作業は、海況が良好であ れば現地で行うことが望ましい。しかし、 海象条件の都合で現場に着床具を固定で きない場合は、海況が回復するまで船上 の限られたスペースで飼育する必要があ り、種苗の病気や死滅のリスクが高まる。 ③現地種苗生産技術 (幼生収集装置) 現 場 海 域 に 幼 生 収 集 装 置を設置し、直接幼生を 収集、飼育、放流する。 産卵後少なくとも5 日間は海象条件が安 定している必要があるため、設置できな いことや適切なタイミングで放流できな い可能性がある。 過年度調査では、沖縄海域の浦底湾(西海区水産研究所亜熱帯研究センター前)にお いて②幼生飼育と放流手法の基礎試験が行われており、本技術の種別の適応性、格子状 着床具(以下、着床具)の配置場所別等の生残性等の知見を把握した。また、沖ノ鳥島 でも同様の方法で試験が行われ、着床具への稚サンゴの着生が確認されている。 平成26 年度からは、効率化を見据えて、石垣島浦底湾において基礎試験が行われてい る。具体的には、移植時の着床具のハンドリングを向上させ、着生したサンゴを有効利 用するために、着床具の小型化が望ましいことから、小分割可能な着床具を用いて着生 試験が行われた。平成27 年度には、着生 1 年後の生残状況のモニタリング後に、試験架 台および岩盤への移植が行われ、調査結果より、着生 1 年後に 1 群体以上が着生するよ うな最小の着床具サイズは、4.0cm 格子ピッチの 2×2 マスサイズが適している可能性が 示唆された。しかし、従来型のFRP 製着床具にはコスト面に課題があるため、今年度は、 0 歳齢稚サンゴの種苗生産コストの低減を目的として、「着床具のリサイクル」、「低コスト型の着床具」、「着床作業の効率化」について検討した。 また、平成25~27 年度に浦底湾、小浜島、沖ノ鳥島で行われた試験について、着床具 上の稚サンゴの1~3 年後の生残状況をモニタリングした。
(2)調査概要
1)目的 表Ⅳ-2.2.2.2 に調査場所別の目的および比較条件、評価項目を示す。 表Ⅳ-2.2.2.2 試験目的および評価項目 目 的 比較条件 評価項目 崎枝湾 今年度 ・着床具のリサイクル性の検討 ・低コスト型着床具の検討 ・着床作業の効率化 ・新品着床具、中古着床具 ・低コスト型の着床具 3 種 ・実績人工数、種苗生産 のみに要する人工数 ・着生数 ・3 ヶ月後、 6 ヵ月後の 生残状況 浦底湾 平成 27 年度 ・小分割着床具の種苗生残性の 把握 ・着生 6 ヶ月後、15 ヶ月後 ・1 年後の 生残状況 浦底湾 平成 26 年度 ・移植方法による生残性の検討 ・岩盤移植、架台移植 ・移植後の 生残状況 小浜島 平成 25 年度 ・水深別の生残性の把握 ・D.L.-4m、D.L.-9m ・2 年後の 生残状況 ・格子ピッチ別の生残性の把握 ・2.5cm 格子ピッチ、 4.0cm 格子ピッチ 小浜島 平成 24 年度 ・水深別の生残性の把握 ・D.L.-4m、D.L.-9m ・3 年後の 生残状況 沖ノ鳥島 平成 25・27 年度 ・格子ピッチ別の生残性の把握 ・2.5cm 格子ピッチ、 4.0cm 格子ピッチ ・1、3 年後の 生残状況 注)赤文字は今年度試験での主な検討項目、黒文字は過年度試験のモニタリングを示す。2) 調査場所 ①今年度試験(崎枝湾) 調査場所は、崎枝湾内の八重山漁協観賞魚部会サンゴ養殖研究班(以下、サンゴ養殖 班)のサンゴ養殖海域とした。調査場所の選定理由は、将来的な実用化を目指した着生 作業の効率化の検討のため、サンゴ養殖班と試験を共同実施したためである。 装置設置場所の水深は、石垣港工事用基準面を基準とした場合 D.L.-3~-4m 程度であ る。底質は砂礫底であり、透明度は比較的高い海域である。図Ⅳ-2.2.2.1 に調査場所を示 す。 図Ⅳ-2.2.1.2 調査場所 図Ⅳ-2.2.2.1 調査場所 調査場所 1㎞ N 崎枝湾 石垣島
②過年度試験モニタリング a.浦底湾 調査場所は、西海区水産研究所亜熱帯研究センター近傍の浦底湾内とした。調査場所 の選定理由は、底質が砂礫底で、高波浪時に潮流が速くなるなど沖ノ鳥島と類似した環 境であったためである。 着床具の設置場所の水深は D.L.-3m 程度であり、底質は砂礫底で、場所によりまだら に浮泥が堆積している。サンゴの総被度は1%未満であり、塊状サンゴ等がわずかに分布 している程度である。樹枝状サンゴの死骸(サンゴ礫)が目立ち、過去には多くの群集 が分布していたと考えられる。図Ⅳ-2.2.2.2 に調査場所を示す。 図Ⅳ-2.2.2.2 調査場所(浦底湾) 浦底湾 石垣島 1㎞ 西海区水産研究所 亜熱帯研究センター 調査場所 N N 24°27′43.0″ E124°12′42.0″
b.小浜島 調査場所は、平成23 年度にサンゴ増殖実証試験基盤(以下、試験基盤)が据え付けて あるD.L.-4m および D.L.-9m の 2 地点とした。調査場所の選定理由は試験基盤内の格子 構造をした台座部に着床具を固定可能であり、高波浪時においても試験基盤の中であれ ば比較的静穏なことから、安定性が高いためである。 底質はD.L.-4m が砂礫底、D.L.-9m が砂底で、恒常的に透明度が低く、濁りがみられ る場所である。サンゴの総被度は 1~15%程度であり、点在する岩盤上では被度が高く、 砂礫底では被度が低い。樹枝状サンゴの死骸(サンゴ礫)が散在しており、過去には樹 枝状サンゴ群集が分布していたと考えられる。図Ⅳ-2.2.2.3 に調査場所を示す。 図Ⅳ-2.2.2.3 調査場所(小浜島) c.沖ノ鳥島 調査場所は、沖ノ鳥島礁内の試験基盤(コンクリート型・じゃかご型)とした。 着床具の設置場所の水深は D.L.-4m 程度であり、底質は概して礫底でノルが点在して いる。礫や岩盤へのラン藻類の付着が目立ち、サンゴの総被度は 1%未満である。図Ⅳ -2.2.2.4 に調査場所を示す。 図Ⅳ-2.2.2.4 調査場所(沖ノ鳥島) 500m 第 2 フェーズ 蛇カゴ型 コンクリート 対照区 100m N 20°25′16.5″ E136°05′27.7″ 1km 小浜島 石垣島 D.L.-9m D.L.-4m N D.L.-9m: N 24°18′28.2″ E123°59′04.7″ D.L.-4m: N 24°18′16.1″ E123°59′08.1″
