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著者 常田 秀子

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(1)

子どもの学習主体形成と保護者の期待‑‑和光学園の 目指す学力観との関連から (研究プロジェクト 学 習主体形成に関する人間発達的研究)

著者 常田 秀子

雑誌名 東西南北

巻 2010

ページ 76‑90

発行年 2010‑03‑18

URL http://id.nii.ac.jp/1073/00001559/

(2)

1──研究の背景

自分の生活を通して自己の内面に湧き上がる問題に対して、能動的に学習を進 められることが、人間の発達にとって非常に大切なのは言うまでもない。しかし、

現在の学校教育において、個々の生徒がそれを達成できているかどうかは疑わし い。

和光学園では、それぞれの学校段階で、子どもたちが生活に即して内発的な動 機づけに基づいた学習を進めるために、様々な教育的試みを繰り返してきた

1)

この教育理念については、2009年に発行された和光学園のそれぞれの学校段階の 校長らによる「育てたいね、こんな学力」

2)

に詳しい。

この本によれば、和光の学力は、「子どもの生活現実から出発し、子どもの興 味や関心から学習課題を引き出し、『なぜ?どうして?』と問いが生まれ、連鎖 的に発展する学びを大切にする」「基礎や基本にこそ本質がふくまれているので、

教材や指導法を工夫して、『わかるよろこび』のある授業を作り、習得した学習 の定着をめざす」「法則や概念を生活や社会の現実とつなげて具体的に学ぶ」「以 上を通して『人間として生きる力につながる総合的な力』としての学力を目指す」

ものであるとしている

3)

さて、筆者は、2003年頃から、和光学園における障がい児童・生徒を含む共同

──────────────────

1)和光学園は、幼稚園から大学までが含まれ、幼児から成人までの一貫した人間教育を目指す学園で ある。

2)大瀧三雄・行田稔彦・両角憲二『育てたいね、こんな学力──和光学園の一貫教育』大月書店、2009 年。

3)行田稔彦「はじめに」前掲書、7-15頁。

研究プロジェクト:学習主体形成に関する人間発達的研究

子どもの学習主体形成と保護者の期待

和光学園の目指す学力観との関連から

常田秀子

所員/現代人間学部准教授

(3)

教育にかかわる研究会や、旧人間発達学科教員の和光高校でのリレー授業担当、

和光小学校での授業見学等を通して、和光学園の教育と関わってきた。和光小学 校での定期的な授業見学からは、実体験や生活と密着した課題を発展させながら 学習に取り組む子どもたちの様子や、クラス内の子どもたちのトラブルをクラス 全体の徹底的な話し合いを通して解決しようとする子どもたちの様子を直接見な がら、和光学園の教育の持つ価値を高く評価してきた

4)

一方で、2006年まで数年にわたって旧人間発達学科教員におけるリレー授業を 行った時の、一部の和光高校生の印象も、鮮明な記憶としてある。そこでの生徒 たちは、ワークなどにおいて具体的な活動をできる時間の生き生きした様子と、

具体的な活動を抽象的な理論に結びつけようとするような講義になったときの私 語の多さや散漫な様子との落差が非常に大きかった。具体的な活動が終わると、

引き続き授業内容への興味を維持できず、おしゃべりをしないではいられない様 子に関しては、一緒に授業を担当した教員は、常につながりの中にいることを確 認しないと不安であるかのように見え、絶え間ない注意の拡散によって内省が困 難になる可能性があると論じている

5)

。また、ヴィゴツキーによれば、教育の目 標は、生活的概念を科学的・抽象的概念に引き上げることであり、そのプロセス で、媒介手段としての言語は個人間から個人内へと変化してゆくという

6)

。和光 学園の教育が、「生活現実」や「共に学ぶ」ということを重視しているのは、生 活的概念と個人間言語という教育の始点に常に立ち返っていることと考えられ、

教育的には非常に重要なことである。反面、一部の高校生に見られた他者との絶 えざるおしゃべりは、思考が個人間言語を媒介としたものにとどまり、個人内の 内省により深められにくい姿を示しているとも解釈できよう。もちろん、大学教 員の授業の進め方や話術が、彼らにとって馴染みが薄いことが影響したのかもし れない。しかし、馴染んだ話し方や親しい人間関係からでないと学習が深められ ないのでは、状況に依存しない抽象的な思考がすでにかなり可能なはずの高校生 段階においては、学習の幅を狭めるリスクが大きいと考えられる。

子どもの成長にともない、一つの教育の効果が多様化するのは当然である。和 光学園においても、生活現実から共に学ぶことを通して、その学びをものごとの 本質に結びつけられる子どもはたくさんおり、そのプロセスで多くのサクセスス トーリーが生まれている

7)

。しかし、それと同時に、その陰になる子どもたちも 確かに存在しており、そのような状況全般を把握する必要があると思われる。子

──────────────────

4)常田秀子「和光小学校の取り組み──健常児と障害児を一緒に育てる「共同教育」の実践」『発達』

30(119)、2009年、57-64頁。

5)服部百合子「第Ⅰ部 研究の意義と目的(特集 学習主体性形成についての人間発達的研究)」『和 光大学人間関係学部紀要第11号第2分冊 人間発達研究』5、2007年、71-79。

