• 検索結果がありません。

著者 大内 穂

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "著者 大内 穂"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

インドにおける政治的腐敗について(III)

著者 大内 穂

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization (IDE‑JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名 アジア経済

巻 12

号 10

ページ 68‑80

発行年 1971‑10

出版者 アジア経済研究所

URL http://doi.org/10.20561/00052469

(2)

1971100070.TIF

ドに . : b "ける政治的腐敗について イ

みのる

pつ市叶B−う←

帥 大

イ ン ド 的 政 治 腐 敗 の 現 代 的 意 義

←ー腐敗の類型とメカニズムー

I I I  

インドにおける政治腐敗の現われ方につし、て本 Eでcf'i干のケースを検討したが,Illでは,

稿の

I, 

( 土 じ めl

1.  十 ン 守 一 ナ ム 委 員 企 被 告 公 務 日 に よ る 腐 敗 口 ケ ー ス 政 治 的 腐 敗 の 概 念

W z

に た いj.Fl';』殺の芝:故 5.  i:.HJ: l~ci:'. よ1 司、i泊 ill

6 政治的!向[肢の忘:型 fr1:.l;け る 政 治l°r'JrN; Uk  2. 

3.  4 

インド的政治腐敗の特徴を三つの側而から簡単に (ll1〕 それらの特徴を先進資本主義諸

l l l

,社会主義諸国および他の後進諸国の腐敗の穎 型とメカニズムとの対比において位置づけ(III‑2,

3弘法後にインドの政治腐敗をその基盤の変化お よび抑止装置との関連で検討し,若干の展望を示 そうとするものである。

一一←守う 1・・nヤ ー ス ・ ス タ ー デf 整土墜し

セ ラγ二戸ィユ市内一 オ リ ソ サ明日々

c u   J ‑ ,  

:;(!: 9 

‑ i ' 1 ' : J 4  

,1  ,;)  1. 

2.  II 

この種の問題についての資料は少な

ム ド ガ ノνヰ(件 ιン ド ラ 事 件

)J fロ ン

・M

/ ;‑i・ラ ノレ・デサイ事手

i

̲1,

! 2

勺ケース

(以l,与,

n2t

i t ¥

6号)

q ο 4 4

F U

h v

JS もとより,

く、わたくし白身の非力のゆえに問題の核心

l

こト 分迫れたと思わない。本稿は,現代被進諸国の腐 敗の特徴とそのメカニズムについての一般的理論 化の可能性について検討を進めるための一覚書に すぎない他

1 ¥

ケースにみるインド的政治腐敗の特徴 政治腐敗の現象形態にみる特徴 (ll 

, イ ンドにおける腐敗の現われ方は,大上そ次のよう なものであった。

すなわち,大臣,州首相,高級官僚などがその 公職または影響力を以下のように濫用した。

認可・許可証の交付の迅速化 セ ラ ジ ュ

L)イ

イント政 治 問

W z

の 現 代i).TI み 一一一府J

k

の![1I¥')と メ カ ニ ヘ ム l.  7ースvごみらイン 政治腐敗ゴJ

l ‑ 1 ‑

fl;  l'( 

: h

明寺1形態バムら1

/:'k  :2)  lf.r  We') If, 1!上げふれJ;心中弘主

n t c : , 処

Pl¥の き れ ガ の 特 徴

2.  現 牝 社 会 にLけるイント[の:内;tいつはli'1.つ け(I) 11.1  先祉資本;

I

J

U

r r ,

円 形 態 と メ カ ニ メl (2i  社会主主主主ii軒目

z i

カ形熊と dカ ユ ス 人

(以上,本り)

現 代 社 会 に お け る イ ン ド 的 慣 肢 の 位

i

t

づけ(ll)  T,¥!',i「:i;:ili'.

f ・ c l  

JI)̲ I

i

伎の形ii

t

〆 カ 二 ズ 人 イ ンI

( l ' J f z j f r  

I需H'r

n

村 役c!)

/ : t   i

「{つ;? 4.  イ ン ド に わ け る 政 治 腐Ilkの 将 来

W  iF'z治 関i伎 の 基 殺 の 変 化 (2)  反 腐 敗i主計

( J:J. f~ ,第 13:'fr 第 l り予定〉

これまでに利用しえた資料だけからいえば,

3.  (1)  121 

カイロン事件, カ オリッサの事件,

ンティ・デサイ事件。

戸ィン事件,

(3)

1971100071.TIF

僚になされるときは,大衆の目にはそれと気づか jもにくい。

にもかかわらず,政治腐敗が大衆に知らされる 契機がこれまでいくつかあった。その際腐敗の取

i

二げられ方の特徴は何であるか。

1)''.'サの・

l

車 親族関係千?の子容財促進

(ロ)

カンティ・デサイ事件,

カイロン事件,

の事件,

Jンヂイット・シュクラ,ノ:ンチイソト・ノfント,

パクシー・ゲーラム・マホマッドなどのi易

f t ‑

紋I~士宮ふるいは父親・息子などの血持関係

レ オ

与党内部の対立・不満が表面化す その第

1

は,

7ヲカーサ,

を紐帯とする就職機会内j獲得

る際にであった。

ギルの場合。

ヲルジ・デサイ,

しかも幹部に

: i / . i :

