• 検索結果がありません。

深部静脈血栓症の予防 と治療

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "深部静脈血栓症の予防 と治療"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

総 説

深部静脈血栓症の予防 と治療

一 関 一 行 高 谷 俊 一 福 田 幾 夫

抄録 肺 塞栓 症 は欧米 で は 3 大血管疾患 の ひ とつ とされ る. その 9 割 以上 が下肢 の深部静脈血栓 症 に起 因す る とされ, 積極 的 な予 防が行 われてい るの に対 し,本邦 で は従 来比 較 的稀 な疾患 とされ,周術期 の深部静脈血栓 症予 防 も積極 的 に行 われて来 なか った.近年 い くつかの報告 に よ り,本邦 において も肺塞栓症 は稀 な疾患 ではない ことが 明 らか とな り, 積極 的 な予 防が必要 と考 え られ る.術前 に各症例 の リス クフ ァク ターか ら危険度 をグ レー ド分 けす る こ とに よ り,術 後の発症 頻度 をあ る程度予測す る こ とが で きる.深部静脈血栓 症 の予 防 に効 果 のあ る手段 と して,ヘ パ リン, アス ピ リン, ワー フ アリン, 間欠的空気圧 迫法 ,弾性 ス トッキ ングな どが挙 げ られ るが,危 険度 に応 じて効 果が あ る とされ る予 防手段 を組 み合 わせ る こ とに よ り,深部静脈血栓 症 お よび肺 塞栓 症 の発症 を低 減 させ る こ とが で きる.深部静脈 血栓症 に対す る医療 と しては, まず予 防 を行 うこ とが最 も重要 と考 え られ る.

弘前 医学 5 5 : 3 5‑4 2 ,2 0 0 4 キー ワー ド:深部静脈血栓症;肺塞 栓;予防;治療 .

REVI EW

PREVENTI ONANDMANAGEMENT OFVENOUSTHROMBOEMBOLI SM

I kkoh I c hi nos eki ,Syuni c hiTaka ya,a ndI kuoFukuda

Abs t rac tPul mo na r ye mbol i s m ( PE)i sama j o rdi s e a s ei nEur o pea ndAme r i c a ・De e pve no ust hr ombo s i s( DVT) i sac o mmo nc a us eo fPE,a ndi t spr ophyl a xi si spe r f or me da c t l Ve l y.Ho we ve r ,i n O urc o unt r y,t hepr o phyl a xi s o fpe r i ‑ s ur gi c a lDVT ha sno tbe e nas ub j ec to fa t t e nt i o nbe c a us eo ft her a r ei nc i de nc eo fPE.Rec e nt l y,S e ve r al a r t i c l esi nt hel i t er a t ur ei ndi c a t e dPE i sac ommondi s ea s ei nourc ount r ya l s oa ndac t i vepr o phyl a xi si s nec e s s a r y.A c l a s s i 丘c a t i o no fr i s ko fDVT pr e di c t st hei nc i de nc eo fpo s t o pe r a t i veDVT a ndPE.A c o mbi na t i o n o ft hef o l l o wl ngmO da l i t i e si se f f ec t i vef orpr o phyl a xi sa ndc a nr e duc et hei nc i de nc eo fDVT:He pa r i n;a s pl r l n , wa r f a r i n,i nt er mi t t e ntpneuma t i cc ompr es s i ona ndgr adua t edc ompr e s s i ons t oc ki ngs .Pr ophyl a xi si smos t i mpo r t a nti nt hema na ge me nto fDVT.

Hi r o s a kiMe d. ∫ .55: 3 5‑4 2 ,2 0 0 4 Key words:Deepvenoust hr ombos i s ;Pul monar yembol i s m;Pr ophyl axi s ;Management .

は じ め に

肺 塞 栓 症 ( Pul monar y embol i s m:PE) は 欧 米 で は虚血性 心疾患 ,脳 血 管疾患 と並 んで 3 大 血 管疾患 の ひ とつ とされ,剖検 にお け る肺 動 脈 内血 栓 は 5 2 ‑ 6 4% に認 め られ る 1) . 入 院患 者

で の致 死 的肺 塞 栓 症 の 発生 率 は欧 米 で は 0 . 3‑

0. 5 % , 本 邦 で は 0 . 2 6%2 ) と され, ひ とた び 発 症 す れ ば致 死 的 とな る こ と もあ る. 一方,肺 塞栓 症 の 9 0% 以 上 が 下 肢 の 深 部 静 脈 血 栓 症 ( Deep vei nThr ombos i s :DVT)に よ り生 ず る 3 1 4) ため, DVT を予 防す る こ とは,す なわ ち PE の予 防 と 弘 前 大 学 医学 部 第‑ 外 科

別刷 請 求 先 ' ・一 関一 行 平成 1 5 年 6月 1 9 日受付 平成 1 5 年 8月 2 6 日受理

Fi r s tDe pa r t me nto fSur g e r y , Hi r o s a kiUm ive r s l t y Sc ho o lo fMe d i c i ne , Hi r o s a ki , Ja pa n

Co r r e s po nd e nc e : Ⅰ . I c hi no s e ki

Re c e i ve d丘) rpubl i c a t i o n, June 1 9 , 2 003

Ac c e pt e df わ rpubl i c a t i o n, Aug us t2 6, 2 0 03

(2)

なる.

