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富山哲之*・山本和佳** 近藤貴子***・谷本光穂*

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Academic year: 2021

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(1)

回転コイル法による地磁気の測定と実験室内の地磁気の乱れ

富山哲之*・山本和佳**

近藤貴子***・谷本光穂*

(昭和58年11月1日受理)

Measurement of Terrestrial Magnetic Field by Rotary Coil Method and Inhomogen『eous Distribution of its        Field in Science Laboratory

Noriyuki TOMIYAMA,Kazuyosi YAMAMOTO,

 Takako KONDO and Mituho TANIMOTO

(Received Dec.1,1983)

1.はじめに

 児童・生徒の関心や興味をひく基本的な電磁現象の応用例として,電磁石,ブザー,モー ター,発電機など身近に数多くあるが,地磁気の中でコイルを動かすと起電力が生じると いう現象を扱ったものは小学校理科教科書をはじめ,まず見当らない。勿論,地磁気が弱 く測定の対象にし難いからであろう。我々は地磁気をより身近なものとしてとらえ,それ を容易に検出できる教具(磁場検出装置)を開発した。

 一方,学校での理科実験の中で,地磁気およびそれと同程度の弱い磁場の測定を行う実 験として,方位磁針計で方位を調べる実験(小),直線電流の回りの磁場を調べる実験(中・

高),地磁気の水平分力の測定,電子の比電荷の測定(大)が挙げられる。このような実験 を行う際は,特に実験室内の磁場の乱れに十分留意することが必要である。我々は,この 磁場検出装置を用いて,地磁気および実験室内の磁場の乱れを調べた。

 ここでは,我々が開発した回転コイル法1)による磁場検出装置の概略とその製作法,およ びその装置を用いた地磁気の測定結果および実験室内の地磁気の乱れについて報告する。

2.磁場検出装置と測定方法

磁場を測る方法には種々あるが,回転コイル法に依った。次の観点により,これを応用

した。

(1)測定原理が生徒に理解し易いので教材としての利用価値がある。

*長崎大学教育学部物理学教室 **大村市立中央小学校 ***諌早市立北諌早小学校

(2)

磁場

H

スリップリング       ブラシ

図1 回転コイル法の原理

 (2)身近にある材料を使用して,誰にでも 容易に,しかも安価に製作できる。

 (3)既存の器械を併用して,広範囲の磁場の 測定ができる,また誰にでも容易に操作がで

きる。

 図1のように,一様な磁場Hの中で,円形 状の回転コイルを一定の角速度ωで回転さ せると,コイルを通過する磁束φが時間的に 変化し,コイルに誘導起電力E=一4φ/読 が生じることはファラデーの法則として広く 知られている。

 実際の誘導起電力は,

    E=M沼ω60s(ω!+ψ)

、で与えられる。ここに瓦はフイルの巻数,S はコイルの断面積である。ここでコイルの断 面積Sは装置の小型化という点から空間的 制約が伴ない,また角速度ωは模型用モー ターを使用するので,自と制約されるので,

モーター 信号出力端子 端子 4

電源入力    回転モニター出力端子       アクリル製

       15     アクリル製      コイル保護ケ『ス3

の①■

,卿一一 ,曹■−

輪シヤフトカバー寸_       木製シャフト ilj

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150 535 llQ

回転モニター用コイル

(a)磁場検出器内部構造本体

\スリツ糊

僖号出カリード線

プラシ

 62

  4φ

(b)ヘツド部

 磁場検出用コィル 30≠

図2 磁場検出装置の概略図

(3)

コイルの巻数Nで起電力の向上を計った。

 前述の観点に従って製作した装置の概略図を図2に示す。図2(a)の左側の木製箱(150 mm×93mm×120mm,肉厚15mm)の中に,模型用モーター(マブチモーター製R S540S型),