6)ヴィゴツキー, L. S.「新訳版・思考と言語」柴田義松(訳)、新読書社、2001年。

7)両角憲二「ともに幸福になるためにともに学ぶ学校」前掲書1、138-187頁。

(4)

どもの成長に伴い子どもの内面の何が変化するのか、和光の教育を経て力を発揮 する子どもたちと、それが難しい子どもたちの差は何にもとづくのか、そのよう な構造を包括的に把握することが、今後の和光教育を考える上で必要であろう。

このような問題意識から、和光大学旧人間関係学部人間発達学科では「学習主 体性形成の人間発達的研究」というテーマで2006年から2007年にかけて和光学園 の小学校から大学までの学生に対して、学級・学校への適応や、学力観、対人的 自己調整に関するデータを収集し、同時に、保護者に対しても和光学園への期待 に関するデータを収集した。このデータは、部分的に分析され、第一次の報告は すでになされている

8)

。その後引き続き、同じテーマを追求し、和光学園の諸学 校段階の教員たちとも議論を繰り返してきた。

本稿では、このデータおよびその後追加したデータに基づき、子どもの学習観 や対人的自己調整に関する学校段階ごとの発達的変化、および、保護者の和光学 園に対する期待とそれらの変数間の関連性の発達的変化について検討する

9)

2──方法

調査対象:調査対象者は和光 小学校、和光鶴川小学校、和 光中学校、和光高校の児童、

生徒、和光大学学生、および、

調査対象となった小学校から 高校までの児童生徒の保護者 と大学生の保護者(調査協力 した大学生の保護者ではない)

である。それぞれの人数・構 成は、表 1 に示した通りであ る。

調査方法:小学校から高校ま での児童・生徒については、

──────────────────

8)常田秀子「第Ⅱ部 質問紙調査による学習主体性形成の実態と分析(特集 学習主体性形成につい ての人間発達的研究)」『和光大学人間関係学部紀要第11号第2分冊 人間発達研究』5、2007年、81- 107頁。

9)通常、「変化」ということばは、ある対象が時間軸に沿って示す状態の変容のことを示す。したがっ て、本研究のように、異なる年齢段階の対象がそれぞれの段階で示す状態を比較しても、厳密な意 味で「変化」とは言えないかもしれない。しかし、発達研究の場合、異なる年齢段階の対象を同じ 観点から比較対照したときの状態の差異には、成長や発達と呼びうるような生物学的変化、社会的 位置づけの変化が前提にあると考えるため、そのような差異を「横断的変化」と呼ぶ。したがって、

本論でも、異なる学年群間の差異を、「変化」と呼ぶ。

児童数 男子 女子 保護者

小学校低学年 1年 137 112

2年 138 226 187 116

3年 138 86

小学校高学年 4年 123 95

5年 140 209 190 110

6年 136 95

中学 1年 139 78

2年 146 224 204 91

3年 144 74

高校 1年 206 172 198 99

3年 165 50

大学 1年 119 65

2年 136 209 203 3年 88

4年 66

表1 調査対象となった子どもとその保護者

(5)

学校の授業等において、担任が質問紙を配布の上、回答、回収した。保護者用の 質問紙については、子どもの質問紙と同じ整理番号を記したものを子ども用質問 紙と同時に配布、自宅に持ち帰ってもらい、保護者の記入後、再度学校で回収し た。これにより、保護者と子どもをペアにして分析できるようにした。大学生保 護者については、新入生保護者説明会の際に質問紙を配布し回答後回収した。調 査は2006年 2 月〜2007年 4 月に行った。

質問項目:子ども用の質問項目は、学校段階に合わせて、小学校低学年版、小学 校高学年版、中学生以上版の 3 種類を作成した。それぞれの版での質問内容はほ ぼ同じだが、学校段階に合わせて質問を具体的にしたり、漢字表記をひらがな表 記にする、質問項目数を減らすなどしている。調査に用いた質問項目は以下 3 種 類である。

①和光学園への期待(対保護者):この質問項目群には、いろいろな経験をす る、地道な学習をするなど16項目が含まれ、筆者が作成した。個々の質問に 対して、「大切でない」から「とても大切である」までの1点〜4点を割り当 てる形式で、保護者に回答を求めた。

②学習観(対子ども):この質問項目群には、学習にかかわる動機づけ、抽象 的・論理的学習や体験的学習に対する親近性に関する質問が含まれ、夏秋に よる尺度

10)

にいくつかの項目を追加して作成した。中学生以上版は10項目、

小学生版は9項目よりなる。それぞれの質問に対して「全然あてはまらない」

〜「とてもあてはまる」までの 1 点〜 4 点を割り当てる方法で、回答を求め た。

③対人的自己調整(対子ども):この質問項目群には、自己主張・自己抑制を 中心とした友だちとのコミュニケーションについて訪ねる質問が含まれ、小 学校高学年以上を対象に実施した。小学校高学年版では、「児童の自己表 現・自己主張尺度」

11)

、「児童の自己抑制尺度」

12)

をもとに、中学生以上版 では、それに「友人関係における自己表明尺度」

13)