DVTの発生原因としては, 1 840 年にVi r c ho w によって提 唱 され た 3 徴 が現在 で も支持 され て い る. す な わ ち① 血 流 の停 滞( 彰静 脈 壁 の損 傷 ( 彰血液凝 固能 の克 進 であ るが,術後 DVTの発 症 要 因 と して も, これ らの 3 徴 が あて は まる.

smi t hら 5) は術 中か ら術 後 にか けて下腿, と く に排腹筋近位 レベ ルの深部静脈が拡張す るこ と を示 してお り,静脈の拡張 に よる血流 の停滞 と 血管 内膜の損傷,そ して術後生体 反応 と しての 血液凝 固能 の克進 が DVTの引 き金 になってい

る と予想 される.

これ らを念頭 においた上で,周術期 には DVT に対す る予 防が行 われ るべ きであ り,欧米での サ ーベ イラ ンスで は回答が得 られ た うち,86 % の施設で何 らかの DVT予防法 を講 じている 6) .

血管内膜の損傷 に対 しては大腿静脈 にカテー テル を留置 しない こと,或 いは早期抜去 を心 が けるな ど,基本的 な注意が必要 であ り,血液凝 固能の克進 に対 しては抗凝 固療法 にて対処す る こととなる.そ して,血流 の停滞 に対 しては早 期離 床 に よる下肢 の運動 の他,弾性 ス トノキ ン

グや間欠的空気式圧迫法が挙 げ られる.

本邦 で は肺塞栓 症 は比較 的稀 な疾患 とされ, 周術期 の DVT予 防 も積極 的 に行 われて来 なか ったのが現状 であ るが, 中野 ら 7 ) は剖検 の方法 を見直す こ とに よ り,2 2 5 例 中 5 4 例 ( 2 4 %) に

PE を認めている.本邦 において も PE は稀 な疾 患 で は ない こ とを認識 した上 で,DVTお よび

P E の予 防 と治療 を講 じてい く必要 が あ る と考

え られ る.本稿 で は深部静脈血栓症 の予 防 と治 療 について文献的考察 を加 えて記載す る.

各科領域 における DVTの頻度

一般外科手術 において は術 後 DVT の頻 度 は 1 9‑ 2 5 % と され る 8) . そ の 他 各科 領域 手 術 に おいては,整形外科領域 ( 股 関節 お よび膝 関節 等 の手術 ) で 47‑ 51 % ,脳 神 経外科 領域 で は 2 2 % ,婦 人科 領域 で は 1 4‑ 2 2% と報告 され て い る 8) ( 表 1 ).各科領域 の手術 部位,体位,術 後経 過 な どに よ り頻度 に差がで る もの と推測 さ れ るが,総 じて術 後の DVT の頻 度 は決 して稀 な ものではない.

D V T の 予 防

血流 の停滞 は静脈の拡張 を引 き起 こ し,血液 と静脈壁 との接触 時 間が長 くな り, これ に よ り 凝 固 反応 が増 強 され,血栓 形 成 の原 因 とな る.

また,静脈の拡張 に よ り内皮 に亀裂 を生 じ,凝 固因子活性化の原因 とな りうる 9) .

1 .弾性ス トッキング

弾性 ス トノキ ングの 目的は静脈 うっ滞 を軽 減 させ ることと, うっ滞お よび静脈拡張の結 果生 ず る内皮の損傷 を減少

せ るこ とにあ る.す な わち Vi r c ho w の 3 徴の うち,血流の停滞 と静脈 壁の損傷 を予防す ることを 目的 としている.

