小学校第6学年理科「大地のつくりと変化」の授業 : 掛川層群大日層・宇刈層の観察を通して
著者 白井 久雄
雑誌名 静岡地学
巻 87
ページ 63‑70
発行年 2003‑06‑22
出版者 静岡県地学会
URL http://doi.org/10.14945/00025055
静 陪 地 学 第87号 (2003 )
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地 球 と 宇 宙 (1 )土地やその中に含まれるものを観察し、土地のっくりや 土地のでき方を調べ、土地のっくりと変化についての考えを持つようにするoJ(小学校学習領第2章各教科第4節理科より)の学習(以下「大地のっくりと変化j と表記する・これは本校で使 用している東京書籍発行の理科教科書の単元名と同じ)では、児童が野外で実際に地層を観察し
を進めていくことが重要であるC 掛
1 1 1
層群五百済火山灰層や堀之内層の観祭を通した授業実践や、直接体験の意義については既に述べた(白井, 1998a, 1998b) 0
本報告では、 2002年度掛川市立第一小学校で、行った「大地のっくりと変化j の授業について述べ るO 具体的には、単元の導入、見通しを持って行った掛川層群大日層と宇刈層の観察、大日層由来 の砂岩と宇刈層由来の砂質シルト岩からの貝化石の採取、五百済火山灰の粒の観察、地震や火山の 噴火による大地の変化の授業の進め方や児童の取り組みなどを紹介するO
2.単元の導入について(第1時)
本単元の概略がわかるように、単元構想、を国 1に示した。授業時間は15時間であるO また、本単 元終了時の児童の感想を図2に示した。
の導入で「みんなの住んでいる地面の下はどうなっているのだろうかj と問うことの有効 性については白井(1998b)で述べた。今回も導入で「みんなの住んで、いる地面の下はどうなってい
るのだろうか
J
と問うことによって児童の実態を把握し、それを単元構想、に生かすことができた。3.見通しを持って地崩を観察することについて(第2時 第8時)
本校で使用している理科教科書では、「水のはたらきでできた地層」と「火山のはたらきでできた 地層
J
のでき方や特徴が説明されているO また、水のはたらきでできた地層の例で掛川市杉谷の露 頭が写真で紹介されているO この露頭では白井(1999)で報告した宇刈層が観察できた。しかし、この露頭をはじめ白井(1999)が報告した露頭は現在、土地区画整理事業工事によって全く無くな ってしまった。従って、本校学区である杉谷での地層観察は不可能であるO
そこで、徒歩で移動できること、交通安全や露頭での安全性が確保されていること、地層のしま 模様がわかること、地層から擦や貝化石などが採取できることなどの、露頭が観察に適しているか の観点(白井, 1998a, 1999)を考慮し、後述するように掛川市上屋敷と西郷に存夜する露頭を観察す ることにした。
*掛JlI市立第一小学校
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国2調「大地のっくりと変化j終了時の児童の感想.
には、身近に見られる地層として、実際に観察する掛川市上屋敷(宇刈層)と西郷(大臼 宇刈層、段丘諜層)の地層、本校学区の南郷(宇刈層)の地層、掛川市に隣接する菊川町内田(五 百済火山灰層)、大東町土方(小笠層群の磯層)の地層の写真を見せ、地層に関する興味・関心を高 めた。更に、児童には教科書掲載の掛川市の露頭写真を見せ、掛川市で観察できる地層は水のはた らきでできた地層であることを説明した。そして、「掛川の地層が水のはたらきでできた地層なら、
どのようなものが観察できるのだろうか
J
(第3時)を考えさせた。児童の考えは表1に示した。‑65‑
地層観察は「水のはたらきでできた地層の証拠 はあるのだろうか
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という見通し(目的意識)を 持って、 2002年11月5日に行った。参加者は6年 生 児童93名、引率教師4名、移動手段は徒歩で交通安 全、露頭観察の安全に十分留意して実施した。児 観察記録用紙は白井(l998a)で示したものと 同様にB4判で、観察日時と持ち物を記載したり、後述するA露頭・ B露頭
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露頭で見つけた証拠を 記入する欄を設けたりした。また観察用紙のには図3と同様の地図を印刷し、本校からの経路が 雄認できるようにした。観察した
たIIJ貢番に掛川市上屋敷のA露頭と
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また,砂層の表面をねじり鎌でi1iljり新鮮なi揺を出すと,砂府内のしましま模様(平行葉理Dもわかる.
