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わが国の税法における 配当金課税に関する一考察
−アジア並びに欧米諸国の税法の比較検討−
山 内 進
1.は じ め に
1990年代に入ってから,証券業界は国際化の進行なか,諸外国では,証券 に係る法制度の改正が実施されてきた。税法もその一つであり,証券業界に とって重要な問題である。
わが国においても,昨今証券にかかわる税法の改正が政府税制調査会,経 済界等から指摘されている。とくに配当金課税のおいては2003年度税制改正 大綱によれば,大きく改正される予定である。
わが国は諸外国から税法を導入し,そこにわが国の経済,文化に合わせた 修正を行ってきた。これが筆者の定義するハイブリッド税法である。本来税 法は会計と異なり,国家的色彩の強いものである。しかも税法は,経済活動 の促進をしたり抑制したりする手段となりうる。ご承知のように経済活動は 人,もの,金で成り立っているが,金の流れは最もスピードが速く国境を越 え国際化が進んでする。したがって配当金課税は,株式投資というお金の流 れに影響し,グローバル化がもっとも進んだなかに位置する税法と考えられ る。最近はブッシュ大統領が,配当金課税の撤廃案を打ち出したため,現在,
最も着目されている課税制度である。
各国の投資家は,諸外国の証券税法の取り扱いを比較し,税引後の正味の 投資利益率の高い有利な国に投資しようと考えるのも当然である。証券に係 る税法が,投資活動を活性化し株式投資に大きな影響を齎すのである。ゆえ に各国の配当金課税は重要である。
このような背景から本小論は,証券取引にかかわる税法につき論及するも のである。証券に係る税法として,有価証券譲渡益課税,配当金課税,有価 証券取引税等の税法が挙げられるが,そのうち配当金課税に焦点を当て諸外 国の配当金課税を比較し,わが国の配当金課税の問題点を抽出し検討を試み るものである。なお本小論では配当金課税に対して,欧米諸国のみならずア ジア諸国とも比較検証する。配当金課税において,アジア諸国と比較した論 文は筆者の知る限りでは少ない。ここに本研究の意義がある。
なお本研究は,ハイブリッドの視点から分析したものであり,筆者のハイ ブリッド税法研究の一つである。
2.わが国の配当金課税の仕組み わが国の法人税法上の配当金課税 1
2002年度の法人税法等の一部改正法律によると,2003年3月31日以後に終 了する市場年度から以下のように法人が受取った配当金の規定が改正された。
受取配当金等の額の区分を三区分とし,まず①連結法人株式等(連結法人 株式等とは連結グループ内の他の法人の株式又は出資のうち一定の要件を満 たすものをいう)につき受取った配当等の額は全額益金不算入とする。
つぎに②関係法人株式等につき受取る配当等の額は,関係法人株式等(関 係法人株式等とは,内国法人の発行済株式の総数又は出資金額のうち法人の 有する株式の数又は出資金額の割合が25%以上となる等一定の要件を満たす ものものをいう。ただし連結法人株式を除く)につき受ける配当等の額から,
その事業年度に支払う負債利子の額のうち関係株式等に係る部分の金額を控
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除した金額が全額益金不算入とされる。
次に③として①及び②以外の株式について受取った配当等の額については,
①及び②以外の株式等につき受ける配当等の額から,その事業年度において 支払う負債利子の額のうち①及び②以外の株式等に係る部分の金額を控除し た金額の50%(経過措置として2002年4月1日から2003年3月31日までに開 始し,2003年3月31日以後に終了する事業年度には70%,2003年4月1日か ら2004年3月31日までに開始する事業年度では60%)が益金不算入とされる。
同時に受取配当等の益金不算入額の計算上,受取配当等の額から,その事 業年度において支払う負債利子の額を控除しなければならない。ただし,従 来この負債利子から特定利子を除くという規定があったが,今回で廃止され た。
また法人税の負担の回避を防止するため,決算日以前一ヶ月以内に取得し た株式のうち決算日二ヶ月以内に譲渡した短期所有株式に係る配当金につい ては,受取配当金の益金不算入の規定は適用しない。
さらに2001年度に改正されたみなし配当の規定がある。みなし配当は元来 商法上の配当ではないが税法では,内国法人が合併,分割型分割,資本もし くは出資の減少又は解散による残余財産の分配,株式の消却,自己株式の取 得等で金銭その他の資産の交付を受けた場合において,その合計額がその交 付した法人の資本等の金額を超えるときは,超える部分の金額を配当等とみ なしている。同様に抱合株式等がある場合にもみなし配当の特例がある。
2001年の改正前では金銭の交付がない利益準備金の資本組入れは,みなし 配当とされ配当金課税の対象となっていた。したがって利益準備金の資本組 入れにともない株式分割により株式配当が実施されたときに課税問題が生じ ていた。2001年の税法改正により,金銭の交付がないみなし配当金の規定は 廃止され,同時に商法の改正により課税問題は解決したといえる。
わが国の所得税法上の配当金課税 2
個人株主が受取る配当金課税については,原則として,配当金の20%の源 泉徴収がなされ,他の所得と合算され税金が計算され,配当控除により二重 課税を調整している。
配当控除については,配当所得を加算し,課税総所得金額1,000万円まで は,受取配当額の10%,1,000万円を超える部分は5%の税額が控除される。