を加え、それぞれいくつ かの項目を追加削除の結果、小学生版は17項目より、中学生以上版は23項目 によって構成した。「全然あてはまらない」から「とてもあてはまる」まで の1点〜4点を割り当てる形式で回答を求めた。

──────────────────

10)夏秋英房「勉強する理由」『モノグラフ小学生ナウ「小学生にとっての勉強」』24、2004年、17-23頁。

11)金慶美・伊藤義美「日常場面における児童用『自己表現・自己主張尺度』の作成」『情報文化研究』

18、2004年、123-132頁。

12)金慶美・伊藤義美「児童の自己抑制行動尺度の作成」『情報文化研究』17、2003年、127-138頁。

13)柴橋祐子「青年期の友人関係における自己表明と他者の表明を望む気持ち」『発達心理学研究』12、

2001年、123-134頁。

(6)

3──結果

1. 保護者の和光学園への期待

小学生から大学生までの全保護者の和光学園に対する期待に関する質問項目へ の回答を因子分析したところ、3 つの因子が抽出された(表2)。第 1 因子は、仲 間や教師とのコミュニケーション、実体験などを通して、思考力や創造性、個性

1 2 3

第1因子:全人的成長

創造性をはぐくむ .851 -.038 -.059

個性をのばす .802 .000 -.124

豊かな友だち関係を経験する .709 -.038 0.68

コミュニケーション能力を高める .699 .146 -.038

教師との関わりを深める .624 -.068 .107

思考力を身につける .616 .126 .127

親と先生で積極的な意見交換ができる .575 .048 .014

いろいろな体験ができる .566 -.039 .041

第2因子:社会に対する自己コントロール

我慢や気持ちのコントロールができる .007 .879 -.063

場面や相手に応じた行動を身につける .061 .838 -.086

協調性を身につける .029 .705 .026

社会常識を身につける -.154 .695 .269

公正な判断力を見につける .312 .471 .042

第3因子:一般的学力

世間で通用する学力を身につける -.070 .105 .721

地道な学習ができる .149 -.095 .657

高い学力を身につける -.003 -.006 .641

表2 小学生から大学生までの保護者の和光学園への期待の因子分析

因子抽出法:重みなし最小二乗法 回転法:Kaiser の正規化を伴うプロマックス法

大学 高3 高1 中3 中2 中1 小6 小5 小4 小3 小2

一般的学力 社会に対する自己コントロール

全人的成長

0.00

小1

0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00

図1 子どもの年齢による保護者の期待の変化

(7)

を深めるといったことに対する期待である。非常に他方面にわたる包括的な期待 であることから、〈全人的成長〉と命名した。第 2 因子は、場面に合わせて気持 ちや行動のコントロールをしながら、常識や協調性、判断力などを身につけるこ とに対する期待であり、〈社会に対する自己コントロール〉と命名した。第 3 因 子は、学力や地道な学習に対する期待であり、〈一般的学力〉と命名した。この 因子分析結果は、それぞれの学校段階で別個に行った因子分析結果とほぼ同じで あり、和光学園の児童・生徒の保護者は、学校段階にかかわらずほぼ同一の因子 構造の和光学園に対する期待を持っているものと考えられた。

各因子に含まれる項目の平均得点の子どもの年齢ごとの変化を図 1 に示す。こ れによると、〈全人的成長〉への期待は学年、学校段階を超えて3

.

6〜3

.

8となって おり、非常に高い。一方、〈社会に対する自己コントロール〉への期待は、3

.

0〜

3

.

5になっており、どの学年でも 2 番目に高い期待を示した。〈一般的学力〉への 期待は、2

.

5〜3

.

1であり、3 つの因子の中ではどの群ももっとも低い期待を示し た。また、大学は、他の学校段階とはやや異なる傾向を示している。〈全人的成長〉

〈社会に対する自己コントロール〉への期待はいずれも3

.

5程度と同程度に高く、

〈一般的学力〉への期待も平均3

.

0を超え、他の学校段階に比べて明らかに高い。

2. 保護者の和光学園への期待と子どもの学習観

(1)子どもの学習観の因子構造の発達的変化

まず、子どもの学習観の因子構造が学校段階に応じてどのように変化するかを 検討した。そのために、それぞれの学校段階ごとに、学習観への回答の因子分析 を行った。それぞれの学校段階で抽出された因子に含まれる代表的な項目と、因 子ごとの平均得点を表 3 に示す。

小学校低学年では、因子分析の結果 2 つの因子が抽出され、それぞれ〈外発的

小 学低学年

2.990.78

3.290.63 小 学高学年

2.530.68

3.210.78 中 学

2.540.73

2.690.71

2.550.85 高 校

2.230.55

2.740.60

3.120.62

3.040.66 大 学

2.480.66

3.050.60

2.67 0.78 因子名

外発的動機付け

内発的動機付け

体験と討論の重視

わかることの喜び

抽象性の敬遠

該当する主な質問項目 勉強したほうがお金持ちになれ る/勉強したほうがやりたい仕事 につきやすい

「体験と討論の重視」「わかる事の 喜び」内の項目が含まれている ものごとの本質について知りた い/実体験を通した学習がすきだ 勉強してわからなかったことがわ かるとうれしい/勉強して新しい ことを知るのがうれしい 授業中、学問的な難しい単語が出 てくると、退屈に感じる/抽象的 な内容の学習は面白くない 表3 子どもの学習因子構造の発達的変化

