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Microsoft Word - 04-★2003_P037-P051__鉄プ④松浦宏行・日本語.doc

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Al–Ti 脱酸により生成する Al–Ti 系酸化物の 1873 K および 1473 K での存在形態

研究代表者 東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 講師 松浦宏行 1. 諸言 Ti 添加鋼は、Ti による成形性、非時効性、オーステナイト結晶粒成長抑止、フェライト組 織微細化促進等の各種鋼材特性の性能向上や費用対効果の観点から、自動車用鋼板、船舶用 厚鋼板、ステンレス鋼など様々な分野で広く用いられている。鋼材中でTi は酸化物、窒化物、 炭化物、硫化物等の種々の非金属介在物を形成し、さらに酸化物の場合は鋼組成によって Ti2O3、Ti3O5、TiO などの様々な形態となることが知られている。 Ti は酸素との親和力が大きいため、通常は脱酸プロセスによって溶鋼中酸素を除去したの ちに添加される。脱酸材の一つである Al は強力な脱酸材であり、頻繁に用いられる。Al に 比較してTi は高価な副原料であるため、Ti 脱酸反応の進行による Ti の収率低下を避けるた めにAl 脱酸-Ti 添加が一般的に行われている。したがって、Al–Ti 脱酸プロセスは二次精錬 で頻繁に用いられるプロセスの一つである。二次精錬温度での Al 脱酸反応や Ti 脱酸反応に 関する熱力学についてはこれまで詳細な研究が行われている一方、Al–Ti 脱酸反応について は完全に解明されていない。Ruby-Meyer ら1)IRSID スラグモデルをもとにした多相平衡 計算コードCEQCSI2)を用いて1793 K における Fe–Al–Ti 溶鋼と平衡する安定酸化物相図を 計算した。状態図によると溶鋼組成によって Al2O3、Ti2O3、Al2TiO5、もしくは Al2O3–TiOx

系液相酸化物が生成する。一方、Jung ら3)FACT データベースと FactSage ソフトウェア

を用いて1873 K における同様の安定相図を報告しており、Ruby-Meyer らによる安定相図中 に示されていない Ti3O5相の安定領域を示した一方、液相酸化物の安定領域は存在しないと 報告した。本安定相図は計算に用いるデータベースを再検討したうえで改めて計算され、 Al2O3、Ti2O3、Ti3O5、および液相酸化物の安定領域が示された4)。Kim ら5)も同様に1873 K におけるFe–Al–Ti 系溶鋼と平衡する安定酸化物相図を報告し、Al2O3、Ti2O3、およびTi3O5 の安定領域を示したが、他の相や液相酸化物は存在しないと報告した。以上のように、溶鋼 と平衡するAl–Ti–O 系酸化物の安定相については未だ不明な点が多いのが現状である。 Ti を含有する非金属介在物の安定性は、Ti が酸化物のみならず窒化物、炭化物、硫化物お よびそれらの固溶体など様々な化合物を形成することからより複雑であることが予想される が、これらは通常二次精錬温度では観察されない。固相の鋼中における非金属介在物の挙動 は鋼材組織と機械的特性の関係を理解したうえで、鋼材の各種特性を最大限引き出すために 極めて重要である。しかし、現状では最も基礎的な知見となる固相の鋼中における Al–Ti–O 系酸化物の安定性について明らかにされていないのが現状である。 以上の現状をふまえ、本研究では始めに Al–Ti 脱酸反応により生成すると考えられる様々 な酸化物の安定領域で、これまで報告されていないAl2TiO5安定領域を1873 K で平衡法によ り測定した。次に、固体鋼内の酸化物系介在物挙動を調査するため1473 K で Fe–Al–Ti 系鋼 の酸化物系介在物生成及び変化挙動を調査し、介在物組成、形状、粒径変化を考察した6)

(2)

