|ロロ﹄﹄ロロ亘口5口目
−81−
吐日■■■?
心臓容積からみた中学生徒の
呼吸・循環機能について
高 橋 恒 雄・野 村 武 男*
Cardio‑pulmonaryFunctionofJuniorHigh・Shoolboys withSpecialReferencetoHeartVolume
TsuneoTakahashiandTakeoNomura
(昭和53年10月31日受理)
い生徒である。
●
maxVO2,maxVEの測定はモナーク社製自転車 エルゴメーターを用い負荷漸増法で行ない, 0.5kp で2〜3分間のウォーミング・アップ後2分間休息 し,回転速度は60rpm/minで1分毎に0.5kpづつ負 荷を増し測定した。
HRは安静時より運動終了後5分目まで連続し胸 部導出によるテレメーター搬送により記録した。
運動中の呼気ガスの採取はダグラスバック法にて 行ない,HRが180beats/min以上を目安とし30秒間 を採気し乾式ガスメーターで定量した。
被検ガスの分析は日立製ガスクロマトグラフィー 163型で行ない,標準ガスはショランダーガス分析器 にて補正した。
肺機能はチェスト有水式スパイロメーターにより VC, FVC, FEV1.0,MMF,MVV,を測定した。
HVの計測はX線撮影からの正常呼吸における 吸気止息の状態での立位背腹像と立位側面像より行 ない,撮影条件として管球, フイルム間距離183cm, 露光時間0.02〜0.06秒,管電圧65〜85KVP,フイル ムはフジRX,撮影機種は東芝KXO‑1000を使用し た。
心陰影面積(HA)はトレーシングペーパーにト レースした後,HAYASHIDENKO製Outomatic Areameterで求積し,HAの計測は(図1)従来よ
り広く用いられているMoritzの計測法に従い,す なわち,心臓横径(Tr)は正中線から左右に測った 計測値の和(Mr+M1),縦径(Lo)は右上弓の交点 から左心臓隔膜角までの長さ,幅径(Bd)は縦径よ
り下した垂線の計測値の和(oq+uq),最大深径
(maxd)は測面写真での胸骨壁内側より背方側心
陰影の外側までの最大距離を計測した。
1 は じ めに
ヒトの体力指標のなかで,.最も重要なものは作業 能力であるとL,Andersen(22)はのべている。
作業能力を現わす体力要因も数多いが,最も適切
●
な要因は最大酸素摂取量(maxVO2)であると一般 的に考えられている。maxVO2は呼吸・循環機能に 左右されることは周知のことであり,それを規定す ると考えられる因子については従来より多くの報告 がなされている。
●
我々は昨年,このmaxVO2に密接な関係を有する 呼吸・循環系の各種要因のうちから呼吸器系では酸 素摂取能としての肺容量〔肺換気量(maxVE),肺 活量(VC),努力肺活量(FVC7,時間肺活量(FEV,.0, FEV,.0%),分時最大換気量(MVV)ら〕を,循環 系からは酸素運搬能としての一回拍出量(SV),毎分
●
拍出量(maxQ),心拍数(HR)らに関わる心臓容 積(HV)をとり上げ,身体的に発育途上時における
●
小学期児童について心臓容積を中心としmaxVO2 に関与する因子について検討した。
今回はこれを中学生徒に継続延長し,中学期にお ける有酸素作業能の発達推移について形態をはじめ として心臓容積を中心にその因子を考察し検討する ものである。
2被検者並びに実験方法
被検者は秋田大学教育学部付属中学校男子生徒1 学年(12〜13歳)から3学年(14〜15歳)の58名で あり, 日頃とくに身体トレーニングを行なっていな
*筑波大学体育科学系
昭和54年2月
& 一
画
−82−
高橋恒雄・野村武男
では370ml/㎡前後であった。前者は小学校期に比較 し小さくなる傾向を示すのに対し,後者は増大傾向 にあり18歳前後に成人値に達する様相にある。
HVは14歳値で日本人一般成人(1)の648mlに対し 89%の大きさを示し,運動選手(lx14)の835mlに比較す
ると70%の大きさにあった。
心臓の容積は形態との大小に密接な連がりにある ことが知られているが,小学児童('5)においても形態 との間に有意な相関が認められ,本研究の中学生徒 のHt,Wt,BSAとHVの関係は高い相関にあり回 帰直線はそれぞれ(図2, 3, 4)
Y=5.45%‑320.2 r=0.5500 (P<0.001) Y=6.47x+236.7 r=0.6559 (P<0.001) Y=335.3x+50.7 r=0.6521 (P<O.001) であり各れも有意な関係にあった。
●
maxVO2 (表3)では小学期より直線的な発達を 見せ, 12歳群1.171/min, 13歳群2.081/min, 14歳 群2.251/minとなり日本人体力標準値の成人値2.