回転状態を監視するためにモニターコイルを固定した。またモニターコイルの中心軸に,

直交し,これと3mm離れた位置に,小磁石を取り付けた真鍮製円板(直径40mm,肉厚0.15 mm)をモーターのシャフトに固定した。モーター部分から漏洩している磁場の影響を避け るために,長さ600mmの木製シャフト(直径4mm)を用い,その先端部に磁場検出用の回転 コイル等を取り付けた。シャフトを保護するための合成樹脂製シャフトカバー(長さ520 mm,直径10mm,肉厚1mm)およびシャフトカバー,ブラシ等を固定するための木製角棒(450 mm×14mm角,および165mm×8mm角)を使用した。測定磁場の乱れを防ぐためにモーター部

を除けば,他の部分に磁性材料は一切使用していない。

 コイルはプラスチックの空芯(10mm角,肉厚1mm)の周囲に直径0.15mmのエナメル線を 約2500回巻いた。なお,コイル部はスリップリングとの分離が可能で,他のコイルと交換す ることができる。このことは異なった強度の磁場測定には大変便利である。真鍮材(長さ 12mmおよび27mm,直径5.5mm,肉厚0.7m皿)のスリップリング2個を用い,各々にコイルか

らのリード線を接続した。ブラシは真鍮材(長さ30mm,幅8mm,肉厚0.15mm)の4枚から 成る。スリップリングとの接触が滑らかになるように短棚状の切り込み(長さ17mm,幅1 mm)を入れて,各々のスリップリングの側方から2枚のブラシを対向させ,またこれらの 短棚状の部分を12mmの所から折り曲げて,スリップリングの上下に接触させて,高速回転 に耐え得るようにした。特にこの接点が摩耗すると雑音発生,波形歪が生じて精度良い測 定ができないので,その製作には十分な注意を払う必要がある。

 測定装置を図3に示す。コイルの大きさを比較するために単一乾電池を並べて置いてあ る。オシロスコープで観察される回転コイルに生じた起電力の正弦波波形(80Hz)を示す

(図4)。その振幅の大きさから起電力を読み取る。モニターコイルの出力波形を同時にブ ラウン管上で観測して,回転状態を常時監視する。

      図3 測定装置の外観

オシロスコープ(後方右側),電源装置(後方左側),

磁場検出装置(前方)から成る。 図4 磁場検出装置の動作実験例 上側=磁場検出コイルの出力波形     10mV/div。,

下側:モニターコイルの出力波形     0.1V/div.,

横軸=時間4ms/div.

(4)

3.測定結果と考察

〔1〕 本装置による絶対測定

 本装置による絶対測定は高磁場発生用の電磁石を用いて行った。外部磁場はプロトン NMR2)で較正(1000〜3000G)した。なお,今回製作した回転コイルの感度は50mV/Gであっ た(図5)。

〔2〕 地磁気の測定

 地磁気の測定は,周囲に建物等の障害物が一切ない,広いグランド上で行った。装置の 回転軸を地上約70cmの高さに,水平に保持し,あらかじめ方位磁針計で定めた磁気的南北 方向から測って,角度30度毎に測定した値を図6の黒丸で示す。

 地磁気全磁力E∂,伏角ψ,回転コイルの回転軸の磁気的北(方位磁針計で定めた北方向)

150

0        00        5

1

> ×︶R鯉製癬幣

 0

図5  E  25

 0       5 2      1

>g ×︶R肥型癬幣

   1.0      2.0      3.0

  磁場(x103G)

回転コイルの起電力と外部磁場との関係

。一一 定イ直

       2%

(e)=23.5(1一{).48c◎g e)

    S    W    N     E    S     O     90    180    270    360  e

    回転コイルの回転軸の方向

図6 広いグランドにおける地磁気の異方性の測定   黒丸:測定値,実線:計算値

 o

(5)

からの角度,この位置における磁場H(θ)とすると(図7),

    H(θ)二瑞・(1−60s2ψ60s2θ)12…一    (1)