一般 的 に医療 に使 われ る弾性 ス トノキ ングは 段 階 的圧迫法 を とってい る.す なわち,足 関節 部の圧が最 も高 く, 中枢 に向か うに したが って

表 1 各科領域における DVT の頻度 ( 文献 8 より抜粋) Aut hor Pat i ent sno. DVTi nci denc

e 一般外科 Cl aget tandRei sch

産婦人科 Cl ar k ‑ Pear sonetal . 股関節置換術

Hul letal . 膝関節置換術 Ki m 脳神経外科

Tu「 pi eetal . 431 0 1 084(

25%) 1 03 19(

1 8 . 4%) 158 7

7( 48. 7%)

244 80( 32. 8%)

(3)

圧 迫圧 が低 くなってい る. Si ge l l O )らは,足 関節 , 下腿,膝 部,大腿 遠位 部,大腿 近 位 部 にお いて 各々 1 8,1 4,8,1 0,8mmHg の圧 をか ける こ とに よ り, 大 腿 静 脈 流 速 を 1 3 8 . 4% に増 加 させ る こ とが で きる と してい る.現在 市販 され てい る弾 性 ス トッキ ングで,静脈疾患 の予 防 に用 い られ る もの は足 関節部 で 1 6 ‑ 2 0mmHg の圧 になって い る.先 に述べ た術 中下 肢 静 脈 の 拡 張 に対 し, smi t h ら 1 1 ) は弾性 ス トッキ ングを使用 した群 で

は,使用 しなか った群 に対 して手術 終 了時 の膝 寓静脈 の径 を有意 に減 少 させ得 る と してい る.

実 際 の 臨 床 的 トライアルで は, Ni c o l a i de s ら 8)

の総 括 ( n‑9 0 9) に よれ ば, 弾性 ス トッキ ング を使 用 した場 合,術 後 DVT の発 生 頻 度 を 2 9%

か ら 1 1 % に減少 させ る こ とが で きる とされ る.

周術期 以外 の使 用 で は,近年 しば しば話 題 と な るエ コ ノ ミー クラス症候 群 も本 態 は DVT で あ るが, Sc ur r ら 1 2 'の検 討 に よれ ば, エ コノ ミ ー クラス症候 群 の予 防 と して も弾性 ス トッキ ン グは有効 であ った とされ る.

2. 間欠的空気圧迫法

間欠 的空 気圧 迫 法 は DVT の発 生 頻 度 を 2 4%

か ら 7. 7 % に減 少 させ る と され る ( n‑1 61 1 ) 8 )

た だ し,弾性 ス トッキ ング もそ うで あ るが,症 例 数が 少 ない ため,正確 に評価 で きない とす る 考 え もあ る 8) . 間欠 的 空 気圧 迫 法 に は排腹 部 か ら大腿 まで を圧 迫す る方法 と足 底 静 脈 のみ を圧 迫す る方法 ( f o otpump) とが あ る. El l i ot ら 1 3)

の重 度外傷患 者 1 2 4 例 での検討 に よれ ば, DVT の発症 は前 者 で 6. 5 % ,後者 で 21 . 0 % であ り,排 腹 部 か ら大 腿 まで を圧 迫 す る方 が よ り効 果 的 で あ る と され る.手術 部位 な どに よ り,排腹 部 か ら大腿 まで を圧 迫す る こ とが で きない場 合 は f o otpump の使用が考慮 され る.

3. ヘパリン

低 用 量 の 未 分 画 ヘ パ リ ン は術 後 DVT と致 死 的 肺 塞 栓 症 の 発 生 を低 減 させ る と され る.

Ni c o l a i des ら 8 )の 総 括 ( n‑6 85 1 ) に よ れ ば,

DVT の 発 生 頻 度 は コ ン トロー ル群 25. 9 % に対 し, ヘ パ リ ン投 与 群 で は 8. 6% で あ る. 使 用 法 と して は 5 0 0 0uni t s を 8 時 間 も し くは 1 2 時 間 毎 に皮下注 す る. また,低 分子 ヘ パ リン も同様 に DVT お よび致死 的肺 塞栓 症 の 発生 を低 減 さ せ る.未 分 画ヘパ リ ンに比べ , 出血性 副作 用 の 発現 が少 ない とされ るが,本邦 で は保 険適用 は ない

4.デキス トラン

Be r gqvi s t ら 1 4) の 総 括 ( n‑5 9 45) に よれ ば, 致死 的肺 塞栓 症 の発 生 頻 度 は コ ン トロール群 で / 1 . 5% , デ キス トラ ン投 与 群 で 0. 3 4% と,効 果 が あ る よ うに見 受 け られ るが, DVT 予 防へ の 有 効性 は小 さい と考 え られ て い る 8) . 架橋 構 造 を 有 きない ため,生体 内で容 易 に分 解 され るため と考 え られ てい る. その他 ,心 負荷 のかか る恐 れが あ る こ とな どが問題 と考 え られ る.

5. 抗血 小板薬

一般 に アス ピ リ ン 1 0 0 0‑ 1 5 0 0mg/ da y の経 口 投 与 が 行 わ れ る が, Ant i pl a t e l e tTr i a l i s t s ' co l l a bor a t i o n 1 5) に よれ ば ,DVT お よび致死 的肺 塞栓 症 の発症 予 防 に効 果が あ る よ うに見受 け ら れ る. コ ン トロー ル群 で の DVT 発生 率 は 3 4 % で あ る の に対 し, ア ス ピ リ ン投 与 群 で は 2 5 % とされ る.致死 的肺 塞栓 症 につ い て は, コ ン ト ロール群 2. 7 % , アス ピリン投 与群 1 . 0% であ る.