,、党員相互は,手jl 与党内部の,

特定企業,,公社融資あっせん ムンド

権の所在およびその帰属についての情報を比較的 号事件。

しかし野党からの攻撃 にたいする組織防衛の必要は,仲間の腐敗を外へ もらさないのが通常の場合である。

入手しJやすい立場にある。

穀物商と結託した開運送黙ti~ ビレンド う・シン事件。

(オヰ

J I i i

の転貸しによる不当利

i

与の入手 ヤ 十す

ビジュ・パトナイクおよびピレン・

ところが,

ーダブの場 (

‑ t

など。

これら一連のケースに特徴的な要素は,いす三れ ミトラの事作:のように,

1 + 1

の首相,副首相がその立 場を濫用し,開発資金その他の州政府予算を徹底 血禄または知遇関係を

当事者閣のカーストヲ

︐ 

4t  

その利益にあずか らぬ与党内の他の党員あるいは派閥から,腐敗の 暴露がなされることがあった。また総選挙の際の 的かっ独占的にかすめとると,

媒介として発生しており,全般に比較的規肢の小 さい,官僚主惇型の腐敗が多U、},\である。

これにたいして司政治資金山'!ti付とその代償と

よる党員間のえんこん,不満のほかに,派閥対立 を反映する}島敗暴露が圧倒的に多い。たとえば,

先にみたセラジュヂィン事件におけるK・D・ マ ラヴィヤ(会議派左派)にたし、する会議派右派の 同選挙区における競合に 党の公認候補指名もれ,

してしJ

〕 干

JI権内私的,;,,百属関係を11).t介とし ζ政治家−

Wf

奈が凶末機構・権限を利用して財界人とゆ荷し よこ,

l

司家Lベ;l,での組織的かつ大規模な府敗のケ これまでそう多くは表面にでてきていな

L 、。公式に調:在委~会の調査対象となったものは

セラジュうイン七件とムン

i

、ラ事件のごゐつだけで ース

l

よ,

カイロン事件におけるカイロン独裁体制に 攻撃,

ビノレラ財閥問題での会議派右 訴の巨頭デサイtこ対するチャンドラ・セカールら いわゆる党内左派勢力の攻撃悦幻が腐敗の恭露と いう形をとって現われてし、る。

第2に,野党が与党内の腐敗を取り上げる場合 である。野党はつねに政府与党にたいする批判の 姿勢によって存在理由を保ちうるが,腐敗などは 対する党内の反発,

」 レ ふ

のつ/二。

さらに,外国援助・外資活動と関連した凶際レ インドでこれ までほとんと守表面化してこなかった点も一つの重 要な特色であるQ

ベノレで、の大規模な腐敗のケースは,

しかし,一般には,政府 省庁内,検察当局,決算委員会,会計検査院など にト分な情報網および調査権限をもつことが少な 格好な攻撃材料になる。

腐敗は,関係官依,政治家,財界人などの間に 起こる密室犯罪的性格をもつので,外部からはな かなかわかりにく',、。とくに,腐敗が,大

W

!の政 治的腐敗のように巧妙に合法;的形式

ι

整えて大規

腐敗の

I &

り上げられ方の特徴 (2) 

(4)

会計検査院,国会の決算委員 会など国民のために腐敗を監視し摘発すべき公け の機閣が,大

1 : , : ,

,•::; 級官僚,与党議員など雑力の 組織,特別警察

B i l ,

ジャーナリズムが一度取り上げた後や

(セラジュディン事件〉,与党内却の対立から)お敗が 明るみに

/ l

;ごから初めて問題を取り!二げるケー い野党は,

中杷にある者にたいしてはその課せられた任務を これまで必ずしも十分に果たしてこなかった点が カイロン

ムンドラ事件,

スが多い(オリッサの腐敗,

事件など〉。

E

で検討した政治腐敗の 巳上の公的機関が腐敗の存在を指

¥ t i

]される。

4

f i ' ; ; j

I)

I  ' 

ケースのうちで,

摘し追求のイニシャティブをとったものは全くな 一 ~lr党議

員(共産党)が最初に国主で問題を提出したが,公 職濫用であゆたか否かの証拠閤めの不備で動議却 下されてい石。情報収集;士会的機関の協力がほと

カンティ・ラール・デサイ事件では,

かった。セラヅュグィン事件の場合のように, 件 宗主

I i

r.‑,1が也の:

J i :

件の捜査過程で

f / . l

\?.ちに中央政府の 大臣の腐敗の事実を発見しても,独自の判断でこ れを取りヒげようとせずに7年近く放置し,新聞 が取り上げてから初めて明らかにしたケース次ど は 警察当局の党派性,権力迎

f t

性を典型的に;1';

している。

んどえられ灯、がったことも関係していゐ。

第 3に,政治的に弱小な立場にある者の腐敗の 取り上げられ方である。一般に,野党,関小政党 は,利粍,,(l) ,,f̲[づきが雨躍であり,財界,官界と の結びつき七比較的吉弘、ので腐敗のケースも少な

しかし,野党にたいしても,財界による保険 v'

会報告(本稿

I

参照〕もこの サンターナム委

的あるいは先行投資的な政治献金(ムンドラによる

現機構の改善の方向でなく,日

1 J f t , ' ; I

の機関設置に上る政治腐敗への対処を勧告するに とどまっている。

点、については,

その他のj[)if[供与が 会制の濫用八導くケースも起よ二ってい 社会党への政治献金の例たど〉,

1 1 '

なわれ,

る。

ジャートリズムが協敗の取上げのff,

2 H  

;j fこ, ムドガ/レ識はのケースもその一つにかぞえられ

j漫な役割を果たしてきたことはレうまでもなLり、 しかし,文盲率(国民の

7 ¥ ! f r J

以上〉を反映して新聞 二三で;主目すべき三とは,腐敗攻殺の的に

ょう。

されたムドガルは無所属の孤立した議員であり,

かれに議会工作を依頼した事業体も弱小資本にす の読者層は少ないこと, ラジオの聴取者層も比較

i 1 t i ' J

の調査網をもたず政府新聞・情報局に依 存する場合が多いこと,大新聞をはじめ中小新聞 も(先にふれたゴエンカ財閥のような〕巨大資本に 握ムれていることが多いので,腐敗事件の取上

二 ←γ →ス源t土,大新

1 m

でさえほとん

(1%~~ 、こと,

さらに、政治腐院内トス ぎなかった/,iである。

ムン戸ラ として取り|二げられたセラジュディンラ

そのもつ世論への影響力にも限界があ ffjJにも,

る。 取り上げられることがあってもせいぜい地方レベ

ルの実力者 でしかなかった。中央の政治権力の中 枢に近い立場にあり,

i

斗大資本との結びつきの強 い与党議員,官僚などは,内紛にでもまきこまれ また州首相が腐敗事件で なども弱小資本であり,

t ¥ 1  

Gに,労働組合,消費者組合,主婦の地域的

インドの第4 次総選挙の際には,特定の与党の候補者の日頃の 生まりなどによる腐敗の摘発運動のケースは,

しかし,

だインドではみられない。

ムドガノレ議員のケーてのよう な場合たど開放事件として取り上げられなかった のではないかと思われる。

第4に,検察当局,各省庁内に設けられた監察 ないかぎり安泰で,

(5)

腐敗がiii民の|首jで問題にされ,その候補の落選へ 導いたようなケースは,インドの各地でみられ,

これが国民会議派の八つの州での敗北の重要な要 因の一つであったといわれる。

長後に,軍部クーデタ一政権あるいは革命政権 が,その権力奪取を正当化し前政権の存立根拠を 理論的,道義的に否定する対大衆工作:砂A環とし て,前政権による腐敗を攻撃することが多い。た とえば,パキスタンでアユブ・ハーン政権が,韓 国で朴政権が,インドネシアでスハノレト政権が前 政権の打倒直後に行なったことである。

インドでは,これまで軍部クーデターや大規模 な革命政権の成立をみず,したがってこの型の腐 敗の取上げ方はなされてきていない。しかし,テ ーレンガナ(注3),ナクサノレパリ(注4),シュリーカ クラム(注5)に短期間ながら小規模な革命的地方政 権が成立し,地方的な行政官・地主・商人・金貸 しらのゆ着による腐敗の摘発が行なわれたことが ある。また,第4次総選挙後のピ ハーノレ州,ケー ララ州政界などでは,与野党間の政権交代の際に 報復的に前政権の腐敗告発合戦が展開された。

