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消費者金融会社におけるインターナル・マーケティ ング

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ング

著者 冨田 健司

雑誌名 静岡大学経済研究

巻 10

号 2

ページ 59‑71

発行年 2005‑10‑31

出版者 静岡大学人文学部

URL http://doi.org/10.14945/00008586

(2)

消費者金融会社 におけるインターナル・ マーケティング

消費者金融会社におけるインターナル・ マーケティング

1

冨 田 健 司

1.はじめ に

企業 に とって顧客満足の向上 はきわめて重要 な課題 であ り、多 くの企業が さまざまなマーケ テ ィング活動 を実践 している。製造業の場合、顧客ニーズに基づ く新製品開発、低価格化、営業 販売、キャンペー ンな どの販売促進 といった多岐 にわたる手段が考 えられ る。一方、消費者金融 サー ビス業の場合、顧客ニーズに基づ く新サー ビス (業界では「商品」とい う)、 低金利化、無人 店舗 の設置、大々的な広告 による消費者への告知 な どの手段が考 えられ る。

製造業 とサー ビス業 とでマーケテ ィング戦略 を考 える際、最 も大 きな差 となるのは顧客 と接点 を持つか どうかである。つ まり、消費者金融サー ビスなどのサー ビス業 は製造業 と異な り、サー ビスを販売す る際に顧客 と必ず接点 を持つ ことがで きるといった利点 を有 している。顧客 との直 接的なコ ミュニケー ションを通 じて、顧客満足 を高め られ る可能性 を秘 めているし、顧客の潜在 的なニーズを掴 む ことも可能 となる。

そのため、サー ビス業では顧客満足向上のために、顧客 との接点 を持つサー ビス提供者の資質 が よ り重要 となる。サー ビス提供者の資質 を高 めるには従業員 トレーニ ング、権限委譲、成果へ の報奨 といった人材育成、教育、賃金、賞罰 な どに関す る制度の整備が必要 となる。この ように、

企業がマーケティングを構築す る際 には顧客や競争相手な どの外部環境 とともに、組織 内の内分 環境 も考慮 しなけれ ばな らない。しか し、これ までのマーケテ ィングにおける先行研究 を見 ると、

外部環境 を対象 とした ものに比べて、内部環境 を対象 とした研究蓄積 は相対的 に少 ない。

そのため、本研究ではサー ビス業である消費者金融サー ビス業 を対象に、マーケティングの視 点か ら、従業員の資質 を高めるマネジメン トについて議論す る。 あるいは、後述 す るように、顧 客満足 の前提 に従業員満足があるため、従業員満足 を向上 させ るマネジメン トについて も議論す る。 その際、インターナル・ マーケテ ィングが議論の中心 となる。恩蔵 (1996)によると、イ ン

1本研究 は消費者金融サービス研究学会による助成 (2002年度〜2004年)を受けている。

(3)

ターナル・ マーケテ ィング とは組織 とその内部の従業員 との間に位置するマーケティングの こと であ り、多 くのサー ビス企業 は高い顧客満足 を得 るために、顧客 と接するあらゆる従業員 を訓練 し、彼 らを動機づけ、サー ビスを提供するチームの一員であるという自覚 を持たせる努力 をする。

さて、本研究の構成 は次のようになる。まず、次の第2節で先行研究 をレビュー して、インター ナル・ マーケティングの研究蓄積が少ないことを指摘する。第3節で先行研究 を元 に、仮説 を設定 する。第4節で質問票調査 による分析 を行い、続 く第5節で考察する。結論 を先取 りするなら、顧 客満足、従業員満足 を高める要因 としての権限委譲 と組織的なシステム作 りの重要性 を指摘する。

2.先行研 究 の レビュー

企業間競争の激化 に伴い、企業 は既存顧客の維持 を重視する。それは既存顧客 にリピー ト購買 して もらうことが、安定的な売上確保、顧客獲得 コス トの圧縮 につながるか らである。それなら、