腹 部手術 後 の患 者 な どで は,術 後 早期 の経 口薬 投与 は難 しい と考 え られ る.

DVT の危険因子 とグ レー ド分 け

DVT の危険 因子 と しては年齢 , DVT の既 往,

悪 性 疾 患 ,性 ホ ルモ ン薬 の服 用 ,妊娠 ,先 天性

血栓性 素 因 な どが挙 げ られ るが, 一般 的 に これ

ら危 険 因子 の有無 に よ り,術 後 DVT 発症 の危

険性 は三役 階 に分類 され る 8) ( 表 2) . この よ う

に して分 類 され た群 ご とに DVT の発生 頻 度 を

み て み る と, 低 リス ク群 で は下 腿 静 脈 で 2 % ,

大 腿 部で 0 . 4% で あ るの に対 し, 高 リス ク群 で

(4)

表 2 DVT の リス クカテ ゴ リーお よび予 防法

低 リスク群 中リスク

群 リスク 2. 1. 大手術を受ける 小手術を受ける 40 40 歳未満 歳以上 60 歳未満 3. 4 2. 1 . ノ」 小手術を受ける 大手術を受ける 小手術を受ける 、 手術を受ける 60 40 60 40 歳以上 歳以上 歳以上 歳以 60 歳未満

上 60 歳未満 ファクター 6. 5.40 動け DVT,PE ホルモン療法施行中 歳以上の妊娠 .出産 の既往

ない患者,心不全 予防法 弾性ス トッキング 低用量ヘパ リン .低分子

ヘパ リン .抗血小板剤の

早期離床 投与または間欠的

空気圧迫法 .弾性ス トッキング

はそれぞれ 4 0‑ 8 0

%,1 0‑ 2 0% と頻度が高 く なる こ とか ら

,危険 因子 に よる分類 によ り術 後 の DVT 発生 をあ る程度

予測 で きる こ とになる

1 6) 手術症例 で

は,各症例毎 に危 険性 を評価 し, 予 防策 を講 じ

てい く必要があ る.す なわち,弾 性 ス トッキ ン

グの他, い くつか の DVT 予 防 に 有効 とされ る

方法 との組 み合 わせが考 え られ る が, Ni c o l a i de s

ら 8 )の総括 に よれ ば,弾性 ス ト ッキ ング単独 では

術後 DVT の発生頻度 は 2 2 % , 低 用量ヘパ リン

単独 で は 1 8 % であ るの に対 し, 両者 の併用 群 で は 8‑ 9. 5

% に減 少 させ る こ と

が で きる. これ らの結

果 をふ まえ,低 リス ク群 では弾性 ス トッキ ング

,間欠的空気圧迫法,低用量ヘパ リンの うちの

いず れか単独療法, 中 リス ク群 で は上記 の うち

二つ の併用療法 を,高 リス ク群 で は 3 者併用療法 な どが推奨 されて

いる 1 7・1 8)

( 表 2).

予防療法の注意点 弾性 ス トッ

キ ングの絶対 的禁忌 は無 い と考 え られ るが,相

対 的禁忌 としては閉塞性動脈硬化 症 な どに よ り

下肢 の動脈血流 障害の著 しい症例 で は使用す るべ き

で ない とされ る 1 9) .足 関節 ・ 体血圧比 ( Ankl eBr a c hi a lP

r e s s ur eI nde x) が

0. 7未満 の症例 で は圧 迫療 法 を行 わ ない方 が よ い との考 え もある. その他,下

肢 に急性 の炎症 を認め る症例,血 栓性静

脈炎の急性期 には使用で きない.

また,静脈

還流量が増加す る ことか ら, うっ 血性心不全症例で は心負荷

が増大す る可 能性 が ある 間欠的空気 9) .

圧迫法で もほぼ同様 の注意が必要 とな り,ヘパ

リンの使用 においては症例 に よ り 出血

の危険性 を考慮す る必要がある.

個 々の症例

に よ り,術 後 DVT の リス クカテ ゴリーに応 じた予 防法 も調節が必要 となる.

