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(1)

骨指向性輸送担体としてアスパラギン酸ペプチドを 用いた放射標識化合物の基礎的検討

著者 石? 淳志

著者別表示 Ishizaki Atsushi

雑誌名 博士論文本文Full

学位授与番号 13301甲第4893号

学位名 博士(創薬科学)

学位授与年月日 2019‑03‑22

URL http://hdl.handle.net/2297/00058909

doi: https://doi.org/10.1038/s41598-017-14149-7.

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

(2)

骨指向性輸送担体としてアスパラギン酸ペプチドを用いた 放射標識化合物の基礎的検討

石﨑 淳志

平成 31 1

(3)

博士論文

骨指向性輸送担体としてアスパラギン酸ペプチドを用いた放 射標識化合物の基礎的検討

金沢大学大学院医薬保健学総合研究科 創薬科学専攻 臨床分析科学研究室

学籍番号 1529012001

氏名 石﨑 淳志

主任指導教員名 小川 数馬

(4)

1

目次

緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

第1章 ソマトスタチン受容体高親和性ペプチドを用いた原発巣および骨転移巣イメージ ング薬剤の開発に関する研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

実験方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24

第 2 章 D-アスパラギン酸ペプチドを骨指向性輸送担体とした骨イメージング薬剤の

開発に関する研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 実験方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47

第 3 章 複数の癌病巣部位の同時治療を目的とした新規 90Y 標識薬剤の開発に関する研 究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 実験方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62

結語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63

(5)

2

引用文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65 謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72

(6)

3

緒言

現在、Positron Emission Tomography (PET)用核種である18Fを用いた [18F]fluoro-2-deoxy-

D-glucose ([18F]FDG)によるFDG-PET検査が、様々な悪性腫瘍の診断に用いられており、日

本においても保険適用されて用いられている(1-5)。2005年には[18F]FDGのデリバリーが開 始され、18Fの製造に必要なサイクロトロン設備を有さない施設においてもPETカメラを 所有していればFDG-PET検査が可能となったが、その他のPET用薬剤を用いる場合には 依然として高価なサイクロトロン設備が必要となる。これに対して、PET用核種の一つで ある68Ga (半減期67.6分)は68Ge (半減期271日)の娘核種であるため放射平衡を利用して

68Ge-68Gaジェネレータにより取り出すことが可能であり、サイクロトロンを有さない施設 においても、ミルキングにより容易に入手することができ、検査に使用することができる ことから、近年、注目されており、68Gaを用いた多くの標識化合物が開発されている(6-8)。

一方、骨は増殖因子を豊富に含み、前立腺癌や乳癌など多くの癌にとって増殖し易い組織 であり(9, 10)、癌の骨転移に起因する疼痛によって患者のquality of life (QOL)が損なわれる (11)。近年、骨転移に対する治療も進歩しており、的確な早期診断がより重要となってきて いる(12-14)。転移性骨腫瘍の診断においては、X線Computed Tomography(CT)やMagnetic Resonance Imaging (MRI)などの形態診断法に比べて、PETやSingle Photon Emission Computed Tomography (SPECT)を用いた核医学診断法が転移部位における機能的変化を形態変化に先 行して感知できるため適した診断法である。核医学検査における骨シンチグラフィ検査で は 、[99mTc]Tc-methylene diphosphonate ([99mTc]Tc-MDP)や 、[99mTc]Tc-hydroxymethylene

diphosphonate ([99mTc]Tc-HMDP)などの 30 年以上前に承認された薬剤が依然として用いら

れているが(15, 16)、[99mTc]Tc-MDPや[99mTc]Tc-HMDPは、99mTcとビスホスホネートが直接 配位している構造をとっており(17)、そのことがビスホスホネート本来の骨への集積性を 減弱させている可能性が危惧される。そこで、標的分子への親和性に関与する部位と、そ

(7)

4

れとは独立して放射性核種を安定に保持する部位とを同一分子内に導入した薬剤設計を 用いて、転移性骨腫瘍の早期診断法を目的とした薬剤の研究を行い、近年、その研究成果 を放射性ガリウム標識にも応用してきた(18, 19)。その中で、骨に高親和性を示すことが知 られている酸性アミノ酸ペプチド(20)であるアスパラギン酸ペプチド[(L-Asp)n]を骨指向性 輸送担体とし、Gaとのキレート部位に1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid

(DOTA)を選択して 、Ga-DOTA 錯体とア スパラギン酸ペ プチドとを結合した化 合物

[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n (n = 0, 2, 5, 8, 11, or 14)の評価を行い、有用性を示してきた(19)。一 方、癌の増殖には血管新生が関係しており、α鎖とβ鎖から成るヘテロ2量体タンパク質 であるインテグリンは、細胞接着分子として血管新生や腫瘍増殖に関与している(21, 22)。 いくつかのサブタイプのうち、αvβ3インテグリンは、メラノーマや、乳癌、卵巣癌など、

ある種の癌細胞に過剰発現しており、癌血管新生において重要であるが、正常細胞にはほ とんど発現していないことが報告されている(23)。このことから、αvβ3インテグリンを標的 として、αvβ3インテグリンに対して高い親和性を有するアルギニン-グリシン-アスパラギ ン酸 (RGD) 配列を基にした様々な化合物の開発研究がされてきた(24-26)。これまでに開 発研究されてきたRGD含有ペプチドの一つに、環状ペンタペプチドであるc(RGDfK)があ

り、c(RGDfK)を輸送担体として用いた放射標識薬剤の腫瘍イメージング薬剤としての有用

性も報告されている(27, 28)。著者の研究室でも、複数の癌病巣部位の同時診断を目的とし て、複数の指向性輸送担体を同一分子内に導入した薬剤設計(Figure 1)を用いて、骨指向性 輸送担体としてアスパラギン酸ペプチドを、癌指向性輸送担体として、新生血管内皮細胞 の他、ある種の癌細胞にも過剰に発現していることが報告されているαvβ3インテグリンに 高 親 和 性 を 示 す RGD ペ プ チ ド を 選 択 し た Ga 標 識 化 合 物[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)11-

c(RGDfK)の設計・合成を行い、原発巣および骨転移巣イメージング薬剤としての有用性を

示してきた(29)。この化合物では、癌指向性輸送担体として癌に発現している αvβ3インテ グリンに高い親和性を有する RGD ペプチドを用いたが、他の癌指向性輸送担体への応用

(8)

5 も可能であることが期待される。

そこで、第1章では、複数の癌病巣部位の同時診断を可能とする多機能性放射性ガリウ ム標識薬剤の開発を目的として、癌指向性輸送担体としてソマトスタチン受容体に高い親 和性を持つことが知られている[Tyr3]-octreotate (TATE)を、骨指向性輸送担体としてアスパ ラギン酸ペプチド[(L-Asp)n]を選択し、Ga-DOTAとこれらのキャリアを結合した化合物Ga- DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)を設計、合成し、in vitro、in vivoにて評価を行っ た。尚、本研究では、68Gaの代替核種として、半減期が長く、取り扱いが容易な 67Ga (半 減期3.3日)を用いて基礎検討を行った。

また、D-アミノ酸を用いたペプチドはL-アミノ酸を用いたペプチドに比べて in vivo

おいては高い安定性を示すことが報告されている(30)。そこで、第 2 章では、D-アスパラ ギン酸ペプチド[(D-Asp)n]が、L-アスパラギン酸ペプチド[(L-Asp)n]と同様に骨指向性輸送担 体として有用であるかを評価することを目的に、Ga-DOTA とD-アスパラギン酸ペプチド を結合した化合物Ga-DOTA-(D-Asp)n (n = 2, 5, 8, 11 or 14)を設計、合成し、in vitro、in vivo にて評価を行った。