2. 実験方法

2.1. Al2TiO5酸化物平衡実験

まず、以下の手順により様々なAl、Ti 濃度の Fe–Al–Ti 鋼試料(Al: 0.0142~0.1088 mass%、

Ti: 0.0380~0.3875 mass%)を作製した。約 150 g の電解鉄を多孔質 MgO るつぼ(ニッカ

トー製、外径38 mm、内径 26 mm、高さ 123 mm)に装入し、るつぼを石英製反応管(外 径50 mm、内径 46 mm、長さ 360 mm)内に設置した。反応管内を Ar 雰囲気(純度 99.9 %、 流量400 cm3/min)に置換したのち、電解鉄を高周波誘導加熱炉で 1873 K まで昇温・溶解 して1 時間保持した。その後、金属 Al(純度 99.9 %)、金属 Ti(純度 99.9 %)を 2 分間の間 隔で順に添加し、さらに10 分間保持してからるつぼごと反応管より取り出して水冷した。 次に、特級試薬Al2O3とTiO2を化学量論比で1 : 1 に秤量、混合し、約 20 g を Al2O3るつ ぼ(外径38 mm、内径 34 mm、高さ 45 mm)に入れ、1823 K で 24 h 焼成して Al2TiO5粉 末を作製した。Al2TiO5粉末を直径18 mm、厚さ 1 mm のタブレット状に成形し、Al2O3る つぼに入れ、1823 K で 24 h 焼成して Al2TiO5ペレットを作製した。

平衡実験の装置概略図をFig. 1 に示す。Fe–Al–Ti 鋼試料約 30 g と Al2TiO5ペレット約1 g

をAl2O3るつぼ(外径38 mm、内径 34 mm、高さ 45 mm)に入れ、タングステン線で吊る し、Al2O3反応管(外径 60 mm、内径 52 mm、長さ 1000 mm)の上部に装入した。反応管 内を Ar ガスで置換した後、Ar–3%H2混合ガスを流量 200 cm3/min で導入し、反応管内を Ar–3%H2ガスで置換した後、試料をるつぼごと均熱帯に挿入し、1873 K で保持した。3 時 間後、るつぼごと反応管上部に引き上げ、蓋をしたままAr ガスを吹き付けて急冷した。 各試料から鋼片約1 g を切り出して、混酸(HCl : HNO3 : Water = 1 : 2 : 5)で溶解し、不 溶解物をろ過してICP–OES(エスアイアイ・ナノテクノロジー、SPS7800)により Al およ びTi 濃度を測定した。また、全酸素濃度を燃焼-赤外線吸収法(LECO、TC600)により測 定した。平衡実験前後の酸化物ペレットは理学電気社製全自動 X 線回折装置(RINT–2500V) を用い、X 線回折法により分析した。 一部の試料で鋼中介在物、および金属-酸化物ペレット界面をSEM–EDS で観察・分析し た。試料をポリエステル製樹脂に埋め込み、SiC 耐水研磨紙およびダイヤモンド懸濁液(最 小粒子径 0.25 μm)を用いて試料を鏡面研磨した。研磨面に観察される介在物組成を EDS

(JEOL EX–54175JMU)で測定した。介在物の Al、Fe、Mg、Ti をそれぞれ定量分析した。

2.2. Al–Ti 脱酸鋼中介在物観察 3 種類の Fe–Al–Ti 鋼試料(以降、試料 2–A、2–B、2–C と呼ぶ)を作製し実験に供した。 以下の手順により試料を作製した。約200 g の電解鉄を多孔質 MgO るつぼ(ニッカトー製、 外径38 mm、内径 26 mm、高さ 123 mm)に装入し、るつぼを石英反応管(外径 50 mm、 内径46 mm、長さ 360 mm)内に設置した。反応管内を Ar 雰囲気(純度 99.9 %、流量 400 cm3/min)に置換したのち、電解鉄を高周波誘導加熱炉で 1873 K まで昇温・溶解して 1 時間

保持した。その後、試料2–A、2–C の作製にあたっては金属 Al(純度 99.9 %)、金属 Ti(純

度99.9 %)を 2 分間の間隔で順に、試料 2–B の作製にあたっては金属 Ti のみを添加した。

(3)

同様の方法により鋼中Al 濃度、Ti 濃度、および全酸素濃度を測定した。 作製した鋼塊より直径約25 mm、厚さ約 10 mm の鋼片を切り出して、鋼製ワイヤーに結 び付けた。電気炉に設置したムライト反応管(外径50 mm、内径 42 mm、長さ 1000 mm) 内をAr 雰囲気(純度 99.9 %、流量 350 cm3/min)に置換した後、試料を均熱帯(1473 K) に吊り下げて保持した。1 時間もしくは 3 時間経過した後に試料を素早く反応管より取り出 して水冷した。 凝固まま試料、および熱処理試料中の介在物をSEM–EDS で分析するため、2.1 と同様の 方法により研磨した。研磨面に観察される介在物を SEM(JEOL JSM–6060LV)で粒径、 形状および数密度を測定し、各々の介在物組成をEDS(JEOL EX–54175JMU)で測定した。 介在物のAl、Fe、Mg、Ti をそれぞれ定量分析した。 MoSi2heater Alumina tube Alumina shield Alumina tube Silicone rubber Silicone rubber Gas outlet Alumina shield Alumina supporter Gas inlet Al2TiO5pellet Al2O3crucible Fe-Al-Ti alloy Ar gas inlet Tungsten wire Pt30%Rh-Pt6%Rh thermocouple