上段:平均値、下段:SD

(8)

動機〉〈内発的動機〉と命名した。〈外発的動機〉は、「勉強をした方がやりたい しごとにつきやすい」などの項目が含まれ、学習の結果得られたり回避できるこ とに焦点を当てた学習観であり、〈内発的動機〉は「みんなで考えたり話したり する勉強が好き」「わからなかったことがわかるとうれしい」など、学習のプロ セスそのものに焦点を当てた学習観である。同じような因子は小学校高学年でも 抽出された。また、低学年、高学年のいずれにおいても、〈内発的動機〉の得点 は3

.

29、3

.

21と非常に高く、〈外発的動機〉の得点である2

.

99、3

.

53よりも有意に 高かった(低学年

t =

7

.

26

(

412

),p

<0

.

01、高学年

t =

14

.

89

(

394

),p

<0

.

01)。

中学生になると、〈外発的動機〉〈内発的動機〉因子に加えて、〈抽象性の敬遠〉

と言えるような因子が出現する。これには「授業中、学問的な難しい単語が出て くると退屈に感じる」といった項目が含まれる。また、〈内発的動機〉の得点は 2

.

69と小学生に比して低くなる。

高校では、〈内発的動機〉が〈体験と討論の重視〉と〈わかる事の喜び〉と命 名できるような 2 つの因子に分化する。〈わかることの喜び〉に示されるような、

新しい事を知ったり、ものごとを理解したりすることへの喜びは3

.

12と高い得点 を示すのに対して、〈体験と討論の重視〉は2

.

74と相対的にそれほど高い得点で はない。同時に、〈抽象性への敬遠〉が3

.

04へと高まるのは、高校で学習内容が 一気に抽象的・理論的になることと関係しているだろう。

総じて、小学校段階の学習観は大まかに 2 分されるのみで、学習の細かな側面 が分化していない。それに対して、中学、高校になるにつれて、内発的動機付け が、体験を重視する気持ちや、分かる喜びを重視する気持ちへと分化し、同時に 抽象性を敬遠する気持ちが明確になることが特徴的だった。

(2)保護者の和光学園への期待と子どもの学習観の関係の発達的変化

ここでは、保護者の和光学園への期待と子どもの学習観の関連性が、子どもの 学校段階に応じてどのように変化するかを検討する。保護者の和光学園への期待 は 3 つの因子から構成されているが、それぞれの因子ごとに、各保護者の因子得 点に基づいて保護者を低・中・高の 3 群に分け、それぞれの群に属する保護者の 子どもの学習観の得点を比較した(表4

保護者の〈全人的成長〉への期待の高低よる子どもの学習観の差は、高校生の

〈わかることの喜び〉〈抽象性の敬遠〉の 2 因子においてみられ、いずれも、低群 よりも中、高群の保護者の子の方が高い傾向がみられた。すなわち、和光学園に 対して討論や実体験を通した思考力や個性の育成を期待する保護者の子ほど、高 校段階に至って、わかることや新しい知識を学ぶことの楽しさを感じると同時に、

抽象的な授業などを敬遠する。一方で、体験を重視する傾向は、保護者の期待の 高低による群間差がないことも特徴的である。

保護者の〈社会に対する自己コントロール〉への期待との関連では、高校生の

(9)

小学低学年 小学高学年 中 学 高 校 保護者の期待 平均(SD)(人数) 平均(SD)(人数) 平均(SD)(人数) 平均(SD)(人数)

保護者の期待:全人的成長 子の学習観

外発的動機付け 低群 3.01 0.71 41 2.58 0.70 80 2.58 0.77 54 2.14 0.68 51 中群 2.90 0.76 62 2.52 0.68 88 2.42 0.72 83 2.23 0.45 53 高群 3.02 0.79 199 2.49 0.68 124 2.64 0.69 79 2.34 0.46 44 内発的動機付け 低群 3.28 0.69 41 3.20 0.77 80 2.67 0.67 54

中群 3.31 0.64 62 3.20 0.82 88 2.66 0.73 83 高群 3.28 0.62 199 3.22 0.76 124 2.75 0.72 79

体験と討論の重視 低群 2.70 0.65 51

中群 2.74 0.62 53

高群 2.78 0.51 44

わかることの喜び 低群 2.99 0.74 51 高校生*(低<高*)

中群 3.13 0.55 53

高群 3.26 0.54 44

抽象性の敬遠 低群 2.45 0.78 54 2.89 0.76 51 高校生*(低<中*)

中群 2.49 0.83 83 3.19 0.61 53

高群 2.66 0.90 79 3.02 0.58 44

保護者の期待:自己コントロール 子の学習観

外発的動機付け 低群 3.03 0.79 110 2.59 0.71 137 2.61 0.78 88 2.13 0.60 67 高校生*(低<高*)

中群 2.98 0.75 101 2.46 0.70 62 2.41 0.65 64 2.23 0.42 37 高群 2.97 0.80 91 2.48 0.63 93 2.58 0.71 64 2.39 0.54 44 内発的動機付け 低群 3.30 0.65 110 3.16 0.82 137 2.80 0.69 88