さらに、有用な配位子の一つであるDOTAは、PET核種である68Gaの他に、治療用核 種(β線放出核種)である90Y (半減期 64.1時間)とも安定な錯体を形成することが知られ ている(31)。そこで、第3章では、68Ga標識化合物によるPET診断と90Y標識化合物によ る治療をカップリングした包括的診断治療法の開発を目的に、[90Y]Y-DOTA-(L-Asp)11- c(RGDfK)を合成し、in vitro、in vivoにて評価を行った。

(9)

6

Figure 1. Concept of multifunctional radiopharmaceuticals

(10)

7

1

ソマトスタチン受容体高親和性ペプチドを用いた原発巣および 骨転移巣イメージング薬剤の開発に関する研究

1.1. 序論

神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor ; NET)は、肺、膵臓、および胃腸管を含む全身の神 経内分泌細胞によって引き起こされ得る(32, 33)。 NETは、従来まれな腫瘍と考えられてい るが、Yaoらは、1973年から2004年で年齢調整発生率が5倍に増加したことを報告してお り、関心が集められている(32)。ソマトスタチン受容体は、多くのNETで高度に発現されて いる(34)。現在、この受容体に対して高い親和性を有するペプチドである octreotide 誘導体 を放射標識した[111In]In-DTPA-octreotide (OctreoScan®)がソマトスタチン受容体陽性腫瘍の診 断薬として使用されている(35, 36)。また、68Gaを用いたPET用放射性ガリウム標識薬剤は、

[68Ga]Ga-DOTA-[Tyr3]-octreotide (SOMAKITTOC®)が2016年に欧州委員会によって、[68Ga]Ga- DOTA-[Tyr3]-octreotate (NETSPOT®)が2016年に米国食品医薬品局(FDA)によって承認された。

また、治療用放射性核種である177Luを用いた[177Lu]Lu-DOTA-[Tyr3]-octreotate (Lutathera®)が 2018年にFDAに、2017年に欧州医薬品庁によって、NETの治療薬として承認された。NET では、肝転移の頻度が最も高く、次いでリンパ節転移だが、骨転移も比較的高い頻度で起こ ることが報告されている(37)。癌の骨転移に起因する疼痛は、患者の QOL に大きな影響を 与える(11)。したがって、骨転移の早期発見も重要である。これまでに、著者らの研究室で は、複数の癌病巣部位の同時診断を目的として、複数の指向性輸送担体を同一分子内に導入 する薬剤設計を用いて、骨指向性輸送担体としてアスパラギン酸ペプチドを、癌指向性輸送 担体として RGD ペプチドを同一分子に導入した Ga 標識化合物[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)11-

c(RGDfK) (Figure 2A)の原発巣および骨転移巣イメージング薬剤としての有用性を示してき

た(29)。

(11)

8

本研究では、同様の薬剤設計を用いて、複数の癌病巣部位の同時診断を可能とする多機能 性放射性ガリウム標識薬剤の開発を目的として、癌指向性輸送担体としてソマトスタチン 受容体に高い親和性を持つことが知られている[Tyr3]-octreotate (TATE)を、骨指向性輸送担体 としてアスパラギン酸ペプチド[(L-Asp)n]を選択し、Ga-DOTAとこれらのキャリアを結合し た化合物Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11) (Figure 2B)を設計、合成し、in vitro、

in vivoにて評価を行った。尚、本研究では、68Ga (半減期67.6分)の代替核種として、半減期

が長く、取り扱いが容易な67Ga (半減期3.3日)を用いて基礎検討を行った。

Figure 2. Chemical structures of (A) [67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)11-c(RGDfK) and (B) Ga-DOTA-(L- Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)

(A)

(B)

(12)

9 1.2. 実験方法

1.2.1. 試薬・機器

エレクトロンスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)には JEOL JMS-T100TD (JEOL Ltd, Tokyo, Japan)を用いた。[67Ga]GaCl3は日本メジフィックス社(Tokyo, Japan)より供給を受けた。

[125I]NaIはパーキンエルマー(Waltham, MA, USA)より購入した。放射線測定装置オートウェ

ルガンマシステムはARC-7010B (日立ヘルスケア・マニュファクチャリング, Chiba, Japan)を 使用した。1,4,7,10-Tetraazacyclododecane-1,4,7-tris(t-butyl acetate)-10-acetic acid (DOTA-tris)は 東京化成工業(Tokyo, Japan)より購入した。Fmoc-Thr(tBu)-ol、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc- Cys(Trt)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-D-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Tyr(tBu)-OH、Fmoc-D-Phe-OH、 Fmoc-Asp(OtBu)-OHおよび2-chlorotrityl chloride resinは渡辺化学工業(Hiroshima, Japan)より 購入した。AR42J細胞はATCC (Manassas, VA, USA)より購入した。プロテインアッセイビシ ンコニン酸キットはナカライテスク(Kyoto, Japan)より購入した。その他の試薬はすべて特級 試薬を用いた。

1.2.2. 逆相HPLCによる分析と精製

逆相HPLCによる精製および分析は以下の条件を用いた。

(A) 5C18-AR-II (10×250 mm; ナカライテスク, Kyoto, Japan)を使用し、移動相には 0.1%の trifluoroacetic acid (TFA)を含有する水:メタノール60 : 40、流速4.0 mL/minの条件で行った。

(B) 5C18-AR-II (4.6×150 mm)を使用し、移動相には0.1%のTFAを含有する水:メタノール65 :

35から30分で50 : 50へ変換するグラディエント法にて流速1.0 mL/minの条件で行った。

(C) 5C18-AR-II (4.6×150 mm)を使用し、移動相には0.1%のTFAを含有する水:メタノール65 :

35から20分で55 : 45へ変換するグラディエント法にて流速1.0 mL/minの条件で行った。

(13)

10

1.2.3. DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11) (13-17)の合成 (Scheme 1) 1.2.3.1. 2-Chlorotrityl chloride resin (1)へのFmoc-Thr(tBu)-OHの導入(2)

Fmoc-Thr(tBu)-OH (159.0 mg, 0.4 mmol)をジクロロメタン(2.0 mL)に溶解し、この溶液と N, N-diisopropyletylamine (DIEA) (57.0 µL, 0.3 mmol)を順次、2-chlorotrityl chloride resin (62.5 mg, 0.1 mmol)の入った反応容器に加え、室温で1.5時間攪拌し、Fmoc-Thr(tBu)-OHを樹脂に 導入した。N, N-dimethylformamide (DMF)で洗浄した後、メタノール(1.5 mL)を加え室温で20 分攪拌し樹脂を不活性化し、DMF、次いでジクロロメタンで洗浄した。

1.2.3.2. 保護ペプチド鎖の延長

以下に示すNα-Fmoc基の脱保護と側鎖保護Nα-Fmoc-アミノ酸誘導体の縮合反応を繰り返 すことにより、保護ペプチド鎖を延長した。

Nα-Fmoc基の脱保護:

20% piperidine/DMFを加え、15分間室温で攪拌した。反応終了後、DMFで樹脂を洗浄し

た。

側鎖保護Nα-Fmoc-アミノ酸誘導体の縮合反応:

Nα-Fmoc 基を脱離した保護ペプチド樹脂(0.1 mmol)に側鎖保護 Nα-Fmoc-アミノ酸誘導体

(2.5 当 量)と 1-hydroxybenzotriazole (HOBt) (2.5 当 量)を 加 え 、DMF に 溶 解 し 、1,3- diisopropylcarbodiimide (DIPCDI) (2.5当量)を更に加え、室温で1.5時間攪拌した。DMFで洗 浄した後、樹脂を一部採取してKaiser testを行い、陰性を示すまで縮合反応を繰り返した。

なお、保護ペプチド樹脂に側鎖保護Nα-Fmoc-アミノ酸誘導体には、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc- Thr(tBu)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-D-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Tyr(tBu)-OH、Fmoc-D-Phe-OH、 Fmoc-Asp(OtBu)-OHを用いた。

(14)

11

1.2.3.3. 1,4,7,10-Tetraazacyclododecane-1,4,7-tris(t-butyl acetate) (Tris-DOTA)の結合 樹脂上で保護ペプチド鎖を構築した後、上述の方法と同様に、20% piperidine/DMF処理に よってNα-Fmoc基を脱離し、その後、DMF中でHOBt (2.5当量)とDIPCDI (2.5当量)の存在 下、Tris-DOTA (2当量)と2時間以上攪拌することによりTris-DOTAを結合させた。

1.2.3.4. DOTA結合ペプチド鎖の樹脂からの遊離と酸感受性側鎖保護基の脱離

Tris-DOTAを結合させた保護ペプチド樹脂(0.1 mmol) (3-7)にTFA (1880 µL)、水(50 µL)、 ethanedithiol (50 µL)、triisopropylsilane (20 µL)を順次加えた後、室温で2時間攪拌した。樹脂 をろ去した後、反応溶液を0 °Cにし、ジエチルエーテルを加え、粗生成物を析出させた後、

遠心し、上澄みを捨てる作業を2回繰り返した。わずかに残存したジエチルエーテルはN2

ガスで蒸発させた。これを真空乾燥することで、白色固体(8-12)を得た。得られた固体につ いて、精製を行わずに次の操作を行った。

1.2.3.5. 空気酸化によるジスルフィド結合の形成

脱保護後の白色固体(8-12)にペプチド濃度が2.5 mMになるように50% DMF/waterを加え、

その後、NH4HCO3を50 mMになるように加えて、反応溶液に十分に空気が混ざるように室

温で1週間攪拌を行った。反応後、逆相HPLCにて精製することにより、DOTA-Dn-TATE (n

= 0, 2, 5, 8, or 11) (13-17)を白色粉末として得られた。逆相HPLCの精製はHPLC条件(A)で 行った。

DOTA-TATE: ESI-MS (m/z calcd for C65H91N14O19S2 ([M + H]+): 1436 found 1436), 収率: 7.0%

DOTA-(L-Asp)2-TATE: ESI-MS (m/z calcd for C73H101N16O25S2 ([M + H]+): 1666 found 1666), 収 率: 15.3%

DOTA-(L-Asp)5-TATE: ESI-MS (m/z calcd for C85H116N19O34S2 ([M + H]+): 2011 found 2011), 収 率: 7.9%

(15)

12

DOTA-(L-Asp)8-TATE: ESI-MS (m/z calcd for C97H131N22O43S2 ([M + H]+): 2357 found 2357), 収 率: 11.7%

DOTA-(L-Asp)11-TATE: ESI-MS (m/z calcd for C109H146N25O52S2 ([M + H]+): 2702 found 2702), 収 率: 8.5%

1.2.4. 非放射性Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)の合成

Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)の合成は、以前に報告した方法をわずかに変 更して行った(19)。DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11) (1 当量)を水(50 µL)に溶解させ た後、Ga(NO3)3 (3 当量)を加え、40 °Cで2時間反応させ、逆相HPLCにより分析、精製を 行った。逆相HPLCによる分析、精製はHPLC条件(B)で行った。

Ga-DOTA-TATE: ESI-MS (m/z calcd for C65H88GaN14O19S2 ([M]+): 1502 found 1502), 収率: 66.5%

保持時間 15.4 分

Ga-DOTA-(L-Asp)2-TATE: ESI-MS (m/z calcd for C73H98GaN16O25S2 ([M]+): 1732 found 1732), 収 率: 76.9% 保持時間 16.7 分

Ga-DOTA-(L-Asp)5-TATE: ESI-MS (m/z calcd for C85H113GaN19O34S2 ([M]+): 2077 found 2077), 収 率: 48.1% 保持時間 16.9 分

Ga-DOTA-(L-Asp)8-TATE: ESI-MS (m/z calcd for C97H128GaN22O43S2 ([M]+): 2423 found 2423), 収 率: 41.3% 保持時間 17.0 分

Ga-DOTA-(L-Asp)11-TATE: ESI-MS (m/z calcd for C109H143GaN25O52S2 ([M]+): 2768 found 2768), 収率: 39.0% 保持時間 17.3 分

(16)

13

1.2.5. DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)の67Ga標識(18-22)

DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11) (40 μg)を0.2 M 酢酸ナトリウム緩衝液 pH 5.0 (75 μL) に溶解させた後、[67Ga]GaCl3 (1.85 MBq/25 μL) を加え、80 °Cで15分間加熱した。分 析、精製は逆相HPLCにより行った。逆相HPLCによる分析、精製はHPLC条件(B)で行っ た。

[67Ga]Ga-DOTA-TATE: 放射化学的収率: 99.0 % 保持時間 15.4 分

[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)2-TATE: 放射化学的収率: 93.3 % 保持時間 16.9 分 [67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)5-TATE: 放射化学的収率: 86.1 % 保持時間 17.0 分 [67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)8-TATE: 放射化学的収率: 84.8 % 保持時間 17.1 分 [67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)11-TATE: 放射化学的収率: 74.5 % 保持時間 17.2 分

1.2.6. In vitroでの安定性実験

[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)の緩衝液中での安定性を評価するため、

[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11) (100 μL)を0.1 Mphosphate buffered saline (PBS) (pH 7.4, 400 μL)に混合させて、37°Cでインキュベートした。その後、経時的(1、3、6、 24時間後)に逆相HPLCによる分析を行った。逆相HPLCによる分析はHPLC条件(C)で行 った。

1.2.7. ハイドロキシアパタイトとの親和性の評価

ハイドロキシアパタイトとの結合実験は、過去に報告された方法(19, 29)をわずかに変更 して行った。ハイドロキシアパタイト(Bio-Gel; Bio-Rad, Hercules, CA, USA)を2.5 mg/mL、 10 mg/mL、25 mg/mLの濃度でtris(hydroxymethyl)aminomethane (Tris)/HCl-buffered saline (150 mM NaCl, 50 mM Tris-HCl, pH7.4)に懸濁させ、200 μLの懸濁液に200 μLの[67Ga]Ga-DOTA- (L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)をリガンド濃度が19.5 µMになるように加え、1時間振と

(17)

14

うした後、10,000gで5分間遠心し、上清の放射能を測定し、以下の式によりハイドロキシ アパタイトに結合している放射能の割合を求めた。また、ハイドロキシアパタイトを加え ずに同様の実験を行い、コントロールとした。