3) 手順および工程 ①今年度試験(崎枝湾) 崎枝湾での今年度試験における調査手順を図Ⅳ-2.2.2.5 に、調査工程の実績を表Ⅳ -2.2.2.3 に示す。 崎枝湾での調査は2016 年 5 月 15 日から 8 月 18 日まで行った。期間中の平均風速は 2.5~6.8m/sec であり、調査期間中の 5 月 15 日から 16 日にかけては、瞬間最大風速が 10m を超えるような風浪の影響により、装置の外枠の一部が破損した。装置本体のネッ ト部分に破損は見られなかったため、装置の補修は速やかに完了した。また、親サンゴ の産卵前であったこともあり、調査に大きな支障は生じなかった。 なお、今年度は採取した親サンゴの自然産卵が当初の予想より遅れたため、装置内の 親サンゴを対象に産卵誘発処理を行った。その結果、1 回の産卵誘発で必要量の産卵数を 確保でき、その後、従来試験通り10 日間で調査を完了した。
図Ⅳ-2.2.2.5 調査手順 収集 保持 着生 実験に必要な 産卵数を確保したか サンゴの採取・配置等 実験開始 装置の設置 4 日令まで幼生は 生残しているか 装置の構造、 管理方法の改善 NO NO YES YES → 幼生数の計測 幼生を着床具に 着生できたか YES → 着生数の計測 NO 各実験系の着生数の比較
表Ⅳ-2.2.2.3 調査工程の実績(崎枝湾) 日程 調査内容 平均気温 / 風速 4/14 ・架台 9 台の設置、着生具の浸漬(海域への馴致) 24.0℃ / 4.0 m/s 5/8 ・親サンゴの選定(八重山漁協養殖サンゴを貸与) ※西海区水産研究所および八重山漁協が実施 27.9℃ / 3.5 m/s 5/12 ・親サンゴの採取(石西礁湖) ※西海区水産研究所の特別採捕許可の範疇で実施 26.3℃ / 4.0 m/s 5/13 ・装置を海域に設置 ・装置内に親サンゴを配置 27.0℃ / 4.2 m/s 5/17 ・5/16 の風浪により破損した装置の補修 23.6℃ / 4.5 m/s 5/19 ・親サンゴに対する産卵誘発処理の実施 26.4℃ / 3.7 m/s 5/20 ・親サンゴの産卵を確認 25.6℃ / 2.3 m/s 5/23 ・3 日令の幼生のサンプリングおよび幼生数の測定 26.4℃ / 2.3 m/s 5/24 ・吊り下げ型および架台設置型の着床具を装置内に投入 27.0℃ / 2.1 m/s 5/26 ・装置の撤去 ・着床具の設置 27.5℃ / 1.7 m/s 5/29 5/30 ・着生数調査(モニタリングピースの回収および検鏡) 29.2℃ / 4.2 m/s 8/18 ・3 ヶ月後のモニタリング調査 29.0℃ / 2.2 m/s ≪参考≫ 最大瞬間風速の観測値 装置設置期間の気象庁観測の最大瞬間風速(観測地点:伊原間)を図Ⅳ-2.2.2.6 に示す。 装置が破損した5/16 は最大瞬間風速が 13.3 m/s であった。5/16 の風浪によって装置本体 の受ける抵抗が大きくなり、装置の外枠にかかる外力も増大したため、外枠の一部が破損 したと考えられる。 図Ⅳ-2.2.2.6 装置設置期間の最大瞬間風速 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 5/1 5/3 5/5 5/7 5/9 5/11 5/13 5/15 5/17 5/19 5/21 5/23 5/25 5/27 5/29 5/31 最 大瞬間風 速 (m/ s) 注1)平均気温・風速は気象庁データ(伊原間)より引用した。 装置破損(5/16) 装置設置期間(5/13~5/26) 補修(5/17)
②過年度試験のモニタリング a.浦底湾・小浜島 浦底湾での今年度試験における調査工程の実績を表Ⅳ-2.2.2.4 に示す。 浦底湾でのモニタリングは8 月 17 日に実施し、調査日の平均風速は 2.2m/s(気象庁, 伊原間)であり、海象条件は概ね穏やかであった。 小浜島でのモニタリングは8 月 19 日に実施し、平均風速は 2.5m/s(気象庁,大原)で あり、海象条件は穏やかであった。 表Ⅳ-2.2.2.4 工程の実績(浦底湾・小浜島:2016 年) 日程 場所 調査内容 平均気温/風速 8/17 浦底湾 ・平成 26 年度試験の着床具における着生維持率 の調査(岩盤および架台への移植から1 年後) ・平成27 年度試験の着床具における着生維持率 の調査(着生から15 ヶ月後) 28.5℃/ 1.8 m/s 8/19 小浜島 ・平成おける稚サンゴの生残状況のモニタリング 24 年度、平成 25 年度試験の着床具に 28.6℃/ 2.5 m/s 注)平均気温・風速は気象庁データ(浦底湾:伊原間)(小浜島:大原)より引用した。 b. 沖ノ鳥島 沖ノ鳥島での今年度試験における調査工程の実績を表Ⅳ-2.2.2.5 に示す。 モニタリングは、5 月 23 日および 5 月 29 日に実施し、調査日の平均風速は 3.0~5.0m/s (船員記録)であり、海象条件は概ね穏やかであった。 表Ⅳ-2.2.2.5 工程の実績(沖ノ鳥島:2016 年) 日程 調査内容 平均気温/風速 5/23 平成生残状況のモニタリング 25 年度試験の着床具における稚サンゴの 30.0℃/ 5.0 m/s 5/29 平成生残状況のモニタリング 27 年度試験の着床具における稚サンゴの 31.0℃/ 3.0 m/s 注)平均気温・風速は船員記録より引用した。