一回の支払金額が一年決算会社で10万円以下(半年決算で5万円以下)の 少額配当については申告不要を選択できる。又一回の支払金額が一年決算会 社で50万円以上(半年決算で50万円以上)の高額配当については必ず申告し なければならない。また高額でない配当については,35%の源泉のみで納税 を済ます源泉分離課税制度を採用することができる。このように個人株主の 配当金課税は複雑になっている。
そこで2003年度税制改正代大綱によれば,この源泉分離課税の特例は2003 年3月31日をもつて廃止される。同様に少額配当の場合の申告不要の対象と なった配当等のうち2003年4月1日以後に支払を受ける一定の上場株式等の 配当等については,一回の支払金額に対する上記適用上限額が撤廃されるこ ととなった。極めて簡素化されることとなった。
これは,2003年度税制改正大綱では,利子・配当・株式の譲渡益に対する 課税の一体化を視野にいれ,上場株式等の配当,公募株式投資信託の収益分 配金,上場株式等の譲渡益について一律20%の源泉徴収のみで納税が完了す る仕組み(申告不要)を導入するためである。
3.わが国の配当金課税の変遷
わが国の法人税法上の配当金課税の変遷 1
1955年のシャウプ勧告による税法から,法人株主の受け取った配当金につ いては,原則として益金不算入方式を採用していた。制度導入当時の,法人
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株式の所有についてはおよそ40%が法人株主の所有であった。
1987年から税制の抜本的改革がなされた。そのなかで,法人の投機的株式 投資が増資しているため,従来の受取配当金の全額損金不算入制度の見直し が行われた。
1989年度から企業支配株式については,従来と同様に全額損金不算入方式 であったが,企業支配株式以外の株式につき受け取った配当金については,
受取配当金の80%のみ益金不算入とすることになった。つまり一部が損金算 入されるようになった。
その理由は,当時のわが国企業の株の所有の実態をみると,1985年度の企 業株式のおよそ75%を法人株主が所有していたことから,安定株主の確保の ための株の持ち合いないしは資産運用(投機目的保有)とみられることから,
企業支配株式以外の株式については益金算入割合を80%に縮小したのである。
その後,わが国の企業の株式所有実態に大きな変化がみられなかったために,
この規定は長い間存続した。なお80%の益金不算入割合は,当時のアメリカ の制度を導入したものである 。1)
一方わが国企業の株式保有実態を見る限り,より益金不算入率を引き下げ るべきであるという見解も強かった。つまりわが国企業の投機目的の株式保 有に対する益金不算入を抑制する必要があった。そこで第2節で述べたよう に,法人税法等の一部を改正する法律で,2003年度3月31日から終了する事 業年度から改正されることとなった。
①連結法人株式等につき受取った配当等の額は全額益金不算入とする。② 関係法人株式等につき受取る配当等の額は,負債利子の額を控除した金額が 全額益金不算入とされる。③として①及び②以外の株式について受取った配 当等の額については,株式等につき受ける配当等の額から,負債利子の額を 控除した金額の50%(平成15年3月31日以後に終了する事業年度には70%,
平成15年4月1日から平成16年3月31日までに開始する事業年度では60%)
が益金不算入とされる。
企業支配株式に対する受け取り配当金につき全額損金不算入制度は継続し た。継続した理由は,親会社子会社の形態では益金不算入にすることにより,
本店支店の形態との経営形態による課税上の中立性を保つためであった。つ まり事業を親子会社形態でする方より,本店支店形態で事業規模を拡大する のが税法上有利になるというような,企業戦略に対して税法が中立性を害す るという弊害を廃除しなければならないのである。しかし企業株式等の関係 をもたない株式については,投機的性格をもつため益金不算入割合は引き下 げられた。
わが国の税法では,利益積立金の資本繰入れ等を行った場合,実質的には 法人の留保利益が株主に帰属する配当とみなし(みなし配当という),本来 の配当金と同様に課税されていた。利益積立金の資本繰入れは,税法上株主 に配当金が支払われ,改めて新株式の払込みが実施されたとして,みなし配 当課税がなされていた。
しかしこの金銭の交付を受けない場合のみなし配当の規定は,平成13年度 の改正で廃止された。金銭や株式を受けないのに課税するのは担税力からみ て問題があったためだと思われる。
また法人における支払配当に対する規定としては,1950年代後半には,自 己資本比率が著しく低下した。これはわが国の企業が戦後,借入金に依存し てきたためである。借入金と増資の間の調達コストを比較すると,支払利息 は損金算入され節税できるのに対して,配当にはこのような規定がなく増資 の方がコスト的には不利であった。
そこで証券市場の活性化と企業の資本を充実させるため,1961年には配当 に対して軽減税率を適用する制度が創設された。これは配当に充てた部分の 所得に対しては,内部留保される所得よりも低い税率(基本税率より10%低 い税率)で課税する制度である。これはドイツの配当軽減課税方式の採用で
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あったといわれる 。1974年には軽減税率はさらに引き下げられた。一方政2) 府税制調査会長期答申では「配当軽減措置と配当税額控除の併用が税制を複 雑化,理解しにくくしている」として配当軽減措置の廃止を提言した。
しかも,1987年の税制調査会の答申等によれば,「いっこうに自己資本比 率は高まらずその効果が認められなかったことと,配当の違いにより法人税 の負担が異なることは,中立性ないしは公平性からも望ましくないこと,外 国人株主等まで非課税となる危険性があった」等の理由のため1987年にこの 配当軽課制度は廃止され,法人税と所得税の負担調整は配当税額控除にのみ に託された。