901/minの78%の発達値にあった。体重当りでは 41.51ml/kg.min, 42.51ml/kg.min, 41.67ml/kg.
minであった。
また,maxVO2と形態もr=0.7〜0.8と高く
●
BSA,HVとmaxVO2の回帰直線は(図5, 6) Y= 1.71x‑0.52 r=0.8072 (P<0.001) Y=0.0025%+O.61 r=0.6151 (P<0.001) とそれぞれ有意な関係にあった。
maxVO2測定時における最大心拍数(表3)は12 歳群から14歳群で平均194beats/minで,小学児童 の平均196beats/minより少し減少傾向を示した。
●
maxVO2測定時におけるmaxVEでは12歳群 62.781/minから14歳群82.331/minと年間101/
minの増加を示した。
● ●
maxVEとBSA,HV,maxVO2との回帰直線,
相関係数はそれぞれ(図7, 8, 9)であった。
Y=52.25兀一4.44 r=0.5574 (P<0.001) Y=0.06x+39.2 r=0.3340 (P<0.05) Y=35.49x+1.75 r=0.8019 (P<0.001) 呼吸機能(表3)をみるとVCを始め,肺の機能 の優劣に関与する努力肺活量,一秒量,最大中間呼 気流量(MMF),呼吸気量の最大値すなわち分時最 大換気量らも逐年的に確実な増大を示し, 1秒率 (FEV1.0%=FEV1.0/FVC×100) も小学児童 80〜87%に対し,中学生徒では90〜95%と呵吸機能 における肺筋の発達を示した。
●
VCとBSA,HV,maxVO2との回帰直線と相関 係数はそれぞれ(図10, 11, 12)であった。
秋田高専研究紀要第14号 HVは側面像からのmax dとHA,定数とから
Rohere‑kahlstofyの計算式を用い,V=K×FaX maxd・(K=0.64, Fa=HA)により求めた後, フイ ルムと心臓,光源の距離より実大像を換算し求めた。
ノ
図1 心陰影計測法
3 実験結果
被検者の形態(表1)についてみると,文部省統 計昭和53年度と比較すると身長(Ht)体重(Wt)胸 囲(Ct) ともにやや優位にあるが, 14歳群では全国 平均とほぼ等しい体位にあるのに対し, 13歳群では 全国平均を大幅に凌駕しHtで3cm,Wtで3kg,Ct で約2cmの差を示し優れた体位群にある。
Rohere'slndexでは全国値に比較し体位的に優 れる13歳群が全国値と同値にあり, 12歳, 14歳群で は全国値122〜120に対し117と低値を示し,Ht,Wt の相対的な成長発育の傾向,年間増加量など大体、
全国値と同様の傾向にあるが被検者群では全般に痩 身傾向にあると考えられる。
次いでX線撮影からの心臓計測値(表2)を見る とTr,Brにおける左右正中間隔,上下方幅径におい ては波状的ながら増加様相にあり, 12歳〜14歳の3 カ年間にTrO.58cm,BrO.68cmの増加をみせた。Lo, maxdにおいてもHt,Wt,Ctらに認められた加令 による直線的な増加は認められなかったがTr, Br と同様に波状的ではあったが加令に伴なう増加傾向 は明瞭であった。
HA,HVにおいては加令するほど増加を示し,
HAで約11cnf,HVで約90mlの増大を示した。
心臓容積を体重で除した心臓体重比(HV/Wt)で は12〜14歳群ともに11ml/kg前後にあり,心臓容積を 体表面積(BSA)で除した心臓体指数(HV/BSA)
劃麺
■−1
−83−
「心臓容積からみた中学生徒の呼吸・循環機能について」
表 1 形態の学年別変化(平均値・標準偏差)
ロ 12 13 14
測定目
表し
|身体胸体ロ
長 重 囲 面積 ル指数
くくくく jjjj
152.32 41.49 72.05 1.347 117.84
160.82 49.78 76.80 1.522 120.64 6.64
6.31 5.25 0.11 16.12
6.37
6.13 3.86 0.12 12.34