腐敗摘発のこの穏の型は,権力抗争の激動の時 期に不可避的傾向のものとして分類し,今後の展 開に注目したい。

以上の諸点からみても,腐敗の取り上げられ方 は多分に政治的動機によるものが多いということ ができょう。にもかかわらず,与・野党聞の対立,

与党内部の派閥対立によるものであれ,あるいは 検察当局,行政監察当局,国会の決算委員会,会 計検査院の活動,ジャーナリズム,市民,労組の 摘発によるものであれ,腐敗が広く大衆の目にさ らされ批判をうけるシステムこそ,民主主義の発 展に不可欠であり,また行政的腐敗や小規模の政 治腐敗が社会的に予防されていく原動力ともなり

うるであろう。そのいみで,少なくとも本稿

I'  E

で検討したケースがこれまで明るみに出された こと,さらに,第4次総選挙の際にみられた大衆 の反腐敗意識の高揚とその行動にたいして,イン ドにおける民主主義を一歩深化させたものとして 適切な評価が下されねばならないであろう。

(3)  腐敗の処理のされ方の特徴

ここでは,取り上げられた腐敗事件の処理のさ れ方の党派性を指摘するにとどめたい。

インド中央政府の歴代首相の中で,ネノレーは,

個人的には全く廉潔な人物でありながら,友人や 同僚や党に対する誤った忠節の観念から,腐敗し た人間を庇護したとして世論の非難をあびたとい われる他6)。次のシャストリは,かれの死去の際 には貯金もほとんどもたないほど清貧に甘んじ通 したといわれ,また自分の息子の就職の際に公正 の維持のために大変気を使ったことは先述のと おりであるが,カイロン事件の処理に際しては,

s ・ R• ダス調査委員会報告にもとづき直ちにカ イロン州首相を辞職に追いやって大衆の喝采をあ びている。インディラ・ガンジ一政権成立後,今 日までさほど大規模な腐敗のケースは国会の内外 で取り上げられていない。ただし最近,元石油・

鉱山省事務次官 R•P ・ナーヤーの国費不当浪費 事件では,処罰のための厳しい措置をとって世論 の好評をえたといわれる〈注7。〕

ネノレ一首相のケース処理の仕方を,検討してみ よう。無所属議員ムドガノレの場合には,ネルーは 自ら国会で問題を取り上げ,早速,院内調査委員 会を設置させたのにたいして,自分の信頼の厚か ったクリシュナ・メノン〔注8),

K  • D

・マラグィ ヤ〔注9), T ・ T ・クリシナマチャリ〔注10〕, P•S ・

カイロン,ピジュ・パトナイクらの腐敗問題が取 り上げられた際には,事件の調査委員会設置に最

71 

(6)

後まで難色を示した。しかも調査委員会設置が周 囲の庄力でやむなく設置されると,その委員会の 性格・権限をできるとけ首相良身の私的調査機関 的地位にとどめようとした。セラゾュディン事

f ' I

はネノレーのそうした態度を遺憾なくみせつけてい る。長;の内外からの

E

力で調査委員会を設けたが その際,国会では「完全な司法的調査jをすると 言明しておきながら,議員の追求にあうと, 「準 司法的調査」であると訂正し,さらに追求される

と「私的な調査」機関にすぎないことを認めさせ られたことは先にみたとおりである。

しかも調査委員会の報告書警の公表を頑強に差し 止めさせたのは,たんにネルー掴人の資質の問題 ではないであろう。報特書の公表が,会議派と官 僚組織と財界の

3

者聞の利権・政治資金を通した ゆ着問係を大衆の目にさらすことを恐れ,またそ れゆえ野党を利することを恐れた党首としての党 組織防衛,ひいては,国民会議派を中心とした支 配体制維持への配慮が最大の理由であったと思わ れる。

この点,シャストリ首相も同様の立場にあった が,カイロン事件のおりの

S・R

・グス委員会報 告の公表

U

,ネルーの後継者としてのシγストリ の首相選出に反対したカイロンの役割という派閥 抗争の側国土考慮に入れることに工理解しやす

くなるであろう。

事件の事実調査過程においても,党派的利益を 考慮した強い圧力が加えられている。ピジュ・バ トナイク, ピレン・ミトラに

f

こいする中央調査局 (CBI)の活動に一定のわくがあらかじめはめられ,

またナンダ内相を中心とするこの事件のための内 閣小委員会の調査活動にたU、して会議派ボスたち が決議書を送って妨害している。党の著名なリー ダーにたいし中央調査局の機構を使って調査させ

たのはけしからぬといろ決議文であった。

党派的利益のために国家機関を私物化して用い たケースは,何もインドだけに限らない。日本にお いても大疑獄につなが石自党の党幹事長の逮捕

t f f

前になって法相が指揮権発動によって逮捕の妨害

をしたケースちある〈注目、また,宮、の発動の段階 で,高級官{乱大臣については,検事総長,内!沼 総理大臣の許可を必要とすることをきめているの も与党の利益擁護装置と考えられなくもなャ。

鴎敗の処理における党派性は,調査委員会など による徹底的な事実糾明に至る前に,当該首相,大 臣の辞職という形で一切ケリをつける仕方にもあ らわれJている(K• D・7ラヴィア,ピジュ・ノξト十

イク,ピレン・ミトラ, T•T ・クリシナマチャリ, p,

S・カイロンなど〉。

首相,大臣,高級官僚らは辞職さえすれば責任 の追求を免かれうるが悦12),下級官僚らは容赦な く調査をうける。国民大衆の前に,小規模な行政 的腐敗の事実は多く知らされても,大規模な政治 腐敗が知らされることの少ない理由の一つがここ にある。

結局,これまでみた腐敗の取上げ方,処理の仕 方では,与党による党派的利益擁誰が第

u

こ考!重 されていたことが明らかであろう。腐敗の処理に つU、ては,その場がぎりの部分修正はある。大臣 の辞職と

ν

うことはあっても,腐敗発生のメカ三 ズムにたいする抜本的な対策がとられていない以 上,担当大臣の首のすげ替えはあっても,また以 前と

i

示jじ腐敗がくり返される基盤は存続すること になる。カウンターパートの財界の側もピルラ財 閥の例のように交代選手を多数かかえているので 腐敗劇の投手?に事欠かない。

1 9 5 0

年代半ば以降に みられる企業の幅広い成長とともに,企業間の競 争も激烈化し,これが財界の側からの贈賄という

(7)