わが国の所得税法上の配当金課税の変遷 2
一方個人株式の受取配当金については,1947年に所得税の計算が総合課税 とされた折,配当所得も他の所得と合算し総合課税されることとなった。翌 1948年の改正で配当税額控除制度が設けられた。シャウプ勧告において個人 企業と法人企業との間の税負担の格差は,経済活動上問題であるとし,個人 株主に対して,この配当控除と留保所得に対する利子付加価値税を採用した。
このように配当控除制度もシャウプにより導入された制度といえる。
このように配当税額控除制度の導入時には個人と法人との税負担の格差を なくすため,所得税の最高税率が適用されるものについては二重課税を完全 に廃除されていた 。3)
その後,1953年には国際競争力の強化のため,法人の税負担軽減のため税 率の引き下げと,中小法人の保護育成のため二段階税率が適用された。
1950年代後半から国民の資本蓄積のため源泉徴収税率の引下げ,配当控除 税率の引き上げが実施された。その後1957年には,配当控除の計算は,法人 税率と所得税率の改正にともない,現在の二段階の控除に改定された。
1963年のケネディショックの影響により証券業界は打撃を受け,わが国は 不況にみまわれた。その不況打開として,また利子所得の源泉分離課税との
バランスをはかるため1965年には源泉分離課税制度及び少額配当申告不要制 度が設けられた 。株主の資本蓄積の増進のため,現在まで継続している。4) しかし今回の2003年度の税制改正大綱によれば,源泉分離課税及び少額配当 の申告不要制度のどちらも改正され簡素化される。
わが国の配当金課税改正はブッシュ大統領の打ち出した配当金課税の全面 的廃止とはいかず,今回の改正をみてわかるように簡素,公平を重視してい る改善という色彩が強いといえる。
4.欧米諸国の配当金課税
欧米諸国において以下のように配当金課税がなされている(図表1・2)。5) アメリカ
1
アメリカでは法人が取得した受取配当金については,原則として全ては課 税対象となる。しかし持株比率が20%未満の株式の受取配当金には,受取配 当金の70%が益金不算入とされる。持株比率が20%以上80%未満の株式の受 取配当金は,受取配当金の80%が益金不算入とされる。持株比率が80%以上 の株式の受取配当金には,受取配当金の全額が益金不算入とされる。ただし 連結納税の対象となる子会社(関連会社グループ内の法人からの配当)から の配当は,連結納税しない場合であっても,その100%が益金不算入とされ る。
株式配当は,株式の分割と同様の考え,原則として非課税である。しかし 一定の株式配当は,通常の受取配当金と同様に処理される。
個人株主が受取る受取配当金については,何ら調整が行われずに課税され る。配当所得は他の所得と合算され,課税所得に所得税率をかけて計算され る。わが国のように税額控除の規定は適用されない。1986年の税制改革以前 には,個人株主の配当所得に対して所得控除による規定があったが,現在は この規定は存在しない 。6)
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図表1 欧米諸国の配当金課税
アメリカ イギリス ドイツ フランス
法人株主
法人が取得した受 取配当金については,
原則として全ては課 税対象となる。
持株比率が20%未 満の株式の受取配当 金には,受取配当金 の70%が益金不算入,
持株比率が20%以上 80%未満の株式の受 取配当金は,受取配 当金の80%が益金不 算入,持株比率が80
%以上の株式の受取 配当金には,受取配 当金の全額が益金不 算入とされる。
法人が取得した受 取配当金は,全額益 金不算入として処理 される。
法人が取得した受 取配当金は,インビ ュテーション方式を 採用している。
法人が取得した受 取配当金は,通常の 投機目的の株式につ いては原則として受 取配当金の額と,そ の50%(税引後の純 受取配当額に対する 法人税額に相当)を 課税所得に算入し算 出税額を計算し,そ の受取配当金額の50
%を算出税額から税 額控除するインビュ テーション方式で処 理される。
個人株主
何も調整されずに 課税される。
個人株主が受取る 受取配当金について は,インビュテーシ ョン方式により二重 課税の廃除が行われ る。この方式は1971 年の保守政権の時代 に提案され,1973年 から実施された。
個人株主が受取る 受取配当金について は,前もって受取配 当金の25%が源泉徴 収され,他の所得と 合算され,あとは法 人税法同様にインビ ュテーション方式に より二重課税の廃除 が行われる。
インビュテーショ ン方式により二重課 税の廃除が行われる。
受取配当額とその50
%を課税所得に算入 し,その受取配当額 の50%を税額控除と して算出税額から控 除する。
(注)筆者が作成した。
しかし2003年に1月に発表した景気刺激策の中で,ブッシュ大統領は,低 迷が続く株式市場を活性化させるため,配当金課税の撤廃案を打ち出してい る。
イギリス 2
法人所得税上イギリスでは,法人が取得した受取配当金は,全額益金不算 入として処理される。この配当金は,課税済投資所得とも輪ばれ,純受取配 当金額と前払法人税(Advance Corporation Tax 配当を支払う時に行われる法
人税の前払いで,受取配当金の源泉徴収税とは異なる)の合計金額である。
受取配当金のうち前払法人税部分を,配当金を受取った会社が,自社の配当 金を支払際の前払法人税と相殺できる。相殺しきれない部分は,翌期に利用 できる。
図表2 欧米諸国の配当金課税
イタリア カナダ オーストラリア オランダ スイス
法人株主