4)試験方法 ①崎枝湾(今年度試験) 本試験では、着床具の低コスト化を目的として、着床具のリサイクル性および低コス ト型の着床具の検討を行った。また、着生作業の効率化を検討するため、作業に要した 人工数を把握した。図Ⅳ-2.2.2.7 に試験イメージを、図Ⅳ-2.2.2.8 に着床具の配置方法を 示す。 効率的に種苗を生産するため、装置内に吊り下げ式と架台設置式の2 パターンで着床 具を投入、配置した。吊り下げ式では、着床具を20 枚程度入れた網袋を浮子に 4 袋吊 り下げて装置内に投入し、架台設置式では2 段架台の上層および下層にそれぞれ着床具 を水平配置した。 平成27 年度の調査により、着生能力を有する 4 日令時の幼生は概ね装置内全体に分 布しているものの、比較的上層に多い傾向があることが分かっている。また、着生につ いても同様で、下層に配置した着床具と比較して、上層に配置した着床具への着生が多 いことが分かっている。そのため、吊り下げ式の着床具については、上層の投入数を下 層よりも増やした。具体的には、上層(水深 0.3m~1.0m)、下層(水深 2.0m)共に約 20 枚/袋とし、上層は各 3 袋/浮子、下層は各 1 袋/浮子とし、合計 11 ブイを設置した。 投入着床具数は、吊り下げ式、架台設置式を併せて約1,000 枚とした。 図Ⅳ-2.2.2.7 試験イメージ a. 幼生数 装置内の幼生数を把握するため、着床具投入を行う前日の幼生3 日令時に装置内の幼 生数の調査を行った。その結果、装置内の幼生数は約100 万個体であった。平成 27 年 度の試験では、装置内に収容した受精卵の4 日令までの生残率は 90%以上であったこと から、本試験でも幼生数が3 日令から 4 日令にかけての減少はほとんどないものと仮定 し、着生数調査に供試する幼生数は100 万個体とした。 網袋に入れた 着床具
図Ⅳ-2.2.2.8 着床具の配置方法 浮子 浮子 吊り下げ型 架台配置型 50 ㎝ 30 ㎝ 30 ㎝ 4m 上層 (0.3~1.0mに配置) 網袋 20 枚 /袋 下層(2.0mに配置)
b. 検討内容 b-1.着床具のリサイクル性の検討 着床具の低コスト化を目的として、着床具のリサイクル性について検討した。 従来型のFRP 製の着床具について、今年度新たに購入した新品の着床具と、過年度の 試験に供試後、付着物等を洗浄し、乾燥させた中古の着床具について、着生数を比較し た。図Ⅳ-2.2.2.9 に使用着床具を示す。 図Ⅳ-2.2.2.9 供試着床具 b-2. 低コスト型着床具の検討 低コスト型着床具の検討として、従来使用していたFRP 製以外の材質で 1 辺 4.0cm 程 度の着床具を対象に、着生状況および着生後の生残状況の比較検討を行った。供試した 着床具の形状および寸法は、1 辺 4.0cm 程度 1 マスの角筒型で、材質はセメント製、酸 化マグネシウム製、塩ビ製の3 種類とした。図Ⅳ-2.2.2.10 に供試した着床具を示す。 図Ⅳ-2.2.2.10 使用着床具 b-3. 着生作業の効率化の検討 着床作業の効率化を図るため、幼生収集装置を用いた種苗生産に要する最小限の人工 数を検討した。これは、本試験で要した実績の人工数から、試験として必要な工程を省 いた人工数である。 ●着床具のリサイクル性の検討 4.0 ㎝ or2.5cm 4.0 ㎝ or2.5cm 新品 中古 セメント製 角筒型 (1×1 マス) FRP 製 4.0 ㎝ 4.0 ㎝ 4.0 ㎝ 塩ビ製 角筒型 (1×1 マス) 酸化マグネシウム製 角筒型 (1×1 マス) 4.0 ㎝ ●低コスト型着床具
②浦底湾(平成 26 年度試験) 平成26 年度試験で供試した小分割可能な着床具について、着生後 1 年以上、海域で育 成させた。平成27 年 8 月に着床具を小分割し、1 群体以上の生残が確認された着床具(種 苗)を選定して、岩盤および人工架台に移植し、移植後の生残性を比較した。今年度は、 岩盤および架台へ移植した種苗の 1 年後の着生維持率を比較した。なお、着生維持率と は、全着床具のうち1 群体以上のサンゴが生残している着床具の割合とする。 図Ⅳ-2.2.2.11 に小分割可能な着床具のイメージを、図Ⅳ-2.2.2.12 に移植のイメージを、 表Ⅳ-2.2.2.6 に各移植場所への小分割着床具の移植数の内訳を示す。 図Ⅳ-2.2.2.11 小分割可能な着床具のイメージ 図Ⅳ-2.2.2.12 小分割着床具の岩盤・人工架台への移植イメージ 表Ⅳ-2.2.2.6 小分割着床具の移植数内訳(浦底湾) 格子マス数 2×2 3×3 4×4 2×2 3×3 4×4 2×2 3×3 4×4 2×2 3×3 4×4 2×2 3×3 4×4 2×2 3×3 4×4 マス別合計 4 6 7 2 5 6 8 5 6 2 4 9 4 5 6 2 7 3 合計 12 移植場所 St.1 St.2 St.3 岩盤 人工架台 岩盤 人工架台 岩盤 人工架台 17 13 19 15 15 ●FRP 製 2.5cm 格子ピッチ(10×10 マス) 凡 例 :2 マス×2 マス (4 枚) :3 マス×3 マス (4 枚) :4 マス×4 マス (3 枚) 25cm
③-1 小浜島(平成 25 年度試験) 平成25 年度に幼生放流試験を行った格子ピッチが 4cm および 2.5cm の着床具につい て、着生3 年後の稚サンゴの生育状況を調査した。図Ⅳ-2.2.2.13 に試験のイメージを示 す。 図Ⅳ-2.2.2.13 小浜島【平成 25 年度試験】のイメージ 格子ピッチ D.L.-9m D.L.-4m 合計 2.5cm 4 枚 6 枚 10 枚 4.0cm 4 枚 6 枚 10 枚 合計 8 枚 12 枚 20 枚 <D.L.-4m> <D.L.-9m> 0.5m 1.0m <対象種> A.tenuis :沖ノ鳥島の移植対象種 <基盤の配置場所> 海底から0.5m の台座部