1971100075.TIF

形での腐敗を増大させつつある。

このような腐敗の取上げ方,処理のされ方がな される理由は,ほかでもない,腐敗の発生理由と同 じ根をもつのである。政治体制の維持にとり腐敗 が必要不可欠化している現実があり, それを許す 此治文化(注1のがあるからであり,有効に腐敗を抑 止する機構が社会的に欠如してし、るからである。

さらにし、えば,腐敗に反対する大衆の意識と運 動の高揚が不足しているからにほかならない。

(注1) 本稿のEおよび

m

作成にあたり,資料面で もくの方々にお世話にた

  ・ t

t/,  fくに内山秀夫,

l ' i

1t l仁川の両氏からは貴司1な

' t il 

iふf(/¥ iノできた。また 1;, j/;,j 全 部 ま た は 一 部 仁 } い し J/'ij:,,J久,伊藤正三,

IIIU日夫,佐藤宏,清水主主,中村1/,1υj,山口博ーの各

n : :  

fアイウ……IJ闘)に11合j后?とL、た/:き有益なご示 唆をえた。ここに記して謝意を表したい。ただし,内 容についての責任は一切筆者にあるの

なお小生の執筆のi摩れが編集関係者に多大のご迷惑 をおかけしたことをあわせてお詑びしたいの

(注2) 1969年2月,チャンドラ・セカーノレは, 88

;:‑,  f1におよぶビノレラ財"\ j;) :民法

i i

Yiこ附する覚書を副 主;:徒出して政府を迫、

I

(_;二η 十,_f依相は防戦にた {)'  (1らの辞任をほのめかJ:  'I:  ,,  , ・ ・ −カーノLの党規 律主民による処分を迫' t.: 

(注3〕Romh Thapar, Storm  Over Hydera‑

bad (Bombay, Kutubu Publishers,  1948). 

Peoples Age, December 12,  1948.な お , 高 橋 満

「現代インドの農業・農民問題̲J(流JII 勉編『東南ア ジアの農業・農民問題』, :I!fi紀番勝, 1971年), 39〜47  ページは事件を要約し二タら。

v]: 4)  Kanu Sanyal,Report on the Movement  in  the  Terai  Region, Li/,cnlln,Vol. 2,  No. 1 

(N川•ember1968), pp. 28〜56. "The Naxalbari Stor y, Link (August 15,  1967),  pp. 83〜88. 

Biswanath Mukherjee,Two Faces of Naxalbari 

Link (August 20,  1967). 

大形孝平「インドのナタサライト」(『世界』, 1969 年4月号〉。

(:主5) 大形孝平「インド旅??雑 ~i:J(W'アジア』,1970 年4月号)。アーンドラ !IIのンユ} カグラムのギリ

ジム Yとよばれる部族f's'.1反乱,19印;I'から 69年まで。

(注6) John B. Monteiro, Corruption‑Control  of Maladministration (Bombay, Manaktalas, 1966),  p.  55. 

SurndranathDwivedy & G. S.  Bhargava, Polit‑ ical  Corruption  in  India  (New  Delhi,  Popular  l¥ook Services,  1967)もネルーω腐敗女!日j!における党 ,Ir: 1'iに航空'!心批判を加えてい乙本什」つ

ε

あノー

(γI: 7 ) Indian Expre自 の 仁indraSekar Pan‑ dit氏との対話(1971年9月2臼)による。

Ci8) ここではかれが在ロンドン印度高等弁務官 であった当時に起こった,いわゆる Jep Scandalの ことをさす。 JeepScandalについては Surendranath Dwivedy 

G. S.  Bhargava, Political  C01γuption 

・・,  pp.  43〜62 Iこくわしい。

(注(j) ここでは先述のセヲノ" )' 1ン』

i

ト併の処理

(iノ関辿ヂ

(,UO)  ごこでは先述のムシ;ラ事{ !の;111JlJ'との関 住ご。

(注11) 横山泰治『現代の汚職一一一政治腐敗の実態 とからくり』(三一書房, 1967年), 85〜88ページ。

岡倉千f志郎『汚職の政治経済学』(労働旬報社,1967 年), 90〜104ページをみよ。

(i!:I2)  ただし, R•P ・ナーヤー事村山:処 Fl'.につい てTンFィヲ・ jfンジ一首相Lii則的な例を示した。

j  ヤー lJでに送殺したかり:再任中の腐敗行為につ

ht'iffを飽かれることになるが,カ/ジ {1相は,

jBイii段!りj問を延長する決定を Lて,需主?をν勺場にた たせて好評をはくしたといわれる。

(/113)  政治文化(PoliticalCulture)とは,ある一定 の社会で一定の時代に自明のこととして大衆に広く共 有されている,政治にかかわる信条,とくに社会倫理的 価値指l向の体系をいう(Lucian

W. 

Pye and S.  Ver‑

ha  eds., Political Culture and Political  Develop‑ mzt,Princeton Univ. Press,  1965.石 田 kll 

f

政 治

ベ文化』,京大出版会, 1969年,なとき了参照されたい)。

2 .  

現代社会におけるインド的腐敗の位置づけ

(I

)一一先進資本主義型および社会主義型腐敗 の類型とメカニズム一一一

m‑1で確定したインド的腐敗の特徴および類 型は,後進国インドに特有のものであろうか。世 界史的にどういう位置づけが可能であろうか。

(8)

{ ; ,   l

・、(1'J l(;.rn'.i: .

r 1 1  

~~;

[;五分的 iとでは仏~L,  じ日

i f t

資本主主諸

l J J

がその歴史的発展過程におL、てすで に経験して7たもr))ではなかんうか。また今(

i( / )  

i

色遣はJ) L

i

噌二 ノ11をその苑)jl~j@f','(.: 

T i ' .

:じとイン

i ' t ' J  

I日Vi:川魚々年初声←j九三どに;!).ノi ' 山?〉てて.~!,: 

− ず ,̲ 

'")〆' ) /、,

t  J

、二 Hl/, 

~:

;,、えてみると,

f

I

(r'.J五日没収<,ft

;土、現代世l一昨にJ打、て先進資本;主主諾

l t . J

r l : £ : + . 