法人株主が受 取った配当金は インビュテーシ ョン方式による 税額控除(タッ クス・クレジッ ト)を受けるこ とにより,配当 に対する法人税 相当額の控除を 受けることがで きる。
法人株主が受 取る配当金は,
二重課税となる ため原則として 法人所得税の対 象とならない。
非公開の企業 が受取った配当 金には還付可能 配当税が一定税 率課せられる。
法人株主が受 取る配当金には 1987年からイン ビュテーション 方式が導入され た。
法人株主が受 取る配当金は,
課税所得に加算 され法人税が課 税される。
資本参加所得 免除適格株式か らの配当につい ては課税されな い。
法人株主が受 取る配当金は,
課税所得に加算 され他の所得同 様に法人税が課 税される。
ただし関係株 式からの受取る 配当金について は課税されない。
個人株主
個人株主も法 人株主同様イン ビュテーション 方式により,配 当金課税の計算 が行われている。
個人株主が受 取る配当金につ いては,他の所 得と合算して総 合課税され,イ ンビュテーショ ン方式が導入さ れている。
個人株主が受 取る配当金につ いては,原則22
%源泉徴収だけ で課税関係が完 了する。
源泉分離課税 され二重課税の 調整が行われて いない。
個人株主が受 取る配当金につ いては他の所得 と合算され課税 される。
源泉徴収税の み差し引くこと ができる。
二重課税の調 整は行われてい ない。
個人株主が受 取る配当金につ いては他の所得 と合算され課税 される。
源泉徴収され た税金のみ控除 ができる。
二重課税の調 整は行われてい ない。
(注)筆者が作成した。
配当金を支払法人側では,内国歳入庁に対して,この前払法人税を納入す る。内国法人から受取配当があるときは,受取配当金を超える金額だけ前払 法人税として納付する。受取配当金の方が支払配当金より多い場合は,超過 額を繰り延べ,翌期以降に処理できる。
株式配当については,株式分割と異ならないという理由から,課税は行わ
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れない。ただし現金配当か株式配当かを株主に選択させる場合には課税され る。
一方個人所得税上,個人株主が受取る受取配当金については,インビュテ ーション方式により二重課税の廃除が行われる。このインビュテーション方 式は1971年の保守政権の時代に提案され,1973年から実施された。この方式 の導入に際して,前払法人税の導入もなされた。
具体的には税引後の純受取配当額とその前払法人税10/90を課税所得に算 入し算出税額を計算し,その受取配当額の10/90を税額控除(予納法人税相 当額)として算出税額から控除する。イギリスにはわが国のように,個人が 受取った少額配当金のような非課税処置はない。
ドイツ 3
法人所得税上ドイツでは,ドイツでは,法人が取得した受取配当金の25%
が源泉徴収され法人が取得した受取配当金は,インビョテーション方式を採 用している。具体的には,まず受取配当金の額(源泉徴収税額控除後)に,
その25/75(源泉徴収税額分)を加算し,源泉徴収税控除前の受取配当金を 計算する。さらに,その源泉徴収税控除前の受取配当金の30/70(受取配当 金に対する法人税に相当する額)を加算し課税前受取配当金を計算する。次 にその課税前受取配当金を課税所得に算入し,算出税額を計算し,その受取 配当金額の30/70(受取配当金に対する法人税に相当する額)と源泉徴収税 額を税額控除として算出税額から控除するインビュテーション方式で処理さ れる。
算出税額より税額控除の方が多い場合には,超過額は還付される。配当金 支払法人は,支払配当の25%は源泉徴収をしなければならない。
またドイツでは,支払法人に対して法人の内部留保に対する税率と,配当 分に対しての税率が異なる二段階課税方式が採用されている。支払配当金に 対する税金が軽減されている。かつてわが国でも配当金に対する税率軽減方
式が採用されていた。
資本金増加に伴う株式配当(利益及び利益準備金の資本組入れ)を,資本 金増加と規定し,原則として,株式配当の受取った株主には課税されない。
個人所得税法上,個人株主が受取る受取配当金については,前もって受取 配当金の25%が源泉徴収され,他の所得と合算され,あとは法人税法と同様 にインビュテーション方式により二重課税の廃除が行われる。1995年より連 帯不加税の導入により,連帯不加税も源泉徴収がされることとなった。また 貯蓄者控除として,受取配当金は,受取利子と合算して,年間一定金額まで は非課税とされている。
フランス 4
法人所得税法上フランスでは,法人が取得した受取配当金は,保有してい る株式の性格により異なるが,通常の投機目的の株式については原則として 受取配当金の額と,その50%(税引後の純受取配当額に対する法人税額に相 当)を課税所得に算入し算出税額を計算し,その受取配当金額の50%を算出 税額から税額控除するインビュテーション方式で処理される。
具体的には,フランス法人には,原則として50%の法人所得税が課せられ,
課税後利益から配当がなされる。配当金を受取った法人は居住者である場合 には,受取配当金の50%相当額の税額控除が受けられる。その計算は,受取 配当金の150%相当額(税引後受取配当金の部分と受取配当金に対する法人 所得税の合計)を所得に加算して算出法人税額を計算し,算出法人税額から,
受取配当金の50%相当額(受取配当金に対する法人所得税)を控除する方式 である。
しかし法人の場合,個人の場合と異なり,算出法人税額より税額控除額が 多い場合,その超過額の還付規定も,繰越の規定もない。
ある法人が200円の配当をもらった場合,この配当金部分200円と配当金に 対する法人税の200円×50%=100円を所得に加算し,算出法人税額を計算し