Stainless steel tube

Figure 1 Schematic diagram of apparatus for equilibrium experiment. 3. 実験結果および考察 3.1. Al2TiO5酸化物平衡実験 平衡実験後の試料組成を Table 1 に示す。いずれの実験においても実験後試料の鋼と酸化 物ペレットは分離しやすい状態であったが、その配置・形状より 1873 K で保持している間 は鋼と酸化物ペレットが十分に接触していたと考えられる。また、本実験では Al2O3るつぼ を用いているため、溶鋼は Al2O3と Al2TiO5の二相飽和であった。酸化物ペレットは実験前 のタブレット形状を維持しており、目視では液相酸化物相の生成は確認されなかった。 溶鋼へのAl2O3およびAl2TiO5の溶解反応はそれぞれ(1)、(2)式で表される。本実験結果か ら溶解反応の自由エネルギー変化を計算するために用いた相互作用係数7–9)Table 2 に示す。 Al2O3 (s) = 2 Al (mass%) + 3 O (mass%) (1)

(4)

Table 1 Results of equilibrium experiments. Compositions of metal (ppm) Equilibrium constant ( - ) ∆

G

º of dissolution (J/mol) Exp. No.

Sol. Al Sol. Ti T. O Al2O3 Al2TiO5 Al2O3 Al2TiO5

1–1 16.3 342.4 50.6 2.98×10−13 2.42×10−19 449000 667000 1–2 0.74 1.5 249 6.5×10−14 5.6×10−21 470000 730000 1–3 0.94 5.1 145 2.3×10−14 2.4×10−21 490000 740000 1–4 0.66 1.2 203 3.0×10−14 1.4×10−21 490000 750000 1–5 0.67 1.3 272 6.8×10−14 6.0×10−21 470000 730000 1–6 2.2 10.2 82.6 2.5×10−14 1.7×10−21 490000 740000 1–7 105.8 2051 60.2 1.31×10−11 6.70×10−17 390000 580000 1–8 48.2 878.7 46.7 1.77×10−12 2.86×10−18 421000 629000 1–9 17.4 286.7 54.6 4.30×10−13 3.43×10−19 443000 662000 1–10 19.9 359.5 38.6 1.98×10−13 9.85×10−20 455000 682000 1–11 84.3 1836 47.3 4.37×10−12 1.29×10−17 407000 606000

Table 2 Interaction parameters.

e

ij (jÆ) Al Ti O Al 0.04307) 0.00409) −1.987) Ti 0.00379) 0.0498) −1.038) O −1.177) −0.3408) −0.177) 実験結果より計算された(1)、(2)式の自由エネルギー変化を Table 1 に示した。(1)、(2)式の 自由エネルギー変化の平均より1873 K における Al2O3、Al2TiO5の溶解反応の自由エネルギ ー変化をそれぞれ以下のように決定した。

Al2O3 (s) = 2 Al (mass%) + 3 O (mass%) ∆

G

º = 450000 J/mol (1873 K)

Al2TiO5 (s) = 2 Al (mass%) + Ti (mass%) + 5 O (mass%)

G

º = 680000 J/mol (1873 K) 決定された Al2O3溶解反応の自由エネルギー変化は伊東ら 7)によって報告された自由エネル ギー変化450600 J/mol とほぼ等しい。 実験結果より決定した Al2O3、Al2TiO5の溶解反応の自由エネルギー変化、および(3)、(4) 式に示したTi2O3、Ti3O5の溶解反応の平衡定数8)より、1873 K で Fe–Al–Ti 溶鋼と平衡する Al–Ti–O 系酸化物の安定相図を計算した。Fig. 2 に計算された安定相図を実験結果とともに 示す。本実験では実験後試料の全酸素濃度を測定しているため、金属相の酸素濃度を過大評

(5)

価した可能性がある。実際に金属相の酸素濃度は計算によって予測される酸素濃度よりも大 きい。

Ti2O3 (s) = 2 Ti (mass%) + 3 O (mass%) log

K

Ti2O3 = −9.986 (1873 K) (3)