163.40 51.81 80.09 1.592 117.81
6.88 8.76 4.82 0.21 9.93
叩蛇叩㎡
表 2 心臓諸測度の学年別変化(平均値・標準偏差)
14
12 13
測定目 横中中幅 径隔隔径径径径径積積比数 くくくくlくくくくくll 11jj11jjjjjj
110.4
38.5 71.7 100.1 52.2 47.8 124.4 76.0 101.4 488.4 11.9 362.5
10.1 7.4 8.3 7.5 6.2 4.3 8.5 5.6 12.8 85.4 2.2 59.9
115.7 38.5 77.4 103.8 56.9 47.0 130.5 82.0 110.0 567.3 11.5 372.5
9.1 6.1 9.8 5.3 3.8 4.3 7.1 4.8 10.1 51.1 1.4 35.3
116.2 36.5 79.6 106.9 55.4 51.5 132.0 81.0 112.7 576.3 10.9 363.0
10.4 7.5 7.7 7.1 6.4 4.5 8.3 5.5 11.9 85.7 1.7 39.6 JU
右正 左正 心 上 方 下方 心 心 心陰 心臓 心臓 心臓
mm
mm
mm
mm
mm
mm
mm
mm
cnf ml ml/kg m/nf
間間幅幅縦深影 面容重指体体
表3 呼吸・循環機能の学年別変化(平均値・標準偏差)
‑口 12 13 14
測定目
最大酸素摂取量 最大酸素摂取量 最大肺換気量
呼 吸 商
肺 活 量
努力肺活量
1 秒 量
1 秒 率
中間呼吸気流量 分時最大換気量 最大心拍数
( l/min ) (ml/kg。min) ( 1/min ) ( CO2/O2 )
( 1 ) ( 1 ) ( l )
( % ) ( 1/sec ) ( l/min ) (beats/min)
0.22 4.13 10.42 0.47 0.56 0.56 0.54 6.65 1.02 19.82 9.67
2.25 41.67 82.33 1.29 3.27 3.28 3.12 94.91 4.22 110.05 193.88
0.26 5.50 14.95 0.05 0.68 0.46 0.53 6.99 0.85 23.21 11.76 l.71
41.51 62.78 1.27 2.34 2.30 2.07 90.45 2.74 67.52 193.80
0.32 8.37 13.49 0.07 0.44 0.38 0.37 10.55 0.85 18.70 10.86
2.08 42.51 74.94 1.31 2.89 2.79 2.64 94.68 3.78 90.03 196.10
昭和54年2月
L
−84−
高橋恒男・野村武男
HV(ml) 。
◎
HV(ml) ◎ ◎ 。 ◎
。
。
【X
。 ◎
。 ︐11
つ″ロ●●︽叩︾釦く+PX132乱闘羽q
一一一一Vr
◎
BSA(ma) Ht(cm)
。
1.2 1.4 1.6 1.8
図4心臓容積と体表面積の関係
1の 1釦 1印 170
図2 心臓容積と身長の関係
180
2 V ◎
◎
2
1
r=0.8071(P<0. 1)
◎
I.=0.6559(P<0.叩l)
Wt(kg)
。
BSA(m2)
、
1.2 14 1.6 1.8
図5体表面積と最大酸素摂取量の関係
8 0
jjjlllOOOOOO●●●0007係kRk O関lくくの開加開即重舶卿船体QOQと一一二一一O積rrr5容282膝5650心訓刊引4x苑x3%似%0図202
30一一一一一一YYY
HA,HVは個人によりその大きさは一様ではな く著しい個人差があり,諸家の報告でも一般に身体 的に優れる場合,HA,HVともに大きい傾向にあ り.また,HVが一般人に対し運動選手が有意に大き く, より高い有酸素的作業能を持つ選手ほど実質に 大きなHVを有することなども報告されているo
Nghiem,M、Dら(4)は305名の男女,児童・成人の WtとHv間にr=0.96の相関を報告し,我国でも浅 野ら(12)が9〜17歳の男子のWtとHVの間にr=0.