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た後で100円の税額控除を受ける。
法人所得税の課税対象とならなかった利益(外国支店の利益等)から配当 がなされた場合にも,税額控除は認められるが,このときには法人所得税が 課せられた場合と同額の特別税がその法人に課せられる。
なお親会社が子会社から受取る配当金については子会社からの受取配当金 額にその1/2を加算した加算した額の97.5%が益金不算入として処理される。
株式配当については,所得として計算せず,課税されない。ただし株主が現 金による配当と株式配当を選択する場合には,現金配当と同様に処理される。
また個人所得税法上,個人株主が受取る受取配当金については,他の所得 と合算され所得税が課税されるが,既述した法人の受取配当金と同様にイン ビュテーション方式により二重課税の廃除が行われる。受取配当額とその50
%を課税所得に算入し,その受取配当額の50%を税額控除として算出税額か ら控除する。この税額控除のことをアポワール・フィスカルといい,フラン スでは,アポワール・フィスカルというインビュテーション方式により二重 課税が廃除されている。算出税額より税額控除が多いときは,その超過分は 還付される。
インビュテーション方式はフランスでは1966年に導入された。1980年代後 半にアメリカの法人税の引き下げの影響により,税率の引き下げが行われた ため従来不十分だった二重課税の調整は,100%完全なものとなった。
なお受取配当につき,独身者で年8,000フラン,夫婦者で年16,000フラン を限度として所得控除が認められている。
イタリア 5
イタリアでは法人である株主の場合,純受取配当額とともに,受取配当に 対する法人税相当額を課税所得にいったん加算し,税額を計算しこの税額か ら受取配当に対する法人税相当額を控除する形をとる。この税額控除額の方 が税額より多いときは,超過額は還付される。このように法人から配当金を
受取った法人株主はインビュテーション方式による税額控除(タックス・ク レジット)を受けることにより,配当に対する法人税相当額の控除を受ける ことができる。居住者に対する支払配当については10%の税率で源泉徴収し なければならない。
個人株主も同様インビュテーション方式により,配当金課税の計算が行わ れている。
カナダ 6
カナダにおいて法人が受取る配当金は,二重課税となるため原則として法 人所得税の対象とならない。ただし非公開の企業が受取った配当金には還付 可能配当税が一定税率課せられる。非公開企業は,配当可能利益を企業内部 に留保し,所有経営者が受取らないことがあるためである。
個人が受取る配当金については,他の所得と合算して総合課税され,イン ビュテーション方式が導入されている。受取配当金の25%を所得加算し,所 得税を計算後,その受取配当金の25%の3分2を税額控除する。なおこの税 額控除は,還付の対象とはならない。
オーストラリア 7
オーストラリアでは法人が受け取る受取配当金は1987年からインビュテー ション方式が導入され,課税所得に含めるが,居住法人が配当金を受取る場 合,その受取配当金にかかる法人税額が税額控除を受けられるので,所得税 額は結果的には非課税となる。
支払配当については,支払時に株主に対してフランキング率(全配当金に 対する,同適用を受けた Franked Dividend の割合)通知する必要がある。
個人株主が受取る配当金については,原則22%源泉徴収だけで課税関係が 完了する源泉分離課税され二重課税の調整がみられない。ただし個人の所得 税率が一定未満の場合は還付が可能である。
− 15 − わが国の税法における配当金課税に関する一考察(山内)
オランダ 8
オランダにおいては法人が受取る配当金は,課税所得に加算され法人税が 課税される。しかし資本参加所得免除適格株式からの配当という特定の配当 金については課税されない。株式配当は所得とされ課税される。
個人が受取る配当金については他の所得と合算され課税される。源泉徴収 された税金のみ,税額控除として差し引くことができる。したがって二重課 税の調整は行われていない。オランダは配当に対する所得税が多くないこと 及び法人税率が低いことを理由として,古典的な計算方式を今なお採用し続 けている 。7)
スイス 9
スイスにおいては法人が受取る配当金は,課税所得に加算され他の所得同 様に法人税が課税される。ただし関係株式からの受取る配当金については課 税されない。ここでいう関係会社とは実体的利害関係を有する会社で,払込 資本金の20%以上を直接所有していること。ないしは時価で2百万スイス・
フラン以上の株式を所有している会社のことである。また株式配当は現金配 当とみなされ課税される。
個人が受取る配当金については他の所得と合算され課税される。源泉徴収 された税金のみ,確定申告時に税額控除ができる。したがってオランダと同 様にスイスにおいても二重課税の調整は行われていない。
配当金に関する二重課税課税を撤廃するには,配当金の原資にかかわる法 人段階で課税を無くすか,個人での配当金課税を撤廃することであるが,欧 米諸国の多くはでは法人擬制説のもと配当金原資に法人税が課せられている ため,二重課税の調整がなされている。
以上から,欧米諸国の配当金課税を比較すると法人所得税法では,法人株 主が受取る配当金については,ドイツ,フランス,イタリアとオーストラリ アはインビュテーション方式により,二重課税の調整を行っている。イギリ
スとカナダは,受取配当金の全額益金不算入を採用している。アメリカでは,
原則課税対象だが,特定の受取配当金については,その一部の金額のみ益金 不算入を採用している。オランダとスイスもアメリカと同様である。次節で のべるが,わが国では法人が取得した受取配のうち特定の配当については,