で与えられる。

 長崎における全地磁気および伏角は.それ w

ぞれHo二〇.47(G),ψ=46(度)3)であり,

今回製作した装置の感度は50mV/Gである から地磁気によって検出される起電力は,

 Eo二23.5(1−0.4860s2θ)1/2〔mV〕

で与えられ,図6の実線で示してある。

 以上の事から,製作した磁場検出装置は,

素直に地磁気の異方性を十分に検出し得るこ とおよび測定装置自体からの漏洩磁気の影響 は無視できることが判った。

〔3〕 実験室内の地磁気の方向と大きさの

   決定

 前項〔2〕で述べたように,本装置は地磁 気を精度良く検出することが可能であること が判ったので,次に理科実験室の地磁気の乱 れについて測定した。

N

     \   /

Hh g e/ノ\

        C

Hv

 Ho

図7 地磁気の三要素と回転コイル  の回転軸の位置関係

Hh:水平分力,Hv:鉛直分力,

Ho:全磁力,C:コイルの回転軸,

θ:コイルの回転軸角,ψ:伏角

 我々は初めに本学部物理大実験室内の地磁気の分布を測定した。測定を開始するに当っ て,実験室内の各種実験装置,机,椅子等は全て搬出した。実験室内を碁盤目状に測定点 を定め,この各々について机上高さ (約70cm)で,磁場検出装置を水平面内で振らせて,

回転コイルの起電力の波形の最大振幅を読み取って磁場の乱れの空間的分布を作図した

〔図8(d,e)〕。図からも明らかなように地磁気の乱れが広い範囲に渡っており,特に 壁や柱の周辺で著しいことが判る。また,柱間で南北が完全に逆転する個所もある〔図8

(e)〕。これは柱や壁の建材として多量の鉄筋等が使用されているためと思われる。比較 のため木造の実験室(川平小学校)に於いて同様の測定を行った〔図8(a)〕。この場合,

鉄製品の置かれている所(黒塗部分)を除けば地磁気の乱れは殆んど認められない。参考 のために比較的鉄筋量の少ない実験室(附属小,大村中央小)での測定例を図8(b,c)

に示す。図9は各測定点での地磁気の向きの度数分布を表わしている。本学部大実験室(測 定点個数114点)の場合,例えば±5度に収まる点は38%であるが,木造の実験室である川 平小(54点)の場合,91%に達する。尚,附属小(105点)は56%,大村中央小(68点)は 59%を示す。

 以上のように,地磁気の乱れの度合が最も大きい例は鉄筋コンクリート造の実験室であ るが,乱れの少ない所は木造の実験室である。また同じ鉄筋造の実験室でも建物の強度向 上のために使用されている鉄筋量に依って乱れの度合は異なってくることが判る。

(6)

(a)

︵b︶

(c)

︵d︶

(e)

      ク       長崎市立川平小学校    グノ        ノも ノ        グ

      ノ  ノ  ノ

      木造     ノ ノ ノヲノ      ¢

       ノノーノノ /!ど

      ノ  !ヴ ノ  /乎 /        ノ  /〃  ノ  ノ7 /  ノ        ノ  ノ  ノ  /ワ  /7  ノア

      ううう/

       ノ/

       /

      大村市立中辛小勉・−/ノギ弘

       鉄筋モルタル造    /ノ   /・ノ        ノ       ノア       ノ        ノ

       /ノーーノノρ.

       ノ         ノ

      やう乞う

      ノ

       1イ     ノ        ータ    !ヲ    /ヲ

       ノ       ー

       !ヲ       !ヲ

      ノ        ノ        ノ

      !ザ         ノ7

       ノ       忌レジ      長崎大学教育学部附属小学校

      7ノ    弘        鉄筋コンクリート造       ノ    /》

      ノノ    ノノノ        _ノ  /ノノ/ ノノ

      /1ノ       /ノ        ノ ノ     ノワノ/ヲ    ノノ

       ノノノノノノノ/ノノノ

      ノノ       /ノ       ノノ     /ノノ     !ヲノ        ノ ノ        ノノ        ノ         ノ/ヲ         ノ       ノ      ノノ7       ノ/ヴ

      ノ/ノノ///ノ/ノー        /ノ/   ノノノ  //,・

       ノノノノ》/■ゑノ

      ー /多.