中群 3.28 0.63 101 3.19 0.73 62 2.59 0.71 64 高群 3.27 0.62 91 3.30 0.74 93 2.65 0.72 64

体験と討論の重視 低群 2.68 0.61 67

中群 2.76 0.67 37

高群 2.80 0.52 44

わかることの喜び 低群 3.05 0.70 67 高校生**(低,中<高*)

中群 3.01 0.55 37

高群 3.32 0.52 44

抽象性の敬遠 低群 2.45 0.75 88 2.96 0.67 67

中群 2.64 0.90 64 3.08 0.64 37

高群 2.59 0.92 64 3.13 0.67 44

保護者の期待:一般的学力 子の学力観

外発的動機付け 低群 2.97 0.77 157 2.60 0.72 108 2.56 0.70 57 2.26 0.55 41 高学年*(中<低*)

中群 3.00 0.75 63 2.38 0.66 83 2.53 0.77 115 2.22 0.58 78 高群 3.03 0.81 82 2.57 0.65 101 2.56 0.67 44 2.23 0.47 29

内発的動機付け 低群 3.31 0.64 157 3.16 0.81 108 2.60 0.82 57 高学年*(低<高*)

中群 3.27 0.56 63 3.11 0.87 83 2.72 0.65 115 高群 3.25 0.68 82 3.34 0.64 101 2.75 0.71 44

体験と討論の重視 低群 2.75 0.59 41

中群 2.74 0.63 78

高群 2.70 0.54 29

わかることの喜び 低群 3.12 0.65 41

中群 3.10 0.64 78

高群 3.17 0.56 29

抽象性の敬遠 低群 2.45 0.77 57 2.98 0.59 41

中群 2.64 0.85 115 3.06 0.66 78

高群 2.43 0.94 44 3.07 0.76 29

**p=0.05, *p=0.1 表4 保護者の和光学園への期待と子の学習観

(10)

〈外発的動機〉〈わかることの喜び〉において高期待群の保護者の子の方が低期待 群の子よりも高い傾向を示した。

保護者の〈一般的学力〉への期待との関連では、小学校高学年の〈外発的動機〉

〈内発的動機〉と関連していた。〈外発的動機〉は低期待群、高期待群の保護者の 子が中程度の期待を持つ保護者の子よりも高く、学力期待の中群より低群、高群 の方が高く、〈内発的動機〉は低期待群の保護者の子よりも高期待群の子のほう が高かった。

3. 保護者の和光学園への期待と子どもの対人的自己調整

(1)子どもの対人的自己調整の因子構造の発達的変化

子どもの対人的自己調整能力に関する因子構造の発達的変化を調べるために、

学校段階毎の対人的自己調整能力に関する質問項目について因子分析を実施した。

小学校高学年から高校生までの学校段階ごとの因子分析から抽出された因子につ いて、含まれる主な質問項目と、因子ごとの平均得点を表 5 に示す。

小学校高学年の回答に対して因子分析を行ったところ、4 つの因子が抽出され、

それぞれ、〈友だちへの注意〉〈意見表明〉〈断り〉〈行動や感情の調整〉と命名し た。〈友だちへの注意〉は「友だち数人で他の人の悪口を言っている時、それは よくないと言う」などの項目からなり、友だちの迷惑や公正さに欠ける行動など に対する注意に関わる因子である。平均得点は非常に低く、2

.

49だった。〈意見 表明〉は、「自信を持ってみんなの前で自分の考えていることを言う」などの項 目からなり、自分の考えをグループやクラスで表明する傾向に関わる因子であり、

平均得点は2

.

61だった。〈断り〉は「友だちから何か頼まれたとき、やりたくな

小 学高学年

2.490.75

2.610.84

2.810.88

3.070.61 中 学

2.900.56

2.320.75

2.962.65

2.640.59 高 校

3.140.50

2.370.56

2.850.60

2.630.71 大 学

3.080.49

2.280.51

2.740.69

2.760.62

2.610.42 因子名

友だちへの肯定的 働きかけ 注意

意見表明

注意と意見表明

断り

行動や感情の調整

該当する主な質問項目

友だちが大きなことを成し遂げたときに、尊敬の 気持ちをことばで伝える/友達が落ち込んでいる ように見えるときには、励まそうとする 授業中にさわがしくしている人がいたら、「しず かにして」と言う/分担した仕事をしない友達に は、はっきり注意する

友だちから意見を求められたときは、自分の考え をはっきり言う/自信を持ってみんなの前で自分 の考えていることを言う

「注意」「意見表明」双方の項目を含む

ノートを貸してと頼まれても、使う予定があると きはそう言って断る/貸したものをいつまでも返 してくれない友達には返してとはっきり言う これをしようと決めたことをずっと続けることが できる/つまらなかったりむずかしくても、とち ゅうでやめないで最後までやる

表5 子どもの対人的自己調整因子構造の発達的変化

上段:平均値、下段:SD

(11)

い場合は断る」のような項目を含む、依頼、誘いなどに対して、自分の気持ちや 都合に即して断る事に関する因子であり、平均得点は2

.