842,女子でr=0.711の相関を認めている。
著者ら('5)も6〜11歳の小学児童のHtとHV,Wt とHVの間にr=0.7929,r=0.827の相関を認めた。
また,スポーツ選手では小川ら(6)がWtとの間に r=0.68の有意な相関を,山地(')は大学中・長距離選 手と一般成人男子のHt,WtとHV間にそれぞれ r=0.614,r=0.716,r=0.314,r=0.576といづれも スポーツ選手に高い相関を認めている。
本研究の中学男子生徒においてもHt,Wt,Ctと HV間にr=0.550, r=0.6559, r=0.6823と各れも 有意な相関にあった。
HVは身体の大小に密接な関係があるため,身体 的な相違を加味してHVを比較検討するためHt, Wt, BSAらでHVを除する方法が考えられ,
秋田高専研究紀要第14号 4考 察
ヒトの有酸素的作業能に関与する機能として呼吸 機能,循環機能はともに主要なものであり, これら 作業能を左右する要因としてHolmgren('0)はディメ ンショナルな因子の一つに心臓容積をあげ, rnax
●
VO2と密接な関係を有すること.を明らかにしてい る。
Astrand,P.O('')もまた心臓容積が毎分最大心拍
●
出量に関与しmaxVO2に関連していることを述べ ている。
心臓の大きさはX線撮影により実大像を測定す る法をMoritzが考案し以後,多数の研究者によっ て胸部の正面,側面の撮影像より心臓容積の算出法 が考えられ,外国を始めとして我国でも森(2)小川ら(6) 黒田ら(7)細川ら(8X9)山地(1)浅野ら(12)多くの報告を見て
いる。
本研究ではRohere‑Kahlstorf法を用い心臓の容 積を算出した。
=E・公令・一..←̲‐・やも ニー含
堂−−。a勺 色 孟 ウ毒
−85−
「心臓容積からみた中学生徒の呼吸・循環機能について」
,,。+VEmOx(ihin)
I
2
2
1
。
◎ 。 。
◎ ◎
。 ◎
Y=0.06×+39.2 r=0.3誤O(P<0.05)
r=0.6151(P<0.叩1) ◎
HV(mll
。
HV(ml)
4m. 5 6m 7 8m 4m 5m 6α〕 7m 8α〕
図8 心臓容積と肺換気量の関係 VEmox(I/inin)
◎
図6 最大酸素摂取量と心臓容積の関係 VEmax(!イnin)
◎
。 。 。
1 11
9
7
Y=52.3×−4.
r=0.5574(P<0.01) 5
。
、 ロ
BSA(ma)
1.0 1.5 2.0 2.5
図9 最大酸素摂取量と肺換気量の関係
1.2 1.4 1.6 1.8
図7体表面積と最大換気量の関係
Roikamm(3)らはHVをWtで除した心臓体重比 (QuotientHerzvolumen/K6rpergewicht)を用い,
Nghiem(4)らはHVをBSAで除した心臓体指数 (CardiacVolumelndex)を用い比較している。
HV/Wtでは小川ら(6)がスポーツ選手のHV/Wt が水泳,陸上, レスリング, 自転車ら耐久的な種目 に大なることを指摘し,山地(')の数値よりHV/Wt を算出すると一般成人10.89ml/kgに対し,中・長距 離選手14.62ml/kgとなる。また,山本ら('4)もスポー ツ選手のHV/Wtについて述べ長距離選手19.1ml/
kgを最大に平均13.3ml/kgと報告している。
本研究中学男子生徒では12歳群11.9ml/kg,13歳群 11.5ml/kg, 14歳群10.9ml/kgを示し小学期児童13.