アメリカ同様に一部益金不算入とし,他の受取配当金については全額損金不 算入としている。
したがって法人株主の配当については二重課税の調整方式は,Ⅰインピュ テーション方式,Ⅱ受取配当の全額益金不算入方式,Ⅲ受取配当金の全額益 金不算入方式と一部益金不算入方式の混合方式の三通りに分けられる。
また支払配当金については,ドイツのみ配当金の対する課税の軽減措置が 存続している。わが国にも,かつてはドイツ型の配当軽減措置が規定されて いた。
個人所得税法では,現段階では個人株主が受取る配当金について,アメリ カ,オランダ,スイスでは二重課税の調整の規定がない。もちろんブッシュ 案が通過すれば,アメリカでは二重課税の完全な廃除がなされる。その他の 国においては二重課税の調整が行われていた。大きくその調整方法は次のイ ンビョテーション方式と配当税額方式二通りが考えられる。
イギリス,フランス,ドイツ,イタリア,カナダはインビュテーション方 式により二重課税を廃除している。個人株主においてインビュテーション方 式とは,受取配当金と受取配当に対応する法人税額の全部ないしは一部を個 人株主の所得にプラスし,この所得により計算した所得税額から,プラスし た法人税額をマイナスする方式である。したがって個人株主の配当課税につ いては,Ⅰインビュテーション方式,Ⅱ調整規定がない方式の二通りに分け られる。
これらからドイツとフランスとイタリアは個人所得税における個人株主の 受取配当金課税の処理と同様に,法人所得税における法人株主の受取配当金
− 17 − わが国の税法における配当金課税に関する一考察(山内)
課税においてもインビュテーション方式により,二重課税の調整を実施して いることがわかる。
5.アジア諸国の配当金課税
アジア諸国においては以下のように配当金課税がなされている(図表3・
4)。8) 台湾 1
台湾では法人株主については,法人所得税を免除されていない他の台湾企 業への投資から得られた受取配当金の80%が益金不算入であった。その後 1998年1月より課税所得には算入しなくなった。そして将来の配当時に,株 主に税額控除を与えることとなった。しかしこの株主税額控除は非居住者と しての株主には適用されない。
1998年以降稼得された利益で,該当する事業年度末までに分配されないも のについては,10%の法人税が課せられる。これについては居住者もしくは 非居住者である株主の税額に対して,税額控除が適用できる。また企業が留 保利益を原資として新株を発行し,その株式を株式配当として株主に交付し たときは,当該株主は,その株式を売却するまで課税されない。
個人株主が台湾企業から受取る配当金については,いままでは課税対象と なっていたが,1998年から総合課税申告制のもと,会社より支払われる法人 税を控除できることとなった 。9)
韓国 2
韓国では法人株主については,他の法人から受取る受取配当金は通常の所 得と同様に法人所得税を課税する。ただし機関投資家が上場企業から受取っ た配当金は非課税とされる。
個人株主が法人企業から受取る配当金については,大株主(保有株式が発 行済株式数の1%以上にあたるか3億ウオン以上にあたるもの)は源泉徴収
後に総合課税による申告制であり,受取配当金の22/100を他の所得に加算し,
所得税額を算出し,そのあと同受取配当金の22/100を控除する。すなわち以 下の算式で計算される。(配当所得を含む所得+配当所得×22%−人的控除)
×税率−(配当所得の税額控除を除く税額控除+配当所得×22%)
図表3 アジア諸国の配当金課税
日 本 台 湾 韓 国 中 国
法人株主
税制改正大綱によ れば法人株主からの 受取配当金のうち① 連結法人株式等から の配当金は全額益金 不算入とする。
②関係法人株式等 から受取る配当等の 額は,全額益金不算 入とされる。
③として①及び② 以外の株式について 受取った配当等の額 については,配当等 の額の50%が益金不 算入とされる。
法人株主より受取 る配当金については,
1998年1月より課税 所得には算入しなく なった。そして将来 の配当時に,株主に 税額控除を与えるこ ととなった。
法人株主について は,法人から受取る 受取配当金は通常の 所得と同様に法人所 得税を課税する。
機関投資家が上場 企業から受取った配 当金は非課税とされ る。
中国では,受取配 当金は課税所得に含 まれるが,外国投資 者が中国における外 国投資企業から受取 られた配当金につい ては課税されない。
個人株主
税制改正大綱では,
利子・配当・株式の 譲渡益に対する課税 の一体化を視野にい れ,上場株式等の配 当,公募株式投資信 託の収益分配金,上 場株式等の譲渡益に ついて一律20%の源 泉徴収のみで納税が 完了する仕組み(申 告不要)を導入する
個人株主が台湾企 業から受取る配当金 については,1998年 から総合課税申告制 のもと,会社より支 払われる法人税を控 除できることとなっ た。
個人株主が受取る 配当金については,
大株主(保有株式が 発行済株式数の1%
以上にあたるか3億 ウオン以上にあたる もの)は源泉徴収後 に総合課税による申 告制であり,受取配 当金の22/100を他の 所得に加算し,所得 税額を算出し,その あと同受取配当金の 22/100を控除する。
個人所得税の計算 上,受取利息,配当,
については20%税率 が適用され所得控除 は認められない。
(注)筆者が作成した。
それ以外の株主は16.5%の源泉徴収だけで課税関係が終了する源泉分離課
− 19 − わが国の税法における配当金課税に関する一考察(山内)
税である。
図表4 アジア諸国の配当金課税
タ イ 香 港 インドネシア シンガポール フイリビン マレーシア
法人株主
法人株主が 受取る配当金 については,
法人が長期に 所有していた ときは,上場 会社の場合,
