磁化 または磁束変動を利用 した ものについて述べ られている.
それに対 して,直交磁界形脱磁装置は, 1 回の強力なパルス電流によって形成 され る直交 磁界に よって,磁心に非可逆的な磁化の変化を生 じさせて,脱磁をおこな うものである
(4).直交磁界を利用 した脱磁は,脱磁 しようとす る残留磁気の方向 と,脱磁用磁界の方向 とが 直交 している点において,従来の脱磁法とは磁気的な構成が まった く異なってい る.
本論文では,直交磁界形脱磁装置について,直交磁界を加えることに よって,残留磁気が 減少す る様子を解析 し,また,実験 との比較をおこなってい る.直交磁界は被脱磁体の一部 分に加えるだけであ り,その結果生 じる磁気的境界の形成す る反磁界が脱磁状態を決定す る 重要な因子 となることを明 らかに している.
2.直交磁界の作用
直交磁界形脱磁装置の構成を図
1に示す.解析を簡単にす るために,被脱磁体
Mは一軸異 方性環状テ‑プ巻磁心 とし.円柱座標系
(T
,0,36)を考える.
直交磁界
Hzは励磁巻線
Wに流れ る電流 tに よって形成 され,直交磁界発生用磁極
P,PIに よって被脱磁体に加え られる.電流 ‡は,直交磁界発生回路の コ ソデ ソサ
Cを放電す るこ とに よって得 られ るパルス電流であ り,巻線の温度上昇の制限を受けずに,強力な直交磁界 を発生できる.被脱磁体の磁束変化は,さ く ・りコイル
Wタ に よって検出され,衝撃検流計 BG
または積分回路を用いて測定 される.
直交磁界
Hzの大 きさは次式で定義する.
Hz‑?i ・‑・‑‑‑‑(1)
ここに
,W :励磁巻線の巻数, I:直交磁界が通過す る磁路の長 さ
計算値 と実測値 との比較をお こな うため,(
1)式の誤差が小 さくなるよ うに,磁極
P,PJと 環状磁心 との間のギ ャップは極力小さくしてい る.
★ 昭和
50年
2月 電気学会磁気応用研究会において発表
柑
電気工学科助教授
原稿受付 昭和
50年
9月30日
60 長野工業 高等 専門学校紀要 ・第6号
図1
脱磁装置の構成
図2直交磁界の作用
環状磁心の 0方向に,磁界
Hを加え,最大磁束密度
Bmまで磁化 した後,磁界Hを取去 る.
その結果,初期残留磁気
Bn . が形成される.
つ ぎに,環状磁心の一部に直交磁界
Hlを加える.直交磁界が環状磁心に直接影響を与え る部分を領域
(Ⅰ
),その他の部分を領域
(ⅠⅠ
)とし,それぞれの領域の磁路の長 さを l l , l 丑とす る.領域
(I)と(
Ⅱ)は,直交磁界の有無によって磁化状態に差を生 じるため,領域間に磁気的 な境界面を生 じる.境界面は図
2に示 した ように, β方向に付 して垂直 とみなせるものとす
る.
磁気的境界面の形成に よって,領域
(ⅠⅠ)に生 じる反磁界H edと,領域(Ⅰ
)の磁界
H olと の関係は,
H
o
lll‑Hodl2 ‑ ・‑ ‑ ・‑・(2)と表わせる.
領域
(Ⅰ
),(ⅠⅠ
)の磁化
Jl,J2は直交磁界の作用によって,それぞれ 3 6方向とpl ,P2をなす 方向に向け られるとして,J
l,J空の
0方向成分
Jel,JC2は次式で表わされ る.
Jc,・‑J,・sing.1
・ ・
‑ ・・・・・・‑・(3)ここに,i‑1,2
この場合,磁心の個個の磁区の磁化容易方向は完全に一致 しているわけでな く,磁区構造 等に よって定 まる一定の分布を示すはずであるが,ここでは, このような分布を無視 してい
る.
漏れ磁束がないものとして, e方向の磁束密度 Bu磁束の連続性か ら
B‑FEoHol+Jo1‑‑FLoHod+Joe ‑ ‑ ・‑ ・‑・(4)
N‑17fT2 ‑‑‑‑・‑(7)
が得 られ る.
( 7 ) 式は環状磁路の一部にエアギ ャップを設け,漏れ磁束を無祝 して計算 した場合 の 反磁 界係数 と同 じ結果である
(5) .したが って,磁化
Jlが完全に 3 6方向に向け られた と仮定 した場 合は
,J♂1‑0 とな り,領域 ( I ) の作用はエアギ ャップと等価であるといえる.
つぎに,磁化
Jlには,直交磁界
HL ,磁界
Holお よび環状磁心の異方性磁界
Haoが作 用 してお り, これ らに より,磁化
Jlに作用するモーメン ト
Tは
T‑Jl(Hol+Hao)cospl‑JIHZSinpl ‑‑‑‑
‑( 8) である.
磁化
Jlは常にモーメソ トの平衡が とれ る方向に向 くものとみなせるな らば,
7‑0 とし て,J
♂1について整理すると
机
号H od+Haer+Hz2が得 られ る.
直交磁界を増加す るにつれて,領域
(I
)と(
ⅠⅠ
)との磁化 状態の差は大 きくなるか ら,それ と共に,反磁界
Hedは 増加 してい く. したが って,磁心の磁気的状態は,図
3の矢印のように, ヒステ 1 )シスループの減磁曲線上を移 動する.
減磁 曲線を次式で近似す る
(6).β=‑H
o d+Hc
Hc H o d
Bl・
E Bm
‑‑‑‑‑‑(10)ここに
,Hc:保持力
以上の式を整理 して,次式が得 られ る.