0〜12.0より低く, 10歳ごろよりWtの増加がHV の増加率を上まわり,HV/Wtが徐々に低下し14歳 ごろに成人値に達する様相にある。
HV/BSAでは山地が日本人一般成人のHV/
BSAが392ml/㎡であり,スエーデン人の453ml/
BSAより低b順であることを報告しているが,本研 究の中学生徒のHV/BSAは12歳群362.5ml/㎡, 13 歳群372.5ml/㎡, 14歳群363.0ml/㎡と小学期児童 320〜350ml/㎡と比較し加令するほど増加をみせ18
昭和54年2月
歳前後に400ml/㎡の成人値に達するものと推察され た。
HVとmaxVO2の関係は従来の研究からも高い ものがありAstrand,P.Oら(''),Ekblom,Bら('6)
をはじめとし我国でも浅野ら('2)が9〜17歳の男子に おいてr=0.735(P<0.1%)女子r=0.586(P<0.
1%)の相関を認め,堀居ら('4)が各種スポーツ選手に r=0.425(P<0.001),山地も18〜26歳の中・長距離 選手にr=0.668(P<0.01), 18〜33歳の一般男子成 人にr=0.443 (P<O.01)に有意な相関を認めた。
著者ら('5)も小学児童にr=0.4543(P<0.05)を認 め,本研究12‑14歳の中学男子ではr=0.6151(P<
0.001)の相関が認められた。
入内島('7)は循環系における心臓機能を知るうえで もっても本質的な物理量は圧力,容積,流量の三因 子であると述べ,北村('8)は一般に心臓はStarlingの 法則に合目的的に調節されてはいるが,他方では自 律神経性調節を受け,心拍数を変える作用を変時作 用(Chronotropicaction),収縮力を変える作用を
変力作用(inotropicaftion),閾値および伝達速度
を変える作用はそれぞれ変閾作用(balhmotropic action)および変導作用(dromotropicaction)の
一 一
FdLD
−86− 局 橋恒雄・野村武男
各因子により調節されることをあげている。
酸素摂取能を限定する心臓機能の良否は心臓容積 に伴なう血液循環の原動力としてのポンプ作用にあ ると考えられ,心拍出量によりその機能が示される ものであり,その最大の心拍出量が心臓の能力を示 すものとして重要であり,酸素運搬という効率に関 与していると考えられる。
また,心拍出量の増加についての要因は多くの指 摘が見られるが,その主因の一つに拡張期における 心室容積の増加,心筋の収縮度を上げる研究者も多 く,著者ら(5)の6〜12歳男子児童におけるUCG (Ultrasound‑Cardiography)測定における左心室 計測結果でも加令に伴なう左心室,一回拍出量なら びに心筋厚の増大は明瞭であった○
増田ら(19)はX線映画法による運動中の心臓容積 変化についての報告のなかで,鍛練者も非鍛練者も 運動負荷によりHVが増大することを認め,増大率
は鍛練者の場合,非鍛練者の約3倍近くになり心筋 の伸展,すなわち拡張期容積が大きいのであるから わずかな心筋の短縮によって比較的大きな拍動量が 維持されることを述べている○
宮村ら(20)は日本人一般成人の男子の最大心拍出量 が約201/min,最大一回拍出量は約120mに対し, 9
VC(1)
。
Y=2.96×−1.52 r=0. 85(P<0.001)
40 ◎
0
3.C 。◎
2.0
。 。
BSA(m8)
1.2 1.4 1.6 1.8
図12体表面積と肺活量の関係
10歳の児童のそれは約121/min, 66mlであり,女 子は男子の約70%に当り性差,年令差が見られるこ とを報告していることからHVの大小が有酸素作 業能の限定因子の一つになっていると推察された。
以上からも形態の発達に伴なうHVの増大が SV,maxQ,血液量,ヘモグロビン濃度らと関連し 合いHVの大小に見合った酸素摂取能及び酸素運 搬能を持つものと考えられ,Reindellら(23),Cureton ら('3),山地(')もHVの大きさから全身持久性の能力 を評価しているが,中学生徒においてもHVの大小 は呼吸・循環系に深く関与しているものと考察され た。
● ●
次いでmaxVEとmaxVO2との関係を見ると,
作業負荷が増大するとVEの増加傾向は準直線的で
● ●
あり,maxVO2とmaxVEとの間には正の相関関係
●
があり,同時にmaxQとも密接な関係を有するこ とが猪飼ら(21)により報告されているが,本研究にお
●
けるmaXVO2とmaxVEとの間にはr=0.