81だった。〈行動や感情 の調整〉については、「友だちが自分と違う意見を言った時でも、友だちの話を ちゃんと聞ける」などからなり、友人関係やその他の場面での自分の感情や行動 の調整に関わる因子であり、3

.

07と相対的に高い平均得点だった。

中学、高校については、ほとんど同一の因子構造がみられた。第 1 因子は「友 達に感謝している時には、その気持ちを言葉にして表す」「友達が大きなことを 成し遂げた時、尊敬の気持ちを言葉で伝える」など、友人関係において相手に肯 定的な内容を積極的に伝えるという因子であり、〈友達への肯定的働きかけ〉と 命名した。この因子は平均得点が非常に高く、中学で2

.

90、高校で3

.

14だった。

第 2 因子は、高学年の〈注意〉と〈意見表明〉に含まれる項目がほぼ含まれた因 子であり、〈注意と意見表明〉と命名した。自分の考えをはっきりと表明するこ とと、他者への注意を行うことが一つの因子となり、中高生に類似の行動ととら えられるようになる、ということである。いずれも、人間関係の中で自分自身を 強く際だたせる行為であるという点で、同種の行動と見なされているのかもしれ ない。得点は非常に低く、中学生が2

.

32、高校生が2

.

37だった。第 3 因子の〈断り〉、

第 4 因子の〈行動や感情の調整〉は高学年とほぼ類似の内容であり、〈断り〉は 中学で2

.

96、高校で2

.

85、〈行動や感情の調整〉は中学で2

.

64、高校で2

.

63だった。

(2)保護者の和光学園への期待と子どもの対人的自己調整の関係の発達的変化 保護者の和光学園への期待と小学校高学年から高校までの対人的自己調整との 関連性の学校段階に応じた変化を見るために、和光学園への期待の 3 因子の因子 得点に基づいて保護者を 3 群に分け、その子どもの対人的自己調整の得点を比較 した。結果を表 6 に示す。

保護者の〈全人的成長〉への期待にもとづく群間比較では、高学年における

〈意見表明〉〈断り〉において、また、中学生の〈注意と意見表明〉において、高 期待群の保護者の子が、低期待群の子よりも有意に高い傾向を示した。他者とコ ミュニケーションや個性、創造性を学校により強く期待する保護者の子どもが、

より意見を表明したり、他者に注意をする傾向があることが示された。高校段階 では、この因子と関連する子ども側の因子はなかった。

保護者の期待のうち〈社会に対する自己コントロール〉因子に関しては、小、

中学生には有意な差はなかったが、高校生の〈友だちへの肯定的働きかけ〉〈注 意と意見表明〉において高期待群の保護者の子が低期待群に比べて有意に高い傾 向を示した。高校生段階になると、意見表明や注意という行為が、〈全人的成長〉

とではなく、社会への適応に向けた自己調整と関連することは興味深い。

また、保護者の〈一般的学力〉への期待は、小学校高学年の〈意見表明〉〈行 動や感情の調整〉と関連しており、保護者の期待が中程度の群よりも高群の得点

(12)

が高い傾向がみられた。

4──考察

1. 和光学園の学力観と学園に対する保護者の期待について

保護者の和光学園に対する期待において調査結果から見出される特徴は 2 点あ る。第一は、保護者の和光学園への期待の内容についてであり、第二は、その期 待が小学校 1 年から高校 3 年まで、大学保護者をのぞいてはほとんど変化がない、

ということである。

まず、保護者の和光学園への期待の内容についてである。〈全人的成長〉への 保護者の期待は、どの学年層においても非常に高く、〈社会に対する自己コント ロール〉への期待は〈全人的成長〉に比較すると低いものの、高い期待が見られ、

〈一般的学力〉に対しては、積極的な期待を読みとれない、という結果だった。

保護者群の全体的な傾向として、〈全人的成長〉が非常に高い得点を示す事は、

和光学園の教育目標のうち「生活現実」にもとづいて「共に学ぶ」ことが保護者 にきちんと浸透していることを示していると思われた。しかし、この因子内容が 和光学園の教育目標の全体像を指しているわけでもない。どのような要素が欠け るのか、という点についても今後考える必要がある。また、〈社会に対する自己 コントロール〉は一般社会常識や行動に対する期待であるが、保護者の期待は相 対的には低く、和光学園が追求する学力とは一線を画しているととらえられてい るのかもしれない。同時に、小学校から高校段階までの〈一般的学力〉への期待 の低さは注目に値する。この質問からは、それぞれの回答者が考える「一般的学 力」が何であるかは不明だが、「創造的ではなく」「忍耐を要するもの」を意味し ており、受動的な学習や反復訓練などが代表的と思われる。一般に、〈社会に対 する自己コントロール〉や、〈一般的学力〉の基盤となる地道さは、活動や活発 な討論を通して得られる洞察を自己内に取り込み、概念として熟成し、文章にし て表したり、他者を説得するために不可欠な要素と思われる。これらの項目が、