.R諸[i;)

. t

;ヒ 7ーパ也[/)

1

をj正百七[:

E J

こ J; ji7

: : , J 1 i ¥ l i 1 . C : : ! 3

上〔.

l r ' W l Y

</・主立''JJi II司法的・

t l ' M i t 1

均影響

l

i

二主心され

f

ょが ん『 ぐ

i・ 

,,,;:w~ ,.' J/i\ltu ,幻ti自に j必仁三 'Lwりを;>ii;分 ((j iこL現/ij::せてL、ふL、た〆〉うう\} 上た,:|守l\こど

,  '  • .! )J 

l

川., 

I  J ‑

む)iiiよ

j

〜をひ壬1h1,  ,二Ltるう,と ご)「/\

J Q i J ; i t ' r i : :

n¥ 11f1i色であり, 土

f

J必要で,h1

( ]'1  光

i ! f " i ' J . '

本主主Jf;'J腐敗れ形態と dり スム ミLILゲーんはそ(l大許 f〆ア〈 パ、! , '  i (,)  1¥1で、

i

欠})

. t

うにv'JI二くいる,; I f込/ ~1!)後!ιi託

|ιJ i•~

: l i  '   ,

、て,先進資本cl̲:義 諸

l i e ¥

j

i

、ぃ共戸;

I

i

諸[JI

較/γ

y ; t [ i

,'.川Il:ffiJl'i'J;:多く、

<  : : 1 ( ・ , W r

、・,

' i c : 1 1

ンド

; l、

1 1 i U( ' .  

J山

i k U f ,I ・

;こ才;

i r 

<'.> 

. t  

I)  1, 

j i l :  

:11お ぜ .‑,  J‑'/:刷|した, ,:~ c,  ミ,.JL,ケーノLf、上 :̲ )川、iバイL ・i

としてアジア社会♂〉近代化(,r.n,krlliwtinn;  ti •.ii忌!?ノ に,!くめてL、心。 し

f

こ乙¥ハてアJ r'iに j;tf 

1 , j

(,;者

i

11 /;・ 亘商主義H寺

t

にには盛んであった

l

郎攻、i:;i 

i ' l   u 1

主 主

主II寺

t t

,二山服して L、−,

t 三 ; @

f主治るらMか

7

:〆らことか できようとしている(すI'3 •0

J  .  s

・ーJ i i;,ム3コーけン・レ. ;(</' ")'コも ミュルダールと同椋に,後j)t詰凶(,.:.,\\,\敗カミ多Lイー のべている。その理由にJ川、て,ナイi

. t ,  

「1t

的に司後進的状態にふ~二とに包含される諸守の 条件」にあるとしうこのほかに,富の分配におけ る極端な不平等,官職

i

こっくことが宮に

i l i

:/)く主 要な:

: / J i 1

;と脅えんれてU、ること,

t i

:会[ドJ・行政(

V J

り古:;,iリ|殺![

J c !i

iH本,

i 亡

}Jl(JJJ,,J{宇芯、II欠如などを点

ζ L、るυ これら

t

,後述するように現代後進諸 [.k!における腐敗の経済的基盤,政治組織的基盤,

i

' k 7 f

,・丈化的主

L

盤ど関連しており,明らかに,それ

J , ( t W . i :

現象手

r 1 1 .( . ' )  

J,主栓に')\,、ては,先進資本主)~

l

 1,i ,社会主義諸[ 1A と呉な, f仁'•'心。しかし果た

L

C,腐敗は後進国社会tこ特有ゐなことであんうかり たとえば

f

ンド射病敗は,先進諸

1 : q

に全く凡出せ ないであろうか。

ミ c•.Iレザールはじめ欧米のこうした学古今治、取り

!:げているケースのほとんどが、公共事業品、税 l~l などの下級官官そと似守のビジネス・インクレス ト[ i\J: 二 it 主 ;Jtt二 i仁較的 !JUI,~() 川、さし、 /(;i;/\'..U ,二[11'[ られ ていら二とにj下?立しなけれ:

f

な人なL、。つまり,

行政的腐敗二;1)職

m1

誌の色の,あるいは政治的席

We

であ〉ても)制誌の/ト,"_; ¥ ,

・ f l

司々のしベPレでの'['f.

J l ' i :   • l H

界の密主主WI庄のもぴ)に限ムれてかる。二ぴ)

稀 の 腐

r &e r

後j隼

f

正!??!!反W..cとよぶなじ,後

i J t l N

主り両 院は/~11 (i

f l

..j,:ヤf!IJ[0(t‑l:会で相対的に起こりにく

く/仁〆〉/二

Lit

/仏、品、依然として'

I

:起

L

L、 ふしりでふど〉リ悦j三山子

f

定今 ご企常

f l

t

>ぴ)_人J,'(,.i1L  ii)! ,I;叶i

i

宝4匡キ(:、いjfjl也♂)紅、下げをめぐる小!、肘込 Lハ 1,1;1;t攻山や1J は N~l どこ力,(/)新聞をか占, P ていゐび〉

・c, ゐ& 。 J:f.り、先進資本主義諸

i

q にも,後 jjt [~~

J¥IJ (/) m~i汝ヰイ支り{可イ子しているのである。

"'  らに,一

t f 予 防 i

屈に怠るのは,目安独占資本主 義段階

i

こはし、るにしたがハこれまでの腐敗概念 ではとらえられないようなスマートなよそおL、を もサた大波絞な}島

H

'<:が, しかも,

H

却すだけでなく たとえば外同母助の処理のされ方にみられるよう に,

i

サ際的レベノレで現われてきてはいないよこんう カ

Zit6。)

[イ) とくに二/)の

i

止界大戦を経た現代は,社会 主義体制の確立および後進諸問の和つぐ政治的

1 t l t

(9)

1971100077.TIF

ウ:をみたが、この世界史的状況の変化に照応して 先進資本」二淀諸国で;主国家か

w

極的に「公共事業

の拡大,軍備の滑強,貿易,為替の規制,低利資 令の放/It

U t

政に工る所得J)

, t f

分配,日;会保障の 拡充!などの;土

i去で「それ自身の機構により再生

r

l(過程を

J E / : 1 1

]する三止が不1‑lj桂三な叶/・

t貸本

i"'. ぷの矛)百;二寸処せ心ζ〉をえたくはって主/ピ注7)。 この過程で,ばくだいな国家財政を使用した(大 京と差j}'JIた〕特定資本への優遇措置が,大規慢 でかつ組織的な政治的腐敗の一つの重要な基盤を なして」、るc べト寸ム戦争

1

生行(1名目でγメソγ

』交府がt工く

7

U、な1l↓

i

もの税;'[%士持定等主::1 維持.拡大のために(史用しているが,アメリカ政

!日の各長

r r

の中にそれtら軍日々世に関係していん 者が多い点に注目する必要がある。

伊) 二71;立政治組織の側1f11わうみると、この資 本主義体制の危機に対応して公的なあらゆる機聞 が生産,流通,消費のすべての過程に直接・間接 (f'.Jに動日さ;1,,再組織されぐさえ。そv'):'i'\采,孔 似jきも点柿も循環もしにくいほど巨大な宵僚機構

lミ生まれ、 iT政府\山管理の

i f a i j 1

が起二 sた。品 会による行政府へのチェックも形骸化したC/L8 J。 怜力分子

r ̲ f f j i J 1

土人

1 1 ¥ J

予防の産物さはあったぷ,その 権力相]