③-2 小浜島(平成 24 年度試験) 平成24 年度に幼生放流を行った格子ピッチが 4cm および 2.5cm 着床具について、着 生4 年後の生育状況を調査した。図Ⅳ-2.2.2.14 に試験のイメージを示す。 本試験区は着生から4 年が経ち、着生密度が高い試験礁内の着床具については、成長 によって隣接するサンゴ群体との重なりや融合が進み、正確な生残数の把握が困難とな った。そのため、今年度の調査からは着床具の写真撮影のみを行い、全体的な生育状況 の変遷を把握した。 図Ⅳ-2.2.2.14 小浜島【平成 24 年度試験】のイメージ 設置場所 D.L.-9m D.L.-4m 合計 備 考 試験礁内 12 枚 12 枚 24 枚 ・試験礁内は2 段(高さ 0.5m、1.0m の 台座部)に設置 ・試験礁外は、周辺の岩盤上に設置 試験礁外 12 枚 12 枚 24 枚 合計 24 枚 24 枚 48 枚 A5 A7 A8 A6 C8 C6 C7 C5 B5 B8 B7 B6 約20m 約10m 約10m 約10m N E6 D6 D7 E7 D5 E5 F6 D8 E8 F5 F7 約5m 約10m 約10m F8 約5m N 台座部(格子状) 格子状着床具 (放流サンゴ) 1.0m 0.5m 柱状構造体 【D.L.-9m】 【D.L.-4m】 <凡例> D.L.-4m: A~C = 1~4 D.L.-9m: D~F = 1~4 配置状況 配置状況 試験礁 試験礁
④沖ノ鳥島(平成 25 年度・平成 27 年度試験) 平成25 年度・平成 27 年度に幼生放流を行った 4cm および 2.5cm 着床具について、 着生3 年後・着生 1 年後の着生数および生育状況を調査した。図Ⅳ-2.2.2.15 に試験の イメージを示す。 図Ⅳ-2.2.2.15 沖ノ鳥島【平成 25 年度・平成 27 年度試験】のイメージ 格子ピッチ 平成25 年度 平成 27 年度 2.5cm 4 枚 50 枚 4cm 4 枚 50 枚 合計 8 枚 100 枚 備 考 8×8 マス 2×2 マス 着床具サイズ:2×2 マス 着床具サイズ:8×8 マス コンクリート基盤 台座部(格子状) 柱状構造体 (コンクリート) <水深> D.L.-3~-4m <対象種> A.tenuis :沖ノ鳥島の移植対象種 <基盤の配置場所> 海底から0.5m の台座部 <平成25 年度試験> <平成27 年度試験>
(3)調査結果
1)崎枝湾(今年度試験) ①試験実施状況 今年度試験の着床具の浸漬作業から、図Ⅳ-2.2.2.16 (1)~(2)に、着生から 3 ヶ月後のモ ニタリング試験までの実施状況を示す。 図Ⅳ-2.2.2.16(1) 崎枝湾における今年度試験の実施状況(1) 装置の設置 産卵誘発処理 幼生数調査(3 日令) 着床具の投入(吊り下げ式) 着床具の投入(架台式) 着床具の浸漬(試験 1 ヵ月前) ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ 幼生 4 日令 幼生 4 日令図Ⅳ-2.2.2.16(2) 崎枝湾における今年度試験の実施状況(2) 着床具の固定 着生 3 ヶ月後のモニタリング状況(水中観察) サンゴの着生状況(水中観察) 着生 3 ヶ月後のモニタリング状況(顕鏡) 着生具の配置 サンゴの着生状況(顕鏡) ⑦ ⑧ ⑨ ⑩
②着床具のリサイクル性の検討 図Ⅳ-2.2.2.17 に新品および中古の FRP 製着床具における着生数を、図Ⅳ-2.2.2.18 に それぞれの着生維持率を示す。 新品着床具、中古着床具ともに幼生の着生が確認された。 着生3 日後の着生維持率は、新品着床具、中古着床具ともに 100%であった。 3 ヶ月後の着生維持率は、新品着床具で 75.7%、中古着床具で 85.0%と同程度であ った。 6 ヶ月後の着生維持率は、新品着床具は 75.8%であったのに対し、中古着床具は 40.8%であった 図Ⅳ-2.2.2.17 新品・中古着床具の着生数 図Ⅳ-2.2.2.18 新品・中古着床具の着生維持率 着生維持率: 全着床具のうち 1 群体以上のサンゴ が生残している着床具の割合 40.0% 75.8% 85.0% 75.7% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 中古 新品 着生維持率 3日後 3ヶ月後 6ヶ月後 0.65 3.67 1.13 3.68 228.00 180.00 0 100 200 300 400 中古 新品 着生数/着床具 3日後 3ヶ月後 6ヶ月後
③低コスト型着床具の検討 図Ⅳ-2.2.2.19 に FRP 製格子型および低コスト型着床具における着生密度を、図 Ⅳ-2.2.2.20 に FRP 製格子型および低コスト型着床具における 3 ヶ月後の着生密度を、 図Ⅳ-2.2.2.21 に大量斃死が確認された着生 3 ヶ月後の着床具の例を、図Ⅳ-2.2.2.22 に FRP 製格子型および低コスト型着床具の着生維持率の変化を示す。 【着生密度】 全ての着床具において着生が確認された。 着生密度はセメント製角筒型が3.8 / cm2と最も高く、次いで酸化マグネシウム製角 筒型が高かった。ただし、過年度試験に比べて高密度に着生したことにより、初期 減耗が生じやすく、3 ヵ月後には単位面積当り着生数の生残率は 5%以下に低下した。 本業務の過年度報告書注より、幼生放流手法を用いた着床具の理想的な着生密度は約 0.1/cm2であり、この程度の密度であれば初期減耗が生じにくいことが分かっている。 今年度の試験では幼生数に対して着床具数が少なかったために、着生密度が高密度 になり、著しい初期減耗が生じて大量斃死したものと推察される。 図Ⅳ-2.2.2.19 FRP 製格子型および低コスト型着床具の着生密度(3 日後) 図Ⅳ-2.2.2.20 FRP 製格子型および低コスト型着床具の着生密度(3 ヶ月後) 0.05 0.05 0.02 0.01 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 塩ビ製 角筒型 酸化マグネシウム製 角筒型 セメント製 角筒型 FRP製(4cm・新品) 格子型 着生数/c㎡あたり 1.0 2.1 3.8 0.6 0 2 4 6 8 10 塩ビ製 角筒型 酸化マグネシウム製 角筒型 セメント製 角筒型 FRP製(4cm・新品) 格子型 着生数/c㎡あたり 注)()内の数値は、単位面積当りの着生数における 3 ヵ月後の生残率を示す。 低コ スト 型 着 床具 着生 3 日後 (検鏡) 着生 3 ヵ月後 (検鏡) 低コ スト 型 着 床具 注) 平成 27 年度 厳しい環境条件下におけるサンゴ増殖技術開発実証委託事業 報告書(Ⅳ-2-2-30) (5.0%) (4.4%) (0.5%) (1.7%) (各着床具n=6) (各着床具n=6)