受取配当金の 全額が益金不 算入となる。
非上場会社 の場合には,
受取配当金の 50%だけが益 金不算入とな る。
法人株主が 受取る香港法 人または外国 法人からの受 取配当金は課 税されない。
インドネシ アの法人(居 住法人)がイ ンドネシアの 他の法人(居 住法人)から 受取った配当 金は非課税で ある。
法人株主の 受取る配当金 はインビュテ ーション方式 により二重課 税の廃除がな される。
法人から受 取った配当金 については課 税されない。
法人株主の 受取った配当 金にはインビ ュテーション 方式が実施さ れる。
個人株主
個人株主が 受取る配当金 についてはイ ンビュテーシ ョン方式が採 用されている。
個人株主も 受取る受取配 当金は非課税 である。
個人株主の 受取った配当 は個人所得と して課税され る。
個人株主が 受取る受取配 当金について はインビュテ ーション方式 により二重課 税の廃除がな される。
個人株主に よって受取ら れた源泉に基 づく配当金に も所得税は課 せられない。
個人株主の 受取った配当 金にはインビ ュテーション 方式が実施さ れる。
(注)筆者が作成した。
中国 3
中国では,受取配当金は課税所得に含まれるが,外国投資企業が中国にお ける別の企業から受取られた配当金については原則として投資収益として益 金に計上されるが,課税所得に含めず,課税されないこともできるとしてい る。個人所得税の計算上,受取利息,配当,については20%税率が適用され 課税所得となり,所得控除は認められない10)。
タイ 4
タイでは,法人株主が受取る配当金については,配当を取得した法人が配
当の3ヶ月前までに株式を取得し,かつ配当後3ヶ月以上保有したときは,
上場会社の場合,受取配当金の全額が益金不算入となる。非上場会社の場合 には,受取配当金の50%だけが益金不算入となる。
個人株主が受取る配当金についてはインビュテーション方式が採用され,
受取配当額の3/7に相当する額を個人所得に加算し,納付税額からその受取 配当額の3/7に相当する額を控除する。控除額の方が多いときは還付を受け ることができる。なお1992年の証券取引法に基づいて新たに設立された投信 会社からの配当金については,年末に配当金を申告するが配当支払時には10
%の源泉徴収を支払わないか,配当支払時に10%源泉徴収を支払うだけで申 告不要とするか選択できる。
香港 5
香港では香港法人または外国法人からの受取配当金は当該香港法人または 外国法人が香港で課税されているか否かにかかわらず課税されない。つまり 法人株主は受取配当金には課税されない。また個人株主も受取る受取配当金 は非課税である。
インドネシア 6
インドネシアの法人(居住法人)がインドネシアの他の法人(居住法人)
から受取った配当金は非課税である。個人の受取った配当は個人所得として 課税される。
シンガポール 7
シンガポールでは,法人株主の受取る配当金は実質非課税である。個人株 主も受取る配当金は原則として総合課税され,課税所得に含められるが実質 非課税となる。なぜならば個人株主も法人株主も,受取配当金についてはイ ンビュテーション方式により二重課税の廃除がなされるためである。
フイリビン 8
フイリビンでは内国法人から受取った配当金については課税されない。ま
− 21 − わが国の税法における配当金課税に関する一考察(山内)
たフイリビン国民によって受取られた源泉に基づく配当金にも所得税は課せ られない。
マレーシア 9
マレーシアではインビュテーション方式が実施され配当金の受領者(法人 株主も個人株主も),配当金は源泉税額控除前の総額で課税所得に含められ,
配当金に課せられた30%の税額が,配当受領者の税額から控除することが認 められる。
アジア諸国の配当金課税については,法人株主の受取配当金に対してイン ビュテーション方式を採用している国としてシンガポール,マレーシアがあ った。完全に非課税として国には台湾,香港,インドネシア,フイリビンが 挙げられる。また完全に課税する国として中国があった。韓国では受取配当 金は原則として課税するが,機関投資家が受取った配当金については非課税 とされている。タイは基本的に,長期間所有されている株式の受取配当金は 益金不算入で非課税だが,非上場株式は,受取配当金額のうち一部を益金不 算入としている。わが国は関係会社株式等については全額益金不算入である が,その他の株式については一部益金不算入と処理している。
したがってアジア諸国における法人株主の受取配当金の課税方式は,Ⅰイ ンビュテーション方式,Ⅱ全額益金不算入方式,Ⅲ調整規定がなく完全に課 税する方式,Ⅳ原則課税,一部の配当金のみ非課税の方式,Ⅴ全額益金不算 入方式と一部益金不算入方式の混合方式に分けられる。
個人株主の受取配当金に対しては,シンガポール,マレーシア,タイ,イ ンドネシアではインビュテーション方式が採用されていた。また香港,フィ リピンは非課税の国であった。逆に中国,インドネシアでは二重課税の調整 がなく課税されていた。わが国は,個人株主の取得した配当金は,配当控除 という税額控除(以下配当税額控除という)により,二重課税を廃除してい る少ないケースである。個人株主の受取配当金に対する課税方式は,Ⅰイン
ビュテーション方式,Ⅱ完全非課税方式,Ⅲ調整規定がない課税方式,Ⅳ配 当税額控除方式に分けられる。
6.配当金課税ハイブリッド
受取配当金に関する課税制度は,法人への課税根拠が大きく影響する。法 人への課税根拠として法人擬制説と法人実在説があり,以下のように配当金 課税に係ってくる。
法人は個人株主の集合体であり,擬制に過ぎないとする法人擬制説に基づ く立場からは,法人税は所得税の前払いであり,受取配当金に関する課税は,