1 1 1 ¥ J

ヴ抑制・ J与句機能、')神話で'~えも,政結 権力とそれを運用する人間に随伴する逸脱と腐敗 にょっと刷fもてきたのであふりさらに,説会民主 制を通ずる権力の維持は,経済の規模の拡大とと

{,にいよL、よばく

f

L、な政治白金を必要とするも のになり,この資金山護得が政党・派iぽ・政治家内 最大の関心となる。とくに,選挙における勝敗は 選挙事務店および、運動員の維侍,ポスター,パン フレットの発行などを含め,まさに資金の量によ

7てきまる傾向があみから,政官・

1 1 K I I M・政治家

による政治資金の獲結は死活問題である。保守覚

は資金ii);(を財界

i

こ求め,財界は,

i

1 1 , 1

および

I I J

際 的レ〆リLでの干!Ji偶追究競争において臼己の意にか なう政党・派閥・政治家を育成することにより最 有利な条件をつくり出そりとして政治款金を行な うの保守党はこれに応えて,総体としての財界,

とさには個別企業の利益市大をはかる政策をみ;案 し, ;−(法的に, t自 僚機構造と通じてよ二れを実現して きた。

他方,個々の目標は,その組織命令系統から

J ‑ .

司の,さらに上司を通じてその所属政党・派閥の 指示と監督に服して機能する。官依機構は,機能 的に政府・与党の利益への奉仕を第一義化せざる

をえなくなっているのが現状である。

い) 政治文化の面かれも

l i U

様のことがい士〉れう る。資本主義社会における最も支配的な社会的価 値以資本である。金,物,地位,名詩などの追求 が社会通念として正当化される。追求の手段の適 否

r

けが,問題とされるにすぎない。直接的ふ

f f . 1 J

人[ドJ[..ベルでの利権と賄賂の取引きは不正とされ るが,間接的な組織を過した利権と政治資金の交 換tし腐敗として問題にされるこ土が少なし、ので ある。

政治腐敗の問題を社会心理的側面からみると,

f

資本主義的価値目標への心理的からみつきj 情的の強い社会の中で,官僚だけが超然として,

例外であるはずはない。日僚は自分の出世やポス トの維持,退職後のポスト獲得のため,あるいは 議はからのしっぺ返しを恐れて,政治家あるいは 財界に奉仕する。それが一般大衆の利益にはなら ず,差別的に財界に有利になる政策であることは 明らかであっても,自分のうる利権が迂回的なも のであり,また,相手が個別企業でないことも手 伝い,さして良心の苦しみもなく,職務と割り切 ってやるとし、う。もちろん,すべての官僚がそう

75 

(10)

であるということではない。しかし,こういう政 治体制のもとでは,やむなく官援の多くが,政治 家あるいは巨大資本の被雇人的根性をもつように なるといわれる(注\CJ)。つまり,一般大衆の福祉に 奉仕する公僕であるべき本来の職務から外れて,

富と権力〜/)奉仕のために,差別的に公権力が使 われが土J:二午るのである。

ここに,独占資本主導型の財・政・官界のゆ着 が強化されうそこに動:利権も,国の財政宅;企融,

資産のすノ\亡にかかわる規模の大き

ν

ものじなる のである。利権の最終的な私的帰属も岡家機関を 通して「合法的」に行なわれるのでいわゆる腐敗 事件として問題になりにくいのである。形式的な 合法性をみたして「スケーノレの大きな疑獄が恒常 的に行なわれているので,非合法的な汚職を必要 としない」(住11〕のである。これは現代の疑獄のメ カニズムが体制『内に制度化され,しか

ι

形式的合

法性の要件を:みたしてスマートに機能しご し、るこ とを示している。支配体制維持のために必要不可 欠のものに

t s .

!') '公然化してきたのであ ζυ協敗も 個人ベースから,いっそう組織的なものになり,臼 常化してくると,腐敗を行なうものが罪意識すら しだいに失っていくのである。しかもそのことに よって社会的な威信を失わないのである:/U2:、。大 衆の側でもしだいにそれに慣らされ批判し なくな りがちである。ミュノレダーノレでさえも,後進国に おける腐敗は目につくが先進資本主義国のこうし た体制内にビ/レト・インされた属敗を昆溶してし まうことになるのではなかろうか。

他方においては,資本主義の矛盾が増大すれば するほど司大衆の側から差別のない,人間的生活条 件の保障を求める声が高まってきた。ほ内におい て社会主義的勢力や労働運動が強まり,それが現 実の政治過程に,無視しえないほど高まってくる

と,支配体制の側から,いわゆる「飴」が与えら れる。つまり,体制側では上の要求に一定の譲歩 を余儀なくされ,民家呂的として憲法の中

i

こ大衆 の福祉の増進をうたうものが続々と現われてくる

13)。これとともに,腐敗の観念も判断の重点を 大衆の社会的福祉の増進iこ置き,論理的に,それ に反するような一切の差別的公権力の行使は腐敗 として措定せざるをえなくなり,その差別的公権 力行使にたいする監視機構(チェ

v

ク・システム〉

を制度的に定着させてきたのである(たとえば OMBUDSMANの制度(注14)〕。この点では,法制度へ の定着は,実蟻に先行したとみられなくもない。

実態

t

こ先行したというのは,腐敗に関する規定

e本来支配層自体の利益のために制定されたにも かかわらず,実際には前述のような理由で腐敗が 起こるべくして起こり,その法規定からさえ逸脱

することが多

u

、からである。

しかし,こうした法規定を設け,ときおりはこれ を逸脱するものを摘発することは,国家権力に「中 立性」の仮面を与えるのに役立つのである(注15¥

後に詳述するようにインドにおL、ても,とくに

1 9 5 0

年代末期から

60

年代を通じて大型の私経蛍資

ウ ク ラ ー ド

本主義経済制度の成長がみられ,それがしだいに 出家の経済政策に絶大な影響を与える事態が生じ てき之。この経済基盤の変動に応じてインドにお いても先進資本主義諸国に多くみられる型の大規 模かっ組織的な腐敗が生まれつつあることに注目

したし、。

(注1) Gunnar Myrdal, Asian Drama; an In  quiry into the Poverty of Nations, Vol. II  (New  York, Pantheon, 1968), pp.  942〜943. 