顧客の リピー ト購買 を得 るために、企業 は何が必要なのだろうか。Anderson and Weitz(1992) によると、信頼が リピー ト購買の構成要素であ り、 さらに顧客満足が信頼の構成要素である。つ ま り、企業 は顧客の リピー ト購買 を高めるために、顧客満足 を高めることが必要 となる。嶋 口 (1994)など多 くの研究者 によって指摘 され るように、顧客満足 はいかなる企業 において もビジ ネスの根幹 となる。

顧客満足向上 に向けて、消費者金融サー ビス業 はサー ビス業であるため、サー ビス・マーケティ ングの枠組みで考 えることがで きる。Kotler and ArmstrOng(1997)に よると、サー ビス・ マー ケティングは3つのマーケティングを必要 とす る(図 1)。 これ らのマーケティングの うち、顧客 満足向上 は企業 と顧客 との関係 におけるエクスターナル・ マーケティング、顧客 と従業員 との関

サー ビス・ マーケテ ィングのタイプ

 

イ ンター ナル0

マーケティング/ エクスターナル・アーケテ イング

従業員    イ ンタ ラクテ ィブ・      マーケテ ィング

(出月斤:Kotler and A.11lstrOng(1999))

‑60‑―

(4)

消費者金融会社におけるインターナル・マーケティング

係 におけるイ ンタラクテ ィブ・ マーケテ ィングによって実践 され る。 そして、Kotler and Am‐

strong(1997)や Green,Wells,and Schrest(1994)が指摘す るように、エクスターナル・ マー ケテ ィングの前提 にインターナル・ マーケティング (企業 と従業員 との関係)がな くてはな らな い。要す るに、顧客満足の十分条件 として従業員満足が必要 となる。インターナル・ マーケティ ング とはサー ビス企業 におけるマーケティングで、企業 と接する従業員 とそれ を支 えるすべての 従業員 を効果的 に教育 し動機付 けを行 うことによって、1つのチーム として機能 させ、顧客 に満 足 を与 えるようにす ることである。

余 田 (2004)は、サー ビス提供 にかかわ る要素 として、接客 を担 当す る従業員、建物や設備 な どのハー ドウェア、他の顧客 を挙 げている(図2)。 そ して、サー ビス企業 において接客員や顧客 と直接接するハー ドウェアはフロン トステージを構成 し、顧客 との間にサー ビス・エ ンカウンター と呼ばれ る相互作用 を通 じて、サー ビスの提供 を直接的 に担 うと論 じている。このフロン トステー ジと組織 内システムに代表 され るバ ックステージとの両者がサー ビス水準 に大 き く影響する2。 らに余田 (2004)は、サー ビス業で は多 くのサー ビスにおいて従業員が関わ ることになるため、

適性 のある従業員 を採用 し、教育 し、そしてや る気 を引 き出す ことが必要であること、顧客の満 足 と従業員の満足の間には強い相関があることを議論 している。 よって、企業が高 い顧客満足 を 得 るためには、高い従業員満足 を得 ていなけれ ばな らない。

特 に、サー ビス業の場合、商品であるサー ビスの品質 は従業員の心理的要因、技術的要因 によっ て変動す るため、高い従業員満足の確保 に努 めると共 に、従業員が提供す るサー ビスを高品質 に

サービス提供に関わる要素

サー ビス企業 ――― 直接のインタラクション

‐……Ⅲ 間接のインタラクション バ ックステー ジ フロ ン トステー ジ

2こぅした企業 内部 の要因以外 に、顧客間 の相互作用 もサー ビス品質や顧客満足 に影響 を与 えるが、本研究 で は取 り扱わない。

物的環境 (機械、設備、

施設 な ど)

(出:余 (2004))

(5)

保 つ組織的なマネジメン トが必要 となる。

Cronin and Taylor(1992)に よると、サー ビス品質 は顧客満足の前提である。サー ビス品質 の評価指標 としてはParasuraman,Zeithaml,and Berry(1985)に よって作成 された