PE および DVT の治療 PE の治療 に

関 して は,「肺 高血圧 症 治療 ガ イ ドライ ン 2 0 )

」 に詳述 されている.急性肺血栓 塞栓症 ( Ac ut ePul mo na r yTh

r o mbo ‑ Embol i s m:

APTE) の臨

床像 と しては,安静解 除後 の初 め ての歩行, と

りわけ排尿,排便 に関連 して発症 す ることが多 く

,突然の頻呼吸 を伴 う呼吸困難, 探吸気 で増 強

す る胸痛 な どを主訴 とす る.確定 診断 には従来

肺動脈造影が行 われて きたが,現 在 で は造 影 C

T に よる肺 動脈 内血栓 の存 在 と, 心エ コーに よる石室の拡大,石室壁運動異

常 な どに よ り診断可能である. 肺 高 血 圧 症 治 療 ガ

イ ドラ イ ンで は Co l l a ps e 秤, Ma s s i veAPTE 群, No

n‑ ma s s i veAPTE 群

の 3 段 階 に分類 し,治

(5)

高リスク群 l . 大手術を受ける 60 歳以上 2. 大手術を受ける 40 歳以上 60 歳未

DVT,PE の 満 既往 悪性

腫癌, 3. 血液凝

固異常症

4. 脳血管障害および 70 歳以

上の心不全 5.

ショック状態 6. DVT,PE の既往を有

する妊娠 .出産 低用量ヘパリン.低分子ヘパリ

ン.抗血小板剤の 投与と間欠的空気圧迫法.弾性ストッキ

ング い る ( 図 1).

1 .

Co 心肺 停 止 l l a p s e 群 :

あ るい はそれ に近 い状 態 心肺 蘇 生 , pCPS に

て循 環補 助 しつ つ肺 動 脈 血栓 摘 除あ るい は

経 カテーテル的血栓摘 除 2. Ma s s i v eAPTE (

急性 肺血栓 塞栓 症 )秤 : シ ョ ック, 失 神 ,

低 血 圧 , 石 室 拡 大 あ る い は石 室壁

運動 異常 を きた した もの ヘ パ リ ン投 与 : APTT 比 1

. 5 ‑ 2 . 5 を 目標 (出 血

高 リス ク群 で は 1 . 5)

血 行 動 態 が 安 定 しな い場 合 :血 栓 溶 解 療 法

あ るい は肺 動脈血栓 摘 除 肺 動 脈 血 栓 摘 除 :

血 栓 溶 解 療 法 禁 忌 例 , 無 効 例 , Co l l a p s e 群 に移行 しそ うな症例

Co ‖ a p s e 群 3 .No n ‑ ma s 39

s i v eAPTE 群 :

血 行 動 態 正 常 か つ 石 室 拡 大 , 石 室 壁 運 動 異 常 の な

い もの ヘパ リン投 与 いず れ の群 で も後療

法 と して 1 0 日間程 度 の ヘパ リ ン投 与 を行 い,可

及 的速 や か に I VC フ ィ

ル ター留 置 . ヘ パ リ ン中

止 の 3 ‑ 4 日前 よ りワー フ ア リ ン‑切 り替 え ,I n t e r n a t i o na l

No r ma l i z e d Ra t i o ( I NR) 2 ‑ 3 を 目標

とす る. た だ し, ヘ パ リ ンの適応 禁忌 ( 絶 対 的

禁忌 :出血 性 潰場 ,脳 出 血 急性 期 , 出血 傾 向) が あ る場 合 に はヘパ

リ ン は使用 で きない

DVT の 治 療

DVT の治療 戟略案 を図 2 に

示 した.

1 .初期治療 適応 禁忌 が なけれ ば

, ヘ パ リンの投 与 を開始 す る. 従 来, DVT の急 性

期 治療 と して は, PE

の危 険性 を考 慮 し, ベ

ッ ド上 下肢 挙 上安 静 が基 本 と され て きた .Pa r t s c h

ら 21 ) はベ ッ ド上 下 肢 挙 上 安 静 群 と弾性 ス ト

ッキ ング着 用 して歩 行 さ せ た群 とを比 較 し, 下

肢 の痛 み, 周 径 ,歩 行 距 離 すべ て にお い て後者

で有 意 に改 善 して い た と してい る. ス タデ ィに

際 して は全 症 例 に低 分 子 ヘ パ リ ンの皮 下注 とワ

ー フ ア リ ンの投 与 を行 っ て お り, PE の 発 生 率

に有 意 差 は 見 られ なか っ た と して い る. 今 後 D

VT の 初 期 治 療 と して,

Ma s s i v eAPTE 群 No n ‑ma s

(6)

図 2 DVTの治療戦略.

抗凝 固療法下の弾性

ス トッキ ング着用 に よる歩 行が治療の

主流 となる可能性が ある.