(12) 重}均

t

災時代のイドリスラオランダ,スカ

ン シ ナ ピ ア 諸 同 三IJ,今日われれれがいう腐貫主iJ平 や IHこ行なわれていfーらしし、。 RonaldWraithお よ り Edgar Simpkinsによると(共事年 Corruptionin D

veloping Countries, London, George Allen & Un‑

(11)

1971100079.TIF

win,  1963), 18位ねのイギリスで,「公職Jは私的な利 益獲得のための地位と考えられていた。裁判t日でさえ,

事刊の当

・ t r

者たちからコミヅも玄ンI,取り職務を行な っていた。イギリスで「その職伎と俸給を保障された 現代的な裁判官制度が

t

っきりした形で実現;されたの は, 19世紀の前半のことにすきゅなかった」(内回カ磁

「イザリスにおける裁判'i; の身分保障につレご

J ,

 iI社会 科学研究』, 185号, 1967年〉。自由主義時代になっ てはじめて西欧諸国では官僚総織も迂代的な袋に佐備 され,公職にある者の給与も改善された。しだいに慣 習化していた賄際立法的工費用として制度

ILL

てい た。行政に対する議会によるチェック・シ九デムも現在 備されて〈る過れで(行政的)腐敗:よしだいに減fレし ていったといわれる。

(iJ: 3 ) Gunnar Myrdal, Asian /)rama・・  ・ ・ ・・,  pp,  957958 

自由主義時代を経て西欧諸協が, V~, 以を Jk;ljji で占 fこillにつ1てミュノレダ−/レは, t:iいi也[、kに友,ろ者力

i

義的強化,ド級

1

ぽ交の給与の改簿によろうとしている。

(:1:4)  J.  S.  Nye, Corruption  and  Poli ti cal  Development;  a Cost‑Bene五tAnalysis The Ame‑

rican  Political  Scienc Review,.LXI, No. 2  (June,  1967), p.  418. 

(15) 仁olinLeys, What is  the Problem About  Corruption The Journal of African  Studies,  Vol. 3,  No. 2 (1965), pp. 224〜よ26.し イ ズLI,国主主d 観念Tの 低 色 極 端 な 不 平 等 と 絶 対 的 貧 凶 , 腐 敗 処 期 規 定のゆるさ,新興国で腐敗が比較的いんベL、しゃ?い こと,を;

, v

ifている。

(注6) 横山泰治『現代の汚職』。岡倉古志郎『汚職 の政治経済学』。大野注ブ「汚職政治と II本:1司,家独i円資 本主義」(『経済.!, 1968年7月号〉。佐藤美紀雄『政治 と干,:権の11二幕』〔ェ−,cH\版社、1971'1)。山的宗次『政 治資金の内幕』(エール出版社,1971年〕。大内 穂「権 力腐敗の紅型とそのメカ三ズム

J

(『似liアジアレビご ー』, 1970年第3半予,秋季号)にあげられている腐敗の ケースもむかせ f 重量照~1 lたい円

(注7〕 大内 力他『経済学概論』(東大出版会,

19fi'l年), ;tl2〜33:lベ一日。

(f]B)  Yことえj,日本,アメリカ,商ドイアなどの 議去の常任委員公制度の運用をみれば明らかである。

常任委員会,'.'は,政府と

2

員会との問に縦割りの調

f f

,が 組織されており,それは「官庁一行政府の出先機関化

している」(園間直自民党代議士,日経, 1971年8月 10 LI,なお常任委員会制度の攻勢に勺いて林一信Jli;よ

り教示をえた〉。

(注9) 石田 雄『戦後日本の政治体制』(未来社,

1961年), 140ベージ。

(注10) 小林文男「官庁・汚職・役人」(『経済往来.!,

1964年9月), 194ベータ。

(注11) 岡倉台志郎『汚職の政治経済学』248ベージo

o n z )  

E・H・サザーランド,平野竜一・井口治二 訳『ホワイト・カラーの犯罪』(岩波書店, 1955年〉。

(/1:13)  19191fのワイマール憲法(第2編,第

s , ・ n  

以降の諸問の憲法に広くみられる傾向Jである。

(U:14)  The Ombudsman は , 必 次 元 の 行 政 院 祭 機関であり,そのオリジンは1713年のチヤールス121笠 統治下のスエーデンに始まるというう近年この制度改 デンマ−lJ,ノルウェー,ニュージーランドなどにも 導入されてし、るつ

1954年に始まったデンマークの The Ombudsman  は RiksdagensJustitieomhudsmanとし、 Zれ, 1訳l土, ParliamentaryCommissioner for Civil  Admi凶strationとなっ一こいる。スエーデンのそれとは

:

r ;   ・ 1 '

制度十こ差がある上うである。なお,詳しくは,

John B.  Monteiro, Corruption, Control of Malad‑

mistration(Bombay,  Manaktalas, 1966),  Part III  を参照せよ。

(;;ニ15) 編江.¥g 

r

アメリ力支配Ji;,1の不1F・腐敗行 為」(『思想』, 1954年7月号), 795〜796ベージ。

(2)  社 会 主 義 型 臆 敗 の 形 態 と メ カ ニ ズ ム 〈 注1)

j,

f l

を 転 じ て 社 会 主 義 諸 国 に お け る 腐 敗 現 象 と そ の 対 処 の 仕 方 を み て み よ う 。

L

イ ) 社 会 主 義 諸 国 の 経 済 的 基 盤 は , 生 産 手 段 の 圧 倒 的 な 部 分 が 国 有 化 さ れ , 私 的 所 有 に も と ヴ く 生 産 部 門 ( 民 族 資 本 〕 も 社 会 主 義 国 家 計 画 経 済 の 一 様 に く み こ ま れ て お り , 資 本 主 義 社 会 に お 付 る よ う な 財 界 は 存 在 し な

L

、 。 し た が っ て , 財 界 か ム の 政 治 資 金 と ひ き か え に 官 僚 ・ 政 治 家 が 利 権 を 売 り渡すとU、 う 関 係 は 本 来 生 じ え な い は ず で あ る 。

し が し , 対 外 関 係 に お い て , 外 国 資 本 が , 有 利 な 貿 易 条 件 , 請 負 契 約 , 情 報 収 集 を 求 め て 個 々 の 官 僚 ・ 政 党 人 に 賄 賂 を 送 り , ま た は 供 応 し , そ れ

77 

(12)

公(/)

r r

ーをぬすんだり,賄員長をうけたり, その他,

:をうけた似

j l

が買1r的役',l,:iJ

i :

果たすというような問

/ t ,   n

で不法に私の利益をふやしたりする行為はす 主た守問題を同す に1/[;民vにども、??

1

系;口全

L

うるの

その汚職行為 医芳リにつし、ては,

パて汚職

' W

とし,

干の統

f l j l j { i

:ラけた;

i ' i 1 t

物資または

q , t n i   4

今世の人

子、そLくはJ也イr.,n箆1nホ・

t r +

守のとめに,区人また 1):[re[家や人民の安全に危;,f,を及

i

ました場合,

i E l  

家の経済情報をうりわたした場介,集向的な汚職 行為の組織??て、ある場合など,干flj;再を兎くしてし、

あるL

i

主将

: t

公人か,何人的なコネをキI]用ずら、

定日ノ官 1取を W,応しまたは賄時をおく y て特 1J:J,\l~,l

人民の つまり,

l

寸家や人民の安全維持ヲ

Y~ 山(ii " ' 

こjLらは

(系をつくるとL、うケースもある(n:  .'