ハイドロキシアパタイトへの結合率 (%) = (1-[サンプルの上清の放射能/コントロールの上 清の放射能]) × 100

1.2.8. AR42J細胞を用いた細胞取り込み実験

[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)の細胞取り込み実験は、過去に報告され た方法(38)をわずかに変更して行った。6ウェルプレートにAR42J 細胞を10% Fetal bovine serum (FBS)入りDulbecco's Modified Eagle Medium (DMEM)を用いて、5 × 105 cells/wellにな るように播種し、CO2 5%条件下において、24時間37°Cで培養を行った。培養後、メディウ ムを取り除き、PBS (1 mL)で洗浄後、0.1% FBS入りDMEMを1.5 mL/well加えて1時間37°C で培養を行った。1時間後、培養メディウムを取り除き、[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)を18.5 kBq/wellになるように調整した0.1% FBS入りDMEMを用いて、30、

60、120、240分間インキュベートした。インキュベート後、細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、

1 M水酸化ナトリウム水溶液を500 µL加え、細胞を溶解させて回収し、再度1 M水酸化ナ トリウム水溶液を500 µL加えて洗い込みを行い、放射能を測定した。その後、細胞に含ま れるタンパクをプロテインアッセイビシンコニン酸キット(ナカライテスク, Kyoto, Japan)で 定量し、取り込み量の補正を行った。

1.2.9. AR42J細胞を用いたソマトスタチン受容体との親和性の評価

[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)のソマトスタチン受容体との親和性の 評価は、過去に報告された方法(39)をわずかに変更して行った。放射性リガンドとして、

クロラミンT法によって125I標識を行い逆相HPLCで精製を行った[125I][I-Tyr3]-octreotide

(18)

15

を、非放射性リガンドとして、30 µM - 3 pMに調整したGa-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)を用いた。1.5 mLの遠心チューブにAR42J細胞を0.25% bovine serum albumin (BSA)入りDMEM 50µLを用いて、1 × 106 cells/tubeになるように加え、次いで、放射性リ ガンド(1.85 kBq/50 µL)および非放射性リガンド(30 µM - 3 pM/50 µL)を加えて室温で1時間 振とうを行った後、3,300gで30秒間遠心し、上清を取り除いた。その後、氷上で、0.25%

BSA入りDMEM 100µLを用いて、再懸濁させた後に遠心し、上清を取り除いた。この操

作を3回繰り返した後の細胞の放射能を測定した。Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11) のIC50は、GraphPad Prism 5.03 (GraphPad Software Inc., San Diego, CA, USA)を用いて 算出した。

1.2.10. 癌移植モデルマウスにおける体内放射能分布実験

[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)の癌移植モデルマウスにおける体内放 射能分布を調べるため、以下の方法で動物実験を行った。AR42J細胞を10% FBS入り DMEMでCO2 5%条件下において培養し、PBSを用いて5 × 106 cells/100 µLになるように 調整をした細胞をヌードマウス(BALB/c雌性、4週齢、体重12-17 g、日本SLC,

Hamamatsu, Japan)の右肩皮下へ移植した。移植14日後に[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11) (37 kBq/100 μL)を尾静脈投与した。投与後1時間で屠殺、臓器を摘出し、そ れぞれの重量と放射能を測定した。

(19)

16

Scheme 1. Syntheses of [67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)

Reagents:(a) Fmoc-Thr(tBu)-OH, N,N-diisopropylethylamine (b) (i) 20% piperidine (ii) Fmoc-amino acid-OH or 1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7-tris(t-butyl acetate), HOBt, DIPCDI (c) TFA (d) 50% DMF/H2O, NH4HCO3 (e) [67Ga]GaCl3

(20)

17 1.3. 実験結果

1.3.1. DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)の67Ga標識

標識前駆体はそれぞれScheme 1に示す方法で合成した。67Ga標識の結果、[67Ga]Ga-DOTA- (L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)を放射化学的収率99.0%、93.3%、86.1%、84.8%、74.5%で 得ることができ、逆相 HPLC による精製後の放射化学的純度はいずれも 96.0%以上であっ た。

非 放 射 性 Ga-DOTA-(L-Asp)11-TATE と[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)11-TATE を そ れ ぞ れ 逆 相 HPLC で分析した結果、非放射性 Ga-DOTA-(L-Asp)11-TATE と、それに対応する放射性 [67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)11-TATEは同じ保持時間に溶出された(Figure 3)。

Figure 3. Reversed-phase (RP)-HPLC chromatograms of

(A) Ga-DOTA-(L-Asp)11-TATE and (B) [67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)11-TATE after purification.

Conditions: A flow rate of 1 mL/min with gradient mobile phase of 35% methanol in water with 0.1%

TFA to 50% methanol in water with 0.1% TFA.

(A) (B)

(21)

18 1.3.2. In vitroでの安定性実験

[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)の緩衝液での安定性試験の結果をFigure 4に示す。緩衝溶液中では、インキュベート24時間後において[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)はそれぞれ、90.5 ± 0.2%、91.9 ± 0.3%、92.9 ± 0.1%、89.7 ± 0.3%、88.3 ± 0.7%

が未変化体として観察された。

Figure 4. Stability of [67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11) in buffered-solution. Data are expressed as the mean ± SD for three or four samples.

(22)

19

1.3.3. ハイドロキシアパタイトとの親和性の評価

[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)のハイドロキシアパタイトとの結合実験

の結果をFigure 5に示す。[67Ga]Ga-DOTA-TATEは、ハイドロキシアパタイトへの結合を示

さなかったのに対し、アスパラギン酸ペプチドを導入した[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE

(n = 2, 5, 8, or 11)は、アスパラギン酸の鎖長に増加に依存してハイドロキシアパタイトへの

結合率が上昇した。

Figure 5. Hydroxyapatite binding of [67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11). Data are expressed as the mean ± SD for four samples.

(23)

20

1.3.4. AR42J細胞を用いた細胞取り込み実験

[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)のAR42J細胞への取り込み実験の結果 をTable 1に示す。[67Ga]Ga-DOTA-TATEは、AR42J細胞への高い取り込みが示されたが、

アスパラギン酸ペプチドを導入した[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 2, 5, 8, or 11)では、

[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)2-TATE がわずかに AR42J 細胞に取り込まれただけで、[67Ga]Ga-

DOTA-TATEと比べて取り込みが低い結果となった。

Table 1. Comparison of the cellular uptake of [67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11) into AR42J cells.

Time point

Radiopeptide 0.5 h 1 h 2 h 4 h

[67Ga]Ga-DOTA-TATE

169.41 (2.54)

228.88 (13.63)

287.34 (8.44)

327.38 (7.34)

[67Ga]Ga-DOTA -(L-Asp)2-TATE

4.71 (0.25)

6.03 (0.27)

8.35 (0.52)

14.12 (0.67)

[67Ga]Ga-DOTA -(L-Asp)5-TATE

0.44 (0.03)

0.48 (0.03)

0.62 (0.14)

0.78 (0.02)

[67Ga]Ga-DOTA -(L-Asp)8-TATE

0.36 (0.08)

0.46 (0.06)

0.60 (0.04)

0.76 (0.04)

[67Ga]Ga-DOTA -(L-Asp)11-TATE

0.27 (0.03)

0.26 (0.02)

0.44 (0.01)

0.47 (0.04)

Expressed as % dose per milligram protein. Data are expressed as the mean (SD) for three or four samples.