宇刈}認が大規模に露出する.砂質シルト!詩に良化石が含まれているのが観察できる.児童は良化石の採集
に夢中になって11文り組んだ、.
は本の流れた痕があるはずだj と
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に只化石が含まれている とB露頭の北側では
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を始める前 に露頭中央部に見られる断層を説明した。
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(2002)で報告した南露頭と11'1Jじ 大EI)比千:メ日間,段丘擦層が露出する, 明
児童品化ム持取したり,粘土を採取したり,擦を制したりした 」れは、断層が後述する地震による大地の
変化の一つであり、掛川の地層でも観察で きることを実物を前にして説明しておきたかったからであるO 児童は貝化石を採取したり、ねん土 を採取したり、段丘{深層から擦を採取したりした。そして、これらを次時からの水のはたらきでで きた地層の証拠として生かし
本校には掛川市街地のボーワン 社世 ・e g2・2れ ノ‑2 に伴う地質調査、 1995実 施 ) が あるO 本資料は20本あり、地表から1‑‑‑‑‑‑‑1.08m、2‑‑‑‑‑‑‑2.08m、…20‑‑‑‑20.08mの地点から採取した、
3cm、厚さ8cmのものであるO そこで、地層観察のまとめ(第6時)では、本資料を児童に観察させ 掛川市街地の地下は砂とねん土の層であることを説明した。また市街地帯部の南郷や杉谷でも砂と ねん土の層が観察できるO
がっていることをとらえた。
観察の結果とこれらのことから、砂とね をつくって広
ヰ欄貝化石を取り出す(第7時)
前述した地層観察時にくぎと金づちを持参し 化石を取ろうとした児童がいた。しかし、 B露 頭やC露 頭 で は く ぎ と 金 づ ち な し で も 化 石 採 取 が 可 能 で あ っ た 。 第6時 に く ぎ と 金 づ ち を 用
した児童がいたことを紹介すると、くぎと金づ ちを使って化石を取り出してみたいという声が あがった。そこで白井 (2002)で報告した大日
由来の砂岩と宇刈層由来の砂質シルト岩から
67‑
図7闘砂岩や砂費シ)[;ト岩かち呉化活を取v)f告す児童u
タガネと金づちを使って貝化石を取り出している.詳細は本文参煎.