配当金を支払った企業では,既に利益に課税されており,その税引後の利益 から配当が行われるため支払配当金は既に一回課税済みであり,配当金を受 取った側にも課税すると支払配当と受取配当に対し二重課税となり調整が必 要となる。
一方法人は独立して実在する主体であるとする法人実在説の立場からは,
法人と個人とは別個の課税主体であり,法人も個人も税を納める能力がある。
そのため配当金に関する税金の調整は必要がない。
この受取配当金課税の基礎となる税法上の法人の考え方については,戦前 わが国はアメリカ型の法人実在説を採用していた11)。戦後新たに,アメリ カのシャウプにより,わが国の税法の基礎が築かれたが,法人税課税の根拠 は法人擬制説を基礎にしていた。これはイギリス型の法人の考え方であっ た12)。しかし税法の計算システムの多くはアメリカ方式であるが,法人の 考え方はイギリス型というハイブリッドで構成されたのがわが国の税法の出 発であった(図表5)。
法人の考え方をイギリス式にしたため,法人税と所得税の二重課税の調整 がなされた。シャウプの導入当時,わが国の受取配当金課税は全額益金不算 入であった。この計算方式もイギリス式の導入であったといえる。その後,
法人擬制説 イギリス(法人擬制説)
配当金課税の基礎となる 法人課税の根拠
金額益金不算入方式 イギリス型
金額益金不算入方式
法人株主の配当金課税
シャウプ勧告時 現 在 関係株式等は金額損金 不算入
原則は一部損金不算入
アメリカ型 金額益金不算入と一部 益金不算入の混合方式
ドイツの配当金 軽減課税
支払配当金 対する軽減課税 配当金軽減課税導入時
配当税額控除 シャウプ勧告
個人株主の配当金課税 現 在 継 続 諸外国には軽減課税がない
現 在
廃 止
(注)筆者が作成した。
− 23 − わが国の税法における配当金課税に関する一考察(山内)
わが国では,受取配当金の一部益金不算入制度が導入された。これはアメリ カ方式の影響を受けたものである。
しかもわが国のように法人株主が受取る配当金課税に,適用法人により益 金不算入の違いがある計算方式は法人実在説的であり,計算方法を見る限り
図表5 わが国の配当金課税ハイブリッド
シャウプ勧告導入当時の法人擬制説の考え方に,アメリカの法人実在説考え 方がハイブリッドしているのがわかる。
シャウプの導入した配当金の控除制度は当時のアメリカの制度ではなく,
他の国から導入されたものと推察できる。その後,わが国で配当軽減税率の 適用がされたが,これはドイツ方式の応用であった。
既述したようにわが国の法人株主の配当金課税については,戦後はイギリ ス型の法人擬制説という法人課税の根拠の上に,イギリス式方式である受取 配当金の全額益金不算入方式によりスタートした。その後,アメリカ型の受 取配当金の益金不算入計算がハイブリッド化し変形したと考えられる。また 過去にわが国が実施していた配当軽課制度はドイツ方式の導入であったが,
ドイツ以外の諸外国が配当軽課制度をとっていないことも及び配当軽課制度 に効果がみられなかったことから,現在は廃止されている。これも税法ハイ ブリッドである。
また個人株主の配当金課税における配当控除は,戦後シャウプにより導入 され,現在も継続している課税制度である。諸外国にはみられず,いまや特 殊な方式といえる。
7.わが国の配当金課税の問題点
まず配当金課税の問題点としては,大きく現行の配当金課税制度を前提と しての検討すべき問題点と,法人税課税体系,所得税体系にかかわる企業課 税の理論そのものの問題点とにわけられる。
現行の配当金課税を前提として考えられる問題点としては,第一に負債利 子控除についての問題があげられる。受取配当金の益金不算入額を計算する 際に,受取配当等の額から控除負債利子(株式を購入する際に借り入れ等が あった場合に支払う利子)が差し引かれる。しかし負債利子には特定利子と いうものが含まれており,これを従来,負債利子から廃除して計算がなされ
− 25 − わが国の税法における配当金課税に関する一考察(山内)
ていた。
特定利子とは長期借入金の利子,社債利子(社債発行差金を含む),商品 の販売代金等として受取った手形の割引料等であり,株の購入とは関係ない 資金の利子と考えられていたためである。しかし,長期借入金等のこれらの 資金により株を購入しないとは言い切れず,資金の運用,調達が多様化して いる現在に問題があった。
今回の2003年度税制改正大綱によれば,特定利子は廃止され,この問題は 解決されたといえる。
第二に,問題点は外国株式で運用されている証券投資信託の処理について である。これについては,政府税制調査会の法人税課税小委員会でも議論さ れているところである。現在証券投資信託の収益の分配金額については,そ の50%が益金不算入とされている。また,そのうち外国通貨で表示されてい る株式に運用される証券投資信託の収益の分配金については25%が益金不算 入とされている。
しかし,もともと外国株式からの配当については受取配当金の益金不算入 の対象から除外している。その規定と一貫性をもたせるためにも,外国通貨 で表示されている株式に運用される証券投資信託についての収益の分配金は 全額が益金不算入とすべきである。
第三に,わが国の配当金課税制度では,高額所得者には5%の配当控除が なされるわけであり,実質的には二重課税が廃除されていないという問題が 残っている。その対策としては配当税額控除を高めるのも方法もあろう。
1986年政府税制調査会の投信で,二重控除調整割合を勘案しつつ,配当税額 控除率を見直すという見解もあったが,その後控除率は高められてはいない。
また法人株主が受取る配当金の受取配当金の益金不算入割合は,当初アメ リカから導入し80%の割合を導入していた。本年から改正大綱により,さら に削減され経過措置の後最終的に50%まで引き下げられる。しかし理論的根