Ti3O5 (s) = 3 Ti (mass%) + 5 O (mass%) log

K

Ti3O5 = −16.50 (1873 K) (4)

Fig. 3 に実験前後の酸化物ペレットの XRD 測定結果を示す。実験前ペレットでは Al2TiO5 相に対応するピークのみが観察されたのに対し、実験後ペレットには Al2TiO5相に対応する ピークとともにAl2O3相に対応するピークが観察されたことから、実験後ペレットはAl2TiO5 とAl2O3の混合物である。 一部の試料において金属-酸化物ペレット界面における酸化物組成を測定した。Fig. 4 に 金属-酸化物ペレットの界面の観察例を示す。酸化物相内には灰色部と暗灰色部が認められ た。図中に各々の相の組成分析結果を、酸素を除いた Fe–Al–Ti 系で示したが、灰色部は Al

を10 mol%程度含む TiOx相であるのに対して暗灰色部はTi を 3 mol%程度含む Al2O3相であ

った。Fig. 5 に金属-酸化物ペレット界面での酸化物相の分析結果例を Al–Ti 二元系への換

算値で示す。実験に供したAl2TiO5酸化物(Al–Ti 二元系換算での Ti 濃度は 33.3 mol%)は

実験後に金属-酸化物ペレット界面で観察されず、一方TiOxを含むAl2O3相およびAl2O3相 を含むTiOx相が観察された。SEM 像からもこれらの二種類の異なる酸化物相が確認された。 10-4 10-3 10-2 10-1 10-4 10-3 10-2 10-1 100 0.001

[mass

%

Ti]

[mass

%

Al]

Ti 3O5 Ti2O3 Al2TiO5 Al 2O3 0.05 0.02 0.01 0.005 0.002 0.001 0.0005 [mass%O]

Figure 2 Compositions of metals after equilibrium on the calculated stable oxide phase diagram for the Fe–Al–Ti–O system equilibrated with molten Fe–Al–Ti at 1873 K.

(6)

10 20 30 40 50 60 70 80

Oxide pellet after Exp. 1-11 Al

2TiO5 Al2O3

In

tensity (a. u.)

2θ (deg)

Prepared oxide pellet

Figure 3 XRD patterns of oxide pellets before and after equilibrium experiment.

10 μm

Steel Oxide Resin

(mol%) Al 10.5 Ti 88.9 Fe 0.6 (mol%) Al 96.2 Ti 2.7 Fe 1.1

Figure 4 SEM image at the interface between metal and oxide phases, and compositions analyzed by EDS. (Exp. 1–11)

0 20 40 60 80 100

Ti content of oxide phase onto the Al-Ti binary system (mol%)

Al2TiO5 Exp. 1-8

Exp. 1-11

(7)

そこで、気相の影響を受けずに金属と十分に平衡に到達している酸化物の組成を測定する ため、一部の実験後試料で金属相に分散する介在物を分析した。介在物の分析結果例を Al–Ti–Fe 三元系への換算値で Fig. 6 に示す。介在物組成が Fe の頂点に向かって並んで観察 されるのは、微細介在物のEDS において母相の金属相からの X 線によって Fe 濃度が過大評 価されるためであり、介在物のFe 濃度を正確に測定することは困難であった。そこで、測定 された介在物組成から便宜的にFe を除いて Al–Ti 二元系に換算した。Fig. 7 に金属相で観察 された介在物組成を Al–Ti 二元系換算値として示す。金属-酸化物ペレット界面において観 察された酸化物相と同様にAl2TiO5酸化物は観察されず、TiOxを含むAl2O3相、およびAl2O3 相を含むTiOx相が観察された。

Fig. 2 に示した 1873 K で Fe–Al–Ti 溶鋼と平衡する Al–Ti–O 系酸化物の安定相図からは

介在物組成が予測できず、Al2O3–TiOx系酸化物の安定相についてさらに検討する必要がある ことが明らかとなった。 0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100 T i c on te nt (m ol% ) Fe cont ent (m ol% ) Al content (mol%) Al2TiO5

Figure 6 Projection of compositions of oxide inclusions on the Al–Ti–Fe ternary system. (Exp. 1–10) 0 20 40 60 80 100 1-11 1-10 1-9 1-8 1-7

Ti content of inclusions onto the Al-Ti binary system (%)

Al 2TiO5

Exp. No.