      ノ 長崎大学教育学部物理実験室

  鉄筋コンクリート造       一       一夢     − ,} ノP 7  ノ  ノノ       →ノ〜 − ,レ ノノ  ー亭 ノノ       ,孝ノ→→.ノ7 ノァー》  ,顎 ノノ

      :: ノノ噛〆〃喩/ノノ       ノノノ1/ノ// ノノ        ノノノ/ノ■/ ノ ノノ

       〃ノ/ノ//ノ〃聚¢

       置 ノ  巴1落/92  ノオ9

   教灘驚日…一州■

        図8 各実験室内の地磁気の方向と大きさ

(7)

(a)長崎市立川平小学校     木造

15

lO

5

(b〉大村市立中央小学校   鉄筋モルタル造

εW4N ぴN  305E4N

25

(c)長崎大学教育学部付属小学校  2    鉄筋コンクリート造

げW4N ON

(d)長崎大学教育学部物理実験室    鉄筋コンクリート造

45。

NE  I5

l O ぴW4N

lO

5

15

ON げE4N

5

鮮w びW4N ON げE4N 09E 鵬旺

図9 磁気的北向きから測定した各実験室内の地磁気の方向の度数分布

(8)

4.おわりに

 以上の事柄を要約すると次の通りである。

 〔1〕製作した磁場検出装置の感度は50mV/Gである。図6から判るように,特にモー ター駆動部からの漏洩磁気は殆んど検出されない。これは図2に示すようにモーターとコ イル間が約60cm離されているからである。従って測定値は即外部磁場の大きさに比例した

ものとして扱うことができる。

 〔2〕 鉄筋造の場合は木造の実験室に比べて,かなり広範囲に地磁気が乱れている〔図 9 (d)〕。特に壁や柱の周辺,鉄製品の設置されている周辺の地磁気の乱れが目立ってい る。従って大学の物理実験室や鉄筋を用いた各学校の実験室で地磁気あるいはそれと同程 度の磁場を扱う実験を行う際には十分に注意を払う必要があることが明らかとなった。

 〔3〕 磁場検出装置の教具としての利用価値

 (1) 中・高校生であれば,身近にある材料を用いて容易に,安価に製作できる。

 (2) 高・大学物理における電磁誘導の法則の検証および地磁気を利用した起電力の 発生あるいは地磁気の測定を通して,地磁気そのものに関する認識を深めることができる。

 今回の測定を通して,本装置は十分にその機能を果たしたが,長時間運転すると特にブ ラシ部分の接触が不完全になったり,また回転むらを起こしたりすることがあった。これ ららは雑音の原因にもなり,また起電力の変動をもたらし,装置の性能を低下させる要因 となる。従ってこれらの改良を計り,精度の向上を目指したい。

 前述のように地磁気の乱れは物理実験で様々な影響を及ぽす。特に,例えば地磁気の伏 角の測定の際には立体的な乱れの様子を知る必要がある。前項〔2〕で述べたように回転

コイルを水平面内で回転させたときの最大振幅は全磁力を,最小振幅は鉛直成分を検出し ているので,その比から伏角が求まる。しかし,乱れの様子を立体化するためには測定点 の数を更に増す必要がある。この点も今後の課題として行きたい。

 本稿は,日本物理学会物理教育分科(1983年10月,岡山大学)で,口頭発表した内容に 加筆,修正を加えたものである。

 なお,本測定を行うに当り,快く理科実験室を使用させて戴きました,本学部附属小学校,

大村市立中央小学校,長崎市立川平小学校の各位に謝意を表します。

参考文献

1)熊谷寛夫,亀井享:電磁気学応用1(朝倉書店,1966)111.

2)飯田他共編:磁気測定(朝倉書店,1967)66.

3)東京天文台編:理科年表(丸善,1982)地学部.

参照

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