(24)

21

1.3.5. AR42J細胞を用いたソマトスタチン受容体との親和性の評価

AR42J細胞を用いたソマトスタチン受容体との親和性実験の結果をFigure 6に示す。Ga-

DOTA-TATEのIC50値が8.4 nMであったのに対して、アスパラギン酸ペプチドを導入した

Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 2, 5, 8, or 11)では、それぞれ42.7 nM、44.3 nM、59.4 nMおよび

353.1 nMとなり、親和性が低下する結果を示した。

Figure 6. Displacement curves of competition binding assay to the somatostatin receptor in AR42J cells of [125I][I-Tyr3]-octreotide with Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11).

(25)

22

1.3.6. 癌移植モデルマウスにおける体内放射能分布実験

[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11)の担癌マウスにおける体内放射能分布 実験の結果をTable 2に示す。[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)11-TATEの骨への集積は、[67Ga]Ga- DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, or 8)と比べて有意に高かった。一方、[67Ga]Ga-DOTA- TATEは腫瘍へ高い集積を示したが、[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 2, 5, 8, or 11)の腫瘍 への集積は、[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)2-TATEがわずかに集積しただけで、[67Ga]Ga-DOTA- TATEよりも低値を示した。また、[67Ga]Ga-DOTA-TATEは、腫瘍の他に、胃と肺、膵臓へ の集積が高く、[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 5, 8, or 11)は、投与後1時間で骨と腎臓 以外の組織ではほとんど集積していなかった。

(26)

23

Table 2. Biodistribution of radioactivity at 1 h after intravenous administration of [67Ga]Ga-DOTA- (L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, 8, or 11) in AR42J tumor bearing micea.

Tissue [

67Ga]Ga-DOTA- TATE

[67Ga]Ga-DOTA- (L-Asp)2-TATE

[67Ga]Ga-DOTA- (L-Asp)5-TATE

[67Ga]Ga-DOTA- (L-Asp)8-TATE

[67Ga]Ga-DOTA- (L-Asp)11-TATE

Blood 0.51

(0.23)

0.23 (0.07)

0.22 (0.03)

0.33 (0.09)

0.34 (0.07)

Liver 0.87

(0.24)

0.13 (0.02)

0.17 (0.03)

0.21 (0.03)

0.20 (0.03)

Kidney 5.07

(0.43)

7.51 (3.70)

14.09 (5.72)

10.51 (2.18)

12.69 (1.43) Small-intestine 4.23

(0.25)

0.39 (0.05)

1.67 (0.76)

0.82 (0.32)

1.38 (0.82) Large-intestine 3.67

(0.56)

0.18 (0.03)

0.28 (0.05)

0.12 (0.04)

0.30 (0.18)

Spleen 1.34

(0.52)

0.14 (0.00)

0.11 (0.01)

0.13 (0.03)

0.18 (0.04)

Pancreas 34.70

(4.74)

0.37 (0.05)

0.16 (0.04)

0.21 (0.07)

0.29 (0.16)

Lung 11.34

(5.05)

0.54 (0.10)

0.28 (0.02)

0.33 (0.10)

0.35 (0.07)

Heart 0.63

(0.16)

0.08 (0.03)

0.08 (0.01)

0.09 (0.02)

0.14 (0.03)

Stomach 4.21

(0.65)

0.21 (0.13)

0.35 (0.15)

0.09 (0.07)

0.08 (0.04)

Bone 1.93

(0.90)

0.23 (0.07)

0.55 (0.13)

2.25 (0.19)

7.83 (1.20)

Muscle 0.07

(0.03)

0.06 (0.03)

0.05 (0.02)

0.06 (0.01)

0.09 (0.03)

Brain 0.03

(0.01)

0.01 (0.00)

0.01 (0.00)

0.02 (0.00)

0.02 (0.00)

Tumor 21.62

(4.09)

2.44 (1.14)

0.41 (0.10)

0.55 (0.05)

0.39 (0.07)

a Expressed as % injected dose per gram. Each value represents the mean (SD) for three or four animals. Expressed as % injected dose.

(27)

24 1.4. 考察

本研究では、複数の癌病巣部位の同時診断を可能とする多機能性放射性ガリウム標識薬 剤の開発を目的として、癌指向性輸送担体としてソマトスタチン受容体に高い親和性を持 つことが知られている[Tyr3]-octreotate (TATE)と、放射性ガリウムと安定な錯体形成を行う

DOTAを用いたGa-DOTA複合体部位の間に、骨指向性輸送担体としてアスパラギン酸ペ

プチドリンカーを導入した(Figure 2B)。いくつかの修飾を有するオクトレオチド類似体が 評価されている中で、Reubiらは、Ga-DOTA-[Tyr3]-octreotideのC末端のThr(ol)をThrに置 換したGa-DOTA-[Tyr3]-octreotateがソマトスタチン受容体2に対して、Ga-DOTA-[Tyr3]-

octreotideよりも10倍高い親和性を有することを報告した(40)。これは、オクトレオチド類

似体のC末端が受容体の親和性にとって重要であることを意味している。実際に、薬物動 態を改善するためのほとんどの研究では、アミノ酸や糖、ポリエチレングリコール、また はカテプシンB切断性リンカーのような異なるタイプのリンカーをオクトレオチド類似体 のN末端に導入していた(38, 41-43)。従って、本研究でも、アスパラギン酸ペプチドをC 末端ではなくN末端に導入することにした。

In vitroにおけるハイドロキシアパタイトとの結合親和性実験の結果、およびin vivoにお

ける担癌マウスを用いた体内放射能分布実験の結果から、アスパラギン酸ペプチドの導入 は、骨への指向性を増加させた(Figure 5およびTable 2)。これまでに、アスパラギン酸ペプ チドが骨への輸送担体となりうること、また、放射性金属錯体結合アスパラギン酸ペプチド について、アスパラギン酸の残基数が増加するにつれてハイドロキシアパタイトへの結合 が増加することを示してきた(19, 29)。今回の実験結果より、ソマトスタチン誘導体を導入 しても同様の結果が得られることが示された。特に、[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)11-TATE は、

[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATE (n = 0, 2, 5, or 8)と比較して、ハイドロキシアパタイトへの高 い親和性と体内放射能分布実験において骨への高い集積を示した。

しかしながら、予想とは反して、アスパラギン酸ペプチドの導入は、ソマトスタチン受容

(28)

25

体への指向性を阻害する結果となった。AR42J ソマトスタチン受容体陽性細胞を用いた in

vitroにおける細胞取り込み、ソマトスタチン受容体への親和性、およびin vivoにおける腫

瘍への集積は劇的に減少した(Table 1, 2 および Figure 6)。Oshima らは、配位子である diethylenetriaminepentaacetic acid (DTPA)とソマトスタチン類似体の間に1つのアスパラギン 酸を導入した111In標識オクトレオチド類似体は、アスパラギン酸を含まない111In標識オク トレオチド類似体と同等の細胞取り込みを示したことを報告している(38)。今回合成した

[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATEにおいては、アスパラギン酸ペプチドの導入は受容体への親

和性を低下させ、アスパラギン酸を 2 つ導入した[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)2-TATE でさえ、

[67Ga]Ga-DOTA-TATEよりも、AR42J細胞への取り込みが大幅に減少した。また、膵臓はソ

マトスタチン受容体が高度に発現し、放射性標識ソマトスタチン誘導体が集積することが 知られているが(44, 45)、アスパラギン酸ペプチドリンカーの導入は、腫瘍だけでなく膵臓 においても集積が低下した(Table 2)。