8019 (P<0.001) と高い相関にあった。
●
また,maxVO2と呼吸系におけるVCとの相関は r=0.6928(P<0.001)と高く,呼吸器の機能の高さ は肺の弾性拡張力と呼吸筋力の強さを物語るもので あり,肺の中のガス交換の効率の良さで決定される
●
と考えられるため,呼吸器系におけるmaxVO2を決 定する因子は肺換気量と肺拡散能力であり,HVと 共に加令に伴なう呼吸器系の容量並びに機能の増大 はmaxVO2に多大な影響をあたえるものと考察さ れた。
また,VE,VC,FVC,MVVらは形態との相関 も高く,特にHt,BSAとの関係が深く,加令にした がっての換気能力の増大は明瞭であった。
がしかし,呼吸系におけるmaxVE,VC,FVC,
VC(I)
5
Y=1.41×+0.03 r=0.6928(P<0. 1)
4
3
2
1.0 1.5 2.0 2.5
図10最大酸素摂取量と肺活量の関係
5GVC(I)
;
。
。
。
r=0.4729(P<0.01)
HV(ml)
。
。
。 。
4m 500 6m 7 8m
図11心臓容積と肺活量の関係
秋田高専研究紀要第14号
=、ざ
−87−
「心臓容積からみた中学生徒の呼吸・循環機能について」
》
MVVらの発達の割合は日本人一般成人値に比較 し,HA,HV,maxVO2らと同様85%程度であり長 育に後行する量育と同程度の発達様相であった。
メンショナルな因子と最大酸素摂取量,最大換気量,
肺機能らファンクショナルな因子の発達は互に相乗 的であり,両因子間の関係は密接なつながりにある
と推察された。
約 要
文 献
中学校に在学する男子生徒54名を対象にX線に よる心臓撮影を実施し,Rohere‑Kahlstorf法を用い 心陰影面積と心深径および定数の積より心臓容積を 算出し, その発達を形態との関連から考察した。
また,上記54名を対象にモナーク社製自転車エル ゴメーターを用い,負荷漸増法により最大酸素摂取 量,最大換気量,最大心拍数の測定とチェスト有水 スパイロメーターを用い肺機能の測定を行ない,小 学期に引続き中学男子生徒の心臓容積を中心とした 呼吸・循環系と最大酸素摂取量,最大換気量との関 係を考察し次の結果を得た。
1)中学期における心臓諸測度の発達は小学期に続 いて順当な発達をみせ,心陰影面積,心臓容積,心 臓体指数,心臓体重比らは加令に伴ない直線的な変 化を示し,特に13歳での増加が著しく形態の発達と 同傾向にあった。
14歳では心陰影面積112.66m2,心臓容積576.26ml, 心臓体指数363.03ml/m?,心臓体重比10.9ml/kgとな り, その成長率では一般成人の約85%運動選手の約 70%であった。
また,有酸素作業能に関わる最大酸素摂取量,最 大換気量らの発達は一般成人の約80〜85%に当た り,身長の発育よりも体重と平行して増加している ものと推察された。
2)身長,体重,体表面積と心臓容積,最大酸素摂 取量,最大換気量,肺活量,努力肺活量等の間には 密接な関係が認められ, この年代では形態の大小が 最大酸素摂取量,最大換気量,心臓容積等の大小に 連がり,作業能を高める因子となっているものと推 察された。
3)心臓容積と最大酸素摂取量の関係はr=0.