1-1

(8)

3.2. Al–Ti 脱酸鋼中介在物観察

溶解により作製した鋼塊の組成をTable 3 に示す。Fig. 2 に示した Al–Ti–O 系酸化物の安

定相図によると、試料2–A、2–B、2–C はそれぞれ Al2O3相安定領域、Ti3O5相安定領域、お

よびAl2O3、Al2TiO5、Ti2O3、Ti3O5の相安定領域境界近傍である。観察された全ての介在物

のMg 濃度は 1 mass%より小さく、したがって観察された介在物を Al2O3–FeO–TiOx系酸化

物とみなした。

Table 3 Compositions of specimens. Compositions of metal (mass%) Exp.

No. Sol. Al Sol. Ti T. O

2–A 0.0341 0.0444 0.0060 2–B – 0.028 0.0007 2–C 0.0162 0.29 0.0035 (1) 試料 2–A(Al: 0.0341 mass%、Ti: 0.0444 mass%)

試料2–A の凝固まま試料、および 1473 K での加熱試料の介在物観察例を Fig. 8 に示す。

凝固まま試料の介在物は主に球状であった。また、介在物形状に及ぼす 1473 K での加熱の

影響は見られなかった。

Fig. 9 に試料 2–A 中に観察された介在物組成を Al–Fe–Ti 三元系に換算して示す。凝固ま

ま試料中の介在物はそのほとんどが純粋な Al2O3に近い組成であり、介在物の Ti 濃度は 4 mol%未満であった。一方、Fe 濃度が最大 25 mol%程度まで測定されたが、介在物の Fe 濃 度は介在物が小さくなるほど大きくなるため、母相の金属相からの特性X 線を測定している と考えられる。したがって、凝固まま試料中介在物組成は若干のTiOxを含むAl2O3と結論し た。 試料2–A を 1473 K で加熱した試料中の介在物組成は Al2O3から加熱前試料中には観察さ れなかったAl–Fe–O 系や Al–Fe–Ti–O 系酸化物に変化した。1473 K で 60 分の加熱後には 3 種類の介在物、Al2O3、Al–Fe–O 系および Al–Fe–Ti–O 系介在物が観察された。ほとんどの

Al–Fe–O 系介在物は Al–Fe 二元系換算で 30~40 mol%Fe を含んでいた。また、Al–Fe–Ti–O

系介在物の組成はAl–Fe–Ti 三元系換算で Fe 濃度が 35~75 mol%、および Ti 濃度が 5~20

mol%であった。

1473 K で 180 分間加熱した試料では、Al2O3は観察されず、Al–Fe–O 系や Al–Fe–Ti–O

系介在物のみであった。Al–Fe–O 系介在物の組成は広範囲に分散しており、Al–Fe 二元系換

算でのFe 濃度は 30~75 mol%であった。また、Al–Fe–Ti–O 系介在物は Al–Fe–Ti 三元系換

算で10~20 mol%の Al、60~80 mol%の Fe、および 10~20 mol%の Ti を含有していた。

Fe 濃度の大きな介在物の割合は加熱時間とともに増加した。以上の結果より、Al2O3介在物

は1473 K での加熱によって Al–Fe–Ti–O 系介在物に変化したと考えられる。

Fig. 10 に介在物の粒径分布を示す。加熱前後で介在物組成は大きく変化したが、介在物粒 径分布は大きく変化せず、加熱は介在物粒径に影響を与えないことが明らかになった。

(9)

5 μm

(a) (b) 2 μm (c) 2 μm

Figure 8 SEM images of typical inclusion observed in Specimen 2–A; (a) as cast, (b) after 60 min heating at 1473 K, and (c) after 180 min heating at 1473 K.

0 20 40 60 80 100 60 80 100 0 20 40 Al content (mol%) (a) 0 20 40 60 80 100 60 80 100 0 20 40 Al content (mol%) (b) 0 20 40 60 80 100 60 80 100 0 20 40 Al content (mol%) (c)

Figure 9 Composition of inclusions in Specimen 2–A; (a) as cast, (b) after 60 min heating at 1473 K, and (c) after 180 min heating at 1473 K.

0-2 2-3 3-4 4-5 5-6 6-7 7-8 8-9 9-10 10-0 10 20 30 40 50 Fraction of inclu sion number (%) Inclusion size (μm) As cast After 60 min After 180 min

Figure 10 Size distribution of inclusions in Specimen 2–A; (a) as cast, (b) after 60 min heating at 1473 K, and (c) after 180 min heating at 1473 K.