図Ⅳ-2.2.2.21 稚サンゴの大量斃死が確認された着床具の例 (セメント製 角筒型着床具) 【着生維持率】 着生3 ヶ月後の着生維持率は 50~83%であった。 着生6 ヶ月後の着生維持率は 23~87%であり、塩ビ製角筒型では 80%以上と高く、 従来使用していたFRP 製と同程度であった。 酸化マグネシウム製角筒型では、6 ヶ月後の着生維持率が大きく低下した。酸化マグ ネシウム製は他の材質の表面形状と比べて空隙や凹凸が多いため、海綿類等の生物 が付着・被覆しやすく、サンゴと生育基盤の競合が起こった可能性が示唆される。 セメント製角筒型は、最も高密度な着生であったため初期減耗も大きく、着生維持 率も低下した可能性が示唆される。 86.7% 50.0% 23.3% 83.3% 40.0% 50.0% 75.8% 83.3% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 6ヶ月後(12月) 3ヶ月後(10月) 6ヶ月後(12月) 3ヶ月後(10月) 6ヶ月後(12月) 3ヶ月後(10月) 6ヶ月後(12月) 3ヶ月後(10月) 塩ビ製 角筒 型 酸化マグネ シ ウム 製 角筒 型 セメン ト 製 角筒型 FR P製 格子型 着生維持率 低コ スト 型 着 床具 注1)FRP 製着床具は 4 マス当り、低コスト型着床具 3 種は 1 マス当りの着生維持率とした。 注2)3 ヵ月後は検鏡、6 ヵ月後は水中観察により実施しており、後者の方法の精度が高い。 3 ヵ月後 3 日後 初期値: 着生 3 日後 図Ⅳ-2.2.2.22 低コスト型着床具の単位面積当たりの着生維持率 付着生物・藻類が着床具表面を被覆 (酸化マグネシウム製 角筒型) (n=6) (n=33) (n=6) (n=60) (n=6) (n=15) (n=6) (n=5)
④着生作業の効率化の検討 装置を用いた着床作業の効率化を検討するための情報として、着生作業に要した人工 数を整理した。表Ⅳ-2.2.2.7 に着生作業に要した今年度の人工数の実績を示す。 今年度の実績人工数は37 人日であった。荒天の影響により破損した装置の補修作業に 3 人日を余分に要した以外は、計画通りであった。 表Ⅳ-2.2.2.7 着生作業にかかる人工数(今年度)
人数
日数
合計(人日)
親サンゴの採取
2
1
2
架台設置
着床具の浸漬
幼生収集装置の組み立て、設置
親サンゴの配置
産卵確認
1
5
5
装置の補修
3
1
3
産卵誘発
3
1
3
装置の密閉作業
1
1
1
装置および幼生の確認
1
2
2
幼生数調査(3日令)
2
1
2
基盤投入、幼生放流
4
1
4
基盤再設置
3
1
3
ピース回収
2
1
2
着生数調査(顕鏡作業)
2
2
4
30
19
37
人工数
合計
準
備
期
間
試
験
期
間
作業
1
1
今年度実績
4
2
4
2
2) 過年度試験のモニタリング結果 ①浦底湾 a. 小分割着床具の種苗生残性の把握(平成 27 年度幼生放流試験) 図Ⅳ-2.2.2.23 に着生維持率の経時変化を、図Ⅳ-2.2.2.24 に架台ごとの着生維持率の経 時変化を示す。 着生維持率は6 ヶ月後で 81.6%、15 ヶ月後で 75.8%と高かったものの、平成 28 年夏季の大規模な白化イベント後の19 ヶ月後には 50%に低下した。 架台ごとに生残状況の差異が大きく、藻類や付着生物の被覆、病気の蔓延、高水 温ストレス等の複合的な影響とみられる着生維持率の著しい低下が一部の架台で 起こったと推察される。 図Ⅳ-2.2.2.23 小分割着床具の着生維持率の経時変化 注1)水中観察により着生維持率を調査した。 注2)着生 19 ヵ月後は白化後の状況把握調査として実施したため参考値とする。 0% 20% 40% 60% 80% 100% 19ヵ月後 15ヵ月後 19ヵ月後 15ヵ月後 19ヵ月後 15ヵ月後 19ヵ月後 15ヵ月後 19ヵ月後 15ヵ月後 19ヵ月後 15ヵ月後 ⑥⑤④ ③②① 架台 番号 着生維持率 (n=100) (n=101) (n=100) (n=101) (n=97) (n=15) (n=27) (n=25) (n=22) (n=25) (n=17) (n=6) 49.7% 75.8% 81.6% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 19ヶ月後(H28.12) 15ヶ月後(H28.08) 6ヶ月後(H27.11) 着生維持率 (n=228) (n=122) (n=298) 注1)水中観察により着生維持率を調査した。 注2)着生 19 ヵ月後は白化後の状況把握調査として実施したため参考値とする。