6151 (P<0.001)の相関が認められ,小学児童に比 較し高い値を示し,心臓容積,心筋の増大らに伴な う酸素運搬系としてのポンプ作用が有酸素作業能の 限定因子の一つになっていると推察された。
4)心臓容積と肺機能との関係は深く,共に最大 心拍出量に密接に連がり,有酸素作業能を左右する 最大酸素摂取最と決定する大きな因子となっている
ものと察しられた。
5)身長,体重,胸囲,体表面積,心臓容積らのデイ 昭和54年2月
1)山地啓司:最大作業時の日本人一般成人と 中・長距選手の呼吸・循環機能一心臓容積を中 心として−,体育学研究,Vol l8‑5, P 277‑286, 1974.
2)森四郎:運動選手の心臓機能に関する考察,
体力科学,Vol 9‑2, P236‑257, 1960.
3)Roskamm,H.,H・ReindellundK.Konig, : K6rpelicheActivitat undHerzundKreis‑
lauferkrankugen・ JahannAnbrosiusBarth, MUnchen. P166, 1966.
4)Nghiem,Q、X.,M,H.Schreiber,andL.C.
Harris:CardiacVolumeinnormalchildren andadolescent・ cir. 35:509‑522, 1967.
5)高橋恒雄,野村武男,対馬清造:小学児童に おける有酸素的作業能についての一考察, 日本 体育学会第28回大会抄録, P250, 1977.
6)小川義雄,遊佐清有,他:運動選手の心影像 について,横浜市大紀要142, P17‑24, 1962.
7)黒田義雄,加賀谷凍彦,他:心電図R鰊同調 装置によるX線心臓影に関する研究,日体協ス ポーツ科学委員会研究報告集,P1‑14, 1969.
8)細川淳一,伊村才郎:大学運動部員の心胸廓 比について,体力研究,NO20,P1‑4, 1970.
9)細川淳一,勝木新次:大学運動部々員の心胸 廓比について(第2報),体力研究,NO23, P 22‑23, 1972。
10)Holmgren,A. :Cardiorespiratorydeler‑
minatntsofCardiovascularfitness. Canad.
Med.Ass.J. 96:697‑705, 1967.
11)P.O.Astrand,T・EdwardCuddy,B.Saltin, and J. Setuberg:Cardiac output during submaximal andmaximalwork. J.Appl.
Physiol. 19‑2 :268‑274, 1964.
12)浅野勝己,朝比奈一男:都市青少年の心発育,
日本体育学会第22回大会抄録, P182, 1971.
13)Cureton, T・ K., andK・ Thomas, :
Relatiqnshipofphysical fitnss toathlelic
performanceandspots. J.Amer・Med.Assoc.
162: 1139‑1151. 1956.
●
陸
−88−
高橋恒雄・野村武男 14)山本郁栄,堀居昭,他:スポーツ選手にお
けるスポーツ心臓と酸素運搬に関する研究一心 臓容積と最大酸素摂取量一, 日本体育学会第23
回大会抄録, P566, 1972.
15)高橋恒雄,野村武男:心臓容積からみた小学 児童の呼吸・循環機能について,秋田高専紀要 13, P97‑103, 1978。 .
16)B. EkblomandLHermansen:Cardiac outputinathletes,J.Applphysiol,25‑5,P
619‑625, 1968.
17)入内島十郎:循環生理学入門,医学出版社,
1966.
18)北村和夫,牧野毅:運動に対する循環系の 反応呼吸と循環, 16‑6,P37‑45, 1968.
19)増田允,芝山秀太郎,他:X線映画法によ
る柔道選手の運動時心容積変化,講道館柔道科 学研究会紀要, P44‑51.
20)Miyamura,M.andHonda,Y. :maximum Cardiacoutputrelatedtosexandage.Jap.J.
physio1.,23:645‑656. 1973.
21)猪飼道夫,宮村実晴:心拍出量からみた全身 持久性−2−,体育の科学,17‑6,P344‑349, 1967。
22)Andersen,K、L. :Physiologicalworking Capacity・ HealthandFitnessintheWorld.
TheAthleticlnstitute. :365‑367, 1961.
23)Reindell,H.,H.Klepzig,. H. steim,K.
Mnsshoff,H・Roskamm,undE.Schildge, : Herz,Kreislaufkrakheitenundsport. Barth, Munich, 1960.
秋田高専研究紀要第14号
一一一℃凸eコーーー