In vitroおよびin vivoの実験結果から、腫瘍およびソマトスタチン受容体発現組織への取

り込みに影響を及ぼす 1 つの因子が分子の電荷であることが推測された。全体の電荷が-1 である111In標識ソマトスタチン誘導体は、中性電荷の111In標識ソマトスタチン誘導体と比 較して類似した腫瘍集積を示したことが報告されている(46)。一方、負電荷を与えうるグル タミン酸類似体を2つまたは3つ導入した99mTc標識ボンベシン類似体の腫瘍細胞への内在 化は、グルタミン酸類似体を 1 つ導入した放射性リガンドの内在化よりも低値を示すこと が報告されている(47)。また、Parry らは、負電荷を与えうるグルタミン酸を 2 つ導入した

64Cu 標識ボンベシン類似体は、グルタミン酸を 1 つ導入した放射性リガンドと比較してガ ストリン放出ペプチド受容体に対しての親和性が大きく低下し、それらの内在化も低値を 示すことを報告している(48)。本研究で合成した化合物[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n-TATEは、負 電荷を与えうるアスパラギン酸配列を含んでいる。したがって、ボンベシン類似体のように、

負荷電がソマトスタチン受容体発現細胞への取り込みに影響しうることが考えられる。一

(29)

26

方、Yimらは、電荷を変化させることなく2つのTATEモチーフの間に長さが9〜57原子の 異なるスペーサーを含むソマトスタチン類似体を報告した(49)。これらのソマトスタチン類 似体の間では、ソマトスタチン受容体に対する親和性はほとんど変化がなく、長いスペーサ ーを有するソマトスタチン類似体の内部移行速度が、短いスペーサーを有するソマトスタ チン類似体と比較してわずかに減少しただけであった。この結果から、分子サイズではなく、

スペーサーの負電荷がソマトスタチン受容体に対する親和性を減少させることが示唆され た。

以上より、in vitroおよびin vivoの実験結果から、Ga-DOTAとアスパラギン酸ペプチドと ソマトスタチン類似体とを単純に組み合わせただけでは、ソマトスタチン受容体との親和 性が大きく低下するため、ソマトスタチン受容体と骨転移部位を同時に検出することがで きないと考えられる。本研究結果および過去の報告から、−1 の負電荷を有する放射性標識 ソマトスタチン類似体はソマトスタチン受容体発現細胞への取り込みを変化させないが、

−2 以上の負電荷の導入はソマトスタチン受容体を含むいくつかの受容体に対する親和性に 影響を及ぼす可能性があることを見出した。したがって、正電荷を導入することによって全 体の電荷を調整するなどの化学修飾のさらなる研究が必要であると考えられた。

(30)

27

2

D

-アスパラギン酸ペプチドを骨指向性輸送担体とした

骨イメージング薬剤の開発に関する研究

2.1. 序論

著者の研究室では、これまでに、骨に高親和性を示すことが知られている酸性アミノ酸 ペプチドであるアスパラギン酸ペプチド[(L-Asp)n]を骨指向性輸送担体とし、Gaとのキレー ト部位にDOTAを選択して、Ga-DOTA錯体とアスパラギン酸ペプチドとを結合した化合物 [67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)n (n = 0, 2, 5, 8, 11, or 14)の評価を行い、有用性を示してきた(19)。こ の研究で用いられているアスパラギン酸ペプチドは全て L 体である。一方、D-アミノ酸か らなるペプチドは、ペプチダーゼによって認識されにくいため、L-アミノ酸からなるペプチ

ドよりもin vivoでより安定となりうる(50)。そこで、本研究では、D-アスパラギン酸ペプチ

ド[(D-Asp)n]が、これまで評価を行ってきたL-アスパラギン酸ペプチドと同様に骨指向性輸

送担体として有用であるかを評価することを目的に、Ga-DOTAとD-アスパラギン酸ペプチ ドを結合した化合物Ga-DOTA-(D-Asp)n (n = 2, 5, 8, 11, or 14) (Figure 7)を設計、合成し、in

vitro、in vivoにて評価を行った。また、酸性アミノ酸ペプチドとしてD-グルタミン酸ペプチ

ドを用いることで、D-アスパラギン酸ペプチドと薬物動態に差が見られるのかについても 評価を行った。

(31)

28

Figure 7. Chemical structures of Ga-DOTA-(D-Asp)n (n = 2, 5, 8, 11, or 14)

(32)

29 2.2. 実験方法

2.2.1. 試薬・機器

Fmoc-D-Asp(OtBu)-OH、Fmoc-D-Asp(OtBu)-Wang resinはMerck KGaA (Darmstadt, Germany) から購入した。Fmoc-D-Glu(OtBu)は東京化成工業(Tokyo, Japan)より購入した。マトリックス 支援レーザーイオン化飛行時間質量分析(MALDI-TOF-MS)には ABI 4800 plus (AB SCIEX,

Foster, CA)を用いた。薄層クロマトグラフィー(TLC)はシリカゲルプレートArt 5553 (Merck,

Barmstadt, Germany)を用いて、展開溶媒としてアセトンを用いた。[99mTc]TcO4は日本メジフ ィックス社(Tokyo, Japan)より供給を受けた 99Mo/99mTc ジェネレータから生理食塩水で溶出 した溶液を使用した。Methylenediphosphonic acid (MDP)は、富士フイルム和光純薬(Osaka,

Japan)より購入した。その他の本章で使用する試薬、機器は第1章と同様の試薬、機器を用

いた。

2.2.2. 逆相HPLCによる精製と分析

逆相HPLCによる精製および分析は以下の条件を用いた。

(A) Hydrosphere C18 column (10×150 mm; YMC, Kyoto, Japan)を使用し、移動相には0.1%の TFAを含有する水:メタノール100 : 0、流速4.0 mL/minの条件で行った。

(B) Hydrosphere C18 column (4.6×250 mm)を使用し、移動相には0.1%のTFAを含有する水:メ タノール100 : 0、流速1.0 mL/minの条件で行った。

(C) 5C18-AR-300 (10×150 mm)を使用し、移動相には 0.1%の TFA を含有する水:メタノール

100 : 0から20分で80 : 20へ変換するグラディエント法にて流速4.0 mL/minの条件で行っ

た。

(D) 5C18-AR-300 (4.6×150 mm)を使用し、移動相には0.1%のTFAを含有する水:メタノール

100 : 0から20分で80 : 20へ変換するグラディエント法にて流速1.0 mL/minの条件で行っ

た。

(33)

30

(E) 5C18-AR-II (10×250 mm)を使用し、移動相には0.1%のTFAを含有する水:メタノール85 :

15から20分で65 : 35へ変換するグラディエント法にて流速4.0 mL/minの条件で行った。

(F) 5C18-AR-II (4.6×150 mm)を使用し、移動相には0.1%のTFAを含有する水:メタノール85 :

15から20分で65 : 35へ変換するグラディエント法にて流速1.0 mL/minの条件で行った。

2.2.3. DOTA-(D-Asp)n (n = 2, 5, 8, 11, or 14) (28-32)、およびDOTA-(D-Glu)14 (40)の合成 (Scheme 2,3)

2.2.3.1. 2-Chorotrityl chloride resin(1)へのFmoc-D-Glu(OtBu)-OHの導入 第1章と同様の方法でFmoc-D-Glu(OtBu)-OHを樹脂に導入した。