どの学年段階においても〈全人的成長〉因子と統合されず、別個の因子を形成し ている事が、和光学園の保護者の大きな特徴と考えられよう。

この結果を他の全国的な調査と比較すると、和光学園に子どもを通わせる保護 者の特徴は際だっている。たとえば、佐藤による全国の公立小中学校の保護者の 学校への期待に関する調査からは、小中学生の保護者の95%が、学校に対して

「教科の基礎的な学力」や「学習意欲」について学校に期待しており、85〜95%

の保護者が「社会のルール」や「規則正しい生活習慣」を期待している

14)

。これ

──────────────────

14)佐藤香「学校教育に対する保護者の期待と満足」『学校教育に対する保護者の意識調査』Bennesse教 育開発研究センター、2008年、36−47頁。

(13)

小学高学年 中 学 高 校 保護者の期待 平均(SD)(人数) 平均(SD)(人数) 平均(SD)(人数)

保護者の期待:全人的成長 子の対人的自己調整

友だちへの 低群 2.92 0.44 54 3.04 0.58 51

肯定的働きかけ 中群 2.83 0.66 83 3.18 0.44 53

高群 2.96 0.52 84 3.22 0.46 44

注意 低群 2.61 0.87 80

中群 2.94 0.81 89 高群 2.85 0.91 124

意見表明 低群 2.43 0.75 80 高学年*(低<中*)

中群 2.65 0.81 89 高群 2.70 0.90 124

注意と意見表明 低群 2.25 0.63 54 2.29 0.66 51 中学生**(中<高*)

中群 2.21 0.76 83 2.34 0.48 53

高群 2.48 0.80 84 2.50 0.50 44

断り 低群 2.61 0.87 80 2.92 0.66 54 2.80 0.67 51 高学年**(低<中**) 中群 2.94 0.81 89 2.93 0.71 83 2.92 0.60 53

高群 2.85 0.91 124 3.01 0.60 84 2.82 0.53 44 行動や感情の調整 低群 2.43 0.75 80 2.63 0.61 54 2.57 0.73 51 中群 2.65 0.81 89 2.55 0.57 83 2.65 0.81 53 高群 2.70 0.90 124 2.73 0.60 84 2.68 0.55 44 保護者の期待:社会に対する自己コントロール 子の対人的自己調整

友だちへの 低群 2.90 0.52 89 3.07 0.52 67 高校生**(低<高**)

肯定的働きかけ 中群 2.87 0.58 66 3.08 0.54 37

高群 2.93 0.60 66 3.31 0.40 44

注意 低群 2.44 0.76 138

中群 2.58 0.74 62 高群 2.51 0.75 93 意見表明 低群 2.55 0.75 138 中群 2.56 0.86 62 高群 2.73 0.93 93

注意と意見表明 低群 2.23 0.66 89 2.27 0.61 67 高校生*(低<高*)

中群 2.37 0.73 66 2.39 0.54 37

高群 2.40 0.88 66 2.50 0.47 44

断り 低群 2.80 0.88 138 2.93 0.70 89 2.78 0.61 67 中群 2.70 0.83 62 2.95 0.63 66 2.99 0.66 37 高群 2.90 0.91 93 3.01 0.62 66 2.85 0.53 44 行動や感情の調整 低群 3.01 0.63 138 2.61 0.58 89 2.53 0.74 67 中群 3.04 0.58 62 2.60 0.54 66 2.74 0.70 37 高群 3.17 0.60 93 2.72 0.66 66 2.70 0.66 44 保護者の期待:学力 子の対人的自己調整

友だちへの 低群 2.84 0.60 58 3.20 0.4 541

肯定的働きかけ 中群 2.90 0.57 117 3.11 0.54 78

高群 2.97 0.47 46 3.15 0.47 29

注意 低群 2.46 0.78 108

中群 2.41 0.72 84 高群 2.59 0.74 101

意見表明 低群 2.65 0.78 108 高学年*(中<高*)

中群 2.44 0.82 84 高群 2.72 0.89 101

注意と意見表明 低群 2.30 0.73 58 2.40 0.57 41

中群 2.30 0.74 117 2.37 0.57 78

高群 2.41 0.82 46 2.32 0.52 29

断り 低群 2.83 0.83 108 2.91 0.74 58 2.88 0.57 41 中群 2.73 0.97 84 2.98 0.64 117 2.83 0.62 78 高群 2.87 0.85 101 2.99 0.58 46 2.85 0.62 29

行動や感情の調整 低群 3.06 0.60 108 2.52 0.66 58 2.54 0.86 41 高学年*(中<高*) 中群 2.96 0.67 84 2.66 0.58 117 2.68 0.62 78

高群 3.16 0.56 101 2.72 0.53 46 2.63 0.72 29

**p=0.05, *p=0.1 表6 保護者の和光学園への期待と子の対人的自己調整

(14)

らは和光学園保護者の〈一般的学力〉〈社会に対する自己コントロール〉に対す る期待に相当すると考えられる。これらへの期待は、いわゆる「生きる力」と関 連する多様な活動への期待に比べると突出して高い。

また、和光学園の高校までの保護者の調査結果と、大学生保護者の結果も非常 に異なっている。大学生の場合、進学校選択に親の意向が介在する度合いは高校 以下よりも少ないと考えられるため、保護者の考え方はより標準的であると思わ れる。大学生保護者の期待傾向だけが、他の学校段階と大きく異なっている事か らも、和光学園の高校までの保護者の期待の独特さが読み取れる。