SERVQUAL

が代表的である3。 これは「有形性」「信頼性」「反応性」「確実性」「共感性」という5つの次元か らなる。有形性 には余田 (2004)が議論する建物や設備 な どのハー ドウェア とともに、従業員の 外見 な ども含 まれ る。そのため、5つの次元全てが従業員 に関す るものであるため、従業員の教 育、育成 はサー ビス業 においてきわめて重要な課題である4。

Evans and Laskin(1994)によると、顧客 との効果的な リンーションシップ・マーケティングを 実行するためには、顧客期待の理解、サー ビスパー トナーシップの構築、TQM、 権限委譲 といっ たインプッ トが必要 となる。特 に権限委譲 はサービス業においてより重要 となる。なぜなら、顧客か らの要求の中には突発的であった り、異例であった りす るもの もあるため、マニュアル通 りには 対応 で きない ことも多いか らである。いちいち上司の判断 を仰 いでいると迅速 な顧客サー ビスが で きないため、ある一定の限度内な ら従業員が各々の判断で意思決定できるといった権限委譲 シ

効果的なマーケティング 0モ デル

3 sERVQUALの開発に際 して、彼 らは他にもParasuraman,Zeithaml,and Benv(1988)、 Parasuraman,Beny, and Zeithaml(1991)、 Parasuraman,Zeithaml,and Benv(1994)な ど多数の議論を展開 している。 しかし、

SERVQUALにCronin and Taylor(1992)、 Babakus and B011er(1992)、 山本 (1999)な ど批判 も多い。

4「有形性」とは物理的設備だけでな く従業員の外見についても含 まれ、「信頼性」とは約束のサービスを正確で的 確に行 うこと、「反応性」とはサー ビスを顧客に迅速に提供すること、「確実性」とは信頼を高める従業員の知識 や能力、「共感性」 とは顧客に対する気遣いや注意のことである。

(frfri ! Evans and Laskin

‑62‑

(6)

消費者金融会社におけるインターナル・ マーケティング

ステムを整 えている企業 も多い。消費者金融サー ビスの場合、個々の消費者 により事情 は異な り、

すべて を上司 に相談す ることは難 しいため、権限委譲 は必須 となる。そ して、すべての店舗です べての従業員が均―で高品質のサー ビスを維持す るためにTQMも欠かせ ない。

従業員が良好 なサー ビスを提供す るために企業 は優秀 な人材の確保(雇)、 集 中的な研修 、継 続的モニタ リング、従業員 を鼓舞す る報酬が必要であるとFisk,GrOve,and John(2004)は述べ ている。継続的モニタ リング とは従業員の業績の継続的な測定であ り、顧客のコメン トカー ドや ミステ リーショッパー法 (顧客 に扮 した調査員 を使 い、従業員が提供 したサー ビス品質 を評価す

)に

よる調査な どが存在する。 その際、従業員の技術的スキル と人的スキルが評価 されるが、

最終的な評価 には複数の情報源 を用い ることが重要である。

サー ビス・ マーケティングではインターナル・ マーケティングの重要性が指摘 されなが らも、

エクスターナル・ マーケテ ィングやインタラクテ ィブ・ マーケティングに比べ、インターナル・

マーケテ ィングの研究蓄積 は相対的にきわめて少ない。 これはサー ビス・ マーケテ ィング研究の 多 くがサー ビス品質のマネジメン トに関する もので、高品質のサー ビスを維持す るためにサー ビ ス提供者のマネジメン トは重要であるにも関わ らず、その先行研究が少ない と言 うこともで きる。

3.仮説 の設定

前節でのンビューか ら、サー ビス業では特 にサー ビス品質 を高めるために、従業員満足の向上、

権限委譲、サー ビス提供者のマネジメン トの重要性が導かれた。

まず、サー ビス品質 に関 してSERVQUALを用いる。Parasuraman,Zeithaml,and Berry(1985) によれば、サー ビス品質 とは顧客の期待 と知覚 とのギャップによるが、本研究ではサー ビス提供 者 自身が高い品質のサー ビスを提供す るために、5つの次元の うち、 どれ を最 も需要だ と考 えて いるのか を探 る。冨田 (2004)では顧客 を対象 とした分析 において、無担保 ロー ンの場合、サー ビス品質 に影響 を与 える要素 は大 きい順 に、反応性、信頼性、共感性、確実性、有形性であつた。