(10)

(2) 試料 2–B(Ti: 0.028 mass%) 試料2–B の凝固まま試料、および 1473 K での加熱試料の介在物観察例を Fig. 11 に示す。 凝固まま試料の介在物は不定形状である一方、加熱試料中の介在物の多くは球状であった。 介在物粒径は後述するように加熱時間が長くなるに伴い小さくなった。 Fig. 12 に試料 2–B 中に観察された介在物の組成を示す。凝固まま試料の場合、主に低濃 度のFe を含む TiOxが観察された。一方、1473 K で加熱した後の試料中には Fe–Ti–O 系介 在物が観察された。1473 K で 60 分間加熱した試料中の介在物組成は Fe–Ti 二元系換算で

Fe 濃度が 50~100 mol%と分散しており、平均組成は 75 mol%Fe–25 mol%Ti であった。1473

K で 180 分間加熱した試料の場合、介在物組成が TiOx から Fe–Ti 二元系換算で 75 mol%Fe–25 mol%Ti の組成へ変化する様子がより明瞭に観察された。 Fig. 13 に介在物の粒径分布を示す。1473 K での加熱によって介在物粒径が減少すること が観察された。凝固まま試料の場合、介在物粒径は1 μm 以下から 10 μm 以上まで大きく分 散しているが、1473 K での加熱後には多くの微細介在物が観察された。180 分加熱した試料 では観察した介在物の約半数が2 μm 以上 3 μm 以下であった。 1473 K での加熱に伴う介在物組成および粒径変化の結果から、1473 K において Fe–0.028

mass%Ti 鋼中で TiOxは安定でなくFe–Ti–O 系酸化物が安定であるために、TiOx介在物は周

囲の金属相に溶解し、同時により微細なFe–Ti–O 系介在物が晶出したと考えられる。

(a) 10 μm (b) 5 μm (c) 2 μm

Figure 11 SEM images of typical inclusion observed in Specimen 2–B; (a) as cast, (b) after 60 min heating at 1473 K, and (c) after 180 min heating at 1473 K.

0 20 40 60 80 100 60 80 100 0 20 40 Fe content (mol%) (a) 0 20 40 60 80 100 60 80 100 0 20 40 Fe content (mol%) (b) 0 20 40 60 80 100 60 80 100 0 20 40 Fe content (mol%) (c)

Figure 12 Composition of inclusions in Specimen 2–B; (a) as cast, (b) after 60 min heating at 1473 K, and (c) after 180 min heating at 1473 K.

(11)

0-2 2-3 3-4 4-5 5-6 6-7 7-8 8-9 9-10 10-0 10 20 30 40 50 Fractio n of inclusion numb er (%) Inclusion size (μm) As cast After 60 min After 180 min

Figure 13 Size distribution of inclusions in Specimen 2–B; (a) as cast, (b) after 60 min heating at 1473 K, and (c) after 180 min heating at 1473 K.

(3) 試料 2–C(Al: 0.0162 mass%、 Ti: 0.29 mass%)

Fig. 14 に試料 2–C の凝固まま試料、および 1473 K での加熱試料において観察された典型 的な介在物を示す。凝固まま試料中の介在物は試料2–B と同様に不定形状であった。加熱に よる介在物形状の明瞭な変化は見られなかったが、1473 K で 180 分間加熱した試料では多く の介在物がFig. 14(c)に示すような二相介在物となっていた。 試料2–C 中に観察された介在物組成を Al–Fe–Ti 三元系に換算して Fig. 15 に示す。多く の介在物は Al2O3であったが、低濃度のFeO を含有する TiOx系酸化物や低濃度のAl2O3や

TiOxを含むFeO 系酸化物など様々な介在物が同時に観測された。Fig. 2 に示したように試料

2–C は Al2O3、Al2TiO5、Ti2O3や Ti3O5の安定領域の境界近傍の組成であるために様々な種

類の介在物が生成し、生成した介在物が溶鋼と完全に平衡になる前に試料が急冷されたため に多種類の介在物が観察されたと考えられる。

上述したように介在物組成は2 種類の組成に変化した。このうちの一相は Al–Fe 二元系換

算で約40 mol%の Fe とわずかに Ti を含む Al–Fe–O 系酸化物相であり、他相は平均組成が

Al–Ti–Fe 三元系換算で 20 mol%Al–20 mol%Ti–60 mol%Fe の Al–Fe–Ti–O 系酸化物相であ

る。Al2O3も観察されたが、Al2O3介在物の割合は加熱によって減少した。加熱による介在物

の組成変化の様子は試料2–A の場合と同様であったが、Fig. 14 に示したように試料 2–C で

は多くの介在物が二相系介在物であり、この介在物は試料2–A では観察されなかった。

介在物の粒径分布をFig. 16 に示す。介在物粒径分布に及ぼす加熱の影響は明確でなかった。

(12)

(a) 5 μm (b) 5 μm (c) 5 μm

Figure 14 SEM images of typical inclusion observed in Specimen 2–C; (a) as cast, (b) after 60 min heating at 1473 K, and (c) after 180 min heating at 1473 K.