2.DVT の外

科治療 および血栓溶解療法 外 科 的治療 は大

腿 静 脈 か らの血栓 摘 除 で あ るが,絶対 的適応 と

しては有痛性青股腫 があげ られ る.激 しい痛 み

を伴 う下肢 のチ アノーゼが み られ る.外科 的治

療 の適応期 間は発症後 1 週 間前後 とされ,血栓

溶解療法 と同様 であ る.下 肢静脈 か らの アプロ

ーチ に よる血栓 溶解療法 は 外科 的治療 に比べ低

侵襲 であ り,治療 の主流 と して は血栓 溶解療 法

にあ る. 出血性合併症 な ど の適応禁忌があ る症

例 で は外科 的治療 の適応 と なる.いずれの治療

において も治療操作 に伴 う PE 予 防のため,下大 静脈 フ ィ

ル ター ( I nf e r i o r ve nac a va lf il t e r : Ⅰ V Cf il t e r ) を留

置すべ きと考 え られる.

3

.1 肺 動 脈 は他 の血 VCf i l t er

管 に比 して線 溶系 が 発 達 し てい る とされ, フ ィ

ル ターの機序 としては血行 動体 に影響 を及ぼす

程度の大 きな血栓 を捕捉 す る こ とにあ る. しか しなが ら ,

Ⅰ V CBl t e r 使 用 の是非 については現

在 の ところ議論 の余地が あ る. 否 定 的 な意 見

と して は, フ ィル ター部 位

‑ の血栓形 成, フ ィ

ル ター留置 後の DVT の再

発 な どが あ げ られ る. フ ィル ター に関す る プ ロスペ クテ ィブ ス タデ ィは

現 在 まで De c o us us ら 22) による ものだけ

であるが, フィルター使用 群 2 0 0 例 と非使 用 群 2

0 0 例 との比較 にお い て, DVT 発 症 後 1 2 日

目の PE 発 生 頻 度 は使 用 群 で 1 . 1 %, 非 使 用 群 で 4.

8% とされ る.2年 後 の DVT 再 発 率 は使 用 群 2

0 . 8 % に対 し,非 使 用 群 l l . 6%. また 1 2 日 目

にお けるフ ィル ター部位へ の血栓 形 成 は 1 6 例

にみ られ てい る. さ らに両 群 間で死亡率 に有意

差 はみ られてい ない.両群 ともに急性期 には抗

凝 固療法の投与 を受 けてい るが,発症初期 での

フィル ターの有効性 は認 め られ る ものの,長期

的合併症 はむ しろ増加す る 可能性が あ り,死亡

率 に関 して はフィル ターの 有効性 は認め られて

いない.現段 階で は急性期 に一時留置型や回収

可能型 の フ ィル ター を用い る方法が望 ま しい と

考 え られ る. また,悪性疾 患 で はフィル ターの

有効性 と生存期 間 との検討 か らフィル ターの使用 を疑問

視 す る意見 もみ ら れる. 肺高血圧症 ガイ ドライ

ン 2 0) では永久型 フ ィル ターの適応 と して,

適切 な抗凝 固療法 に もかか わ らず再発 を きたす もの,抗凝 固療法

禁忌例 と されている.

お わ り に 整形外科領域 での

検討で は,ヘパ リン,弾性

ス トッキ ング,間欠的

(7)

かの組 み 合 わせ に よる予 防療 法 を施 行 した群 で は術 後 DVT の発 生 頻 度 は低 く, 結 果 的 に予 防 療 法 を施 行 しなか った群 に対 して,患 者 1例 あ た り 1 9 . 4 ドル経 費が削 減 され た と報 告 され てい る 2 3' .DVT の 予 防 は患 者 に とっ て 利 益 を も7 3 らす だ け で な く, 医療 費 の削 減 に も寄 与 す る こ とが推 察 され る.

結 請

深 部 静 脈 血栓 症 に対 す る医療 と して は, まず 予 防 を講 じる こ とが ,患 者 の利 益 の み な らず ,

コス ト削 減 に もつ なが る もの と考 え られ る.

文 献

1 ) Fr e i ma nDG,Suye mot o∫ ,We s s l e rS.Fr e que nc y o fpul mo na r yt hr o mbo e mbo l i s m i nma n.N Engl∫

Me d1 9 6 5 ; 2 7 2 : 1 2 7 8 ‑ 8 1 .

2) 前 田 肇編.静脈お よび リンパ管疾患 と外科.東京 : 日本 アクセル ・シュプリンガ‑出版 ; 1 9 9 7 .p. 1 6 3 ‑ 7 . 3) Bo r o w M, Go l ds o nHJ . Pr e ve nt i o no fpo s t o pe r a t i ve

de e pve noust hr ombos i sa ndpul mona r ye mbol i wi t h combi ned modal i t i es .Am Surg 1 983;

4 9 : 5 9 9 ‑ 6 0 5 .

4) Col ma nRW,Rubi nRN.Upda t eo npul mona r y e mbo l i s m:Mode r nma na ge me n t .DM 1 9 8 2 ;Ye a r bo o kMe di c a lPubl i s he r s , I nc .