b. 移植場所による種苗生残性の検討(平成 26 年度幼生放流試験) 着生 1 年後に小分割し、岩盤および人工架台に移植を行った種苗について、図Ⅳ -2.2.2.25 に 1 年後の着生維持率を示す。 着生維持率は、岩盤移植で 74.5%、人工架台移植で 80.0~81.3%であり、同程度 であった。 白化後においても着生維持率は変化していなかったことから、平成28 年夏季の高 水温による影響は小さかったと考えられる。 図Ⅳ-2.2.2.25 岩盤および人工架台に移植した種苗の着生維持率 81.3 80.0 74.5 74.5 0 20 40 60 80 100 移植19ヶ月後(H28.12) 移植15ヶ月後(H28.08) 移植19ヶ月後(H28.12) 移植15ヶ月後(H28.08) 架台 岩盤 着生維持率(%) 注) 着生15ヵ月後に 岩盤・架台に移植 (n=51) (n=54) (n=40) (n=42) 注1)水中観察により着生維持率を調査した。 注2)着生 19 ヵ月後は白化後の状況把握調査として実施したため参考値とする。
②小浜島 a.水深別・格子ピッチ別の生残性の把握(平成 25 年度幼生放流試験) 平成25 年度に幼生放流を行ったウスエダミドリイシの種苗について、表Ⅳ-2.2.2.8 に水 深別の着生密度の経時変化を、図Ⅳ-2.2.2.26 に生残率の経時変化を示す。 初期着生密度には大きな差はなかった。2 年後の着生密度は、D.L.-9m で 91 個体、 D.L.-4m で 32 個体であり、D.L.-9m の方が 3 倍程度高かったものの、3 年後には 30 ~50 個体程度と水深差は小さくなった。 水深別の生残率は、3 ヵ月以降は D.L.-9m の方が高い傾向にあるものの、有意差はみ られなかった。3 年後には、水深差は小さくなり、5~7%であった。 表Ⅳ-2.2.2.8 平成 25 年度試験サンゴの着生密度の経時変化(水深別) 図Ⅳ-2.2.2.26 平成 25 年度幼生放流サンゴの生残率の経時変化(水深別) [単位] n/m2 D.L.-9m D.L.-4m 初期着生密度(3 日後) 755 637 着生密度(3 ヶ月後) 399 116 着生密度(6 ヶ月後) 106 47 着生密度(1 年後) 182 43 着生密度(2 年後) 91 32 着生密度(3 年後) 55 31 注1) 3 ヵ月後まではピース検鏡観察、6 ヵ月以降は水中目視観察とカウント方法が異なる。 注2) 生残率は、格子ピッチの違いを考慮し、より実数に近い基盤あたりの値を用いて算出した。 53% 14% 24% 12% 7% 18% 7% 7% 5% 5% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 3ヵ月 6ヵ月 1年 2年 3年 生残 率 着生後経過年月 D.L.-9m D.L.-4m
表Ⅳ-2.2.2.9 に格子ピッチ別の着生密度の経時変化を、図Ⅳ-2.2.2.27 に生残率の経時変 化を示す。図Ⅳ-2.2.2.28 に平成 25 年度幼生放流サンゴの生育状況の変遷の例を示す。 初期着生密度は4.0cm ピッチの方が 2 倍高く、2 年後の着生密度は、30~40 個体前 後で同程度であった。 格子ピッチ別(D.L.-4mのみ)の生残率は、1 年後までは 2.5cm ピッチの方が高い 傾向にあったものの、有意差はみられなかった。その後、2 年後以降には両者の差は 小さくなり、4~6%であった。 表Ⅳ-2.2.2.9 平成 25 年度試験サンゴの着生密度の経時変化(格子ピッチ別) 図Ⅳ-2.2.2.27 平成 25 年度試験サンゴの生残率の経時変化(格子ピッチ別) [単位] n/m2 2.5cm 4.0cm 初期着生密度(3 日後) 435 833 着生密度(3 ヶ月後) 174 58 着生密度(6 ヶ月後) 83 12 着生密度(1 年後) 44 42 着生密度(2 年後) 27 37 着生密度(3 年後) 27 36 注) 3 ヵ月後まではピース検鏡観察、6 ヵ月以降は水中目視観察とカウント方法が異なる。 40% 19% 10% 6% 6% 7% 1% 5% 4% 4% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 3ヵ月 6ヵ月 1年 2年 3年 生残率 着生後経過年月 2.5cm 4.0cm (n=3) (n=6)
<D.L.-9m> <D.L.-4m>
図Ⅳ-2.2.2.28 平成 25 年度幼生放流サンゴの生育状況の変遷の例 (ウスエダミドリイシ)着生 1 年後
(H26.8)
着生 2 年後
(H27.9)
着生 3 年後
(H28.8)
b.配置場所別の生育状況(平成 24 年度幼生放流試験) 平成24 年度に幼生放流を行ったヤングミドリイシの種苗について、図Ⅳ-2.2.2.29 に試 験礁内における生育状況の変遷を、図Ⅳ-2.2.2.30 に試験礁外における生育状況を示す。 【試験礁内の生育状況の変遷】 2 年後には長径 10cm 以上になり、3 年後には長径 30cm 程度まで成長していた。 4 年後にはさらに成長している様子が伺えたものの、白化した部分や、本来の色味が 薄くなった軽度の白化部分が確認されており、周辺の天然サンゴと同様に、平成 28 年夏季の高水温による影響を受けたことが示唆される。ただし、調査は 8 月下旬に 行っており、白化の進行の途中段階にあると考えられるため、白化に伴う死滅部は ほとんど確認されなかった。 【試験礁外の生育状況(H28)】 生残数はD.L.-4m で計 20 群体、D.L.-9m で計 61 群体と D.L.-9m で生残数が多かっ た。 白化の状況は、いずれも本来の色味が薄くなった軽度の白化群体が主体であり、白 化に伴う死滅群体はほとんど確認されなかった。
図Ⅳ-2.2.2.29 平成 24 年度幼生放流サンゴの生育状況の変遷(ヤングミドリイシ) 30cm 30cm 30cm 30cm 30cm 30cm 30cm 30cm
着生 1 年後
(H25.8)
着生 2 年後
(H26.8)
着生 3 年後
(H27.9)
着生 4 年後
(H28.8)
<D.L.-9m>
<D.L.-4m>
<D.L.-4m>
図Ⅳ-2.2.2.30(1) 試験礁外サンゴの生育状況(その 1) A5(生残数:1) A7(生残数:2) B6(生残数:2) B5(生残数 3) A8(生残数:0) A6(生残数:2) 10cm 10cm 10cm 10cm 10cm 10cm<D.L.-4m>