0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100

Al content (mol%) (a)

0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100 Al content (mol%) (b) 0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100 Al content (mol%) (c)

Figure 15 Composition of inclusions in Specimen 2–C; (a) as cast, (b) after 60 min heating at 1473 K, and (c) after 180 min heating at 1473 K.

0-2 2-3 3-4 4-5 5-6 6-7 7-8 8-9 9-10 10-0 10 20 30 40 50

Fraction of inclusion number (

% ) Inclusion size (μm) As cast After 60 min After 180 min

Figure 16 Size distribution of inclusions in Specimen 2–C; (a) as cast, (b) after 60 min heating at 1473 K, and (c) after 180 min heating at 1473 K.

(13)

(4) 固体鋼中介在物の組成変化および粒径変化挙動とその反応機構 3 種類の異なる鋼試料について、介在物の粒径分布や組成に及ぼす 1473 K での加熱の影響 を調べた。加熱の介在物粒径分布に与える影響に関しては、試料2–B の場合加熱によって微 細介在物の割合が増加したが、試料2–A および試料 2–C の場合は変化しなかった。したがっ て試料 2–B の場合のみ、(5)式および(6)式で示す固相の鋼中への介在物の溶解および固相の 鋼からの介在物の生成が同時に生じて微細介在物の割合が増加した。 TiOx (s) → Ti +

x

O (5) Fe + Ti + (

x

+1) O → FeO–TiOx(s) (6) 一方、試料2–A および試料 2–C の場合は固相の鋼中への介在物の溶解が起こらなかったため、 介在物の粒径分布は変わらなかった。現時点でこの介在物挙動の差異の理由は明確でないが、 一つの理由として溶解速度の違い、つまりAl2O3介在物の溶解速度はTiOx介在物の溶解速度 よりも小さいことが考えられる。 本研究では介在物に含まれるTi の価数を測定していない。また、介在物の鉱物相も測定し ておらず、さらに固相の鋼中の酸化物相の化学的安定性についてもこれまで報告されていな い。よって、反応(7)の溶鉄と平衡する Ti 酸化物の自由エネルギー変化8)が固体鉄についても 適用できると仮定してTi 酸化物の化学的安定性を評価した。 5 Ti2O3 (s) = 3 Ti3O5 (s) + Ti (mass%) ∆

G

° = 189500 − 93.6

T

J/mol (7) 純Ti2O3および純Ti3O5が共存する場合のFe–1 mass%Ti 基準の Ti 活量は 0.0148 と計算さ れ、試料2–B 中の Ti 系介在物は Ti2O3であると考えられる。また、先に述べたように介在物 のEDS 分析において母相である金属相からの特性 X 線によって介在物の Fe 濃度が過大に測 定される傾向がある。以上の理由から試料 2–B 中の介在物の実際の平均組成はおよそ 30

mol%Ti–70 mol%Fe である。Ti 酸化物が Ti2O3であると仮定すると、Fe–Ti–O 系介在物の推

測組成は4FeO·Ti2O3に対応する。

試料2–A と試料 2–C においては、1473 K で 180 分間加熱した際の介在物組成の変化や最

終組成は同様であり、Al–Fe–O 系もしくは Al–Fe–Ti–O 系酸化物であった。Al2O3系介在物

はまず始めにAl–Fe–O 系介在物に変わり、次に Al–Fe–O 系から Al–Fe–Ti–O 系へと変化し

た。試料2–B の場合と同様に Ti 酸化物として Ti2O3の生成とEDS 分析において Fe 濃度が

過大に測定されていることを仮定すると、Al–Fe–O 系酸化物(平均組成:Al–Fe 二元系換算

で60 mol%Al–40 mol%Fe)、および Al–Fe–Ti–O 系酸化物(平均組成:Al–Fe–Ti 三元系換

算で15 mol%Al–70 mol%Fe–15 mol%Ti)はそれぞれ Al2O3·FeO および Al2O3·Ti2O3·4FeO

に対応する。ただし、このような酸化物組成は上記に述べた仮定に基づいて考えられたもの であり、これらの酸化物についての鉱物相も報告されていないため、介在物組成や結晶相を 明らかにするためにはさらなる研究を要する。