5) Co l e r i dge ‑ Smi t hPD,Ha s t yJ H ,Sc ur rJ H.Ve no us s t a s i sa ndve i nl ume nc ha nge sdur i ngs ur ge r y. Br JSur g1 9 9 0 ; 7 7 : 1 0 5 5 ‑ 9 .

6) Capr i niJA.Ar ce l usJ I .Hof fmanK,Mat t er n T,La uba c hM,Si zeGP,Tr a ve r s oC I ,Coa t s R.

Pr e ve nt i o no fve noust hr o mbo e mbo l i s m i nNo r t h Amer i c a:Res ul t sofas ur veyamonggener a l s ur ge o ns . JVa s eSur g1 9 9 4 : 2 0 : 7 51 ‑ 8 .

7 ) 中野 赴,伊東早苗,竹沢英郎.肺塞栓症の疫学.

日医新報 1 9 8 0 ; 2 9 4 9 : 43 ‑ 7 ,

8) Ni c o l a i de sAN,Br e ddi nH K ,Fa r e ed∫ ,Go l dha be r S,Ha a sS.Hul lR ,Ka l odi kiE,e ta l .A .Pr e ve nt i o n ofvenoust hromboembol i sm.T ntAngi o1 2 0 01 ; 2 0 : 1 ‑ 3 7 .

9 ) 平井正文.深部静脈血栓症 ・肺塞栓症予 防 にお け る弾力ス トッキ ング,間欠的空気圧迫法の応用性.

静脈学 2 0 0 3 ; 1 4 : 4 9 ‑ 61 .

1 0) Si ge lB,Ede l s t e i nAL Sa vi t c hL Ha s t yJ H ,Fe l i x WR .Typeo fc ompr e s s i onf orr educ i ngve nous s t as i s .A s t udyofl owerext r emi t i esdur i ng i na c t i ver e c umbe nc y.Ar c hSur g1 9 7 5 ; 1 1 0 : 1

7

1 ‑ 6 . l l ) Co l e r i dge ‑ Smi t hPD,Ha s t yJ H ,Sc dr rJ H.De e p

ve i nt hr o mbo s i s :e ∬e c to fgr a dua t e dc o mpr e s s i on s t o c ki ngsondi s t e ns i o no ft hede e pve i nso ft he c a l f . Br∫Sur g1 9 91 ; 7 8 : 7 2 4 ‑ 6 .

1 2) Scur rJH,Mac hi nSJ,Bai l ey‑ Ki ngS,Macki e

I J , McDona l dS,Smi t hPDC.Fr equenc yand pr e ve nt i ono fs ympt o ml e s sde e p‑ ve i nt hr o mbo s i s i nl ong‑ ha ul凸i ght s :ar a ndomi s edt r i a l .La nc et 2 0 01 ; 3 5 7 : 1 4 8 5 ‑ 9 .

1 3) El l i ot tCG,DudneyTM.EggerM,Or meJF, Cl e mme rTP, Ho r nSD, We a ve rL,e ta l . Ca l f ‑ t hi gh s e que nt i a lpne umat i cc ompr e s s i o nc o mpa r e dwi t h pl a nt a rve no uspne uma t i cc o mpr e s s i o nt opr e ve nt de ep‑ ve i n t hr ombos i sa f t e rno n‑ l owe re xt r e mi t y t r a uma . ∫Tr a uma1 9 9 9 ; 4 7 : 2 5 ‑ 3 2 .

1 4) Be r qvi s tD.De xt r a n.I n:Be r qvi s tD,Come r ot a A,Ni c o l a i de sA,Sc ur r ∫ ,edi t or s .Pr e ve nt i onof ve noust hr omboe mbo l i s m.London:Me d‑Or i on, 1 9 9 4 . p. 1 81 ‑ 9 8 .

1 5) Ant i pl a t e l e tTr i a l i s t s 'co l l a bo r a t i on.Co l l a bo r a t i ve over vi ew ofr andomi s edt r i a l sofant i pl at el et t he r a py,Ⅰ Ⅰ Ⅰ ,r e duc t i o ni nve no ust hr ombo s i sa nd pul mo na r ye mbo l i s m bya nt i pl a t e l e tpr o phyl a xi s a mongs ur gi c a la ndmedi c a lpa t i e nt s .BrMe dJ 1 9 9 4; 3 0 8 : 2 3 5 ‑ 4 6.

1 6) Sal zmanEW,Hi r s h∫.Pr event i onofvenous t hr omboembol i s m.I n:Col man RW,Hi r s h∫, Ma r de rV,Sa l z ma nEW,e di t o r s .He mo s t a s i sa nd t hr ombo s i s .ba s i cpr i nc i pl e sa ndc l i ni c a lpr a c t i c e . Ne w Yo r k: Li ppi nc ot t ;1 9 8 2 . p. 9 8 6 ‑ 9 9 .