図Ⅳ-2.2.2. 30(2) 試験礁外サンゴの生育状況(その 2) B7(生残数:2) B8(生残数:2) C5(生残数:4) C6(生残数:1) C7(生残数:1) C8(生残数:0) 10cm 20cm 20cm 10cm 10cm 20cm<D.L.-9m>
図Ⅳ-2.2.2. 30(3) 試験礁外サンゴの生育状況(その 3) D5(生残数:4) D6(生残数:6) D7(生残数:6) D8(生残数:3) E5(生残数:2) E6(生残数:10) 10cm 20cm 20cm 10cm 10cm 10cm<D.L.-9m>
図Ⅳ-2.2.2. 30(4) 試験礁外サンゴの生育状況(その 4) E7(生残数:8) E8(生残数:8) F5(生残数:3) F6(生残数:0) F7(生残数:6) F8(生残数:5) 20cm 10cm 10cm 10cm 10cm 10cm902.8 7.7 11.6 503.5 13.5 17.4 3.4 1 10 100 1,000 10,000 3日後 1年後 2年後 3年後 3日後 1年後 2年後 3年後 2.5cmピッチ着床具 4.0cmピッチ着床具 着 生密度(n / m 2) ③沖ノ鳥島(平成 25・27 年度試験) a.平成 25 年度試験結果 沖ノ鳥島で平成25 年度に幼生放流を行ったウスエダミドリイシの種苗について、着床 具の格子ピッチ別(2.5cm、4.0cm)の着生密度を表Ⅳ-2.2.2.10 および図Ⅳ-2.2.2.31 に示 す。 今年度調査では、4.0cm ピッチの着床具で合計 7 群体の生残群体を確認した。2.5cm ピッチの着床具では、生残群体は確認されなかった。 面積あたりの初期着生密度は、2.5cm ピッチの方が 4.0cm ピッチよりも約 2 倍高い。 着生2 年後までは着生密度に大きな変化は見られない。着生 3 年後の 4.0cm ピッチ 着床具の着生密度は3.4 群体/m2であった。 表Ⅳ-2.2.2.10 沖ノ鳥島における平成 25 年度試験サンゴの 3 日後~3 年後の着生密度 図Ⅳ-2.2.2.31 沖ノ鳥島における平成 25 年度試験サンゴの着生密度の変化と生残状況 単位 [n/m2] 2.5cm 4.0cm 初期着生密度(3 日後) 903 503 着生密度(1 年後) 7.7 13.5 着生密度(2 年後) 11.6 17.4 着生密度(3 年後) 0 3.4 注1) 3 日後はピース検鏡観察、1 年後以降は水中目視観察とカウント方法が異なる。 注2) 2 年後に着生数がやや増加しているのは、1 年後では小さく観察が困難であった群体が、 成長して観察可能になったためと考えられる。 4.0cm 格子ピッチ 生残群体
667 86 750 24 1 10 100 1,000 10,000 3日後 1年後 3日後 1年後 2.5cmピッチ着床具 4.0cmピッチ着床具 着生密度(n / m 2) b. 平成 27 年度試験結果 沖ノ鳥島で平成27 年度に幼生放流を行ったウスエダミドリイシの種苗について、着床 具の格子ピッチ別(2.5cm、4.0cm)の表面積あたりの着生密度を表Ⅳ-2.2.2.11 および図 Ⅳ-2.2.2.32 に示す。 今年度調査では、2.5cm ピッチと 4.0cm ピッチ両着床具で生残群体を確認し、合計 66 群体であった。 面積あたりの初期着生密度は4.0cm ピッチの方が 2.5cm ピッチよりも高いが、着生 1 年後の着生密度は 2.5cm ピッチの方が高く、着生密度は 86 群体/m2であった。 表Ⅳ-2.2.2.11 沖ノ鳥島における平成 27 年度試験 サンゴの 3 日後・1 年後の着生密度 図Ⅳ-2.2.2.32 沖ノ鳥島における平成 27 年度試験サンゴの着生密度の変化と生残状況 単位 [n/m2] 2.5cm 4.0cm 初期着生密度(3 日後) 667 750 着生密度(1 年後) 86 24 注) 3 日後はピース検鏡観察、1 年後は水中目視観察と カウント方法が異なる。 生残群体 藍藻類が被覆 藍藻類 4.0cm 格子ピッチ
3)夏季高水温によるサンゴの白化状況(石垣島・石西礁湖) ①白化盛期(8 月調査) 平成28 年夏季には、沖縄県各地において高水温による大規模な白化現象が報告されて いる。本業務においても、8 月に実施したモニタリング調査時には、着生サンゴや試験海 域の天然サンゴに高水温が主要因とみられるサンゴの白化現象が観察された。図Ⅳ -2.2.2.33 に観察された白化サンゴの例を示す。 高水温の発生状況を把握するため、試験区に設置した水温計の盛夏期(7~8 月)の水 温データを整理した。図Ⅳ-2.2.2.34 に試験区域の盛夏期(7~8 月)の水温の頻度分布、 図Ⅳ-2.2.2.35 に試験区域の盛夏期(7~8 月)の平均、最高、最低水温を示す。 水温計は、平成22~28 年については、小浜島の試験礁(D.L.-4m)に設置した。平成 25 年は水温データが欠測しているため、環境省の石西礁湖常時モニタリングシステム(引 用URL:http://www.e-monitoring.jp/)における竹富島-小浜島間の海域(D.L.-5.6m) で観測された水温データ(平成25 年度,7~8 月)を代用した。 【白化の状況】 崎枝湾および浦底湾の着生 1~3 年後の稚サンゴについては、白化群体の割合は 10%程度と少なく、白化に伴う死亡群体はほとんど確認されなかった。 小浜島の試験礁内における移植サンゴおよび幼生放流サンゴについては、白化被 度の割合は、D.L.-4m で 60%程度、D.L.-9m で 30%程度であった。ただし、本来 の色味が薄くなった軽度の白化が主体であり、白化に伴う死亡群体は少なかった。 浦底湾、崎枝湾、小浜島海域のいずれの試験区においても、周辺の天然サンゴに ついても白化が確認された。 【高水温の状況】 31℃以上の著しい高水温は平成 25~27 年度ではほとんど確認されなかったもの の、平成28 年度では、全ての海域で確認された。海域間の違いでは、浦底湾で 20% 近くを占め、崎枝湾でも10%近くを占めたのに対し、小浜島では 5%未満と少なか った。 平均水温は平成25~27 年度では 29.2℃~29.6℃であったのに対し、平成 28 年度 では30.3℃~30.5℃であり、平成 25~27 年度に比べて 1℃程度高い水温であった。 最高気温は、平成25~27 年度では 31℃前後であったのに対し、平成 28 年度では 浦底湾で32℃を超えるような著しい高水温が確認された。 このような試験場所近傍の水温変動の状況より、平成28 年夏季において試験サン ゴの白化を引き起こした主要因は高水温であると考えられる。