和光学園が目指す学力は、「現実世界に存在している切実な問いや疑問を学習 課題にし、仲間との意見交換や討論を仕組み、大人にとっても課題であるテーマ 学習に挑むことによって、総合的な学力や世界観の基礎を育てる」「自治的な能 力とともに、個性的な人格を育てる」プロセスの中で培われるものと考えられて いる

15)

。保護者が和光学園に対して期待する〈全人的成長〉因子は、このような 教育目標と強く関連している。保護者が学園の目標を理解し、教育実践に積極的 に関わることを通じてよりいっそう目標を共有するのかもしれない。

第二の、学園への期待が学年や学校段階を越えてほとんど変化しないことから、

子どもの成長や、それに対応した教育目標の変化が、保護者の期待の持ち方に影 響を及ぼさないことが示唆される。子どもおよび教育目標が成長とともに変化し てゆくならば、子どもの年齢にかかわらず一貫した保護者の学園への期待は、子 どもの実像とずれが生じる可能性があろう。

2. 保護者の和光学園への期待と子どもの学習観の発達的変化の関連性

子どもの学習観と保護者の和光学園への期待との関連性については、子どもが 小学生の頃は、〈一般的学力〉への高い期待を持つ保護者の子が学習に向けた高 い動機付けを示したが、中学生以降にはそのような関連は見られなかった。一方、

高校になると、〈全人的成長〉に高い期待を持つ保護者ほど、子どもは〈わかる ことの喜び〉に高い気持ちを持ち、〈全人的成長〉に中程度の期待を持つ保護者 の子に、抽象的な学習を敬遠する傾向が強く見られた。また、〈社会に対する自 己コントロール〉への期待を強く持つ保護者の子どもほど、「よい仕事」「お金」

などの学習を通して得られるかも知れない結果に対する〈外発的動機付け〉と、

〈わかることへの喜び〉の双方に対する高い動機付けを持っていることが示され た。

和光学園の教育が、現実世界の問題からスタートし、保護者も様々な体験を通 しての個性形成を期待しているとすれば、高校生において、現実との結びつきが 感じられない抽象的な学習への敬遠感が高くなるのはもっともだろう。高校段階

──────────────────

15)梅原利夫「おわりに」前掲書1、229―237頁。

(15)

では抽象的な内容の学習が自ずと増えたり、具体的な事例も抽象的な原則に帰す る必要性が増大すると推測されるが、〈全人的成長〉への期待が中程度の保護者 の子が、期待の高い保護者や低い保護者の子よりも抽象性を敬遠しやすいという 事からは、ある一群の子どもたちに取っては、生活現実から実体験を通して学ぶ 事への保護者の期待が、抽象的学習からの逃げとして機能しているということな のかもしれない。

また、「わかることは絶対的な楽しみ、よろこびである」と考える和光学園の 教育に対して、〈わかることの喜び〉を強く感じる高校生の保護者は、学校に対 して〈全人的成長〉を期待していることも、学校と保護者が価値観を共有してい る結果と思われる。なお、〈わかることの喜び〉については、学園に対して〈全 人的成長〉への期待を持つ保護者だけでなく、〈社会に対する自己コントロール〉

への教育を期待する保護者の子どもにとっても学習の動機づけになっていること が示され、このことは、学校段階が上がるにつれて、保護者が〈全人的な成長〉

だけではない複合的な期待を、和光学園や子どもの教育に対して持つ必要がある と推察される。

3. 保護者の和光学園への期待と子どもの対人的調整能力の関連性

和光学園の教育は「ともに幸福になるために、ともに学ぶ」ことを目指してい

16)

。和光学園の子どもたちが全体として、〈友だちへの肯定的働きかけ〉に高 い得点を示し、友だちへの尊敬の気持ちや気遣いなどを積極的に表明しようとす る態度は、このような教育目標と一致しているといえよう。しかし、小学校の低 学年の頃は自分の意見を表明できるのに対して、中高生になると、意見の表明と 友だちへの注意とが同質のものとして扱われ、意見の表明がなされなくなってい くことは、討論等を通して「ともに学ぶ」ことを重視する和光学園の教育を考え る上では大きな障害となろう。他者への気遣いを強め、自身の主張を抑制するこ とは、中高生としては一般的な傾向であると思われるが、和光学園での数値が一 般的な中高生と比べてどうであるのか、ということは、今後確認したいところで ある。

保護者の期待との関係については、小学生、中学生段階においては、〈全人的 成長〉への期待が高い保護者の子どもが〈意見表明〉〈注意や意見表明〉を多く 行っているが、高校になるとそのような関係は見られなかった。一方で、〈社会 に対する自己コントロール〉に高い期待を持つ保護者の子が〈注意や意見表明〉

を多く行っていることからは、和光学園が目指す教育を行うには、〈全人的成長〉

に示されるような個性やコミュニケーションに向けた期待だけではなく、場面に 応じた振る舞いや協調性などの〈社会に対する自己コントロール〉に対しても保

──────────────────

16)前掲書6。

参照

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