J

  1 1 I l l  

/:~;士山)管埋と公正な分配が、社会 Hi範の 手|ヰ

l

会主主主

i

市fflにおける行ll交が

J t , r n

之あるいはJト悦

したが")て公的権限・ j長特)Jを

t / K U I J H i t

立にある。

院な

t F : ; :

if 

n ' t J  

;!戸

i i '

<と

j t j r ̲ Q

性をも v

L

、み

I E

!家

J s

上び人民の手1]誌に 長/{之、

i

L, 

f f ; : H , I J

H U J ' f

をゆるがしかねない長大な犯

T

として人民に立識されていると考えられるわ Lた私的利益の

i

色求tJ, 

政 治

m

成,, ) 

{ J i l l  

1111からみると、社会

i

ニ災}汁l

i i

−Iv)末端士で'

1 ¥ i t C L : ? M 1

な組織

(じ/,',I,住,:!, (, i 1て,, ',:;, !’1W;日 j定(t')~叫が;u ヒ; t 、 j也{之

})\/,!定(ヒ・特怜;

f

ヒヲ二斗

l

組織に之、!;る人

i i

I)

\'K~

( ロ)

l t

;汗推

j J l/ )  

!三泊;こ

i

主ぺ3東欧諸国のように壬! ‑

1 1  

L /;• Lぷんも().

プ,、

J i

:会むも,後;

j l

ノて資本主義の洗干しをそけたた 二

1

子も卜分

l

二l、きとど1).なく/i̲I)かんでふるο

をみふ以前の段隅で

i

ーからの社会主義化にくみこ まれ,亡し主〆p

f

こどこらでは

1 ' i f l ;

丘代

' l i

うな共同{本的 立 i;依>; •i('f;jキ:」

i

志向'J

f o 1 i 1 1 f 1  m 1 , , 1

もともに

J f ; ,

,4どかえてやた

f r

し、必ずしも社会主義的倫月間

i

に親し士ない

. 1 :

; J U

三−

1

−:,}に資本主義の

l l ¥ 1 ' J t

ih

i

也J‑J

Iレでは,

よこめ !'fl織の 'i 'で権[\l:をもっ •t'f カ~ J[:i,fι♂) fl~'色、料。

人的ゴ下 人民時空

fの,;/,',

J j

主・

i

f i l l

・処分

t

仁どにあたっ、乙 のわ百,

j

I   t ' • ‑ J l ・ Y 2 H

点、しり差別i二よリ、

こ・krfi示すベ右手I]益を判定人にね

: j ; l j

にII記長;〈させるう

l i b ;  

yL、/J上勺ごある'til :!0  /)主

I J '

一 て

L

起こ

ゾ;,̲l!()J5党中央機関紙 L'‑,"ラウ>/,;1その うである。

人tうど,光

i

;f日{;j,:[:

/〈な山 j,(;(主j(を

J ' . . 1 * 1 l

椛{じん・,

: t

たソ連・!京|ぇ信者[14

f

也の公

f ! J

の新|昔

i

i

店上でも司

!?際立任の体系(ヒ

i

:

r

'l:̲iてもそうであるように,

i

→主主諸国において汚職の事件はかなりあるよう である。社会体制jが変化

L

てもラ私的財産や地位

;こえ

i

する人間の干I]己

i

ねな

f J

;望が止渇されるまでに は時間を要ーすることを示している。

士たIH中

w

のように, :Y!Jl斗の半続民地的従属

i

にあり外商と'i'l'.弁,地主, d百干

l j f t , ? 1 5

吏,軍

I I

誌の 支内'.Fで白本主誌の発反を

i

EとんどみなかすyIこ?上

S ,  

Ci 上、(111 近代的安ぷ /J~ )

l

也)Jf二

k

りあるし、

l . t Y ‑ 1

職 ト:上り

t J i

IJ引{f1,見.'t:後もいv》そう0rt\[丙!に残存したの これら計一

: f H U ' i

−あるし、は旅行計らの見出談でも,

11~

社会の官僚主義的組織化は,現在の

i

ワ職金発生さ せる根本的な基1fil.であると同時に,汚職を克!!日し ようとする組?誌をも然力イじさせる)J,1~1:ともなる f(i ffト・ミPレメ)にJ> ながりがら江のでふる。

雄 氏 の 捺

l ? : : 1

4J;土{ぽ

U @ .

L、「

1 T 1 l l 1

険性;y;ある]

f l u

仏、ずる

社会主必諸国におけ I

f/,(/{−;之化的にみれ;t,

w i  

hv

主I;

~c.:,;

3上ぴ人民の安!':および t/i';

t

l i

:ーに与

t ‑ t

−る '.lj'.どして『

l ' r : :, r . ;  

法/(

j > ' r : / i ' i '

i ' ,

ih −よい ゐ1,Q;llY

1 : : 1

i

.t  , 

!ことえ:

I

、I'市ゴ"

11

l

二公イIic'<  , ::て/

I

q,可

E

革命

T i i i

v) 

1 1 1  

[日の暦史は!釘敗の

I t &

1 1 1 1 1 1 1  

[Iけではどんな

i

時代で、も,

' '、ー

と'

、 .

ーァ ~

l'〆'/)会) 0 

h ' . ; J l ,  f 1 1 l , J i l ; J [ i 1 l

処;

r , i f M

u~;そ治

l

むと与え,, . A 

t  

とのときの段取j.よ立強の権力苫が故大のj?‑j)f込者j しりこ E)主:と− 'ぐそこに支 J見さJL 一口、ゐ f~~J:fj1

こじつ条(刊に Ui(f,

¥ 1 J

家の財 生みて1外 よ ら

I,~ 11

参照

関連したドキュメント

Homma, Miki, “The Influence of Chinese Art on Persian Paintings in the Saray and Diez Albums,” Waseda Rilas Jornal 5 (2017), pp. 44-77; Wang, Ching-Ling, “Iconographic Turn:

“being careful not to be hurt by their friends” and “being careful not to hurt their friends.” A survey that measured friendship, concern for others/discreteness, sense

この説明から,数学的活動の二つの特徴が留意される.一つは,数学の世界と現実の

Tomitori, ”Improvement of the Q factor of a tuning fork quartz force sensor with modified holding way for nc-AFM/STM”, 15 th International Conference on NC-AFM, July 1–5, 2012,

Meta-analysis: comparison of F-18 fluorodeoxyglucose- positron emission tomography and bone scintigraphy in the detection of bone metastasis in patients with lung cancer..

[r]

[r]

[r]