図Ⅳ-2.2.2.33(1) 白化サンゴおよび健全サンゴの例(浦底湾・崎枝湾) 図Ⅳ-2.2.2.33(2) 白化したサンゴの例(小浜島) 崎枝湾(着生 3 ヵ月後) 浦底湾(着生 1 年後) 浦底湾(着生 3 年後) 浦底湾(天然サンゴ) D.L.-9m(幼生放流サンゴ) D.L.-4m(幼生放流サンゴ) D.L.-4m(移植サンゴ) 天然サンゴ ほとんどが健全 ほとんどが健全
図Ⅳ-2.2.2.34 試験区域の盛夏期(7~8 月)の水温頻度分布 図Ⅳ-2.2.2.35 試験区域の盛夏期(7~8 月)の平均、最高、最低水温 31~32℃ 30~31℃ 29~30℃ 28~29℃ 0% 20% 40% 60% 80% 100% H25 H26 H27 H28 H28 小浜(D.L.-9m) H27 H28 H28 崎枝湾 各 水温帯の割合 小浜(D.L.-4m) 浦底湾 26 27 28 29 30 31 32 33 H25 H26 H27 H28 H28 小浜(D.L.-9m) H27 H28 H28 崎枝湾 平均水温(℃) 小浜(D.L.-4m) 浦底湾
26
27
28
29
30
31
32
期間最高
②白化後(12 月調査) 白化が収束したとみられる12 月に、白化による移植サンゴおよび幼生放流サンゴへの 影響を把握するために補足調査を実施した。図Ⅳ-2.2.2.36 に浦底湾および崎枝湾での白 化後の生残状況の例を、図Ⅳ-2.2.2.37 に小浜島での白化後の死亡および回復状況の例を 示す。また、白化の影響については、表Ⅳ-2.2.2.12 に環境省が行った石西礁湖での白化 調査結果と比較した概要を示す。 【小浜島】 D.L.-4m の試験礁内の移植サンゴおよび幼生放流サンゴでは、生残率は 30%~60% であった。 D.L.-9m の試験礁内の移植サンゴおよび幼生放流サンゴでは、生残率は 40%~70% であった。 移植したウスエダミドリイシ(5~6 歳齢)の生残率は低い傾向にあった。幼生放流 サンゴでは枝状ミドリイシ(4 歳齢)よりもウスエダミドリイシ(3 歳齢)の方が死亡 率は低く、白化の影響は小さいと考えられる。種類による違い、歳齢による違い が影響している可能性がある。 【浦底湾・崎枝湾】 着生2 年以内の稚サンゴについては、夏季の白化後も多くの群体が生残しており、 影響は小さかった。着生1、2 年程度の稚サンゴは、高温ストレスなどへの環境耐 性を有すると思われる複数種の共生藻株を選択的に取り込む性質がある注ため、成 体サンゴよりも高温耐性を有している可能性がある。 図Ⅳ-2.2.2.36 白化後の生残状況の例(浦底湾・崎枝湾) 着生 2 年後:浦底湾 着生 1 年後:浦底湾 着生 3 ヵ月後:崎枝湾 着生 2 年後:浦底湾 注)依藤実樹子ら,将来の高水温とサンゴ共生褐虫藻の変化‐長期飼育実験の結果, 第 19 回日本サン ゴ礁学会講演要旨集,p68 生残群体
<白化盛期:8 月> <白化後:12 月>
図Ⅳ-2.2.2.37 白化後の死亡および回復状況の例(小浜島) D.L.-9m 移植サンゴ ウスエダミドリイシ(移植 5 年後) D.L.-4m 幼生放流サンゴ ヤング゙ミドリイシ(着生 4 年後) D.L.-4m 幼生放流サンゴ ウスエダミドリイシ(着生 3 年後) 死亡部 生残部 死亡群体 生残群体 D.L.-4m 幼生放流サンゴ ヤング゙ミドリイシ(着生 4 年後) D.L.-4m 幼生放流サンゴ ウスエダミドリイシ(着生 3 年後) 死亡部 生残部 死亡部 D.L.-9m 移植サンゴ ウスエダミドリイシ(移植 5 年後)【環境省調査結果との比較】 調査方法が異なるため単純には比較できないものの、小浜島の試験礁内の移植サ ンゴおよび幼生放流サンゴでは、環境省調査結果より白化割合、死亡割合ともに 少ない傾向がみられた。考えられる要因の一つとして、試験礁の柱によって試験 礁内は影が生じやすく、シェーディングによる強光ストレスの低減効果がみられ た可能性もあるものの、詳細は不明である。 浦底湾および崎枝湾の 2 歳齢以内の幼生放流サンゴ、小浜島の 3 歳齢の幼生放流 サンゴでは、4 歳齢以上の移植および幼生放流サンゴに比べて白化割合と死亡率が 低かった。このように、歳齢が若いほど白化しにくく、白化に伴う影響も小さい 傾向がみられた。 表Ⅳ-2.2.2.12 白化の影響(環境省調査結果との比較) 調査時期 白化盛期(8 月) 白化後(12 月) 対象とするサンゴ 比較項目 白化割合 死亡割合 石西礁湖 出典 97%(群体数) 70%(群体数) 天然サンゴ 小 浜 島 D.L.-4m 60%程度(被度) 30~70%(被度) サンゴ増殖試験礁内の 移植サンゴ(5~6 歳齢)、 幼生放流サンゴ(3~4 歳 齢) D.L.-9m 30%程度(被度) 30~50%(被度) 浦底湾 10%程度(群体数) 20%未満(群体数) 幼生放流サンゴ(1~2 歳 齢) 崎枝湾 10%程度(群体数) ― 幼生放流サンゴ(3~6 ヵ 月令) 出典) 環境省,2017. 西表石垣国立公園石西礁湖のサンゴ白化現象の調査結果について, 那覇自然環境事務所 報道発表資料(2017 年 1 月 10 日)