そのため、従業員の意識 として も同様 の順であると仮定す る。

Hl:サ

ー ビス品質 を高める要素 は大 きい順 に反応性、信頼性、共感性、確実性、有形性である。

余田 (2004)では物的環境や接客担当者 といつた フロン トステージのバ ックステージとなる組 織内の システムを考慮 し、その重要性 を指摘 している。 そのため、組織 内のシステム とサー ビス 品質 との因果関係 をみる。組織 内システム とは広義の意味では権限委譲や研修、評価 な どのシス テムが含 まれるが、それ らを除いて、サー ビス提供者の顧客接点 を支 える組織的な支援 システム の ことを差す。

(7)

H2:組

織内システムが充実 しているほど、サー ビス品質 は高 まる。

さらに、Fisk,Grove,and John(2004)に よると、良好なサービス提供のためには優秀な人材の 確保(雇)、 集中的な研修、継続的モニタリング、従業員 を鼓舞する報酬が必要である。本調査 は 管理職ではな くサービス提供者 に対 して行 うため、人材の確保 はサービス品質にさほど影響 を与 え ない と考 える。 さらに、従業員が高い報酬 を求 めるのは当然であ り、 この変数が突出 した結果が 予想 される。そうなると、それ以外の変数が相対的に目立たな くな り、調査 としての面 白みが低下 して しまう。そのため、従業員 を鼓舞する報酬 を変数からはずす。 よって、集中的な研修 と継続的 モニタ リングをサー ビス品質の変数 とする。高い報酬や人事評価 を求めるのなら、継続的モニタ リングが不可欠 となるため、継続的モニタ リングの充実 によってサー ビス品質 は高 まると考 える。

H3:集

中的な研修 と継続的モニタ リング とがサー ビス品質 に影響 を与 えるが、継続的モニタ リ ングの方がその影響度 は大 きい。

また、Kotler and Arlnstrong(1997)や Green,Wells,ando Schrest(1994)な ど多 くの研究 者が、顧客満足向上の前提 に従業員満足向上 を指摘 している。今回、消費者金融サー ビス会社の 従業員 を対象 とした質問票調査 を行 うが、顧客 に対 しての調査 は行わない。 そのため、顧客満足 は回答者であるサー ビス提供者の主観的な評価 となる。

H4:従

業員満足が向上するほ ど、顧客満足 は向上する。

次 に、権限委譲 に関 しての仮説 を設定する。Evans and Laskin(1994)で は、顧客 との効果的 な リレー ションシップ・マーケティングの説明変数 として、顧客期待の理解、サービスパー トナー シップの構築、TQM、 権限委譲 を挙 げている。その中で、本研究では権限委譲が最 も大 きな変数 となると仮定する。 さらに、Evans and Laskin(1994)で はアウ トプ ッ トとして顧客満足、顧客 ロイヤルテ ィ、利益の増加、品質商品 といった4つの変数 を考慮 しているが、本研究 は顧客満足 に限定する。つ まり、権限委譲 に満足 している従業員ほど、質の高いサー ビスを提供することが で き、その結果、顧客満足が向上す ると仮定す る。なお、顧客満足 は上記のように回答者である サー ビス提供者の主観的な評価 とす る。

H5:従

業員が権限委譲 に満足 しているほ ど、顧客満足 は向上する。

最後 に、Looy et al。 (1998)は権限委譲 の度合いによって、従業員の仕事 に対する満足度、組 織への関与度、革新的行動 に差が生 じることを実証 した。そのため、本研究で も同様 の仮説 を設 定す る。