貝化石を取り出す授業を計画した。また、 2002年9月、文部科学省ホームページに「個に応じた指導 に関する指導資料一発展的な学習や補充的な学官の推進一小学校理科編
J
が掲載された。その事例 13は、発展的な学習として採取した貝化石名を調べる学習を示していた。これらのことから「もっ とはっきりした貝の化石は取り出せないのだろうかj の授業を行うことにした。貝化石を取り出す ためにタガネ(商品名:チスタガネNO.8、直径10mm、長さ150mm)を一人 1本用意した。只化石 名を調べる時は森・柴(1992)の図23‑2、地学問体研究会静岡支部(1981)の図13‑2⑤⑥を印刷した ものと見比べさせた。児童は、意欲的に貝化石を採取し(凶7)、名前を調べた。貝化石が採取でき る露頭を観察できない場合には、本実践のような授業を行うことが有効で、あると言えようO 本実践 は、 2002年度小笠教育研究協会理科研究部・一斉教育研究報告会の公開授業として行われ、小笠掛 川地区の小学校教員や中学校理科教員約50名が参観した。小笠掛川地区が大地のっくりと変化のを行うのには最適な地域であることを広めることができたと言えるだろうO
i 五百済火山灰層の粒を る 。時)
白井(1998a)で述べたように、火山灰の粒を観察し は粒の美しさに感動するO そこで、本 単元では「火山のはたらきでできた地層はどのようにしてできたのだろうか」の学習で火山灰の観 察を行った。火山灰の試料は、事前に採取しておいた五百済火山灰層の極細粒砂径火山灰を用いた。
授業では、児童が試料を水洗いし、解剖顕綴鏡で観察した。教科書に示されているようなキラキラ した粒が観察できた。白井(1997)で報告した露頭は現在も存在するので、直接児童が観察できな い場合は、本報告のように教師が試料を採取し授業で活用すればよいと考えるO
6.地震や火山の噴火による大地の変化(第11""'13時)
ここでは、児童は地震による大地の変化か、火山の噴火による大地の変化かを自分の興味・関心 に恭づいて選択して学習を進めるO そこで、まず教科書に載っている地震や火山の噴火による大地 の変化について一斉に説明した。その後どちらかを選択し、各自で調べてまとめる学習を行った。
による大地の変化では、前述したようにC露頭で観察した断層が地震の痕と気づく児章がいた。
火山の噴火による大地の変化では、五百済火山灰のような火山灰が降り積もることから大地が変化 することを理解した児童がいた。児童は調べたことをB4判画用紙にまとめた。児童はインターネッ
トや本校図書館、本校に隣接する掛川市立図書館の資料から必要な情報を得てまとめていった。ま とめる時はインターネットや資料のコピーを切り貼りしてもよいこと、出典を明示すること、絵を 描いでわかりやすくすること、自分の言葉でまとめ丸写しはしないことなどを指導した。児童の作 成したものを図8に示す。火山の噴火をまとめたものは火山災害に
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が向いている(図らがO そこで、小山 (2001)が指摘しているような火山の恵みにもふれることが必要で、あると考えるO また、教師 の火山に対する知識を得るためには例えば鎌田 (2002)などが参考となるだろうO
また、本単元に関連した児童用参考図書(表1) を1冊ずつ購入し理科室に置いた。学習を進める に従い興味・関心が高まった児童がこれらの図書を読むことがあった。
87号 (2003 )
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国8沼地震や火山の噴火による大地の変化について調べた
まとめ,
1.地設による大地の変化.
2.火山の噴火による大地の変化.実際はB4手IJ¥出用紙に記入した.インタ
ネットやi望者からの資料を切り貼りし作成している.カラーペンを能
って記入した部分もあるので l~rJ脱が官l)不鮮明になっている.
1.
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大地のっくりと変化J
児童用参考図書一覧旬1977,火山は生きている.あ 54p. ‑馬場勝良.1992.化石はなぜおもしろい.さ・え・ら 63p.
‑馬場勝良,2000, を調べる.さ・え・ら 63p. ‑馬場勝良, 2001, J11原の石の観察と さ・え・ 63p.
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‑地学団体研究会,1987,わくわく 83p. ‑東 ,1995,日本の恐竜.借成社,32p.
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‑山科健一部・栗剖 敬,1998,地球の中をさぐる. 63p.
7綱まとめ
(1)導入で「みんなの住んでいる地面の下はどうなっているのだろうか
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と問うことは、児童の 実態を把握し、単元構想、へ生かすのに有効だろうO(2)水のはたらきでできた地層の証拠をさがすという見通し(日的意識)を持った地層観察、砂 岩やシルト岩から貝化石を取り出して化石の名前を調べる学習、火山灰の粒を観察する学習、地震 や火山の噴火による大地の変化について選択し調べまとめる学習に児童は意欲的に取り組んだと えられる(図2)0
(3)児童には図2で示したような自然認識を育てることができたと言えるだろうO
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