2.2.3.2. 保護ペプチド鎖の延長

第1章と同様の方法で Nα-Fmoc 基の脱保護と側鎖保護 Fmoc-D-Asp(OtBu)-OH、Fmoc-D-

Glu(OtBu)-OHの縮合反応を繰り返すことにより、保護ペプチド鎖を延長した。

2.2.3.3. Tris-DOTAの結合

第1章と同様の方法でTris-DOTAを結合させた。

2.2.3.4. DOTA結合ペプチド鎖の樹脂からの遊離と酸感受性側鎖保護基の脱離

Tris-DOTA の 結 合 し た 保 護 ペ プ チ ド 樹 脂(0.1 mmol) (23-27, 39)に TFA (9.5 mL)、 triisopropylsilane (0.25 mL)、水(0.25 mL)を順次加えた後、室温で2時間攪拌した。樹脂をろ 去した後、反応溶液を0°Cにし、ジエチルエーテルを加え、粗生成物を析出させた後、遠心 し、上澄みを捨てる作業を2回繰り返した。わずかに残存したジエチルエーテルはN2ガス で蒸発させた。これを真空乾燥することで、白色固体を得た。その後、水に再溶解させ、逆 相HPLCにて精製することにより、DOTA-(D-Asp)n (n = 2, 5, 8, 11, or 14) (28-32)、DOTA-(D-

(34)

31

Glu)14 (40)を白色結晶として得た。逆相HPLC の精製は DOTA-(D-Asp)2が HPLC 条件(A)、 DOTA-(D-Asp)n (n = 5, 8, 11, or 14)がHPLC条件(C)、DOTA-(D-Glu)14がHPLC条件(E)で行っ た。

DOTA-(D-Asp)2: ESI-MS (m/z calcd for C18H38N6O14 ([M + H] +): 635.3 found 635.3, 収率30.4%

DOTA-(D-Asp)5: ESI-MS (m/z calcd for C32H53N9O23 ([M + H] +): 980.3 found 980.3, 収率39.8%

DOTA-(D-Asp)8: ESI-MS (m/z calcd for C46H68N12O32 ([M + H]+): 1325.4 found 1325.4, 収率11.7%

DOTA-(D-Asp)11: ESI-MS (m/z calcd for C60H83N15O41 ([M + H]+): 1670.5 found 1670.5, 収率12.1%

DOTA-(D-Asp)14: MALDI-TOF-MS (m/z calcd for C74H98N18O50 ([M + H]+): 2015.6 found 2015.3, 収率13.6%

DOTA-(D-Glu)14: ESI-MS (m/z calcd for C86H127N18O50 ([M + H]+): 2211.8 found 2211.8, 収率2.1%

2.2.4. 非放射性Ga-DOTA-(D-Asp)n (n = 2, 5, 8, 11, or 14)、およびGa-DOTA-(D-Glu)14の 合成

第1章と同様の方法でGa-DOTA-(D-Asp)n ((n = 2, 5, 8, 11, or 14)、およびGa-DOTA-(D-Glu)14

の合成を行った。逆相HPLCによる分析はGa-DOTA-(D-Asp)2がHPLC条件(B)、Ga-DOTA- (D-Asp)n (n = 5, 8, 11, or 14) がHPLC条件(D)、Ga-DOTA-(D-Glu)14がHPLC条件(F)で行った。

Ga-DOTA-(D-Asp)2: ESI-MS (m/z calcd for C18H35N6O14Ga ([M]+): 701.2 found 701.3, 保持時間 2.9分

Ga-DOTA-(D-Asp)5: ESI-MS (m/z calcd for C32H50N9O23Ga ([M]+): 1046.2 found 1046.3,

(35)

32 保持時間 5.0分

Ga-DOTA-(D-Asp)8: ESI-MS (m/z calcd for C46H65N12O32Ga ([M]+): 1391.3 found 1391.3, 保持時間 7.7分

Ga-DOTA-(D-Asp)11: ESI-MS (m/z calcd for C60H80N15O41Ga ([M]+): 1736.4 found 1736.4, 保持時間 10.1分

Ga-DOTA-(D-Asp)14: MALDI-TOF-MS (m/z calcd for C74H95N18O50Ga ([M]+): 2081.5 found 2081.4, 保持時間 12.3分

Ga-DOTA-(D-Glu)14: ESI-MS (m/z calcd for C86H124N18O50Ga ([M]+): 2277.7 found 2277.7, 保持時間 11.8分

2.2.5. DOTA-(D-Asp)n (n = 2, 5, 8, 11, or 14)、およびDOTA-(D-Glu)1467Ga標識 (33-37, 41)

DOTA-(D-Asp)n (n = 2, 5, 8, 11, or 14)、DOTA-(D-Glu)14 (50 μg) を0.2 M 酢酸アンモニウム 緩衝液 pH 5.0 (75 μL) に溶解させた後、[67Ga]GaCl3 (1.85 MBq/25 μL) を加え、80 °Cで8分 間加熱した。分析、精製は逆相HPLCにより行った。逆相HPLCによる分析はGa-DOTA-(D- Asp)2がHPLC条件(B)、Ga-DOTA-(D-Asp)n (n = 5, 8, 11, or 14) がHPLC条件(D)、Ga-DOTA- (D-Glu)14がHPLC条件(F)で行った。

[67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)2: 放射化学的収率14.9% 保持時間 3.1分 [67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)5: 放射化学的収率38.5% 保持時間 5.2分 [67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)8: 放射化学的収率38.2% 保持時間 7.7分 [67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)11: 放射化学的収率75.9% 保持時間 10.4分 [67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)14:放射化学的収率53.6% 保持時間 12.4分 [67Ga]Ga-DOTA-(D-Glu)14: 放射化学的収率67.7% 保持時間 11.7分

(36)

33 2.2.6. [99mTc]Tc-MDPの作製

MDP (3.75 mg)、塩化すず(II)無水物(0.19 mg)およびアスコルビン酸(0.085 mg)を0.1 M HCl に溶解し、pHを0.1 M NaOH aqおよび1 M NaOH aqで約5.0に調整し、900 µLの[99mTc]TcO4

溶液(432.9 MBq)を加え、室温で5分間静置することで[99mTc]Tc-MDPを得た。放射化学的純 度について TLC を用いて測定した結果、[99mTc]Tc-MDP を精製することなく放射化学的純

度95.0%以上で得た。

2.2.7. ハイドロキシアパタイトとの親和性の評価

ハイドロキシアパタイトとの結合実験は第1章と同様の方法で行った。

2.2.8. 正常マウスにおける体内放射能分布実験

[67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)n (n = 2, 5, 8, 11, or 14)、[67Ga]Ga-DOTA-(D-Glu)14および[99mTc]Tc- MDPのノーマルマウスにおける体内放射能分布を調べるため、以下の方法で動物実験を行 った。それぞれのトレーサーをノーマルマウス(ddY雄性、6週齢、体重27-32 g、日本SLC) に(37 kBq/100 μL)尾静脈投与した。投与後10分、1、3時間にマウス(n = 4 or 5)を屠殺、組織 を採取し、それぞれの重量と放射能を測定した。

2.2.9. 尿分析

[67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)14 および同様の方法で 67Ga 標識を行い逆相 HPLC で精製した [67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)14 (370 kBq/200 μL)を尾静脈投与によりマウスに投与して、1時間後 の尿をマウス膀胱から採取し、検体を限外ろ過(Microcon-30)後、逆相HPLCにより分析を行 った。逆相HPLCによる分析はHPLC条件(D)で行った。

(37)

34 2.2.10. 検定

[67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)14 および[67Ga]Ga-DOTA-(L-Asp)14による尿の代謝物の有意差検定 はStudent’s t testにより行った。