‑64‑―

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消費者金融会社におけるインターナル・ マーケティング

H6:権 限委譲 の度合 い に よって、従業員 の仕事 に対 す る満足度 、組織 へ の関与度 、革新 的行 動 に は差 が生 じる。

4.調

4‑1.調

査概要

調査 は5段階の リカー トスケール による質問票調査 によって行われた。期間 は2004(平16) 4月か ら5月まで、対象 は3社の消費者金融サー ビス会社である。 まず、各企業の管理職 と面 談 を行 い、調査の概要 を説明 し、取 りまとめを依頼 した。 その過程で質問票 を配布 した回答者 の 数 を把握す ることはで きなかったが、99の回答 を得 ることがで きた。 その うち、有効 回答数 は91 である5。 各企業 とも店頭 カウンターに座 る従業員 は女性が多いが、きるだ け男性 に も回答 して も

らうよう意図 したため、男性38名、女性53名のサ ンプルを得た。なお、平均年齢 は27.6歳である。

4‑2.分

析結果

まず、仮説1に関す る変数の平均 と相関マ トリクスを表1に示 した。いずれの平均値 も決 して 高い値 とはいえない結果 となった。特 にサー ビス品質の平均値が2.87となった ことについては後 述 したい。

仮説1の平均 と相関マ トリクス

平均(S.D) サービス品質 反応性 信頼性 共感性 確 実性 有形性

サービス品質

1

信 頼 ‑0.12

共 感 ‑0.05 0.52

実 性 ‑0.07

有 形 0.00 0.27

回帰分析結果 は表2に示 される。5つの変数の うち、共感性以外の4つの変数 (反応性、信頼 性、確実性、有形性)が5%水準で有意 となった(1%水準で有意 となる変数 は1つもなか った)。

標準化係数 を見 ると、 これ ら4つの変数 は全ての正の値 を取 り、その値 は0.25か ら0。27と大 きな 差 は見 られなかった。 しか し、相対的に最大 となった係数 は信頼性 のO.27で あった。

仮説1では、サー ビス品質 に影響 を与 える変数 として反応性、信頼性、共感性、確実性、有形

5+分なサ ンプル数 とは言えないが、本研究ではこのサンプルで分析 を行い、議論 を進めてい く。

(9)

性 の順 とな る こ とを仮定 したが、

た (共感性 は有意 でない)。

分析 の結果か らは信頼性、反応性、確実性、有形性の順 となっ

仮説1の回帰分析結果

(上段)標準化係数 *:5%水 準 で有意 (下)t値

反 応 性 *

[2.46]

信 頼 *

[2.30]

共 感 0.10

[0。88]

実 性 *

[2.23]

*

[2.25]

修 正 R2

仮説2に関 して、組織内システムを独立変数 に、サー ビス品質 を従属変数 に とり、回帰分析 を 行 った。標準化係数 は0.31(t値=2.12、 5%水準で有意)、 修正R2=0.23となった。2つの変 数の間 には正の相関があるため、仮説2は成立 した ものの、大 きな影響力 を及 ぼしているとは言 えない結果 となった。

仮説3では、集中的な研修 と継続的モニタ リング とがサー ビス品質 に影響 を与 えるが、継続的 モニタ リングの方がその影響度 は大 きい と仮定 した。分析 した結果、両変数 とも5%水準で有意 となった。標準化係数 を比較すると、集中的な研修の0.14と比べて、継続的モニタ リングは0.25 と大 き くなったため、仮説 は成立 した(表3)。 ここで、従属変数 を従業員満足 にとって同 じく回 帰分析 を行 った。相対的な大小の結果 は同様 になったが、従業員満足 を従属変数 に とった方が標

仮説3の回帰分析結果

サー ビス品質 従業員満足

集 中 的 な 研 修

0。14 0.22

[2.00] [2.19]

* *

継 続 的 モ ニ タ リング

0.25

[2.24] [2.87]

* **

   R 2 0.33 0.32

‑66‑

(10)

消費者金融会社におけるインターナル・マーケティング

準化係数の値 (0.34)が相対的 に高 くなった。 そのため、継続的モニタ リングや集中的な研修 は 従業員満足 により大 きな影響 を及 ぼす ことが分かつた。