(14)

ある介在物が多く観察された。このような介在物形態の違いについては現時点で理由が明確 でないため、より詳細な検討が必要である。

すでに述べたように試料2–A および 2–C では加熱によって介在物の粒径分布は明確に変化

しなかったので、金属相への Al2O3介在物の溶解は進行しなかったと考えられる。したがっ

て、Al2O3介在物のAl–Fe–O 系介在物、さらに Al–Fe–O 系介在物の Al–Fe–Ti–O 系介在物

の変化は(8)式および(9)式で示される。

Al2O3 (s) + Fe + O → Al2O3·FeO (s)

もしくは

4/3 Al2O3 (s) + Fe → Al2O3·FeO (s) + 2/3 Al (8)

Al2O3·FeO (s) + 3 Fe + 2 Ti + 6 O → Al2O3·Ti2O3·4FeO (s)

もしくは

5/2 Al2O3·FeO (s) + 3/2 Fe + 2 Ti → Al2O3·Ti2O3·4FeO (s) + 3 Al (9)

反応に必要な酸素は、鋼の組成によって金属相に溶解している酸素か Al2O3の部分溶解によ って生じる酸素のいずれかである考えられる。固相の鋼中における介在物挙動をより詳細に 理解するためには固相の鋼と平衡するFe–Al–Ti–O 系安定酸化物状態図や Al、Ti、O の活量 などの物理化学的性質を明らかにする必要がある。 4. 結言 Al–Ti 脱酸プロセスにより生成する酸化物を予測するために重要な酸化物安定相図を決定 するため、Fe–Al–Ti 鋼と Al2TiO5ペレットの平衡実験を行った。しかし、実験後の金属-酸

化物界面ではAl2TiO5が観察されず、TiOxを含むAl2O3相およびAl2O3を含むTiOx相が確認

された。平衡実験後金属相に同様組成の酸化物介在物が観察された。そのため、本研究で報

告した安定相図からは介在物組成が予測できず、Al2O3–TiOx系酸化物の安定相についてさら

に検討する必要があることが明らかになった。

Al–Ti 脱酸鋼に含まれる非金属介在物の 1473 K での挙動を 3 種類の異なる組成の鋼試料を

用いて測定した。Fe–0.0341 mass%Al–0.0444 mass%Ti および Fe–0.0162 mass%Al–0.29

mass%Ti の場合は、凝固まま試料では異なる介在物が観察されたものの、1473 K での加熱

後ではAl–Fe–O 系介在物と Al–Fe–Ti–O 系介在物が同様に観察され、2 つの鋼試料でのそれ

らの介在物組成は同じであった。また、加熱による介在物の粒径分布の明確な変化は見られ

なかった。Fe–0.028 mass%Ti の場合は、低濃度の Fe を含有する Ti–O 系介在物が凝固まま

試料中で観察された。1473 K での加熱によって介在物は Fe–Ti–O 系介在物に変化し、微細

介在物の割合が増加した。1473 K で Fe–Al–Ti 鋼と平衡する安定酸化物相は明らかにされて

いないが、固相の鋼中での平衡酸化物相は溶鋼温度での平衡酸化物相と異なることが予想さ れ、固相の鋼中の介在物粒径分布、形状、および組成は熱処理によって変化したと考えられ る。

(15)

謝辞

本研究はJFE21 世紀財団の 2010 年度技術研究助成によって行われたものであり、ここに

深く感謝の意を表します。

文献

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Figure 1    Schematic diagram of apparatus for equilibrium experiment.  3.  実験結果および考察  3.1
Table 1    Results of equilibrium experiments.  Compositions of metal  (ppm)  Equilibrium constant ( - )  ∆ G  º of dissolution(J/mol) Exp
Fig. 3 に実験前後の酸化物ペレットの XRD 測定結果を示す。実験前ペレットでは Al 2 TiO 5 相に対応するピークのみが観察されたのに対し、実験後ペレットには Al 2 TiO 5 相に対応する ピークとともに Al 2 O 3 相に対応するピークが観察されたことから、実験後ペレットは Al 2 TiO 5 と Al 2 O 3 の混合物である。   一部の試料において金属-酸化物ペレット界面における酸化物組成を測定した。 Fig
Figure 4    SEM image at the interface between metal and oxide phases,  and compositions analyzed by EDS
+6

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