[67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)14 および[67Ga]Ga-DOTA-(D-Glu)14 による主要臓器への集積の有意 差検定はStudent’s t testにより行った。

Student’s t testにおいてはP = 0.05未満を有意差ありとした。

(38)

35

Scheme 2. Syntheses of [67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)n (n = 2, 5, 8, 11, or 14)

Reagents:(a) (i) 20% piperidine (ii) Fmoc-D-Asp(OtBu)-OH or 1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7- tris(t-butyl acetate), HOBt, DIPCDI (b) TFA (c) 0.2 M ammonium acetate buffer pH 5.0, [67Ga]GaCl3

Scheme 3. Synthesis of [67Ga]Ga-DOTA-(D-Glu)14

Reagents:(a) Fmoc-D-Glu(OtBu)-OH, N,N-diisopropylethylamine (b) (i) 20% piperidine (ii) Fmoc-D- Glu(OtBu)-OH or 1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7-tris(t-butyl acetate), HOBt, DIPCDI (c) TFA (d) 0.2 M ammonium acetate buffer pH 5.0, [67Ga]GaCl3

(39)

36 2.3. 実験結果

2.3.1. DOTA-(D-Asp)n (n = 2, 5, 8, 11, or 14)、およびDOTA-(D-Glu)1467Ga標識

前駆体はそれぞれScheme 2, 3に示す方法で合成した。67Ga標識の結果、[67Ga]Ga-DOTA- (D-Asp)n (n = 2, 5, 8, 11, or 14)、および[67Ga]Ga-DOTA-(D-Glu)14を放射化学的収率38.5%、

38.2%、75.9%、53.6%、67.7%で得ることができ、逆相HPLCによる精製後の放射化学的純

度はいずれも95.0%以上であった。

非放射性Ga-DOTA-(D-Glu)14と[67Ga]Ga-DOTA-(D-Glu)14をそれぞれ逆相HPLCで分析した 結果、非放射性Ga-DOTA-(D-Glu)14と、それに対応する放射性[67Ga]Ga-DOTA-(D-Glu)14はほ ぼ同じ保持時間に溶出された(Figure 8)。

Figure 8. RP-HPLC chromatograms of

(A) Ga-DOTA-(D-Glu)14 and (B) [67Ga]Ga-DOTA-(D-Glu)14 after purification. Conditions: A flow rate of 1 mL/min with gradient mobile phase of 15% methanol in water with 0.1% TFA to 35%

methanol in water with 0.1% TFA.

(A) (B)

(40)

37

2.3.2. ハイドロキシアパタイトとの親和性の評価

[67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)n (n = 2, 5, 8, 11, or 14)および[67Ga]Ga-DOTA-(D-Glu)nのハイドロキ シアパタイト結合実験の結果をFigure 9に示す。[67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)n (n = 2, 5, 8, 11, or 14)のハイドロキシアパタイトへの結合率はアスパラギン酸の残基数が増加するにつれて上 昇した。また、[67Ga]Ga-DOTA-(D-Glu)14のハイドロキシアパタイトへの結合率は67Ga-DOTA- (D-Asp)14と同程度の集積を示した。

Figure 9. Hydroxyapatite binding of 67Ga-labeled compounds. Data are expressed as the mean ± SD for four experiments.

(41)

38

2.3.3. 正常マウスにおける体内放射能分布実験

[67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)n (n = 2, 5, 8, 11, or 14)、[67Ga]Ga-DOTA-(D-Glu)14および[99mTc]Tc- MDPをノーマルマウスに投与したときの体内放射能分布実験の結果をTable 3-9に示す。体 内放射能分布実験の結果、アスパラギン酸の残基数による標的部位である骨への集積を比 較すると、アスパラギン酸の残基数が比較的少ない[67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)2の骨への集積は 低く、[67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)5は、[67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)2と比較すると、骨への集積は見 られたが、時間経過とともに骨への集積は低下した。一方、アスパラギン酸の残基数が比較 的多い[67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)n (n = 8, 11, or 14)では、投与後早期に標的部位である骨に集積 し、非標的組織には集積せず腎臓から速やかにクリアランスされた。また、[67Ga]Ga-DOTA- (D-Asp)11と[67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)14の骨への集積は同等の値を示した。[67Ga]Ga-DOTA-(D- Glu)14 は、[67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)14 と 同様に投与後速やかな骨への集積を示したが 、 [67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)14と比較して、腎臓への滞留が見られた。

(42)

39

Table 3. Biodistribution of radioactivity after intravenous administration of [67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)2

in micea.

Time after administration

Tissue 10 min 60 min 180 min

Blood 2.19 (0.24) 0.24 (0.12) 0.05 (0.03)

Liver 0.57 (0.08) 0.31 (0.27) 0.11 (0.04)

Kidney 7.61 (1.17) 6.33 (4.68) 1.42 (0.59)

Small-intestine 0.50 (0.11) 0.14 (0.08) 0.08 (0.03)

Large-intestine 0.37 (0.08) 0.12 (0.11) 0.38 (0.23)

Spleen 0.50 (0.11) 0.24 (0.14) 0.08 (0.02)

Pancreas 0.57 (0.12) 0.15 (0.06) 0.09 (0.05)

Lung 1.45 (0.23) 0.26 (0.18) 0.08 (0.01)

Heart 0.86 (0.11) 0.11 (0.04) 0.06 (0.03)

Stomach 0.24 (0.07) 0.06 (0.03) 0.36 (0.58)

Bone (Femur) 1.57 (0.71) 0.88 (0.34) 0.49 (0.04)

Muscle 0.53 (0.05) 0.11 (0.05) 0.08 (0.03)

Brain 0.07 (0.01) 0.02 (0.01) 0.01 (0.01)

F/B ratio 0.71 (0.27) 3.78 (1.03) 12.80 (8.77)

a Expressed as % injected dose per gram. Each value represents the mean (SD) for five animals.

Expressed as % injected dose.

Femur:blood ratio.

(43)

40

Table 4. Biodistribution of radioactivity after intravenous administration of [67Ga]Ga-DOTA-(D-Asp)5

in micea.

Time after administration

Tissue 10 min 60 min 180 min

Blood 2.81 (0.73) 0.27 (0.02) 0.13 (0.07)

Liver 0.67 (0.13) 0.22 (0.11) 0.14 (0.03)

Kidney 12.04 (4.05) 6.31 (3.64) 1.45 (0.34)

Small-intestine 0.55 (0.16) 0.23 (0.09) 0.18 (0.19)

Large-intestine 0.47 (0.13) 0.22 (0.27) 0.22 (0.13)

Spleen 0.56 (0.12) 0.16 (0.05) 0.11 (0.03)

Pancreas 0.72 (0.11) 0.25 (0.19) 0.06 (0.00)

Lung 2.03 (0.34) 0.30 (0.11) 0.09 (0.02)

Heart 1.03 (0.29) 0.12 (0.01) 0.06 (0.01)

Stomach 0.32 (0.06) 0.10 (0.06) 0.48 (0.89)

Bone (Femur) 6.78 (1.84) 5.01 (0.93) 2.80 (0.58)

Muscle 0.68 (0.21) 0.13 (0.03) 0.07 (0.03)

Brain 0.10 (0.05) 0.02 (0.01) 0.01 (0.00)

F/B ratio 2.41 (0.22) 18.52 (2.59) 25.42 (10.06)

a Expressed as % injected dose per gram. Each value represents the mean (SD) for five animals.

Expressed as % injected dose.

Femur:blood ratio.

参照

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