次 に、仮説4に関 して、従業員満足 を独立 変数 に、顧客満足 を従属変数 に とり、回帰分析 を行 っ た。標準化係数 は0.58(t値=2.73、 1%水準 で有意)、 修正R2=0.40となった。2つの変数の 間 に正の相関があ り、仮説4は成立 した。 さらに、従業員満足 は顧客満足 に大 きな影響力 を及 ぼ

していることが確認 された。

そして、仮説5に関 して、従業員の権 限委譲 に対 す る満足度 を独立 変数 に、顧客満足 を従属変 数 にとり、回帰分析 を行 った。標準化係数 は0.53(t値=2.61、 5%水準で有意)、 修正R2=0.33

となった。2つの変数の間に正の相関があ り、仮説5は成立 した。従業員の権限委譲 に対す る満 足度 は顧客満足 に大 きな影響力 を及ぼ していることが確認 された。

最後 に、仮説6に関 して、権限委譲 の度合いによってサ ンプル を2つに分 け、従業員の仕事 に 対する満足度、組織 への関与度、革新的行動 に差が生 じるか否かを見た。分散分析 の結果 は表4

に示 され る。3つの変数の平均値 を見 ると権限委譲 に満足 している回答者 と満足 していない回答 者 との間 には大 きな差が生 じた。 そ して、3変数 とも1%水準で有意 となったため、両者の回答

には統計的な差が存在 していると解釈で きる。

仮説6の分散分析結果 権 限 委 譲 の 度合いが高い

権 限 委 譲 の 度合いが低い 仕事 に対す る満足度 5。33

組 織 へ の 関 与 度

4.85

(7段階評価。3つの変数 とも

1%水

準で有意)

5。

サー ビス品質 に関 して、サー ビス品質 と5つの次元 (反応性、信頼性、共感性、確実性、有形

)の

平均値があまり高い値 をとらなかった ことに注意 したい。 まず、サー ビス品質の平均値が 2.87に しかな らなかった ことは大 きな問題である。 これは、回答者 は自らのサー ビス品質が高い ものだ と思 っていない ことを意味す る。現在、消費者金融サー ビスは市場が拡大 しているため、

サー ビス提供者 を拡大する傾向にある。十分な研修 を行 い、サー ビス提供者が 自信 を持 って店頭 に立てるような研修 システムの充実 を早急 に行わなければな らない。なぜな ら、消費者金融サー ビスは顧客接点 を持つため、サー ビス提供者の応対が新規顧客の獲得、既存顧客の維持 につなが るか らである。

(11)

仮説1の回帰分析では、サー ビス品質 に影響 を与 える要因 として顧客 は信頼性 を最 も重視 して いる、 とい うのが回答者の認識であった。顧客 との信頼関係の構築 はマーケティングにおいては きわめて重要な概念である。顧客 との長期 にわたる友好な関係の構築 はリンーションシップ・マー ケティングの本質である。Morgan and Hunt(1994)や Wilson(1995)など多 くの研究 において、

リレーションシップ構築のために信頼構築の重要性が指摘 されている。一方、有形性の影響力 は 最 も小 さい と予測 していたが、他の変数 とほ とん ど変わ らなかった。回答者 は自らの身な りや外 見 もサー ビス品質 を高める要素 として捉 えているようである。

また、組織 内システムがサー ビス品質 に与 える影響力 は大 きな もの とならなかったが、組織内 システムの重要性 は読み取れる。おそらく多 くの企業 において組織内システムの整備 は発展途上 にあると思われ る。サー ビス提供者への組織的支援 はす ぐには整備できないため、今後の業界競 争激化への対策 として早急な整備が必要であろう。

さらに、集中的な研修 と継続的モニタ リング とがサー ビス品質に影響 を与 えるが、両変数 とも 従業員満足 によ り大 きな影響 を与 え、 また、継続的モニタ リングが従業員満足 に与 える影響が相 対的に最大 となった。つ まり、公平な評価 システム とそれに基づ く報酬・ 昇進 システム もまた欠 かせない。