・‑‑‑‑‑(9)
‑Ilc ‑fled
図3 減 磁 曲 線
62
長野工業高等専門学校紀要 ・第
6号0.5 1.0
〃rHT)
1.5 0.5 1.0 βrHT)
1.5
図
4 Bm‑Br''特性 図5 Lh‑Bri特性H z‑(
(
讃 露 )2‑(Hao満治
卦 )21%‑ ‑・ ‑ ・ ‑
‑(ll) (ll
)式は,直交磁界
Hzと磁束密度
Bとの関係を示す式であ り,両者の関係は,磁心の磁 気的特性,初期残留磁気,領域 の,(
Ⅱ)の磁路の長 さに よって決定ずけ られている.
(ll)
式に含 まれている磁心の特性について考察 してみると,初期残留磁気
B, . ・ は最大磁束 密度
Bmと磁心の特性に よって決定され るが,図
4にその特性の一例 として,方向性けい素 鋼磁心の場合について示す.また,初期残留磁気 と保持力 との関係の一例は図
5であ り, こ れ らの関係は, ここで示 した範囲では,それぞれ次式で表わせ る.
Bm‑bmB,ia
Hc‑hcBr‑・0
ここに,b m,hc
,α,β:磁心の特性に より定 まる定数
このような特性を
(ll)式に代入 し
,FLoHed<SBとみなせ るな らば
Hl‑b‑H%B;[β2丁
bmB'‑一 票
i‑r‑J (チ )2‑B2yi
ここに,
γ‑B/B'.・に よって,直交磁界
Hlと磁束密度B との関係を表わせる.
さ らに
,B≪B,. 1お よび
α̲〜β=1とみなせ るな らば B‑東芝 J
l‑ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
・・(12)‑ ‑‑ ‑・
‑(13)・ ‑ ‑・ ‑ ・ ・
‑(14)・・‑‑‑‑・(
1 5 ) で近似できる.
直交磁界
Hzと磁束密度
Bとの関係は図6である.計算値は(
14)式を用いてお り,磁化 Jl
は直交磁界が大 きいことか ら飽和磁化
Jsを採用 している.Js は,最大磁束密度
Bmが飽和
磁束密度
Bsになるような磁界
Hsを加えた とき,次式で決定 した。
2 4 6 8 10 flz(KA/m)
図6 Hz‑B特性 (静特吐)
2 4
JJ〜(KA/ml
図7 パルス直交磁界の作用
Js‑Bs‑FLoHs ・・・・・・・・・・・・・・・(
1 6) 磁束密度の変化は非可逆的であ り,図
6は直交磁界を零か ら次第に増加させた場合につい て実測をお こな っている.
磁化 Jlの大 きさに近似を用いた こと, 異方性磁界を無祝 した こと, お よび直交磁界を求 め る
(1)式に誤差が予想され ることなどか ら計算値 と実測値 との間には相違が左 られ るが, 全般的な傾向は( 1 4) 式によって, じゅうぶん説明されているものと考え られ る.
3.
パ ル ス直 交 磁 界 に よ る脱 磁
磁心の磁束密度を相当広い範囲にわた って非可逆的な変化をさせ るためには励磁巻線
Wに 相当大 きな電流を流す必要がある. これは, コソデ ソサ放電に よって流れ る電流を利用すれ ば よく,その結果パルス直交磁界が形成 される.
パルス直交磁界を加えた場合の磁束密度変化を図
7に示す.直交磁界の増加 と共に磁束密 度は図
7の点
Rか ら次節に減少をは じめ,H2‑H I M
,(i‑tm)では点
Sに達す る. この瞬間 か ら直交磁界は減少をは じめ,磁心に対す る直交磁界の影響が減少す るため磁束密度は曲線
STに沿 ってゆ るやかに増加 し
T点に達する.
最大直交磁界が
H zmであるようなパルス直交磁界を加えた場合,磁心に最終的に残 っている残留磁気 ふ との関係を図 8に 示 す.残留磁気の計算には( 1 4) 式をそのまま用いた.
Hzm>20kA/
m では,磁極 P
, PIが飽和に達 し,実際上残留磁気を減少させ る効果はそ
れ以上増加 しないため,それ以上の範囲では一定になるもの として計算結果を示 した.
長野工業高等 専門学校紀要 ・第
6号20 40 60 80 JJ〜爪rKA/m)
図8 Hzm‑Br
特性
Hz^!P\VOS「̲̲ト十0^!pJ^otsa
胞
胚 賢≡ ATJ陀同国
02
4
681t(ms)012図9 オ
シロ
グラム図
9のオシ ログラムは直交磁界 を形成す る コンデ ンサ
Cの放電電流の波形 と,環 状磁心 に巻かれたさ く ・りコイル
Wsに 生 じる誘起電 圧 e sの時間的変化であ る.磁束変化は
esの 時間積分値で与え られ る.最大直交磁界を大 き くとってい るため
,esの極性は一方に偏 し てお り,磁束 のもどり現象はみ られていない.
4.あ と が き
本論文では一軸異方性を持 った磁心 の一部分に加え られ る直交磁界の非可逆的作用につい て解析 し,直交磁界 と磁束密度 との関係を求め, さらに実験的な検討 をお こな ってい る.
筆者は直交脱磁法の応用 として,環状磁心や電磁石の脱滋 のほかに,零相変流器な どの よ うに初透磁率付近で用い られ る装置の試験特性の再現性の向上や,変圧器の励磁突入電流防 止な どに も適用できるもの と考えて検討中である.
おわ りにあた り, 日頃 ご指導いただいてい る信州大学 山田‑ 助教授,お よび, ご討論 いただいた本校電気工学科談話会のメンバー諸氏に謝意を表す る次第である.
参 考 文 献