1 7 ) Capri niJA,ScurrJH,Hast y JH.Rol eof c o mpr e s s i o nmoda l i t i e si napr o phyl a c t i cpr o gr a m f ordee pvei nt hr ombos i s .Semi nar sThr omb He mo s tSp1 9 88; 1 4Suppl : 77 ‑ 87 .

1 8) Cl aget tGP,Ande r s onFA,Ge er t sW,He i tJA, Knuds o nM, Li e be r ma nJ R ,Me r l iGJ ,Whe e l e rH B.

Pr e vent i ono fvenoust hr omboembol i s m.Che s t 1 9 9 8 ・ , 1 1 4 ( 5Suppl ) : 5 3l s ‑ 5 6 0 S .

1 9) Agu 0,Hami l t on G,BakerD.Graduat ed c o mpr e s s i o ns t o c ki ngsi nt hepr e ve nt i o no fve no us t hr o mbo e mbo l i s m. Br∫Sur g1 9 9 9 ; 8 6 : 9 9 2 ‑ 1 0 0 4 . 2 0) 循 環 器 病 の 診 断 と治 療 に 関 す る ガ イ ドラ イ ン

( 1 9 9 9 ‑ 2 0 0 0 年度合同研究班報告)・肺高血圧症治療

ガイ ドライ ン ( 班長 :三重大学 第一 内科 中野赴) .

J pnCi r c∫2 0 01 ; 6 5 ( SupplV) : 1 0 7 7 ‑ 1 1 8 .

(8)

2 1 ) Pa r t s c h H . Bl a t t l e rW.Co mpr e s s i o na ndwa l ki ng ve r s usbe dr e s ti nt het r e a t me nto fpr o xi ma lde e p ve noust hr ombos i swi t hl ow mol ec ul a rwei ght he pa r i n. J Va s eSur g 2 0 0 0 : 3 2 : 8 61 ‑ 9 .

2 2) Dec ous usH.Lei zor ovi czA,Par entF,Page Y. Tar dyB,Gi r ar dP,Lapor t eS,Fai vr e R, Cha r bonne i e rB,Ba r r a lF‑ G,Hue t Y,Si monne a u G.A c l i ni c alt r i alofvenacaval丘l t e r si nt he pr e vent i ono fpul mona r ye mbol i s m i npat i ent s wi t hpr oxi ma lde ep‑ ve i nt hr ombos i s . N Engl ∫ Me d1 9 9 8 ; 3 3 8 : 4 0 9 ‑ 1 5 .

2 3 ) Oster G,Tuden RL.Col di tz GA.A

c os t ‑ e f fe c t i ve ne s sa na l ys i sO fpr o phyl a xi sa gai ns t

de e p‑ ve i nt hr o mbo s i si nma j o rO r t ho pe di cs ur ge r y .

J AMA1 9 8 7 ; 2 5 7 : 2 0 3 ‑ 8 .

表 2 DVT の リス クカテ ゴ リーお よび予 防法 低 リスク群 中リスク 群リスク 2.1. 大手術を受ける 小手術を受ける 4040 歳未満歳以上 60 歳未満 3.4 2.1
図 2 DVTの治療戦略.抗凝 固療法下の弾性 ス トッキ ング着用 に よる歩行が治療の 主流 となる可能性が ある.2.DVTの外 科治療 および血栓溶解療法外 科 的治療 は大 腿 静 脈 か らの血栓 摘 除 で あるが,絶対 的適応 と しては有痛性青股腫 があげられ る.激 しい痛 み を伴 う下肢 のチ アノーゼがみ られ る.外科 的治 療 の適応期 間は発症後 1 週間前後 とされ,血栓 溶解療法 と同様 であ る.下肢静脈 か らの アプロ ーチ に よる血栓 溶解療法 は外科 的治療

参照

関連したドキュメント

F1+2 やTATが上昇する病態としては,DIC および肺塞栓症,深部静脈血栓症などの血栓症 がある.

Tu be Saf et y & P ro du ct fe atu re s 静脈採血関連製品 特殊採血関連製品 静 脈 採 血 関 連 製 品 針 ・ア ク セ サ リ ー 動脈採血関連製品

[r]

mentofintercostalmuscle,andl5%inthepatientswiththeinvolvementofribormore(parietal

 リ〇

信心辮口無窄症一〇例・心筋磁性一〇例・血管疾患︵狡心症ノ有無二關セズ︶四例︒動脈瘤︵胸部動脈︶一例︒腎臓疾患

therapy後のような抵抗力が減弱したいわゆる lmuno‑compromisedhostに対しても胸部外科手術を

10例中2例(症例7,8)に内胸動脈のstringsignを 認めた.症例7は47歳男性,LMTの75%狭窄に対し