次 に、顧客満足 に関 して、仮説4、 仮設 5と もに成立 した。つ まり、従業員満足、従業員の権 限委譲 に対する満足度 はともに顧客満足 に対 して強い影響力 を及ぼしていた。 しか し、それぞれ の平均値 を見 ると、5段階評価 の うち、従業員満足 は2.99、 従業員の権限委譲 に対す る満足度 は 2.72で あった。2つの変数 は顧客満足 に対 して因果関係があるものの、サービス提供者の現状の 満足度 は決 して高いわけではないことが確認 された。 よって、権限委譲の促進や、研修 システム の充実 を図 り、従業員満足の向上 に努めることが急務である。

権限委譲 の重要性 は仮説6で裏付 けられ る。権限委譲の度合いによって、従業員の仕事 に対す る満足度、組織への関与度、革新的行動が大 き く異なる。消費者金融サー ビスの場合、金銭を扱 うため、 リスクを回避で きる組織的な判断を要する機会が多 くなるが、冨田 (2004)に見 るよう に顧客 は迅速 な回答 を期待する。そのため、優良顧客に関するサー ビス提供者への権限委譲の促 進 は、販売機会の喪失 を防御 した り、顧客 を維持するために重要な手段 となる。 また、サー ビス 業の場合、顧客 に提供す るサー ビスを均一化するために、マニュアル化 は不可欠であるが、顧客

ごとに事情が異なるため、権限委譲 を伴 った顧別対応 を進めてい くべ きである。

6.むすびにかえて

サービス提供者のマネジメントには、消費者金融サービス業や百貨店のように上司が部下の行

‑68‑―

(12)

消費者金融会社におけるインターナル・マーケティング

動 を日々監視 で きる形態 もあれば、 タクシー業界や旅行業界 のツアーコンダクターのように従業 員がいつたん営業 に出て しまえば会社 に戻 って くるまで直接、監視で きない形態 もある。 もちろ ん、前者の方がマネジメン トを行 ないやすいが、消費者金融サー ビスにおいては他業界 と比べて 新 しい会社が多い こともあって、企業のさまざまなシステムの整備が まだ不十分であろう。研修 システム、評価 システム と報酬・ 昇進 システム、組織的支援 システムな ど全社的 システムの早急 な充実が従業員満足の向上 には重要である。

そして、本研究で議論 して きた結果 を元 に、消費者金融サー ビスにおける顧客満足向上のモデ ルを示せば図4のようになる。顧客満足の向上 にはサー ビス品質の向上が必要であ り、サー ビス 品質の向上 には従業員満足の向上が前提 となる。そして、従業員満足 を向上 させ るには権限委譲、

研修 システム、評価 システム、組織 システムの整備が必要 となる。

消費者金融サービス業における顧客満足向上モデル

さて、今後の研究課題 として、 このモデルの精緻化 と実証分析 を行 っていきたい。 その際、 こ のモデルは消費者金融サー ビス業だけの ものなのか、あるいは大筋 は他のサー ビス業 において も 該当するのかについて比較調査 を行 いたい。で きれば、消費者金融サー ビス業特有の変数 を導出 してい きたい。また、従業員満足の結果要因 としてモデルではサー ビス品質のみを取 り上 げたが、

他 の変数の抽出にも努 めたい。

2節で も述べたが、サー ビス・ マーケテ ィングにおいて、エクスターナル・ マーケテ ィング やインタラクティブ・ マーケテ ィングの研究蓄積 と比較 して、インターナル・ マーケティングの 研究 は相対的にきわめて少ない。 しか し、インターナル・ マーケティングは従業員満足向上 を目 的 とす るため、その重要性 は大 きい。

消費者金融サー ビス業 は近年、競争が激化 している。商品その ものに企業間での差別化 は難 し いため、従業員 によるサー ビスの質 を高めてい く必要がある。企業が均一で高品質のサー ビスを 持続す ることがで きるのは従業員マネジメン トの在 り方に起因す る。そのため、消費者金融サー

従 業 員 満 足 サ ー ビス 品 質

組 織 的 支 援

(13)

ビス業が従業員の効果的なマネジメント手法を模索することは顧客満足を高め、 リピーターを囲 い込むために意義があるであろう。

【 参考文献】

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参照

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